JP3717736B2 - 光触媒層を有する積層構造体 - Google Patents

光触媒層を有する積層構造体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚、抗菌、防黴、脱臭、空気浄化などの作用を長期に亘って発揮できる光触媒層を有する積層構造体に関する。さらに詳しくは、基材に応じてその表面の光沢を自由に制御でき、さらには特に気温変動、風や振動などにより基材が膨張、収縮し易い屋外などの過酷な使用環境下でも充分適用でき、長期に亘ってその機能を発揮できる光触媒性機能部材、特にその膜構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
TiO2に代表される光触媒作用を有する半導体が、防汚、抗菌、防黴、脱臭、空気浄化などの作用を有することは従来から知られており、最近ではこれらの作用を利用した様々な材料が研究、開発されている。このような光触媒膜を種々の基材上にコーティングする場合、基材上に直接光触媒膜をコーティングする方法、もしくは国際公開WO97/00134号に示されるように基材/接着層/光触媒層の3層構造にしたり、あるいはそれ以上の多層構造にする場合が多い。特に、基材と光触媒層との密着性を強めたり、基材が光触媒作用によって侵され易い有機物からなる場合又は有機物を含む構造である場合、後者のような膜構造にするのが一般的である。
【0003】
また、用途ごとの光触媒膜の最適な構造に関しては、ガラスなど透光性を要求される基材の上に透光性を付与した膜を形成するための提案は多い。例えば、国際公開WO96/13327号には、ガラス板等の透光性基体上に酸化チタン薄膜を成膜する場合、膜厚0.02〜0.2μm程度のSiO2薄膜からなる中間層、いわゆるプレコート薄膜上に膜厚0.1〜5μm程度の酸化チタン薄膜を形成することが提案されている。
【0004】
また、特開平9−198907号には照明器具表面に形成する光触媒膜において酸化チタン膜の膜厚を0.1〜2μmにすることが、特開平9−251803号には照明装置の透光性カバーに形成する光触媒膜において酸化チタンを主成分とする光触媒膜の膜厚を0.01〜0.5μmにすべきことが、さらに特開平9−235140号にはガラス基板上に成膜する酸化チタン薄膜の膜厚を0.01〜0.2μmにすべきことが教示されている。
しかし、アルミ建材のように非透光性基材の上に光触媒膜を成膜し、表面の光沢度を制御する方法に関して提案されたものは皆無である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
アルミ外装建材など多くの建築用部材、特にビル用建材は、デザイン面、施工面、実用面などを考慮した場合、艶のある、いわゆる光沢度の高い質感より、艶のない、いわゆる光沢度の低い質感の方が好まれる場合が多い。しかし、前記のように従来提案されている光触媒膜はいずれも光触媒膜に透明性を持たせるためのもので、これらに示された方法で成膜すると、非常に光沢度の高い、艶のある膜に仕上がるといった問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、前記したような問題を解決し、光触媒膜の防汚、抗菌、防黴、脱臭、空気浄化等の本来の作用を阻害することなく、さらには光触媒膜の本来の耐久性能を低下させることなく、光沢度の低い艶のない光触媒膜を形成でき、あるいは光触媒膜の仕上がり光沢度を制御できる光触媒膜構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、基材表層部と表面層としての光触媒層との間に光触媒作用によって侵されない無機薄膜又はシリコーン樹脂もしくはポリテトラフルオロエチレンからなる有機薄膜、あるいはこれらの複合体からなる中間層が介在しており、かつ該中間層の中に、フィラーとして光触媒の強い酸化作用によって侵されない平均粒径が0.01〜1μmの範囲内にある無機質微粒子(光触媒層中の光触媒微粒子を除く)が分散していることを特徴とする光触媒層を有する積層構造体が提供される。一つの態様によれば、上記フィラーとして光の屈折率が該中間層の母材自体の光の屈折率と異なる無機質微粒子が中間層に分散しており、また他の態様によれば、無機質微粒子が中間層の表面部又は内部面(中間層内部の横断面)が凹凸状になるように分散している。
前記無機質微粒子としては、金属微粒子、酸化物微粒子、窒化物微粒子、酸窒化物微粒子、硫化物微粒子等の1種、又はこれらの2種以上の混合微粒子を用いることができるが、特に上記酸化物微粒子としてはSiO微粒子が好ましい。
【0008】
好適には、無機質微粒子は中間層全体積の50%以下の割合で中間層中に存在するが好ましい。
なお、前記中間層自体、すなわち無機質微粒子を混在させる母材(マトリックス)は、無機薄膜又はシリコーン樹脂もしくはポリテトラフルオロエチレンからなる有機薄膜、あるいはこれらの複合体のいずれでもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
前記したように、基材/中間層/光触媒層の膜構造においては、従来、デザイン面、施工面、実用面などを考慮した光沢度、いわゆる艶の制御に関して示されたものはなかった。
本発明者らの研究によれば、基材表層部と光触媒層との間に存在する中間層の中に、該中間層の母材自体の屈折率とは異なる屈折率を有する無機質微粒子、例えば金属微粒子や酸化物微粒子などのフィラーを添加し、フィラーと中間層の光の屈折率の違いを利用したり、あるいはまた中間層表面又はその内部面(中間層内部の横断面)を凹凸状にすることで、入射光を散乱させ、光沢度を下げることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。中間層が多層の場合、そのうちの1層以上にフィラーを添加すればよい。さらにまた、フィラーの添加量や平均粒径を制御することにより、任意の光沢度に自由に制御することが可能となることを見出した。
【0010】
前記フィラーとして中間層に添加する無機質微粒子としては、入射する光を散乱できるものであれば全て使用可能であり、金属微粒子、酸化物微粒子、窒化物微粒子、酸窒化物微粒子、硫化物微粒子等の1種、又はこれらの2種以上の混合微粒子を用いることができるが、特に光散乱性や入手の容易さ、経済性等の点から球状SiO2微粒子が好ましい。また、無機質微粒子の形態も球状の他、ファイバー状、扁平状(例えば板状)等であってもよい。例えば、SiC、チタン酸カリウム(K2O・8TiO2)、ホウ酸アルミニウム(9Al23・2B23)、アルミナ(Al23)等の好ましくは直径0.05〜μm、長さ1〜500μmのファイバー状微粒子、アルミナ(Al23)、タルク(天然鉱物)等の好ましくは直径0.05〜500μm、厚さ0.05〜μmの板状微粒子などを使用することもできる。
【0011】
添加する無機質微粒子の平均粒径(但し、ファイバー状の場合には直径、板状の場合には厚さをいう)は0.01〜μmの範囲内に設定することが好ましい。添加する無機質微粒子の平均粒径が0.01μmよりも小さくなると、充分な光沢調整効果を発揮し難くなる。一方、平均粒径がμmを超えて大きくなると、表面凹凸の大きな不均一な膜になり易く、表面仕上がり状態が好ましくない。また、無機質微粒子の添加量は、中間層全体の体積に占める添加微粒子の体積率の割合として50%以下、好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下の範囲に設定することが望ましい。下限値としては特に制約はないが、添加量が多いほど光沢調整効果は高く、必要光沢に合わせて添加量を調整すればよい。例えばアルミ外装建材として使われる場合には、3分艶(光沢度:約20数%)程度のものが好まれる傾向にあり、その場合5%以上の添加が好ましい。一方、フィラーの体積率が大きいほど、光沢調整効果は大きいが、逆に膜が脆くなるなど、膜の機械的な強度の面で問題となる。このような点から、フィラーの体積率は50%以下とするのが好ましい。また、フィラーの材質としては、フィラーの可視光領域の波長での光の屈折率と中間層自体の屈折率の差が大きい方が好ましい。
【0012】
以下、添付図面を参照しながら説明すると、図1は本発明の基材1/中間層2/光触媒層3の基本的な膜構造の概略を示している。中間層2内には、前記したようなフィラー(無機質微粒子)4が均一に分散している。
基材1としては、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼等の各種金属もしくは陽極酸化等の耐食性を付与する表面処理を施した各種金属、コンクリート、タイル、陶磁器等の各種セラミックス、合成樹脂、基材表面に有機被膜を形成したものなどの各種有機材料、ガラス、石材など、各種基材を用いることができ、特定のものに限定されない。
また、基材の形態も、形材、パネル、シート、フィルム、各種形状の成形物などの製品、部品もしくは部材であってよく、特定のものに限定されない。
【0013】
光触媒作用により侵されない中間層(母材)2としては、シリカ、アルミナ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、SiO2+MOX(MOXはP25、B23、ZrO2、Ta25等の少なくとも1種の金属酸化物)あるいは窒化物、酸窒化物、硫化物、カーボン等のセラミックス、金属などの各種無機材料の薄膜を好適に用いることができる。また、光触媒作用により侵されない、もしくは非常に侵され難いシリコーン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等の有機材料の薄膜も用いることができる。なお、これらの材料は、フィラー(無機質微粒子)のバインダーとしてだけでなく、後述する光触媒微粒子の分散塗料の基材(バインダー)としても使用できる。
【0014】
上記のような基材1の表面に中間層2を形成する方法としては、従来公知の種々の方法が適用でき、特定の方法に限定されない。例えば、中間層(母材)をセラミックスから形成する場合には、有機溶剤中に、前記したフィラーとしての無機質微粒子と共に、セラミックス微粒子又はそれらの前駆体(金属アルコキシド、金属ハロゲン化物等)を分散させた塗料を、その粘度に応じてスプレーコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法など適宜の方法で基材表面にコーティングし、加熱して溶剤を蒸散させると共に硬化させる方法が、生産性やコストの点から有利である。一方、中間層(母材)をシリコーン樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機材料から形成する場合には、前記したフィラーとしての無機質微粒子を分散させた塗料を用い、種々の塗装方法を採用できる。
【0015】
一方、図2は中間層2の厚さ方向の中央部にフィラー(無機質微粒子)4が集中的に分散した膜構造、図3は中間層2の表面側部分(光触媒層3と接触する側の部分)にフィラー(無機質微粒子)4が集中的に分散した膜構造の概略を示している。図2に示すような構造の中間層2を形成する場合、まずフィラー(無機質微粒子)を含有しない中間層コーティング材の塗膜を形成し、次いでフィラー(無機質微粒子)4を含有する中間層コーティング材の塗膜を形成し、その後さらにフィラー(無機質微粒子)を含有しない中間層コーティング材の塗膜を形成する3回塗りによって行なうことができる。一方、図3に示すような構造の中間層2を形成する場合、フィラー(無機質微粒子)を含有しない中間層コーティング材の塗膜形成と、フィラー(無機質微粒子)4を含有する中間層コーティング材の塗膜形成の2回塗りにより容易に形成できる。なお、フィラー(無機質微粒子)を含有しない中間層コーティング材と含有する中間層コーティング材を3回以上多数回塗りすることもできる。
【0016】
前記図2及び図3に示すような膜構造の場合、図2のように中間層の内部面(中間層内部の横断面)又は図3のように中間層の表面部に、フィラー(無機質微粒子)4自体により凹凸状の面が形成されるので、この面での入射光の散乱も生じる。
フィラー(無機質微粒子)4は、図1のように中間層膜中に均一に分布したものであっても、図2のように厚さ方向の中央部もしくは図3のように表面側に集中するなど傾斜的な分布をもっていても構わないが、中間層2が基材1及び光触媒層3とより強固に接着するには、フィラー(無機質微粒子)4が図3のようにどちらかの層に片寄って存在するより、図1及び図2の均一分散もしくは中央部に集中した構造のように、中間層母材自体が基材1及び光触媒層3と接触するような構造が好ましい。
【0017】
中間層の膜厚は、1〜10μm程度が好ましく、より好ましくは3.2μm以上である。特に、中間層の上に形成される光触媒層が、後述するように島状に分散した状態でなく、連続した皮膜に形成される場合、乾燥工程又はその後の経時的な収縮により光触媒層及び中間層に亀裂が生じ易いため、3.2μm以上の膜厚とすることが好ましい。
このような中間層を介在させることにより、例えば基材又はその表面部が有機材料からなる場合においても、長期間の使用によっても概ね有機基材(有機被膜)の表面部が分解されることはなく、中間層及びその上の光触媒膜を安定に保持でき、防汚、防曇、抗菌、防黴、脱臭、空気浄化等の作用を長期間に亘って安定的に発揮させることが可能となる。但し、屋外での使用の場合、使用場所や使用形態により、日射量、降雨量、気温、湿度などの環境要因が最悪に重なり合う場合もあり、・OHラジカルの移動距離も変動する可能性があるため、有機基材(有機被膜)の表面と光触媒膜下端の間の距離は、より好ましくは約3.5μm以上とすることが望ましい。
一方、この距離の上限は特に限定されるものではなく、例えば数十μm程度、あるいは適用対象物によってはそれ以上でもよいが、生産性や経済性、さらには適用対象物がシート状物の場合にはその可撓性等を考慮すると、約10μm以下が好ましい。
【0018】
光触媒作用により空気中の水分が酸化されて発生した・OHラジカルや、空気中の酸素が還元されて発生したO2-などの活性物質は、それらの移動可能距離範囲内にある有機物を分解する作用がある。その臨界移動距離は、屋外使用環境下では概ね3.2μm以下であることを本発明者らは既に確認している。但し、ここでいう移動距離は必ずしも中間層の膜厚を意味しない。例えば、中間層の表面は凹凸状であってもよく、その場合には中間層の最低膜厚が3.2μm以上あればよい。また、中間層は光触媒作用により侵されない材料から形成する必要はあるが、有機基材の表面部が侵されるか否かはそれと光触媒層との間の距離に依存するものであるため、この距離を一定に保持できる構造の中間層であればよい。従って、この距離が一定に保持される限り、中間層に多数の亀裂やピンホールがあってもよく、また多孔質構造のものでもよい。
【0019】
本発明に用いる光触媒層3は、光触媒作用を発揮する層を意味し、光触媒作用を有する半導体の薄膜又はこのような半導体の微粒子を含む(担持及び/又は含有する)薄膜のいずれでもよい。光触媒作用を有する半導体としては、電子−正孔移動度が比較的大きく、光触媒作用を有する半導体であればいずれも使用可能であり、例えばTiO2、SrTiO3、ZnO、CdS、SnO2等が挙げられるが、これらの中でも特にTiO2が好ましい。また、このような光触媒作用を有する半導体と共に銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属又は抗菌性金属化合物を共存させれば、例えば光触媒層中に分散させたり、光触媒層の表面に付着させたりすれば、夜間であっても抗菌・防黴性が維持されるようになる。
【0020】
光触媒作用を有する半導体、抗菌性金属又は抗菌性金属化合物の形態としては、個々の微粒子の形態、光触媒作用を有する半導体微粒子(以下、光触媒微粒子という。)の表面に抗菌性金属又は抗菌性金属化合物が部分的に(又は一部の粒子は全体的でも構わない)付着している形態、光触媒微粒子の表面にシリカ等の無機質バインダー微粒子が部分的に付着している形態、光触媒微粒子の表面に無機質バインダー微粒子と抗菌性金属又は抗菌性金属化合物が部分的に付着している形態、抗菌性金属又は抗菌性金属化合物が付着している無機質バインダー微粒子が光触媒微粒子の表面に付着している形態など、種々の形態を採用できる。
また、本発明においては光触媒膜の構造についても特に限定されるものではなく、連続薄膜、不連続薄膜、島状分散薄膜等のいずれの構造であっても適応可能である。
【0021】
中間層の上に形成される光触媒層の膜厚は、0.01〜10μmが適当である。膜厚が厚いと光触媒活性を長期間に亘って高く維持でき、また光干渉による着色も減少するなどの利点があるが、10μmを超える膜厚になると、光触媒膜が剥離し易くなり、また生産性やコストの面からも好ましくない。特に、光触媒膜をコーティングした後、組立時や施工時に剥離が起き易くなる。なお、この程度の膜厚であれば、光触媒膜に白化等の問題を生ずることなく充分に高い透明性を保持できる。特に屋外で使用する場合は、耐摩耗性も考慮し、平均膜厚を0.5μm以上とすることが好ましい。
【0022】
光触媒作用を有する半導体のコーティング方法としては、ディップ法、スパッタ法、溶射法、スプレー法など種々の方法を用いることができるが、適当な塗料中に光触媒微粒子又はその前駆体、あるいは必要に応じて抗菌性金属又は抗菌性金属化合物の微粒子を分散させ、これを基材にスプレー塗布、乾燥することによってコーティングし、加熱硬化する方法が好ましい。基材やその表面の被膜が高温に耐えられる場合には、上記の種々のコーティング方法で光触媒膜の形成が可能であるが、耐熱性が劣る樹脂材料からなる場合は、高温に加熱することが難しくなる。その場合には、適当な塗料中に光触媒微粒子を分散させ、これを基材にスプレー塗布、乾燥することによってコーティングする方法を採用すればよい。また、光触媒微粒子を分散させた塗料の基材(無機系バインダー)が前述したような中間層の塗料の被膜形成成分と同一の場合、中間層と光触媒層の密着性がより一層向上する効果が得られる。
【0023】
塗料中に光触媒微粒子を分散させ、これをスプレー塗布するコーティング方法の場合、混合する光触媒微粒子の割合は、光触媒層全体の体積に対し、0.5〜50%(ここで50%は、光触媒微粒子の体積と塗料基材の体積が等しいことに相当する。)の範囲にあることが好ましい。光触媒微粒子の割合が0.5%より少なくなると、光触媒作用を発揮する光触媒微粒子の量が不足し、ひいては充分な光触媒作用が得られなくなる。
【0024】
使用する光触媒微粒子の粒径は、0.005〜1μm、好ましくは0.01〜0.3μmが適当である。粒径が0.005μmよりも小さくなると、量子サイズ効果によりバンドギャップが大きくなり、高圧水銀灯等の短波長光を発生する照明下でないと光触媒作用が得られないといった問題がある。また、粒径があまりに小さ過ぎると、取り扱いが困難であったり、塗料中への分散が悪くなるという問題も生じてくる。取り扱い性の点からは0.01μm以上の粒径が好ましい。一方、粒径が1μmを超えると、材料表面に比較的大きな光触媒微粒子が存在することになるため、表面の滑らかさが乏しくなり、また材料表面に露出した粒子が脱落し易くもなる。材料表面の平滑さ等を考慮すると0.3μm以下の粒径が好ましい。
【0025】
特に好適な態様においては、半導体微粒子を含む薄膜のバインダーとしては、無機バインダー、特にシリカを用いることが好ましく、また、前記中間層としてはシリカを主成分とする無機薄膜又はシリコーン樹脂もしくはポリテトラフルオロエチレンからなる有機薄膜、あるいはこれらの複合体を用いることが好ましい。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明の効果について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。
【0027】
実施例1
膜厚30μmのフッ素樹脂塗膜を形成したアルミ板表面に、平均粒径0.5μmのSiO2微粒子を添加量として体積率で0〜80%の範囲の種々の割合で加えたシリコン系コーティング剤(日本曹達(株)製、ビストレイターL NSC−200A)をスプレー法でコーティングし、90℃で30分加熱して硬化させ、膜厚5μmの中間層(連続膜)を形成した。この上に、光触媒酸化チタンコーティング剤(日本曹達(株)製、ビストレイターL NSC−200C)をスプレー法でコーティングし、120℃で30分加熱して硬化させ、光触媒膜を形成した。
得られた試料の光沢は、(株)堀場製作所製グロスチェッカIG−330を用いて60°鏡面光沢度として調べた。
【0028】
SiO2微粒子の添加量が体積率で0〜35%の範囲内において、SiO2微粒子添加量の変化に伴う光沢度変化の状況を図4に示す。図4に示されるように、SiO2微粒子の添加量を変化させることによって、光沢度を任意に変化させることが可能である。
また、SiO2微粒子の添加量と光触媒膜の機械的特性との関係を表1に示す。機械的特性の評価方法としては、試料をイオン交換水の沸騰水中に5時間又は24時間浸漬し、試料を沸騰水から取り出した後、光触媒膜をコーティングした面にカッターナイフの刃を用いて1mmの間隔で縦横11本ずつアルミ地金に達するまで線を引き、100個の碁盤目を作り、幅12mmのテープを指で強く押して貼り付けてから、まっすぐ真上の方向に強く引き剥がし、光触媒膜が剥がれないか調べた。表1中、分母には碁盤目の数、分子には剥がれずに残った碁盤目の数を示した。
【表1】
Figure 0003717736
【0029】
実施例2
膜厚30μmのフッ素樹脂塗膜を形成したアルミ板表面に、平均粒径0.01μm未満及び0.01〜10μmの種々の平均粒径を有するSiO2微粒子を添加量として体積率で20%の割合で加えたシリコン系コーティング剤(日本曹達(株)製、ビストレイターL NSC−200A)をスプレー法でコーティングし、90℃で30分加熱して硬化させ、膜厚5μmの中間層(連続膜)を形成した。この上に、光触媒酸化チタンコーティング剤(日本曹達(株)製、ビストレイターL NSC−200C)をスプレー法でコーティングし、120℃で30分加熱して硬化させ、光触媒膜を形成した。
得られた試料の光沢の測定を実施例1と同様に行ない、また表面状態の観察を行なった。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
Figure 0003717736
表2に示される結果から、フィラー粒径が0.01μmより小さい場合、光沢制御効果はあまり無く、一方、フィラー粒径が大きくなるほど光沢を下げる効果は大きくなるが、表面が梨地のように荒れた状態になるため、適正な平均粒径は3μm以下、特に1μm以下の範囲であるといえる。
【0031】
実施例3
前記実施例1において、添加フィラーとしてSiO2微粒子に代えて下記表3に示す種々の無機質微粒子及び添加量を採用すること以外は同様の条件及び方法にて、フッ素樹脂塗膜を形成したアルミ板表面に中間層及び光触媒膜を形成した。
得られた各試料の光沢度の測定を実施例1と同様に行なった。その結果を表3に併せて示す。
【0032】
【表3】
Figure 0003717736
【0033】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、基材表層部と光触媒層との間に存在する中間層の中に無機質微粒子をフィラーとして添加し、フィラーと中間層の光の屈折率の違いを利用したり、あるいはまた中間層表面又はその内部面(中間層内部の横断面)を凹凸状にすることで、入射光を散乱させることができ、光沢度の低い艶の無い光触媒膜構造体を提供することができ、また、フィラーの添加量や平均粒径を制御することにより、任意の光沢度に自由に制御することが可能である。
また、本発明により提供される光触媒機能部材は、前記のように表面の光沢度を自由に制御でき、しかも様々な質感と優れた特性を共に有するため、防汚、防曇、抗菌、防黴、脱臭、空気浄化などを目的としてアルミ外装パネル、アルミ内装パネル、アルミサッシ、アルミサイディング、窯業系サイディング、タイル、石材、防音壁、ブラインド、ドア、門扉、車庫、フェンス、ポスト、外灯、ベンチ、ベランダ、サンルーム、屋根材、便器、浴槽、洗面台、台所用品、流し、換気扇、キッチンフード、照明器具など、太陽光や蛍光灯などの光が当たる部分であれば、屋内外を問わずあらゆる部品や製品に有利に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光触媒層を有する積層構造体の基本的な膜構造を示す概略部分断面図である。
【図2】本発明の光触媒層を有する積層構造体の他の膜構造を示す概略部分断面図である。
【図3】本発明の光触媒層を有する積層構造体のさらに他の膜構造を示す概略部分断面図である。
【図4】SiO2微粒子添加量の変化に伴う光沢度変化の状況を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基材
2 中間層
3 光触媒層
4 フィラー(無機質微粒子)

Claims (6)

  1. 基材表層部と表面層としての光触媒層との間に光触媒作用によって侵されない無機薄膜又はシリコーン樹脂もしくはポリテトラフルオロエチレンからなる有機薄膜、あるいはこれらの複合体からなる中間層が介在しており、かつ該中間層の中に、フィラーとして光触媒の強い酸化作用によって侵されない平均粒径が0.01〜1μmの範囲内にあると共に光の屈折率が該中間層の母材自体の光の屈折率と異なる無機質微粒子(光触媒層中の光触媒微粒子を除く)分散していることを特徴とする光触媒層を有する積層構造体。
  2. 基材表層部と表面層としての光触媒層との間に、光触媒作用によって侵されない無機薄膜又はシリコーン樹脂もしくはポリテトラフルオロエチレンからなる有機薄膜、あるいはこれらの複合体からなる中間層が介在しており、かつ該中間層の中に、フィラーとして光触媒の強い酸化作用によって侵されない平均粒径が0.01〜1μmの範囲内にある無機質微粒子(光触媒層中の光触媒微粒子を除く)が中間層の表面部又は内部面(中間層内部の横断面)が凹凸状になるように分散していることを特徴とする光触媒層を有する積層構造体。
  3. 前記無機質微粒子が、金属微粒子、酸化物微粒子、窒化物微粒子、酸窒化物微粒子、及び硫化物微粒子よりなる群から選ばれる1種、又はこれらの2種以上の混合微粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層構造体。
  4. 前記酸化物微粒子がSiOからなることを特徴とする請求項に記載の積層構造体。
  5. 前記無機質微粒子が、中間層全体積の50%以下の割合で中間層中に存在することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の積層構造体。
  6. 前記光触媒層が、光触媒作用を有する半導体薄膜又は半導体微粒子を含む薄膜から形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の積層構造体。
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