JP3751331B2 - プレート式熱交換器のプレート構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、プレート式熱交換器で使用されるプレートの構造に関し、詳しくは当該プレートに流体分散用として形成された三角堰の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
プレート式熱交換器は、図4に示すプレート(1)を複数枚積層し、各プレート(1)の表裏面に高温流体と低温流体とを流すことにより、両流体間で熱交換を行なうものである。このプレート(1)において伝熱機能を奏するのは、主としてプレート(1)の上下に形成された三角堰と呼ばれる部分(2)と、この三角堰(2)の間に形成された伝熱面と呼ばれる部分(3)とである。三角堰(2)は、二重に配置したガスケットからなる二重シール部(5)によって一方の通路孔(9)から遮蔽されると共に、導入部(11)を介して他方の通路孔(10)に連通している。
【0003】
三角堰(2)は、図5(a)(b)に示すように、二重シール部(5)との境界線(6)と、導入部(11)との境界線(8)と、伝熱面(3)との境界線(7)とにより区画されたもので、通常は、その外径形状は左右対称に形成される。三角堰(2)と、二重シール部(5)及び導入部(11)との境界線(6)(8)は、一般に異なる傾きを持つ複数の直線の組み合わせや(同図(a)参照)、直線と円弧の組み合わせ(同図(b)参照)等とされている。
【0004】
三角堰(2)や伝熱面(3)のそれぞれの形状は、プレートの性能、具体的には伝熱係数や圧力損失等に大きな影響を与える。プレートの性能を最大限引き出すためには、伝熱面(3)での流れを偏流させることなくいかに均一に分散させるかが大きなポイントとなるが、そのような役割を担っているのが三角堰(2)である。この三角堰(2)は、一方の流体流入孔(10)から導入部(11)を介して流れこんできた流体を伝熱面(3)に流す前に略水平方向に案内して分散させるものであり、特に大型(幅の広い)プレートにおいては、必要不可欠なものである。
【0005】
この三角堰(2)には、図6(a)に示すビード状の突起(13)や同図(b)に示す小判状の突起(14)で複数の流体流路(15)が形成される。流体流路(15)の形成にあたり、ビード状突起(13)を使用するか小判状突起(14)を使用するかは、必要とされるプレート特性(圧力損失等)に応じて決定され、例えば、圧力損失を重視する場合等には、小判状突起(14)が使用される。
【0006】
この他、三角堰(2)はプレート(1)の耐圧性(シール性)を確保する上でも重要な役割を担っている。すでに述べたように、三角堰(2)には、二重シール部(5)に隣接する部分があり、しかもこの隣接部分は二重シール部(5)の内周側(伝熱面側)のガスケット(16)に近接している。このような点から、三角堰(2)の二重シール部(5)との隣接部分では、図7(a)に示すように、流体流路を形成せずにガスケット(16)に沿ってシール強化部(17:ハッチングで示す)を設け、流体の分散効果よりむしろシール効果を重視した構造としている。シール強化部(17)は、同図(b)に示すように、ガスケット(16)の一方側にこれに密着する複数のシール用突起(18)を間欠あるいは連続形成したもので、このシール用突起(18)と、その対向側に間欠あるいは連続形成した突起(19)とでガスケット(16)を両側から挾持することにより、ガスケット(16)の位置ずれを防止している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、三角堰の構造としてビード状突起(13)を使用する場合は、図6(a)に示すように、三角堰(2)と伝熱面(3)との境界線(A)を水平にしても特に問題は生じない。これに対し、小判状突起(14)を使用する場合には、同図(b)に示すように、当該境界線(A)を水平にすることはできず、境界線(A)が伝熱面側に張り出したV字型となって伝熱面(3)の面積が大きく減少する点が問題となる。以下、この問題点を、異なる傾きを持つ複数の直線を境界線とした三角堰(図5(a)参照)を例に挙げて説明する。
【0008】
小判状突起(14)は、プレート強度、分散効果、さらには加工面から考えると、図8に示すように、整然と配列するのが望ましい。図において、直線▲1▼、▲1▼’、▲2▼、▲2▼’は、三角堰(2)と、二重シール部(5)及び導入部(11)との境界線である。境界線▲1▼、▲1▼’は等しい傾斜角度θ1を持ち、境界線▲2▼、▲2▼’も等しい傾斜角度θ2を持つが、境界線▲1▼、▲2▼と、境界線▲1▼’、▲2▼’の傾斜角度はそれぞれ異なっている(θ1≠θ2)。各境界線▲1▼、▲1▼’、▲2▼、▲2▼’には多数の平行線が等間隔に描かれており、この平行線の各交点上に小判状突起(14)が形成される(図面では、一部の小判状突起のみを図示している)。
【0009】
境界線▲1▼の平行線と境界線▲1▼’の平行線との各交点は、θ1=θ1であることから、水平な直線L1上に位置する。その一方、境界線▲2▼の平行線と境界線▲1▼’の平行線との交点や、境界線▲1▼の平行線と境界線▲2▼’の平行線との交点は、θ1≠θ2であることから、傾斜した直線L2上に位置することとなる。ちなみに、傾斜直線L2の水平線に対する傾斜角αを求めると、α=(θ2−θ1)/2となる。
【0010】
この場合において、三角堰(2)と伝熱面(3)との境界線Aを図6(a)と同様に水平線とすると、境界線Aと交差する小判状突起(14)を除去してこの部分をフラットにしなければならず、そのため、各流路の末端にフラットな部分が形成されることとなるが、このようなフラット部は液圧により変形しやすいためにプレート剛性の点で好ましくない。そこで、従来では、伝熱面(3)との境界線Aを、境界線▲2▼の平行線と境界線▲1▼’の平行線との交点を結んだ線(a)と、境界線▲1▼の平行線と平行線▲2▼’の平行線との交点を結んだ線(b)とで形成し、これにより、各流路末端の小判状突起(14)の位置を揃えてプレート剛性の均一化を図っている(もちろん線(a)(b)と平行であれば(a)(b)の上あるいは下にずれた線で境界線Aを形成してもよい)。このような点から、従来では、境界線Aを伝熱面(3)側に張り出したV字型とせざるを得ず、そのため、伝熱面積の減少による伝熱性能の低下が問題となっていた。
【0011】
その一方で、伝熱面積の減少のみを回避するのであれば、図9に示すように、伝熱面(3)との境界線(A)を伝熱面から離隔する方向に後退させれば十分である(もとの境界線(A')を二点鎖線で示す)。ところが、この場合には、同時にシール強化部(17)の長さも短くなり、その結果、伝熱面(3)が直接二重シール部(5)に接触する部分(20)が生じるので、この部分(20)でのガスケット(16)の拘束力が低下し、ガスケット(16)の位置ずれ等によるシール性の悪化が懸念される。また、伝熱面(3)の両端部に三角堰(2)の流体流路が到達していないため、流体の分散効果も全体的に悪化する。
【0012】
以上の問題点は、三角堰(2)と二重シール部(5)との境界線を、直線と円弧を組み合わせたもの(図5(b)参照)とした場合にも同様に生じる。
【0013】
そこで、本発明は、三角堰の流体流路を小判状突起で形成した場合において、、シール性の低下を抑制しつつ伝熱面の面積を広く確保することのできるプレート構造の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的の達成のため、本発明では、二種類の流体が個別に流れる一対の通路孔と、伝熱面と、二重シール部によって一方の通路孔から遮蔽されると共に、導入部を介して他方の通路孔と連通し、その表面に突起を整列配置して複数の流体流路を形成してなり、二重シール部および導入部に対する境界線がそれぞれ傾斜した三角堰とを具備し、導入部から供給された流体を三角堰で伝熱面に分散供給するものにおいて、
【0015】
三角堰の両端部に、二重シール部との境界線に沿って一定幅で延びるシール側突出部、及び、導入部との境界線に沿って一定幅で延びる導入側突出部を設けた。
【0016】
【作用】
図10に示すように、三角堰(40)に、二重シール部(36)との境界線(C)、及び、導入部( 37 )との境界線(D)のそれぞれに沿って一定幅で延びるシール側突出部( 40 b)および導入側突出部( 40 c)を設けると、三角堰(40)と伝熱面(41)との境界線(B)が鋸歯状となる。この時の境界線(B)の中央部の水平線に対する傾斜角度αは、従来品(破線で示す)と同様に、α=(θ2−θ1)/2である。その結果、三角堰(40)と伝熱面(41)との境界線Bを伝熱面(41)から離隔する方向に後退させることができるので、伝熱面(41)の面積を増大させることができる。その一方で、三角堰(40)と二重シール部(36)の境界線(C)、及び、三角堰(40)と導入部(37)との境界線(D)は、従来品と同寸法に維持されるので、シール強化部の長さを従来品と同程度に保持することができ、その結果、伝熱面(41)が二重シール部(36)に直接接触することもない。また、この部分に小判状突起を設けて流体流路を形成すれば、伝熱面(41)の両端部にも流体を確実に分散供給することが可能となる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図1乃至図3に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、矩形状をなすプレート(31)の四隅部に設けられた通路孔のうち上方に位置する二つの通路孔(32)(33)には、熱交換を行なう二種類の流体がそれぞれ流通する。一方の通路孔(32)の外周部は、二重に配置したガスケット(35a)(35b)からなる二重シール部(36)によってシールされている。そのため、この通路孔(32)を流れる一方の流体が伝熱面(41)に流れこむことはない。他方の流通孔(33)は、導入部(37)を介して三角堰(40)と連通しており、この通路孔(33)から三角堰(40)に流れこんだ他方の流体は、三角堰(40)によって略水平方向に分散された後に伝熱面(41)に流入する。
【0019】
このプレート(31)と、これを180°反転させたプレートとを、その間にガスケット(35)を挟んで交互に積み重ねることにより、プレート式熱交換器が組み立てられる。
【0020】
三角堰(40)と伝熱面(41)との境界線(B)のうち、その両端部には、三角堰(40)と二重シール部(36)との境界線(C)、及び、三角堰(40)と導入部(37)との境界線(D)のそれぞれの側端部から中心側にかけての部分に対して一定の間隔を保持する後退部(46)が設けられる。三角堰(40)と伝熱面(41)との境界線(B)の中央部分は、従来品と同様の傾きαとされる(α=(θ2− θ1)/2)。これにより、境界線(B)が鋸歯状となり、三角堰(40)には四角形状の本体部(40a)と、二重シール部(36)に沿って延びるシール側突出部(40b)と、導入部(37)に沿って延びる導入側突出部(40c)とが形成される。
【0021】
このような三角堰(40)であれば、三角堰(40)と伝熱面(41)との境界線(B)が伝熱面(41)から離隔する方向に後退するので、図2に示すように、従来品(二点鎖線で示す)に比べて、伝熱面(41)の面積を増大させることができる。また、三角堰(40)と二重シール部(36)及び導入部(37)との境界線(C)(D)が従来品と同寸法に維持されるので、シール強化部(42)を従来品と同じ長さに保持することができ、そのため、伝熱面(41)が二重シール部(36)に直接接触することもない。また、本体部(40a)のみならず、両突出部(40b)(40c)にも小判状突起(43)を一列(複数列でもよい)に配設して両突出部(40b)(40c)に流体流路(44)を形成することができ、これにより、伝熱面(41)の両端部にも流体を確実に分散供給することが可能となる。以上の構成から、シール性の低下を抑制しつつ伝熱面(41)の面積を広く確保することができ、しかも伝熱面(41)の全領域に流体を安定して分散供給することが可能となる。
【0022】
三角堰(40)と二重シール部(36)及び導入部(37)の境界線(C)(D)を、複数の直線と曲線を組み合わせたものとする場合にも同様の構成が適用でき、その場合には、図3(a)に示すように、三角堰(40)の本体部(40a)は扇形となる。また、同図(b)に示すように、境界線(C)(D)の全体が曲線である場合でも、境界線(A)の両端部に、境界線(C)(D)のそれぞれの側端部から中心側にかけての部分に対して一定の間隔を保持する後退部(46)を設ければ、同様の効果が得られる。
【0023】
なお、以上の説明では小判状突起(43)を有する三角堰(40)について説明したが、ビード状突起(13:図6(a)参照)を有する三角堰や他の構造の三角堰に本発明を適用しても同様の効果が得られる。
【0024】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、伝熱面の面積を増大させることができるので、プレートの伝熱性能を最大限発揮させることができ、効率的な熱交換が可能となる。また、シール強化部の長さを従来品と同程度に保持することができるので、プレートのシール性が低下することもなく、耐圧性の向上が達成される。さらに、三角堰の両端部に形成された突出部に小判状突起を設けて流体流路を形成すれば、伝熱面の両端部にも流体を確実に分散供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるプレート構造を示す平面図である。
【図2】三角堰の平面図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す平面図である。
【図4】従来のプレートの全体構造を示す平面図である。
【図5】従来の三角堰の構造例を示す平面図である。
【図6】流体流路を設けた三角堰の平面図であり、(a)図はビード状突起で流体流路を形成し、(b)図は小判状突起で流体流路を形成したものである。
【図7】(a)図はシール強化部の全体構成を示す平面図であり、(b)図は、シール強化部の拡大平面図である。
【図8】従来の三角堰における小判状突起の配列状態を示す平面図である。
【図9】従来の三角堰の構造例を示す平面図である。
【図10】本発明の三角堰における小判状突起の配列状態を示す平面図である。
【符号の説明】
31 プレート
32 通路孔
33 通路孔
36 二重シール部
37 導入部
40 三角堰
41 伝熱面
46 後退部
B 三角堰と伝熱面との境界線
C 三角堰と二重シール部との境界線
D 三角堰と導入部との境界線
Claims (1)
- 二種類の流体が個別に流れる一対の通路孔と、
伝熱面と、
二重シール部によって一方の通路孔から遮蔽されると共に、導入部を介して他方の通路孔と連通し、その表面に突起を整列配置して複数の流体流路を形成してなり、二重シール部および導入部に対する境界線がそれぞれ傾斜した三角堰とを具備し、導入部から供給された流体を三角堰で伝熱面に分散供給するものにおいて、
三角堰の両端部に、二重シール部との境界線に沿って一定幅で延びるシール側突出部、及び、導入部との境界線に沿って一定幅で延びる導入側突出部を設けたことを特徴とするプレート式交換器のプレート構造。
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