JP3760981B2 - インクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置 - Google Patents

インクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を介して圧電素子を設けて、圧電素子の変位によりインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
【0003】
前者は圧電素子の端面を振動板に当接させることにより圧力発生室の容積を変化させることができて、高密度印刷に適したヘッドの製作が可能である反面、圧電素子をノズル開口の配列ピッチに一致させて櫛歯状に切り分けるという困難な工程や、切り分けられた圧電素子を圧力発生室に位置決めして固定する作業が必要となり、製造工程が複雑であるという問題がある。
【0004】
これに対して後者は、圧電材料のグリーンシートを圧力発生室の形状に合わせて貼付し、これを焼成するという比較的簡単な工程で振動板に圧電素子を作り付けることができるものの、たわみ振動を利用する関係上、ある程度の面積が必要となり、高密度配列が困難であるという問題がある。
【0005】
一方、後者の記録ヘッドの不都合を解消すべく、特開平5−286131号公報に見られるように、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものが提案されている。
【0006】
これによれば圧電素子を振動板に貼付ける作業が不要となって、リソグラフィ法という精密で、かつ簡便な手法で圧電素子を作り付けることができるばかりでなく、圧電素子の厚みを薄くできて高速駆動が可能になるという利点がある。
【0007】
また、このようなインクジェット式記録ヘッドでは、基板の圧電素子とは反対側の面からエッチングすることなどにより厚さ方向に貫通して圧力発生室を形成しているため、寸法精度の高い圧力発生室を比較的容易且つ高密度に配設することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなインクジェット式記録ヘッドでは、圧力発生室を形成する基板として、例えば、直径が6〜12インチ程度の比較的大きなものを用いようとする場合、ハンドリング等の問題により基板の厚さを厚くせざるを得ず、それに伴い圧力発生室の深さも深くなってしまう。そのため、各圧力発生室を区画する隔壁の厚さを厚くしないと、十分な剛性が得られず、クロストークが発生し、所望の吐出特性が得られない等という問題がある。また、隔壁の厚さを厚くすると、高い配列密度でノズルを並べられないため、高解像度の印字品質を達成できないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、隔壁の剛性を向上すると共に圧力発生室を高密度に配設することのできるインクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室が画成される単結晶シリコンからなるシリコン層を有する流路形成基板と、前記圧力発生室の一部を構成する振動板を介して前記圧力発生室に対向する領域に設けられて前記圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子とを具備するインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記圧力発生室と連通するノズル開口が形成されたノズルプレートに前記圧電素子を保持する圧電素子保持部が設けられ、前記圧力発生室が前記流路形成基板の一方面側に当該流路形成基板を貫通することなく形成され、且つ前記圧力発生室にインクを供給するリザーバが前記流路形成基板の他方面側に形成されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0011】
かかる第1の態様では、圧力発生室を比較的浅く形成することができ、各圧力発生室を区画する隔壁の剛性が向上する。また、圧力発生室の容積に対して、十分に大きい体積のリザーバが設けられ、リザーバ内のインク自体によって内部圧力の変化が吸収される。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記リザーバが前記圧力発生室に直接連通していることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0013】
かかる第2の態様では、リザーバから各圧力発生室に直接インクが供給される。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記シリコン層の一方面側には、前記圧力発生室の長手方向一端部に連通するインク連通路が形成され、前記リザーバが、前記インク連通路に連通されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0015】
かかる第3の態様では、リザーバからインク連通路を介して各圧力発生室にインクが供給されるため、リザーバとインク連通路との連通部の断面積がばらついても狭隘部でインクの抵抗を制御でき、各圧力発生室間でのインク吐出特性のばらつきを低減できる。
【0016】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記インク連通路が前記圧力発生室毎に設けられていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0017】
かかる第4の態様では、リザーバから各圧力発生室毎に設けられたインク連通路を介して各圧力発生室にインクが供給される。
【0018】
本発明の第5の態様は、第3の態様において、前記インク連通路が前記圧力発生室の並設方向に亘って連続的に設けられていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0019】
かかる第5の態様では、リザーバから共通するインク連通路を介して各圧力発生室にインクが供給される。
【0020】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記圧力発生室の前記リザーバとは反対側の長手方向端部側に、前記圧力発生室と前記ノズル開口とを連通するノズル連通路が設けられていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0021】
かかる第6の態様では、圧力発生室にリザーバから安定してインクが供給され、且つノズル開口からインクが良好に吐出される。
【0022】
本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記ノズル連通路が、前記振動板を除去することにより形成されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0023】
かかる第7の態様では、ノズル連通路を容易に形成することができる。
【0024】
本発明の第8の態様は、第6又は7の態様において、前記ノズル連通路の内面が、接着剤で覆われていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0025】
かかる第8の態様では、ノズル連通路を通過するインクによる振動板の剥がれが防止される。
【0026】
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れかの態様において、前記流路形成基板が、前記シリコン層のみからなることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0027】
かかる第9の態様では、圧力発生室がシリコン層のみで画成される。
【0028】
本発明の第10の態様は、第1〜9の何れかの態様において、前記流路形成基板が、絶縁体層の両面にシリコン層を有するSOI基板からなり、前記圧力発生室が前記SOI基板を構成する一方のシリコン層に形成され、前記リザーバが他方のシリコン層に形成されていることを特徴するインクジェット式記録ヘッドにある。
【0029】
かかる第10の態様では、圧力発生室及びリザーバ等のパターニングを比較的容易に精度良く行うことができる。
【0030】
本発明の第11の態様は、第1〜8の態様において、前記流路形成基板が少なくともボロンドープポリシリコン層の両面にシリコン層を有する基板であり、前記圧力発生室が一方のシリコン層及び前記ボロンドープポリシリコン層に形成されると共に当該圧力発生室の他方面が他方のシリコン層で構成され、前記リザーバが前記他方のシリコン層に形成されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0031】
かかる第11の態様では、圧力発生室及びリザーバ等のパターニングを比較的容易に精度良く行うことができる。
【0032】
本発明の第12の態様は、第1〜11の何れかの態様において、前記シリコン層の面方位が、(100)面であることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0033】
かかる第12の態様では、ウェットエッチングによっても、リザーバ等を高精度に形成することができる。
【0034】
本発明の第13の態様は、第12の態様において、前記圧力発生室の横断面が略三角形状を有することを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0035】
かかる第13の態様では、各圧力発生室間の隔壁の強度が著しく向上するため、圧力発生室を高密度に配設することができ、且つクロストークを防止できる。
【0036】
本発明の第14の態様は、第1〜13の何れかの態様において、前記圧力発生室が異方性エッチングにより形成され、前記振動板及び前記圧電素子を構成する各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されたものであることを特徴とするインクジェット式記録ヘッドにある。
【0037】
かかる第14の態様では、高密度のノズル開口を有するインクジェット式記録ヘッドを大量且つ比較的容易に製造することができる。
【0038】
本発明の第15の態様は、第1〜14の何れかの態様のインクジェット式記録ヘッドを具備することを特徴とするインクジェット式記録装置。
【0039】
かかる第15の態様では、ヘッドのインク吐出特性を向上すると共に高密度化したインクジェット式記録装置を実現することができる。
【0040】
そして、第16の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室が画成されるシリコン単結晶基板と、前記圧力発生室の一部を構成する振動板を介して前記圧力発生室に対向する領域に設けられて前記圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子とを具備し、前記圧力発生室が前記シリコン単結晶基板の一方面側に当該シリコン単結晶基板を貫通することなく形成され、且つ前記圧力発生室にインクを供給するリザーバが前記シリコン単結晶基板の他方面側に形成されたインクジェット式記録ヘッドの製造方法であって、前記シリコン単結晶基板の一方面側の前記圧力発生室を形成する領域に前記犠牲層を形成する工程と、前記シリコン単結晶基板の一方面側の表面に前記振動板を形成すると共に前記圧力発生室に対応して前記圧電素子を形成する工程と、前記シリコン単結晶基板の他方面側をパターニングして前記リザーバを形成する工程と、前記圧力発生室に充填した前記犠牲層を前記リザーバを介して除去して前記圧力発生室を形成する工程とを有することを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方法にある。
【0041】
かかる第16の態様では、リザーバを介して犠牲層を容易に除去することができ、シリコン単結晶基板を貫通することなく比較的容易に形成することができる。
【0042】
17の態様は、第16の態様において、前記シリコン単結晶基板の一方面側の前記圧力発生室を形成する領域に前記犠牲層を形成する工程は、前記シリコン単結晶基板の一方面側をパターニングして前記圧力発生室を形成する工程と、前記圧力発生室に前記犠牲層を充填する工程とを有することを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方法にある。
【0043】
かかる第17の態様では、圧力発生室をパターニングによって形成することにより、犠牲層を容易に形成することができる。
【0044】
18の態様は、第16の態様において、前記犠牲層を陽極化成法によって形成することを特徴とするインクジェット式記録ヘッドの製造方法にある。
【0045】
かかる第18の態様では、圧力発生室をパターニングによって形成することなく、犠牲層を比較的容易に形成することができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0047】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの圧力発生室の長手方向における断面図及び平面図である。
【0048】
図示するように、圧力発生室12が形成される流路形成基板10は、例えば、150μm〜1mmの厚さを有し、面方位(100)のシリコン単結晶基板からなり、その一方面側の表層部分には、異方性エッチングにより複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が形成されている。
【0049】
また、各圧力発生室12の長手方向一端部には、後述するリザーバ15と圧力発生室12とを接続するための中継室であるインク連通部13が圧力発生室12よりも幅の狭い狭隘部14を介して連通されている。また、これらインク連通部13及び狭隘部14は、圧力発生室12と共に異方性エッチングによって形成されている。なお、狭隘部14は、圧力発生室12のインクの流出入を制御するためのものである。
【0050】
この異方性エッチングは、ウェットエッチング又はドライエッチングの何れの方法を用いてもよいが、シリコン単結晶基板を厚さ方向に途中までエッチング(ハーフエッチング)することにより圧力発生室12は浅く形成されており、その深さは、ハーフエッチングのエッチング時間によって調整することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、インク連通部13を各圧力発生室12毎に設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図2(c)に示すように、全部の各圧力発生室12に狭隘部14を介して連通するインク連通部13Aとしてもよく、この場合、このインク連通部13Aが後述するリザーバ15の一部を構成するようにしてもよい。
【0052】
一方、流路形成基板10の他方面側には、各インク連通部13に連通し、各圧力発生室12にインクを供給するリザーバ15が形成されている。このリザーバ15は、流路形成基板10の他方面側から、所定のマスクを用いて異方性エッチング、本実施形態では、ウェットエッチングによって形成されている。このリザーバ15は、本実施形態では、ウェットエッチングによって形成されているため、流路形成基板10の他方面側ほど開口面積が大きくなる形状を有し、インクを供給するすべての圧力発生室の容積に対して、それよりも十分に大きい容積となっている。
【0053】
なお、本実施形態では、流路形成基板10として面方位(100)のシリコン単結晶基板を用いているため、ウェットエッチングによってもリザーバ15等を精度よく形成することができる。
【0054】
また、本実施形態では、流路形成基板10の端部近傍には、予め、後述する圧電素子300を駆動するための駆動IC16が圧力発生室12の並設方向に亘って一体的に形成されている。
【0055】
このような流路形成基板10上には、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の絶縁層からなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が設けられている。この弾性膜50は、その一方の面で圧力発生室12の一壁面を構成している。
【0056】
このような弾性膜50上の各圧力発生室12に相対向する領域には、厚さが例えば、約0.5μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.1μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる弾性膜とを合わせて圧電アクチュエータと称する。
【0057】
また、各圧電素子300の上電極膜80と流路形成基板10に一体的に設けられた駆動IC16との間には、それぞれリード電極90が弾性膜50上に延設されており、各リード電極90と駆動IC16とは、弾性膜50の駆動IC16に対向する領域に設けられた接続孔51を介して、それぞれ電気的に接続されている。
【0058】
さらに、圧力発生室12の長手方向のインク連通部13とは反対側の端部近傍には、弾性膜50及び下電極膜60を除去することにより、後述するノズル開口21に連通するノズル連通孔52が、複数の圧力発生室12に亘って連続的に設けられている。勿論、このノズル連通孔52は、各圧力発生室12毎に設けられていてもよい。
【0059】
ここで、シリコン単結晶板からなる流路形成基板10に圧力発生室12を形成する工程及び、この圧力発生室12に対応する領域に圧電素子300を形成するプロセスを図3〜図5を参照しながら説明する。なお、図3〜図5は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。
【0060】
まず、図3(a)に示すように、流路形成基板10となるシリコン単結晶板の一方面側に、例えば、酸化シリコンからなる所定形状のマスクを用いて異方性エッチングすることにより圧力発生室12、インク連通部13及び狭隘部14を形成する。なお、圧電素子を駆動するための駆動用IC16は、流路形成基板10に予め一体的に形成されている。
【0061】
次に、図3(b)に示すように、流路形成基板10に形成された圧力発生室12、インク連通部13及び狭隘部14に犠牲層100を充填する。例えば、本実施形態では、流路形成基板10の全面に亘って犠牲層100を圧力発生室12等の深さと略同一厚さで形成した後、圧力発生室12、インク連通部13及び狭隘部14以外の犠牲層100をケミカル・メカニカル・ポリッシュ(CMP)により除去することにより形成した。
【0062】
このような犠牲層100の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリシリコン又はリンドープ酸化シリコン(PSG)等を用いればよく、本実施形態では、エッチングレートが比較的速いPSGを用いた。
【0063】
なお、犠牲層100の形成方法は特に限定されず、例えば1μm以下の超微粒子をヘリウム(He)等のガスの圧力によって高速で基板に衝突させることにより成膜するいわゆるガスデポジション法あるいはジェットモールディング法と呼ばれる方法を用いてもよい。この方法では、圧力発生室12、インク連通部13及び狭隘部14に対応する領域のみに犠牲層100を部分的に形成することができる。
【0064】
次に、図3(c)に示すように、流路形成基板10及び犠牲層100上に弾性膜50を形成する。また、本実施形態では、流路形成基板10の他方面側に、リザーバ15を形成する際のマスクとなる保護膜55を形成する。例えば、本実施形態では、流路形成基板10の両面にジルコニウム層を形成後、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化して酸化ジルコニウムからなる弾性膜50及び保護膜55とした。
【0065】
なお、弾性膜50及び保護膜55の材料は、特に限定されず、リザーバ15を形成する工程及び犠牲層100を除去する工程でエッチングされない材料であればよい。また、これら弾性膜50及び保護膜55は、異なる材料で形成するようにしてもよい。さらに、保護膜55は、リザーバ15を形成する前であれば、何れの工程で形成してもよい。
【0066】
次に、各圧力発生室12に対応して弾性膜50上に圧電素子300を形成する。
【0067】
圧電素子300を形成する工程としては、まず、図3(d)に示すように、スパッタリングで下電極膜60を流路形成基板10の圧力発生室12側に全面に亘って形成すると共に所定形状にパターニングする。この下電極膜60の材料としては、白金、イリジウム等が好適である。これは、スパッタリング法やゾル−ゲル法で成膜する後述の圧電体層70は、成膜後に大気雰囲気下又は酸素雰囲気下で600〜1000℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要があるからである。すなわち、下電極膜60の材料は、このような高温、酸化雰囲気下で導電性を保持できなければならず、殊に、圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ないことが望ましく、これらの理由から白金、イリジウムが好適である。
【0068】
次に、図4(a)に示すように、圧電体層70を成膜する。例えば、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて形成した。圧電体層70の材料としては、PZT系の材料がインクジェット式記録ヘッドに使用する場合には好適である。なお、この圧電体層70の成膜方法は、特に限定されず、例えば、スパッタリング法又はMOD法(有機金属熱塗布分解法)等のスピンコート法により成膜してもよい。
【0069】
さらに、ゾル−ゲル法又はスパッタリング法もしくはMOD法等によりチタン酸ジルコン酸鉛の前駆体膜を形成後、アルカリ水溶液中での高圧処理法にて低温で結晶成長させる方法を用いてもよい。
【0070】
何れにしても、このように成膜された圧電体層70は、バルクの圧電体とは異なり結晶が優先配向しており、且つ本実施形態では、圧電体層70は、結晶が柱状に形成されている。なお、優先配向とは、結晶の配向方向が無秩序ではなく、特定の結晶面がほぼ一定の方向に向いている状態をいう。また、結晶が柱状の薄膜とは、略円柱体の結晶が中心軸を厚さ方向に略一致させた状態で面方向に亘って集合して薄膜を形成している状態をいう。勿論、優先配向した粒状の結晶で形成された薄膜であってもよい。なお、このように薄膜工程で製造された圧電体層の厚さは、一般的に0.2〜5μmである。
【0071】
次に、図4(b)に示すように、上電極膜80を成膜する。上電極膜80は、導電性の高い材料であればよく、アルミニウム、金、ニッケル、白金等の多くの金属や、導電性酸化物等を使用できる。本実施形態では、白金をスパッタリングにより成膜している。
【0072】
次いで、図4(c)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80のみをエッチングして圧電素子300のパターニングを行う。また、本実施形態では、同時に、駆動IC16に対向する領域の弾性膜50を除去することにより、各圧電素子300との接続部となる接続孔51を形成すると共に、圧力発生室12の長手方向のインク連通部13とは反対側の端部近傍の弾性膜50及び下電極膜60をパターニングしてノズル連通孔52を形成する。
【0073】
次に、図4(d)に示すように、リード電極90を流路形成基板10の全面に亘って形成すると共に、各圧電素子300毎にパターニングし、接続孔51を介して、各圧電素子300の上電極膜80と駆動IC16とをそれぞれ電気的に接続する。
【0074】
次に、図5(a)に示すように、流路形成基板10の圧力発生室12とは反対側の面に設けられた保護膜55のリザーバ15となる領域をパターニングにより除去して開口部56を形成すると共に、この開口部56からインク連通部13に達するまで異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、リザーバ15を形成する。なお、本実施形態では、圧電素子300を形成後にリザーバ15を形成するようにしたが、これに限定されず、何れの工程で形成してもよい。
【0075】
その後、図5(b)に示すように、リザーバ15からウェットエッチング又は蒸気によるエッチングによって犠牲層100を除去する。本実施形態では、犠牲層100の材料として、PSGを用いているため、弗酸水溶液によってエッチングした。なお、ポリシリコンを用いた場合には、弗酸及び硝酸の混合水溶液、あるいは水酸化カリウム水溶液によってエッチングすることができる。
【0076】
以上のような工程で、圧力発生室12及び圧電素子300が形成される。
【0077】
このように、本実施形態の構成では、流路形成基板10の一方面側の表層部に圧力発生室12を形成し、他方面側に各圧力発生室12に連通するリザーバ15を形成するようにしたので、圧力発生室12を比較的薄く形成でき、各圧力発生室12を区画する隔壁11の剛性を高めることができると共に、複数の圧力発生室12を高密度に配列することができる。さらに、隔壁11のコンプライアンスが小さくなり、インクの吐出特性が向上する。また、圧力発生室12を形成する際、圧力発生室12の深さをエッチングの時間によって自由に設定できるので隔壁のコンプライアンスを制御でき、且つ製造にかかる時間を減らすことができるので低コスト製造が実現できる。
【0078】
また、流路形成基板10の厚さを比較的厚くできるため、大きなサイズのウェハとしても取り扱いが容易となる。したがって、ウェハ一枚当たりのチップの取り数を増加することができ、製造コストを低減することができる。また、チップサイズを大きくできるので、長尺のヘッドも製造することができる。さらには、流路形成基板の反りの発生も抑えられ、他の部材と接合する際に位置合わせが容易となり、接合後も、圧電素子の特性変化が抑えられてインク吐出特性が安定する。
【0079】
さらには、各圧力発生室12の容積に対して、リザーバ15の容積を十分に大きくすることができ、リザーバ15内のインク自体にコンプライアンスを持たせることができる。したがって、別途、リザーバ15内の圧力変化を吸収するための基板等を設ける必要がなく、構造を簡略化して製造コストを低減することができる。
【0080】
なお、上述のように圧電素子300が形成された弾性膜50及び下電極膜60上には、図1及び図2に示すように、各圧力発生室12とノズル連通孔52を介して連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が設けられている。また、このノズルプレート20は、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態で、その空間を密封可能な圧電素子保持部22が設けられており、圧電素子300は、この圧電素子保持部22内に密封されている。
【0081】
ここで、インク滴吐出圧力をインクに与える圧力発生室12の大きさと、インク滴を吐出するノズル開口21の大きさとは、吐出するインク滴の量、吐出スピード、吐出周波数に応じて最適化される。例えば、1インチ当たり360個のインク滴を記録する場合、ノズル開口21は数十μmの直径で精度よく形成する必要がある。
【0082】
このようなノズルプレート20は、弾性膜50及び下電極膜60上に接着剤等によって固着されるが、その際、弾性膜50及び下電極膜60に形成されたノズル連通孔52の内面がこの接着剤で覆われるようにするのが好ましい。これにより、インク連通孔52の内面が保護され、弾性膜50又は下電極膜60の剥がれ等を防止することができる。
【0083】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、図示しない外部インク供給手段からリザーバ15にインクを取り込み、リザーバ15からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動IC16からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0084】
なお、本実施形態では、インク連通部13及び狭隘部14を介して各圧力発生室12とリザーバ15とを連通するようにしたが、これに限定されず、例えば、図6に示すように、各圧力発生室12とリザーバ15とを直接連通するようにしてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、狭隘部14を圧力発生室12よりも細い幅で形成して、圧力発生室12のインクの流出入を制御するようにしたが、これに限定されず、例えば、図7に示すように、圧力発生室12と同一幅として、深さを調整した狭隘部14Aとしてもよい。
【0086】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの断面図である。
【0087】
本実施形態は、複数層で構成される流路形成基板を用いた例であり、図8に示すように、絶縁層111と、この絶縁層111の両側に設けられた第1及び第2のシリコン層112,113とからなるSOI基板を流路形成基板10Aとして用いた例である。
【0088】
すなわち、第2のシリコン層113よりも膜厚の薄い第1のシリコン層112を絶縁層111に達するまでエッチングして圧力発生室12、インク連通部13及び狭隘部14を形成し、第2のシリコン層113を絶縁層111に達するまでエッチングしてリザーバ15を形成すると共に、絶縁層111のリザーバ15の底面に対応する部分に貫通部111aを形成した以外は、実施形態1と同様である。
【0089】
このような実施形態2の構成においても、勿論実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0090】
(実施形態3)
図9は、実施形態3に係るインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図10は、インクジェット式記録ヘッドの1つの圧力発生室の長手方向における断面構造を示す図及びそのA−A’断面図である。
【0091】
本実施形態は、複数層で構成される流路形成基板を用いた他の例であり、図示するように、流路形成基板10Bは、ポリシリコン層111Aと、このポリシリコン層111Aの両面に設けられた第1及び第2のシリコン層112,113とからなる。
【0092】
この流路形成基板10Bを構成する一方のシリコン層、本実施形態では第1のシリコン層112には、例えば、異方性エッチングすることにより複数の隔壁11により区画された圧力発生室12が幅方向に並設されている。また、各圧力発生室12の長手方向一端部には、インク連通部13が形成され、各圧力発生室12の長手方向一端部とそれぞれ狭隘部14を介して連通している。
【0093】
また、他方のシリコン層、本実施形態では、第2のシリコン層113には、この第2のシリコン層113を厚さ方向に貫通して、インク連通部13に連通するリザーバ15が形成されている。また、ポリシリコン層111Aとの接合面側の圧力発生室12、インク連通部13及び狭隘部14に対向する領域で、且つリザーバ15が連通される部分を除く領域には、ボロンがドーピングされたボロンドープシリコン層113aが形成されている。
【0094】
このような流路形成基板10Bを構成する第1及び第2のシリコン層112,113は、本実施形態では、それぞれ面方位(100)のシリコン単結晶基板からなる。このため、圧力発生室12の幅方向側面12aが、圧電素子300側ほど幅狭となるように傾斜する傾斜面となっており、圧力発生室12内の流路抵抗が抑えられている。
【0095】
一方、これら第1及び第2のシリコン層112,113に挟持されているポリシリコン層111Aには、本実施形態では、所定の領域にボロンをドーピングしたボロンドープポリシリコン層111aが形成されており、このボロンドープポリシリコン層111aにより第1のシリコン層112に形成する圧力発生室12のエッチング選択性を持たせている。すなわち、第1及び第2のシリコン層112,113との間には、実質的にボロンドープポリシリコン層111aのみが挟持されていることになる。なお、このポリシリコン層111Aと第1のシリコン層112との間に酸化シリコン層を設けるようにしてもよく、これにより、高精度なポリシリコン層111Aのエッチング選択性を得ることができる。
【0096】
また、流路形成基板10Bを構成する第1のシリコン層112の表面には、第1のシリコン層112を予め熱酸化することにより形成した保護膜55Aが形成され、この保護膜55A上に、上述の実施形態と同様に、弾性膜50を介して、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80からなる圧電素子300が形成されている。
【0097】
また、流路形成基板10の圧電素子300側、本実施形態では、弾性膜50及び下電極膜60上には、上述の実施形態と同様、ノズルプレート20が接合されている。
【0098】
このような実施形態3の構成においても、勿論、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0099】
なお、本実施形態では、流路形成基板10Bを構成する第1及び第2のシリコン層112,113は、それぞれ面方位(100)のシリコン単結晶基板からなるが、これに限定されず、例えば、面方位(100)と面方位(110)のシリコン単結晶基板であってもよいし、それぞれ面方位(110)のシリコン単結晶基板であってもよい。
【0100】
また、第1及び第2のシリコン層112,113が、それぞれ面方位(110)のシリコン単結晶基板からなる場合には、図11に示すように、圧力発生室12、インク連通部13及び狭隘部14の内側面(12a)は、流路形成基板10Bの表面に対して略垂直な面で形成される。また、この構成の場合、狭隘部14の流路抵抗は、例えば、その幅を調整することにより制御することができる。
【0101】
さらに、圧電素子300を駆動するための駆動ICの形成位置は、特に限定されず、上述の実施形態と同様に、流路形成基板10B又はノズルプレート20に一体的に設けるようにすればよい。
【0102】
(実施形態4)
図12は、実施形態4に係るインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図13は、図12の断面図である。
【0103】
本実施形態は、流路形成基板10として、面方位(100)のシリコン単結晶基板を用い、犠牲層を用いることなく圧力発生室を形成した例であり、図示するように、この流路形成基板10の一方面側には、複数の隔壁11により区画された断面が略三角形状の圧力発生室12が幅方向に並設され、その長手方向一端部近傍には、流路形成基板10をその他方面側から異方性エッチングすることにより、各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ15が形成されている。
【0104】
なお、流路形成基板10上には、弾性膜50を介して下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80からなる圧電素子300が形成されている。また、本実施形態では、弾性膜50は、各圧力発生室12に対向する領域に流路形成基板10側に突出する突出部50aが圧力発生室12の長手方向に沿って形成されている。
【0105】
ここで、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法、特に、流路形成基板10に圧力発生室12を形成するプロセスについて図14及び図15を参照しながら説明する。
【0106】
まず、図14(a)及び(b)に示すように、シリコン単結晶基板からなる流路形成基板10の各圧力発生室12が形成される領域に、圧力発生室12よりも狭い幅で、例えば、深さが約50〜100μmの略長方形の溝部120を形成する。この溝部120の幅は、約0.1〜3μm程度であることが好ましく、本実施形態では、約1μmの幅で形成した。なお、この溝部120の形成方法は、特に限定されず、例えば、ドライエッチング等で形成すればよい。
【0107】
次に、図14(c)及び(d)に示すように、流路形成基板10の両面にそれぞれ、弾性膜50及び保護膜55を形成する。
【0108】
ここで、流路形成基板10の溝部120側に形成される弾性膜50は、その一部は溝部120内に入り込んで形成されるため、弾性膜50の各圧力発生室12に対向する領域には、溝部120と略同形状で流路形成基板10側に突出する突出部50aが形成される。
【0109】
次に、図14(e)及び(f)に示すように、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を順次積層及びパターニングして圧電素子300を形成する。
【0110】
その後、流路形成基板10であるシリコン単結晶基板をアルカリ溶液等により異方性エッチングして、圧力発生室12等を形成する。
【0111】
詳しくは、まず、図15(a)及びそのB−B’断面図である(b)に示すように、各圧力発生室12の長手方向一端部となる領域の下電極膜60及び弾性膜50を除去して、ノズル開口21に連通するノズル連通孔52を形成する。これにより、流路形成基板10の表面及び溝部120の長手方向一端部が露出される。また、同時に、リザーバ15が形成される領域の保護膜55を除去して開口部56を形成する。
【0112】
その後、図15(c)及びそのB−B’断面図である(d)に示すように、ノズル連通孔52を介して流路形成基板10を、例えば、KOH等のアルカリ溶液で異方性エッチングすることにより圧力発生室12を形成する。ここで、異方性エッチングの際、アルカリ溶液は、ノズル連通孔52を介して溝部120に流れ込み、流路形成基板10は、この溝部120から徐々に浸食されて圧力発生室12が形成される。また、流路形成基板10は、結晶面方位(100)のシリコン単結晶基板であるため、圧力発生室12の内側面は、流路形成基板10の表面に対して、約54°傾斜した(111)面で形成される。すなわち、この(111)面は、圧力発生室12の実質的な底面であると共に、異方性エッチングの際のエッチングストップ面となり、圧力発生室12はその横断面が略三角形状となるように形成される。
【0113】
また、このように圧力発生室12等を形成後、図15(e)及びそのC−C’断面図である(f)に示すように、流路形成基板10の圧電素子300とは反対側の面から、保護膜55をマスクとしてエッチングすることにより、すなわち、開口部56を介して流路形成基板10を異方性エッチングすることにより、圧力発生室12に連通するリザーバ15を形成する。
【0114】
このように、本実施形態では、圧力発生室12を横断面が略三角形状となるように形成するようにしたので、各圧力発生室12間の隔壁11の強度が著しく増加する。したがって、圧力発生室12を高密度に配設しても、クロストークが発生することが無く、インク吐出特性を良好に保持することができる。
【0115】
また、流路形成基板10をエッチングによって貫通すること無く圧力発生室12を形成することができるため、本実施形態では、流路形成基板10の厚さを220μm程度としたが、それよりも厚いものであってもよい。したがって、流路形成基板10を形成するウェハを比較的大径としても、容易に取り扱うことができてコストダウンを図ることができる。
【0116】
なお、本実施形態では、弾性膜50の各圧力発生室12に対応する部分に突出部50aが形成されているが、この突出部50aは、例えば、圧力発生室12のエッチングと同時に除去するようにしてもよい。さらに、例えば、図16に示すように、弾性膜50上に、酸化ジルコニウム等からなる第2の弾性膜50Aを設けておき、圧力発生室12を異方性エッチングで形成する際に、圧力発生室12に対向する領域の弾性膜50を完全に除去するようにしてもよい。
【0117】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0118】
例えば、上述の実施形態では、圧電素子300を駆動するための駆動IC16を流路形成基板10に一体的に設けるようにしたが、別途、流路形成基板10の近傍に設け、例えば、ワイヤボンディング等により圧電素子300と電気的に接続するようにしてもよい。
【0119】
また、例えば、上述の実施形態では、流路形成基板10をパターニングして圧力発生室12を形成し、この圧力発生室12に犠牲層100を充填するようにしたが、これに限定されず、例えば、圧力発生室12を形成せずに、所定のマスク等を用いて圧力発生室12が形成される領域に陽極化成法によって多数の微細な孔を柱状に形成、すなわち、ポーラスシリコンを形成し、このポーラスシリコンを犠牲層として用いるようにしてもよい。このように形成した犠牲層も、上述の実施形態と同様に、アルカリ溶液等によって容易に除去することができる。
【0120】
なお、このようなポーラスシリコンを犠牲層として用いる場合には、弾性膜50として、酸化ジルコニウムの代わりに、例えば、窒化シリコン等をCVD法によって成膜することが好ましい。これは、ポーラスシリコンを犠牲層として用いる場合、ジルコニウムの熱酸化を行うと犠牲層も酸化されてしまい、犠牲層の除去が困難になるためである。
【0121】
なお、上述の各実施形態では、成膜及びリソグラフィプロセスを応用して製造される薄膜型のインクジェット式記録ヘッドを例にしたが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のインクジェット式記録ヘッドにも本発明を採用することができる。
【0122】
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図17は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0123】
図17に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0124】
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0125】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、圧力発生室を比較的薄く形成できるため、各圧力発生室を区画する隔壁の剛性を高めることができ、複数の圧力発生室を高密度に配列することができる。
【0126】
また、リザーバが比較的大きい体積で形成されるため、リザーバ内のインク自体にリザーバ内の圧力変化が吸収され、別途、コンプライアンス部を設ける必要がない。したがって、ヘッドの構造を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す図であり、図1の断面図及び平面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドを示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態3に係るインクジェット式記録ヘッドの概略を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態3に係るインクジェット式記録ヘッドを示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係るインクジェット式記録ヘッドの変形例を示す断面図である。
【図12】本発明の実施形態4に係るインクジェット式記録ヘッドの概略を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施形態4に係るインクジェット式記録ヘッドを示す断面図である。
【図14】本発明の実施形態4に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図15】本発明の実施形態4に係るインクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図16】本発明の実施形態4に係るインクジェット式記録ヘッドの変形例を示す断面図である。
【図17】本発明の一実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
【符号の説明】
10 流路形成基板
11 隔壁
12 圧力発生室
13 インク連通部
14 狭隘部
15 リザーバ
16 駆動IC
20 ノズルプレート
21 ノズル開口
50 弾性膜
60 下電極膜
70 圧電体層
80 上電極膜
300 圧電素子

Claims (15)

  1. ノズル開口に連通する圧力発生室が画成される単結晶シリコンからなるシリコン層を有する流路形成基板と、前記圧力発生室の一部を構成する振動板を介して前記圧力発生室に対向する領域に設けられて前記圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子とを具備するインクジェット式記録ヘッドにおいて、
    前記圧力発生室と連通するノズル開口が形成されたノズルプレートに前記圧電素子を保持する圧電素子保持部が設けられ、
    前記圧力発生室が前記流路形成基板の一方面側に当該流路形成基板を貫通することなく形成され、且つ前記圧力発生室にインクを供給するリザーバが前記流路形成基板の他方面側に形成されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  2. 請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記リザーバが前記圧力発生室に直接連通していることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  3. 請求項1又は2に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記シリコン層の一方面側には、前記圧力発生室の長手方向一端部に連通するインク連通路が形成され、前記リザーバが、前記インク連通路に連通されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  4. 請求項3に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記インク連通路が前記圧力発生室毎に設けられていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  5. 請求項3に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記インク連通路が前記圧力発生室の並設方向に亘って連続的に設けられていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記圧力発生室の前記リザーバとは反対側の長手方向端部側に、前記圧力発生室と前記ノズル開口とを連通するノズル連通路が設けられていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  7. 請求項6に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記ノズル連通路が、前記振動板を除去することにより形成されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  8. 請求項6又は7に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記ノズル連通路の内面が、接着剤で覆われていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記流路形成基板が、前記シリコン層のみからなることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  10. 請求項1〜8の何れか一項に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記流路形成基板が、絶縁体層の両面にシリコン層を有するSOI基板からなり、前記圧力発生室が前記SOI基板を構成する一方のシリコン層に形成され、前記リザーバが他方のシリコン層に形成されていることを特徴するインクジェット式記録ヘッド。
  11. 請求項1〜8の何れか一項に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記流路形成基板が少なくともボロンドープポリシリコン層の両面にシリコン層を有する基板であり、前記圧力発生室が一方のシリコン層及び前記ボロンドープポリシリコン層に形成されると共に当該圧力発生室の他方面が他方のシリコン層で構成され、前記リザーバが前記他方のシリコン層に形成されていることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  12. 請求項1〜11の何れか一項に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記シリコン層の面方位が、(100)面であることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  13. 請求項12に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記圧力発生室の横断面が略三角形状を有することを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  14. 請求項1〜13の何れか一項に記載のインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記圧力発生室が異方性エッチングにより形成され、前記振動板及び前記圧電素子を構成する各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されたものであることを特徴とするインクジェット式記録ヘッド。
  15. 請求項1〜14の何れか一項に記載のインクジェット式記録ヘッドを具備することを特徴とするインクジェット式記録装置。
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