JP3707258B2 - 前後輪駆動車両の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば前輪駆動系および後輪駆動系の一方がエンジンを駆動源とし、他方が電気モータを駆動源とする形式の前後輪駆動車両の駆動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
前輪駆動系および後輪駆動系のうちの一方がたとえば内燃機関のような第1原動機を駆動源とし他方がたとえば電気モータ、油圧モータのような第2原動機を駆動源とする形式の前後輪駆動車両が知られている。このような前後輪駆動車両では、車両全体として駆動能力や加速能力を向上させつつ省燃費或いは車両特性を良好なものに維持するために、車両の加速を必要とする所定のモータ駆動領域となったときにのみ電気モータが駆動されてアシストトルクが車両に加えられる。
【0003】
そして、上記のような前後輪駆動車両においては、第1原動機により変速機を介して駆動される主駆動輪の駆動トルクをその変速機の実際の変速比(ギヤ比)と第1原動機の出力トルクとから算出し、算出された主駆動輪の駆動トルクが所定値を上回ったときに、第2原動機の無駄な作動を防止するために、それにより駆動される副駆動輪の駆動を禁止する制御装置が提案されている。たとえば、特開平9−2090号公報に記載された前後輪駆動車両の制御装置がそれである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前後輪駆動車両においては、何らかの事情で比較的低い変速比(高速側ギヤ段)で第1原動機が主駆動輪を駆動して車両を発進させようとするときがある。しかしながら、上記のような従来の前後輪駆動車両の制御装置では、そのような比較的高速側のギヤ段を用いた発進に際して第2原動機から出力されるアシストトルクの値をどのように決定するかの技術が開示されておらず、そのような比較的高速側のギヤ段を用いた発進において、第2原動機から出力されるアシストトルク値が不足し、車両の発進加速性能が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、比較的高速側のギヤ段を用いた車両の発進加速性能の低下を抑制した前後輪駆動車両の制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、前輪駆動系および後輪駆動系の一方を変速機を介して駆動する第1原動機と、該前輪駆動系および後輪駆動系の他方を駆動する第2原動機とを備え、前記第1原動機により駆動される主駆動輪の駆動力を前記第2原動機により駆動される副駆動輪の駆動力で助勢する形式の前後輪駆動車両の制御装置であって、前記第2原動機から出力されるアシストトルクを前記変速機の変速比が小さくなるに伴って大きくする第2原動機駆動制御手段を、含むことにある。
【0007】
【発明の効果】
このようにすれば、第2原動機駆動制御手段により、前記第2原動機から出力されるアシストトルクが前記変速機の変速比が小さくなるに伴ってすなわち高速側ギヤ段となるに伴って大きくされることから、車両の発進に際して比較的高速側のギヤ段が用いられるほどアシストトルクが大きくされるので、第2原動機により駆動される副駆動輪の駆動力が十分に大きくされて、比較的高速側のギヤ段を用いた発進加速性能の低下が抑制され、その発進が好適に行われる。
【0008】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記第2原動機駆動制御手段は、運転者による加速操作速度が高くなるほど増加させられるアシストトルクとなるように、前記第2原動機を制御するものである。このようにすれば、加速操作速度が高くなるほどアシストトルクが増加させられるので、車両の発進加速性が好適に得られる。
【0009】
また、好適には、前記第2原動機駆動制御手段は、車両の発進加速操作が行われたか或いは車両の走行中加速操作が行われたかを判定する加速操作状態判定手段と、その加速操作状態判定手段による判定が発進加速操作である場合に前記第2原動機によるアシストトルクを決定し且つ出力する発進加速時アシスト制御手段と、上記加速操作状態判定手段による判定が走行中加速操作である場合に前記第2原動機によるアシストトルクを決定し且つ出力する走行中加速時アシスト制御手段とを含み、発進加速操作であるか走行中加速操作であるかに応じて前記第2原動機により駆動される副駆動輪の駆動力を制御するものである。このようにすれば、発進加速操作および走行中加速操作にそれぞれ適した大きさのアシストトルク値が得られる。
【0010】
また、好適には、前記発進加速時アシスト制御手段は、前記加速操作状態判定手段により発進加速操作が判定された場合には、予め記憶された関係から、変速線図から求められる車両の正規のギヤ比による必要駆動力と実際のギヤ段により得られる車両の駆動力との間の駆動力の差分と、加速操作速度とに基づいて、前記第2原動機から出力されるアシストトルクを算出するアシストトルク算出手段を含むものである。このようにすれば、アシストトルク算出手段により、予め記憶された関係から、変速線図から求められる車両の正規のギヤ比による必要駆動力と実際のギヤ段により得られる車両の駆動力との間の駆動力の差分と、加速操作速度とに基づいて前記第2原動機から出力されるアシストトルクが算出されるので、第2原動機により副駆動輪を駆動するための必要かつ十分な適切な大きさのアシストトルク値が車両の発進時に得られ、高速側ギヤ段による発進においてもエンジンストールが好適に防止される。
【0011】
また、好適には、上記発進加速時アシスト制御手段は、予め記憶された関係から、変速線図から求められる車両の正規のギヤ比による必要駆動力と実際のギヤ段により得られる車両の駆動力との間の駆動力の差分と、加速操作速度とに基づいて、上記アシストトルク出力時間を算出するアシストトルク出力時間算出手段を含むものである。このようにすれば、車両の発進加速操作時におけるアシストトルク値が必要かつ十分な時間だけ出力される。
【0012】
また、好適には、前記走行中加速時アシスト制御手段は、前記加速操作状態判定手段により走行中加速操作が判定された場合には、予め記憶された関係から、変速線図から求められる車両の正規のギヤ比による必要駆動力と実際のギヤ段により得られる車両の駆動力との間の駆動力の差分と、加速操作速度とに基づいて、前記第2原動機から出力されるアシストトルクを算出するアシストトルク算出手段を含むものである。このようにすれば、アシストトルク算出手段により、予め記憶された関係から、変速線図から求められる車両の正規のギヤ比による必要駆動力と実際のギヤ段により得られる車両の駆動力との間の駆動力の差分と、加速操作速度とに基づいて前記第2原動機から出力されるアシストトルクが算出されるので、第2原動機により副駆動輪を駆動するための必要かつ十分な適切な大きさのアシストトルク値が車両の走行中加速操作時に得られる。
【0013】
また、好適には、上記走行中加速時アシスト制御手段は、予め記憶された関係から、変速線図から求められる車両の正規のギヤ比による必要駆動力と実際のギヤ段により得られる車両の駆動力との間の駆動力の差分と、加速操作速度とに基づいて、上記アシストトルク出力時間を算出するアシストトルク出力時間算出手段を含むものである。このようにすれば、走行中加速操作時におけるアシストトルク値が必要かつ十分な時間だけ出力される。
【0014】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例の制御装置を有する車両の動力伝達装置であって、前置エンジン前輪駆動(FF)を基本とする前後輪駆動車両を示している。図において、エンジン10は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関であって、その出力トルクは、トルクコンバータ12、変速機14、前輪用差動歯車装置16、車軸18を介して主駆動輪である1対の前輪20へ伝達されるようになっている。そして、専ら発電のためのジェネレータ24が上記エンジン10に設けられている。上記エンジン10から前輪20までが前輪駆動系に対応している。このような形式の車両は、プロペラシャフトを用いない4輪駆動車両である。
【0016】
また、電気モータ/ジェネレータ(以下、MGと称す)28の出力トルクは、後輪用差動歯車装置30、および車軸32を介して1対の後輪34へ伝達されるようになっている。上記MG28から副駆動輪である後輪34までが後輪駆動系に対応している。このMG28によって後輪34が駆動されるときに4輪駆動状態となる。なお、上記MG28は、車両の制動エネルギによって回転駆動されることにより発電し、発電電力(回生エネルギ)を出力する発電機(ジェネレータ)としての機能も備えている。4輪駆動時においてMG28に電力を直接的に供給する場合がある前記ジェネレータ24はそのMG28の容量よりも若干大きな容量の発電能力を備えている。
【0017】
上記変速機14は、たとえば複数組の遊星組の歯車装置の要素が油圧式摩擦係合装置によって選択的に連結されたり回転停止させられることによって複数種類の変速比γ(入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout )に対応する複数種類のギヤ段が達成される自動変速機により構成されるが、変速比γが連続的に変化させられる所謂無段変速機であってもよい。
【0018】
エンジンおよび変速用電子制御装置38は、予め記憶された関係から、実際のエンジン回転速度NE 、吸入空気量Q/Nまたは吸気管圧力に基づいて燃料噴射時間を制御する燃料噴射制御、予め記憶された関係から、実際のエンジン回転速度NE 、吸入空気量Q/Nに基づいて基本点火時期を制御する点火時期制御、エンジン10のアイドル時における目標アイドル回転速度を決定し、実際のアイドル回転がその目標アイドル回転速度となるようにアイドル制御弁を制御するアイドル回転制御、変速機14がたとえば4速或いは5速の自動変速機である場合には予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびアクセル開度(アクセルペダル踏込量或いはスロットル弁開度)θに基づいて変速ギヤ段を決定し、その変速ギヤ段に切り換える自動変速制御などを実行する。
【0019】
図2は、本実施例の車両に設けられているシフトレバーの操作位置を示している。Pポジション、Rポジション、Nポジション、Dポジションは車両の前後方向に平行な一直線に沿って位置し、MポジションはDポジションから側方に位置する。3ポジションはMポジションの後方に位置し、2ポジションおよびLポジションは、その3ポジションより斜め左後方に順次位置している。シフトレバーの操作により上記Mポジションが選択された場合には、前記エンジンおよび変速用電子制御装置38において自動変速モードから手動変速モードに切り換えられるので、図3に示すステアリングホイール54に設けられた左右1対の手動変速操作釦56の操作が有効化され、その手動変速操作釦56の上方への操作或いは下方への操作に応答して、自動変速機14のギヤ段が1段ずつ高速段側或いは低速段側へ切り換えられ且つそこで保持されるようになっている。
【0020】
トラクション制御用電子制御装置40は、1対の前輪20および1対の後輪34にそれぞれ設けられた車輪速度センサ42FR、42FL、42RR、42RLからの信号に基づいて、車輪車速(車輪回転速度に基づいて換算される車体速度)VFR、VFL、VRR、VRL、前輪車速VF 〔=(VFR+VFL)/2〕、後輪車速VR 〔=(VRR+VRL)/2〕、および車体速度V(たとえば車輪車速VFR、VFL、VRR、VRLのうちの最も遅い速度が車体速度Vすなわち車速Vとして推定される)を算出する一方で、たとえばエンジン10により駆動されない後輪34から得られる後輪車速VR と主駆動輪である前輪20から得られる前輪車速VF との差であるスリップ速度ΔVが予め設定された制御開始スリップ速度ΔV2 を越えることにより前輪20のスリップ判定が行われると発進時における車両の牽引力を高くするためのトラクション制御を実行し、そのスリップ速度ΔVと前輪車速VF との割合であるスリップ率RS 〔=(ΔV/VF )×100%〕が予め設定された目標スリップ率範囲RS * 内に入るように、スロットル弁或いは燃料噴射量を用いてエンジン10の出力を抑制すると同時に前輪ブレーキ44を用いて前輪20の回転を制御して、前輪20の駆動力を抑制する。路面に対する車輪の摩擦係数μはたとえば図4に示すように変化する性質があるので、上記目標スリップ率範囲RS * はその車輪の摩擦係数μが最大となる領域に設定されている。
【0021】
モータ制御用電子制御装置46は、たとえば図5の2重線の区間に示すように、車両制動時において、MG28から出力される回生電力をキャパシタ48に蓄えさせる回生制御と、たとえば図5の太線の区間に示すように、通常の路面やドライ路などの高摩擦係数路面(高μ路)での発進、加速走行時において、アクセル開度θに応じてキャパシタ48に蓄えられた電力をインバータ50を通してMG28へ供給することにより、MG28の駆動力をエンジン10の駆動力に加えて、車両の加速を助勢(アシスト)して燃費を高める高μ路アシスト制御と、凍結路、圧雪路などの低摩擦係数路面(低μ路)での発進走行時において、車両の発進能力を高めたり或いは不要時にはMG28を停止させる低μ路アシスト制御とを実行する。上記MG28の出力電流および駆動電流、ジェネレータ24の出力電流、キャパシタ48の蓄電電流および出力電流は、上記モータ制御用電子制御装置46により制御されるインバータ50により電流制御されるようになっているのである。
【0022】
路面勾配センサ52は、車速略零時において用いられるGセンサ或いは傾斜計から構成されるものであり、路面傾斜角θROAD或いは勾配(傾斜)α(=tan θROAD)を表す信号を上記モータ制御用電子制御装置46などに供給する。上記エンジンおよび変速用電子制御装置38、トラクション制御用電子制御装置40、モータ制御用電子制御装置46は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどを備えた所謂マイクロコンピュータであって、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、制御信号を出力するものであり、それらの入力信号、記憶信号、演算値は必要に応じて相互に授受されるようになっている。
【0023】
図6は、主として上記モータ制御用電子制御装置46の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図6において、トラクション制御手段60は、前記トラクション制御用電子制御装置40に対応するものであり、図2に示す特性を利用して、車両の発進時に前輪20のスリップが発生する路面摩擦係数μが低い状態においてその前輪20の車両発進時の牽引力を高めるために、スリップ率RS 〔=(ΔV/VF )×100%〕が予め設定された目標スリップ率範囲RS * 内に入るように、スロットル弁或いは燃料噴射量を用いてエンジン10の出力を抑制すると同時に前輪ブレーキ44を用いて前輪20の回転を抑制して、前輪20の駆動力を抑制する。
【0024】
変速制御手段62は、変速機14がたとえば4速或いは5速の自動変速機であるとき、シフトレバーがDポジションなどへ操作された自動変速モードでは、予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびアクセル開度(アクセルペダル踏込量或いはスロットル弁開度)θに基づいて変速ギヤ段を決定し、その変速ギヤ段に切り換える自動変速制御を実行し、シフトレバーがMポジションへ操作された手動変速モードでは、ステアリングホイール54に設けられた手動変速操作釦56の上方への操作或いは下方への操作に応答して、自動変速機14のギヤ段を1段ずつ高速段側或いは低速段側へ切り換えてそこで保持させる。なお、この手動変速モードでは、車両が停止した車速Vの零状態でも、上記手動変速操作釦56の操作により選択されたギヤ段が保持される。
【0025】
モータ駆動制御手段66は、トラクション制御手段60によるトラクション制御が行われるような、圧雪路、凍結路などの摩擦係数μの低い路面における車両の発進時等において、MG28の駆動力を用いて車両の発進を助けるための低μ路アシスト制御手段68と、摩擦係数μの高い通常の路面においてMG28の駆動力すなわち副駆動輪である後輪34の駆動力を用いて車両の加速を助勢するための高μ路アシスト制御手段70とを備えている。
【0026】
また、上記低μ路アシスト制御手段68による低μ路アシスト制御では、たとえば、低μ路において前輪(主駆動輪)20のスリップが発生してトラクション制御手段60によるトラクション制御が開始されても車両の発進が不十分である場合に、前輪20のスリップが発生しトラクション制御が開始されても車速が増加しないことを条件として、キャパシタ48に蓄えられた電力とジェネレータ24により発電された電力とによってMG28が駆動され、その車両の発進が助勢される。
【0027】
上記高μ路アシスト制御手段70による通常の高μ路アシスト制御では、たとえば図5の太線に示されような高μ路でも加速要求が大きい期間において、キャパシタ48に蓄えられた限られた電力、およびジェネレータ24により発電された電力をそれに加えることによってMG28が駆動されることにより、車両の発進加速或いは走行中の加速が助勢される。この通常の高μ路アシスト制御では、たとえばMG28の高μ路アシストトルクTAHがリヤ荷重配分比やアクセル開度θに応じた大きさに決定され、且つ路面勾配αに応じて補正されたアシストトルク値TAH1 まで、たとえば図7に示すように急速に立ち上げられるが、そのアシストトルク値TAH1 がたとえば1〜3秒程度の所定の出力時間幅WA1だけ保持された後、急速に低下させられる。
【0028】
ところで、車両においては、通常の発進操作ではエンジンストールが発生してしまうような比較的高速側のギヤ段で発進操作が行われる場合がある。たとえば、前述の手動変速モードで比較的高速側の所定のギヤ段たとえば第3速ギヤ段以上のギヤ段が選択されて走行し停車した後にそのままのギヤ段で車両を再発進させようとする場合がそれである。このため、上記高μ路アシスト制御手段70は、上記比較的高速側の所定のギヤ段以上で車両の発進加速操作或いは走行中加速操作が行われたか否かを、車速Vとアクセル開度θの変化とに基づいて判定する加速操作状態判定手段72と、その加速操作状態判定手段72により比較的高速側の所定のギヤ段以上で車両の発進加速操作或いは走行中加速操作が行われたことが判定された場合に、エンジン10から実際のギヤ段により得られる車両の駆動力と車両状態に応じて変速線図から求められる車両の正規のギヤ比による必要駆動力との間の駆動力差を算出する駆動力差算出手段74と、すくなくとも比較的高速側の所定のギヤ段以上で車両の発進加速操作或いは走行中加速操作が行われたことが判定された場合に、アクセルペダルを用いた加速操作速度すなわち加速操作量(アクセル開度θ)の変化率dθ/dtを図示しないアクセル開度センサからの信号に基づいて算出する加速操作速度算出手段76と、上記加速操作状態判定手段72により比較的高速側の所定ギヤ段以上で車両の発進加速操作が行われたことが判定された場合には、その発進加速時のMG28によるアシスト作動を制御する発進加速時アシスト制御手段78と、上記加速操作状態判定手段72により比較的高速側の所定ギヤ段以上で車両の走行中加速操作が行われたことが判定された場合には、その走行中加速時のMG28によるアシスト作動を制御する走行中加速時アシスト制御手段80とを備えている。
【0029】
上記駆動力差算出手段74では、たとえば変速制御手段62において用いられる変速線図から実際の車速Vおよびアクセル開度θに基づいて決定されるギヤ段と車両の実際のギヤ段との差分D(或いは変速比γの差分Δγ)が、前記駆動力差に対応するものとして便宜的に求められる。車両の駆動力(駆動トルク)は、一般にギヤ段とアクセル開度θとに基づいて算出されるのであるが、加速時の加速操作量すなわちアクセル開度θが相互に略同様であるとすれば、ギヤ段の差D(変速比γの差分Δγ)を用いても車両の駆動力差を把握できるからである。また、変速制御手段62において用いられる変速線図は、車速Vおよびアクセル開度θから特定される車両状態に応じた車両の正規のギヤ比による必要駆動力を得るためのギヤ段を選択するために予め実験的に求められたものであるから、その変速線図から実際の車速Vおよびアクセル開度θに基づいて決定されるギヤ段は、車両の正規のギヤ比による必要駆動力に対応するものとして取り扱うことができるからである。この意味において、上記駆動力差算出手段74は、ギヤ段差算出手段或いは変速比差算出手段と称されてもよい。
【0030】
上記発進加速時アシスト制御手段78は、加速操作状態判定手段72により高速側ギヤ段による発進加速操作が判定された場合には、たとえば図8に示す予め記憶された関係から、前記駆動力差算出手段74により求められた駆動力差(ギヤ段の差D)と加速操作速度dθ/dtとに基づいて、MG28から出力される発進加速操作時のアシストトルクTAHH を算出するアシストトルク算出手段82と、たとえば図9に示す予め記憶された関係から、前記駆動力差算出手段74により求められた駆動力差(ギヤ段の差D)と加速操作速度dθ/dtとに基づいて、発進加速操作時にMG28から出力されるアシストトルクTAHH の出力時間WA を算出するアシストトルク出力時間算出手段84とを備え、高速側ギヤ段による発進加速操作が判定された場合において上記アシストトルク算出手段82により求められたアシストトルクTAHH を上記アシストトルク出力時間算出手段84により求められた出力時間WA だけ出力させる。
【0031】
また、上記走行中加速時アシスト制御手段80は、加速操作状態判定手段72により高速側ギヤ段による走行中加速操作が判定された場合には、たとえば図8に示すような予め記憶された関係から、前記駆動力差算出手段74により求められた駆動力差(ギヤ段の差D)と加速操作速度dθ/dtとに基づいて、MG28から出力される走行中加速時のアシストトルクTAHH を算出するアシストトルク算出手段86と、たとえば図9に示すような予め記憶された関係から、前記駆動力差算出手段74により求められた駆動力差(ギヤ段の差D)と加速操作速度dθ/dtとに基づいて、走行中加速操作時においてMG28から出力されるアシストトルクTAHH の出力時間WA を算出するアシストトルク出力時間算出手段88とを備え、高速側ギヤ段による走行中加速操作が判定された場合において上記アシストトルク算出手段86により求められたアシストトルクTAHH を上記アシストトルク出力時間算出手段88により求められた出力時間WA だけ出力させる。
【0032】
上記図8に示す関係は、加速操作速度dθ/dtが大きくなるほどアシストトルクTAHH を大きくし、且つ駆動力差(ギヤ段の差D或いは変速比γの差分)が大きくなるほどすなわち加速操作時の変速機14のギヤ比γが小さくなるほど(変速機14が高速側ギヤ段となるほど)アシストトルクTAHH を大きくする特性を備えている。また、図9に示す関係は、加速操作速度dθ/dtが大きくなるほど出力時間WA を小さくして、同一エネルギでも出力トルクが大きくなるようにし、且つ上記駆動力差が大きくなるほど出力時間WA を小さくする特性を備えている。ここで、図8および図9において、発進加速操作量により変速線図から定まる要求駆動力に対応するギヤ段が第1速ギヤ段であるときに変速機14の実際のギヤ段が第3速ギヤ段(たとえば手動変速モードにより第3速ギヤ段のまま車両停止したとき)であるときは、D=2の特性が用いられる。また、走行中加速操作量により変速線図から定まるギヤ段が第2速ギヤ段であるときに変速機14の実際のギヤ段が第3速ギヤ段であるときは、D=1の特性が用いられる。
【0033】
図10は前記モータ制御用電子制御装置46の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、高速側ギヤ段加速操作時アシスト制御ルーチンを示している。図10において、先ず、前記加速操作状態判定手段72に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA1乃至SA6において、高速側ギヤ段において発進時加速操作或いは走行中加速操作が行われたか否かが判断される。すなわち、SA1では、変速機14のギヤ段が低速側ギヤ段たとえば第2速ギヤ段以下であるか否かが判断される。このSA1の判断が肯定された場合は本ルーチンが終了されるが、否定された場合は第3速ギヤ段以上であるので、SA2において、車速Vが予め数km/h程度に設定された停止判定車速Vx1以上であるか否かが判断される。このSA2の判断が否定された場合は、車両の停止状態であるから、SA3においてアクセル開度θが予め設定された加速操作判定値θO よりも大きいか否かが判断され、このSA3の判断が肯定された場合は、SA4においてアクセル開度の変化率dθ/dtが予め設定された加速操作判定値A1 よりも大きいか否かが判断される。上記加速操作判定値θO およびA1 は、エンジン10のストールを発生させるほどの高速側ギヤ段による車両発進操作を判定するために予め求められたものである。このSA4或いは上記SA3の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、SA4の判断が肯定された場合は、たとえば第3速以上の高速側ギヤ段で発進加速操作が行われた状態であるので、前記発進加速時アシスト制御手段78に対応するSA7およびSA8以下が実行される。
【0034】
上記SA2の判断が肯定された場合は、車両が走行中の状態であるから、SA5においてアクセル開度θが予め設定された加速操作判定値θO よりも大きいか否かが判断され、このSA5の判断が肯定された場合は、SA6においてアクセル開度の変化率dθ/dtが予め設定された加速操作判定値A1 よりも大きいか否かが判断される。このSA6或いは上記SA5の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、SA6の判断が肯定された場合は、たとえば第3速以上の高速側ギヤ段で走行中加速操作が行われた状態であるので、前記走行中加速時アシスト制御手段80に対応するSA9およびSA10以下が実行される。
【0035】
上記SA7は、上記発進加速時アシスト制御手段78に含まれるアシストトルク算出手段82、前記駆動力差算出手段74、前記加速操作速度算出手段76に対応するものであり、そこでは、たとえば変速制御手段62において用いられる変速線図から実際の車速Vおよびアクセル開度θに基づいて決定されるギヤ段と車両の実際のギヤ段との間のギヤ段の差分D(或いは変速比γの差分Δγ)が、前記駆動力差に対応するものとして求められると同時に、加速操作速度dθ/dtが算出された後、たとえば図8に示す予め記憶された関係からそれらギヤ段の差分Dおよび加速操作速度dθ/dtに基づいて発進加速操作時のアシストトルクTAHH が決定される。そして、前記アシストトルク出力時間算出手段84に対応するSA8では、たとえば図9に示す予め記憶された関係から上記のギヤ段の差分Dおよび加速操作速度dθ/dtに基づいて発進加速操作時のアシストトルク出力時間WA が決定される。
【0036】
前記SA9は、走行中加速時アシスト制御手段80に含まれるアシストトルク算出手段86、前記駆動力差算出手段74、前記加速操作速度算出手段76に対応するものであり、そこでは、上記と同様にしてギヤ段の差分Dおよび加速操作速度dθ/dtが求められるとともに、たとえば図8に示す予め記憶された関係からそれらギヤ段の差分Dおよび加速操作速度dθ/dtに基づいて走行中加速操作時のアシストトルクTAHH が決定される。そして、前記アシストトルク出力時間算出手段88に対応するSA10では、たとえば図9に示す予め記憶された関係から上記のギヤ段の差分Dおよび加速操作速度dθ/dtに基づいて走行中加速操作時のアシストトルク出力時間WA が決定される。
【0037】
以上のようにして発進加速操作時或いは走行中加速操作時の、アシストトルクTAHH およびアシストトルク出力時間WA が決定されると、SA11において、そのアシストトルクTAHH がMG28から出力され、次いでSA12において、そのアシストトルクTAHH の出力以後において、上記アシストトルク出力時間WA が経過したか否かが判断される。当初はこのSA12の判断が否定されるので、上記SA11以下が繰り返し実行されるが、アシストトルク出力時間WA が経過すると、SA12の判断が肯定されて本ルーチンが終了させられる。
【0038】
上述のように、本実施例によれば、モータ駆動制御手段(第2原動機駆動制御手段)66(SA1乃至SA12)により、MG28から出力されるアシストトルクTAHH が変速機14の変速比γが小さくなるに伴って大きくされることから、車両の発進に際して比較的高速側のギヤ段が用いられるほどアシストトルクTAHH が大きくされるので、MG28により駆動される後輪34の駆動力が十分に大きくされて、比較的高速側のギヤ段を用いた発進の不都合が発生せず、その発進が好適に行われる。
【0039】
また、本実施例によれば、モータ駆動制御手段66は、運転者による加速操作速度が高くなるほど増加させられるアシストトルクTAHH となるように、MG28を制御するものであるので、車両の発進加速性が好適に得られる。
【0040】
また、本実施例によれば、モータ駆動制御手段66は、車両の発進加速操作が行われたか或いは車両の走行中加速操作が行われたかを判定する加速操作状態判定手段72(SA1乃至SA6)と、その加速操作状態判定手段72による判定が発進加速操作である場合にMG28によるアシストトルクTAHH を決定し且つ出力する発進加速時アシスト制御手段78(SA7乃至SA8)と、上記加速操作状態判定手段72による判定が走行中加速操作である場合にMG28によるアシストトルクTAHH を決定し且つ出力する走行中加速時アシスト制御手段80(SA9乃至SA10)とを含み、発進加速操作であるか走行中加速操作であるかに応じてMG28により駆動される後輪34の駆動力を制御するものである。これにより、発進加速操作および走行中加速操作にそれぞれ適した大きさのアシストトルク値が得られる。
【0041】
また、本実施例によれば、発進加速時アシスト制御手段78は、前記加速操作状態判定手段72により発進加速操作が判定された場合には、たとえば図8に示す予め記憶された関係から、前記変速機14のギヤ段の差分Dおよび加速操作速度dθ/dtに基づいてMG28から出力されるアシストトルクTAHH を算出するアシストトルク算出手段82(SA7)を含むものであるので、MG28により後輪34を駆動するための必要かつ十分な適切な大きさのアシストトルク値が車両の発進時に得られる。
【0042】
また、本実施例によれば、発進加速時アシスト制御手段78は、たとえば図9に示す予め記憶された関係から、前記変速機14のギヤ段の差分Dおよび加速操作速度dθ/dtに基づいてアシストトルク出力時間WA を算出するアシストトルク出力時間算出手段84(SA8)を含むものであるので、車両の発進加速操作時においてアシストトルクTAHH が必要かつ十分な時間だけMG28から出力される。
【0043】
また、本実施例によれば、走行中加速時アシスト制御手段80は、加速操作状態判定手段72により走行中加速操作が判定された場合には、たとえば図8に示す予め記憶された関係から、前記変速機14のギヤ段の差分Dおよび加速操作速度dθ/dtに基づいてMG28から出力されるアシストトルクTAHH を算出するアシストトルク算出手段86(SA9)を含むものであるので、MG28により後輪34を駆動するための必要かつ十分な適切な大きさのアシストトルク値TAHH が車両の走行中加速操作時に得られる。
【0044】
また、本実施例によれば、走行中加速時アシスト制御手段80は、たとえば図9に示す予め記憶された関係から、前記変速機14のギヤ段の差分Dおよび加速操作速度dθ/dtに基づいてアシストトルク出力時間WA を算出するアシストトルク出力時間算出手段88(SA10)を含むものであるので、走行中加速操作時におけるアシストトルク値TAHH が必要かつ十分な時間だけ出力される。
【0045】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用され得るものである。
【0046】
たとえば、前述の実施例において、アシストトルク出力時間WA は、図9に示す予め記憶された関係から実際の加速操作速度dθ/dtおよびギヤ段の差Dに基づいて変更されていたが、そのアシストトルク出力時間WA は一定の値でもよい。すなわち、アシストトルク出力時間算出手段84、88は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0047】
また、前述の実施例において、変速機14が高速側のギヤ段であるときの加速操作時のアシストトルクTAHH は、図8の関係から加速操作速度dθ/dtおよびギヤ段の差Dに基づいて決定されていたが、図示しない関係からアクセル開度に基づいて決定される基本アシストトルクが、上記加速操作速度dθ/dtおよびギヤ段の差Dが大きくなるほど増量するようにそれら加速操作速度dθ/dtおよびギヤ段の差Dに基づいて補正されることにより決定されてもよい。
【0048】
また、前述の実施例では、エンジン10によって前輪20が駆動され、MG28によって後輪34が駆動される形式の車両、すなわち前置エンジン前輪駆動(FF)を基本とする所謂電気式4輪駆動車両が用いられていたが、MG28によって前輪20が駆動され、エンジン10によって後輪34が駆動される形式の車両、すなわち前置エンジン後輪駆動(FR)を基本とする所謂電気式4輪駆動車両が用いられてもよい。
【0049】
また、前述の実施例では、誘電体の分極によって静電的に電気エネルギを蓄えるキャパシタ48が用いられていたが、電気化学的に電気エネルギを蓄える蓄電池などの他の形式の蓄電装置であってもよい。ジェネレータ24よりは速やかに電力をMG28へ供給してアシストトルクを速やかに立ち上げることができる。
【0050】
また、前述の実施例のジェネレータ24は、専ら発電機として用いられるものであったが、エンジン10を始動させるモータ、車両発進時においては駆動トルクを出力するモータとして作動させられてもよい。
【0051】
また、前述の実施例では、エンジン10が前輪駆動系の原動機として用いられ、MG28が後輪駆動系の原動機として用いられていたが、油圧モータなどのように作動原理が異なる他の種類の原動機が用いられても差し支えない。
【0052】
また、前述の実施例の変速機14は複数種類の前進ギヤ段を有する自動変速機であったが、変速比γが無段階に変化させられる無段変速機であってもよい。このような場合でも、何等かの事情で無段変速機が車両の停止時においてその最大変速比γmax へ戻されない場合には、図8と同様の予め記憶された関係から、再発進時において実際の変速比γと最大変速比γmax との間の差分(駆動力差)と、加速操作速度dθ/dtとに基づいて決定されたアシストトルクTAHH がMG28から出力されるようにしてもよい。
【0053】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の制御装置およびそれが適用された前後輪駆動車両の動力伝達装置の構成を説明する図である。
【図2】図1の車両に設けられたシフトレバーの操作位置を説明する図である。
【図3】図1の車両のステアリングホイールに、図1の変速機の手動モードにおいてギヤ段を手動選択するために設けられた手動変速操作釦を説明する図である。
【図4】図1のトラクション制御用電子制御装置の作動を説明する図である。
【図5】図1のモータ制御用電子制御装置により制御される電気モータの作動を示す図であって、太線は電気モータのアシストトルク発生期間、二重線は電気モータの回生期間を示している。
【図6】図1のモータ制御用電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図7】高速側ギヤ段による発進加速操作時において図1の電気モータから出力されるアシストトルクの大きさおよび時間幅を説明する図である。
【図8】図6のアシストトルク算出手段において用いられる予め記憶された関係を説明する図である。
【図9】図6のアシストトルク出力時間算出手段において用いられる予め記憶された関係を説明する図である。
【図10】図6の実施例におけるモータ制御用電子制御装置の制御作動の要部を示す、高速側ギヤ段加速操作時アシスト制御ルーチンを示す図である。
【符号の説明】
10:エンジン(第1原動機)
20:前輪(主駆動輪)
28:電気モータ(第2原動機)
34:後輪(副駆動輪)
46:モータ制御用電子制御装置(前後輪駆動車両の制御装置)
66:モータ駆動制御手段(第2原動機駆動制御手段)
Claims (2)
- 前輪駆動系および後輪駆動系の一方を変速機を介して駆動する第1原動機と、該前輪駆動系および後輪駆動系の他方を駆動する第2原動機とを備え、前記第1原動機により駆動される主駆動輪の駆動力を前記第2原動機により駆動される副駆動輪の駆動力で助勢する形式の前後輪駆動車両の制御装置であって、
前記第2原動機から出力されるアシストトルクを前記変速機の変速比が小さくなるに伴って大きくする第2原動機駆動制御手段を、含むことを特徴とする前後輪駆動車両の制御装置。 - 前記第2原動機駆動制御手段は、運転者による加速操作速度が大きくなるほど増加させられるアシストトルクとなるように、前記第2原動機を制御するものである請求項1の前後輪駆動車両の制御装置。
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