JP3740267B2 - 遊星ローラ式動力伝達装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遊星ローラ式動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、遊星ローラ式動力伝達装置は、太陽軸の回転速度と遊星ローラの公転速度との差を利用して増速あるいは減速を行うようにした増速機または減速機として利用されている。
【0003】
なお、この種の遊星ローラ式動力伝達装置では、固定輪と太陽軸との間に遊星ローラが、その回転軸心を太陽軸の回転軸心に対してほぼ平行な姿勢で介装されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の遊星ローラ式動力伝達装置では、回転速度を無段階に変速するものであり、伝達トルクはほぼ一定になっている。
【0005】
ここで、例えば伝達トルクを可変調節できるようにすれば、この遊星ローラ式動力伝達装置の利用形態を拡大できるものと考えられ、この点に改良の余地がある。
【0006】
したがって、本発明は、遊星ローラ式動力伝達装置において、伝達トルクを可変調節できるようにすることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の遊星ローラ式動力伝達装置は、固定輪と、固定輪の内周に同心状に軸方向一側から軸端が挿通される太陽軸と、太陽軸の軸端と固定輪との間に圧接状態で介装される複数の遊星ローラと、太陽軸の軸端に対向して同軸状に配設されて遊星ローラそれぞれを回転自在に支持するキャリアとを含む遊星ローラ式動力伝達装置であって、固定輪の内周面と太陽軸の外周面とをほぼ平行なテーパ状とし、円筒形の遊星ローラを、その回転軸心が太陽軸の回転軸心に対して所要角度傾いた状態でキャリアに支持させており、固定輪のみを回転不可能かつ軸方向変位可能な状態に保持し、太陽軸とキャリアとの間の伝達トルクを可変調節するために、固定輪の端面に対して軸方向から油圧を印加する操作手段を備え、記操作手段は、前記固定輪の軸方向一端面を軸方向一方に油圧により押圧するピストンと、前記固定輪の軸方向他端面を弾発付勢により軸方向他方に押圧するばねとを備えている。
【0008】
本発明の請求項2の遊星ローラ式動力伝達装置は、固定輪と、固定輪の内周に同心状に軸方向一側から軸端が挿通される太陽軸と、太陽軸の軸端と固定輪との間に圧接状態で介装される複数の遊星ローラと、太陽軸の軸端に対向して同軸状に配設されて遊星ローラそれぞれを回転自在に支持するキャリアとを含む遊星ローラ式動力伝達装置であって、固定輪の内周面と太陽軸の外周面との傾斜方向を逆向きのテーパ状とし、円錐形の遊星ローラを、その回転軸心が太陽軸の回転軸心に対してほぼ平行にした状態でキャリアに支持させており、固定輪のみを回転不可能かつ軸方向変位可能な状態に保持し、太陽軸とキャリアとの間の伝達トルクを可変調節するために、固定輪の端面に対して軸方向から油圧を印加する操作手段を備え、前記操作手段は、前記固定輪の軸方向一端面を軸方向一方に油圧により押圧するピストンと、前記固定輪の軸方向他端面を弾発付勢により軸方向他方に押圧するばねとを備えている。
【0009】
本発明の請求項3の遊星ローラ式動力伝達装置は、請求項1または2に記載の遊星ローラ式動力伝達装置が軸方向隣り合わせに少なくとも2つ配設され、一方の遊星ローラ式動力伝達装置のキャリアと他方の遊星ローラ式動力伝達装置の太陽軸とが同期回転する状態で結合されて多段構造とされている。
【0013】
以上、本発明では、固定輪が軸方向一方または他方に変位させられると、固定輪と太陽軸と複数の遊星ローラ群との間におけるしめしろが増加方向または減少方向に変化する。このしめしろの増減変化により、太陽軸とキャリアとの間で伝達するトルク値が変化することになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を図1ないし図6に示す実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態1にかかり、遊星ローラ式動力伝達装置の上半分の縦断面図である。図中、Aは遊星ローラ式動力伝達装置の全体を示している。
【0017】
遊星ローラ式動力伝達装置Aは、一般的な遊星ローラ式動力伝達装置と基本構成が同じであって、ケース1と、ケース1の内周に嵌入される固定輪2と、固定輪2の内周に同心状に軸方向一側から軸端が挿通される太陽軸3と、太陽軸3の軸端と固定輪2との間に圧接状態で介装される複数の遊星ローラ4と、太陽軸3の軸端に対向して同軸状に配設されて遊星ローラ4それぞれを回転自在に支持するキャリア5とを備えている。キャリア5は、軸端に径方向外向きの鍔部5cを有する軸体5aと、軸体5aの鍔部5cの円周数カ所に圧入嵌合される複数のピン5bとから構成されている。
【0018】
以下、本発明の特徴構成を説明する。
【0019】
つまり、固定輪2の内周面と太陽軸3の外周面とが同一方向に傾斜するテーパ状とされており、これら固定輪2と太陽軸3との間に円筒形の遊星ローラ4が、その回転軸心が太陽軸3の回転軸心に対して所要角度傾斜した姿勢で介装されている。このような構成において、太陽軸3、キャリア5および遊星ローラ4群が軸方向に不動とされ、固定輪2のみが軸方向変位可能とされていて、固定輪2を油圧により軸方向に変位させることにより、固定輪2と太陽軸3と遊星ローラ4群との間のしめしろを増減変化させて太陽軸3とキャリア5との間での伝達トルクを可変調節できるようになっている。この伝達トルクTは、トラクション係数μと圧接力Pとを乗算することにより、つまりT=μ・Pの関係式により求められる。本発明では、圧接力Pを可変することにより、伝達トルクTを可変しようとするものである。通常は、使用状況に応じて要求される伝達トルクTを確保するために、トラクション係数μと圧接力Pとを適宜選択して決定している。
【0020】
具体的には、太陽軸3およびキャリア5は、アンギュラ玉軸受を2つ組み合わせた組み合わせ軸受6,7を介してそれぞれケース1に支持されるとともに、太陽軸3の軸端小径部が単一のアンギュラ玉軸受8を介してキャリア5の軸体5aの軸端凹部に支持されることにより、ケース1に対してそれぞれ軸方向に位置決めされている。遊星ローラ4群は、キャリア5のピン5bに対して2つのアンギュラ玉軸受9を介して支持されることにより、軸方向に位置決めされている。固定輪2は、自身の外周の円周1カ所に設けられる軸方向に沿う溝2aと、ケース1に設けられるキー状突起1aとの嵌合によってケース1に対して回転不可能にかつ軸方向変位可能に嵌合されている。
【0021】
そして、ケース1には、油圧通路10が設けられており、この油圧通路10の外部開口端に油圧ポンプ11が接続され、油圧通路10の内周開口端にピストン12が配設されている。このピストン12の外端部が固定輪2の軸方向一端面に当接させられており、固定輪2が油圧により軸方向一方に押圧されている。なお、固定輪2の軸方向他端面と、ケース1に取り付けられる抜け止めリング13との間には、固定輪2を環状の皿ばね14が配設されており、この皿ばね14の弾発付勢力により固定輪2が軸方向他方に押圧されている。
【0022】
次に、動作を説明する。つまり、太陽軸3とキャリア5との間での伝達トルクを増加させる場合には、固定輪2を図の左側に変位させる一方、伝達トルクを軽減させる場合には、固定輪2を図の右側に変位させるように油圧ポンプ11を制御すればよい。例えば、固定輪2を図の左側に変位させるときには、油圧ポンプ11により発生させる油圧を、皿ばね14の弾発付勢力よりも強くするように管理し、また、固定輪2を図の右側に変位させるときには、油圧ポンプ11により発生させる油圧を、皿ばね14の弾発付勢力よりも弱くするように管理する。
【0023】
以上のように、この実施形態の遊星ローラ式動力伝達装置Aでは、固定輪2を油圧で軸方向に変位させることにより、太陽軸3とキャリア5との間の伝達トルクを可変調節できるようにしているから、例えば低速回転域における伝達トルクを増加させて、高速回転域における伝達トルクを低減させるといった制御が可能になるなど、効率のよい動力伝達を実現できるようになる。したがって、この遊星ローラ式動力伝達装置Aを例えば電気自動車などに備えるモータ用減速機として利用する場合などに適したものとなる。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態1のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
【0025】
(1) 図2は本発明の実施形態2にかかり、遊星ローラ式動力伝達装置の上半分を示す縦断面図である。この実施形態2において上記実施形態1との相違は、遊星ローラ4の傾斜方向が軸方向左右で逆向きになっていることである。そのため、伝達トルクの増減に関連する固定輪2の変位方向も、上記実施形態1と逆向きになっている。
【0026】
(2) 図3は本発明の実施形態3にかかり、遊星ローラ式動力伝達装置の上半分を示す縦断面図である。この実施形態3では、主として円錐形状の遊星ローラ4を用いていることに特徴がある。そして、固定輪2のテーパ状内周面の傾斜方向と太陽軸3のテーパ状外周面の傾斜方向とを逆向きに設定することにより、遊星ローラ4の回転軸心を太陽軸3の回転軸心とほぼ平行になるようにしている。そのため、キャリア5のピン5bを、軸体5aの軸心とほぼ平行にできるようになり、ピン5bと軸体5aとの結合を比較的容易にできるようになる。この場合、伝達トルクの増減に関連する固定輪2の変位方向は、上記実施形態2と同じになっている。
【0027】
(3) 図4は本発明の実施形態4にかかり、遊星ローラ式動力伝達装置の上半分を示す縦断面図である。この実施形態4において上記実施形態3との相違は、遊星ローラ4を図において左右反対に配置していることである。この場合、伝達トルクの増減に関連する固定輪2の変位方向は、上記実施形態1と同じになっている。
【0028】
(4) 図5は本発明の実施形態5にかかり、遊星ローラ式動力伝達装置の上半分を示す縦断面図である。この実施形態5では、上記実施形態1,2の遊星ローラ式動力伝達装置を軸方向に直列に連結した多段構造としている。具体的には、実施形態1の遊星ローラ式動力伝達装置Aを図の左側に、実施形態2の遊星ローラ式動力伝達装置Aを図の右側に配置して、2つの固定輪2,2の油圧による変位方向を互いに遠ざけるように設定している。この場合、ケース1に設ける油圧通路10の分岐路10a,10bを可及的に短く設定することができ、加工の無駄を省くことができる。
【0029】
(5) 図6は本発明の実施形態6にかかり、遊星ローラ式動力伝達装置の上半分を示す縦断面図である。この実施形態6では、上記実施形態3,4の遊星ローラ式動力伝達装置を軸方向に直列に連結した多段構造としている。具体的には、実施形態3の遊星ローラ式動力伝達装置Aを図の右側に、実施形態4の遊星ローラ式動力伝達装置Aを図の左側に配置して、2つの固定輪2,2の油圧による変位方向を互いに遠ざかるように設定している。この場合も上記実施形態5と同様に、ケース1に設ける油圧通路10の分岐路10a,10bを可及的に短くすることができ、加工の無駄を省くことができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の請求項1ないし5の遊星ローラ式動力伝達装置では、固定輪を軸方向に変位させることにより、固定輪と太陽軸と遊星ローラとの間のしめしろを増減変化させて太陽軸とキャリアとの間の伝達トルクを可変調節できるようにしているから、例えば低速回転域における伝達トルクを増加させて、高速回転域における伝達トルクを低減させるといった形態で制御できるようになるなど、効率のよい動力伝達を実現できるようになる。
【0031】
したがって、本発明の遊星ローラ式動力伝達装置は、例えば電気自動車や補助動力付き自転車に備えるモータ用減速機として好適に利用することができるなど、利用分野の拡大に貢献できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の遊星ローラ式動力伝達装置の実施形態1を示す上半分の縦断面図
【図2】本発明の遊星ローラ式動力伝達装置の実施形態2を示す上半分の縦断面図
【図3】本発明の遊星ローラ式動力伝達装置の実施形態3を示す上半分の縦断面図
【図4】本発明の遊星ローラ式動力伝達装置の実施形態4を示す上半分の縦断面図
【図5】本発明の遊星ローラ式動力伝達装置の実施形態5を示す上半分の縦断面図
【図6】本発明の遊星ローラ式動力伝達装置の実施形態6を示す上半分の縦断面図
【符号の説明】
A 遊星ローラ式動力伝達装置
1 ケース
2 固定輪
3 太陽軸
4 遊星ローラ
5 キャリア
10 ケースの油圧流路
11 油圧ポンプ
12 ピストン
Claims (3)
- 固定輪と、固定輪の内周に同心状に軸方向一側から軸端が挿通される太陽軸と、太陽軸の軸端と固定輪との間に圧接状態で介装される複数の遊星ローラと、太陽軸の軸端に対向して同軸状に配設されて遊星ローラそれぞれを回転自在に支持するキャリアとを含む遊星ローラ式動力伝達装置であって、
固定輪の内周面と太陽軸の外周面とをほぼ平行なテーパ状とし、円筒形の遊星ローラを、その回転軸心が太陽軸の回転軸心に対して所要角度傾いた状態でキャリアに支持させており、
固定輪のみを回転不可能かつ軸方向変位可能な状態に保持し、
太陽軸とキャリアとの間の伝達トルクを可変調節するために、固定輪の端面に対して軸方向から油圧を印加する操作手段を備え、
前記操作手段は、前記固定輪の軸方向一端面を軸方向一方に油圧により押圧するピストンと、前記固定輪の軸方向他端面を弾発付勢により軸方向他方に押圧するばねとを備えている、ことを特徴とする遊星ローラ式動力伝達装置。 - 固定輪と、固定輪の内周に同心状に軸方向一側から軸端が挿通される太陽軸と、太陽軸の軸端と固定輪との間に圧接状態で介装される複数の遊星ローラと、太陽軸の軸端に対向して同軸状に配設されて遊星ローラそれぞれを回転自在に支持するキャリアとを含む遊星ローラ式動力伝達装置であって、
固定輪の内周面と太陽軸の外周面との傾斜方向を逆向きのテーパ状とし、円錐形の遊星ローラを、その回転軸心が太陽軸の回転軸心に対してほぼ平行にした状態でキャリアに支持させており、
固定輪のみを回転不可能かつ軸方向変位可能な状態に保持し、
太陽軸とキャリアとの間の伝達トルクを可変調節するために、固定輪の端面に対して軸方向から油圧を印加する操作手段を備え、
前記操作手段は、前記固定輪の軸方向一端面を軸方向一方に油圧により押圧するピストンと、前記固定輪の軸方向他端面を弾発付勢により軸方向他方に押圧するばねとを備えている、ことを特徴とする遊星ローラ式動力伝達装置。 - 請求項1または2に記載の遊星ローラ式動力伝達装置が軸方向隣り合わせに少なくとも2つ配設され、一方の遊星ローラ式動力伝達装置のキャリアと他方の遊星ローラ式動力伝達装置の太陽軸とが同期回転する状態で結合されて多段構造とされている、ことを特徴とする遊星ローラ式動力伝達装置。
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JP01015498A JP3740267B2 (ja) | 1998-01-22 | 1998-01-22 | 遊星ローラ式動力伝達装置 |
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JPH11210851A JPH11210851A (ja) | 1999-08-03 |
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JP6922407B2 (ja) * | 2017-05-18 | 2021-08-18 | 株式会社ジェイテクト | 遊星ローラ式動力伝達装置 |
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- 1998-01-22 JP JP01015498A patent/JP3740267B2/ja not_active Expired - Fee Related
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