JP3704178B2 - ろう付用アルミニウム材料及び該材料を用いた耐食性に優れたドロンカップ型熱交換器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、ろう付用アルミニウム材料及び該材料を用いた耐食性に優れたドロンカップ型熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車の空調用蒸発器や産業用ラジエータ、オイルクーラーとして使用されるようなアルミニウム熱交換器には、ドロンカップ型と称される積層型のものが多く用いられている。
【0003】
このドロンカップ型熱交換器は、熱交換媒体流通部とこれに連通するタンク部とを形成するように皿状にプレス成形した、ブレージングシートからなる2枚のコアプレートを重ね合わせてチューブエレメントとし、これとフィンとを交互に複数段積層してろう付一体化したものである。
【0004】
このようなドロンカップ型熱交換器は、腐食環境下での使用に耐え得るものとするために、耐食性を付与されたものに構成されることがあるが、従来の防食思想は、フィンをInやZn等の犠牲腐食効果のある元素を添加したアルミニウム合金で構成し、このフィンの犠牲腐食作用によりチューブエレメントの耐食性を確保しようというものであった(例えば特開昭63−241137)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば湿潤と乾燥とが頻繁に繰り返されるような過酷な環境下で使用される場合には、フィンによる十分な防食効果が得られず、フィンの谷部(山部)と谷部(山部)の間の位置においてチューブエレメントに短期間で孔食を生じ、甚だしくは液漏れに至るというような問題があった。また、フィンの谷部と谷部との間隔つまりフィン間隔を小さくすることにより、フィンによる犠牲腐食効果を高めることはできるが、フィンを通過する空気の抵抗が大きくなり、熱交換性能が低下するという新たな欠点を派生するものであった。
【0006】
このような欠点はドロンカップ型熱交換器に限らず、耐食性が要求される他のろう付品についても同様に生じるものであった。
【0007】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、ろう付品の耐食性を向上させうるろう付用材料、及び該材料を用いた耐食性に優れたドロンカップ型熱交換器の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明の一つは、図1及び図2に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材(11)の両面側にAl−Si系ろう材層(12)(12)が配置されるとともに、心材(11)と少なくとも片面側のろう材層(12)との間に、心材よりも孔食電位が50mV以上低い犠牲腐食層(13)が形成されていることを特徴とするろう付用アルミニウム材料を要旨とする。
【0009】
心材(11)を構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金の具体的組成は特に限定されることはないが、望ましくはCu:0.1〜0.8wt%、Mn:0.3〜1.5wt%、Ti:0.01〜0.2wt%の1種または2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不純物からなるものにより構成するのが良い。ここに、Cu、Mn、Tiはいずれも心材(11)の孔食電位を貴にするのに有効な元素であり、これにより犠牲腐食層(13)の孔食電位が心材(11)よりも50mV以上低いという条件を満足しやすくするものである。かかる効果の点でこれらは相互に均等物として評価されるものであり、少なくとも1種が含有されていれば効果を発揮するが、Cuが0.1wt%未満、Mnが0.3wt%未満、Tiが0.01wt%未満では上記効果に乏しい。一方、Cuが0.8wt%を超えると、ろう付後ろう材粒界を通って表面に拡散し、耐食性が悪化する。また、Mnが1.5wt%を超えると、金属間化合物が大きくなるとともに加工硬化が大きくなり、プレス等の成形性が悪化する。また、Tiが0.2wt%を超えると融点が高くなり、鋳造の困難性が増す。好ましい含有範囲は、Cu:0.2〜0.7wt%、Mn:0.6〜1.3wt%、Ti:0.08〜0.17wt%であり、特にCu:0.3〜0.5wt%、Mn:0.8〜1.2wt%、Ti:0.1〜0.15wt%が好ましい。
【0010】
犠牲腐食層(13)の孔食電位が心材(11)よりも50mV以上低いものとなされているのは、50mV未満では犠牲腐食層(13)の犠牲腐食作用による心材(11)に対する十分な防食効果が得られないからである。好ましくは、犠牲腐食層(13)の孔食電位は心材(11)よりも100mV以上低く設定されるのが良く、特に150mV以上低くされるのが望ましい。
【0011】
上記孔食電位の条件を満足する犠牲腐食層(13)の具体的構成例として、心材(11)の表面に溶射により形成されたZn層を挙げ得る。このZn溶射層は、その後のろう付加熱により心材表面に拡散して、厚さ50〜200μm、Zn平均濃度2%程度の拡散層を形成することにより、犠牲腐食効果を発揮するものである。かかる拡散層を形成させるために、Zn溶射層は付着量で8〜20g/m2 に設定するのが良い。犠牲腐食層(13)をZn溶射層により構成する場合は、図1のように心材(11)の片面のみに形成しても良いし、図2のように両面に形成しても良い。
【0012】
また、上記孔食電位の条件を満足する犠牲腐食層(13)の他の具体的構成例として、純アルミニウムまたはAl−Mn系合金をベースとして、Zn:0.5〜3wt%、In:0.02〜0.1wt%、Sn:0.02〜0.1wt%の1種または2種以上を含有するものを挙げ得る。ここに、Zn、In、Snは犠牲腐食層(13)の孔食電位を卑とする効果がある。かかる効果の点でこれらは均等物であり、少なくとも1種が含有されていれば良く、特にフラックスろう付のときはZnを、真空ろう付のときはInやSnを用いれば良い。しかし、Znが0.5wt%未満、Inが0.02wt%未満、Snが0.02wt%未満では前記効果に乏しい。一方、Znが3wt%を超え、Inが0.1wt%を超え、Snが0.1wt%を超えても効果が飽和するのみならず、In、Snの場合は加工性が悪化する。好ましい含有量はZn:0.8〜3wt%、In:0.03〜0.08wt%、Sn:0.03〜0.08wt%であり、特にZn:1.0〜3wt%、In:0.04〜0.07wt%、Sn:0.04〜0.07wt%が最も好ましい。
【0013】
上記のようなアルミニウム合金からなる犠牲腐食層(13)は、図1のように心材(11)の片面のみに形成しても良いし、図2のように両面に形成しても良い。形成方法の最も一般的なものとして圧延によりクラッドする方法を挙げ得る。犠牲腐食層(13)のクラッド率即ちろう付材料の厚さに占める犠牲腐食層の厚さの割合は、片面で10〜25%とするのが良い。片面クラッド率が10%未満では犠牲腐食層(13)が薄すぎて、心材(11)に対する防食効果が不十分となる恐れがある。一方、片面クラッド率が25%を超えても防食効果が飽和するのみならず、心材(11)の薄肉化による強度低下を派生する恐れがある。
【0014】
心材の両面側に配置されるAl−Si系ろう材層(12)は、良好なろう付作用を発揮させるためにSi量6〜14wt%のものを用いるのが良い。また、真空ろう付に用いられる場合には、さらにMgやBiが添加される。かかるろう材層(12)の形成方法の最も一般的なものとして、やはり圧延によりクラッドする方法を挙げ得る。犠牲腐食層(13)をZn溶射層により形成する場合は、心材(11)にZn溶射層を形成した後、ろう材層(12)をクラッドすれば良い。ろう材層(12)のクラッド率は、片面で8〜20%に設定するのが良い。8%未満ではろう付フィレットが不十分でろう付性に劣る恐れがあり、20%を超えるクラッド率ではSi侵食が増加する恐れがある。また、ろう材層(12)をクラッドによらず溶射等によって形成しても良い。
【0015】
この発明に係る他のろう付用アルミニウム材料として、図3に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材(11)の両面側にAl−Si系ろう材層(12)(12)が配置されるとともに、少なくとも一方のろう材層(12)が、心材(11)よりも孔食電位が50mV以上低い犠牲腐食層(13)からなるものであることを特徴とするろう付用アルミニウム材料を挙げることができる。この材料は、心材(11)とろう材層(12)との間に犠牲腐食層を設けるのではなく、少なくとも一方のろう材層(12)に犠牲腐食作用をも付与したものである。この材料について詳しく説明すると次の通りである。
【0016】
即ちまず、心材(11)を構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金の具体的組成は特に限定されることはないが、望ましくはCu:0.1〜0.8wt%、Mn:0.3〜1.5wt%、Ti:0.01〜0.2wt%の1種または2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不純物からなるものにより構成するのが良い。ここに、Cu、Mn、Tiはいずれも心材の孔食電位を貴にして、心材(11)と犠牲腐食層(13)との孔食電位の差を設けやすくするのに有効な元素である。かかる効果の点でこれらは相互に均等物として評価されるものであり、少なくとも1種が含有されていれば効果を発揮するが、Cuが0.1wt%未満、Mnが0.3wt%未満、Tiが0.01wt%未満では上記効果に乏しい。一方、Cuが0.8wt%を超えると、ろう付後ろう材粒界を通って表面に拡散し、耐食性が悪化する。また、Mnが1.5wt%を超えると、金属間化合物が大きくなるとともに加工硬化が大きくなり、プレス等の成形性が悪化する。また、Tiが0.2wt%を超えると融点が高くなり、鋳造の困難性が増す。好ましい含有範囲は、Cu:0.2〜0.7wt%、Mn:0.6〜1.3wt%、Ti:0.08〜0.17wt%であり、特にCu:0.3〜0.5wt%、Mn:0.8〜1.2wt%、Ti:0.1〜0.15wt%が好ましい。
【0017】
犠牲腐食層(13)からなるろう材層(12)の孔食電位が心材(11)よりも50mV以上低いものとなされているのは、50mV未満では犠牲腐食層(13)の犠牲腐食作用による心材(11)に対する十分な防食効果が得られないからである。好ましくは、犠牲腐食層(13)からなるろう材層(12)の孔食電位は心材(11)よりも100mV以上低く設定されるのが良く、特に150mV以上低くされるのが望ましい。
【0018】
上記孔食電位の条件を満足する犠牲腐食層からなるろう材層(12)の具体的構成例として、ろう材層中に、Zn:0.5〜3wt%、In:0.02〜0.1wt%、Sn:0.02〜0.1wt%の1種または2種以上が含有されているものを挙げることができる。ここに、Zn、In、Snは犠牲腐食層(13)の孔食電位を卑とする効果がある。かかる効果の点でこれらは均等物であり、少なくとも1種が含有されていれば良く、特にフラックスろう付のときはZnを、真空ろう付のときはInやSnを用いれば良い。しかし、Znが0.5wt%未満、Inが0.02wt%未満、Snが0.02wt%未満では前記効果に乏しい。一方、Znが3wt%を超え、Inが0.1wt%を超え、Snが0.1wt%を超えても効果が飽和するのみならず、In、Snの場合は加工性が悪化する。好ましい含有量はZn:0.8〜3wt%、In:0.03〜0.08wt%、Sn:0.03〜0.08wt%であり、特にZn:1.0〜3wt%、In:0.04〜0.07wt%、Sn:0.04〜0.07wt%が最も好ましい。また、ろう材層(12)は最も一般的には圧延によりクラッドする方法により形成される。この場合ろう材層(12)のクラッド率は、片面で8〜20%に設定するのが良い。8%未満ではろう付フィレットが不十分でろう付性に劣る恐れがあり、20%を超えるクラッド率ではSi侵食が増加する恐れがある。なお、クラッドによることなく、溶射によりろう材層(12)を形成しても良い。
【0019】
図4〜図9は、この発明に係るドロンカップ型熱交換器の一例を示すもので、自動車の空調用アルミニウム合金製蒸発器に適用したものである。
【0020】
図9に示す蒸発器の全体図において、(1)は垂直状態でかつ左右方向に積層された複数枚の偏平状チューブエレメント、(2)はその隣接するチューブエレメント(1)(1)間および最外側のチューブエレメント(1)の外側に配置され、かつろう付接合一体化されたコルゲートフィンである。
【0021】
前記チューブエレメント(1)は、図4〜図9に示すように、長さ方向の両端に膨出状のタンク部(1a)(1b)を有すると共に、長さ方向の中間部に両タンク部(1a)(1b)を連通する偏平状の冷媒通路(1c)を有している。そして、各チューブエレメント(1)は隣接するものどおしがタンク部(1a)(1b)において当接状態にろう付接合されると共に、各タンク部(1a)(1b)に設けた冷媒流通孔(1d)(1d)を介して隣接タンク部相互が連通状態となされている。
【0022】
前記各チューブエレメント(1)は、いずれも2枚の皿状コアプレート(3)をその周端接合面(3a)において対向状に重ね合わせ、ろう付一体化することにより形成されている。このコアプレート(3)は、プレス加工により形成されたもので、コアプレート(3)相互の接合及びこれとコルゲートフィン(2)とのろう付接合を容易に行わしめる目的で、その材料として前述した本発明に係るろう付用アルミニウム材料が用いられている。かつこのコアプレート(3)は、コアプレートの心材に対して少なくとも外側つまりフィン側に犠牲腐食層が存在する状態で用いられている。
【0023】
上記コアプレート(3)は、最外側のチューブエレメント(1)を構成する外側コアプレート(3)を除いて、両端部に外方突出状の膨出部(4)が形成されている。最外側のチューブエレメント(1)の外側コアプレート(3)は、図8に示すように、その両端部ともにフラットな状態となされ下端部には幅方向に沿って3つの冷媒流通孔(1d)が穿設されている。
【0024】
また上記各膨出部(4)の頂壁には、コアプレート(3)の幅方向に沿って3つの冷媒流通孔(1d)が穿設され、該流通孔(1d)を通じて隣接するチューブエレメント(1)のタンク部相互が連通状態となされている。もっとも、図9に示す蒸発器の全体図において、その右から4番目と5番目に位置するチューブエレメント(1)(1)の下側タンク部(1b)(1b)の相互接合面、および同8番目と9番目に位置するチューブエレメント(1)(1)の上側タンク部(1a)(1a)の相互接合面、および同12番目と13番目に位置するチューブエレメント(1)(1)の下側タンク部(1b)(1b)の相互接合面をそれぞれ構成する前記膨出部(4)の各頂壁には、上述のような冷媒流通孔は穿設されておらず、その頂壁が隣接するチューブエレメント(1)のタンク部(1a)または(1b)相互の仕切りとして作用するようになされており、これにより全チューブエレメントで構成される冷媒通路が蛇行通路に形成されている。
【0025】
さらに、上記各コアプレート(3)の内面には、一方の膨出部(4)から他方の膨出部(4)に向かって真っ直ぐに延びた、結露水排水用溝としても機能する凹陥状内方突出リブ(5)が上記プレートの幅方向に所定間隔で突出形成されている。そして、かかるリブ(5)を有する2枚のコアプレート(3)(3)を重ね合わせることで、周端部(3a)どおしが接合されるとともに、図5および図6に実線と一点鎖線とで示すように、両コアプレート(3)(3)のリブ(5)(5)どおしが交互に配置された状態となされ、かつ各リブ(5)の先端部が、対向するコアプレート(3)のリブ(5)相互間の平面部(6)に当接された交互配置状態で接合され、チューブエレメント(1)の冷媒通路(1c)内に、入口タンク部(1b)から出口タンク部(1a)に向かって真っ直ぐに延びた複数の単位冷媒通路(1e)が形成されている。
【0026】
而して、上記のようなチューブエレメント(1)の複数枚が、相互間にコルゲートフィン(2)を介在配置せしめた状態で、隣接するものどおしがタンク部(1a)(1b)において当接状態にろう付接合されている。ここに、隣接チューブエレメント(1)(1)どうし及びチューブエレメント(1)とコルゲートフィン(2)との接合は、コアプレート(3)を構成するろう付用材料の外側ろう材層(12)を介して行われ、各チューブエレメント(1)におけるコアプレート(3)相互の接合はコアプレートの内側ろう材層(12)を介して行われる。また、右最外側のチューブエレメント(1)の下側タンク部(1b)には、冷媒入口管(7)が、また左最外側のチューブエレメント(1)の下側タンク部(1b)には冷媒出口管(8)がそれぞれ前記冷媒流通孔(1d)を介して連通接続されている。なお、図8および図9において、(9)は最外側のコルゲートフィンの外側に配設されたサイドプレートであり、これらのサイドプレートもブレージングシートによって形成され、最外側のフィンにろう付されたものである。
【0027】
上記のようなドロンカップ型蒸発器では、冷媒入口管(7)から流入した冷媒は前記仕切りによって区画された各チューブエレメント群毎に方向転換して蛇行状に流れ、出口管(8)から蒸発器外へと流出するものとなされている。そして、この間に、チューブエレメント(1)間に形成されたフィン(2)を含む空気流通間隙を流通する空気と熱交換を行うものとなされている。
【0028】
而して、チューブエレメント(1)を構成する各コアプレート(3)は、心材(11)に対して少なくとも外側つまりフィン側に犠牲腐食層(13)が存在する状態で用いられているから、図4に示されるように、チューブエレメント(1)の心材(11)の外側を被覆する状態に、心材(11)よりも孔食電位が50mV以上低い犠牲腐食層(13)が存在することになる。この犠牲腐食層(13)が優先的に腐食される結果、チューブエレメント(1)の心材(11)は防食され、ひいてはチューブエレメント(1)の孔食の発生が防止される。
【0029】
【作用】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材の両面側にAl−Si系ろう材層が配置されるとともに、心材と少なくとも片面側のろう材層との間に、心材よりも孔食電位が50mV以上低い犠牲腐食層が形成されているろう付用材料では、この犠牲腐食層により心材が確実に防食される。しかも、ろう付される相手材の犠牲腐食効果により防食を図るものではなく、犠牲腐食層は心材の少なくとも片面側に直接配置されているから、心材全体が確実に防食される。しかも、犠牲腐食層の外側にはろう材層が存在するから、少なくともろう付されるまではこのろう材層により犠牲腐食層の露出が防止され、犠牲腐食層に損傷や剥離等を生じる危険や経時劣化の危険が低減する。
【0030】
また、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材の両面側にAl−Si系ろう材層が配置されるとともに、少なくとも一方のろう材層が、心材よりも孔食電位が50mV以上低い犠牲腐食層からなるものであるろう付用材料では、ろう材層と犠牲腐食層とを兼用することができ、層構成を簡素化できる。
【0031】
また、上記のようなろう付用アルミニウム材料により形成された2枚のコアプレートを、犠牲腐食層が外側に位置する向きで重ね合わせることにより板状のチューブエレメントが形成されるとともに、チューブエレメントとフィンとの複数枚が交互に積層され、かつコアプレートの両面のろう材層により各構成部材がろう付されてなることを特徴とするドロンカップ型熱交換器においては、チューブエレメントにおける心材の外側を覆って犠牲腐食層が存在することになるから、チューブエレメントの全体が確実に防食される。
【0032】
【実施例】
次に、この発明の実施例を説明する。
【0033】
同一組成の2枚のコアプレート(3)(3)を重ね合わせたものを複数個用意し、これらとフィン(2)とを交互に積層して図4〜図9に示すようなドロンカップ型熱交換器に仮組した。ここに、コアプレート(3)の心材(11)、内側ろう材層(12)、外側犠牲腐食層(13)、外側ろう材層(12)の構成を表1に示すように各種に設定した。なお、コアプレートの心材、内側ろう材層、外側ろう材層はいずれもクラッドにより形成したが、外側犠牲腐食層はZn溶射層によりあるいはクラッドにより形成した。また、各コアプレートにおける心材の厚さは0.4mmとし、犠牲腐食層の厚さ、ろう材層の片面クラッド率は表1のように設定した。また、心材と犠牲腐食層との孔食電位の差(心材の孔食電位−犠牲腐食層の孔食電位)は表1のとおりであった。尚、フィンにはJIS3203Al合金に0.05wt%のInを添加したものを用い、厚さは0.12mmとした。
【0034】
次に、上記の各熱交換器組立体をろう付した。ろう付はNo7、8、12、13の各熱交換器については真空中で600℃×5分加熱することにより行い、それ以外の熱交換器については、フッ化物系フラックスの懸濁液に浸漬し乾燥した後、不活性ガス雰囲気中で600℃×5分加熱することにより行った。
【0035】
そして、得られた各熱交換器につき腐食試験を行った。腐食試験は、試験液への浸漬処理、自然乾燥、結露(30分)、湿潤(30分)、乾燥(45℃×1時間)の順次的実施を2時間で行い、これを1サイクルとして100サイクル繰り返したときのチューブエレメントの孔食深さを測定した。なお、試験液としては、PH5の酸性溶液(5%NaCl+5ppmH2 SO4 +5%CaCl2 ・2H2 O+カオリン+海砂)とPH9のアルカリ溶液(7.5%CaCl2 ・2H2 O+5%NaCl)の2種類を用いてそれぞれ行った。その結果を表1に併せて示す。
【0036】
【表1】
上記表1の結果からわかるように、心材よりも孔食電位が50mV以上低く設定された本発明実施品は、該条件を逸脱する比較品よりも耐食性に優れていることを確認し得た。
【0037】
【発明の効果】
この発明は上述の次第で、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材の両面側にAl−Si系ろう材層が配置されるとともに、心材と少なくとも片面側のろう材層との間に、心材よりも孔食電位が50mV以上低い犠牲腐食層が形成されていることを特徴とするものであるから、この犠牲腐食層により心材が確実に防食され、優れた耐食性を有するろう付品の提供が可能となる。しかも、ろう付される相手材の犠牲腐食効果により防食を図るものではなく、犠牲腐食層は心材の少なくとも片面側に直接配置されているから、心材全体を確実に防食することができる。しかも、犠牲腐食層の外側にはろう材層が存在するから、少なくともろう付されるまではこのろう材層により犠牲腐食層の露出が防止され、犠牲腐食層に損傷や剥離等を生じる危険や経時劣化の危険を低減でき、ひいては所期するとおりの防食効果を安定的に発揮させうるろう付品の提供が可能となる。
【0038】
また、心材が、Cu:0.1〜0.8wt%、Mn:0.3〜1.5wt%、Ti:0.01〜0.2wt%の1種または2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不純物からなるアルミニウム合金により形成されている場合には、心材の孔食電位を貴となしえ、犠牲腐食層の孔食電位が心材よりも50mV以上低いという条件を満足しやすくなるという効果がある。
【0039】
また、犠牲腐食層が、心材の表面に溶射により形成されたZn層である場合や、純アルミニウムまたはAl−Mn系合金をベースとして、Zn:0.5〜3wt%、In:0.02〜0.1wt%、Sn:0.02〜0.1wt%の1種または2種以上が含有されてなるものである場合には、犠牲腐食層の孔食電位を心材よりも50mV以上低くすることが容易となり、本発明にかかるろう付用材料の提供が容易となる効果がある。
【0040】
また、ろう付用材料が、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材の両面側にAl−Si系ろう材層が配置されるとともに、少なくとも一方のろう材層が、心材よりも孔食電位が50mV以上低い犠牲腐食層からなるものであることを特徴とする場合には、ろう材層と犠牲腐食層とを兼用することができ、層構成を簡素化でき、製造上も経済的にも有利となし得る。この場合も、心材をCu:0.1〜0.8wt%、Mn:0.3〜1.5wt%、Ti:0.01〜0.2wt%の1種または2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不純物からなるアルミニウム合金により形成することにより、前記と同様に、心材の孔食電位を貴となしえ、犠牲腐食層の孔食電位が心材よりも50mV以上低いという条件を満足しやすくなるという効果がある。
【0041】
また、この発明に係るろう付用アルミニウム材料により形成された2枚のコアプレートを、犠牲腐食層が外側に位置する向きで重ね合わせることにより板状のチューブエレメントが形成されるとともに、チューブエレメントとフィンとの複数枚が交互に積層され、かつコアプレートの両面のろう材層により各構成部材がろう付されてなることを特徴とするドロンカップ型熱交換器においては、チューブエレメントにおける心材の外側を覆って犠牲腐食層が存在することになるから、チューブエレメントの全体を確実に防食することができ、耐食性に優れた熱交換器となしうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係るろう付用アルミニウム材料の断面図である。
【図2】この発明の他の実施例に係るろう付用アルミニウム材料の断面図である。
【図3】この発明のさらに他の実施例に係るろう付用アルミニウム材料の断面図である。
【図4】この発明に係るドロンカップ型熱交換器のチューブエレメントのタンク部付近の拡大断面図である。
【図5】チューブエレメントを構成するコアプレートを冷媒通路側から見た平面図である。
【図6】(a)は図5のVI−VI線断面図、(b)は(a)の一部拡大図である。
【図7】(a)は図5のVIIa−VIIa線断面図、(b)は同じくVIIb−VIIb線断面図である。
【図8】図4に示したドロンカップ型熱交換器の一部を分離して示す斜視図である。
【図9】図4に示したドロンカップ型熱交換器の全体正面図である。
【符号の説明】
11…心材
12…ろう材層
13…犠牲腐食層
1…チューブエレメント
2…フィン
3…コアプレート
Claims (5)
- Cu:0.1〜0.8wt%、Mn:0.3〜1.5wt%、Ti:0.01〜0.2wt%の1種または2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不純物からなるアルミニウム合金により形成されている心材の両面側にAl−Si系ろう材層が配置されるとともに、心材と少なくとも片面側のろう材層との間に、Al−Mn系合金をベースとしてZn:0.5〜3wt%、In:0.02〜0.1wt%、Sn:0.02〜0.1wt%の1種または2種以上が含有されてなり、心材よりも孔食電位が50mV以上低い犠牲腐食層が形成されていることを特徴とするろう付用アルミニウム材料。
- 犠牲腐食層が、心材よりも孔食電位が160〜200mV低いものである請求項1に記載のろう付用アルミニウム材料。
- Cu:0.1〜0.8wt%、Mn:0.3〜1.5wt%、Ti:0.01〜0.2wt%の1種または2種以上を含有し、残部アルミニウム及び不純物からなるアルミニウム合金により形成されている心材の両面側にAl−Si系ろう材層が配置されるとともに、少なくとも一方のろう材層が、Zn:0.5〜3wt%、In:0.02〜0.1wt%、Sn:0.02〜0.1wt%の1種または2種以上を含有し、心材よりも孔食電位が50mV以上低い犠牲腐食層からなることを特徴とするろう付用アルミニウム材料。
- 犠牲腐食層からなるろう材層が、心材よりも孔食電位が160〜200mV低いものである請求項3に記載のろう付用アルミニウム材料。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のろう付用アルミニウム材料により形成された2枚のコアプレートを、犠牲腐食層が外側に位置する向きで重ね合わせることにより板状のチューブエレメントが形成されるとともに、チューブエレメントとフィンとの複数枚が交互に積層され、かつコアプレートの両面のろう材層により各構成部材がろう付されてなることを特徴とするドロンカップ型熱交換器。
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