JP3725261B2 - 非消耗電極式アークトーチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接や切断などの加工を行なうための非消耗電極式アークトーチに関する。
更に詳細には、作業者がアークトーチを把持しつつ加工する、いわゆる半自動用の非消耗電極式アークトーチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にアークトーチの非消耗電極と被加工物もしくはトーチノズルとの間に電弧を発生させるために高周波発生装置が用いられているが、アーク加工機器から高周波のリークを防止するために、適宜に配慮されている。
【0003】
例えば、溶接加工を行なう従来の非消耗電極式アークトーチとして、図10に示されるものが提言されている。
すなわち、1は後述するようなパワーケーブルを接続するための接続用金具、2は接続用金具1に一体的に取付けられた、銅あるいは銅合金製のチューブで、このチューブ2と接続用金具1とがシリコンゴム3により一体成型されてトーチボディ4が形成されている。5はパワーケーブルで、例えばこのパワーケーブル5は、内部に軸方向の流体路6を有し、導電部材7を内包する電気絶縁性の絶縁外被8により形成されて、このパワーケーブル5の端部に設けられた連結具9によりパワーケーブル5がトーチボディ4の基部側に取付けられる。
11はトーチボディ4の基部側に取付けられて、パワーケーブル5を覆う筒状のハンドルである。
【0004】
ところで、トーチボディ4の基部側のシリコンゴム部は円柱12に形成され、このシリコンゴムの円柱12の外部には円周方向の凸部13が形成されている。他方、ハンドル11は、例えばシリコン樹脂や四フッ化エチレン樹脂などにより成型されるが、このハンドル11のトーチボディ取付側の内面には、シリコンゴムの円周方向の凸部13よりも小径の突起部14が形成されている。
【0005】
すなわち、トーチボディ4にパワーケーブル5を取付けた状態で、パワーケーブル5を挿通させたハンドル11をX1 方向からX2 方向に位置変位させる。この場合、ハンドル11の突起部14がシリコンゴムの円周方向の凸部13をX2 方向に乗越えて、図11に示されるごとく、ハンドル11の突起部14によりシリコンゴムの凸部13が弾性変形した状態で、図10に示されるごとく、トーチボディ4にハンドル11が取付けられる。
【0006】
勿論、高周波のリークを防止するためにトーチボディ4の絶縁物としてシリコンゴムを使用した場合、シリコンゴムの硬度が低いため、トーチボディ4とハンドル11とを螺着により取付けることができない。
【0007】
このため、上記のごとくシリコンゴムを弾性変形させて、いわゆる摩擦力によりハンドル11がトーチボディ4に固定されて、パワーケーブル5により供給される、例えばシールドガスおよび電力がトーチボディ4の導電性のチューブ2によりアークトーチの先端側へと適宜に案内・供給されつつ、作業者がハンドル11を把持しつつ、半自動によるアーク加工が行なわれる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近は、熟練した溶接作業者の絶対数が激減しており、未熟な作業者が溶接トーチのホルダを把持しつつ半自動溶接を行なう場合、連続する被溶接線に対して溶接トーチの先端位置が上下・左右にズレる、いわゆる溶接トーチの手振れ現象が生じることが殆んどであり、このように溶接トーチの手振れが生じると溶接不良となる。
【0009】
このため、未熟な作業者が半自動溶接を行なう場合、上記溶接トーチの手振れ防止のために、図10に示されるごとく、被溶接線に沿ってガイド部材Gを取付、このガイド部材Gに溶接トーチの先端部、例えばガスノズルNを当接させつつ摺動させている。
【0010】
このように、溶接時に溶接トーチをガイド部材Gに当接・摺動させるときには、溶接トーチの位置を安定させようとするために、溶接トーチをガイド部材に押し付けようとする作業者の力が作用し、この作業者の力により押し付けられる溶接トーチとガイド部材との摩擦力が、溶接作業者により把持されるハンドル11に作用する。
【0011】
ところで、溶接時における溶接トーチとガイド部材との上記した摩擦力が、ハンドル11に対してトーチボディ4を回転させるように作用した場合、上記したごとくトーチボディ4とハンドル11とはシリコンゴムを弾性変形させた摩擦力により取付けられていて、このハンドル11に対するトーチボディ4の取付用の弾性変形による摩擦力が小さいため、上記トーチボディ4に作用する回転力の方が大となることが多々ある。
【0012】
このように、トーチボディ4に作用する回転力が、トーチボディ4取付用の摩擦力よりも大きい場合、作業者により把持されるハンドル11に対してトーチボディ4がハンドル11の軸芯を中心として回動するため、溶接トーチの狙い位置が変動し、結果として溶接不良部を発生させることとなる。
【0013】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、高周波のリークを防止するためにトーチボディの絶縁物としてシリコンゴムを使用したアークトーチをガイド部材に当接・摺動させつつ良好な加工を行なうことができる非消耗電極式アークトーチを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本第1の発明は、パワーケーブル接続用金具と流体路および給電路とをシリコンゴムにより一体成型したトーチボディの基部側に、少なくともシールドガスおよび電力供給用のパワーケーブルとパワーケーブルを覆う筒状のハンドルとを取付けた非消耗電極式アークトーチに適用される。
その特徴とするところは、前記トーチボディの基部側のシリコンゴム部を円柱に形成すると共に、該円柱の外部に、円周方向の凸部と軸方向の切欠部とを設け、かつ前記ハンドルのトーチボディ取付側の内面に、前記トーチボディの円周方向の凸部よりも小径の小径部と前記切欠部に嵌合する軸方向の係合部とを設けてなることである。
【0015】
本第2の発明は、本第1の発明において、前記小径部が、前記ハンドルの内面から突出する突起部であることを特徴としている。
【0016】
さらに、本第3の発明は、本第1または本第2の発明において、前記嵌合する切欠部および係合部が、円周方向に2以上配設されたことを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施例により詳細に説明する。
例えば、溶接作業に用いられる非消耗電極式アークトーチについて説明する。図1乃至図6は、本発明の実施例を示す図であって、これらの構成において、後述するようにトーチボディとハンドルとの取付構造以外は、図10に示されるアークトーチと実質的に同じ構成である。
このため、図10と実質的に同じ構成部品には同じ符号を付してあるが、これら1乃至14の各部の構成の説明は、図10の説明を参照するものとする。
図1乃至図6において、非消耗電極式アークトーチは、接続用金具1および導電性のチューブ2がシリコンゴム3により一体成型されたトーチボディ4と、連結具9によりトーチボディ4の基部側に取付けられるパワーケーブル5と、トーチボディ4の基部側に取付けられてパワーケーブル5を覆う成型樹脂製の筒状のハンドル11とにより構成されている。
【0018】
ところで、トーチボディ4の基部側のシリコンゴム部は円柱12に形成され、このシリコンゴムの円柱12の外部には、円周方向の凸部13と軸方向の切欠部15とが設けられている。
図示の場合、円周方向の凸部13は円柱12の長軸方向に離間して3個設けられ、軸方向の切欠部15は円周方向に均等配置されて2個設けられている。
【0019】
なお、図示の場合、軸方向の切欠部15の切欠深さは、円柱12より突出する円周方向の凸部13の突出代と実質的に同一に形成されているため、この切欠部15は円周方向の凸部13に形成され、円柱12の表面には表われない状態となっている。
【0020】
他方、筒状のハンドル11のトーチボディ取付側の内面には、上記凸部13よりも小径の小径部、例えばハンドルの内面から突出する突起部14と、上記切欠部15に嵌合する軸方向の係合部16とが設けられている。
図示の場合、小径の突起部14はハンドル11の内面に周設されている。
【0021】
上記構成よりなる非消耗電極式アークトーチにおいて、トーチボディ4にパワーケーブル5を取付けた状態で、パワーケーブル5を挿通させたハンドル11の係合部16と、トーチボディ4の切欠部15とが互いに嵌合しうるようにハンドル11およびトーチボディ4の位置に留意しつつ、ハンドル11およびトーチボディ4を長軸方向、すなわちX方向に相接近させる。
【0022】
すなわち、ハンドル11の係合部16とトーチボディ4の切欠部15とが嵌合しつつ、ハンドル11およびトーチボディ4がX方向に相接近し、ハンドル11の突起部14がシリコンゴムの円周方向の凸部13をX2 方向に乗越えて、図6に示されるごとく、ハンドル11の突起部14によりシリコンゴムの凸部13が弾性変形した状態で、図1および図3に示されるごとく、トーチボディ4にハンドル11が取付けられる。
【0023】
上記のごとく、トーチボディ4にパワーケーブル5とハンドル11とを取付けてなる本発明に係る非消耗電極式アークトーチは、トーチボディ4のシリコンゴムに形成された軸方向の切欠部15とハンドル11の係合部16とが嵌合して、ハンドル11の長軸廻りのハンドル11およびトーチボディ4の相対位置が位置決めされると共に、ハンドル11の突起部14がトーチボディ4のシリコンゴムの凸部13を弾性変形させて、ハンドル11の長軸方向のハンドル11およびトーチボディ4の相対位置が位置決めされた状態となっている。
【0024】
すなわち、図1に示されるごとく、被溶接線に沿ったガイド部材Gに溶接トーチの先端部、例えばガスノズルNを当接・摺動させつつ溶接する場合に、作業者の力により押し付けられる溶接トーチとガイド部材との摩擦力が、溶接作業者により把持されるハンドル11に作用しても、上記のごとく、本発明に係る非消耗電極式アークトーチは、トーチボディ4のシリコンゴムに形成された軸方向の切欠部15とハンドル11の係合部16とが嵌合して、ハンドル11の長軸廻りのハンドル11およびトーチボディ4の相対位置が位置決めされているため、ハンドル11に対してトーチボディ4が回動することはない。
【0025】
勿論、従前と同様にハンドル11の突起部14がトーチボディ4のシリコンゴムの凸部13を弾性変形させて、ハンドル11の長軸方向のハンドル11およびトーチボディ4の相対位置が位置決めされているため、溶接時にX2 方向の力がトーチボディ4に作用しても、トーチボディ4がハンドル11に対して位置変位することなく溶接作業を行なうことができる。
【0026】
このように本発明に係る非消耗電極式アークトーチは、高周波のリークを防止するためにトーチボディの絶縁物としてシリコンゴムを使用したアークトーチであって、アークトーチをガイド部材に当接・摺動させつつ良好な加工を行なうことができる。
【0027】
図7は、本発明の他の実施例を示す図であって、トーチボディ4のシリコンゴムの円柱の凸部131とハンドル11の内面との当接部分がL1 と長く形成され、円柱の外部の設けられた凸部13,131に夫々軸方向の切欠部15,15が設けられ、かつ、ハンドル11のX2 方向の端面からL2 だけX1 方向に入り込んだ位置からX1 方向に実質的に長さL1 に相当する軸方向の係合部16がハンドル11の内面に形成されている。
【0028】
勿論、このようにシリコンゴムの凸部131とハンドル11の内面との当接部分が長軸方向にL1 と長く形成されていれば、ハンドル11の取付状態が安定し、かつシリコンゴムの切欠部15とハンドルの軸方向の係合部16との嵌合長さがL1 と長く形成されていれば、硬度の低いシリコンゴムであってもシリコンゴムの切欠部15とハンドルの軸方向の係合部16との嵌合状態が安定する。
【0029】
図8および図9は本発明の更に他の実施例の要部を示す図であって、トーチボディ4のシリコンゴムの円柱12の外部に、円周方向の凸部13と平行な軸方向の切欠部15,15とが形成されると共に、ハンドル11の内面に上記切欠部15,15に嵌合する平行な軸方向の係合部16,16が形成されている。なお、ハンドル11の内面には図6に示されると同様の小径の突起部14が形成される。このように平行な軸方向の切欠部15,15と係合部16,16とにより嵌合する構造とすれば、硬度の低いシリコンゴムであってもシリコンゴムの切欠部15とハンドルの軸方向の係合部16との嵌合状態が安定する。
【0030】
なお、ハンドルのトーチボディ取付側の内面に形成される小径の突起部16は、内面全周に形成すれば、この突起部16によりシリコンゴムを弾性変形させて、ハンドルをトーチボディに安定して取付けることができる。
【0031】
これにも拘わらず、ハンドルの内面に形成する突起部16は、ハンドルの円周内面の2以上の位置に、トーチボディのシリコンゴムの円周方向の凸部よりも小径となるように内方に突設することができる。
【0032】
さらに、トーチボディのシリコンゴムの円周方向の凸部よりも小径部をハンドルの内面に形成して、シリコンゴムを弾性変形させるが、例えば、ハンドルの内径が上記凸部よりも小径の筒状とし、ハンドルがトーチボディに取付けられる際に、ハンドルの筒状内面によりシリコンゴムを半径方向に弾性変形させて、ハンドルをトーチボディに取付けることができる。
【0033】
勿論、本発明に係る非消耗電極式アークトーチは、いわゆるTIG溶接,プラズマ切断あるいはプラズマ溶接等のアークトーチに適用することができる。
【0034】
さらに、パワーケーブルに給排水路を設けた、いわゆる水冷式のアークトーチに適用することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明に係る非消耗電極式アークトーチは、パワーケーブル接続用金具と流体路および給電路とをシリコンゴムにより一体成型したトーチボディの基部側に、少なくともシールドガスおよび電力供給用のパワーケーブルとパワーケーブルを覆う筒状のハンドルとを取付けた非消耗電極式アークトーチであって、トーチボディの基部側のシリコンゴム部を円柱に形成すると共に、該円柱の外部に、円周方向の凸部と軸方向の切欠部とを設け、かつハンドルのトーチボディ取付側の内面に、トーチボディの円周方向の凸部よりも小径の小径部と前記切欠部に嵌合する軸方向の係合部とを設けてなるため、
高周波のリークを防止するためにトーチボディの絶縁物としてシリコンゴムを使用したアークトーチをガイド部材に当接・摺動させつつ加工を行なっても、ハンドルに対してトーチボディが回動することはなく、このため、従来のような溶接トーチの狙い位置が変動するという虞はなく、良好な加工を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す一部断面正面図
【図2】図1の展開斜視図
【図3】図1における要部を拡大して示す一部断面正面図
【図4】図3におけるIV−IV線断面矢視図
【図5】図3におけるV−V線断面矢視図
【図6】図3における“イ”部拡大断面図
【図7】本発明の他の実施例の要部を示す一部断面正面図
【図8】本発明の更に他の実施例の要部を示す断面図で、図4に相当する図
【図9】本発明の上記他の実施例の要部を示す断面図で、図5に相当する図
【図10】従来例を示す一部断面正面図
【図11】図10における“ロ”部拡大断面図
【符号の説明】
1 接続用金具
2 導電性のチューブ
3 シリコンゴム
4 トーチボディ
5 パワーケーブル
11 筒状のハンドル
12 シリコンゴムの円柱
13 円柱12の外部に設けられた円周方向の凸部
14 ハンドル内面に設けられた、シリコンゴムの円周方向の凸部13よりも
小径の突起部
15 円柱12の外部に設けられた軸方向の切欠部
16 ハンドル内面に設けられた、軸方向の係合部
Claims (3)
- パワーケーブル接続用金具と流体路および給電路とをシリコンゴムにより一体成型したトーチボディの基部側に、少なくともシールドガスおよび電力供給用のパワーケーブルとパワーケーブルを覆う筒状のハンドルとを取付けた非消耗電極式アークトーチにおいて、前記トーチボディの基部側のシリコンゴム部を円柱に形成すると共に、該円柱の外部に、円周方向の凸部と軸方向の切欠部とを設け、かつ前記ハンドルのトーチボディ取付側の内面に、前記トーチボディの円周方向の凸部よりも小径の小径部と前記切欠部に嵌合する軸方向の係合部とを設けてなる非消耗電極式アークトーチ。
- 前記小径部は、前記ハンドルの内面から突出する突起部である請求項1記載の非消耗電極式アークトーチ。
- 前記嵌合する切欠部および係合部は、円周方向に2以上配設されてなる請求項1または2に記載の非消耗電極式アークトーチ。
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