JP3737252B2 - 上皮細胞増殖因子活性を有するタンパク質の回収精製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バチルス・ブレビスを宿主菌とする遺伝子組換体を培養することによって生産された上皮細胞増殖因子(Epidermal Growth Factor: 以下EGF)活性を有するタンパク質の回収精製法に関するものである。更に、詳細には、本発明はEGF活性を有するタンパク質をコードする遺伝子で形質転換したバチルス・ブレビスを培養し、その培養物からEGF活性を有するタンパク質を回収精製する方法に関するものであって、特に工業的大量処理に適した簡便且つ効率的なタンパク質の回収精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EGFは、ヒトや馬の尿中やウサギ、ラットおよびマウスの顎下腺から単離されており、哺乳動物の種々の組織中に存在していることが知られている(Adv. Metab. Dis., 8, 265(1975))。ヒト上皮細胞増殖因子(human Epidermal Growth Factor: 以下h−EGF)は、53個のアミノ酸からなる分子量約6,000のペプチドで、分子内に3ケ所のジスルフィド結合を持ち、配列番号1に示されるアミノ酸配列であることが知られている(H.Gregory, Nature, 257, 325(1975))。
【0003】
EGFの生理作用は、細胞増殖作用、胃酸分泌抑制作用、抗潰瘍作用、消化管粘膜保護作用、DNA合成促進作用、角膜修復作用、カルシウム遊離促進作用、創傷治癒促進作用、抗炎症作用、鎮痛作用、肝細胞障害抑制作用及び毛胞退縮作用などが報告されている(日本組織培養学会編、細胞成長因子、20頁、朝倉書店1984年)。EGFはこのような作用を有することから創傷治癒薬、抗潰瘍剤、抗癌剤補助剤など様々の分野で応用が試みられている(BIO INDUSTRY, 8, 275(1991))。
【0004】
このようにEGFについて種々の応用研究が進められている一方、EGFを安定に供給可能とする生産方法についても種々検討が加えられている。
【0005】
例えば、バチルス・ブレビスHPD31(Bacillus brevis HPD31: なお、この菌株はバチルス・ブレビスH102(FERM BP−1087)と同一菌株である)はタンパク質を菌体外に分泌生産し、培養液中にタンパク質分解酵素を生産しない菌株であり(特公平4−74997)、遺伝子組換えの宿主菌として様々なタンパク質の生産に利用されている。恵比須らは、このバチルス・ブレビスHPD31を宿主菌としてh−EGFの大量生産技術を確立し、h−EGFを培養液中に約3g/L分泌生産させることに成功している(特開平6−133782)。
また高木らは、EGF活性を有する新規なタンパク質を創製し、バチルス・ブレビスHPD31を用いその高生産に成功している(特願平8−123970)。
【0006】
しかし、遺伝子組換え技術を適用し培養液中に分泌生産されたEGFまたはEGF活性を有するタンパク質を医薬品などに開発するには、培養物中に混在している菌体、培地由来の成分や同時に分泌生産される夾雑タンパク質やその他の代謝産物などの夾雑物を除去し、目的とするEGF活性を有するタンパク質のみを回収精製する必要がある。
この精製工程は簡便でかつ工程数も少ない方がよく、特に精製を工業規模で行う場合には精製工程が複雑であると多大な設備投資が必要であり、その為生産コストも高くなってしまうという問題が生じる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような技術上ないし工業上の必要性に鑑みてなされたものであって、バチルス・ブレビスを宿主菌とする異種遺伝子産物の生産において、菌体を含む培養物中からの効率的な回収精製技術を提供することにある。即ち、本発明は、バチルス・ブレビスの培養物中に分泌生産されたEGF活性を有するタンパク質を共存する成分から分離し、簡便かつ高収率に回収精製する方法を提供するものであって、特に工業的な見地から、本発明は、EGF活性を有するタンパク質の回収精製に特に適した簡便且つ効率的な大量処理システムを新たに開発し、これを提供する目的でなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、EGF活性を有するタンパク質をバチルス・ブレビスの培養物中から効率よく回収精製する方法について鋭意研究を重ねた結果、培養物のpHを特定の範囲に調整すると、バチルス・ブレビスの培養物中に含まれる夾雑タンパク質の大部分が特異的に凝集沈殿し、凝集沈殿画分及び菌体を効率よく除くことが可能であること、更に、清澄画分に塩を加えることによりEGF活性を有するタンパク質を特異的に凝集沈殿させ膜濾過または遠心分離することにより非常に簡便かつ効率よくEGF活性を有するタンパク質を回収精製できるという有用な新知見を得た。
本発明は、この有用新知見に基き更に研究の結果、遂に完成されたものである。
【0009】
すなわち本発明は、EGF活性を有するタンパク質を含有するバチルス・ブレビスの培養物をpH調整によって該培養物中に含まれる大部分の夾雑タンパク質を特異的に沈殿させ、これを除去した後、更に、清澄画分に塩を加えてEGF活性を有するタンパク質を沈殿させこれを膜濾過または遠心分離によって、共存する夾雑物から分離回収することを特徴とするEGF活性を有するタンパク質の回収精製法に関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、EGF活性を有するタンパク質を含有するバチルス・ブレビスの培養物を、下記工程(a)〜(b)により共存する夾雑タンパク質やその他の夾雑物よりEGF活性を有するタンパク質を回収精製する方法に関するものである。
【0011】
すなわち本発明を実施するには、該培養物について、下記工程(a)〜(b)にしたがって処理すればよく、これらの処理により、該タンパク質を効率的に回収精製することができる。
(a)−1:該培養物のpHを3.0〜4.5(好適には3.5〜3.9)に調整して、該培養物に含まれる夾雑タンパク質を沈殿させ;
(a)−2:(a)−1で生じた沈殿及び菌体を分離除去し、EGF活性を有するタンパク質を含有する清澄画分を得;
(b)−1:(a)−2で得た清澄画分に塩を加えて、EGF活性を有するタンパク質を沈殿させ;
(b)−2:(b)−1で生じた沈殿を回収する。
【0012】
本発明の回収精製方法は、EGF活性を有するタンパク質を含有するバチルス・ブレビスの培養物に対して適用できる。具体的には、バチルス・ブレビスHPD31はh−EGFやEGF活性を有するタンパク質を菌体外に高生産するので該菌株の該培養物に本発明の回収精製法が有効に適用できる。
【0013】
本発明方法で回収精製されるEGF活性を有するタンパク質を具体的に列挙すると、配列番号1のヒトEGF、配列番号2のマウスEGF、配列番号3のラットEGFや配列番号4〜7のタンパク質(特願平8−123970)などが挙げられる。また、これらのEGF活性を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子は、EGF生産能を有する細胞から単離した遺伝子でもよいし、化学的に合成した遺伝子を用いてもよい。例えば合成遺伝子を用いる場合は、バチルス・ブレビスにおいて最も容認されたコドンでなる遺伝子が好適である。
【0014】
EGF活性を有するタンパク質遺伝子は、公知の方法でバチルス・ブレビスに組み込めばよく、例えばモレキュラー・クローニング・ア・ラボラトリーマニュアル第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Molecular Cloning 2nd ed, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)に記載の方法で行えばよい。
【0015】
このようにEGF活性を有するタンパク質をコードする遺伝子で形質転換したバチルス・ブレビスを通気攪拌培養することによって、EGF活性を有するタンパク質を含有するバチルス・ブレビスの培養物を得ることが出来る。
【0016】
こうして得たバチルス・ブレビスの培養物は菌体を含有したまま工程(a)〜(b)で処理することを基本とするが、予め培養物を膜処理するか遠心分離する前処理で菌体を除いた後に工程(a)〜(b)で処理してもよい。即ち、本発明は、該培養物の(a)pHを3.0〜4.5に調整して、培養物に含まれる夾雑タンパク質を特異的に沈殿させ、この沈殿タンパク質及び菌体を除去して清澄画分を得る工程、更に、(b)、(a)で得た清澄画分に塩を加えて、EGF活性を有するタンパク質を沈殿させ、この沈殿したタンパク質画分を共存していた夾雑成分から分離回収するEGF活性を有するタンパク質の回収精製法である。
以下、本発明の工程(a)〜(b)についてさらに詳しく説明する。
【0017】
先ず、EGF活性を有するタンパク質を含有するバチルス・ブレビスの培養物をそのまま、または、遠心分離や膜濾過によって予じめ菌体を除去した培養物を、次の工程にしたがって処理する。
【0018】
(a)−1:該培養物のpHを調整することによって、夾雑タンパク質を沈殿させる。pHは、培養物に含まれる夾雑タンパク質が特異的に沈殿し、EGF活性を有するタンパク質が沈殿しない範囲に調整する。夾雑タンパク質の主たるものは、バチルス・ブレビスHPD31を宿主菌に用いた場合、この菌株が菌体外に生産する細胞表層タンパク質が主たるもので(HWP;J.Bacteriol., 172, 1312-1320(1990))、pHを3.0〜4.5の範囲、更に好ましくは3.5〜3.9の範囲に調整することで特異的に沈殿させることができる。このpHの調整に用いる酸は、塩酸、硝酸、硫酸などの酸を用いることでよい。
【0019】
(a)−2:(a)−1工程で沈殿した夾雑タンパク質を除去する工程で、沈殿は遠心分離や膜濾過によって系外に除去することができる。膜濾過によって除く場合には、EGF活性を有するタンパク質が濾過され、沈殿したHWPを含む夾雑タンパク質が濃縮されるポアサイズを有する濾過膜を使用すればよい。例えば、0.45μmのポアサイズの濾過膜を用いて精密濾過を行えば、沈殿は膜上に濃縮され、除去することができる。このとき更に、pH3.0〜4.5の緩衝液を用いて沈殿を洗浄すれば、EGF活性を有するタンパク質をより効率よく濾過液に回収することができる。このとき用いる緩衝液は、EGF活性を有するタンパク質が活性を失うことのない緩衝液、例えば酢酸緩衝液やリン酸緩衝液等を用いればよい。
こうして、バチルス・ブレビスの培養物から夾雑タンパク質が除去され、精製度の高まったEGF活性を有するタンパク質溶液を得ることができる。
【0020】
(b)−1:(a)−2工程で回収した濾過液に塩を添加して、EGF活性を有するタンパク質を特異的に沈殿させる。添加する塩は、EGF活性を有するタンパク質の凝集性がよく且つ活性を失うことのない塩であればよく、例えば硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが好適に用いることができる。
塩濃度はEGF活性を有するタンパク質が沈殿する濃度であればよく、9%以上の濃度であればよい。例えば塩化ナトリウムを用いた場合には9%以上、より好ましくは12%以上の濃度でよい。
【0021】
(b)−2:(b)−1工程で沈殿したEGF活性を有するタンパク質を回収するには、(a)−2と同じく遠心分離や膜濾過によって沈殿を回収することができる。膜濾過によって回収する場合には、沈殿が膜上に濃縮されるポアサイズを有する膜を使用すればよい。例えば、0.45μmのポアサイズの濾過膜を用いて精密濾過を行い沈殿を濃縮、回収することができる。このとき加えた塩濃度と同じ塩濃度の緩衝液で沈殿を洗浄し夾雑物を洗い流すことが出来る。このようにして回収したEGF活性を有するタンパク質を緩衝液に溶解させた後、透析や膜濾過によって脱塩する。膜濾過で脱塩を行う場合には、例えば分画分子量5,000の限外濾過膜を用いて濾過を行い、濃縮が進んだ段階で適量の純水を加えて十分に塩を除去すればよい。また膜濾過による脱塩は、目的とするEGF活性を有するタンパク質の濃縮も同時に行えるので、液量をコンパクトにでき、以降凍結乾燥を行う場合に効果的である。
以上のようにして、高純度にまで精製されたEGF活性を有するタンパク質を得ることができる。
【0022】
本発明の回収精製法により、非常に簡便に、バチルス・ブレビスの培養物からEGF活性を有するタンパク質を85%以上の回収率で、90〜95%以上の純度にまで精製できる。本発明方法で得たEGF活性を有するタンパク質を各種用途に適用することもできるが、さらに純度を上げる必要がある場合には、更に、クロマトグラフィーなど公知の方法で処理すればさらに高純度のEGF活性を有するタンパク質を得ることが出来る。
【0023】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、これは例示的なものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
【実施例1】
バチルス・ブレビスHP926(FERM BP−5382)が保有するプラスミドpHT926から調製したh−EGF高分泌生産プラスミドpHT110EGF(特開平6−133782)でバチルス・ブレビスHPD31(FERMBP−1089)をエレクトロポレーション法(H.Takagi et al. Agric. Biol. Chem., 53, 3099-3100(1989))で形質転換し、h−EGFを分泌生産する形質転換体を得た。ここで得た菌株をペプトン4%、酵母エキス0.5%、MgSO4 5mM、MnSO4 1mM、FeSO4 36μM、グルコース2%、寒天1.5%、pH7.2の寒天培地にて30℃で一昼夜培養した。これを前記と同じ組成の液体培地1Lに植菌して30℃で一晩振とう培養を行ったものを前培養液とした。
【0025】
30Lジャーファーメンターに前培養と同じ組成の生産培地17L分注した後、120℃で15分間滅菌し、冷却後、前培養液200mlを接種し、攪拌数200rpm、通気量1vvm、30℃で3日間培養を行った。
【0026】
培養物中のh−EGF量をHPLC(カラム:C18−100A、径4mm×長さ250mm、バッファー:0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)/H2O、0.1% TFA/50%アセトニトリル、リニアグラジエント、検出:UV276nm)で分析し、市販h−EGF(フナコシ(株)社製)を標準品として同条件でHPLCを行った時のピーク面積と比較して生産量を求めた結果、培養物中に1.0g/Lのh−EGFが生産されていた。
【0027】
培養物17Lを0.45μmの濾過膜(ペリコンカセットシステム(ミリポア社製))を用いて菌体を除去し、濾過画分にh−EGFを含む培養上清を回収した。この培養上清のpHを、6N塩酸を用いて3.8に調整し、HWPを含む夾雑タンパク質を沈殿させ、前記と同じ濾過膜を用いて濾過を行ってh−EGFを濾過画分に回収した。また、膜上の夾雑タンパク質を20mM酢酸緩衝液(pH3.8)1Lで洗浄し、膜上に残っていたh−EGFを濾過画分に回収した。
【0028】
次に、h−EGFを含む濾過画分にNaClを12%濃度になるように加え、h−EGFを沈殿させた。これを0.45μmの濾過膜(ペリコンカセットシステム(ミリポア社製))を用いて濾過し、h−EGFを膜上に回収した。回収したh−EGFを12% NaClを含む20mM酢酸緩衝液(pH3.8)1Lで洗浄濾過を行い不純物を濾過液中に除去した後、膜上のh−EGF画分を200mlまで濃縮した。こうして回収したh−EGFを0.1Mトリス緩衝液(pH8.0)で溶解した。
【0029】
このh−EGF含有液を、分画分子量5,000の限外濾過膜(ペリコンカセットBiomax5(ミリポア社製))を用い、限外濾過して脱塩を行った。500ml程度まで濃縮後、塩類を完全に除くために、純水10Lを徐々に加えながら濾過した。
最終的に回収したh−EGFの回収率および純度を求めた結果、培養物からのh−EGFの回収率は90%でその純度は95%であった。
【0030】
【実施例2】
配列番号7に示すEGF活性を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子を保有するプラスミドpHT−ABC(特願平8−123970)で、バチルス・ブレビスHPD31(FERM BP−1089)をエレクトロポレーション法((H.Takagi et al. Agric. Biol. Chem., 53, 3099-3100(1989))によって形質転換し、EGF活性を有するタンパク質ABCを分泌生産する形質転換体を得た。
【0031】
ここで得た菌株を、ペプトン4%、酵母エキス0.5%、MgSO4 5mM、MnSO4 1mM、FeSO4 36μM、グルコース2%、寒天1.5%、pH7.2の寒天培地にて30℃で一昼夜培養した。これを前記と同じ組成の液体培地100mlを500ml三角フラスコに分注し、120℃、15分間滅菌し、冷却後に接種して30℃で一晩振とう培養を行ったものを前培養液とした。
【0032】
2Lジャーファーメンター2本各々に前培養と同じ組成の生産培地1L分注した後、120℃で15分間滅菌し、冷却後、前培養液20mlを接種し、攪拌数200rpm、通気量1vvm、30℃で3日間培養を行った。
【0033】
培養物中のタンパク質ABCの量をHPLC(カラム:C18−100A、径4mm×長さ250mm、バッファー:0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)/H2O、0.1% TFA/50%アセトニトリル、リニアグラジエント、検出:UV276nm)で分析し、市販h−EGF(フナコシ(株)社製)を標準品として同条件でHPLCを行った時のピーク面積と比較して生産量を推定した結果、培養物中に約0.8g/Lのタンパク質が生産されていた。
【0034】
この培養物のpHを6N塩酸を用いて3.8に調整し、HWPを含む夾雑タンパク質を沈殿させ、濾過膜(ミニタンカセットシステム(ミリポア社製))を用いて濾過を行ってタンパク質ABCを濾過画分に回収した。また膜上の夾雑タンパク質及び菌体を20mM酢酸緩衝液(pH3.8)500mlで洗浄し、更に、膜上に残っていた少量のタンパク質ABCを濾過画分に回収した。
【0035】
次に、タンパク質ABCを含む濾過画分に硫酸アンモニウムを15%濃度になるように加え、タンパク質ABCを沈殿させた。これを0.45μmの濾過膜(ミニタンカセットシステム(ミリポア社製))を用いて濾過し、タンパク質ABCを膜上に回収した。回収したタンパク質ABCを、15%硫酸アンモニウムを含む20mM酢酸緩衝液(pH3.8)500mlで洗浄し、不純物を除去した後、膜上のタンパク質ABC画分を200mlまで濃縮した。こうして回収したタンパク質ABCを0.1Mトリス緩衝液(pH8.0)で溶解した。
【0036】
このタンパク質ABC含有液を、分画分子量5,000の限外濾過膜(ペリコンカセットBiomax5(ミリポア社製))を用いて限外濾過して脱塩を行った。500ml程度まで濃縮後、塩類を完全に除くために、純水10Lを徐々に加えながら濾過した。
最終的に回収したEGF活性を有するタンパク質ABCの純度および回収率を求めた結果、培養物からのEGF活性を有するタンパク質ABCの回収率は推測値85%でその純度は93%であった。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、培養物からEGF活性を有するタンパク質を非常に簡便且つ効率的に回収精製する方法を提供するものであって、特に工業的規模で該タンパク質を回収精製するのに有効である。
【0038】
【配列表】
ヒトEGF、マウスEGF、ラットEGFのアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号1、2、3に示し、4種の関連タンパク質を、それぞれ、配列番号4、5、6、7に示す。
下記表1〜7に、配列番号1〜7で示される各配列を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
Claims (3)
- 上皮細胞増殖因子活性を有するタンパク質を分泌生産するバチルス・ブレビスの形質転換体を培養することにより得られた、上皮細胞増殖因子活性を有するタンパク質を含有する培養物に対し、
(a)培養物のpHを3.0〜3.8に調整して、培養物に含まれるバチルス・ブレビスが分泌した夾雑タンパク質を特異的に沈殿させ、次いで、培養物から夾雑タンパク質の沈殿物及び菌体を除去して清澄画分を得る工程;
(b)次いで、(a)の工程で得た清澄画分に塩を加えて、上皮細胞増殖因子活性を有するタンパク質を沈殿させ、上皮細胞増殖因子活性を有するタンパク質の沈殿物を回収し、清澄画分に含まれる夾雑成分を分離除去する工程;
の各工程からなること、を特徴とする上皮細胞増殖因子活性を有するタンパク質を分泌生産するバチルス・ブレビスの形質転換体の培養物中から上皮細胞増殖因子活性を有するタンパク質を回収精製する方法。 - 工程(b)において、塩としては、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、クエン酸ナトリウムから選ばれる少なくともひとつを使用し、添加濃度を9%以上、更に好適には12%以上とすること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
- 上皮細胞増殖因子活性を有するタンパク質が、配列番号1に示したヒト上皮細胞増殖因子、配列番号2に示したマウス上皮細胞増殖因子、配列番号3に示したラット上皮細胞増殖因子または配列番号4〜7で示した何れかのタンパク質の少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
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