JP3736938B2 - 有機el素子の製造方法、有機薄膜形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は薄膜形成装置にかかり、特に、大口径基板に有機薄膜を形成する有機薄膜形成装置の技術分野に関する。
【0002】
【従来の技術】
高輝度の有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた表示装置は、視野角が広く、薄型の表示装置が得られることから近年注目されており、カラー化と長寿命化による実用化に向け、精力的な研究が行われている。
【0003】
図5に示すように、一般的な有機EL素子は、ガラス基板106上に透明導電膜151を形成した後、有機薄膜152〜155を形成し、次いで、有機薄膜155表面に電極156を形成し、最後に、保護膜157を形成し、全体を保護している。
【0004】
このように形成される有機EL素子は、各有機薄膜152〜155に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層として機能させ、透明導電膜151に正電圧、電極156に負電圧を印加すると、発光層である有機薄膜154が発光し、ガラス基板106を透過したEL光158が外部に放射される。
【0005】
上述の透明導電膜151は、一般にはIn2O3にSnを添加したITO(In-Tin Oxide)薄膜が用いられている。その表面に有機薄膜152〜155を形成する場合には、透明導電膜151が形成されたガラス基板106を用意し、透明導電膜151の表面処理を行った後、図6に示す有機薄膜形成装置103の真空槽110内に搬入する。
【0006】
この真空槽110の底壁には、有機蒸発源105が配置されており、搬入されたガラス基板106を真空槽110の天井に配置し、透明導電膜側を有機蒸発源105に対向させ、真空槽110内を所定圧力まで真空排気する。
【0007】
有機蒸発源105内には、予め粉末状の有機蒸発材料を配置しておき、有機蒸発源105を加熱すると、真空槽110内に有機蒸発材料の蒸気が放出されるようになる。
【0008】
蒸気の放出が安定したところで、有機蒸発源105上に配置されたシャッター113を開けると、有機蒸発材料の蒸気はガラス基板106に到達し、表面に有機薄膜が形成される。
【0009】
このように、上記有機薄膜形成装置103を用いれば、真空雰囲気中でガラス基板106表面に有機薄膜を形成できるので、膜質のよい有機薄膜を得ることが可能となっている。
【0010】
ところで、近年ではガラス基板106が増々大口径化しており、1個の有機蒸発源105から蒸気を放出させるだけでは、有機薄膜の面内膜厚分布が不均一になってしまうことが知られている。
【0011】
そこで従来技術でも対策が採られており、複数の有機蒸発源を真空槽の底壁に配置し、各有機蒸発源から同じ有機薄膜材料の蒸気を放出させると共に、基板を回転させ、できるだけ基板表面に均一に蒸気が到達するようにし、大口径基板上に均一な膜厚の有機薄膜を形成しようとしている。
【0012】
しかしながら、その場合、薄膜形成速度は向上するが、面内膜厚分布の均一性は有機蒸発源の配置位置によって大きく異なってしまい、必ずしも膜厚分布が均一にはならず、その原因の究明と対策が求められている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、大口径基板表面に均一な膜厚の有機薄膜を形成できる技術を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、蒸発源内の有機薄膜材料を蒸発させて、基板に蒸着させる有機EL素子の製造方法であって、真空槽を真空排気するステップと、前記基板を回転させるステップと、回転する前記基板の軌跡の外周より外側に配置された蒸発源を加熱して、前記有機薄膜材料を蒸発させ、前記有機薄膜材料を前記基板に蒸着させるステップと、を含む有機EL素子の製造方法である。
【0015】
請求項2記載の発明は、蒸発源内の有機薄膜材料を蒸発させて、基板に蒸着させる有機EL素子の製造方法であって、真空槽を真空排気するステップと、前記基板を回転させるステップと、前記蒸発源と前記基板の間のシャッタを閉止した状態で、前記基板の軌跡の外周より外側に配置された蒸発源を加熱して、前記蒸発源内の有機薄膜材料を蒸発させるステップと、前記有機薄膜材料の蒸発が安定した状態で、前記シャッタを開けるステップと、前記有機薄膜材料を前記基板に蒸着させるステップと、を含む有機EL素子の製造方法である。
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法であって、前記有機薄膜材料は粉体状の昇華性有機化合物である。
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法であって、前記有機薄膜材料はAlq 3 である。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法であって、前記蒸発源は、セラミックで形成され、前記有機薄膜材料を収納する収納部は内径より深さ方向が長く、かつ、開口部の径が底面の径より大きい有機EL素子の製造方法である。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法であって、前記真空槽を真空排気するステップにおいて、前記真空槽は概ね1.33×10 -4 Paに排気される、有機EL素子の製造方法である。
請求項7記載の発明は、真空槽と、該真空槽内に配置された有機蒸発源とを有し、前記有機蒸発源内に有機薄膜材料を配置して加熱し、前記有機薄膜材料の蒸気を所定の軸線方向に放出させ、前記真空槽内に搬入した基板を回転させながら表面に前記蒸気を付着させ、有機EL素子の有機薄膜を形成する有機薄膜形成装置であって、前記有機蒸発源は、前記基板が前記軸線と交差しないように配置され、前記蒸気は濃度勾配を有し、前記蒸気を拡散しやすい軸線方向に放出させるように構成された有機薄膜形成装置である。
請求項8記載の発明は、請求項7記載の有機薄膜形成装置であって、前記基板の延長線と前記軸線が概ね90°で交差する有機薄膜形成装置である。
請求項9記載の発明は、請求項7又は請求項8のいずれか1項に記載の有機薄膜形成装置であって、前記有機薄膜材料は粉体状の昇華性有機化合物である。
請求項10記載の発明は、請求項7又は請求項8のいずれか1項に記載の有機薄膜形成装置であって、前記有機薄膜材料はAlq 3 である。
請求項11記載の発明は、請求項7乃至請求項10のいずれか1項記載の有機薄膜形成装置であって、前記蒸発源は、セラミック製で、前記蒸発源の有機薄膜材料を収納する収納部は内径より深さ方向が長い形状で、かつ、開口部の径が底面の径より大きい有機薄膜形成装置である。
請求項12記載の発明は、請求項7乃至請求項11のいずれか1項記載の有機薄膜形成装置であって、前記基板の回転中心と前記蒸着源の軸線との距離をL、前記基板の長い方の辺をWとした場合、
L>W/2・√2
となるように前記蒸着源が配置された有機薄膜形成装置である。
【0016】
本発明の発明者等が、真空槽内に複数の有機蒸発源を配置し、基板を回転させた場合の面内膜厚分布を調査したところ、配置場所を種々異ならせても、基板が回転する際に、各有機蒸発源の真上位置を通過する部分の膜厚が厚くなる傾向を見い出した。
【0017】
有機蒸発源は、図3の符号30に示すように、石英、グラファイト又はSiC等で構成されたセラミックブロック31で構成されており、そのセラミックブロック31に設けられた凹部が収容部33とされ、内部に有機薄膜材料32が配置されている。
【0018】
一般に、EL素子に用いる有機薄膜では、その原料となる有機薄膜材料32は粉体状の昇華性化合物であり、粉体を構成する粒子間には隙間が生じている。そのため、真空中での熱伝導率は大変低くなっており、赤外線等で有機薄膜材料32を直接加熱すると、局所的に過熱状態になり、突沸してしまうことが知られている。
【0019】
従って、有機蒸発源30を用いる際には有機薄膜材料32は直接加熱せず、セラミックブロック31を加熱して、その壁面からの熱伝導によって有機薄膜材料32を間接的に加熱し、蒸気8が安定に発生するようにしている。
【0020】
ところが、壁面からの熱伝導によって加熱する場合は、有機薄膜材料32の中央部分には熱が伝わりにくくなるため、収容部33が大径であると、中央部分に蒸発できない有機薄膜材料32が残ってしまう。従って、収容部33の径はできるだけ小さい方が望ましいと言われている。
【0021】
しかし、収容部33を小径にした場合には、蒸気放出口となる開口部35も小径になるため、蒸気8は点状の蒸発源から発生した蒸気と同様の状態で拡散する。
【0022】
金属蒸気の場合、点状の蒸発源から発生した場合は、真空槽内に等方的に拡散するが、有機化合物蒸気の場合には発生する蒸気が多量であるため、蒸気内に濃度勾配が発生する。蒸気8内に濃度勾配があった場合には、真空槽内で蒸気8が拡散し易い方向と拡散しにくい方向が発生する。主として収容部33の中心軸線36方向には拡散し易く、中心軸線36の周囲には少量しか拡散しないことが観察された。
蒸気8がこのような状態で拡散すると、基板を回転させても、蒸気放出方向である中心軸線36と交差する部分に多量の蒸気が付着してしまう。
【0023】
以上のように、有機化合物蒸気の場合、放出方向の軸線(中心軸36)と交差する部分の膜厚が厚くなるので、真空槽内に有機蒸発源を配置する際に、基板が蒸気の放出方向の軸線上を横切らないようにしたところ、面内膜厚分布が均一な有機薄膜を得ることができた。
【0024】
特に、基板がその中心軸線を回転軸線として回転し、有機蒸発源が上方に蒸気を放出する場合には、基板の回転領域の外側に有機蒸発源を配置し、有機蒸発源の真上には基板は存しないようにしたり、有機蒸発源を、基板の長辺を直径とする円形の回転範囲の外側に配置すると効果的である。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1を参照し、符号3は本発明の一実施形態の有機薄膜形成装置であり、真空槽10を有している。
【0026】
その真空槽10の底壁上には2個の有機蒸発源5A、5Bが配置されており、天井側では、高さHが500mmのところに基板ホルダ12が配置されている。
【0027】
この基板ホルダ12に、一辺の長さWが400mmの正方形形状のガラス基板6を装着し、真空槽10内を図示しない真空ポンプによって真空排気し、所定真空度(1.0×10-6Torr)に到達した後、基板ホルダ12内のヒータに通電し、ガラス基板6を340℃まで加熱した。
【0028】
2個の有機蒸発源5A、5Bは、図3に示した有機蒸発源30と同じ構造であり、グラファイト(又はSiC)製のセラミックブロック31によって構成されており、該セラミックブロック31に形成された凹部が収容部33にされている。
【0029】
収容部33の上部の開口部35の径は10φにされ、底面は開口部35よりも小径にされている。各有機蒸発源5A、5Bの収容部33内には、主として粉体状の昇華性有機化合物であるAlq3[Tris(8-hydroxyquinoline) aluminium, sublimed]が有機蒸発材料32として配置されている。
【0030】
セラミックブロック31周囲には、抵抗加熱ヒータ(図示せず)が巻回されており、各有機蒸発源5A、5Bのヒータに通電し、有機蒸発材料32の蒸気を発生させると、真空槽10内に開口部35から蒸気が放出される。
【0031】
そのとき、基板ホルダ12とガラス基板6とを一緒に回転させておき、蒸気放出量が安定したところで、開口部35上に配置されたシャッター13A、13Bを開け、有機蒸発材料32の蒸気をガラス基板6に到達させ、表面に有機薄膜を形成させる。
【0032】
2個の有機蒸発源5A、5Bの中心軸線を符号21A、21Bで示し、ガラス基板6の回転軸線を符号20で示すと、有機蒸発源5A、5B間の距離は600mmであり、回転軸線20に対して対称に配置されている(回転軸線20と中心軸線21A、21Bの距離Lは300mm)。
【0033】
ガラス基板6が回転した場合、その四隅a1〜a4は、図2に示すように半径200√2mmの円形の軌跡23を示す。ガラス基板6の全表面はその回転軌跡23内にある。
【0034】
他方、有機蒸発源5A、5Bの中心軸線21A、21Bと回転軸線20との距離Lは、それぞれ300mmにされており、各有機蒸発源5A、5Bは、断面が軌跡23となる円筒形形状の回転範囲の外側にある。従って各有機蒸発源5A、5Bの真上にはガラス基板6はなく、ガラス基板6が回転する際に、中心軸線21A、21Bを横切らない。
【0035】
有機薄膜の形成を所定時間行った後、真空槽10内からガラス基板6を取り出し、面内膜厚分布を測定したところ、図4に示すように、±5%以内の均一なAlq3薄膜が得られた。
【0036】
以上説明した有機薄膜形成装置3によれば、有機蒸発源の蒸気放出方向である中心軸線32上にはガラス基板6がないので、有機薄膜材料32の蒸気の濃度の高い部分はガラス基板6に到達できず、中心軸線32の側方に拡散した蒸気によって有機薄膜が形成されるので、膜厚分布が均一になる。
【0037】
なお、上記実施形態では、有機蒸発源5A、5Bを半径200√2mm(W/2・√2mm)の円の外側に配置したが、ガラス基板6の一辺を直径とする半径200mmの円の外側に配置しても同様の効果がある。ガラス基板が長方形である場合、長辺を直径とする円形の回転範囲の外側に配置すればよい。
【0038】
【発明の効果】
大口径の基板表面に均一な膜厚の有機薄膜を形成できる。
有機蒸発源の収容部を小径にできるので、高価な有機薄膜材料が全部蒸発し、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機薄膜形成装置の一例を示す模式図
【図2】基板の軌跡を説明するための図
【図3】有機蒸発源を説明するための図
【図4】本発明装置によって形成した有機薄膜の膜厚分布を示す図
【図5】有機EL素子を説明するための図
【図6】従来技術の有機薄膜形成装置の模式図
【符号の説明】
3……有機薄膜形成装置 5A、5B……有機蒸発源 6……基板 10……真空槽 21A、21B……放出方向の軸線(中心軸線)
Claims (12)
- 蒸発源内の有機薄膜材料を蒸発させて、基板に蒸着させる有機EL素子の製造方法であって、
真空槽を真空排気するステップと、
前記基板を回転させるステップと、
回転する前記基板の軌跡の外周より外側に配置された蒸発源を加熱して、前記有機薄膜材料を蒸発させ、前記有機薄膜材料を前記基板に蒸着させるステップと、を含む有機EL素子の製造方法。 - 蒸発源内の有機薄膜材料を蒸発させて、基板に蒸着させる有機EL素子の製造方法であって、
真空槽を真空排気するステップと、
前記基板を回転させるステップと、
前記蒸発源と前記基板の間のシャッタを閉止した状態で、前記基板の軌跡の外周より外側に配置された蒸発源を加熱して、前記蒸発源内の有機薄膜材料を蒸発させるステップと、
前記有機薄膜材料の蒸発が安定した状態で、前記シャッタを開けるステップと、
前記有機薄膜材料を前記基板に蒸着させるステップと、
を含む有機EL素子の製造方法。 - 前記有機薄膜材料は粉体状の昇華性有機化合物である請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法。
- 前記有機薄膜材料はAlq 3 である請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法。
- 前記蒸発源は、セラミックで形成され、前記有機薄膜材料を収納する収納部は内径より深さ方向が長く、かつ、開口部の径が底面の径より大きい請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法。
- 前記真空槽を真空排気するステップにおいて、前記真空槽は概ね1.33×10 -4 Paに排気される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の有機EL素子の製造方法。
- 真空槽と、該真空槽内に配置された有機蒸発源とを有し、
前記有機蒸発源内に有機薄膜材料を配置して加熱し、前記有機薄膜材料の蒸気を所定の軸線方向に放出させ、
前記真空槽内に搬入した基板を回転させながら表面に前記蒸気を付着させ、有機EL素子の有機薄膜を形成する有機薄膜形成装置であって、
前記有機蒸発源は、前記基板が前記軸線と交差しないように配置され、
前記蒸気は濃度勾配を有し、前記蒸気を拡散しやすい軸線方向に放出させるように構成された有機薄膜形成装置。 - 前記基板の延長線と前記軸線が概ね90°で交差する請求項7記載の有機薄膜形成装置。
- 前記有機薄膜材料は粉体状の昇華性有機化合物である請求項7又は請求項8のいずれか1項に記載の有機薄膜形成装置。
- 前記有機薄膜材料はAlq 3 である請求項7又は請求項8のいずれか1項に記載の有機 薄膜形成装置。
- 前記蒸発源は、セラミック製で、前記蒸発源の有機薄膜材料を収納する収納部は内径より深さ方向が長い形状で、かつ、開口部の径が底面の径より大きい請求項7乃至請求項10のいずれか1項記載の有機薄膜形成装置。
- 前記基板の回転中心と前記蒸着源の軸線との距離をL、前記基板の長い方の辺をWとした場合、
L>W/2・√2
となるように前記蒸着源が配置された請求項7乃至請求項11のいずれか1項記載の有機薄膜形成装置。
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