JP3751542B2 - 誘導ブリュアン散乱を抑圧するために偏波多重化を用いる光ファイバ伝送システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導ブリュアン散乱(SBS)の低い光ファイバ伝送システム、より詳細には、SBSの影響を低減するためにポンプ信号に偏波多重化を施すことに関する。
【0002】
【従来の技術】
長距離光ファイバ伝送システムにおいては、通信システムのコストの増加に結びつく中継器や増幅器などの追加の要素を必要とすることなく光波信号を伝送できるように、可能な限り高い光電力にて発射することが望まれる。ただし、高電力と狭ライン幅の光源を低損失のシングルモード伝送ファイバと組み合わせて用いた場合、信号の劣化とビット誤り率の増加を来し、従来は取るに足らないと考えられていた様々な非線形ファイバと関連する現象の顕在化を招く恐れがある。これら非線形現象には、誘導ブリュアン散乱(SBS)、誘導ラマン散乱、自己位相変調などが含まれ、加えて、一つあるいは複数の光チャネルが伴う場合は、クロス位相(混)変調や4波混合などの問題も発生する。
【0003】
あるファイバ内での誘導ブリュアン散乱(SBS)は、音響波によって引き起こされる局所的な屈折率の変動によって光子が散乱される結果として起こる。局所的な屈折率の変動は、とりわけ、ファイバコアを構成するガラス格子内の超音波振動によって引き起こされる。さらに、屈折率は非線形領域における光の強度に依存するために、ファイバ内の強い光が存在は格子振動が引き起こし、この格子振動のために音波が誘導され、これが光が一層散乱させ、終局的には、("ポンプ"信号と呼ばれる)強度の強い順方向伝搬信号からの光が、逆方向に伝搬する信号、すなわち"Stokes(ストークス)"信号に対して利得を与えることとなる。このシナリオが誘導ブリュアン散乱(SBS)に対する従来の説明である。SBS閾値電力(PSBSとして表記される)は、逆方向ストークス信号(PStokes)の電力がファイバ入力の所の入力光ポンプ信号電力(Ppump)のレベルと等しくなる入力光ポンプ信号電力(Ppump)のレベルとして任意的に定義される。SBS閾値電力はファイバに沿って伝搬する光のライン幅に比例して増加する。この理由により、SBSが与える悪影響に関しては、狭いライン幅のレーザ源が導入されるまでは殆ど問題とならなかった。ただし、今日、狭いライン幅のレーザ源が容易に入手できるようになったこと、および将来の光ファイバ伝送システムにおいては狭いライン幅のレーザが光源として選択される可能性が高いことを考えると、誘導ブリュアン散乱(SBS)が信号の劣化に比較的低い入力電力レベルにおいても大きく寄与することが考えられる。
【0004】
今日に至るまで、光伝送システムにおける誘導ブリュアン散乱(SBS)を抑圧するための様々な技法が提唱されている。これら技法は、概ね、(1)SBSを低減するためにファイバ媒体を修正する技法と、(2)ライン幅を変えるために レーザ源を修正する技法の2つの大きなカテゴリーに分類される。第一のカテゴリーにおいては、ファイバの長さ方向に沿って屈折率(および音響速度)が操作され、ファイバに沿ってのブリュアン利得プロフィルに変動が与えられる。この変動によって利得が小さなバンド幅内に累積されることが回避され、結果として、より広い利得プロフィルと高いSBS閾値が達成される。ただし、このファイバを修正するアプローチは、以下の理由から実用的ではない。つまり、これら効果をファイバ内にファイバが製造される際に組み込むことは比較的困難であり、さらに重要なことに、既に布設されている光ファイバ網にSBSを低減する目的でこのアプローチを広範囲に渡って適用すること(屈折率分布を埋め込むこと)は不可能である。
【0005】
誘導ブリュアン散乱(SBS)のレベルを抑圧するためにレーザ源を修正するためのもう一方のアプローチは、より現実的であり、現存の光ファイバシステム内で用いることもできる。この技法は、変調を介してレーザのライン幅を広げると言う特許に基づく。1994年7月12日付けでD.A.Fishmanらに交付された合衆国特許第5,329,396号は、ライン幅を広げるためにFM変調をレーザバイアス電流に印加する従来の技術によるアレンジメント(方法および装置)を開示する。この直接FMアプローチは、ディザー信号を用いることで、比較的大きな(例えば、10 GHzのオーダの)周波数逸脱を得る。この技法により、SBS閾値は15 dBほど増加される。ただし、FM信号をレーザバイアス電流に印加するやり方では、かなりのAM("残留AM"として定義される)も生成され、これによってシステムの性能が劣化されることが見つかっている。別のやり方として、外部位相変調(PM)を用いてレーザのライン幅を広げることもできる。1992年12月24日付けでD.Huberらに交付された合衆国特許第5,166,821号はこのタイプのPM技法を開示する。ただし、この外部PM技法は、光伝送システムにおいては、典型的にはレーザ源のライン幅が過剰に増加することに起因して信号の分散特性の劣化を招く。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、当分野においては、光伝送システム内に他のタイプの信号劣化を持ち込むことなく、誘導ブリュアン散乱(SBS)を低減することができるアレンジメント(方法/装置/配列)に対する必要性が存在する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
当分野において残されている必要性が本発明によって解決されるが、本発明は、誘導ブリュアン散乱(SBS)の低い光ファイバ伝送システム、より詳細には、SBSの影響を低減するためにポンプ信号の偏波多重化を用いることに関する。
【0008】
本発明によると、レーザ光出力は("S"および"P"と呼ばれる)直交する偏波に分割され、2つの異なる信号路に沿って伝搬される。一方の信号路に沿ってはこれら信号間のコヒーレンス性を破るために時間遅延(τ)が導入される。さらに、一方の偏波は、他方の偏波に対して(Δf)だけ周波数シフトされる。一つの好ましい実施例においては、周波数シフトを導入するために音響光変調器(AOM)が用いられる。その後、これら2つのインコヒーレント、かつ、周波数シフトされた直交信号は再結合され、共通の信号路に送られる。誘導ブリュアン散乱(SBS)は偏波に依存する現象であるために、上述のように光信号を分割することで、各偏波に存在する誘導ブリュアン散乱(SBS)を大幅に低減することができる。
【0009】
本発明のアレンジメント(方法/装置/配列)もう一つの長所は光システム内の様々な他の偏波に依存する現象(例えば、偏波依存損失、空間ホールバーニング)も低減されることである。
【0010】
本発明の一つの好ましい実施例においては、偏波多重化が誘導ブリュアン散乱(SBS)をより一層低減するために、従来の技術によるFMおよびPM SBS低減技法の一方あるいは両方と合わせて用いられる。
【0011】
本発明の他の様々な特徴および長所が以下の説明を図面を参照しながら読むことで一層明らかになるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の教示に従って構成された一例としての偏波多重化光入力信号装置10を示す。装置10は、レーザ源12を備えるが、これは、従来の任意のタイプの半導体レーザ(例えば、分布帰還(DFB)レーザ)とすることができ、波長は、所望の光通信ウインドウ、例えば、1300nmあるいは1500nm内に選択される。レーザ源12からの光信号Oは、その後、入力として電力分割要素14(例えば、偏波ビームスプリッタあるいはカップラ)に加えられ、電力分割要素14によって光信号Oは、図1においてSおよびPとして示される互いに直交する成分に分割される。これら直交成分は、ここから別個の信号路16、18上に発射される。図1に示す特定の実施例においては、S成分は信号路16に結合され、P成分は信号路18に結合される。信号路16、18には、偏波維持光ファイバ、インテグレーテッド導波路、その他の偏波光信号の伝搬をサポートするために適する任意の他の媒体を用いることができる。その後、これら偏波成分の一つ(説明の実施例においてはS成分)は遅延素子20に通され、これら成分の一つにΔτDとして表される所定の遅延が導入され、これによってS成分とP成分との間の(時間における)コヒーレンス(性)が破られる。信号路として光ファイバが用いられる場合は、遅延素子20は単に追加の長さLの光ファイバから構成することができる。
【0013】
残りの偏波信号成分、つまり、説明の実施例においてはP成分は、入力として周波数シフトデバイス22、つまり、説明の実施例においては音響光変調器(AOM)に加えられる。外部RF源24を用いて周波数シフト信号rfが音響光変調器(AOM)22に供給され、この結果として所定の周波数シフトΔfが偏波成分P上に印加される。その後、時間遅延された成分Sと周波数シフトされた成分Pは、別個の入力として偏波ビーム結合器26に加えられる。偏波ビーム結合器26は、これら信号を結合し、これらを光入力信号装置10の出力として出力信号路28に提供する。
【0014】
こうして、本発明によると時間領域におけるインコヒーレンス性と周波数領域におけるシフトの両方が導入され、結果として、各偏波(これらは互いに独立にとどまる)に対するブリュアン(Brilloiun)閾値が著しく増加される。加えて、本発明の偏波多重化技法によると、入力信号の"偏波解消(depolarization)"を提供され、結果として、様々な他の偏波依存障害(例えば、偏波依存損失および偏波ホールバーニング)も低減される。
【0015】
図2は図1の装置10に対する強度変動を時間および周波数の関数として示す。より詳細には、図2Aは、直交するS成分(方向)とP成分(方向)に沿っての強度の分離と、遅延素子20によって信号成分Sに導入される時間遅延ΔτDを示す。図2Bは、信号強度の周波数領域の線図であり、音響光変調器(AOM)22によって達成されるS成分とP成分との間の特定の周波数シフトΔfを示す。
【0016】
上述のように、本発明の偏波多重化技法は、より大きなSBS抑圧を達成するために、従来の技術によるFM技法とPM技法のいずれかと組み合わせて用いることもできる。図3は、本発明のもう一つの実施例を示す。この実施例においては、図1に示す偏波マルチプレクサ(装置)10が、FM技法あるいはPM技法のいずれかを行なうための前置マルチプレクサ要素30と組み合わせて用いられる(図3においては、位相変調要素(PM)は周波数変調要素(FM)に対する代替であることを示すために点線にて示される)。図3においては、レーザ源12は直接にFM源32に結合され、FM源32によってディザー信号dがレーザバイアス(電流)に印加される。一つの実施例においては、ディザー信号dは、約100MHzの周波数の50mV正弦波とされる。ディザー信号dの存在はより大きな周波数逸脱を与え、SBS閾値を追加の15dBだけ増加させる。代替として、位相変調要素(前置マルチプレクサ要素30)を、電気光変調器(EOM)34、例えば、マッハツェンダー干渉計と外部ドライブ源36から構成することもできる。この代替実施例においては、ドライブ源36を用いてrfとして表されるRF信号を供給することで、電気光変調器(EOM)34内での位相変調が制御される。このような位相変調要素によって提供されるライン幅の拡幅は、RF信号の周波数と変調指数の両方に比例し、これも15dBのオーダであることが知られている。FM技法あるいはPM技法のいずれが用いられる場合も、その後、レーザ出力は入力として電力分割要素14に加えられ、その後、この信号は図1との関連で上で説明したのと同一のやり方にて処理される。
【0017】
図4のグラフは、これら技法を用いることによるレーザ閾値の改善を示す。より具体的には、図4は、各入力に対して、後方散乱(SBS閾値)電力を入力電力の関数として示す。"線形"偏波のプロットAとBは、本発明の偏波抑圧装置を利用しない装置に対応し、より具体的には、プロットAは従来の技術による(CW)装置と関連し、プロットBはFMディザーを含む装置と関連する。さらに、偏波多重化とインコヒーレンスを利用したときの(つまり、時間遅延は導入されるが周波数シフトは行なわれないときの)結果についても、CWとFMの両方の場合(それぞれプロットCとD)に対して示される。図から本発明による偏波多重化と時間遅延を用いた場合、各プロットについてSBS閾値が約1dBだけ増加することがわかる。さらに、周波数シフトを追加した場合(プロットEとF)は、SBS閾値電力レベルが3dBだけ増加することもわかる。
【0018】
図5および図6は、従来の技術と本発明の両方の様々な形態によって達成されるSBSスペクトルを示す。より具体的には、図5は、以下のセットの条件下、つまり:(a)従来のレーザ源;(b)本発明による時間遅延を含む"偏波解消"光源;および(c)本発明による時間遅延と周波数シフトの両方を含む"偏波解消"光源を用いた場合のセットのSBSスペクトルを示す。ここで、条件(c)に対するプロットは、コリニア(同一直線上を進む)信号に対して得られたものである(コリニア性は偏波ビーム結合器26を従来の3dBカップラと置換し、偏波を平行となるように調節することで達成される)。本発明と関連する両方のケースにおいて(プロット(b)と(c))、SBSスペクトルは、現在余分な周波数成分を含み、この結果として送信機配列のSBS閾値が上がることがわかる。同様に、図6は、FMディザーがレーザ源に印加されたときのSBSスペクトルを示す。図からディザリングの結果、より多数の周波数成分がSBSスペクトルに追加され、SBS閾値がさらに上がることがわかる。
【0019】
図7は本発明のもう一つの実施例40を示す。この実施例においては、レーザ源12からの出力光信号Oが3dBカップラ42を用いて、図7においてO1とO2として表されている2つの概ね等しい電力成分に分割される。図1との関連で説明した前の実施例と同様に、一つの成分(ここではO1)は、時間遅延ΔτDを受け、残りの成分(O2)は音響光変調器(AOM)22によって所定の量だけ周波数シフトされる。この実施例においては、さらに、装置40の各アームにペアの電気光変調器(EOM)44、46が配置され、この電気光変調器(EOM)44、46が、レーザ源12に供給されるバイアス電流にデータDを直接に印加する代わりに、送信機に入力データ流を供給するために用いられる。一つの実施例においては、データ信号Dとその補数D’が、入力として、それぞれ、電気光変調器(EOM)44と46に加えられる。別のやり方として、この構成を用いて、2つの異なるデータ流D1とD2を同時に送信することもできる。これら信号間の直交性が、図7に示すように、一方の信号路内に偏波回転子デバイス48を設けることで達成され、その後、これら2つの偏波された成分が偏波ビーム結合器26を用いて再結合され、これによって装置40の出力が形成される。
【0020】
図8は、図7に示す装置40に対する強度変動を時間および周波数の関数として示す様々なグラフから成る。より具体的には、図8Aは一方の成分が偏波回転子デバイス48を通った後の2つの信号成分に対する強度変動を時間の関数として示す。電気光変調器(EOM)44、46が、同一の(相補)データにて駆動される場合は、一方の偏波状態(SOP)が"オン"であるとき、他方は"オフ"となる。この装置は、こうして、ある任意に時間において同一の量の光電力が存在することを確保する。本発明によると、図8Aに示すような時間遅延ΔτDが導入されるが、この遅延によってこれら2つのデータ流間のコヒーレンス(性)が破られる。図8Bは、この装置に対する可能な強度変動を示すが、結果としての電力は時間の関数として0と2Pとの間で変動することがわかる。図8Cは、周波数領域における強度変動を示すが、2つの"偏波解消"信号(depolarized signals)が周波数領域において音響光変調器(AOM )22によって導入される所定のシフトΔfだけ分離される様子も示される。
【0021】
図9は、本発明のもう一つの実施例50を示す。前の実施例と同様に、レーザ源12からの光出力Oを偏波ビーム分割器14に通すことで、直交成分SとPが形成され、その後、成分Sには、時間遅延ΔτDが導入される。その後、これら2つの成分は、別個の入力として音響光変調器(AOM)52に加えられる。音響光変調器(AOM)52は、外部RF源54によって駆動され、外部RF源54はデータ源56によって制御される。より具体的には、音響光変調器(AOM)52は、データ源56からの信号が第一の状態(例えば、論理"1")にあるときは出力として時間遅延された成分Sを供給し、データ源56からの信号が第二の状態(例えば、論理"0")にあるときは出力として成分Pを供給するような位置となるように制御され、音響光変調器(AOM)52のこの動作によってこれら成分の間に位相シフトが印加される。
【0022】
図10に示すような装置を用いることで追加のスペクトルの拡幅を実現することが可能である。図10の実施例においては、光源60はレーザ源12を備え、レーザ源12からの光出力Oは、最初に3dBカップラ62を用いて、O1およびO2として表される2つの(概ね等しい)成分に分割される。その後、出力信号O1を入力として第一の偏波ビーム分割器64に加えることで、直交成分S1とP1が形成される。同様にして、信号O2を入力として第二の偏波ビーム分割器66に加えることで、直交成分S2とP2が形成される。これら成分S1とP2は、その後、上述と同様なやり方にて処理される。つまり、第一の遅延素子68と音響光変調器(AOM)70を用いて、これら成分の間にインコヒーレンスと周波数シフトの両方が導入される。その後、これら成分は偏波ビーム結合器72にて再結合され、信号路74に沿って第一の出力として供給される。
【0023】
この特定の実施例においては、図10に示すように、成分S2とP2も両方とも時間遅延される。ここで、成分S2は第二の遅延素子76に通され、成分P2は第三の遅延素子78に通される。各時間遅延ΔτD1、ΔτD2およびΔτD3の実際の値は、互いに少ずつ異なり、各成分が全ての他の成分に対してインコヒーレントとなることが確保されるように選択される。さらに、異なる追加の周波数シフトを与えるために、ペアの音響光変調器(AOM)80と82を用いて成分S2とP2に各成分に対して必要とされる異なる周波数シフトが与えられる。時間遅延され、周波数シフトされた成分S2とS2は、その後、偏波ビーム結合器84を用いて再結合され、入力として信号路86に加えられる。図10に示すように、信号路74、86に沿って伝搬するこれら成分を、入力としてカップラ88に加えることで、装置60からの最終的な出力信号が形成される。
【0024】
図11は、図10の装置60によって得られる信号のスペクトル電力密度の分布を偏波状態の関数として示す。より具体的には、この線図は各音響光変調器(AOM)70、80および82によって導入される一意な周波シフトを示す。
【0025】
図12は、本発明のもう一つの実施例90を示す。この実施例においては、光信号に偏波ダイバシティと周波数ディザリングの両方を与えるために別個の偏波変調器90が用いられる。前述と同様に、レーザ源12を用いて、光出力信号Oが生成される。外部変調器94が偏波変調器92に結合され、これによって偏波変調器92からの出力の偏波状態が制御される。この構成においては、変調器94が第一の値(例えば、論理"1")を偏波変調器92に送信した場合、出力はS−偏波された信号となり、変調器94が第二の値(例えば、論理"0")を偏波変調器92に送信した場合は、出力はP−偏波された信号となる。偏波変調器92からの出力は、その後、入力として、偏波ビーム分割器96に送られる。偏波ビーム分割器96は、S成分は第一の信号路98に向け、P成分は第二の信号路100に向ける。これら2つの成分の間のコヒーレンスは、第一の信号路98内に遅延素子102を設けることで破られる。上述の他の実施例と同様に、これら成分間の周波数シフトはP−偏波信号路100内に挿入された音響光変調器(AOM )104によって導入される。その後、S成分とP成分を、偏波ビーム結合器106内で結合することで、最終的な偏波多重化された出力信号が形成される。
【0026】
上述の様々な実施例は単に一例であり、本発明から逸脱することなく、誘導ブリュアン散乱(SBS)を抑圧するために、光伝送信号上に偏波多重化を施すための他の多くの構成を考案することが可能である。さらに、上述のように、本発明の考え得る様々な装置は、離散コンポーネントとして(例えば、信号路としての光ファイバとして)実現することも、一体化された配列として(例えば、光導波路を用いて)実現することも、さらには、離散コンポーネントと一体化コンポーネントの両方のコンポーネントを用いるハイブリッドタイプの装置として実現することも可能である。要するに、本発明の精神はクレームの範囲によってのみ制限されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による誘導ブリュアン散乱(SBS)を低減するための一例としての偏波多重化光送信機を示す図である。
【図2A】図1に示す本発明による装置に対する強度変動の時間および周波数関数のグラフを示す図である。
【図2B】図1に示す本発明による装置に対する強度変動の時間および周波数関数のグラフを示す図である。
【図3】本発明による偏波多重化スキームを従来の技術によるSBS抑圧技法と合わせて用いる本発明のもう一つの実施例を示す図である。
【図4】様々な従来の技術による技法および本発明による装置についてのSBS閾値対入力電力の関数のグラフを示す図である。
【図5】従来の技術によるCW信号と本発明による偏波多重化を合わせて用いる代替の装置についてのSBSスペクトル対周波数の関数をグラフにて示す図である。
【図6】周波数ディザリングと本発明による偏波多重化技法を用いる構成についてのSBSスペクトルのグラフを示す図である。
【図7】遅延素子と音響光変調器(AOM)を(各アーム内に配置された別個のペアの電気光変調器(EOM)とともに用いる本発明のもう一つの実施例を示す図である。
【図8A】図7の構成に対する強度変動を時間および周波数の関数として示す図である。
【図8B】図7の構成に対する強度変動を時間および周波数の関数として示す図である。
【図8C】図7の構成に対する強度変動を時間および周波数の関数として示す図である。
【図9】両方の偏波状態に応答してスイッチ可能な音響光変調器(AOM)を用いて出力信号の偏波状態を制御する本発明のもう一つの実施例を示す図である。
【図10】入力信号が最初に2つの成分に分割され、各成分が別個に偏波多重化される本発明のもう一つの実施例を示す図である。
【図11】図10の構成についての信号強度対周波数の関数のグラフを示す図である。
【図12】レーザ源の出力に結合された偏波変調器を用いて送信機からの光出力信号の偏波状態を制御する本発明のもう一つの実施例を示す図である。
【符号の説明】
10 偏波多重光入力信号装置
12 レーザ源
14 電力分割要素
20 遅延素子
22 音響光変調器(AOM)
24 外部RF源
26 偏波ビーム結合器
44、46 電気光変調器(EOM)
48 偏波回転子デバイス
62 カップラ
64 偏波ビーム分割器
72 偏波ビーム結合器
Claims (10)
- 光伝送システムにおける誘導ブリュアン散乱を抑圧するための方法であって、この方法が:
a)光信号Oを生成するためのレーザ源を設けるステップ;
b)光信号を第一および第二の直交偏波状態(の信号成分)に分割するステップ;
c)第一の直交偏波状態に時間遅延を導入するステップ;
d)第二の直交偏波状態に周波数シフトを導入するステップ;
e)時間遅延された第一と周波数シフトされた第二の直交偏波状態(の信号成分)を結合することで、ライン幅の増加された偏波多重化光信号を形成するステップ;および
f)前記偏波多重化光信号を光伝送システムの出力ファイバに結合するステップから構成されることを特徴とする方法。 - 前記ステップa)の遂行において、この方法がさらに:
1)光出力信号のライン幅をさらに増加するために前記レーザ源をFMディザー信号にて直接に変調するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。 - 前記ステップa)の遂行において、この方法がさらに:
1)光出力信号のライン幅をさらに増加するために前記レーザ源からの出力光信号を位相変調するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。 - 前記ステップb)の遂行において、この方法がさらに:
1)光出力信号のライン幅をさらに増加するために前記レーザ源をFMディザー信号にて直接に変調するステップ;および
2)光出力信号のライン幅をさらに増加するために前記レーザ源からの出力光信号を位相変調するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。 - 前記ステップc)の遂行において、時間遅延を導入するために所定の長さの追加の光ファイバが用いられることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記ステップd)の遂行において、周波数シフトを導入するために音響光変調器(AOM)が用いられることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 光信号を光ファイバを通じて伝送するための装置であって、この装置が:
光出力信号を供給するためのレーザ源;
前記レーザ源に結合された、前記光出力信号を第一および第二の直角に偏波された成分に分割するため、および前記直角に偏波された成分を別個の第一と第二の信号路に結合するための偏波ビーム分割器;
前記第一の信号路に結合された、第一の偏波成分に所定の時間遅延を導入するための遅延素子;
前記第二の信号路に結合された、第二の偏波成分に所定の周波数シフトを導入するための周波数シフト要素;および
前記時間遅延された第一の偏波成分と前記周波数シフトされた第二の偏波成分を結合するために偏波ビーム結合器から構成されることを特徴とする装置。 - 前記遅延素子が所定の長さの光ファイバから構成されることを特徴とする請求項7記載の装置。
- 前記周波数シフト要素が音響光変調器(AOM)から構成されることを特徴とする請求項7記載の装置。
- さらに:
前記レーザ源に結合された、前記光出力信号に周波数ディザー信号を印加するためのFM変調器;および
前記レーザ源からの出力に結合された、前記光出力信号に位相変調を導入するための電気光変調器(EOM)を備えることを特徴とする請求項7記載の装置。
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