JP3704553B2 - 紫外光による光素子耐光損傷処理方法及び耐光損傷光波長変換素子 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなる光素子の処理方法、特に光波長変換(光変調)により機能低下を起こしている光素子の機能回復を図る処理方法と、この処理方法によって得られた機能回復した光素子に関する。さらに、分極反転が形成された光素子を用いる光波長変換(光変調)方法において、特定波長の発振光を発生し、これを光素子に戻すことにより光素子の機能回復を図る光波長変換(光変調)方法と、特定波長の光が得られるよう設定された光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶は、それぞれ大きな電気光学効果、非線形光学効果を有し、そのため、光変調器や波長変換素子など種々の光機能素子を設計するのに使われる有力な光機能性材料として注目されている。最近ではこれらの材料に強誘電体分極を周期的あるいは特定の形状に反転した波長変換素子、電気光学素子の研究、開発が盛んに行われている。
【0003】
特に近年、近赤外波長領域のレーザー光(基本波長1064nm=1.064μm)を半分の波長(532nm)の緑色光に変換する2倍波発振や、あるいは基本波長、分極反転周期をさらに短く設定することにより青色光を得る試み、さらには、分極反転周期を非常に短く設定することにより、上記基本波長を3分の1の波長(355nm)に変換する、3倍波発振を得る等の高度な光波長変換素子としての開発に期待、関心が寄せられている。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】
しかし、これらの単結晶に基づいて設計された光素子、光デバイスは、これをさらに積極的に利用していくためには、「光損傷」を克服しなければならないという問題があった。光損傷は、結晶にレーザー光のような強い光を照射すると、光起電力に起因した屈折率変動が結晶内に現れる現象と定義される。この現象が生じる原因については、光が結晶全体ではなく、局所的にあたることにより、電荷密度の偏りが生じて、自然に電界がかかった状態になるために起こる、とされている。すなわち、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムの単結晶に電界がかかると、電気光学的効果で結晶の屈折率が変わることによるものとされている。
【0005】
いずれにしても、光素子にこのような光損傷が生じると、波長変換を行おうとしても、波長変換効率が極端に落ち、整合性が失われ、発振が起こらなくなったり、また、レーザービームモードも著しく悪くなる、といった事態が発生する。したがって、該光素子の利用性を高めていくためには、特に、分極反転を形成した疑似位相整合に基づき、コヒーレント光を得る波長変換技術、とりわけ、可視領域でも緑色光、青色光、さらには該領域を超えた紫外光発振技術を進めるにおいては、この光損傷問題を避けて通ることは出来ない。この解決手段については、既に学術文献にいくつか発表、提言されており、また、実施されてもいる。
【0006】
すなわち、 R.L.Byer,Y.K.Park,R.S. Feigelson and W.L.Kway;“ Applied Physics Letteers” vol. 39 (1981) p.17 には、単結晶よりなる光素子を100〜200℃に加熱することによって結晶の電気伝導度を上げ、これによって光損傷を解消することが記載されている。
【0007】
また、D.A.Bryan,R.Gerson and H.E.Tomaschke;“ Applied Physics Letters” vol. 44 (1984) p.847、あるいはY.Furukawa,K.Kitamura,S.Takekawa,A.Miyamoto,M.Terao,and N. Suda;“ Applied Physics Letters”vol. 77 (2000) p.2494には、単結晶にMgOを添加することによって、そして T.R.Volk,V.I.Pryalkin and N.M.Rubinina; “Optics Letters ”vol.15 (1980) p.996には、単結晶にZnOを添加することによって光伝導度を上げ、これによって光損傷を生じないようにしようとすることが記載されている。
これに関連し、本発明者等においても、結晶を構成する組成を化学量論量の定比組成にかぎりなく近づけたニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶とこれら各単結晶の育成方法を開発し、これによって、MgO、ZnOの添加量が従来よりもはるかに少なくても済むものを提言し、すでに特許出願しているところでもある。
【0008】
しかしながら、これらの従来の光損傷解決手段には、なお依然として問題が残っている。すなわち、結晶素子を200℃に加熱する解決手段は、それ自体コストがかかるだけではなく、そのための装置設計上、あるいは制御上決して簡単なことではないし、加えて、光波長変換素子も含めて他の機器、装置、に対する影響を考えると充分な対策を要し、装置の小型化を図るには欠点のあるものであった。また、MgOやZnOを添加する後者の手段も、無添加のものに比して光損傷が起こりにくくなる点では一応の評価をしうるものの、均質な単結晶を育成することや、加工が難しいといった問題があるに加え、これだけでは、光損傷を基本的に防ぐことは到底できるものではなく、一定の使用範囲に制限せざるを得ないという欠点があった。
【0009】
以上に加え、本発明において使用する強誘電体単結晶は、光波長変換に際し、波長の長いところでは、光損傷が起こりにくい傾向にあり、対して、300nmより短い紫外光領域の下では結晶そのものが極度に変質し、透明度を失い、光学機能材料としては使えなくなることから、これら単結晶によって設計された光素子は、その扱いうる光の波長には、かなり限界があり、特に波長の短い400nm以下の波長領域では、相当激しい光損傷が起こり、この領域の波長を扱うこと自体、照射することも、発振することも無理があると一般的に考えられてきた。その一方では、扱える波長領域を広くすることが求められてきており、例えば波長の短い青色光を求めるニーズが高い、というのも現実である。
【0010】
本発明は、以上の従来技術、および事情を念頭に置いてなされたものである。 すなわち、従来技術においては、光損傷を抑制制御する手段自体に、前示したように諸点において問題を抱え、あるいは充分であるとは言えないことから、これら問題のない、簡単且つ確実に光損傷を抑制し得る手段を提供しようというものである。加えて、従来では困難であると考えられてきた波長の短い領域でも光損傷を起こすことなく、安定に制御することが出来、この領域での光波長変換、光変調を実現、達成しようというものである。
【0011】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、そのため鋭意研究した結果、光損傷問題を基本的に把握し、解決の一端を探るため、光損傷の波長依存性について測定を行った。その結果、波長が400nmよりも長い領域の照射光では、波長が短くなるほど光損傷が顕著であることが分かった。、実験によると408nm光で強い光損傷が観察された。 これに対し、さらに短い波長になると、従来の考え方からすると意外にも、結晶の光伝導度が著しく増大したことが観察された。すなわち、従来この領域では無理と考えられていた考え方は、この限りでは否定される事実が示された。ちなみに実験結果では、350nmの波長光を照射すると、光損傷が抑制されることが分かった。これらの知見に基づき、波長が400nmより長い領域での、すなわち光損傷がおきやすい領域での波長変換に際し、波長が350nm程度の紫外光を結晶や素子に一様に照射すると、結晶を加熱しなくても光損傷が抑制できることを発見した。
【0012】
また、従来では波長が短くなると、光損傷が強くなるために、ニオブ酸リチウム単結晶やタンタル酸リチウム単結晶の周期的分極反転による疑似位相整合で、紫外光への波長変換は難しいと考えられていた。しかし、実験の結果、素子の分極反転周期を適宜調整することにより、Nd:YAGレーザーの基本光(波長1.064μm)の3倍波(波長352nm)の発振に成功した。すなわち、短波長を得ることは、充分できることが分かった。
【0013】
そして、この(0012)に記載する手段で得られた特定波長の光(3倍波)を、その一部をその場で再度素子に分配、還元することによって、すなわち発振された特定波長光を素子内に戻すことによって、疑似位相整合における基本波長の入射によって次第に生じてくる光損傷を、いわば自立的に抑制しえること、すなわち、光損傷が生じることから困難だと思われていた波長領域における光波長変換、光変調を、持続的、安定に制御しうることが分かった。
本発明は、これらの多岐に亘る重要な知見に基づいてなされたものである。
【0014】
すなわち、本発明は、光素子に特定の波長の光を照射することによって、従来の加熱方式等による解決手段に比し、光損傷をこれまでとは全く異なる原理に基づいた、したがって新規且つ有力な、確実に光損傷を解消、防止しうる解決手段を提供しようとするものであり、この解決手段によって波長変換も含めた光素子耐光損傷処理方法を始め、これによって処理された機能回復光素子、耐光損傷性光波長変換(光変調)方法及びこの方法を実施するための耐光損傷性光素子を提供しようとするものである。
【0015】
すなわち、本発明は、その実施形態が、光素子について多岐にわたる実施形態が考えられることから、すなわち、光素子の使用方法としての実施形態、あるいは使用方法に供するためのものとしての実施形態が考えられることから、光素子の各実施形態を、上記新規な光損傷解決手段に基づいて限定したことを特徴とし、これを要件事項、すなわち発明の解決手段としているものである。
すなわち、本発明の解決手段は、以下(1)〜(15)に記載するとおりである。これを大別すると、(i)〜(iv)の4つに分けることができる。
すなわち、その(i)は、(1)の解決手段とこれを更に限定した(4)までの解決手段による光素子の耐光損傷処理方法、その(ii)は、(5)の解決手段とこれを更に限定した(7)までの機能回復光素子、その(iii)は、(8)の解決手段とこれを更に限定した(12)までの耐光損傷性光波長変換(光変調)方法、及びその(iv)は、(13)の解決手段とこれを更に限定した(15)までの耐光損傷性光波長変換(光変調)素子に大別される。
【0016】
(i) 第1番目の解決手段は、(1)ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなる光素子に、波長300nm以上400nm以下の紫外光を照射することによって、該素子に生じる光誘導屈折率変動(光損傷)を抑制制御することを特徴とし、これによって、光素子の耐光損傷処理方法を実現するものである。
ここに、照射波長を300nm以上、400以下とした理由は、この間において光損傷抑制効果があることに加え、300nm未満では、吸収が大きくて結晶を透過することができず、すなわち、光損傷を抑制する効果はあらわれず、また400nmを超えると、光損傷抑制効果を期待できないばかりか、むしろ光損傷が強くなることから、300nm以上400nm以下としたものである。
【0017】
以下、第2番目以降の解決手段(発明の構成)を順次列記する。
(2)前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなる光素子がMgO、又はZnOを含んでいる素子であることを特徴とする耐光損傷処理方法。
MgO、ZnOは、前記単結晶よりなる光素子において公知の添加成分であることは、上述したところであり、本発明においてもこの成分が添加されているものをも対象としているものであるから、その旨を指すものである。
(3)前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなる光素子が光波長変換、光変調に供される素子であることを特徴とする耐光損傷処理方法。
以上において耐光損傷処理方法は、本発明による光技術が、様々な技術分野に使われることから、単に通信技術上の光波長変換、光変換プロセス等、特定の分野における、特定の製品のみを対象としているものではない。その中には、光波長変換方法、光変調方法も勿論のこととして含まれることはいうまでもない。
(4)前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなる光素子が、周期的分極反転構造を有する、疑似位相整合によって光波長変換が行われる光波長変換素子であることを特徴とする耐光損傷処理方法。
これは、この耐光損傷処理方法の具体的実施態様が疑似位相整合による波長変換素子を使って行うことを示すものである。
【0018】
(ii).(5)ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなる光素子であって、波長300nm以上400nm以下の紫外光を照射することによって、光誘導屈折率変動(光損傷)が抑制され、失われた光素子機能が回復されてなることを特徴としたニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなる機能回復光素子。
(6)前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなる光素子がMgO、ZnOを含んでいる素子であることを特徴とする(5)の機能回復光素子。
(7)前記 ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなる光素子が周期的分極反転が形成されてなり、疑似位相整合により光波長変換(光変調)を行う素子であることを特徴とする(5)ないし(6)の機能回復光素子。
【0019】
(iii).(8) ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなり、周期的分極反転構造を形成した光波長変換(光変調)素子を使用して、疑似位相整合に基づいて光波長変換(光変調)を行う方法において、400nm以下の紫外光領域の発振波が得られるよう波長変換(光変調)条件を設定し、これにより得られた400nm以下の発振光を1部該素子に戻し、これにより光損傷を抑制制御したことを特徴とする耐光損傷性光波長変換(光変調)方法。
(9)前記光波長変換(光変調)素子がMgO又はZnOを含んでいる素子であることを特徴とする(8)の耐光損傷性光波長変換(光変調)方法。
(10)前記400nm以下の紫外光を素子に戻す手段が、素子に形成された反射ミラーコーテイングあるいは誘電体ミラーであることを特徴とする(8)ないし(9)の耐光損傷性光波長変換(光変調)方法。
(11)前記400nm以下の紫外光が得られるよう設定する波長変換条件が、使用する素子の周期的分極反転構造と基本波長を選択することによって決定されるものであることを特徴とする(8)ないし(10)耐光損傷性光波長変換(光変調)方法。
(12)光波長変換(光変調)の態様が、1064nmのレーザー光を基本波とし、発振波が基本波の3分の1の354nmの紫外光であり、そのためのに使用される光波長変換素子(光変調)が、2〜3μmの周期で分極反転が形成された素子であることを特徴とする(11)記載の耐光損傷性光波長変換(光変調)方法。
【0020】
(iv).(13)ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶よりなり、周期的分極反転構造が形成された、疑似位相整合による光波長変換(光変調)を行う光波長変換(光変調)素子において、基本波長の照射に対して疑似位相整合により400nm以下の紫外光を発振するように周期的分極反転構造が設定、形成されていることを特徴とした耐光損傷性光波長変換(光変調)素子。
(14)前記耐光損傷性光波長変換(光変調)素子がMgO又はZnOを含んでいることを特徴とする(13)記載の耐光損傷性光波長変換(光変調)素子。
(15)2〜3μmの周期で分極反転が形成されたことを特徴とする(13)ないし(14)記載の耐光損傷性光波長変換(光変調)素子。
【0021】
【実施例1】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
波長532nmおよび波長408nmのレーザー光を、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム結晶のY軸方位に照射し、透過したビームの形状をスクリーンないしビームプロファイラーで観察した。その結果、ビームの形状は光損傷により、円形(ガウシアン分布)からZ方位に著しく延びた形状になった。〔図1の(1)から(2)〕。このように局部的に屈折率が変動してビームの形状が変わった(光損傷)結晶に、水銀ランプから発している光からフィルターで波長350nm紫外光を取り出して結晶に照射すると、変型していたビームの形状は瞬時に元の無変形(円形)の状態にもどった〔図2の(1)〕。
また、クリプトンレーザーから発する波長350nm光を前出レーザー光と結晶中で光路が重複する形式で照射しても、同様に変型したビームの形状は損傷前の形状に戻った〔図2の(2)〕。また、波長532nmおよび波長408nmのレーザー光がニオブ酸リチウム結晶中を透過させる時に波長350nm光を同時に照射していれば光損傷は起こらなかった。
【0022】
【実施例2】
ニオブ酸リチウムおよびタンタル酸リチウム結晶のZ板で、周期30ミクロン程度で周期的に分極を反転させた構造を作成した。この周期構造に直交する方位でNd:YAGレーザーの基本波(波長1.064ミクロン)を透過させると、擬似位相整合によるオプティカルパラメトリック発振で1.5ミクロン波長光が発生する。しかし、この発振効率は光損傷により室温では効率が著しく低いが、100℃〜200℃に結晶を加熱すると発振効率が増加して飽和する。この波長変換素子に、水銀ランプから発している紫外光からフィルターで波長350nm光を取り出して照射すると(図3)、加熱する必要がなく、室温から高い波長変換効率が得られた(図4)。クリプトンレーザーから発する波長350nm光をNd:YAGレーザー光と結晶中で光路が重複する形式で照射しても同様の効果が得られた。
【0023】
【実施例3】
ニオブ酸リチウムおよびタンタル酸リチウム結晶のZ面表面に周期電極を形成して、電界をかけることにより、周期的分極反転構造を結晶内に形成することができる。(参考文献;M.Yamada, N.Nada, M. Saitoh and K.Watanabe; Appl. Phys. Lett. 62 (1993) p.435 )
このような周期分極反転構造にレーザー光(基本波)をZ軸に垂直に入射すると、入射した光の波長を変換することができる(擬似位相整合法と呼ぶ)。どのような波長に変換するかは結晶の屈折率分散(屈折率の波長依存性)、基本波の波長と分極反転の周期間隔によって決まる。
例えば、もっとも効率よく基本光を1/2の波長の光(第2高調波)にする場合に、それらの関係は、次式のように表すことができる。(参考文献;宮沢信太郎「光学結晶」培風館 (1995)p.174 )
式;反転周期=(基本波長)/(第2高調派の屈折率−基本波の屈折率)/2ニオブ酸リチウムに周期分極反転構造を形成して、Nd:YAGレーザーの基本波(波長1.064ミクロン)を第2高調波(波長532nm)に変換する場合には、分極の反転周期は6〜7ミクロンとなる(図5参照)。しかし、ニオブ酸リチウムではNd:YAGレーザーの基本波に対しては光損傷が起きなくても、発振した第2高調波で光損傷を起こしてしまう。これにより、発振効率が低下あるいは発振が停止してしまう。しかし、図5のように、紫外レーザー光を結晶中の光路に重ねあわせることにより、光損傷を抑制することができ、第2高調波の発振をすることができる。
【0024】
【実施例4】
前述した周期分極反転構造を利用した波長変換における基本波の波長と分極反転の周期間隔、ニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムの屈折率分散の関係から、基本波を650〜720nm にすると波長320〜360nm の第2高調波が得られる。この場合、分極構造の周期は2.5〜3ミクロン程度となる。しかし、通常の発振方法では基本波による光損傷が入射部分で起こり、発振効率が極端に下がるか、あるいは発振がおこらなくなる。しかし、発振した第2高調波の1部を誘電体ミラーで分岐させ、基本波と光路が重なるようにして波長変換素子に再び入射させた(図6参照)ところ、光損傷を抑制することができ、第2高調波発振をすることができた。これは、誘電体ミラーを使用しなくとも、波長変換素子であるニオブ酸リチウム結晶の入射側端面を第2高調波に対して100%反射ミラーコーティング加工をし、出射側端面を30%反射コーティング加工すること(図7参照)でも同じ効果を出すことができた。
【0025】
【実施例5】
さらに、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム結晶の周期的分極反転構造を使うと、基本波長の3分の1の波長の光(第3高調波)も発振することができる。これらの関係は、波長をλ、屈折率をn、基本波の添字を(w)、第二高調波を(2w)、第3高調波を(3w)とすると、分極反転周期Λは以下の書ける。Λ=1/{n(3w)/λ(3w)−n(w)/λ(w)−n(2w)/λ(2w)}
ここで、Nd:YAGレーザーを基本波(波長1.064ミクロン)とすると、第3高調波として発生した光の波長は354nm程度となる。この時の分極反転周期は2〜3ミクロン程度である。ここでは、基本波も発振した第3高調波でも光損傷は起こさないが、結晶中では様々な波長が発振されており、それによる光損傷が引き起こされる。効率よく発振させるために、発振した第3高調波の1部を誘電体ミラーあるいは波長変換素子の端面を反射コーティングすることにより結晶内にフィードバックさせたところ(図8)、高効率で第3高調波を発振することができた。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムの波長変換や光変調により光損傷に損なわれた機能を回復する効果が奏せられ、また、波長変換により紫外光の発振を可能にする方法を示している。特に、紫外光を容易に利用できる装置を開発すると光加工、光造形などニーズに応えることができ、光通信ほどではないとしても、ある程度の市場を形成することができ、産業の発達に寄与するところ大であると確信する。
また、光技術では、特定波長のコヒーレント光が可能となると、様々な応用が広がる。これは紫外でも、可視でも、赤外でも広い波長領域で言えることで、特に強誘電体結晶の周期分極構造を利用した擬似位相整合による波長変換は、高効率で極めて質の良いコヒーレント光が得られることから、開発が強く期待されている。この方法により、装置の小型化、簡素化が図れ、新たな応用が開ける。
一方、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムは今後、広い分野で応用されていくが、光損傷をどのように制御するかが大きな課題となる。従来、特別の添加物で結晶自身の耐光損傷性を高める方法や、素子を加熱して光損傷が現れないような状態で使用する方法が用いられていた。しかし、今回の紫外光を照射して損傷を防ぐ方法は全く新しい方法で、今後に応用が開けると期待できる。
【0027】
【図面の簡単な説明】
【図1】光損傷の説明図
【図2】光損傷を回復する実施態様図
【図3】光損傷を回避した疑似位相整合による光波長変換法の実施態様図。(その1)
【図4】紫外光照射と加熱法との波長変換効果の差異を示す図
【図5】光損傷を回避した疑似位相整合による光波長変換法の実施態様図。(その2)
【図6】光損傷を回避した疑似位相整合による光波長変換法の実施態様図。(その3)
【図7】光損傷を回避した疑似位相整合による光波長変換法の実施態様図。(その4)
【図8】光損傷を回避した疑似位相整合による光波長変換法の実施態様図。(その4)
Claims (15)
- 光素子の光損傷を抑制する方法であって、前記光素子は、化学量論量の定比組成であるニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶を含み、
前記光素子に300nm以上400nm以下の波長を有する紫外光を照射する工程を包含し、
前記紫外光を照射する工程は、前記光素子に波長変換されるべき基本波を入射する前に、あるいは、前記光素子に前記基本波を入射すると同時に、前記光素子に直接前記紫外光を照射するか、または、前記基本波の光路に前記紫外光を重ね、前記基本波と前記紫外光とを前記光素子に入射させる、方法。 - 前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶は、MgO、又はZnOを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記紫外光を照射する工程は、前記光素子に350nmの波長を有する紫外光を照射することを特徴とする請求項1ないし2のいずれか1項記載の方法。
- 前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶は、周期的分極反転構造を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の方法。
- 化学量論量の定比組成であるニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶を含み、光損傷を抑制する方法によって製造される光素子であって、前記方法は、
前記光素子に300nm以上400nm以下の波長を有する紫外光を照射する工程を包含し、
前記紫外光を照射する工程は、前記光素子に波長変換されるべき基本波を入射する前に、あるいは、前記光素子に前記基本波を入射すると同時に、前記光素子に直接前記紫外光を照射するか、または、前記基本波の光路に前記紫外光を重ね、前記基本波と前記紫外光とを前記光素子に入射させる、光素子。 - 前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶は、MgO、又はZnOを含んでいる素子であることを特徴とする請求項5記載の光素子。
- 前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶は、周期的分極反転構造を有することを特徴とする請求項5ないし6のいずれか1項記載の光素子。
- 光素子の光損傷を抑制する方法であって、前記光素子は、化学量論量の定比組成であるニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶を含み、前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶は周期的分極反転構造を有し、
前記光素子に基本波を入射する工程であって、前記基本波は、前記周期分極反転構造の分極反転周期に擬似位相整合することによって300nm以上400nm以下の紫外光を
発振する、工程と、
前記紫外光の一部を前記光素子に再入射させる工程と
を包含する、方法。 - 前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶は、MgO又はZnOを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
- 再入射させる工程は、誘電体ミラーを用いるか、または、前記光素子に反射ミラーコーティングを適用することを特徴とする請求項8ないし9のいずれか1項記載の方法。
- 前記周期的分極反転構造の分極反転周期は、前記基本波の波長に依存して決定されることを特徴とする請求項8ないし9のいずれか1項記載の方法。
- 前記基本波が1064nmの場合、前記分極反転周期は、2〜3μmであることを特徴とする請求項11記載の方法。
- 化学量論量の定比組成であり、周期的分極反転構造を有するニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶を含み、光損傷を抑制する方法によって製造される光素子であって、前記方法は、
前記光素子に基本波を入射する工程であって、前記基本波は、前記周期分極反転構造の 分極反転周期に擬似位相整合することによって300nm以上400nm以下の紫外光を発振する、工程と、
前記紫外光の一部を前記光素子に再入射させる工程と
を包含する、光素子。 - 前記ニオブ酸リチウム単結晶又はタンタル酸リチウム単結晶は、MgO又はZnOを含むことを特徴とする請求項13記載の光素子。
- 前記分極反転周期は、2〜3μmであることを特徴とする請求項13ないし14のいずれか1項記載の光素子。
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