JP3725082B2 - 車両用ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪ブレーキを倍力作動させることを可能とするとともに、非ブレーキ操作時にも車輪ブレーキをブレーキ作動せしめて自動ブレーキ制御を行ない得るようにした車両用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、かかる装置は、たとえば特開2001−328523号公報等で既に知られており、運転者のブレーキ操作に応じてマスタシリンダから出力される油圧を油圧発生源の出力油圧により倍力し、倍力した油圧を車輪ブレーキに作用せしめるとともに、非ブレーキ操作時には、油圧発生源の出力油圧を調圧した油圧を車輪ブレーキに作用させることで自動ブレーキ制御を行なうようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような車両用ブレーキ装置の油圧倍力装置では、一次マスタシリンダの作動に応じて倍力油圧室に倍力油圧を生じさせるため、一次マスタシリンダの出力油圧を受ける制御ピストンの前進に応じて開弁する入口弁が倍力油圧室および油圧発生源間に設けられ、前記制御ピストンの前進に応じて閉弁する出口弁が倍力油圧室およびリザーバ間に設けられているのであるが、上記従来のものでは、自動ブレーキ制御を可能とするために、油圧発生源および二次マスタシリンダの入力油圧室間に第1開閉弁が設けられ、倍力油圧室および二次マスタシリンダの入力油圧室間に第2開閉弁が設けられている。そして、自動ブレーキ制御実行時には、第2開閉弁を閉じるとともに第1開閉弁を開くことで油圧発生源からの高油圧を二次マスタシリンダの入力油圧室に作用せしめるようにし、自動ブレーキ制御実行中に、ブレーキ操作が実行されたときには、第1開閉弁を閉じるとともに第2開閉弁を開いて自動ブレーキ制御を解除するようにしている。
【0004】
しかるに自動ブレーキ制御実行中のブレーキペダルによる踏み増しに応じて第1および第2開閉弁を瞬時に開閉作動させることは困難であり、その踏み増し操作に対する反応が遅れることがある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、自動ブレーキ制御実行中の踏み増し操作に応じて、自動ブレーキ制御実行時よりも高い油圧を瞬時に二次マスタシリンダに作用せしめるようにして踏み増し時の反応性を高めた車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ブレーキペダルによるブレーキ操作入力に応じて油圧を出力する一次マスタシリンダと、一次マスタシリンダの出力油圧よりも高圧の油圧をブレーキ操作の有無にかかわらず出力可能とする油圧発生源と、入力油圧室ならびに該入力油圧室の油圧に応じた油圧を出力する出力油圧室を有する二次マスタシリンダと、前記出力油圧室の油圧を調圧することを可能として前記出力油圧室および車輪ブレーキ間に設けられる調圧手段と、一次マスタシリンダの出力油圧に応じた油圧力を後端に受ける制御ピストンと、該制御ピストンの前方に配置される倍力油圧室の油圧に応じた反力を前記制御ピストンに及ぼす反力伝達手段と、前記一次マスタシリンダの出力油圧増大に伴う前記制御ピストンの前進に応じて開弁するようにして倍力油圧室および前記油圧発生源間に介装される入口弁と、前記制御ピストンの前進に応じて閉弁するようにして倍力油圧室およびリザーバ間に介装される出口弁と、前記油圧発生源および前記入力油圧室間に設けられる第1開閉弁と、前記倍力油圧室および前記入力油圧室間に設けられる第2開閉弁と、前記一次マスタシリンダが作動状態にあるか否かを検出する作動検出器と、前記入力油圧室の油圧を検出する油圧検出器と、前記第1及び第2開閉弁の作動を制御する制御ユニットとを備え、その制御ユニットが、前記一次マスタシリンダの非作動状態で前記油圧検出器の検出値に応じて前記第1及び第2開閉弁を開閉する自動ブレーキ制御モードと、前記一次マスタシリンダの作動状態を前記作動検出器が検出するのに応じて前記第1開閉弁を閉じると共に前記第2開閉弁を開弁する非自動ブレーキ制御モードとを切換え可能である車両用ブレーキ装置であって、前記自動ブレーキ制御モードの実行中にブレーキペダルが踏まれた時に、前記第1及び第2開閉弁の作動制御が遅れても該自動ブレーキ制御モードの実行時よりも高い油圧を瞬時に前記二次マスタシリンダに作用せしめるべく、前記倍力油圧室側から前記入力油圧室側へのブレーキ油の流通を許容する一方向弁が、前記第2開閉弁に並列に接続されることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、車両運転者のブレーキ操作によって一次マスタシリンダを作動せしめたときに、その一次マスタシリンダの作動状態を作動検出器が検出するのに応じて第1開閉弁を閉じるとともに第2開閉弁を開弁することにより、一次マスタシリンダの出力油圧に比例した倍力油圧を倍力油圧室から出力し、この倍力油圧で二次マスタシリンダを作動せしめることにより、車輪ブレーキを強力にブレーキ作動させることができる。しかも調圧手段の調圧により、車輪ブレーキのブレーキ油圧を制御するようにしてアンチロック制御等のブレーキ油圧制御を行なうことができる。
また車両運転者がブレーキ操作を行なっていない非ブレーキ操作時には、入力油圧室の油圧を検出する油圧検出器の検出値に応じて第1および第2開閉弁を開閉制御することにより、油圧発生源からの高油圧を第1および第2開閉弁の開閉によって調節しつつ二次マスタシリンダの入力油圧室に導くことが可能であり、制御された高油圧を調圧手段に導くことで自動ブレーキ制御を行なうことができる。
さらに自動ブレーキ制御を実行中の踏み増し操作時には、一次マスタシリンダの作動状態を作動検出器が検出するのに応じて第2開閉弁を開くとともに第1開閉弁を閉じるのであるが、この場合に、倍力油圧室の油圧が二次マスタシリンダの入力油圧室側の油圧よりも大きくなるのに応じて一方向弁により倍力油圧室から二次マスタシリンダに、踏み増しに伴う油圧が作用することになる。したがって自動ブレーキ制御実行中の踏み増し操作時に、第1および第2開閉弁の作動制御が遅れても、自動ブレーキ制御実行時よりも高い油圧を瞬時に二次マスタシリンダに作用せしめるようにして踏み増し時の反応性を高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図8は本発明の一実施例を示すものであり、図1は四輪車両用ブレーキ装置の回路構成を示す図、図2は油圧倍力装置の縦断面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図3の4−4線断面図、図5は図4の要部拡大図、図6は図3の6−6線断面図、図7は操作ストロークおよび操作荷重の関係を示す図、図8はストロークアキュムレータ特性を示す図である。
【0010】
先ず図1において、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル11からのブレーキ操作入力は油圧倍力装置12に入力される。この油圧倍力装置12は、油圧発生源13が発生している油圧をブレーキペダル11の操作入力に応じて制御することでブレーキペダル11の操作力に比例して増圧した油圧を出力可能に構成されており、一対の出力ポート14F,14Rを備える。
【0011】
油圧倍力装置12の出力ポート14F,14Rから出力される油圧は油圧路15F,15Rにそれぞれ導かれる。一方の油圧路15Fは調圧手段16Fを介して左、右前輪用車輪ブレーキBFL,BFRに接続され,他方の油圧路15Rは、調圧手段16Rを介して左、右後輪用車輪ブレーキBRL,BRRに接続される。
【0012】
油圧発生源13は、油圧倍力装置12に付設されたリザーバ17からブレーキ液を汲上げる油圧ポンプ18と、該油圧ポンプ18の吐出油圧を蓄圧するアキュムレータ19と、アキュムレータ19の油圧を検出する油圧センサ20とを備えるものであり、油圧センサ20の検出油圧が下限値以下になるのに応じて油圧ポンプ18の作動を開始し、油圧センサ20の検出油圧が上限値以上になるのに応じて油圧ポンプ18の作動を停止するようにして油圧ポンプ18の作動を制御することにより、油圧倍力装置12の一部を構成する一次マスタシリンダM1の出力油圧よりも高圧の一定油圧がブレーキペダル11の操作状況すなわち一次マスタシリンダM1の作動状況とは無関係に油圧発生源13から出力される。
【0013】
調圧手段16Fは、油圧路15Fおよび左、右前輪用車輪ブレーキBFL,BFR間にそれぞれ設けられる常開型電磁弁21,21と、それらの常開型電磁弁21,21にそれぞれ並列に接続される一方向弁22,22と、減圧リザーバ23と、左、右前輪用車輪ブレーキBFL,BFRおよび減圧リザーバ23間にそれぞれ設けられる常閉型電磁弁24,24と、減圧リザーバ23から汲み上げたブレーキ油を油圧路15F側に戻す戻しポンプ25と、該戻しポンプ25および油圧路15F間に設けられるオリフィス26とを備える。
【0014】
また調圧手段16Rは、左、右後輪用車輪ブレーキBRL,BRRに個別に対応した常開型電磁弁21,21、一方向弁22,22および常閉型電磁弁24,24と、左、右後輪用車輪ブレーキBRL,BRRに共通な減圧リザーバ23、戻しポンプ25およびオリフィス26を備えて前記調圧手段16Fと同様に構成される。
【0015】
しかも両調圧手段16F,16Rの戻しポンプ25,25はそれらのポンプ25,25に共通である単一の電動モータ27により駆動される。
【0016】
このような調圧手段16F,16Rにおける常開型電磁弁21…および常閉型電磁弁24…の通電・非通電は、制御ユニットCにより制御されるものであり、該制御ユニットCは、常開型電磁弁21を開くとともに常閉型電磁弁24を閉じる増圧モードと、常開型電磁弁21を閉じるとともに常閉型電磁弁24を開く減圧モードと、常開型電磁弁21および常閉型電磁弁24をともに閉じる保持モードとを切換えて各調圧手段16F,16Rの作動を制御し、これにより各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ油圧が車輪ロックを生じることがないように制御される。
【0017】
図2〜図4において、油圧倍力装置12は、一次マスタシリンダM1と、比例増圧弁VCと、左、右前輪用車輪ブレーキBFL,BFRに対応した二次マスタシリンダM2Fと、左、右後輪用車輪ブレーキBRL,BRRに対応した二次マスタシリンダM2Rとを備え、一次マスタシリンダM1、比例増圧弁VCおよび両二次マスタシリンダM2F,M2Rは共通のケーシング28に配設され、ユニット化される。
【0018】
一次マスタシリンダM1は、前端を第1出力油圧室30に臨ませた単一の一次マスタピストン31を有するシングル型のものであり、ケーシング28に設けられた第1シリンダ孔32に一次マスタピストン31が摺動自在に嵌合される。
【0019】
ケーシング28の上部には、円筒状に形成される前部ボス33および後部ボス34が第1シリンダ孔32の軸線方向に間隔をあけた位置で上方に突出するようにして一体に設けられる。これらの前部ボス33および後部ボス34には、それらのボス33,34内に通じるようにして合成樹脂から成るリザーバ17が取付けられる。しかもリザーバ17内は隔壁17aで前後に区画されており、前部ボス33内にはリザーバ17内の前部が、また後部ボス34内にはリザーバ17内の後部がそれぞれ通じている。
【0020】
一次マスタピストン31の軸方向中間部およびケーシング28間には補給液室35が環状に形成される。この補給液室35に常時通じて後部ボス34内に開口する補給ポート36がケーシング28に穿設され、リザーバ17から補給されるブレーキ液が補給液室35に供給されることになる。
【0021】
一次マスタピストン31には、該ピストン31が後退限位置に戻ったときに第1出力油圧室30および補給液室35間を連通させる中心型のリリーフ弁37が設けられる。このリリーフ弁37は、一次マスタピストン31の前端部に同軸に装着される弁函38と、補給液室35に通じて一次マスタピストン31の前部に同軸に穿設されるとともに弁函38内で一次マスタピストン31の前端部に開口する弁孔39と、弁孔39の前端開口部を閉鎖可能として弁函38内に前後動可能に収納されるとともに弁孔39を閉鎖する側にばね付勢される弁体40と、一次マスタピストン31が後退限にあるときには弁体40をばね付勢力に抗して前進位置に保持するが一次マスタピストン31の前進時には前記ばね付勢力による弁体40の後退動作すなわち閉弁動作を許容するようにして両端がケーシング28に固定的に支持される開弁棒41とを備える。
【0022】
一次マスタピストン31の中間部には、軸方向に長い長孔42が設けられ、該長孔42の両端は補給液室35に連通される。開弁棒41は、その両端をケーシング28で支持されて長孔42に挿通されており、弁体40に連設されて弁孔39に挿通されるロッド43の後端が開弁棒41に当接される。
【0023】
このようなリリーフ弁37によれば、一次マスタピストン31が後退限に在るときには開弁棒41でロッド43が押圧されることにより弁体40が弁孔39を開放する位置となって開弁し、補給液室35からの補給液を第1出力油圧室30に補給可能となる。また一次マスタピストン31が後退限から前進すると、開弁棒41が長孔42内の後方に位置するように一次マスタピストン31に対して相対移動することにより、弁体40がばね付勢力により弁孔39を閉鎖する位置まで移動し、補給液室35および第1出力油圧室30間が遮断される。
【0024】
第1シリンダ孔32の後端開口部には、一次マスタピストン31の後退限を規制するための止め輪44が一次マスタピストン31の後端に当接し得るようにして装着され、一次マスタピストン31の後部には、ブレーキペダル11に連なる入力杆45の前端が首振り可能に連接される。
【0025】
一次マスタピストン31の前方でケーシング28の第1シリンダ孔32には、一次マスタピストン31との間に第1出力油圧室30を形成する制御ピストン48が摺動自在に嵌合される。
【0026】
図5を併せて参照して、ケーシング28には、第1シリンダ孔32の前端に同軸に連なるとともに第1シリンダ孔32よりも小径に形成される第2シリンダ孔49と、第2シリンダ孔49の前端に同軸に連なって第2シリンダ孔49よりも大径に形成される第3シリンダ孔50と、第3シリンダ孔50の前端に同軸に連なって第3シリンダ孔50よりも大径に形成される装着孔51と、装着孔51の前端に同軸に連なって装着孔51よりも大径に形成されるねじ孔52とが穿設される。
【0027】
第1および第2シリンダ孔32,49間でケーシング28に形成された環状の段部53と、制御ピストン48の前端との間には大気開放室54が形成され、この大気開放室54は、ケーシング28に設けられた開放通路55(図2参照)および前部ボス33内を経てリザーバ17内の前部に連通する。
【0028】
一次マスタピストン31および制御ピストン48間には、戻しばね手段58が設けられ、この戻しばね手段58が発揮するばね力によりに設けられて一次マスタピストン31は後方側にばね付勢される。
【0029】
制御ピストン48の前方でケーシング28内には倍力油圧室59が形成され、比例増圧弁VCは、倍力油圧室59および油圧発生源13間に介装される入口弁60ならびに倍力油圧室59およびリザーバ17間に介装される出口弁61を有し、一次マスタシリンダM1の出力油圧に比例した油圧を倍力油圧室59から出力するように構成される。また倍力油圧室59の油圧に応じた反力を制御ピストン48に前方側から及ぼす反力伝達手段としての反力ピストン62が倍力油圧室59および制御ピストン48間に配置される。
【0030】
ケーシング28の装着孔51には、入口弁60の弁ハウジング63が挿入され、第3シリンダ孔50および装着孔51間でケーシング28に形成された環状の受け面64と、ねじ孔52に螺合されるキャップ65との間に、弁ハウジング63が挟持される。而して倍力油圧室59は、第3シリンダ孔50および第2シリンダ孔49間でケーシング28に形成される環状の段部である規制部66と前記弁ハウジング63との間に形成されることになる。
【0031】
入口弁60は、弁室67を形成してケーシング28に固定される前記弁ハウジング63と、弁室67に臨んで弁ハウジング63に設けられる弁座68に着座することを可能として弁ハウジング63に収納される球状の弁体69と、弁体69を弁座68に着座させる方向のばね力を発揮して弁ハウジング63および弁体69間に設けられる弁ばね70と、倍力油圧室59内に前後動可能に収容される弁構成部材71とを備える。
【0032】
弁ハウジング63において倍力油圧室59側の部分の中央部には、倍力油圧室59に通じる弁孔72と、該弁孔72を中央部に開口させたテーパ状の弁座68と、弁座68の大径端に同軸に連なる収納孔73とが設けられ、弁座68に着座可能な弁体69が収納孔73に収納される。また弁体69が収納孔73から離脱することを阻止するための離脱阻止棒74が弁ハウジング63に設けられる。
【0033】
弁構成部材71は、倍力油圧室59を前後に区切ることがないようにして第3シリンダ孔50に摺動可能に嵌合されており、この弁構成部材71には、弁ハウジング63の弁孔72から弁体69に当接し得る開弁棒75が一体に設けられる。また弁ハウジング63および弁構成部材71間には弁構成部材71を後方側に向けて付勢する戻しばね76が設けられており、弁構成部材71の後退限は該弁構成部材71がケーシング28の規制部66に当接することで規制される。
【0034】
弁ハウジング63の外周および装着孔51の内面間には両側をシールされた環状の通路77が、弁室67に通じるようにして形成されており、該通路77に通じてケーシング28に設けられた入力ポート78が、高圧油圧路79(図1参照)を介して油圧発生源13に接続される。すなわち、弁室67には油圧発生源13からの高圧のブレーキ油が供給される。
【0035】
反力ピストン62は、弁構成部材71および制御ピストン48間に配置されるものであり、この反力ピストン62の前部は第2シリンダ孔49に液密にかつ摺動自在に嵌合され、反力ピストン62の後部は制御ピストン48の前部に相対摺動可能に嵌合される。
【0036】
しかも反力ピストン62の軸方向長さは、弁構成部材71および制御ピストン48がともに後退限にある状態では弁構成部材71および制御ピストン48間で自由に前後に移動することができるように設定される。
【0037】
出口弁61は、大気開放室54に通じるとともに反力ピストン62の前端中央部に開口するようにして該反力ピストン62に設けられる弁孔80と、弁孔80の前端開口部を塞ぐようにして該反力ピストン62の前端に当接し得る弁棒81とを備えるものであり、弁棒81は弁構成部材71に一体に設けられる。しかも弁孔80の後端は、反力ピストン62の後端および制御ピストン48間に形成される空間が加、減圧されることで制御ピストン48に対する反力ピストン62の軸方向相対移動が不円滑となることを回避するために、反力ピストン62の後端に開口している。
【0038】
このような比例増圧弁VCにあっては、制御ピストン48が後退位置にある状態では、弁構成部材71が戻しばね76のばね力で規制部66に当接した後退限にあり、弁ばね70のばね力で弁体69が弁座68に着座するのを許容する位置まで弁構成部材71の開弁棒75が後退しているので入口弁60が閉弁している。この状態で制御ピストン48が前進すると、弁棒81に反力ピストン62の前端が当接して弁構成部材71が前進駆動され、反力ピストン62が備える弁孔80の前端が弁棒81で閉じられるので出口弁61が閉弁し、この状態では入口弁60も閉じているので、倍力油圧室59と油圧発生源13およびリザーバ17とは遮断されている。
【0039】
制御ピストン48がさらに前進すると、弁構成部材71の開弁棒75で弁体69が弁座68から離座するように押されるので入口弁60が開弁する。この状態では、出口弁61が閉弁しているので、倍力油圧室59は油圧発生源13に連通するとともにリザーバ17とは遮断されている。
【0040】
このように比例増圧弁VCが、倍力油圧室59を油圧発生源13に連通させるとともにリザーバ17とは遮断する状態、倍力油圧室59をリザーバ17に連通させるとともに油圧発生源13とは遮断する状態、ならびに倍力油圧室59と油圧発生源13およびリザーバ17とを遮断する状態を切換えることにより、ブレーキペダル11の操作力に対応した倍力油圧が油圧発生源13から倍力油圧室59に引き出されることになる。
【0041】
而して倍力油圧室59に油圧が生じて以降は制御ピストン48に反力ピストン62を介して後退方向の反力が作用することになり、制御ピストン48は、ブレーキペダル11の操作力と、前記反力とがバランスするようにして前・後進を繰返すことになり、これにより倍力油圧室59に、ブレーキペダル11の操作力に対応した第1出力油圧室30の油圧に応じた倍力油圧が、油圧発生源13から引き出されることになる。
【0042】
またブレーキ操作入力の減少によって制御ピストン48が後退限位置に戻るときには、入口弁60が閉弁した後に、出口弁61の開閉を繰り返すように制御ピストン48および反力ピストン62が前進および後退を繰り返し、最終的に制御ピストン48が後退限に後退した状態では、ケーシング28に対する摺動抵抗により反力ピストン60が出口弁61を閉弁状態に維持する状態となる。これにより倍力油圧室59には微小残圧が生じることになり、一次マスタシリンダM1の非作動時に倍力油圧室59には微小油圧が残ったままとなる。
【0043】
ところで入口弁60では、弁構成部材71の開弁棒75が弁体69に接触した状態では、弁ばね70および戻しばね76のばね力と、弁室67の油圧を弁体69の弁座68への着座面積に乗じた油圧力との和が閉弁荷重Winとして弁体69に作用しており、入口弁60を開弁させる際には、その閉弁荷重Winに打ち勝って弁構成部材71を前進駆動させる必要がある。
【0044】
一次マスタピストン31および制御ピストン48間に設けられる戻しばね手段58は、一次マスタピストン31および制御ピストン48間に軸方向移動可能に配置される第1ばね受け部材84と、制御ピストン48に装着される第2ばね受け部材85と、第1ばね受け部材84および第2ばね受け部材85間に縮設される第1戻しばね86と、第1ばね受け部材84および一次マスタピストン31間に縮設される第2戻しばね87とを備える。
【0045】
一次マスタピストン31の前部に装着された弁函38には、前方に延びるロッド88が同軸に締結されており、このロッド88の前部が、第1ばね受け部材84の中央部を移動可能に貫通し、前方側から第1ばね受け部材84に係合し得る係合段部88aがロッド88に設けられる。したがって第1ばね受け部材84は、係合段部88aに係合することで一次マスタピストン31との間の最大間隔を規制されるようにして、一次マスタピストン31および制御ピストン48間に軸方向移動可能に配置されることになり、第2戻しばね87は、第1ばね受け部材84および前記弁函38間に縮設される。
【0046】
また第2ばね受け部材85は、ロッド88に対する後退方向の移動は許容されるもののロッド88の前端から前方に離脱することは阻止されるようにして制御ピストン48の後部に後方側から装着される。この第2ばね受け部材85および第1ばね受け部材84間に第1戻しばね86が縮設され、大気圧開放室54内で制御ピストン48およびケーシング28間には制御ピストン48を第1戻しばね85よりもごく弱いばね力で後方に付勢するばね89が設けられる。したがって第2ばね受け部材85は、実質的には制御ピストン48と一体に作動するものであり、第1戻しばね86は、実質的には第1ばね受け部材84および制御ピストン48間に設けられるものである。
【0047】
しかも第1および第2ばね受け部材84,85は、軸方向相対位置を制限された範囲に規制されつつ相互に摺動可能に嵌合されるものであり、第1ばね受け部材84と、第2ばね受け部材85と実質的に一体的に移動する制御ピストン48との間の間隔も制限されることになる。
【0048】
このような戻しばね手段58において、第1戻しばね86のセット荷重をW1、第1戻しばね86のばね定数をK1、第1および第2ばね受け部材84,85間の最大相対ストロークすなわち第1ばね受け部材84および制御ピストン48間の最大相対ストロークをL1、第2戻しばね87のセット荷重をW2、第1出力油圧室30に油圧が発生するまでの一次マスタピストン31の後退限からの前進ストロークをL2、入口弁60を開弁させる際に該入口弁60から制御ピストン48側に作用する反力をWinとしたときに、
W1<Win<W2<(W1+K1×L1)
であって、
L1<L2
となるように設定される。
【0049】
図6をさらに併せて参照して、一次マスタシリンダM1の下方でケーシング28には、一次マスタシリンダM1と平行な軸線を有する複数たとえば一対の二次マスタシリンダM2F,M2Rが配設され、ケーシング28への両二次マスタシリンダM2F,M2Rの組付方向は、一次マスタシリンダM1のケーシング28への組付方向と同一に設定される。
【0050】
すなわち一次マスタシリンダM1に対応する部分でケーシング28の下部には、一次マスタシリンダM1における第1シリンダ孔32と平行な一対の有底である第4シリンダ孔90F,90Rが、第1シリンダ孔32と同様に後端を開放するようにしてケーシング28に設けられ、第4シリンダ孔90F,90Rの後端開口部は、ケーシング28に装着される蓋部材91F,91Rでそれぞれ液密に閉じられる。
【0051】
一方の2次マスタシリンダM2Fは、倍力油圧室59に通じる第1入力油圧室92Fおよび第2出力油圧室93Fに軸方向両端を臨ませるとともに第1入力油圧室92Fの容積を縮少する側にばね付勢されて第4シリンダ孔90Fに摺動自在に嵌合される二次マスタピストン94Fを備える。
【0052】
二次マスタピストン94Fの外周の軸方向に間隔をあけた3箇所には、シール径を同径として第4シリンダ孔90Fの内面に摺接する環状のシール部材95F,96F,97Fが装着されており、シール部材95F,96F間で二次マスタピストン94Fおよびケーシング28間には環状の第2入力油圧室98Fが形成され、シール部材96F,97F間で二次マスタピストン94Fおよびケーシング28間には環状の大気圧室99Fが形成される。また第1入力油圧室92Fの容積を縮少する側に二次マスタピストン94Fを付勢する戻しばね100Fが第2出力油圧室93Fに収容される。
【0053】
二次マスタピストン94Fには、第2入力油圧室98Fおよび第2出力油圧室93F間に介在する弁手段101Fが、第1入力油圧室92Fの容積を縮少する側への二次マスタピストン94Fの移動に応じて開弁するようにして設けられる。
【0054】
この弁手段101Fは、一次マスタシリンダM1における一次マスタピストン31に装着されたリリーフ弁37と基本的には同一の構成を有するものであり、第2出力油圧室93F側の二次マスタピストン94Fの端部に同軸に装着される弁函102と、第2入力油圧室98Fに通じて二次マスタピストン94Fの後部に同軸に穿設されるとともに弁函102内で開口する弁孔103と、弁孔103の弁函102側開口部を閉鎖可能として弁函102内に前後動可能に収納される弁体104と、弁孔103を閉鎖する方向に弁体104を付勢するばね力を発揮して弁函102内に収納される弁ばね105と、二次マスタピストン94Fが第1入力油圧室92Fの容積を縮少した位置にあるときには弁体104を弁ばね105のばね付勢力に抗して開弁位置に保持するが二次マスタピストン94Fが第1入力油圧室92Fの容積を増大する側に移動したときには弁ばね105による弁体104の閉弁動作を許容する開弁棒106とを備える。
【0055】
第2入力油圧室98Fに対応する部分で二次マスタピストン94Fには、軸方向に長い長孔107が設けられ、該長孔107の両端は第2入力油圧室98Fに連通される。開弁棒106は、その両端をケーシング28で支持されて長孔107に挿通されており、弁体104に連設されて弁孔103に挿通される弁棒108が開弁棒106に当接される。
【0056】
他方の二次マスタシリンダM2Rは、第1入力油圧室92Rおよび第2出力油圧室93Rに軸方向両端を臨ませるとともに第1入力油圧室92Rの容積を縮少する側にばね付勢されて第4シリンダ孔90Rに摺動自在に嵌合される二次マスタピストン94Rと、シール径を同径として第4シリンダ孔90Rの内面に摺接する環状のシール部材95R,96R間で二次マスタピストン94Rおよびケーシング28間に形成される環状の第2入力油圧室98Rおよび第2出力油圧室93R間に介在するようにして二次マスタピストン94Rに設けられる弁手段101Rと、第1入力油圧室92Rの容積を縮少する側に二次マスタピストン94Rを付勢するようにして第2出力油圧室93Rに収容される戻しばね100Rとを備えて、前記一方の二次マスタシリンダM2Fと同様に構成されるものであり、前記一方の二次マスタシリンダM2Fに対応する部分に同一の参照符号を付して図示するだけで、詳細な説明を省略する。
【0057】
ところで、一次マスタシリンダM1の非作動時には、上述のように微小残圧が倍力油圧室59に生じているのであるが、前記両二次マスタシリンダM2F,M2Rにおける第1入力油圧室92F,92Rに臨む二次マスタピストン94F,94Rの受圧面積に前記微小残圧を乗じた値は、二次マスタピストン94F,94Rを第1入力油圧室92F,92R側にばね付勢する戻しばね100F,100Rのばね荷重よりも小さく設定される。
【0058】
ケーシング28には、一方の二次マスタシリンダM2Fの第2出力油圧室93Fに連なる出力ポート14Fと、他方の二次マスタシリンダM2Rの第2出力油圧室93Rに連なる出力ポート14Rとが設けられており、出力ポート14Fが、油圧路15Fおよび調圧手段16Fを介して左、右前輪用車輪ブレーキBFL,BFRに接続され,出力ポート14Rが油圧路15Rおよび調圧手段16Rを介して左、右後輪用車輪ブレーキBRL,BRRに接続される。
【0059】
両二次マスタシリンダM2F,M2Rの第2入力油圧室98F,98Rと、単一の一次マスタピストン31を有する一次マスタシリンダM1の第1出力油圧室30との間に、二次マスタピストン94F,94Rがフルストロークするのに充分な容積を有して各二次マスタシリンダM2F,M2Rに個別に対応する一対のリザーブ室111F,111Rが介設される。
【0060】
前記両二次マスタシリンダM2F,M2Rの上方かつ一次マスタシリンダM1の両側で前記ケーシング28には、一次マスタシリンダM1における第1シリンダ孔32と平行な一対の有底であるリザーブ室形成孔112F,112Rが、第1シリンダ孔32と同様に後端を開放するようにして設けられ、それらのリザーブ室形成孔112F,112Rの後端開口部は、ケーシング28に装着される蓋部材113F,113Rでそれぞれ液密に閉じられる。
【0061】
しかもリザーブ室形成孔112F,112Rの後部には、ストロークアキュムレータピストン114F,114Rがそれぞれ摺動自在に嵌合されており、これらのストロークアキュムレータピストン114F、114Rの一端および前記リザーブ室形成孔112F,112Rの前端閉塞部との間でケーシング28内にリザーブ室111F,111Rが形成される。またケーシング28には、二次マスタシリンダM2F,M2Rにおける第2入力油圧室98F,98Rの上部を対応のリザーブ室111F,111Rの下部に連通させる連通路115F,115Rが設けられるとともに、一次マスタシリンダM1における第1出力油圧室30の上部を両リザーブ室111F,111Rの上部に連通させる連通路116F,116Rが設けられる。
【0062】
一端をリザーブ室111F,111Rに臨ませたストロークアキュムレータピストン114F,114Rおよび蓋部材113F,113R間には、リザーブ室111F,111Rの容積を縮小する方向にストロークアキュムレータピストン114F,114Rを付勢するばね117F,117Rが設けられる。しかも両ばね117F,117Rのばね力は相互に異なって設定される。
【0063】
リザーブ室形成孔112F,112Rの中間部内面には、ストロークアキュムレータピストン114F,114Rの前端外周部に前方から係合し得る環状段部118F,118Rが設けられる。而して環状段部118F,118Rにストロークアキュムレータピストン114F,114Rの前端外周部が係合することで、リザーブ室111F,111Rの最小容積が規定されることになるが、このリザーブ室111F,111Rの最小容積は、二次マスタシリンダM2F,M2Rの二次マスタピストン94F,94Rがフルストロークするのに充分な容積に設定される。
【0064】
両二次マスタシリンダM2F,M2Rの第1入力油圧室92F,92Rには、ケーシング28に設けられた通路119が共通に連通され、また両二次マスタシリンダM2F,M2Rの大気圧室99F,99Rには、リザーバ17に通じてケーシング28に設けられた開放通路120が共通に連通される。
【0065】
ケーシング28には、比例増圧弁VCにおける弁室67すなわち油圧発生源13に通じる通路121と、比例増圧弁VCの倍力油圧室59に通じる通路122とが設けられる。前記通路121は第1開閉弁としての第1リニアソレノイド弁123を介して通路119に接続されており、第1リニアソレノイド弁123は、油圧発生源13および両二次マスタシリンダM2F,M2Rの第1入力油圧室92F,92R間に設けられる。また倍力油圧室59および二次マスタシリンダM2F,M2Rの第1入力油圧室92F,92R間すなわち通路119,122間に第2開閉弁としての常開型の第2リニアソレノイド弁124が設けられる。さらに倍力油圧室59側から二次マスタシリンダM2F,M2Rの第1入力油圧室92F,92R側へのブレーキ油の流通を許容する一方向弁125が、前記第2リニアソレノイド弁124に並列に接続される。
【0066】
また倍力油圧室59および第2リニアソレノイド弁124間で通路122には作動検出器としての第1油圧検出器126が設けられており、この第1油圧検出器126は、倍力油圧室59に所定圧以上の油圧が生じるか否かを検出することで、ブレーキペダル11によるブレーキ操作が行なわれた否か、すなわち一次マスタシリンダM1が作動状態にあるか否かを検出する働きをする。
【0067】
また二次マスタシリンダM2F,M2Rの第1入力油圧室92F,92Rに通じる通路119の油圧すなわち第1入力油圧室92F,92Rの油圧は第2油圧検出器127で検出され、それらの検出器126,127の検出値は制御ユニットCに入力される。
【0068】
第1および第2リニアソレノイド弁123,124の作動は制御ユニットCで制御されるものであり、制御ユニットCは、一次マスタシリンダM1が非作動状態にあることを第1油圧検出器126の検出値が示す状態で第2油圧検出器127の検出値に応じて第1および第2リニアソレノイド弁123,124を開閉制御する自動ブレーキ制御モードと、一次マスタシリンダM1が作動していることを第1油圧検出器126で検出した状態で第1リニアソレノイド弁123を閉じるとともに第2リニアソレノイド弁124を開弁する非自動ブレーキ制御モードとを切換えるようにして、両リニアソレノイド弁123、124の作動を制御する。
【0069】
次にこの実施例の作用について説明すると、一次マスタシリンダM1において一次マスタピストン31および制御ピストン48間に設けられて一次マスタピストン31を後方側にばね付勢する戻しばね手段58は、一次マスタピストン31との間の最大間隔を規制されるとともに制御ピストン48との間の間隔を制限されて一次マスタピストン31および制御ピストン48間に軸方向移動可能に配置される第1ばね受け部材84と、制御ピストン48と実質的に一体に作動する第2ばね受け部材85間に縮設される第1戻しばね86と、第1ばね受け部材84および一次マスタピストン31間に縮設される第2戻しばね87とを備えるものであり、第1戻しばね86のセット荷重をW1、第1戻しばね86のばね定数をK1、第1ばね受け部材84および制御ピストン48間の最大相対ストロークをL1、第2戻しばね87のセット荷重をW2、第1出力油圧室30に油圧が発生するまでの一次マスタピストン31の後退限からの前進ストロークをL2、一次マスタシリンダM1の作動に応じた制御ピストン48の前進に応じて開弁する入口弁60を開弁せしめる際に該入口弁60から制御ピストン48に作用する反力をWinとしたときに、
W1<Win<W2<(W1+K1×L1)
であって、
L1<L2
となるように設定されている。
【0070】
したがってブレーキペダル11からのブレーキ操作力が一次マスタシリンダM1に入力されていない状態では、第1ばね受け部材84は、第1戻しばね86よりもセット荷重が大きな第2戻しばね87のばね力により、後退限にある一次マスタピストン31との間の間隔を最大限とした位置にあり、制御ピストン48は、第1戻しばね86のばね力により第1ばね受け部材84に対して最大限前方の相対位置にある。このような状態で、ブレーキ操作力を一次マスタピストン31に作用せしめると、入口弁60が開弁する直前までは、一次マスタピストン31、第1ばね受け部材84および制御ピストン48が相対位置を一定に保ちつつ前進する。而して入口弁60を開弁させる際には、入口弁60の閉弁荷重が反力Winとして制御ピストン48に作用することになり、このときには、第1戻しばね86のセット荷重W1が反力Winよりも小さい(W1<Win)ので、一次マスタピストン31の前進に応じて、一次マスタピストン31、第2戻しばね87および第1ばね受け部材84が第1戻しばね86を圧縮しつつ前進する。
【0071】
さらに第1ばね受け部材84が制御ピストン48に対して最大限前方に相対移動する過程では、第1戻しばね86のばね荷重(W1+K1×L1)が前記反力Winよりも大きく且つ第2戻しばね87のセット荷重W2よりも大きい{Win<W2<(W1+K1×L1)}ので、一次マスタピストン31は第1および第2戻しばね86,87をともに圧縮しつつ前進することになり、その後で第1出力油圧室30に油圧が発生することになる。
【0072】
このようにして、図7の実線で示すように、入口弁60の開弁に伴う反力の作用開始によっても操作ストロークが停止することなくストロークし続けるようにしてブレーキ操作ストロークに段付き感が生じないようにし、ブレーキ操作フィーリングを向上することができる。これに対し、従来のものでは、図7の破線で示すように、入口弁60の開弁時にその開弁に伴う反力の作用に応じて操作ストロークに対する反力の変化が急激となり、操作ストロークが停止することでブレーキ操作ストロークに段付き感が生じるものである。
【0073】
また一次マスタシリンダM1の出力油圧を後端に受けてケーシング28に摺動自在に嵌合される制御ピストン48の前方でケーシング28内には倍力油圧室59が形成されており、この倍力油圧室59には、後方側にばね付勢される弁構成部材71がケーシング28に設けられる規制部66で後退限が規制されるようにして前後動可能に収容される。
【0074】
一方、倍力油圧室59の油圧に応じた反力を制御ピストン48に前方側から及ぼすようにして倍力油圧室59および制御ピストン48間に配置される反力ピストン62は、弁構成部材71および制御ピストン48がともに後退限にある状態では弁構成部材71および制御ピストン48間で自由に前後に移動することを可能としてケーシング28に摺動自在に嵌合され、倍力油圧室59および油圧発生源13間に設けられる入口弁60は、弁構成部材71の後退限からの前進によって開弁するように構成され、倍力油圧室59およびリザーバ17間に設けられる出口弁61は、弁構成部材71への反力ピストン62の前端の当接により閉弁するように構成されている。
【0075】
このような構成によれば、ブレーキ操作入力に応じた一次マスタシリンダM1の出力油圧を受けて制御ピストン48が前進したときには、制御ピストン48がその前方にある反力ピストン62を押しつつ前進することになり、制御ピストン48の前進時には弁構成部材71に反力ピストン62の前端が当接することで出口弁61が閉弁し、出口弁61の閉弁後に制御ピストン48がさらに前進することにより、反力ピストン62が弁構成部材71を押して前進せしめて入口弁60が開弁し、これにより倍力油圧室59に油圧発生源13からの高油圧が作用することになる。
【0076】
而して出口弁61の閉弁状態では倍力油圧室59の油圧は反力ピストン62を介して制御ピストン48に作用するので、一次マスタシリンダM1の出力油圧による制御ピストン48の前進方向の力と、倍力油圧室59の油圧による制御ピストン48の後退方向の力とがバランスするようにして、出口弁61および入口弁61が開閉を繰り返し、倍力油圧室59の油圧がブレーキ操作入力に比例して増圧制御されることになる。
【0077】
またブレーキ操作入力の減少によって制御ピストン48が後退限位置に戻るときには、入口弁60が閉弁した後に、出口弁61の開閉を繰り返すように制御ピストン48および反力ピストン62が前進および後退を繰り返し、最終的に制御ピストン48が後退限に後退した状態では、ケーシング28に対する摺動抵抗により反力ピストン62が出口弁61を閉弁状態に維持する状態となり、倍力油圧室59に残圧が生じることになる。したがって一次マスタシリンダM1の非作動時に倍力油圧室59には微小油圧が残ったままとなっており、一次マスタシリンダM1の作動開始に伴って入口弁60が開弁したときに倍力油圧室59には残圧があることになり、大気圧状態である倍力油圧室59に油圧発生源13からの高圧のブレーキ油が流入するものと比べて、倍力油圧室59への高油圧のブレーキ油の流入に伴うキャビテーション等による騒音を抑制することができる。
【0078】
しかも二次マスタシリンダM2F,M2Rにおいては、倍力油圧室59の残圧を第1入力油圧室92F,92Rに臨む二次マスタピストン94F,94Rの受圧面積に乗じた値が、二次マスタピストン94F,94Rを第1入力油圧室92F,92R側にばね付勢する戻しばね100F,100Rのばね荷重よりも小さく設定されている。これにより、非ブレーキ操作時に倍力油圧室59に残圧が生じていても二次マスタシリンダM2F,M2Rが作動することはなく、したがって車輪ブレーキBFL,BFR;BRL,BRRの引きずりが生じることを防止することができる。
【0079】
また一次マスタシリンダM1は、単一の一次マスタピストン31を有するシングル型に構成されるものであり、一次マスタピストンの摺動による摺動抵抗を比較的小さく抑えることができ、ブレーキ操作時の無効操作力を比較的小さく抑えることができる。しかも単一の一次マスタシリンダM1および比例増圧弁VCを複数たとえば一対の二次マスタシリンダM2F,M2Rに共通のものとしたことにより、部品点数を低減することができる。
【0080】
両二次マスタシリンダM2F,M2Rは、単一の比例増圧弁VCの倍力油圧室59に共通に接続される第1入力油圧室92F,92Rならびに相互に異なる車輪ブレーキBFL,BFR;BRL,BRRに接続される第2出力油圧室93F,93Rに両端を臨ませてケーシング28に摺動自在に嵌合される二次マスタピストン94F,94Rと、一次マスタシリンダM1の第1出力油圧室30に通じてケーシング28内に形成される第2入力油圧室98F,98Rを第1入力油圧室92F,92Rの油圧低下に応じた二次マスタピストン94F,94Rの第1入力油圧室92F,92R側への移動に伴って第2出力油圧室93F,93Rに通じさせることを可能とした弁手段101F,101Rとを備えるものであり、第2入力油圧室98F,98Rと、単一の一次マスタピストン31を有する一次マスタシリンダM1の第1出力油圧室30との間には、二次マスタピストン94F,94Rがフルストロークするのに充分な容積を有して各二次マスタシリンダM2F,M2Rに個別に対応する一対のリザーブ室111F,111Rが介設され、第1出力油圧室30は各リザーブ室111F,111Rの上部にそれぞれ接続されている。
【0081】
したがって、両二次マスタシリンダM2F,M2Rの1つと、その二次マスタシリンダが接続される車輪ブレーキとの間で油圧失陥が生じた場合には、各二次マスタシリンダM2F,M2Rに個別のリザーブ室111F,111Rにより油圧失陥が生じていない系統での二次マスタシリンダの二次マスタピストンがフルストロークするのに必要なブレーキ油を確保することができ、二次マスタシリンダM2F,M2Rの第2出力油圧室93F,93Rにエアーの噛み込みが生じる可能性を排除し、油圧失陥が生じていない系統で充分なブレーキ力を得ることができる。
【0082】
また第1入力油圧室92F,92Rの容積を縮小する側にばね付勢された二次マスタピストン94F,94Rの外周に、シール径を同径とした一対の環状のシール部材95F,96F;95R,96Rが装着され、第2入力油圧室98F,98Rが、前記両シール部材95F,96F;95R,96R間でケーシング28および二次マスタピストン94F,94R間に形成され、各リザーブ室111F,111Rに一端をそれぞれ臨ませたストロークアキュムレータピストン114F,114Rが、各リザーブ室111F,111Rの容積を縮小する側に弾発付勢されてケーシング28に摺動自在に嵌合されている。
【0083】
したがって一次マスタシリンダM1の出力油圧は、各二次マスタシリンダM2F,M2Rにおける二次マスタピストン94F,94Rの作動に対して影響を及ぼすことはなく、ストロークアキュムレータピストン114F,114Rをその弾発付勢力に抗して押圧することになり、リザーブ室111F,111Rを利用してストロークアキュムレータをケーシング28内に効率よく配置することができる。
【0084】
しかも各ストロークアキュムレータピストン114F,114Rをそれぞれ弾発付勢するばね117F,117Rの付勢力が、各リザーブ室111F,111R毎に異なって設定されるので、一次マスタシリンダM1の第1出力油圧室30に、複数の反力特性の異なるストロークアキュムレータが接続されることになり、図8の実線で示すように、ブレーキペダル11に作用する反力を複数段階に変化するような複合ストロークアキュムレータ特性を容易に得ることができる。
【0085】
さらに一次マスタシリンダM1、比例増圧弁VC、一対の二次マスタシリンダM2F,M2Rおよび一対のリザーブ室111F,111Rが、一次マスタシリンダM1および比例増圧弁VCを同軸上に配置するとともに一次マスタシリンダM1、各二次マスタシリンダM2F,M2Rおよび各リザーブ室111F,111Rを平行として共通のケーシング28に配設されるので、ケーシング28に施すべき加工の主要部分を平行な方向に行なうようにして加工を容易としつつ、一次マスタシリンダM1、比例増圧弁VCおよび一対の二次マスタシリンダM2F,M2Rを構成する部品、ならびに一対のリザーブ室111F,111Rに関連する部品のケーシング28への組付けを容易として組付け性を向上することができる。
【0086】
また油圧発生源13および二次マスタシリンダM2F,M2Rの第1入力油圧室92F,92R間に設けられる第1リニアソレノイド弁123と、倍力油圧室59および二次マスタシリンダM2F,M2Rの第1入力油圧室92F,92R間に設けられる第2リニアソレノイド弁124とが、制御ユニットCによって作動制御されるものであり、制御ユニットCは、一次マスタシリンダM1が非作動状態にあることを第1油圧検出器126の検出値が示す状態で第2油圧検出器127の検出値に応じて第1および第2リニアソレノイド弁123,124を開閉制御する自動ブレーキ制御モードと、一次マスタシリンダM1が作動していることを第1油圧検出器126で検出した状態で第1リニアソレノイド弁123を閉じるとともに第2リニアソレノイド弁124を開弁する非自動ブレーキ制御モードとを切換えるようにして、両リニアソレノイド弁123、124の作動を制御する。
【0087】
したがって車両運転者のブレーキ操作によって一次マスタシリンダM1を作動せしめたときに、第1リニアソレノイド弁123を閉じるとともに第2リニアソレノイド弁124を開弁する非自動ブレーキ制御モードを選択することにより、一次マスタシリンダM1の出力油圧に比例した倍力油圧を倍力油圧室59から出力し、この倍力油圧で二次マスタシリンダM2F,M2Rを作動せしめることにより、車輪ブレーキBFL,BFR;BRL,BRRを強力にブレーキ作動させることができる。しかも調圧手段16F,16Rの調圧により、車輪ブレーキBFL,BFR;BRL,BRRのブレーキ油圧を制御するようにしてアンチロック制御等のブレーキ油圧制御を行なうことができる。
【0088】
また車両運転者がブレーキ操作を行なっていない非ブレーキ操作時には、第2油圧検出器127の検出値に応じて第1および第2リニアソレノイド弁123,124を開閉制御する自動ブレーキ制御モードを選択することにより、出口弁61が開弁している状態で油圧発生源13からの高油圧を第1および第2リニアソレノイド弁123,124の開閉によって調節しつつ二次マスタシリンダM2F,M2Rの第1入力油圧室92F,92Rに導くことが可能であり、制御された高油圧を調圧手段16F,16Rに導くことで自動ブレーキ制御を行なうことができる。
【0089】
さらに自動ブレーキ制御を実行中のブレーキペダル11の踏み増し操作に応じて一次マスタシリンダM1が作動したことを第1油圧検出器126が検出したときに、第2リニアソレノイド弁124を開くととともに第1リニアソレノイド弁123を閉じるのであるが、この際、第2リニアソレノイド弁124に並列に接続された一方向弁125は、倍力油圧室59の油圧が二次マスタシリンダM2F,M2Rの第1入力油圧室92F,92R側の油圧よりも大きくなるのに応じて倍力油圧室59から二次マスタシリンダM2F,M2Rに踏み増しに伴う油圧が作用することを許容する。したがって自動ブレーキ制御実行中の踏み増し操作時に、第1リニアソレノイド弁123の閉弁および第2リニアソレノイド弁124の開弁作動制御が遅れても、自動ブレーキ制御実行時よりも高い油圧を瞬時に二次マスタシリンダM2F,M2Rに作用せしめるようにして踏み増し時の反応性を高めることができる。
【0090】
しかも自動ブレーキ制御実行時には、二次マスタシリンダM2F,M2Rにおける第1入力油圧室92F,92Rに作用する油圧を、第1および第2リニアソレノイド弁123,124の開閉制御によって制御するようにしているので、単純に開閉するソレノイド弁を用いた場合に比べて、より精密な油圧制御が可能となる。すなわち単純な開閉を行なうソレノイド弁の場合には、弁前後の差圧変化に伴って同一デューティでもリニアに油圧制御を行なうことができないのに対し、リニアソレノイド弁を用いることにより弁前後の差圧変化にかかわらずリニアに油圧を制御することができるのである。
【0091】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0092】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、自動ブレーキ制御実行中の踏み増し操作時には、一次マスタシリンダの作動状態を作動検出器が検出するのに応じて第2開閉弁を開くとともに第1開閉弁を閉じるのであるが、この場合に、倍力油圧室の油圧が二次マスタシリンダの入力油圧室側の油圧よりも大きくなるのに応じて一方向弁により倍力油圧室から二次マスタシリンダに、踏み増しに伴う油圧が作用することになるので、自動ブレーキ制御実行中の踏み増し操作時に、第1および第2開閉弁の作動制御が遅れても、自動ブレーキ制御実行時よりも高い油圧を瞬時に二次マスタシリンダに作用せしめるようにして踏み増し時の反応性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】四輪車両用ブレーキ装置の回路構成を示す図である。
【図2】油圧倍力装置の縦断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】操作ストロークおよび操作荷重の関係を示す図である。
【図8】ストロークアキュムレータ特性を示す図である。
【符号の説明】
13・・・油圧発生源
16F,16R・・・調圧手段
17・・・リザーバ
48・・・制御ピストン
59・・・倍力油圧室
60・・・入口弁
61・・・出口弁
62・・・反力伝達手段としての反力ピストン
92F,92R・・・入力油圧室
93F,93R・・・出力油圧室
123・・・第1開閉弁としての第1リニアソレノイド弁
124・・・第2開閉弁としての第2リニアソレノイド弁
125・・・一方向弁
BFL,BFR,BRL,BRR・・・車輪ブレーキ
M1・・・一次マスタシリンダ
M2F,M2R・・・二次マスタシリンダ
Claims (1)
- ブレーキペダル(11)によるブレーキ操作入力に応じて油圧を出力する一次マスタシリンダ(M1)と、一次マスタシリンダ(M1)の出力油圧よりも高圧の油圧をブレーキ操作の有無にかかわらず出力可能とする油圧発生源(13)と、入力油圧室(92F,92R)ならびに該入力油圧室(92F,92R)の油圧に応じた油圧を出力する出力油圧室(93F,93R)を有する二次マスタシリンダ(M2F,M2R)と、前記出力油圧室(93F,93R)の油圧を調圧することを可能として前記出力油圧室(93F,93R)および車輪ブレーキ(BFL,BFR;BRL,BRR)間に設けられる調圧手段(16F,16R)と、一次マスタシリンダ(M1)の出力油圧に応じた油圧力を後端に受ける制御ピストン(48)と、該制御ピストン(48)の前方に配置される倍力油圧室(59)の油圧に応じた反力を前記制御ピストン(48)に及ぼす反力伝達手段(62)と、前記一次マスタシリンダ(M1)の出力油圧増大に伴う前記制御ピストン(48)の前進に応じて開弁するようにして倍力油圧室(59)および前記油圧発生源(13)間に介装される入口弁(60)と、前記制御ピストン(48)の前進に応じて閉弁するようにして倍力油圧室(59)およびリザーバ(17)間に介装される出口弁(61)と、前記油圧発生源(13)および前記入力油圧室(92F,92R)間に設けられる第1開閉弁(123)と、前記倍力油圧室(59)および前記入力油圧室(92F,92R)間に設けられる第2開閉弁(124)と、前記一次マスタシリンダ(M1)が作動状態にあるか否かを検出する作動検出器(126)と、前記入力油圧室(92F,92R)の油圧を検出する油圧検出器(127)と、前記第1及び第2開閉弁(123,124)の作動を制御する制御ユニット(C)とを備え、
その制御ユニット(C)は、前記一次マスタシリンダ(M1)の非作動状態で前記油圧検出器(127)の検出値に応じて前記第1及び第2開閉弁(123,124)を開閉する自動ブレーキ制御モードと、前記一次マスタシリンダ(M1)の作動状態を前記作動検出器(126)が検出するのに応じて前記第1開閉弁(123)を閉じると共に前記第2開閉弁(124)を開弁する非自動ブレーキ制御モードとを切換え可能である車両用ブレーキ装置であって、
前記自動ブレーキ制御モードの実行中にブレーキペダル(11)が踏まれた時に、前記第1及び第2開閉弁(123,124)の作動制御が遅れても該自動ブレーキ制御モードの実行時よりも高い油圧を瞬時に前記二次マスタシリンダ(M2)に作用せしめるべく、前記倍力油圧室(59)側から前記入力油圧室(92F,92R)側へのブレーキ油の流通を許容する一方向弁(125)が、前記第2開閉弁(124)に並列に接続されることを特徴とする、車両用ブレーキ装置。
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