JP3740781B2 - リーク判定方法、ヘリウムリークディテクタ - Google Patents
リーク判定方法、ヘリウムリークディテクタ Download PDFInfo
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【発明の属する技術分野】
本発明は、透過性を有する被試験体、例えば透析用人工腎臓等のリークテストを行う際に好適に利用されるヘリウムリークディテクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば医療分野において、透析用の人工腎臓等の作製時には、透過性を有する中空の化学繊維糸である中空糸を使用するのが一般的である。前記中空糸は、人工透析に供する前にピンホール等の構造欠陥の有無を検査する必要があるが、従来、この中空糸のような透過性を有する被試験体のリークテストは、空気加圧による圧力降下法により行われている。
【0003】
圧力降下法は、被試験体内部を加圧し、その後の圧力の降下状況によって被試験体からのリーク、ひいてはピンホール等の構造欠陥の有無を検出するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、圧力降下法によるリークテストでは、検査に要する時間が数分間と長く、また検出感度も10-4pa・m3 /s程度と極めて低いものであった。
そこで、密閉容器の封止検査や密閉検査等を行う際に利用されるヘリウムリークディテクタを、中空糸のような透過性を有する被試験体のリークテストにおいても利用するという手法が一つの有効な手段として考えられる。ヘリウムは拡散性に富むため、ピンホール等の構造欠陥が存在すれば逸早くヘリウムの漏出を誘導できるためである。
【0005】
しかしながら、検出感度は10-7pam3 /s以上に向上できても、被試験体が透過性を有する性質ゆえ、構造欠陥部分以外すなわち被試験体の正常な周壁部分からもヘリウムガスの気体分子が簡単に透過してしまう。このため、単純に既存のヘリウムリークディテクタを適用したのでは、漏れ量と透過量が混在し、正確なリーク判定を行うことができない。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、透過性を有する被試験体の構造欠陥の有無を、ヘリウムリークディテクタを用いて短時間で感度よく検出することができるように構成することとしている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明の請求項1に係るリーク判定方法は、透過性を有し、構造欠陥が存在している場合にその構造欠陥からのヘリウムの漏出が周壁を介した透過よりも早く発生する中空の被試験体を検査する方法であって、前記被試験体を内部に収容する容器と、被試験体内にヘリウム導入するヘリウム導入系路と、前記容器内における被試験体の周辺雰囲気にヘリウム以外のガスを流通させるガス流通系路と、このガス流通系路内を流通するヘリウム量を下流側において検出する検出手段とを具備するヘリウムリークディテクタを使用し、前記ガス流通経路に一定流量のガスの流れを形成する工程と、しかる後に前記ヘリウム導入系路より前記被試験体内にヘリウムを導入する工程と、前記検出手段の検出値に基づいて、前記被試験体内に導入したヘリウムが該被試験体の構造欠陥以外の部位を透過して前記検出手段に至るよりも早い所定の期間内にリーク条件を満たすか否か、のリーク判定を行う工程とを実施することを特徴とする。また、請求項2に係るヘリウムリークディテクタは請求項1のリーク判定方法を実施するために使用されるものであって、透過性を有し、構造欠陥が存在している場合にその構造欠陥からのヘリウム漏出が周壁を介した透過よりも早く発生する中空の被試験体を内部に収容する容器と、被試験体内にヘリウムを導入するヘリウム導入系路と、前記容器内における被試験体の周辺雰囲気にヘリウム以外のガスを流通させるガス流通系路と、このガス流通系路内を流通するヘリウム量を下流側において検出する検出手段とを具備してなり、前記検出手段の検出値に基づいて、前記被試験体内に導入したヘリウムが該被試験体の構造欠陥以外の部位を透過して前期検出手段に至るよりも早い所定の期間内にリーク条件を満たすか否か、のリーク判定を行い得るように構成したことを特徴とする。
【0008】
このような構成において、予めガス流通系路にヘリウム以外のガスを一定量で流し続けておき、しかる後、ヘリウム導入系路を通じて被試験体内にヘリウムを導入すると、一定時間経過後に透過性を有する被試験体の周壁部からガス流通系路側にヘリウムが透過し、検出手段に至る。このため、検出手段は一定の飽和ヘリウム量を検出することになる。しかしながら、被試験体にピンホール等の構造欠陥が存在する場合、ヘリウムは周壁部を透過するよりも先に構造欠陥部分を通じてガス流通系路側に流出し、検出手段に検出される。したがって、このときの検出手段の検出値を目安にすれば、透過量とは切り離して漏れ量のみを有効に判定することができる。
【0009】
しかも、ヘリウムは拡散性に富み、圧力降下法に比べて逸早くピンホール等の構造欠陥部分からの漏れを誘導することができるため、検査に要する時間を大巾に短縮し、検出感度も飛躍的に向上させることができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。
本実施例のヘリウムリークディテクタが適用される図1に示す中空糸1は、医療分野等において透析用の人工腎臓を作製する際に利用される透過膜からなる中空の化学繊維糸であり、通常、容器2内に多数束をなして収容されている。人工透析に供するときには、この中空糸1の中に人体から抽出した血液を流通させる一方で、この中空糸1を収容している容器2内における中空糸1の周辺雰囲気にある種の薬品を流して中空糸1に適切な浸透条件を成立させておき、その中空糸1を介して血液中の尿毒素を分離、抽出するものである。このために、容器2には薬品を導出入するための導出入口2a、2bを設け、両導出入口2a、2b間の内部空間には前記周辺雰囲気に沿って溶剤流通系路2cが形成されている。
【0011】
しかして、このヘリウムリークディテクタは、スニファー法に基づいて実施されるもので、前記容器2をそのまま検出用の容器として用い、溶剤流通系路2cをそのままガス流通系路として使用して、中空糸1の一端側にヘリウム導入系路3を接続し、他端側にヘリウムを導出する排気系路4を接続するとともに、一方の導出入口2aに圧空源5を接続し、他方の導出入口2bに検出手段たるスニファープローブ6を接続している。前記ヘリウム導入系路3は、中空糸1にのみ接続され、ガス流通系路2cとの間は確実にシールされている。スニファープローブ6は、約8.7×10-10 pa・m3 /s以上のヘリウムを検出可能な極めて高い検出感度を有するものであり、末端は図示しない排気手段の吸気口に接続されている。
【0012】
次に、本実施例におけるリークテスト方法について説明する。
先ず、スニファープローブ6の末端に接続してある図示しない排気手段を作動させ、スニファープローブ6及び容器2内を排気する。そして、スニファープローブ6が所定のバックグラウンド値以下の検出値になったとき、リークテストを開始する。本実施例では、バックグラウンド値を約1〜6×10-6pa・m3 /s程度に設定している。
【0013】
次に、圧空源5を開き、容器2内のガス流通系路2cに対して、一方のガス導出入口2aから他方のガス導出入口2bに向けて一定量の空気の流れを形成する。流量はこの実施例では約10cc/s程度に設定される。空気の流れが定常状態に入ると、排気系路4を作動させ、ヘリウム導入系路3から中空糸1内に例えば0・05MPa・G程度の加圧状態でHeを導入する。これにより、ヘリウム導入系路3から中空糸1内にヘリウムが流入し、そのヘリウムは逐次、該中空糸1内を流通した後、排気系路4側に流出する。この実施例では、ヘリウムの流れと空気の流れは対向流の関係にあるように設定している。しかして、前記ガス流通系路2cの下流に位置するスニファープローブ6には、当初空気のみが流入するが、ある時間経過以後には透過性のある中空糸1の周壁からガス流通系路2c側に透過したヘリウムが流入するようになる。そして、最終的にスニファープローブ6は、図2の曲線Aに沿って一定時間T1 (例えば15秒)経過後にヘリウム導入量に対応する飽和ヘリウム量を検出することになる。
【0014】
一方、上記の過程において、中空糸1にピンホールや亀裂等の構造欠陥部分7が存在する場合、ヘリウムはその構造欠陥部分7を介して中空糸1の周壁を透過するヘリウムよりもより早くガス流通系路2c側に流出し、スニファープローブ6に流れ込む。このため、構造欠陥部分7がある場合には図2に曲線Bで示すように曲線Aの透過ヘリウムよりも早い時期にスニファープローブ6は漏出したヘリウムを検出することになる。しかして、この実施例においては、漏出ヘリウムが飽和するときの値Xの63%の値X0 をもってスニファープローブ6による合否判定値とし、その値が1.4〜1.8×10-4pa・m3 /s以上である場合にはピンホールや亀裂等の構造欠陥が存在するものとして不良判定し、1〜3×10-6pa・m3 /s以下である場合には構造欠陥が存在しないか若しくは問題にならない程度であるとして合格判定するようにしている。このため、ヘリウム導入後からの合否判定時間T2 は約10秒程度を見込んおけば足りる。
【0015】
このように、本実施例のヘリウムリークディテクタは、拡散性に富み構造欠陥部分からの漏れを逸早く誘導できるヘリウムを透過性のある中空糸1に流しても、中空糸1から透過するヘリウムとは確実に区別して漏出ヘリウムのみを検出することができる。このため、従来に比べて検査に要する時間を叙述のように10秒程度に激減させることができ、検出感度も10-7pa・m3 /s程度にまで飛躍的に向上させることが可能となる。
【0016】
勿論、ガス導入系路2c内の空気の流量を増やすと検出感度よりも応答時間が優先し、流量を減らすと応答時間よりも検出感度が優先するため、圧空源5からの空気の導入量を通じて応答時間と検出感度の兼ね合いを自在に調整することができるものである。
なお、ガス流通系路2cに窒素やアルゴンなど空気以外のガスを流通させるなど、各部の具体的な構成は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0017】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
すなわち、本発明に係るリーク判定方法は、ヘリウムリークディテクタを使用して行う透過性を有する被試験体のリークテストにおいて、ヘリウムが透過膜を透過する前に、漏れ箇所から漏出したヘリウムを被試験体の周辺雰囲気を流通するガスとともに逸早く検出手段に導いてその漏れ量のみを検出し得るようにしているので、従来に比べて検査に要する時間を大巾に短縮し、同時に検出感度も飛躍的に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を模式的に示す斜視図。
【図2】同実施例の作用説明図。
【符号の説明】
1…被試験体(中空糸)
2…容器
2c…ガス流通系路
3…ヘリウム導入系路
6…検出手段(スニファープローブ)
Claims (2)
- 透過性を有し、構造欠陥が存在している場合にその構造欠陥からのヘリウムの漏出が周壁を介した透過よりも早く発生する中空の被試験体を検査する方法であって、前記被試験体を内部に収容する容器と、被試験体内にヘリウム導入するヘリウム導入系路と、前記容器内における被試験体の周辺雰囲気にヘリウム以外のガスを流通させるガス流通系路と、このガス流通系路内を流通するヘリウム量を下流側において検出する検出手段とを具備するヘリウムリークディテクタを使用し、
前記ガス流通経路に一定流量のガスの流れを形成する工程と、
しかる後に前記ヘリウム導入系路より前記被試験体内にヘリウムを導入する工程と、
前記検出手段の検出値に基づいて、前記被試験体内に導入したヘリウムが該被試験体の構造欠陥以外の部位を透過して前記検出手段に至るよりも早い所定の期間内にリーク条件を満たすか否か、のリーク判定を行う工程とを実施することを特徴とするリーク判定方法。 - 請求項1記載のリーク判定方法を実施するために使用されるものであって、透過性を有し、構造欠陥が存在している場合にその構造欠陥からのヘリウム漏出が周壁を介した透過よりも早く発生する中空の被試験体を内部に収容する容器と、被試験体内にヘリウムを導入するヘリウム導入系路と、前記容器内における被試験体の周辺雰囲気にヘリウム以外のガスを流通させるガス流通系路と、このガス流通系路内を流通するヘリウム量を下流側において検出する検出手段とを具備してなり、
前記検出手段の検出値に基づいて、前記被試験体内に導入したヘリウムが該被試験体の構造欠陥以外の部位を透過して前期検出手段に至るよりも早い所定の期間内にリーク条件を満たすか否か、のリーク判定を行い得るように構成したヘリウムリークディテクタ。
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