JP3703771B2 - 水素化された重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水酸基、水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する水素化された重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリブタジエンジオールのような少なくとも1個以上の官能基を有し、主鎖または側鎖にオレフィン性の炭素−炭素二重結合を有する重合体は、耐熱性および耐候性に劣るが、分子内に存在するオレフィン性の炭素−炭素二重結合を水素化することによってその性質が改善される。
重合体の水素化は、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、ロジウムなどの種々の金属触媒を使用して実施することができるが、金属触媒を支持体に担持してなる触媒を使用して水素化を行う方法は、触媒成分の分離に伴う困難性がないことから、重合体の水素化方法として有用性が高い。
【0003】
分子内に水酸基とオレフィン性の炭素−炭素二重結合を有する重合体を、担持触媒を使用して水素化する方法として以下の方法が知られている。
(1)カーボン担持ルテニウムやアルミナ担持ルテニウムを使用してポリヒドロキシブタジエンを水素添加する方法(特開昭50−90694号公報参照)。
(2)多孔質の炭素質成形体に担持されたルテニウムやパラジウム等の金属触媒を使用してポリヒドロキシブタジエンを水素添加する方法(特公昭61−36002号公報参照)。
(3)α−アルミナに担持したパラジウムを使用して、分子量2000のポリブタジエンジオールを水素化する方法(米国特許第5378767号明細書参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した(1)の水素添加方法は、水酸基の切断をほどんど生じることなく、高い水素添加率を達成することができるとされている。しかし、本発明者らが確認したところ、ルテニウムの溶出が起こり、生成した水素化重合体の安定性が損なわれるという問題が認められた。特開昭50−90694号公報には、ルテニウム以外の金属触媒を使用した例が比較例として記載されているが、カーボン担持パラジウムやカーボン担持ロジウムを使用した場合には水酸基の切断が生じ、一方、カーボン担持オスミウム、カーボン担持白金やケイソウ土担持ニッケルを使用した場合には水素添加の速度が遅いという問題があることが示されている。
また、上記した(2)の水素添加方法では、ルテニウム触媒を使用する場合、実施例1、2の結果によれば、水酸基の切断をほどんど生じることなく、高い水素添加率を達成することができるとされている。しかし、本発明者らが確認したところ、(1)の水素添加方法と同様にルテニウムの溶出が起こり、生成した水素化重合体の安定性が損なわれるという問題が認められた。一方、パラジウム触媒を使用した場合、水素添加率は93%と比較的高いが、水酸基の切断が生じている(特公昭61−36002号公報の実施例3を参照)。
また、上記した(3)の水素添加方法は、低分子量の重合体の水素添加において、触媒の分離の困難性がないことを優位点としている。同方法は、水酸基の切断を生じることがなく、高い水素添加率を達成できるとされているが、本発明者らが確認したところ、例えば、数平均分子量が1万以上といった分子量が高いポリヒドロキシブタジエンの水素添加に適用すると、水酸基の切断が避けられないという問題が生じることを認めた。
【0005】
分子内に水酸基等の官能基を有する重合体は、該官能基に由来して、親水性、接着性等の種々の物性を示し、その物性に応じて各種機能性包装材料、各種機能性成形材料、各種シート、フィルム、繊維、各種コーティング剤、各種機能性アロイやブレンドの構成成分等に利用することができる。従って、分子内に官能基を有する重合体を水素添加する場合、かかる官能基の切断を極力抑制することが望ましい。
一方、分子内にオレフィン性の炭素−炭素二重結合を有する重合体の耐熱性および耐候性の改良効果を高めるには、該重合体に含まれるオレフィン性の炭素−炭素二重結合の水素化率を高めることが望ましい。
【0006】
分子内に水酸基等の官能基を有する重合体を水素化する場合、水素添加の工程で触媒に由来する金属成分が溶出すると、生成物である水素化重合体の安定性が損なわれる傾向が認められる。特に官能基が水酸基あるいはその類縁体(エポキシ基、水酸基の誘導体など)である場合、この傾向はより顕著である。また、重合体1分子中に含まれる水酸基またはその類縁体の数が増えるに従って、この傾向はさらに顕著となる。従って、一般に触媒の溶出が避けられないルテニウム触媒は、分子内にオレフィン性の炭素−炭素二重結合と水酸基またはその類縁体を有する重合体の水素化においては、使用を控えることが無難である。
しかし、ルテニウム以外の金属触媒を使用して分子内にオレフィン性の炭素−炭素二重結合と水酸基またはその類縁体を有する重合体を水素添加する方法であって、水酸基またはその類縁体の切断を生じることがなく、高い水素添加率を達成することができるという効果を達成し得る方法は、現在のところ見出されていない。
さらに、工業的規模で実施することを想定すると、重合体の水素添加を効率よく行うことが要求される。すなわち、単に水素化率が高められるだけではなく、十分な反応速度で水素化が進行することが必要である。
【0007】
しかして、本発明は、分子内にオレフィン性の炭素−炭素二重結合と水酸基またはその類縁体を有する重合体の水素化方法であって、水酸基またはその類縁体を損なうことなく、十分な反応速度で以って高い水素添加率を達成することができる、工業的に実施する上で有利な方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の課題は、オレフィン性の炭素−炭素二重結合と水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する重合体を、塩基性活性炭に担持されたパラジウムまたは塩基性活性炭に担持された白金の存在下に水素化することを特徴とする水素化された重合体の製造方法を提供することによって解決される。
以下、本明細書では、「オレフィン性の炭素−炭素二重結合と水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する重合体」を単に「不飽和重合体」と略称することがある。
【0009】
【発明の実施の形態】
不飽和重合体としては、水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を、該不飽和重合体を構成する単量体単位の総数に基いて、好ましくは1〜500モル%、より好ましくは1〜300モル%含有するものが使用される。
【0010】
水酸基に転換可能な官能基としては、例えば、エポキシ基、保護基によって保護された水酸基などが挙げられる。また、ヒドロキシメチル基に転換可能な官能基としては、例えば、保護基によって保護されたカルボキシル基、保護基によって保護されたアルデヒド基などが挙げられる。これらの中でも、水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基としては、エポキシ基、保護基によって保護された水酸基、保護基によって保護されたカルボキシル基が好ましい。
【0011】
水酸基の保護基としては、例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基等のアルキル基;ベンジル基などのアラルキル基;フェニル基等のアリール基;メトキシメチル基、エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等のシリル基などが挙げられ、カルボキシル基の保護基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基などが挙げられる。
また、保護されたアルデヒド基としては、例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基等のアルキレンジオキシ基で保護された環状アセタールなどが挙げられる。また、不飽和重合体は、分子内に、カルボキシル基と水酸基が縮合したラクトン型の構造やアルデヒド基と水酸基が縮合した環状ヘミアセタール型の構造を有していてもよく、これらは、保護された水酸基の範疇に包含される。
【0012】
水酸基に転換可能な官能基としては、例えば、エポキシ基;アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、フェニルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニルオキシ基等のアルコキシカルボニルオキシ基またはアリールオキシカルボニルオキシ基;メトキシメチレンオキシ基、メトキシエチレンオキシ基、エトキシエチレンオキシ基等のアルキコキシアルキレンオキシ基;トリメチルシロキシ基、t−ブチルジメチルシロキシ基等のシロキシ基などが挙げられる。
また、ヒドロキシメチル基に転換可能な官能基としては、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシブチル基等のエステル基などが挙げられる。
【0013】
不飽和重合体における水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基の分布には特に制限はなく、例えば、規則的な分布、ブロック状の分布、ランダム状の分布、これらの全部または一部が混在している分布などであってもよい。
また、不飽和重合体が側鎖を有する場合、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な基は、該重合体の主鎖または側鎖のいずれに存在していてもよい。また、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基は、不飽和重合体の片末端または両末端に位置していてもよい。
【0014】
不飽和重合体としては、オレフィン性の炭素−炭素二重結合を、該不飽和重合体を構成する単量体単位の総数に基いて、好ましくは1〜500モル%、より好ましくは1〜300モル%含有するものが使用される。
【0015】
オレフィン性の炭素−炭素二重結合は、シスまたはトランスのいずれの構造を有していてもよい。
不飽和重合体におけるオレフィン性の炭素−炭素二重結合の分布には特に制限はなく、例えば、規則的な分布、ブロック状の分布、ランダム状の分布、テーパー状の分布、これらの全部または一部が混在している分布などであってもよい。
不飽和重合体が側鎖を有する場合、オレフィン性の炭素−炭素二重結合は該重合体の主鎖または側鎖のいずれに存在していてもよい。また、オレフィン性の炭素−炭素二重結合は不飽和重合体の末端に位置していてもよい。
【0016】
不飽和重合体の分子量には特に制限はないが、数平均分子量(Mn)が1,000〜1,000,000の範囲内にあることが好ましい。
【0017】
本発明で使用される不飽和重合体は、ラジカル重合、イオン重合、配位重合、メタセシス重合など如何なる重合方法によって製造されたものであってもよい。
【0018】
不飽和重合体としては、共役ジエン系モノマーを重合させて得られる重合体、共役ジエン系モノマーと該共役ジエン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを共重合させて得られる重合体が好適に使用される。ここで、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する共役ジエン系モノマーを使用するか、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有し、かつ共役ジエン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを使用することにより、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。なお、共役ジエン系モノマーは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、共役ジエン系モノマーと共重合可能な他のモノマーは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
共役ジエン系モノマーとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、クロロプレン等の置換基を有していてもよい鎖状の共役ジエン化合物;シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3−シクロオクタジエン等の環状共役ジエン化合物などが挙げられる。また、共役ジエン系モノマーとして、例えば、1−アセチルオキシ−1,3−ブタジエン、1−t−ブチルオキシ−1,3−ブタジエン、1−メトキシカルボニルオキシ−1,3−ブタジエン、1−トリメチルシロキシ−1,3−ブタジエン、2−アセチルオキシ−1,3−ブタジエン、2−t−ブチルオキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシカルボニルオキシ−1,3−ブタジエン、2−トリメチルシロキシ−1,3−ブタジエン、1−アセチルオキシ−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−t−ブチルオキシ−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−メトキシカルボニルオキシ−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−トリメチルシロキシ−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−アセチルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−t−ブチルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−メトキシカルボニルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−トリメチルシロキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−アセチルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−メトキシカルボニルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−トリメチルシロキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン等の、水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有するものを使用することができる。
【0020】
共役ジエン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等の置換基を有していてもよいスチレン系化合物;エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン;シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロオレフィンなどが挙げられる。また、共役ジエン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとして、例えば、アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミドまたはその誘導体;メタクリルアミドまたはその誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、トリメチルシリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクロレイン、メタクロレイン;ヒドロキシスチレン、アセチルオキシスチレン、t−ブチルオキシスチレン、トリメチルシロキシスチレン等のスチレン誘導体;3−ブテン−1−オール、1,2−ジアセトキシ−3−ブテン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)−3−ブテン等のα−オレフィン誘導体;4−シクロオクテン−1−オール、1−アセトキシ−4−シクロオクテン、3−シクロオクテン−1−オール、1−アセトキシ−3−シクロオクテン、5−シクロオクテン−1,2−ジオール、1,2−ジアセトキシ−5−シクロオクテン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)−5−シクロオクテン、4−シクロオクテン−1,2−ジオール、1,2−ジアセトキシ−4−シクロオクテン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)−4−シクロオクテン等のシクロオレフィン誘導体などの、水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有するものを使用することができる。
【0021】
上記した共役ジエン系モノマーの重合、または共役ジエン系モノマーと該共役ジエン系モノマーと共重合可能な他のモノマーの共重合を行う際に、(i)水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する重合開始剤を使用する、および/または(ii)水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する重合停止剤を使用することにより、片末端または両末端に水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。
例えば、(a)過酸化水素を開始剤として使用したラジカル重合、(b)水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有するアゾビスイソニトリルを使用したラジカル重合、(c)イオン重合中またはイオン重合反応停止時にアルキレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、ポリアルキレングリコールなどを反応させる方法、(d)水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有するアルキルリチウムを開始剤としてイオン重合する方法などが採用される。また、これらの方法を適切に併用することにより、両末端に水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を製造することができる。
【0022】
不飽和重合体としては、アセチレン系モノマーを重合させて得られる重合体、またはアセチレン系モノマーと、該アセチレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを共重合させて得られる重合体も好適に用いられる。ここで、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有するアセチレン系モノマーを使用するか、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有し、かつアセチレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを使用することにより、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。なお、アセチレン系モノマーは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、アセチレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
アセチレン系モノマーとしては、例えば、アセチレン、プロピン、1−ブチン、1−ペンチン、3−メチル−1−ブチン、シクロプロピルアセチレン、4−メチル−1−ペンチン、3,3−ジメチル−1−ブチン、2−ブチン、2−ペンチン、2−ヘキシン、3−ヘキシン、4−メチル−2−ペンチン、2−ヘプチン、シクロオクチン、フェニルアセチレン、ジフェニルアセチレン、1−フェニル−1−プロピン、1−フェニル−1−ブチン、1−フェニル−1−ヘキシンなどが挙げられる。また、アセチレン系モノマーとして、例えば、t−ブトキシアセチレン、アセトキシアセチレン、トリメチルシロキシアセチレン、2−プロピン−1−オール、1−アセトキシ−2−プロピン、1−t−ブトキシ−2−プロピン、1−トリメチルシロキシ−2−プロピンなどの、水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有するものを使用することができる。
【0024】
アセチレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、2−ペンテン等のα−オレフィン;シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロオレフィンなどが挙げられる。また、アセチレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとして、例えば、3−ブテン−1−オール、1,2−ジアセトキシ−3−ブテン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)−3−ブテン等のα−オレフィン誘導体;4−シクロオクテン−1−オール、1−アセトキシ−4−シクロオクテン、3−シクロオクテン−1−オール、1−アセトキシ−3−シクロオクテン、4−シクロオクテン−1,2−ジオール、1,2−ジアセトキシ−4−シクロオクテン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)4−シクロオクテン、5−シクロオクテン−1,2−ジオール、1,2−ジアセトキシ−5−シクロオクテン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)−5−シクロオクテン等のシクロオレフィン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、トリメチルシリルビニルエーテル等のビニルエーテルなどの、水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有するものを使用することができる。
【0025】
上記したアセチレン系モノマーの重合、またはアセチレン系モノマーと該アセチレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーの共重合を行う際に、(i)水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する重合開始剤を使用する、および/または(ii)水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する重合停止剤を使用することにより、片末端または両末端に水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。
例えば、メタセシス重合する際に、重合停止剤として1−アセトキシ−3−ブテンを使用することにより、片末端にアセトキシ基を有する不飽和重合体を得ることができ、また重合停止剤として1,6−ジアセトキシ−3−ヘキセンを使用することにより、両末端にアセトキシ基を有する不飽和重合体を得ることができる。
【0026】
不飽和重合体としては、アレン系モノマーを重合させて得られる重合体、またはアレン系モノマーと該アレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを共重合させて得られる重合体も好適に用いられる。ここで、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子中に有するアレン系モノマーを使用するか、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子中に有し、かつアレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを使用することにより、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。なお、アレン系モノマーは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、アレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
アレン系モノマーとしては、例えば、アレン;アルキルアレン、フェニルアレン、シアノアレン等のアレン誘導体などが挙げられる。また、アレン系モノマーとして、例えば、アセトキシアレン、t−ブトキシアレン、トリメチルシロキシアレン、ヒドロキシメチルアレン、アセトキシメチルアレン、t−ブトキシメチルアレン、トリメチルシロキシメチルアレン等のアレン誘導体;アレン酸メチル、アレン酸エチル等のアレン酸エステルなどの、水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有するものを使用することができる。
【0028】
アレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、3−メチル−3−ブテン−1−イン等の共役エンイン化合物;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、クロロプレン等の置換基を有していてもよい鎖状の共役ジエン化合物;シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3−シクロオクタジエン等の環状共役ジエン化合物;1−フェニルエチルイソニトリル等のイソニトリルなどが挙げられる。また、アレン系モノマーと共重合可能なモノマーとして、例えば、1−アセチルオキシ−1,3−ブタジエン、1−t−ブチルオキシ−1,3−ブタジエン、1−メトキシカルボニルオキシ−1,3−ブタジエン、1−トリメチルシロキシ−1,3−ブタジエン、2−アセチルオキシ−1,3−ブタジエン、2−t−ブチルオキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシカルボニルオキシ−1,3−ブタジエン、2−トリメチルシロキシ−1,3−ブタジエン、1−アセチルオキシ−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−t−ブチルオキシ−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−メトキシカルボニルオキシ−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−トリメチルシロキシ−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−アセチルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−t−ブチルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−メトキシカルボニルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−トリメチルシロキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−アセチルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−メトキシカルボニルオキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−トリメチルシロキシ−3−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン系モノマーなどの、水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有するものを使用することができる。
【0029】
上記したアレン系モノマーの重合、またはアレン系モノマーと該アレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーの共重合を行う際に、(i)水酸基および/またはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子中に有する重合開始剤を使用する、および/または(ii)水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する重合停止剤を使用することにより、片末端または両末端に水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。
【0030】
例えば、重合開始時に配位重合触媒およびこれと等量の、水酸基、水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有するアレン系モノマーを混合することにより、片末端に水酸基、水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する重合体を得ることができる。また、重合停止時に水酸基、水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有するアレン系モノマーを添加することにより、片末端に水酸基、水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する重合体を得ることができる。そして、かかる方法を併用することにより、両末端に水酸基、水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。
【0031】
不飽和重合体としては、環状オレフィンの開環メタセシス重合によって得られる重合体も好適に用いられる。ここで水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する環状オレフィンを使用することにより、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。なお、環状オレフィンは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、3−メチル−1−シクロペンテン、4−メチル−1−シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,3−シクロオクタジエン、1,4−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3,5−シクロオクタトリエン、1,3,6−シクロオクタトリエン、1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、1−メチル−1,5−シクロオクタジエン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、1,6−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、ノルボルネン、置換ノルボルネン、ノルボルナジエン、置換ノルボルナジエンなどが挙げられる。
また、環状オレフィンとして、例えば、2−シクロペンテン−1−オール、3−シクロペンテン−1−オール、3−シクロペンテン−1,2−ジオール、1−アセトキシ−2−シクロペンテン、1−アセトキシ−3−シクロペンテン、1,2−ジアセトキシ−3−シクロペンテン、1−t−ブトキシ−2−シクロペンテン、1−t−ブトキシ−3−シクロペンテン、1,2−ジ−t−ブトキシ−3−シクロペンテン、1−トリメチルシロキシ−2−シクロペンテン、1−トリメチルシロキシ−3−シクロペンテン、1,2−ジ(トリメチルシロキシ)−3−シクロペンテン、4−シクロオクテン−1−オール、1−アセトキシ−4−シクロオクテン、1−t−ブトキシ−4−シクロオクテン、1−トリメチルシロキシ−4−シクロオクテン、4−シクロオクテン−1,2−ジオール、1,2−ジアセトキシ−4−シクロオクテン、1,2−ジ−t−ブトキシ−4−シクロオクテン、1,2−ジ(トリメチルシロキシ)−4−シクロオクテン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)−4−シクロオクテン、5−シクロオクテン−1,2−ジオール、1,2−ジアセトキシ−5−シクロオクテン、1,2−ジ−t−ブトキシ−5−シクロオクテン、1,2−ジ(トリメチルシロキシ)−5−シクロオクテン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)−5−シクロオクテン、1,3,5,7−テトラ(ヒドロキシメチル)−1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、1,3,5,7−テトラ(アセトキシメチル)−1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、1,2,5,6−テトラ(ヒドロキシメチル)−1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、1,2,5,6−テトラ(アセトキシメチル)−1,3,5,7−シクロオクタテトラエンなどの、水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有するものを使用することができる。
【0033】
また、環状オレフィンとともに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル化合物を共重合させてもよい。
【0034】
上記した環状オレフィンの開環メタセシス重合に際し、(i)水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する重合開始剤を使用する、および/または(ii)水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する重合停止剤を使用することにより、片末端または両末端に水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。
例えば、環状オレフィンの開環メタセシス重合に際し、重合停止剤として3−ブテン−1−オールを使用することにより、片末端に水酸基を有する不飽和重合体を得ることができ、また、重合停止剤として3−ヘキセン−1,6−ジオールを使用することにより、両末端に水酸基を有する不飽和重合体を得ることができる。同様に、重合停止剤として1−アセトキシ−3−ブテンを使用することにより、片末端にアセトキシ基を有する不飽和重合体を得ることができ、また、重合停止剤として1,6−ジアセトキシ−3−ヘキセンを使用うすることにより、両末端にアセトキシ基を有する不飽和重合体を得ることができる。
【0035】
不飽和重合体としては、非環状ジエン化合物をメタセシス重合することによって得られる重合体も好適に用いられる。ここで水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する非環状ジエン化合物を使用することにより、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。なお、非環状ジエン化合物は1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
非環状ジエン化合物としては、例えば1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエンなどが挙げられる。また、非環状ジエン化合物として、例えば、1,6−ヘプタジエン−4−オール、4−アセトキシ−1,6−ヘプタジエン、4−t−ブトキシ−1,6−ヘプタジエン、4−トリメチルシロキシ−1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン−4−オール、4−アセトキシ−1,7−オクタジエン、4−t−ブトキシ−1,7−オクタジエン、4−トリメチルシロキシ−1,7−オクタジエンなどの、水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有するものを使用することができる。
【0037】
上記の非環状ジエン化合物のメタセシス重合に際し、(i)水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する重合開始剤を使用する、および/または(ii)水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を分子内に有する重合停止剤を使用することにより、片末端または両末端に水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する不飽和重合体を得ることができる。
例えば、非環状ジエン化合物のメタセシス重合に際し、重合停止剤として3−ブテン−1−オールを使用することにより、片末端に水酸基を有する不飽和重合体を得ることができ、また、重合停止剤として1,6−ジヒドロキシ−3−ヘキセンを使用することにより、両末端に水酸基を有する不飽和重合体を得ることができる。同様に、重合停止剤として1−アセトキシ−3−ブテンを使用することにより、片末端にアセトキシ基を有する不飽和重合体を得ることができ、また、重合停止剤として、1,6−ジアセトキシ−3−ヘキセンを使用することにより、両末端にアセトキシ基を有する不飽和重合体を得ることができる。
【0038】
本発明では、塩基性の活性炭に担持したパラジウムまたは塩基性の活性炭に担持した白金を使用して水素添加を行う。
中性または酸性の活性炭は、それに担持される触媒の水素化活性を向上させる効果を有するが、それと同時に、該触媒に不飽和重合体の官能基を加水素分解する活性をも付加するので、不飽和重合体の水素化において、水酸基、水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な基の切断を生じさせることとなる。
市販され、容易に入手可能なパラジウム触媒や白金触媒として、パラジウムカーボンやカーボンに担持させた白金触媒があるが、これらは酸性または中性のカーボンにパラジウムや白金を担持させたものである。
【0039】
塩基性の活性炭は公知の方法で調製することができる。例えば、▲1▼活性炭を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基性のアルカリ金属塩の水溶液中に含浸し、活性炭表面の酸性官能基を中和すると共に、該表面に塩基性のアルカリ金属の塩を担持する方法、▲2▼薬品賦活、特にアルカリ賦活する方法(「新版活性炭−基礎と応用−」66−69頁(1997年)を参照)などによって調製することができる。
【0040】
塩基性活性炭としては、吸着法(BET法)において、200〜4000m2/gの比表面積を有するものが好ましく、400〜3500m2/gの比表面積を有するものがより好ましい。
活性炭を構成する原料には特に制限はなく、例えば、椰子ガラ、合成樹脂、コークス、石油または石炭ピッチなどが挙げられる。
また、塩基性活性炭の形状にも特に制限はなく、例えば、粉末状、粒状、繊維状、成型体などの形態が挙げられる。
【0041】
パラジウムまたは白金の塩基性活性炭への担持は公知の方法で実施することができる(例えば、触媒学会編「触媒講座第5巻(工学編I)触媒設計」39〜83頁(1985年)などを参照)。例えば、塩基性活性炭を所望によりアンモニア水で処理した後、硝酸パラジウム水溶液中に浸漬して硝酸パラジウムを添着させ、次いで、洗浄して余分な硝酸パラジウムを除去し、乾燥した後に、水素還元によって添着した硝酸パラジウムを金属パラジウムに変換することにより実施することができる。
【0042】
パラジウムまたは白金の活性炭への担持量は、塩基性活性炭100重量部当たり、0.01〜35重量部の範囲内であることが好ましい。経済性、安全性、触媒の安定性、保存性などを考慮すれば、パラジウムまたは白金の活性炭への担持量は、塩基性活性炭100重量部当たり、0.1〜15重量部の範囲内であることがより好ましく、0.2〜10重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0043】
本発明におけるパラジウム触媒または白金触媒の使用量は、不飽和重合体100重量部に対して、0.001〜20重量部の範囲内であることが好ましい。経済性、反応速度などを考慮すれば、パラジウム触媒または白金触媒の使用量は、不飽和重合体100重量部に対して、0.01〜15重量部の範囲内であることがより好ましく、0.02〜10重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0044】
不飽和重合体の水素化は、溶媒の存在下で実施することが好ましい。使用できる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、オクタノール等のアルコール;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテルなどが挙げられる。これらの溶媒は1種類のものを使用してよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
溶媒の使用量としては、不飽和重合体を溶解し得る量であれば特に制限されるものではないが、溶媒100重量部に対して、不飽和重合体が0.1〜50重量部である割合が好ましく、反応の操作性、安全性、経済性を考慮すれば、溶媒100重量部に対して、不飽和重合体が1〜30重量部である割合がより好ましい。
【0045】
不飽和重合体の水素化は、塩基性物質の存在下に実施することができる。塩基性物質としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸マグネシウム、ブタン酸ナトリウム、ブタン酸カリウム、ブタン酸カルシウム、ブタン酸マグネシウム、アジピン酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、アジピン酸カルシウム、アジピン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウム、フタル酸カルシウム、フタル酸マグネシウム等の有機酸の塩;トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン等の有機塩基などが挙げられる。
塩基性物質の使用量としては、パラジウムまたは白金の1モル原子当たり、0.001〜100モルの範囲内であることが好ましく、反応効率、経済性、操作性などを考慮すれば、パラジウムまたは白金の1モル原子当たり、0.01〜80モルの範囲内であることがより好ましく、0.1〜20モルの範囲内であることがさらに好ましい。
【0046】
不飽和重合体の水素化における水素の圧力は、反応が進行する限り特に制限はないが、0.1〜5MPaの範囲内であることが好ましく、3MPa以下であることがより好ましい。
また、反応温度は、40〜140℃の範囲内であることが好ましく、60〜120℃の範囲内であることがより好ましい。
【0047】
本発明においては、水素化率は、水素化された重合体に要求される物性に応じて適宜決定することができるが、90〜100%であることが好ましく、水素化された重合体の耐候性などを考慮すれば、95〜100%であることがより好ましい。
ここで、水素化率とは、原料である不飽和重合体中のオレフィン性の炭素−炭素二重結合の総数に対する、水素化されたオレフィン性の炭素−炭素二重結合のモル分率を意味する。水素化率は、1H−NMRなどの公知の手段によって測定することができる。
【0048】
本発明では、水素化率を上記のように高くしても、水酸基または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基の切断は実質的に生じない。本発明では、通常、水素添加前の不飽和重合体における水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基の95モル%以上が残存する。また、反応条件を適宜調整することにより、水素添加前の不飽和重合体における水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基の98モル%以上が残存するようにすることも可能である。水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基の残存率は、1H−NMRなどの公知の手段によって測定することができる。
【0049】
本発明によって得られる水素化された重合体においては、水素化前の不飽和重合体における、水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基は、一般に水素化によって変化することはないが、反応条件により他の官能基に変換されても構わない。例えば、エポキシ基は水酸基に変換されてもよいし、エステル基はヒドロキシメチル基に変換されてもよい。また、ベンジルエーテルなどのエーテル基は水酸基に変換されてもよい。
さらに、水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基は、水素化の際に、加溶媒分解によって他の官能基に変換されてもよい。例えば、アシルオキシ基やシロキシ基は、水酸基に変換されてもよい。
上記でいう水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基の残存率は、このような変換を受けた官能基も含めて算出した値である。
【0050】
本発明による水素化された重合体の製造は、例えば、耐圧性容器中に不飽和重合体を入れ、次いで溶媒を加えて、不飽和重合体を溶媒に溶解させた後、得られた溶液に塩基性活性炭に担持されたパラジウムまたは塩基性活性炭に担持された白金および必要に応じて塩基性物質を添加し、容器内の雰囲気を窒素置換し、さらに水素置換した後、容器内に水素を供給して所定圧力に調節し、所定温度に設定することにより実施することができる。
【0051】
反応終了後、反応液からの水素化された重合体の分離は、重合体を溶液から単離する際の通常の単離精製操作により行うことができる。例えば、再沈殿、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチームストリッピング)などの公知の方法が採用される。
【0052】
なお、得られた水素化重合体は、所望により、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を、公知の方法に従って、他の官能基に変換してもよい。一例として、水酸基の保護基、アルデヒド基の保護基またはカルボキシル基の保護基を公知の手法に従って脱保護することが挙げられる。
【0053】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0054】
参考例1(塩基性活性炭に担持されたパラジウムの調製)
窒素雰囲気下、500℃で炭化処理した平均粒径3mmの椰子ガラ100gに5%水酸化カリウム水溶液100gを加え、オイルバス中で攪拌しながら6時間加熱して水を留去し、さらに200℃で3時間、窒素雰囲気下で乾燥して、水酸化カリウムが添着した炭化物103gを得た。得られた炭化物を賦活炉に入れた後、燃焼ガスを100ml/分の割合で流通させながら、200℃/hrの昇温速度で900℃まで昇温し、同温度で1時間保持して賦活した。窒素雰囲気下で室温に冷却した後、賦活炉から炭化物を取り出し、水10リットルで洗浄し、さらに200℃で8時間乾燥して、塩基性の表面を有する、BET比表面積が600m2/gである塩基性活性炭52gを得た。
上記で得られた塩基性活性炭50gに5%アンモニア水を加えて、室温で12時間攪拌した。活性炭を濾取した後、水2リットルで洗浄した。得られた活性炭に水100mlを加え、次いで、硝酸パラジウム5gを加えて室温で3時間攪拌した。活性炭を濾別し、水3リットルで洗浄し、200℃で8時間乾燥して硝酸パラジウムが添着した活性炭55gを得た。パラジウム添着活性炭55gおよびイソプロパノール500mlを内容積が1リットルのオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の雰囲気を水素で置換した後、水素圧:2MPa、流量:100ml/hrの水素気流下、140℃で8時間還元処理した。室温まで冷却した後、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、水200mlを加えた。活性炭を濾取し、水5リットルで洗浄して、パラジウム触媒94g(含水率:50重量%)を得た。得られたパラジウム触媒は、パラジウムが塩基性の活性炭に担持されたものである。パラジウムの担持量は4.8重量%であった。
【0055】
参考例2(片末端に水酸基を有するポリブタジエンの調製)
攪拌機および温度計を装着した内容積が1リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン330gを取り、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換した。sec−ブチルリチウムのヘキサン溶液(濃度:10.5重量%)12gを加え、系内を50℃に昇温した後、1,3−ブタジエン85.5gを1時間かけて添加し、重合反応を行った。50℃でさらに1時間攪拌した後、エチレンオキシド1gを添加して重合反応を終了した。反応液を室温まで冷却した後、メタノール0.6gを添加して反応を完全に停止し、次いで酢酸0.3gを添加した。得られた反応液に水100gを添加して静置し、有機層を取得した。有機層を水洗した後、溶媒を減圧下に留去して、数平均分子量が4000の、片末端に水酸基を有するポリブタジエン82.2gを得た。
【0056】
実施例1
参考例2で得られた片末端に水酸基を有するポリブタジエン20gをトルエン200gに溶解し、得られた溶液を攪拌器、温度計および水素導入管を装着した内容積が1リットルのオートクレーブに窒素雰囲気下で仕込み、次いで参考例1で得られたパラジウム触媒0.1gを窒素雰囲気下に加えた後、オートクレーブ内の雰囲気を水素で置換した。反応混合物の温度を100℃に昇温し、水素を供給することによって水素圧を2MPa(ゲージ圧)に維持した状態で、5時間水素化反応を行った。反応混合物を室温まで冷却し、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換して常圧とした後、触媒を濾別した。得られた濾液を2リットルのメタノール中に投入し、水素化ポリブタジエン18.9gを得た。500MHzの1H−NMRスペクトル(溶媒:CDCl3、測定温度:30℃)に基づいて、水素化率が99%以上であり、水酸基の残存率が95%であることを確認した。
【0057】
比較例1
実施例1において、参考例1で得られたパラジウム触媒0.1gに代えて市販のパラジウムカーボン〔5%Pd E106NN/w(商品名、デグッサ・ジャパン製)〕0.1gを使用したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、参考例2で得られた片末端に水酸基を有するポリブタジエン20gから、水素化されたポリブタジエン18.4gを得た。500MHzの1H−NMRスペクトルに基づいて、水素化率が82%であり、水酸基の残存率が81%であることを確認した。
【0058】
比較例2
実施例1において、参考例1で得られたパラジウム触媒0.1gに代えて市販のラネーニッケル〔B111w(商品名、デグッサ・ジャパン製)〕0.1gを使用したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、参考例2で得られた片末端に水酸基を有するポリブタジエン20gから、水素化されたポリブタジエン17.4gを得た。500MHzの1H−NMRスペクトルに基づいて、水素化率が52%であり、水酸基残存率が84%であることを確認した。
【0059】
実施例2
実施例1において、水素化反応における水素の圧力を1.5MPaとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、参考例2で得られた片末端に水酸基を有するポリブタジエン20gから、水素化されたポリブタジエン18.4gを得た。500MHzの1H−NMRスペクトルに基づいて、水素化率が99%以上であり、水酸基残存率が97%以上であることを確認した。
【0060】
比較例3
比較例1において、水素化反応における水素の圧力を1.5Mpaとしたこと以外は比較例1と同様の操作を行い、参考例2で得られた片末端に水酸基を有するポリブタジエン20gから、水素化されたポリブタジエン18.3gを得た。500MHzの1H−NMRスペクトルに基づいて、水素化率が78%であり、水酸基残存率が82%であることを確認した。
【0061】
実施例3
実施例1において、片末端に水酸基を有するポリブタジエン20gに代えて、両末端に水酸基を有するポリブタジエン〔ニッソーPB G−1000(商品名、日本曹達(株)社製);数平均分子量:1500〕20gを使用したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、18gの水素化ポリブタジエンを得た。500MHzの1H−NMRスペクトルに基づいて、水素化率が99%以上であり、水酸基の残存率が97%以上であることを確認した。
【0062】
比較例4
実施例3において、触媒として市販のパラジウムカーボン〔5%Pd E106NN/w(商品名、デグッサ・ジャパン製)〕0.1gを使用したこと以外は実施例3と同様の操作を行うことによって、両末端に水酸基を有するポリブタジエン(ニッソーPB G−1000)20gの水素化反応を実施し、17.8gの水素化ポリブタジエンを得た。500MHzの1H−NMRスペクトルに基づいて、水素化率が67%であり、水酸基残存率が77%であることを確認した。
【0063】
実施例4
米国特許第6,153,714号明細書の実施例1に記載された方法に準じて調製した、数平均分子量(Mn)が40,000、重量平均分子量(Mw)が120,000であるポリ(5−シクロオクテン−1,2−ジオール)の4gをテトラヒドロフラン70gおよびメタノール60gの混合溶媒に溶解して得られた溶液を、窒素雰囲気下に、水素ガス導入管、温度計および攪拌機を装着した内容積が300mlのオートクレーブに仕込み、次いで、参考例1で得られたパラジウム触媒40mgを窒素雰囲気下に添加した。次いで、オートクレーブ内の雰囲気を水素で3回置換した後、水素圧を4MPa(ゲージ圧)とし、攪拌しつつ、反応混合物の温度を30分かけて室温から100℃まで昇温した。水素を供給することによって水素圧を4MPa(ゲージ圧)に維持した状態で、4時間水素化反応を行った。室温まで冷却した後、反応混合物を取り出し、パラジウム触媒を濾別した。濾液をメタノール300ml中に投入し、水素化された重合体3.9gを回収した。500MHzの1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、測定温度:85℃)に基づいて、水素化率が99%以上であり、水酸基残存率が95モル%であることを確認した。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を損なうことなく不飽和重合体を水素化し、工業的に有利に水素化された重合体を製造できる方法が提供される。
Claims (1)
- オレフィン性の炭素−炭素二重結合と水酸基および/または水酸基もしくはヒドロキシメチル基に転換可能な官能基を有する重合体を、塩基性活性炭に担持されたパラジウムまたは塩基性活性炭に担持された白金の存在下に水素化することを特徴とする水素化された重合体の製造方法。
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