JP3744044B2 - パイプ多段ひも出し加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パイプ多段ひも出し加工装置、詳しくは、パイプの端部に複数のひも部を形成するパイプ多段ひも出し加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、ゴムホース等とパイプとの接続を強固なものとするために、図11および図12に示すようにパイプ1の端部に複数のひも部1a,1bを形成し、これらのひも部1a,1bでゴムホース等の端部(図示せず。)の抜けを防止することが考えられている。
【0003】
一般に、パイプの端部に上記のような複数のひも部を形成するパイプ多段ひも出し加工装置は、図15に示すように、パイプ1を外側で固定するダイ3と、パイプ1の内側に配されるポンチ2と、ポンチ2を駆動するポンチ駆動装置(図示せず。)とを備える。ここで、ダイ3の内周面には、各ひも部1a,1bの外形形状に応じた形状の複数の溝3a,3bが形成されており、また、ポンチ2は、パイプ1の中心線O1 と平行に配される回転軸2cと、各々の溝3a,3bと対向して回転軸2cに設けられた複数の突起2a,2bとを有する。また、ポンチ駆動装置は、ポンチ2の突起2a,2bをパイプ1の内周面に圧接させながらポンチ2をパイプ1の内周面に沿って回転させるよう構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のパイプ多段ひも出し加工装置におけるポンチ2は、図13および図14に示すように、各突起2a,2bを円板状に形成している。このため、図15に示すように、加工時に、元部側の突起2bがパイプ1の内周面と圧接状態にあることによって回転軸2cの先端側がパイプ1の中心線O1 に向かう方向へ撓み、実際の回転軸2cの軸心O3 は理想とする回転軸2cの軸心O2 から比較的大きな角度αだけずれるようになる。その結果、元部側の突起2bにより形成されるひも部(先ひも部)1bについては必要とする外径φDを得ることができても、先端側の突起2aにより形成されるひも部(奥ひも部)1aについては必要とする外径φDよりも小さな外径φdしか得られなくなり、先ひも部1bと奥ひも部1aとで外径にばらつきが生じるという問題があった。なお、その他に、ひも部をバルジ加工により形成する方法として、特開平5−154569号公報に記載される方法がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決し、簡単な構成で、先ひも部と奥ひも部の外径をそれぞれ必要とする外径に一致させることができるパイプ多段ひも出し加工装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1のパイプ多段ひも出し加工装置は、ポンチの各々の突起の外周面に、パイプの内周面に圧接可能な円弧部を形成するとともに、これらの円弧部を、加工時に、パイプの内周面に対し複数の突起間で交互に圧接状態となるよう互いに位相差をもたせて形成したことを特徴としている。
【0007】
ポンチの複数の突起を上記のように構成したことにより、複数の突起のうち1つの突起の円弧部がパイプの内周面と圧接状態にあるときには他の突起の円弧部はパイプの内周面と非圧接状態となる。従って、先端側の突起の円弧部がパイプの内周面と圧接状態にあるとき、元部側の突起の円弧部はパイプの内周面と非圧接状態となる。このため、このときの回転軸の軸心は、理想とする軸心とほぼ一致し、先端側の突起の円弧部は溝の中により深く侵入するようになる。この結果、奥ひも部の外径は増大し、必要とする外径とほぼ一致するようになる。
【0008】
請求項2のパイプ多段ひも出し加工装置において、ポンチの突起は、加圧部材が移動してポンチ支持部材が回転部材の軸心と直交する方向へ移動することによってパイプの内周面に圧接される。そして、このような圧接状態の下で、回転部材が回転すると、ポンチの突起は回転軸の軸心を中心として自転すると同時にポンチは回転部材の軸心を中心として公転し、パイプにひも部が形成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。
【0010】
図1は、一実施例によるパイプ多段ひも出し加工装置の断面図を示している。
【0011】
図1において、ベッド100の上には、パイプ1を保持するパイプ保持装置200と、パイプ保持装置200に固定されたパイプ1の内側に配されるポンチ2を駆動するポンチ駆動装置300とが配設されている。
【0012】
パイプ保持装置200は、図2および図3にも示すように、ベッド100の上に固定され、ボルト4,5で連結される上下一対のダイ保持具6,7と、上下一対のダイ保持具6,7によって形成される内部空間8にセットされ、内周面でパイプ1を支持する上下一対のダイ31,32と、上側のダイ保持具6に配設され、上側のダイ31を下側のダイ32に押圧して上下一対のダイ31,32を強固に一体化させるダイ押えシリンダ9とを備える。上下一対のダイ31,32の内周面には、パイプ1に形成される複数のひも部1a,1bの各外形形状に応じた形状の環状溝3a,3bが形成されている。
【0013】
ポンチ駆動装置300は、図4(a)にも示すように、ベッド100の上に固定されたステータ部材10と、ステータ部材10の内部空間11にベアリング12,13を介して回転可能に収容され、プーリー14に掛けられたベルト15によって回転される回転部材16と、回転部材16の内部空間17に、図1図示矢印A方向すなわち回転部材16の軸心O4 方向へ移動可能に配設された加圧部材18と、ベッド100の上に固定されたシリンダ保持具19によって保持され、ロッド20の先端部がベアリング21を介して加圧部材18に連結され、加圧部材18を図1図示矢印A方向へ移動させる圧接シリンダ22と、回転部材16の内部空間23に、図1図示矢印A方向へ移動不能、かつ、加圧部材18の移動により図1,4(a)図示矢印B方向すなわち回転部材16の軸心O4 と直交する方向へ移動可能に配設され、ポンチ2の回転軸2cの端部2dをベアリング24,25を介して回転可能に支持するポンチ支持部材26とを備える。
【0014】
ここで、回転部材16の軸心O4 とパイプ1の中心線O1 とは一致させてある。また、ポンチ支持部材26は、図4(a)に示すように、パイプ1側に位置する前面26aが、回転部材16の内側に位置する後面26bと比べ円周方向(図4(a)における左右方向に対応する。)の幅が狭く形成されているとともに(図4(b)参照;ここではポンチ支持部材26をくさび形にする(a<b)ことで矢印A方向からの押圧力でも移動しないようにしているが、実際には、図4(c)に示したようにa=bであっても矢印A方向に移動しないように蓋を設けてもよい。)、ポンチ支持部材26を収容する回転部材16の内部空間23は、ポンチ支持部材26の両側面26c,26dおよび後面26bと摺動可能な壁面23a,23b,23cと、ポンチ支持部材26の上下方向の幅よりも大きな間隔をもつ壁面23d,23eとによって形成されている。従って、ポンチ支持部材26は、回転部材16の内部空間23において、図1図示矢印A方向へは移動することができず、図1,4(a)図示矢印B方向のみへ移動できる。
【0015】
また、加圧部材18とポンチ支持部材26には、互いに接触可能な摺動面18a,26eが形成されており、加圧部材18が図1図示矢印A方向へパイプ1に向かって移動するに従って加圧部材18の摺動面18aがポンチ支持部材26の摺動面26eを図1,4(a)図示矢印B方向へ押すことにより、ポンチ支持部材26が図1,4(a)図示矢印B方向へ移動される。
【0016】
ポンチ2は、図5および図6に示すように、端部2dがポンチ支持部材26に回転可能に支持される回転軸2cと、ダイ31,32の複数の溝3a,3bの間隔と一致する所定の間隔を置いて回転軸2cに設けられた複数の突起2a,2bとを備える。複数の突起2a,2bは、各々円周方向に沿って円弧部2e,2gと切欠部2f,2hとを有し、円周方向において、先端側の突起(奥ひも部形成用突起)2aでは円弧部2eとなる部分が元部側の突起(先ひも部形成用突起)2bでは切欠部2hとなり、また、先端側の突起2aでは切欠部2fとなる部分が元部側の突起2bでは円弧部2gとなるよう構成されている。また、先端側の突起2aは、ダイ31,32の溝(奥ひも部形成用溝)3aと対向し、また、元部側の突起2bは、ダイ31,32の溝(先ひも部形成用溝)3bと対向している。
【0017】
次に、上記のように構成されたパイプ多段ひも出し加工装置によるひも出し加工方法の一例を説明する。
【0018】
まず、パイプ1をパイプ保持装置200で保持する。具体的には、上下一対のダイ31,32の内部空間27にパイプ1を挿入し、ダイ押えシリンダ9を作動させてロッド28で上側のダイ31を下側のダイ32に押し付ける。これにより、パイプ1は上下一対のダイ31,32の内周面で強固に保持される。
【0019】
次に、ベルト15を作動させて回転部材16を軸心O4 を中心として回転させる。回転部材16が回転すると、ポンチ2は回転部材16の軸心O4 を中心として図4(a)図示矢印C方向へ公転するようになる。
【0020】
そして、回転部材16の回転中に、圧接用シリンダ22を作動させ、加圧部材18を図1図示矢印A方向へ移動させる。加圧部材18の図1図示矢印A方向への移動に伴い、ポンチ支持部材26は図1,4(a)図示矢印B方向へ移動し、このポンチ支持部材26の図1,4(a)図示矢印B方向への移動に伴いポンチ2は平行移動してパイプ1の内周面1cへ接近してゆき、複数の突起2a,2bのいずれかの円弧部2e,2gがパイプ1の内周面1cに接触するようになる。複数の突起2a,2bのいずれかの円弧部2e,2gがパイプ1の内周面1cに接触するようになると、ポンチ2は軸心O2 を中心として自転を開始し、さらに加圧部材18が図1図示矢印A方向へ移動されることにより複数の突起2a,2bの円弧部2e,2gが交互にパイプ1の内周面1cに圧接状態となり、パイプ1の圧接箇所がダイ31,32の溝3a,3bに侵入し、パイプ1に溝3a,3bの形状と一致する外形形状のひも部1a,1bが形成される。
【0021】
図7および図8は、加工時において、複数の突起2a,2bの円弧部2e,2gが交互にパイプ1の内周面1cに圧接状態となる様子を示しており、図7は、元部側の突起2bの円弧部2gがパイプ1の内周面1cに圧接状態となっているときの様子を示し、一方、図8は、先端側の突起2aの円弧部2eがパイプ1の内周面1cに圧接状態となっているときの様子を示している。
【0022】
図7および図8に示すように、元部側の突起2bの円弧部2gがパイプ1の内周面1cに圧接状態となっているときには、先端側の突起2aの切欠部2fが内周面1cと対向し円弧部2eは内周面1cに対し非圧接状態となり、また、先端側の突起2aの円弧部2eがパイプ1の内周面1cに圧接状態となっているときには、元部側の突起2bの切欠部2hが内周面1cと対向し円弧部2gは内周面1cに対し非圧接状態となる。
【0023】
このように、加工時に複数の突起2a,2bの円弧部2e,2gが交互にパイプ1の内周面1cに対し圧接状態となり、2以上の円弧部2e,2gが同時に内周面1cに対し圧接状態となることがないことから、ポンチ2は、理想とする軸心O2 とほぼ一致した軸心O3 を中心として自転するようになる。従って、先ひも部1bについて必要とする外径φDを得ることができることは勿論のこと、奥ひも部1aについても同様に必要とする外径φDを得ることができるようになる。
【0024】
以上説明したように、本実施例によると、簡単な構成で必要とする外径のひも部を得ることができるようになる。なお、上記実施例では、2つの突起により2つのひも部を形成する構成をとっているが、本発明は、2つのひも部を形成する加工装置に限定されるものではなく、3つ以上のひも部を形成する場合にも適用できる。重要なことは、複数のひも部を形成するにあたって、複数の突起の各々の円弧部が同時にパイプの内周面に対し圧接状態となることがないように構成することであり、このような構成によりポンチの軸心を理想とする軸心にほぼ一致させることができ、その結果必要とする外径のひも部を形成することができるのである。従って、複数の突起は、円周方向において、ある突起では円弧部となる部分が他の突起では切欠部となり、また、ある突起では切欠部となる部分が他の突起では円弧部となるよう構成されていることが重要であり、上記実施例の突起以外に、例えば図9に示すように、各々の突起に1つのみ円弧部を形成するよう構成してもよく、また、図10に示すように、各々の突起において、円周方向における円弧部と切欠部の占める割合が等しくないよう構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例によるパイプ多段ひも出し加工装置の断面図
【図2】パイプ保持装置の断面図
【図3】図2図示III-III 断面図
【図4】図4(a)は、ポンチ駆動装置の図1図示IV矢視図、図4(b)は、ポンチ支持部材26の一実施例、図4(c)は、ポンチ支持部材26の他の実施例
【図5】ポンチの側面図
【図6】突起の形状を示し、(A)は図5図示VIA 矢視図、(B)は図5図示VIB-VIB 断面図
【図7】パイプの内周面に対するポンチの位置関係を示す断面図
【図8】図7と同じく、パイプの内周面に対するポンチの位置関係を示す断面図
【図9】突起の変形例を示し、(A)は図6(A)に対応する図5図示VIA 矢視図、(B)は図6(B)に対応する図5図示VIB-VIB 断面図
【図10】突起の他の変形例を示し、(A)は図6(A)に対応する図5図示VIA 矢視図、(B)は図6(B)に対応する図5図示VIB-VIB 断面図
【図11】形成すべきパイプの側面図
【図12】図11図示XII-XII 矢視図
【図13】従来のポンチの側面図
【図14】従来のポンチの突起を示し、(A)は図13図示XIVA矢視図、(B)は図13図示XIVB-XIVB 断面図
【図15】従来のパイプ多段ひも出し加工装置の問題点を説明するための断面図
【符号の説明】
1 パイプ
1a,1b ひも部
1c 内周面
2 ポンチ
2a,2b 突起
2c 回転軸
2e,2g 円弧部
3 ダイ
3a,3b 溝
16 回転部材
18 加圧部材
26 ポンチ支持部材
300 ポンチ駆動装置
O1 パイプの中心線
O3 回転軸の軸心
O4 回転部材の軸心
Claims (2)
- パイプに複数のひも部を形成するパイプ多段ひも出し加工装置であって、
複数の溝を内周面に有するダイと、
パイプ加工時に前記パイプの内側に配されるポンチであって、前記複数の溝と直交する直線と平行に配される回転軸と、前記各々の溝と対向して前記回転軸に設けられた複数の突起とを有するポンチと、
パイプ加工時に前記ポンチの突起を前記パイプの内周面に圧接させながら前記ポンチを前記パイプの内周面に沿って回転させるポンチ駆動装置とを備え、
前記各々の突起は、パイプ加工時に前記パイプの内周面に圧接可能な円弧部を外周面に有し、該複数の円弧部は、加工時、前記パイプの内周面に対し複数の突起間で交互に圧接状態となるよう互いに位相差をもたせて形成されている
ことを特徴とするパイプ多段ひも出し加工装置。 - 前記ポンチ駆動装置は、
パイプ加工時に前記パイプの中心線を軸心として回転可能な回転部材と、
前記回転部材の内部に、前記回転部材の軸心方向へ移動可能に設けられた加圧部材と、
前記回転部材の内部に、前記回転部材の軸心方向へ移動可能、かつ、前記加圧部材の移動により前記回転部材の軸心と直交する方向へ移動可能に設けられ、前記ポンチの回転軸の端部を回転可能に支持するポンチ支持部材と、
を備え、
前記加圧部材の移動により前記ポンチ支持部材が前記回転部材の軸心と直交する方向へ移動し、前記ポンチの複数の突起のいずれかの円弧部が前記パイプの内周面に圧接されることにより、前記回転部材の回転により前記ポンチの突起が前記ポンチの回転軸の軸心を中心として自転すると同時に前記ポンチが前記回転部材の軸心を中心として公転する
ことを特徴とする請求項1に記載のパイプ多段ひも出し加工装置。
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