JP3739294B2 - 耐火床構造及びその構法並びにユニット建物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐火床構造及びその構法並びにユニット建物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐火床構造は、特開平2−170648号公報、特開平7−54422号公報、特開平7−54423号公報に記載の如く、それ自体で耐火性能を満足できるRC床板やALC床板等の耐火パネルからなる床下地材を支持させ、この床下地材で床板等の床面材を支持している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、住宅の品質レベルを全国的にみると、耐火住宅の棟数が占める割合は低く、RC床板やALC床板等の耐火パネルを標準仕様で使用する場合には、耐火住宅以外の一般住宅の過剰品質、コスト高につながる。この不都合を回避するために、耐火住宅と一般住宅でそれらの床構造を全く別異にすると、住宅の生産性を損なう。
【0004】
本発明の課題は、耐火住宅と一般住宅でそれらの床構造を一部共通化し、住宅の生産性の向上を図ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、相対向する床躯体に床下地材を架け渡し、床下地材の端部を床躯体に支持させた標準仕様の床構造に、耐火材によって耐火性能を付加してなる耐火床構造であって、
前記耐火材が、床下地材の下に流し込むことのできる流動性耐火材料と、該流動性耐火材料を支持する膜状材料とからなり、
該膜状材料を床躯体に支持させると供に、床下地材の下方に離間配置させ、
該膜状材料の上面に、流動性耐火材料を流し込み配置してなることを特徴とする耐火床構造である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記耐火床構造のうちで耐火材を除く前記標準仕様の床構造で、全床積載荷重を負担可能とするものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発明において更に、前記膜状材料が鋼板からなるようにしたものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の耐火床構造を構築するに際し、前記床躯体に膜状材料と床下地材を支持させた後、床下地材の下に流動性耐火材料を流し込む耐火床構法である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の耐火床構造を用いてなるユニット建物である。
【0010】
【作用】
請求項1の発明によれば下記(1)、(2)の作用がある。
(1)標準仕様の床構造を構成する床躯体に耐火材を支持させることにより、耐火性能を備える耐火床構造を構築可能とした。従って、耐火性能が必要なときだけ、標準仕様の床構造の基本的構成(床躯体と床下地材(小梁、根太等))は一切変更せず、必要な耐火材を付加することで耐火性能を満足することが可能となる。即ち、耐火住宅と一般住宅でそれらの床構造を一部共通化し、住宅の生産性の向上を図ることができる。
(2)耐火材を流動性耐火材料と膜状材料とからなるものとし、該膜状材料を床躯体に支持させると供に、床下地材の下方に離間配置させ、該膜状材料の上面に、流動性耐火材料を流し込み配置してなることによって直ちに耐火性能を付加でき、施工簡易になる。
【0011】
請求項2の発明によれば下記(3)の作用がある。
(3)耐火材はあくまで耐火性能を満足するために火を遮るためのものであり、床積載荷重は全て耐火材を付加する前の前記標準仕様の床構造で負担する。従って、耐火床構造の設計の簡易を図ることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば下記(4)の作用がある。
(4)膜状材料を鋼板にて形成できる。
【0013】
請求項4の発明によれば下記(5)の作用がある。
(5)床躯体に膜状材料と床下地材を予め支持させておくことにより、床下地材の上に床板等を貼ることによって足場を確保した上で流動性耐火材料を流し込むことができ、施工性を向上できる。
【0014】
請求項5の発明によれば下記(6)の作用がある。
(6)耐火性能を満足するユニット建物において、上述(1)〜(4)を実現できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1はユニット建物の耐火床構造を示す断面図、図2は耐火床構造の変形例を示す断面図、図3は耐火床構造の他の変形例を示す断面図、図4は耐火床構造の施工手順を示す工程図である。
【0016】
図1は、ユニット建物10の要部を示すものであり、ユニット建物10は、予め工場生産された複数の建物ユニット11を建築現場に輸送し、それらの建物ユニット11を建築現場の基礎上にて左右上下に隣接設置して構築される。
【0017】
建物ユニット11は以下の如くに製造される。建物ユニット11は、複数の形鋼製床大梁等からなる床躯体21を互いに接合して床構造体20を構成し、床躯体21の複数のコーナー部のそれぞれに鋼管製等の柱31を立設し、それら複数の柱31を複数の形鋼製天井梁等からなる天井躯体(不図示)によって互いに接合して天井構造体(不図示)を構成した、骨組構造体である。
【0018】
このとき、床構造体20にあっては、相対向する床躯体21、21に床下地材としての複数の形鋼製等の小梁22を架け渡し、それら小梁22の上に床板23を敷設し、標準仕様の床構造を構成する。尚、小梁22の上に床下地材としての根太を乗せ、根太の上に床板23を敷設することもある。
【0019】
しかるに、ユニット建物10が耐火性能を具備するときには、標準仕様の床構造を構成するように床躯体21に小梁22を支持させた上述の床構造体20に、以下の如くに耐火性能を付加して耐火床構造を構成せしめる。
【0020】
即ち、耐火床構造を構成する床構造体20にあっては、床躯体21に耐火材24を支持させる。耐火材24は、小梁22の下に流し込むことのできる流動性耐火材料25と、床躯体21に支持されて流動性耐火材料25を支持する膜状材料26とからなる。膜状材料26は、図1に示す床構造体20におけるような平鋼板26Aの両端部を相対する床躯体21に固定するもの、図2に示す床構造体20におけるようなデッキボード状の鋼板26Bの両端部を相対する床大梁21に固定するもの、図3に示す床構造体20におけるような複数本の山形鋼26Dの両端部を相対する床躯体21に固定し、それら山形鋼26Dの上に平鋼板26Cを支持するもの(平鋼板26Cの両端部は相対する床躯体21に固定しても良いがしなくても良い)等にて構成できる。
【0021】
流動性耐火材料25としては、セメント、シリカ、石膏、石灰、モルタル又はコンクリート等を採用でき、石膏としては建築リサイクル石膏を用いることが安価で環境上も良い。膜状材料26としては、鋼板、セメント板、珪酸カルシウム板等を採用できる。
【0022】
そして、耐火床構造を構成する床構造体20にあっては、耐火材24を除く、床躯体21と小梁22とからなる標準仕様分で、全床積載荷重を負担できる。
【0023】
尚、建物ユニット11にあっては、耐火床構造を構成する床構造体20の流動性耐火材料25、膜状材料26を含む耐火材24の全部の組付けを工場生産段階で施工完了しても良いし、耐火材24のうち膜状材料26の組付けだけを工場生産段階で施工し、流動性耐火材料25は以下に述べる如くに相隣る建物ユニット11、11の渡り分を含めて現地施工しても良い。
【0024】
以下、ユニット建物10の耐火床構造の施工手順を、建物ユニット11の工場生産段階とユニット建物10の現地施工段階に分けて説明する。
【0025】
(A)建物ユニット11の工場生産段階
(1)建物ユニット11の床躯体21と柱と天井躯体とからなる骨組構造体を構築する。
【0026】
(2)耐火材24のうちの膜状材料26を床躯体21に支持させる(図4(A))。即ち、耐火床構造を構成するため、小梁22の下全面となる位置に膜状材料26を設け、床躯体21と膜状材料26の突き合せ部を水密にする。膜状材料26の端部を床躯体21に固定し、膜状材料26自体の強度で後工程で付与される流動性耐火材料25を支持可能とする。膜状材料26に十分な強度がない場合には、膜状材料26を下記(3)の小梁22に吊下げ支持する。
【0027】
(3)床躯体21に小梁22を架け渡す(図4(B))。小梁22は、耐火床構造を構成しない一般建物におけると同一材を用いる。
【0028】
(4)小梁22の上に床板23を敷設する(図4(C))。床板23は準不燃材以上の耐火性能を具備するものとする。
【0029】
尚、上述(1)〜(4)の床躯体21、小梁22、床板23、耐火材24の膜状材料26からなる耐火床構造の床構造体20において、床積載荷重を受ける床下地材(小梁22)は、一般建物の床下地材(小梁22)と共通の設計とする。
【0030】
(B)ユニット建物10の現地施工段階
工場生産された建物ユニット11を建築現場に据え付ける。そして、相隣る建物ユニット11、11の渡り部等に接する各建物ユニット11の端部の床板23を前述(A)、(4)の段階で一部切欠いておき、流動性耐火材料供給装置40を用いて、そのユニット渡り部の切欠から耐火材24のうちの流動性耐火材料25を流し込み、床下地材(小梁22)を被覆して耐火床構造を構築する(図4(D))。流動性耐火材料25は、小梁22の下全面に流れ込み得るような十分な流動性を確保する。
【0031】
尚、相隣る建物ユニット11、11の渡り部では、相接する床躯体21、21の上に予め鋼板等の補助膜状材料27を敷設しておく。
【0032】
本実施形態によれば、以下の作用がある。
(1)標準仕様の床構造を構成する床躯体21に耐火材24を支持させることにより、耐火性能を備える耐火床構造を構築可能とした。従って、耐火性能が必要なときだけ、標準仕様の床構造の基本的構成(床躯体21と床下地材(小梁22、根太等))は一切変更せず、必要な耐火材24を付加することで耐火性能を満足することが可能となる。即ち、耐火住宅と一般住宅でそれらの床構造を一部共通化し、住宅の生産性の向上を図ることができる。
【0033】
(2)耐火材24はあくまで耐火性能を満足するために火を遮るためのものであり、床積載荷重は全て耐火材24を付加する前の標準仕様分の床構造で負担する。従って、耐火床構造の設計の簡易を図ることができる。
【0034】
(3)耐火材24を流動性耐火材料25と膜状材料26とからなるものとすることにより、床下地材(小梁22、根太等)の下に流動性耐火材料25を流し込むことによって直ちに耐火性能を付加でき、施工簡易になる。
【0035】
(4)床躯体21に膜状材料26と床下地材(小梁22、根太等)を予め支持させておくことにより、床下地材の上に床板23等を貼ることによって足場を確保した上で流動性耐火材料25を流し込むことができ、施工性を向上できる。
【0036】
(5)耐火性能を満足するユニット建物10において、上述(1)〜(3)を実現できる。
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明はユニット建物以外の建物にも適用できる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、耐火住宅と一般住宅でそれらの床構造を一部共通化し、住宅の生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はユニット建物の耐火床構造を示す断面図である。
【図2】 図2は耐火床構造の変形例を示す断面図である。
【図3】 図3は耐火床構造の他の変形例を示す断面図である。
【図4】 図4は耐火床構造の施工手順を示す工程図である。
【符号の説明】
10 ユニット建物
20 床構造体
21 床躯体
22 小梁(床下地材)
23 床板
24 耐火材
25 流動性耐火材料
26 膜状材料
Claims (5)
- 相対向する床躯体に床下地材を架け渡し、床下地材の端部を床躯体に支持させた標準仕様の床構造に、耐火材によって耐火性能を付加してなる耐火床構造であって、
前記耐火材が、床下地材の下に流し込むことのできる流動性耐火材料と、該流動性耐火材料を支持する膜状材料とからなり、
該膜状材料を床躯体に支持させると供に、床下地材の下方に離間配置させ、
該膜状材料の上面に、流動性耐火材料を流し込み配置してなることを特徴とする耐火床構造。 - 前記耐火床構造のうちで耐火材を除く前記標準仕様の床構造で、全床積載荷重を負担可能とする請求項1に記載の耐火床構造。
- 前記膜状材料が鋼板からなる請求項1又は2に記載の耐火床構造。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の耐火床構造を構築するに際し、
前記床躯体に膜状材料と床下地材を支持させた後、床下地材の下に流動性耐火材料を流し込む耐火床構法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の耐火床構造を用いてなるユニット建物。
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