JP3732966B2 - 耐食性部材 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐食性部材に関し、特に半導体製造プロセス中、フッ素系及び塩素系腐食性ガス或いはフッ素系、塩素系プラズマを利用するCVD工程やドライエッチング工程で使用される装置の内壁部材や被処理物を支持する支持体、フォーカスリング、防着板、ライナーなどの治具等として使用される部材に好適な耐食性部材に関するものである。
【0002】
【従来技術】
半導体素子などの高集積回路形成に使用されるドライプロセスやプラズマコーティング等プラズマの利用は近年急速に進んでいる。半導体におけるプラズマプロセスとしては、フッ素系等のハロゲン系腐食ガスがその反応性の高さから、気相成長、エッチングやクリーニングに利用されている。
【0003】
これら腐食性ガスに接触する部材は、高い耐食性が要求される。従来より被処理物以外のこれらプラズマに接触する部材は、一般にガラスや石英などのSiO2 を主成分とする材料やステンレス、モネル等の金属が多用されている。
【0004】
また、半導体製造時において、ウェハを支持固定するサセプタ材としてアルミナ焼結体、サファイア、AlNの焼結体、又はこれらをCVD法等により表面被覆したものが耐食性に優れるとして使用されている。また、グラファイト、窒化硼素をコーティングしたヒーター等も使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来から用いられているガラスや石英ではプラズマ中の耐食性が不充分で消耗が激しく、特にフッ素或いは塩素プラズマに接すると接触面がエッチングされ、表面性状が変化してエッチング条件に影響する等の問題が生じていた。また、ステンレスなどの金属を使用した部材でも耐食性が不充分なため、腐食によって特に半導体製造においては不良品発生の原因となる。
【0006】
アルミナ、AlNの焼結体は、上記の材料に比較してフッ素系ガスに対して耐食性に優れるものの、高温でプラズマと接すると腐食が徐々に進行して焼結体の表面から結晶粒子の脱粒が生じ、パーティクル発生の原因になるという問題が起きている。
【0007】
このようなパーティクルの発生は、半導体の高集積化、プロセスの更なるクリーン化に伴い、イオン衝撃や気相で反応生成したごく微細なパーティクルによってメタル配線の断線、パターンの欠陥等により、素子特性の劣化や歩留まりの低下等の不具合を発生する恐れが生じている。
【0008】
本発明者らは、このような問題を解決するため、先にフッ素、塩素系プラズマに対して材料表面に安定なハロゲン化物を形成する周期律表第2A、3A族元素を主成分とする材料により形成することを提案してきた(特開平9−295863号公報、特開平10−45467号公報等)。特に高耐食性に優れた周期律表第2A、3A族元素の酸化物、フッ化物を主成分とする従来材料は、フッ素、塩素系のプラズマに対しては安定であるが、例えば酸化物は高融点であるため緻密な焼結体を作製するには助剤を添加して焼成温度を下げる必要がある。しかし助剤として添加した元素により形成された粒界相がプラズマにエッチングされ、脱粒してパーティクルが発生してしまうという問題があった。またフッ化物は焼成時に分解してフッ素を発生するため、フッ素腐食に対応した特殊な炉が必要となり、大型化が困難であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、フッ素系及び塩素系の腐食性ガスやプラズマに対して、パーティクルを発生しない高耐食性に優れたセラミック材料についてさらに検討を重ねた結果、ハロゲン系腐食性ガスやそのプラズマに曝される部位が、ATiO3 型結晶(AはMg、Ca、Sr、Ba等アルカリ土類金属の群から選ばれる少なくとも1種の元素)を主体とし、前記金属原子Aと前記Ti原子のA/Tiで表される比率が、1.005〜1.998、相対密度が98%以上、Al、Siの酸化物換算量が合計で0.5重量%以下のチタン酸塩焼結体から形成されることが、ハロゲンと反応した場合、高蒸気圧化合物を形成するTi元素を結晶中に含有するにも関わらず、フッ素、塩素等のハロゲン系プラズマに対して高耐食性を示すことを見いだした。
【0010】
この材料は、SiO2 、Al2 O3 等の焼結助剤を必ずしも必要とせず1100〜1500℃の低温で緻密化が可能で、焼成時に腐食性ガスを発生することもなく特殊な炉を必要としないため、大型部品への対応も容易である。
【0011】
また、前記焼結体中に、希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種の元素を酸化物換算で10重量%以下の割合で含有することが望ましい。
【0012】
さらに前記ATiO3 型結晶におけるAの一部が、前記希土類元素によって置換されてなることにより、ハロゲン系プラズマに対するさらなる高耐食性が実現できる。
【0013】
これら希土類元素はそれ自体がハロゲン系腐食性ガス或いはそのプラズマに対して耐食性を有しており、これらを結晶中に固溶させたり、Al2 O3 やSiO2 にかえて焼結助剤として添加する事により、材料の耐食性を損なうことなく焼結性の向上を図ることが可能である。
【0014】
即ち、本発明の耐食性部材によれば、高温、高密度のフッ素系及び塩素系腐食雰囲気に長時間の耐食性を有し、且つコンタミネーションの発生やパーティクルを発生しない耐食性部材を提供するものである。
【0015】
【作用】
本発明の耐食性部材によれば、ハロゲン系プラズマに対して耐食性の低いTi原子が結晶中に取り込まれ、耐食性の高いアルカリ土類金属(A)とともに比較的最密なATiO3 で表される結晶構造を構成するため、耐食性が高い元素の性質が発現するものと考えられる。また、ATiO3 を形成するA金属原子とTi原子の比率をコントロールすることにより、耐食性の低下をもたらすチタニアの析出を抑制し、また、焼結体中のA原子の一部を希土類金属と置換することにより、結晶粒子自体の耐食性が向上し、さらに希土類元素化合物が粒界に析出することによりエッチングされやすい粒界を強化し、脱粒によるパーティクル発生を防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の耐食性部材は、フッ素系または塩素系等のハロゲン系の腐食ガスまたはプラズマに曝される部材であり、フッ素系ガスとしては、SF6 、CF4 、CHF3 、ClF3 、HF等が、また塩素系ガスとしては、Cl2 、BCl3 、HCl等が挙げられ、これらのガスが導入された雰囲気にマイクロ波や高周波等を導入するとこれらのガスがプラズマ化される。
【0017】
本発明によれば、このようなハロゲン系の腐食ガスあるいはそのプラズマに曝される部位を相対密度が98%以上のATiO3 型結晶をとるチタン酸塩焼結体にて構成するものである。より好ましくは相対密度99%以上、開気孔率0.2%以下であることが望ましい。相対密度が低くなると、気孔が増加し材料強度が低下する上、開気孔によってプラズマと接する面積が大きくなったり、開気孔内部にガスの吸着や析出物などの付着が発生する可能性があり、処理を続ける内にプラズマの状態が変化したり、析出物が剥離してパーティクル化する等により半導体生産の歩留まりに影響する。
【0018】
金属元素AとしてはMg、Ca、Sr、Ba等アルカリ土類金属の群からが選ばれた少なくとも1種の元素である必要がある。Ti化合物は本来ハロゲン系プラズマに対して耐食性が低いが、これらの高耐食性金属元素とともに比較的最密な構造を形成することで、セラミック焼結体としては耐食性が高い元素の性質を発現する。
【0019】
ただし、金属原子AとTi原子の比率A/Tiは、1.005〜1.998の範囲でなければならない。A/Ti比が1.005より1に近いと、焼結性が低下し、緻密化するには高温での焼成あるいは助剤を添加する必要が生じる。しかし、Al2 O3 、SiO2 等の焼結助剤を添加して低温で緻密化させると、これら焼結助剤によって形成された粒界相が選択的にエッチングされ、脱粒、パーティクル発生の原因となる。特にAl2 O3 はフッ素系プラズマ中で使用した場合、フッ素と化合して析出物を形成する。従って、Al、Siの酸化物換算量が合計で0.5重量%以下、特に0.1重量%以下であることが必要である。
【0020】
また、更にA/Ti比が1以下になると焼結性は向上するが余剰のTiがチタニア相として析出し、焼結体の耐食性低下、脱粒によるパーティクル発生の原因となる。Ti元素は、フッ素系及び塩素系腐食ガス或いはそのプラズマに対して高蒸気圧化合物を形成する、すなわち耐食性が低いため、先に示した高耐食性元素と化合物を形成せずに結晶あるいは粒界相として存在することにより、チタニア部分のみが選択的にエッチングされ、セラミックスの耐食性低下、粒界相のエッチングによる結晶粒子の脱粒、パーティクル化を引き起こす。また、チタニアとして結晶化せず、金属原子Aを除いたTi、Oからなる非晶質相として存在した場合はさらに耐食性が低下する。また、A/Ti比が1.998よりも大きいと高融点の異相が析出し、緻密化を阻害してしまう。
【0021】
A/Ti比は特に、1.05〜1.90とすることがより好ましく、それによりチタニア相の形成を確実に防ぎ、より焼結性を向上させることができる。焼結体中の原子比率は、ICP等の化学的手法を用いて評価することができる。
【0022】
また、前記焼結体中に、希土類元素を酸化物換算で10重量%以下、特に0.5〜7重量%の割合で含有することが望ましい。用いられる希土類元素としては、Y、Sc、La、Ce、Nd、Sm、Gd、ErおよびYbの群から選ばれる少なくとも1種の元素が挙げられるが、これらの中でも、Y、La、Ce、Er、Ybの群から選ばれる少なくとも1種が焼結性向上及び耐食性向上の点で望ましい。
【0023】
これは、希土類元素がフッ素系または塩素系等のハロゲン系の腐食ガスまたはプラズマに対してアルカリ土類金属と同等あるいはそれ以上の耐食性を有しているとともに、その化合物を添加することで焼結性の向上にも寄与するためである。Ti比が過剰であったり、Al2 O3 、SiO2 等を助剤として添加した場合と異なり、これらの元素は結晶或いは粒界相に析出しても焼結体の耐食性を損なったり粒界腐食によりパーティクルを発生させることはない。
【0024】
さらに好ましくは、前記焼結体中においては、先に挙げた材料構成元素であるアルカリ土類金属、希土類元素及びTiを除く、K、Na等アルカリ金属及びCr、Fe等遷移金属の不純物元素総量が、金属換算で100ppm以下であることが、半導体装置への不純物発生抑止という点から望ましい。これら不純物金属元素は、フッ素系及び塩素系腐食ガス或いはそのプラズマにエッチングされやすく、セラミック部材の耐食性低下の原因にもつながる。半導体製造プロセスでは不純物が非常に問題となっており、特にアルカリ金属、遷移金属等の不純物は、検査装置の検出限界程度(Siウェハ上の各元素のコンタミが1.0×1010atm/cm2 以下)まで押さえる必要がある。不純物の定量にはICPによる分析が一般的であるが、特にNa、Feについては検出限界以下であることが望ましい。このような不純物を含まない焼結体を作製するには、高純度の原料を使用したり、有機化合物から合成する等の方法がある。
【0025】
このチタン酸塩焼結体は、CaTiO3 、BaTiO3 等の単体の焼結体でもよいが、2種以上のアルカリ土類金属元素との複合焼結体でも同様な効果が得られる。また、固溶体であっても何ら差し障りはない。さらには、前記金属元素中でもアルカリ土類元素AがMg、Ca、Baの少なくとも1種、希土類元素として、Sc、La、Ce、Ndの少なくとも1種はハロゲン化合物の蒸気圧が特に低く、これらの元素から形成されるチタン酸塩焼結体はハロゲン系プラズマに対して非常に高い耐食性を示す。
【0026】
このようなチタン酸塩焼結体は、従来公知の技術、たとえば平均粒径20μm以下の高純度チタン酸塩粉末に所定量のアルカリ土類の炭酸塩や酸化物、及び/または希土類酸化物を添加し、必要に応じてバインダーと混合、造粒し、冷間静水圧プレス(CIP)、金型プレス等で所望の形状に成形した後、脱バインダーを行い、大気中1100〜1500℃にて焼成することによって緻密な焼結体を得ることが可能である。
【0027】
また、アルカリ土類金属の炭酸塩や希土類酸化物等の高純度粉末と、高純度TiO2 粉末を混合し、所定の温度にて仮焼した原料を粉砕して利用することも可能である。仮焼せずに本焼成にて反応、焼結を行うことも可能である。また、このような焼結体に1000気圧以上のN2 、Arガス中で熱処理する熱間静水圧処理(HIP処理)を施すことによって相対密度の向上、気孔の低減を図ることもできる。
【0028】
【実施例】
(実施例1)
表1に示すような試料を準備した。いずれの焼結体も、純度99.99%以上、平均粒径1〜5μmのアルカリ土類酸化物或いは炭酸塩粉末と、TiO2 粉末を所定量秤量し、メディアとしてプラスチックボール、溶媒として超純水を使用し回転ミルにて混合した。混合粉体を乾燥し、ジルコニアるつぼにて大気中、800〜1300℃にて仮焼したものをさらに窒化けい素ボールと有機溶剤を使用して36時間振動ミルにて粉砕し、平均粒径2〜3μmのチタン酸塩原料を得た。
【0029】
これにバインダーとしてパラフィンワックスを添加し、プラスチックボールを使用して回転ミルにて24時間混合したものを乾燥、造粒した。これを一軸加圧プレスにて1ton/cm2 の圧力にて成形し、脱バインダーした後、大気中にて1100〜1500℃にて焼成し、焼結体を作製した。
【0030】
又、比較例として純度99.99%アルミナ原料を成形し1700℃にて焼成したアルミナ焼結体、同じく純度99.9%のチタニア原料を1500℃にて焼成したチタニア焼結体および石英ガラスを準備した。
【0031】
なお、焼結体の相対密度はアルキメデス法に基づき算出した。この様にして作製した焼結体を、直径8インチ、厚さ2mmの円盤に加工し、片面を表面粗さ(Ra)が0.1μm以下となるよう鏡面研磨した。焼結体中の、チタン酸塩を形成する元素の原子比率(ATiO3 を形成するA原子とTi原子の比率A/Ti)は、ICPにて測定した。焼結体の結晶相については、焼結体を粉砕し、粉末X線回折法にて検出されたパターンから同定した。
【0032】
各材料について、RIEプラズマエッチング装置にてCF4 (60sccm)+ Ar(60sccm)、Cl2 (100sccm)のプラズマに室温で曝し、エッチングレートとパーティクルの有無を調査した。結果を表1に示す。エッチング条件はいずれも圧力10Pa、RF出力1kW、プラズマ照射時間3時間とした。エッチングレートはテスト前後の試料重量変化を基に算出した。パーティクルの有無はプラズマ照射した試料表面に8インチのSiバージンウェハを接触させ、Siウェハの接触面の凹凸をレーザー散乱によって検出し、パーティクルカウンタにて0.3μm以上のパーティクル個数を計数した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1の結果によれば、相対密度が98%以上、チタン酸塩ATiO3 を形成する金属原子比率A/Tiが1.005〜1.998である試料No.3〜5、9〜11、14〜16、19〜21、28〜30は、それぞれフッ素系、塩素系プラズマに対してエッチング率が50Å/min以下であり、パーティクルも30個以下であった。
【0035】
A/Ti比が1.005よりも1に近い試料No.2、8、18、27、A/Ti比が1.998以上の試料No.6、12、17、22、31は1500℃では緻密化できず、相対密度が低いためにプラズマとの接触面積が増え、耐食性が低下していた。助剤なしで緻密化するにはさらに高温が必要と考えられる。特に相対密度が90%以下の試料No.2、22、27は特に多くのパーティクルが検出されたため使用に耐えない。
【0036】
また、相対密度98%以上に緻密化していてもA/Ti比が1より小さい試料No.1、7、13、26は、チタニア結晶相が確認され、耐食性が低下していた。また、プラズマ照射後の表面状態を観察すると、粒界やチタニア相が検出される部分からエッチングが進行し、脱粒の形跡が認められた。これらの試料はチタン酸塩を形成する上でTiが過剰に存在しており、耐食性の低いチタニアとして析出しているため、その部分から選択的にエッチングされ、緻密化していてもプラズマによる腐食の進行とともに表面がポーラスになるためと考えられる。さらに粒界腐食に起因する脱粒が、パーティクル発生とともに耐食性低下を促進している。
【0037】
また比較例として、アルミナ(Al2 O3 )、石英(SiO2 )、チタニア(TiO2 )の焼結体(試料No.23、24、25)にプラズマ照射したところ、いずれも50Å/min以上のエッチング率となり、プラズマ耐食性は本発明によるチタン酸塩焼結体に及ばなかった。特に石英(試料No.24)に関しては、パーティクルの発生は少なかったがエッチング率が特に大きいものであった。
【0038】
(実施例2)
純度99.99%以上のチタニア粉末とアルカリ土類酸化物を混合し、A/Ti比率を1.01となるように調合し、実施例1と同様の条件にて仮焼しチタン酸塩原料を作製した。これに2重量%の希土類酸化物を加えてバインダーと混合し、成形したのち大気中で1100〜1500℃にて焼成した。比較例として、希土類酸化物のかわりにAl2 O3 、SiO2 を添加した焼結体を作製した。これらの試料を実施例1と同様な方法でプラズマエッチングし、エッチング率、パーティクル発生の有無について評価した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2によれば、チタン酸塩単体の試料No.32、38、43、47に比較して、希土類元素酸化物を10重量%以下の割合で添加することにより、耐食性が向上するとともに、パーティクルの発生も抑制されることがわかる。また、希土類元素酸化物に代えて、アルカリ土類元素を添加した場合も、耐食性の改善が認められた。
【0041】
一方、Al2 O3 、SiO2 を0.5重量%を超えて添加した試料No.36、37、42は、Al2 O3 、SiO2 からなる粒界相が選択的にエッチングされてしまい、脱粒が激しくパーティクルが多量に発生していた。希土類元素酸化物の添加量が10重量%を越える試料No.58では、希土類元素酸化物とTiO2 とが高融点相を形成し焼結できなかった。
【0042】
このように、所定のチタン酸塩焼結体からなる部材を用いることにより、フッ素系、塩素系ガスに対する耐食性に優れ、コンタミネーションやパーティクルを発生しない半導体製造用部品が実現できる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、フッ素系及び塩素系腐食性ガス或いはプラズマに曝される耐食性部材として、ATiO3 なる構造を形成するMg、Ca等アルカリ土類金属のチタン酸塩セラミック材料に関して、A/Ti比率を適正にコントロールすることにより、容易に緻密化でき高温、高密度のフッ素系及び塩素系腐食雰囲気に長時間の耐久性を有し、且つコンタミネーションやパーティクルを発生しない耐食性部材が実現できる。このアルカリ土類金属の一部は希土類金属と置換することも可能で、とりわけプラズマ処理装置の内壁部材や被処理物を支持する支持体などの治具等の部材として使用することにより、半導体製造の歩留り向上とともに高品質の半導体素子を作製することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐食性部材に関し、特に半導体製造プロセス中、フッ素系及び塩素系腐食性ガス或いはフッ素系、塩素系プラズマを利用するCVD工程やドライエッチング工程で使用される装置の内壁部材や被処理物を支持する支持体、フォーカスリング、防着板、ライナーなどの治具等として使用される部材に好適な耐食性部材に関するものである。
【0002】
【従来技術】
半導体素子などの高集積回路形成に使用されるドライプロセスやプラズマコーティング等プラズマの利用は近年急速に進んでいる。半導体におけるプラズマプロセスとしては、フッ素系等のハロゲン系腐食ガスがその反応性の高さから、気相成長、エッチングやクリーニングに利用されている。
【0003】
これら腐食性ガスに接触する部材は、高い耐食性が要求される。従来より被処理物以外のこれらプラズマに接触する部材は、一般にガラスや石英などのSiO2 を主成分とする材料やステンレス、モネル等の金属が多用されている。
【0004】
また、半導体製造時において、ウェハを支持固定するサセプタ材としてアルミナ焼結体、サファイア、AlNの焼結体、又はこれらをCVD法等により表面被覆したものが耐食性に優れるとして使用されている。また、グラファイト、窒化硼素をコーティングしたヒーター等も使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来から用いられているガラスや石英ではプラズマ中の耐食性が不充分で消耗が激しく、特にフッ素或いは塩素プラズマに接すると接触面がエッチングされ、表面性状が変化してエッチング条件に影響する等の問題が生じていた。また、ステンレスなどの金属を使用した部材でも耐食性が不充分なため、腐食によって特に半導体製造においては不良品発生の原因となる。
【0006】
アルミナ、AlNの焼結体は、上記の材料に比較してフッ素系ガスに対して耐食性に優れるものの、高温でプラズマと接すると腐食が徐々に進行して焼結体の表面から結晶粒子の脱粒が生じ、パーティクル発生の原因になるという問題が起きている。
【0007】
このようなパーティクルの発生は、半導体の高集積化、プロセスの更なるクリーン化に伴い、イオン衝撃や気相で反応生成したごく微細なパーティクルによってメタル配線の断線、パターンの欠陥等により、素子特性の劣化や歩留まりの低下等の不具合を発生する恐れが生じている。
【0008】
本発明者らは、このような問題を解決するため、先にフッ素、塩素系プラズマに対して材料表面に安定なハロゲン化物を形成する周期律表第2A、3A族元素を主成分とする材料により形成することを提案してきた(特開平9−295863号公報、特開平10−45467号公報等)。特に高耐食性に優れた周期律表第2A、3A族元素の酸化物、フッ化物を主成分とする従来材料は、フッ素、塩素系のプラズマに対しては安定であるが、例えば酸化物は高融点であるため緻密な焼結体を作製するには助剤を添加して焼成温度を下げる必要がある。しかし助剤として添加した元素により形成された粒界相がプラズマにエッチングされ、脱粒してパーティクルが発生してしまうという問題があった。またフッ化物は焼成時に分解してフッ素を発生するため、フッ素腐食に対応した特殊な炉が必要となり、大型化が困難であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、フッ素系及び塩素系の腐食性ガスやプラズマに対して、パーティクルを発生しない高耐食性に優れたセラミック材料についてさらに検討を重ねた結果、ハロゲン系腐食性ガスやそのプラズマに曝される部位が、ATiO3 型結晶(AはMg、Ca、Sr、Ba等アルカリ土類金属の群から選ばれる少なくとも1種の元素)を主体とし、前記金属原子Aと前記Ti原子のA/Tiで表される比率が、1.005〜1.998、相対密度が98%以上、Al、Siの酸化物換算量が合計で0.5重量%以下のチタン酸塩焼結体から形成されることが、ハロゲンと反応した場合、高蒸気圧化合物を形成するTi元素を結晶中に含有するにも関わらず、フッ素、塩素等のハロゲン系プラズマに対して高耐食性を示すことを見いだした。
【0010】
この材料は、SiO2 、Al2 O3 等の焼結助剤を必ずしも必要とせず1100〜1500℃の低温で緻密化が可能で、焼成時に腐食性ガスを発生することもなく特殊な炉を必要としないため、大型部品への対応も容易である。
【0011】
また、前記焼結体中に、希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種の元素を酸化物換算で10重量%以下の割合で含有することが望ましい。
【0012】
さらに前記ATiO3 型結晶におけるAの一部が、前記希土類元素によって置換されてなることにより、ハロゲン系プラズマに対するさらなる高耐食性が実現できる。
【0013】
これら希土類元素はそれ自体がハロゲン系腐食性ガス或いはそのプラズマに対して耐食性を有しており、これらを結晶中に固溶させたり、Al2 O3 やSiO2 にかえて焼結助剤として添加する事により、材料の耐食性を損なうことなく焼結性の向上を図ることが可能である。
【0014】
即ち、本発明の耐食性部材によれば、高温、高密度のフッ素系及び塩素系腐食雰囲気に長時間の耐食性を有し、且つコンタミネーションの発生やパーティクルを発生しない耐食性部材を提供するものである。
【0015】
【作用】
本発明の耐食性部材によれば、ハロゲン系プラズマに対して耐食性の低いTi原子が結晶中に取り込まれ、耐食性の高いアルカリ土類金属(A)とともに比較的最密なATiO3 で表される結晶構造を構成するため、耐食性が高い元素の性質が発現するものと考えられる。また、ATiO3 を形成するA金属原子とTi原子の比率をコントロールすることにより、耐食性の低下をもたらすチタニアの析出を抑制し、また、焼結体中のA原子の一部を希土類金属と置換することにより、結晶粒子自体の耐食性が向上し、さらに希土類元素化合物が粒界に析出することによりエッチングされやすい粒界を強化し、脱粒によるパーティクル発生を防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の耐食性部材は、フッ素系または塩素系等のハロゲン系の腐食ガスまたはプラズマに曝される部材であり、フッ素系ガスとしては、SF6 、CF4 、CHF3 、ClF3 、HF等が、また塩素系ガスとしては、Cl2 、BCl3 、HCl等が挙げられ、これらのガスが導入された雰囲気にマイクロ波や高周波等を導入するとこれらのガスがプラズマ化される。
【0017】
本発明によれば、このようなハロゲン系の腐食ガスあるいはそのプラズマに曝される部位を相対密度が98%以上のATiO3 型結晶をとるチタン酸塩焼結体にて構成するものである。より好ましくは相対密度99%以上、開気孔率0.2%以下であることが望ましい。相対密度が低くなると、気孔が増加し材料強度が低下する上、開気孔によってプラズマと接する面積が大きくなったり、開気孔内部にガスの吸着や析出物などの付着が発生する可能性があり、処理を続ける内にプラズマの状態が変化したり、析出物が剥離してパーティクル化する等により半導体生産の歩留まりに影響する。
【0018】
金属元素AとしてはMg、Ca、Sr、Ba等アルカリ土類金属の群からが選ばれた少なくとも1種の元素である必要がある。Ti化合物は本来ハロゲン系プラズマに対して耐食性が低いが、これらの高耐食性金属元素とともに比較的最密な構造を形成することで、セラミック焼結体としては耐食性が高い元素の性質を発現する。
【0019】
ただし、金属原子AとTi原子の比率A/Tiは、1.005〜1.998の範囲でなければならない。A/Ti比が1.005より1に近いと、焼結性が低下し、緻密化するには高温での焼成あるいは助剤を添加する必要が生じる。しかし、Al2 O3 、SiO2 等の焼結助剤を添加して低温で緻密化させると、これら焼結助剤によって形成された粒界相が選択的にエッチングされ、脱粒、パーティクル発生の原因となる。特にAl2 O3 はフッ素系プラズマ中で使用した場合、フッ素と化合して析出物を形成する。従って、Al、Siの酸化物換算量が合計で0.5重量%以下、特に0.1重量%以下であることが必要である。
【0020】
また、更にA/Ti比が1以下になると焼結性は向上するが余剰のTiがチタニア相として析出し、焼結体の耐食性低下、脱粒によるパーティクル発生の原因となる。Ti元素は、フッ素系及び塩素系腐食ガス或いはそのプラズマに対して高蒸気圧化合物を形成する、すなわち耐食性が低いため、先に示した高耐食性元素と化合物を形成せずに結晶あるいは粒界相として存在することにより、チタニア部分のみが選択的にエッチングされ、セラミックスの耐食性低下、粒界相のエッチングによる結晶粒子の脱粒、パーティクル化を引き起こす。また、チタニアとして結晶化せず、金属原子Aを除いたTi、Oからなる非晶質相として存在した場合はさらに耐食性が低下する。また、A/Ti比が1.998よりも大きいと高融点の異相が析出し、緻密化を阻害してしまう。
【0021】
A/Ti比は特に、1.05〜1.90とすることがより好ましく、それによりチタニア相の形成を確実に防ぎ、より焼結性を向上させることができる。焼結体中の原子比率は、ICP等の化学的手法を用いて評価することができる。
【0022】
また、前記焼結体中に、希土類元素を酸化物換算で10重量%以下、特に0.5〜7重量%の割合で含有することが望ましい。用いられる希土類元素としては、Y、Sc、La、Ce、Nd、Sm、Gd、ErおよびYbの群から選ばれる少なくとも1種の元素が挙げられるが、これらの中でも、Y、La、Ce、Er、Ybの群から選ばれる少なくとも1種が焼結性向上及び耐食性向上の点で望ましい。
【0023】
これは、希土類元素がフッ素系または塩素系等のハロゲン系の腐食ガスまたはプラズマに対してアルカリ土類金属と同等あるいはそれ以上の耐食性を有しているとともに、その化合物を添加することで焼結性の向上にも寄与するためである。Ti比が過剰であったり、Al2 O3 、SiO2 等を助剤として添加した場合と異なり、これらの元素は結晶或いは粒界相に析出しても焼結体の耐食性を損なったり粒界腐食によりパーティクルを発生させることはない。
【0024】
さらに好ましくは、前記焼結体中においては、先に挙げた材料構成元素であるアルカリ土類金属、希土類元素及びTiを除く、K、Na等アルカリ金属及びCr、Fe等遷移金属の不純物元素総量が、金属換算で100ppm以下であることが、半導体装置への不純物発生抑止という点から望ましい。これら不純物金属元素は、フッ素系及び塩素系腐食ガス或いはそのプラズマにエッチングされやすく、セラミック部材の耐食性低下の原因にもつながる。半導体製造プロセスでは不純物が非常に問題となっており、特にアルカリ金属、遷移金属等の不純物は、検査装置の検出限界程度(Siウェハ上の各元素のコンタミが1.0×1010atm/cm2 以下)まで押さえる必要がある。不純物の定量にはICPによる分析が一般的であるが、特にNa、Feについては検出限界以下であることが望ましい。このような不純物を含まない焼結体を作製するには、高純度の原料を使用したり、有機化合物から合成する等の方法がある。
【0025】
このチタン酸塩焼結体は、CaTiO3 、BaTiO3 等の単体の焼結体でもよいが、2種以上のアルカリ土類金属元素との複合焼結体でも同様な効果が得られる。また、固溶体であっても何ら差し障りはない。さらには、前記金属元素中でもアルカリ土類元素AがMg、Ca、Baの少なくとも1種、希土類元素として、Sc、La、Ce、Ndの少なくとも1種はハロゲン化合物の蒸気圧が特に低く、これらの元素から形成されるチタン酸塩焼結体はハロゲン系プラズマに対して非常に高い耐食性を示す。
【0026】
このようなチタン酸塩焼結体は、従来公知の技術、たとえば平均粒径20μm以下の高純度チタン酸塩粉末に所定量のアルカリ土類の炭酸塩や酸化物、及び/または希土類酸化物を添加し、必要に応じてバインダーと混合、造粒し、冷間静水圧プレス(CIP)、金型プレス等で所望の形状に成形した後、脱バインダーを行い、大気中1100〜1500℃にて焼成することによって緻密な焼結体を得ることが可能である。
【0027】
また、アルカリ土類金属の炭酸塩や希土類酸化物等の高純度粉末と、高純度TiO2 粉末を混合し、所定の温度にて仮焼した原料を粉砕して利用することも可能である。仮焼せずに本焼成にて反応、焼結を行うことも可能である。また、このような焼結体に1000気圧以上のN2 、Arガス中で熱処理する熱間静水圧処理(HIP処理)を施すことによって相対密度の向上、気孔の低減を図ることもできる。
【0028】
【実施例】
(実施例1)
表1に示すような試料を準備した。いずれの焼結体も、純度99.99%以上、平均粒径1〜5μmのアルカリ土類酸化物或いは炭酸塩粉末と、TiO2 粉末を所定量秤量し、メディアとしてプラスチックボール、溶媒として超純水を使用し回転ミルにて混合した。混合粉体を乾燥し、ジルコニアるつぼにて大気中、800〜1300℃にて仮焼したものをさらに窒化けい素ボールと有機溶剤を使用して36時間振動ミルにて粉砕し、平均粒径2〜3μmのチタン酸塩原料を得た。
【0029】
これにバインダーとしてパラフィンワックスを添加し、プラスチックボールを使用して回転ミルにて24時間混合したものを乾燥、造粒した。これを一軸加圧プレスにて1ton/cm2 の圧力にて成形し、脱バインダーした後、大気中にて1100〜1500℃にて焼成し、焼結体を作製した。
【0030】
又、比較例として純度99.99%アルミナ原料を成形し1700℃にて焼成したアルミナ焼結体、同じく純度99.9%のチタニア原料を1500℃にて焼成したチタニア焼結体および石英ガラスを準備した。
【0031】
なお、焼結体の相対密度はアルキメデス法に基づき算出した。この様にして作製した焼結体を、直径8インチ、厚さ2mmの円盤に加工し、片面を表面粗さ(Ra)が0.1μm以下となるよう鏡面研磨した。焼結体中の、チタン酸塩を形成する元素の原子比率(ATiO3 を形成するA原子とTi原子の比率A/Ti)は、ICPにて測定した。焼結体の結晶相については、焼結体を粉砕し、粉末X線回折法にて検出されたパターンから同定した。
【0032】
各材料について、RIEプラズマエッチング装置にてCF4 (60sccm)+ Ar(60sccm)、Cl2 (100sccm)のプラズマに室温で曝し、エッチングレートとパーティクルの有無を調査した。結果を表1に示す。エッチング条件はいずれも圧力10Pa、RF出力1kW、プラズマ照射時間3時間とした。エッチングレートはテスト前後の試料重量変化を基に算出した。パーティクルの有無はプラズマ照射した試料表面に8インチのSiバージンウェハを接触させ、Siウェハの接触面の凹凸をレーザー散乱によって検出し、パーティクルカウンタにて0.3μm以上のパーティクル個数を計数した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1の結果によれば、相対密度が98%以上、チタン酸塩ATiO3 を形成する金属原子比率A/Tiが1.005〜1.998である試料No.3〜5、9〜11、14〜16、19〜21、28〜30は、それぞれフッ素系、塩素系プラズマに対してエッチング率が50Å/min以下であり、パーティクルも30個以下であった。
【0035】
A/Ti比が1.005よりも1に近い試料No.2、8、18、27、A/Ti比が1.998以上の試料No.6、12、17、22、31は1500℃では緻密化できず、相対密度が低いためにプラズマとの接触面積が増え、耐食性が低下していた。助剤なしで緻密化するにはさらに高温が必要と考えられる。特に相対密度が90%以下の試料No.2、22、27は特に多くのパーティクルが検出されたため使用に耐えない。
【0036】
また、相対密度98%以上に緻密化していてもA/Ti比が1より小さい試料No.1、7、13、26は、チタニア結晶相が確認され、耐食性が低下していた。また、プラズマ照射後の表面状態を観察すると、粒界やチタニア相が検出される部分からエッチングが進行し、脱粒の形跡が認められた。これらの試料はチタン酸塩を形成する上でTiが過剰に存在しており、耐食性の低いチタニアとして析出しているため、その部分から選択的にエッチングされ、緻密化していてもプラズマによる腐食の進行とともに表面がポーラスになるためと考えられる。さらに粒界腐食に起因する脱粒が、パーティクル発生とともに耐食性低下を促進している。
【0037】
また比較例として、アルミナ(Al2 O3 )、石英(SiO2 )、チタニア(TiO2 )の焼結体(試料No.23、24、25)にプラズマ照射したところ、いずれも50Å/min以上のエッチング率となり、プラズマ耐食性は本発明によるチタン酸塩焼結体に及ばなかった。特に石英(試料No.24)に関しては、パーティクルの発生は少なかったがエッチング率が特に大きいものであった。
【0038】
(実施例2)
純度99.99%以上のチタニア粉末とアルカリ土類酸化物を混合し、A/Ti比率を1.01となるように調合し、実施例1と同様の条件にて仮焼しチタン酸塩原料を作製した。これに2重量%の希土類酸化物を加えてバインダーと混合し、成形したのち大気中で1100〜1500℃にて焼成した。比較例として、希土類酸化物のかわりにAl2 O3 、SiO2 を添加した焼結体を作製した。これらの試料を実施例1と同様な方法でプラズマエッチングし、エッチング率、パーティクル発生の有無について評価した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2によれば、チタン酸塩単体の試料No.32、38、43、47に比較して、希土類元素酸化物を10重量%以下の割合で添加することにより、耐食性が向上するとともに、パーティクルの発生も抑制されることがわかる。また、希土類元素酸化物に代えて、アルカリ土類元素を添加した場合も、耐食性の改善が認められた。
【0041】
一方、Al2 O3 、SiO2 を0.5重量%を超えて添加した試料No.36、37、42は、Al2 O3 、SiO2 からなる粒界相が選択的にエッチングされてしまい、脱粒が激しくパーティクルが多量に発生していた。希土類元素酸化物の添加量が10重量%を越える試料No.58では、希土類元素酸化物とTiO2 とが高融点相を形成し焼結できなかった。
【0042】
このように、所定のチタン酸塩焼結体からなる部材を用いることにより、フッ素系、塩素系ガスに対する耐食性に優れ、コンタミネーションやパーティクルを発生しない半導体製造用部品が実現できる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、フッ素系及び塩素系腐食性ガス或いはプラズマに曝される耐食性部材として、ATiO3 なる構造を形成するMg、Ca等アルカリ土類金属のチタン酸塩セラミック材料に関して、A/Ti比率を適正にコントロールすることにより、容易に緻密化でき高温、高密度のフッ素系及び塩素系腐食雰囲気に長時間の耐久性を有し、且つコンタミネーションやパーティクルを発生しない耐食性部材が実現できる。このアルカリ土類金属の一部は希土類金属と置換することも可能で、とりわけプラズマ処理装置の内壁部材や被処理物を支持する支持体などの治具等の部材として使用することにより、半導体製造の歩留り向上とともに高品質の半導体素子を作製することができる。
Claims (3)
- ハロゲン系腐食性ガス或いはプラズマに曝される部位が、ATiO3 型結晶(AはMg、Ca、Sr、Ba等アルカリ土類金属の群から選ばれる少なくとも1種の元素)を主体とし、前記金属原子Aと前記Ti原子のA/Tiで表される比率が、1.005〜1.998、相対密度が98%以上、Al、Siの酸化物換算量が合計で0.5重量%以下のチタン酸塩焼結体から形成されていることを特徴とする耐食性部材。
- 前記焼結体中に、希土類元素の群から選ばれる少なくとも1種の元素を酸化物換算で10重量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1記載の耐食性部材。
- 前記ATiO3 型結晶におけるAの一部が、前記希土類元素によって置換されてなることを特徴とする請求項2記載の耐食性部材。
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