JP3691748B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の操舵装置に関し、特に走行中にタイヤと路面との間の水膜によって発生するハイドロプレーン状態時における車両の舵取り制御に対してハイドロプレーン対策制御を行う車両の操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両がハイドロプレーン状態になると、前輪が水膜に浮いた状態となることから、操舵が効かない状態になる。そこで、特開平11−227623号公報では、ステアリングホイールと転舵車輪との間にステアリングギヤ比を可変する手段を介在させ、車両の状態、例えば車速に応じてステアリングギヤ比を制御する操舵制御装置において、ハイドロプレーン状態を検出するとステアリングギヤ比の変更を禁止する技術が開示されている。該公報では、車両がハイドロプレーン状態となり、実際の車速と異なる車速信号が制御器に入力されても、伝達比可変制御が禁止されることから、車輪の転舵角が急変することなく車両の挙動が乱れることを防止できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような操舵制御装置では、ハイドロプレーン状態が検出された時点におけるステアリングギヤ比が固定されるため、必ずしも該時点の走行状態における望ましいステアリングギヤ比に設定されているとは限らず、運転者がハンドル操作を行っている最中にハイドロプレーン状態から脱した場合、車両が不安定挙動に陥ることを抑制できないことがあった。また、上記公報で開示された操舵制御装置は、ステアリングホイールの中立位置を検出するごとにステアリングギヤ比を現在の走行状態にあったものに徐々に変更するものである。このため、緩いカーブを走行中にハイドロプレーン状態になると、望ましいステアリングギヤ比に変更することができず、車両が不安定挙動に陥ることを抑制することができなかった。
【0004】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、ハイドロプレーン状態になるとステアリングバイワイヤにおける舵取り制御の制御量を小さくして、運転者がステアリングの操作を行っても実際の前輪舵角の制御を抑制することにより、ハイドロプレーン状態解消時における車両の不安定状態を回避することができる車両用操舵装置を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る車両用操舵装置は、運転者によって操作される操舵部と、該操舵部に対する操作に応じて車輪の舵取りを行う舵取り機構部とを備える車両用操舵装置において、
上記操舵部に対する操舵量の検出を行う操舵量検出部と、
上記舵取り機構部で行われた舵取り量の検出を行う舵取り量検出部と、
車両のハイドロプレーン状態の検出を行うハイドロプレーン検出部と、
上記操舵量検出部で検出された操舵量から算出した目標舵取り量と該舵取り量検出部で検出された舵取り量が一致するように、上記舵取り機構部に対する舵取り制御量を算出して動作制御を行う舵取り機構制御部と、
を備え、
上記舵取り機構制御部は、ハイドロプレーン検出部でハイドロプレーン状態が検出されると、該検出時に操舵量検出部で検出された操舵量を操舵量基準値とすると共に該検出時に舵取り量検出部で検出された舵取り量を舵取り量基準値として、上記操舵量検出部で検出された操舵量と該操舵量基準値との偏差から目標舵取り量を算出し、上記舵取り量検出部で検出された舵取り量と上記舵取り量基準値との偏差が該算出した目標舵取り量になるように舵取り制御量を算出して上記舵取り機構部の動作制御を行うものである。
【0007】
また、上記舵取り機構制御部は、ハイドロプレーン検出部でハイドロプレーン状態が検出されている間、目標舵取り量を通常よりも小さく算出するようにしてもよい。
【0008】
また、上記舵取り機構制御部は、ハイドロプレーン検出部でハイドロプレーン状態が検出されている間、舵取り制御量を通常よりも小さく算出するようにしてもよい。
【0009】
一方、上記舵取り機構制御部は、ハイドロプレーン検出部でハイドロプレーン状態が検出された後、ハイドロプレーン状態が解消されたことが検出されると共に、操舵量検出部で検出された操舵量が上記操舵量基準値に一致するか、及び/又は舵取り量検出部で検出された舵取り量が舵取り量基準値に一致すると、目標舵取り量及び舵取り制御量を通常の方法で算出するようにしてもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態における車両用操舵装置の例を示した図である。図1において、車両用操舵装置は、左右前輪4a,4bに該ステアリングホイール1を機械的に連結することなくステアリングギヤ3によって舵角が変化するように、ステアリングホイール1の回転操作に応じて駆動される操舵用アクチュエータMの動きを左右前輪4a,4bに伝達するものである。該操舵用アクチュエータMは、例えば公知のブラシレスモータ等の電動モータで構成されている。
【0011】
ステアリングギヤ3は、操舵用アクチュエータMにおける出力シャフトの回転運動をステアリングロッド7の直線運動に変換する運動変換機構を有する。ステアリングロッド7の動きは、タイロッド8とナックルアーム9を介して左右前輪4a,4bに伝達される。
【0012】
なお、ステアリングギヤ3は公知のものを用いることができ、操舵用アクチュエータMの動きにより舵角を変更できればその構成を限定するものではない。例えば操舵用アクチュエータMの出力シャフトにより回転駆動されるナットと、該ナットに螺合してステアリングロッド7に一体化されるスクリューシャフトとを有するものによって構成するようにしてもよい。また、操舵用アクチュエータMが駆動されていない状態では、左右前輪4a,4bがセルフアライニングトルクによって直進操舵位置に復帰できるようにホイールアラインメントが設定されている。
【0013】
ステアリングホイール1は、車体側に回転可能に支持された回転シャフト10に連結され、ステアリングホイール1を操作するのに必要とする操作反力を作用させるため、回転シャフト10にトルクを付加する反力アクチュエータRが設けられている。該反力アクチュエータRは、例えば回転シャフト10と一体の出力シャフトを有するブラシレスモータ等の電動モータによって構成されている。
【0014】
更に、ステアリングホイール1を直進操舵位置に復帰させる方向の弾力を付与する弾性部材30が設けられており、該弾性部材30は、例えば、回転シャフト10に弾力を付与する渦巻きバネで構成されている。反力アクチュエータRが回転シャフト10にトルクを付加していないときは、弾性部材30の弾力によってステアリングホイール1は直進操舵位置に復帰する。
【0015】
一方、ステアリングホイール1の操舵量δhとして回転シャフト10の回転角に対応した操舵角を検出する角度センサ11が設けられると共に、ステアリングホイール1の操作トルクTとして回転シャフト10によって伝達されるトルクを検出するトルクセンサ12が設けられている。更に、操舵輪である前輪の舵取り量δとしてステアリングロッド7の作動量を検出する舵角センサ13が設けられ、該舵角センサ13はポテンショメータ等によって構成されている。
【0016】
角度センサ11、トルクセンサ12及び舵角センサ13は、コンピュータ等で構成されたステアリング系制御装置20にそれぞれ接続されている。更に、ステアリング系制御装置20には、車両の横加速度を検出する横加速度センサ15と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ16と、車速を検出する速度センサ14がそれぞれ接続されている。ステアリング系制御装置20は、駆動回路22及び23を介して操舵用アクチュエータMと反力アクチュエータRの制御を行う。
【0017】
操舵用アクチュエータMは、ステアリング系制御装置20から与えられる動作指令信号に応じた駆動回路22からの通電により駆動される。また、反力アクチュエータRは、ステアリング系制御装置20から与えられる動作指令信号に応じた駆動回路23からの通電により正逆両方向に駆動され、回転シャフト10の一端に取り付けられたステアリングホイール1に、その操作方向と逆方向の力(反力)を付与する動作をなす。
【0018】
また、車両の前後左右車輪4a〜4dを制動するための制動システムが設けられており、該制動システムは、ブレーキペダル51の踏力に応じた制動用油圧をマスターシリンダ52によって発生させる。該制動用油圧は、制動用油圧制御ユニットBにより増幅されて各車輪4a〜4dに対応して設けられたブレーキ装置54a〜54dにそれぞれ分配され、各ブレーキ装置54a〜54dは、対応する各車輸4a〜4dに対して制動力をそれぞれ作用させる。
【0019】
制動用油圧制御ユニットBは、コンピュータ等で構成された走行系制御装置60に接続され、該走行系制御装置60には、ステアリング系制御装置20と、車輪4a〜4dの対応する制動用油圧を検出する制動圧センサ61a〜61dと、各車輪4a〜4dの対応する回転速度を検出する車輪速度センサ62a〜62dとがそれぞれ接続されている。
【0020】
該走行系制御装置60は、車輪速度センサ62a〜62dによって検知される車輪4a〜4dの各回転速度と、制動圧センサ61a〜61dによる各フィードバック値とに応じて、制動用油圧を増幅して分配することができるように制動用油圧制御ユニットBの制御を行う。このことから、各車輪4a〜4dのそれぞれの制動力を個別に制御することができる。また、制動用油圧制御ユニットBは、ブレーキペダル51の操作がなされていない場合でも、走行系制御装置60からの制動用油圧指示信号に応じて、内蔵するポンプにより制動用油圧を発生させる。
【0021】
更に、走行系制御装置60には、車両の走行系動力発生用エンジンにおけるスロットルバルブ駆動用アクチュエータEが接続されている。該アクチュエータEは、走行系制御装置60からの信号によって駆動され、スロットルバルブの開度を変更することによってエンジン出力の制御を行う。
【0022】
次に、図2は、図1のステアリング系制御装置20の構成例を示した概略のブロック図であり、図2を用いてステアリング系制御装置20の動作について説明する。なお、図2では、操舵用アクチュエータMに対する動作制御を行う構成のみを示しており、その他の構成は省略している。
図2において、ステアリング系制御装置20は、車両のハイドロプレーン状態の検出を行うハイドロプレーン検出部71と、該ハイドロプレーン検出部71の検出結果に応じて駆動回路22を介して舵取り機構を構成する操舵用アクチュエータMの制御を行う舵取り機構制御部72とを備えている。
【0023】
ハイドロプレーン検出部71は、各車輪速度センサ62a〜62dから得られる各車輪の車輪速度における前輪と後輪の車輪速度差から公知の方法で車両のハイドロプレーン状態の検出を行う。舵取り機構制御部72は、角度センサ11から得られる操舵量δhを用いて目標舵取り量δhtを算出すると共に該算出した目標舵取り量δhtと舵角センサ13から得られる舵取り量δが一致するように駆動回路22を介して操舵用アクチュエータMの制御を行う。また、舵取り機構制御部72は、ハイドロプレーン検出部71の検出結果に応じて操舵用アクチュエータMに対して行う制御に関するパラメータを変える。
【0024】
このような構成において、舵取り機構制御部72は、ハイドロプレーン検出部71によって車両のハイドロプレーン状態が検出されていない場合は、下記(1)式を用いて目標舵取り量δhtを算出する。
δht=C1×δh………………(1)
なお、上記(1)式において、C1は、目標舵取り量δhtを算出するための変換係数である。
【0025】
更に、舵取り機構制御部72は、上記(1)式で算出した目標舵取り量δhtから下記(2)式を用いて舵取り制御量δcを算出する。
δc=C2×(δht−δ)………………(2)
なお、上記(2)式において、C2は、目標舵取り量δhtと舵角センサ13から得られる舵取り量δとの偏差を舵取り制御量δcに変換するための変換係数である。
【0026】
このようにして、舵取り機構制御部72は、算出した舵取り制御量δcに基づいて駆動回路22を介して操舵用アクチュエータMの動作制御を行い、舵取り量δが目標舵取り量δhtになるように駆動回路22を介して操舵用アクチュエータMの動作制御を行う。
【0027】
これに対して、舵取り機構制御部72は、ハイドロプレーン検出部71によって車両のハイドロプレーン状態が検出されると、そのときの角度センサ11から得られる操舵量δhを操舵量基準値δh0とすると共に舵角センサ13から得られる舵取り量δを舵取り量基準値δ0とする。また、この時点での舵取り制御量(前回のサイクルの計算値)δcを舵取り制御量基準値δc0とする。更に、舵取り機構制御部72は、下記(3)式を用いて目標舵取り量δhtを算出する。
δht=K1×C1×(δh−δh0)………………(3)
なお、上記(3)式において、ゲイン定数K1は、0≦K1<1であり、ハイドロプレーン状態検出時に目標舵取り量δhtの算出値を小さくするための定数である。
【0028】
更に、舵取り機構制御部72は、上記(3)式で算出した目標舵取り量δhtから下記(4)式を用いて舵取り制御量δcを算出する。
δc=C2×{δht−(δ−δ0)}+δc0………………(4)
【0029】
このように、舵取り機構制御部72は、ハイドロプレーン検出部71でハイドロプレーン状態が検出されると、該検出されたときの操舵量δh及び舵取り量δをそれぞれ基準値δh0及びδ0とし、ハイドロプレーン状態が検出されている間は、操舵量δhと操舵量基準値δh0との偏差Δδhを操舵量とし、該操舵量にゲイン定数K1及び変換係数C1をかけて目標舵取り量δhtを小さく算出する。更に、舵取り機構制御部72は、ハイドロプレーン状態が検出されている間は、舵取り量δと舵取り量基準値δ0との偏差Δδを舵取り量とし、ゲイン定数K1をかけて小さく算出した目標舵取り量δhtと該偏差Δδとの偏差に変換係数C2をかけた値に舵取り制御量基準値δc0を加算し、舵取り制御量δcを算出する。
【0030】
次に、ハイドロプレーン検出部71でハイドロプレーン状態が検出されなくなると、舵取り機構制御部72は、操舵量δhが操舵量基準値δh0に、舵取り量δが舵取り量基準値δ0に共になっていない場合、上記(3)式を用いて目標舵取り量δhtを算出する。更に、舵取り機構制御部72は、該(3)式で算出した目標舵取り量δhtを使用して上記(4)式から舵取り制御量δcを算出する。一方、舵取り機構制御部72は、ハイドロプレーン検出部71でハイドロプレーン状態が検出されなくなり、δh=δh0又はδ=δ0である場合、上記(1)式及び(2)式を用いて舵取り制御量δcの算出を行う。
【0031】
図3及び図4は、図2で示した舵取り機構制御部72の動作例を示したフローチャートであり、図3及び図4を用いて舵取り機構制御部72の動作の流れについてもう少し詳細に説明する。
図3において、ハイドロプレーン検出部71は、車輪速度センサ62a〜62dから車輪4a〜4dの各回転速度を取り込み、舵取り機構制御部72は、角度センサ11から操舵量δhの検出値を、舵角センサ13から舵取り量δの検出値をそれぞれ取り込む(ステップS1)。
【0032】
次に、ハイドロプレーン検出部71は、各車輪の車輪速度から車両のハイドロプレーン状態の検出を行って該検出結果を舵取り機構制御部72に出力する(ステップS2)。舵取り機構制御部72は、ハイドロプレーン検出部71からの検出結果から車両がハイドロプレーン状態であるか否かを調べ(ステップS3)、ハイドロプレーン状態でない場合(NO)、舵取り機構制御部72は、操舵量基準値δh0及び舵取り量基準値δ0がそれぞれ設定済みであるか否かを調べる(ステップS4)。操舵量基準値δh0及び舵取り量基準値δ0がそれぞれ設定済みでない場合(NO)、舵取り機構制御部72は、上記(1)式を用いて目標舵取り量δhtを算出し(ステップS5)、該算出した目標舵取り量δhtを用いて上記(2)式から舵取り制御量δcを算出して(ステップS6)、ステップS1に戻る。
【0033】
また、ステップS3で、車両がハイドロプレーン状態である場合(YES)、舵取り機構制御部72は、車両がハイドロプレーン状態となってから最初の処理か否か、すなわち車両がハイドロプレーン状態となってから最初の処理であることを示すフラグfがリセットされているか否かを調べる(ステップS7)。ハイドロプレーン状態となってから最初の処理でない場合、すなわちフラグfがセットされている場合(NO)、舵取り機構制御部72は、上記(3)式を用いて目標舵取り量δhtを算出し(ステップS8)、該算出した目標舵取り量δhtを用いて上記(4)式から舵取り制御量δcを算出して(ステップS9)、ステップS1に戻る。
【0034】
また、ステップS7で、ハイドロプレーン状態となってから最初の処理である場合、すなわちフラグfがリセットされている場合(YES)、舵取り機構制御部72は、角度センサ11から得られる操舵量δhを操舵量基準値δh0とすると共に舵角センサ13から得られる舵取り量δを舵取り量基準値δ0とし、またその時点の舵取り制御量(前回のサイクルの計算値)δcを舵取り制御量基準値δc0として、フラグfをセットする(ステップS10)。この後、ステップS8及びステップS9の処理を行ってステップS1に戻る。
【0035】
一方、ステップS4で、操舵量基準値δh0、舵取り量基準値δ0及び舵取り制御量基準値δc0がそれぞれ設定済みである場合(YES)、図4のステップS11に進む。図4において、舵取り機構制御部72は、δh=δh0又はδ=δ0であるか否かを調べ(ステップS11)、δh=δh0又はδ=δ0である場合(YES)、上記(1)式を用いて目標舵取り量δhtを算出し(ステップS12)、上記(2)式を用いて舵取り制御量δcを算出する(ステップS13)。この後、舵取り機構制御部72は、操舵量基準値δh0、舵取り量基準値δ0及び舵取り制御量基準値δc0をそれぞれゼロに設定すると共にフラグfをリセットして(ステップS14)、図3のステップS1に戻る。
【0036】
また、ステップS11で、δh≠δh0であると共にδ≠δ0である場合(NO)、舵取り機構制御部72は、上記(3)式を用いて目標舵取り量δhtを算出し(ステップS15)、上記(4)式を用いて舵取り制御量δcを算出して(ステップS16)、図3のステップS1に戻る。
【0037】
ここで、上記説明ではハイドロプレーン状態時には、目標舵取り量δhtが小さくなるように算出する場合を例にして説明したが、舵取り制御量δcが小さくなるように算出するようにしてもよい。このようにした場合の相違点は、ハイドロプレーン検出部71が車両のハイドロプレーン状態を検出すると、舵取り機構制御部72は、下記(5)式を用いて目標舵取り量δhtを算出し、更に、下記(5)式で算出した目標舵取り量δhtから下記(6)式を用いて舵取り制御量δcを算出することになる。
【0038】
δht=C1×(δh−δh0)………………(5)
δc=K2×C2×{δht−(δ−δ0)}+δc0………………(6)
なお、上記(6)式において、ゲイン定数K2は、0≦K2<1であり、ハイドロプレーン状態検出時に舵取り制御量δcの算出値を小さくするための定数である。
【0039】
図5及び図6は、ハイドロプレーン状態時に、舵取り制御量δcが小さくなるように算出する場合の舵取り機構制御部72の動作例を示したフローチャートであり、図5及び図6では、図3及び図4と同じ処理を行うフローは同じ符号で示しており、ここではその説明を省略すると共に図3及び図4との相違点のみ説明する。
図5における図3との相違点は、図3のステップS8をステップS21に、図3のステップS9をステップS22にそれぞれ置き換えたことにある。また、図6における図4との相違点は、図4のステップS15をステップS23に、図4のステップS16をステップS24にそれぞれ置き換えたことにある。
【0040】
図5において、図3のステップS7で、フラグfがセットされている場合(NO)、舵取り機構制御部72は、上記(5)式を用いて目標舵取り量δhtを算出し(ステップS21)、該算出した目標舵取り量δhtを用いて上記(6)式から舵取り制御量δcを算出して(ステップS22)、ステップS1に戻る。また、図3のステップS10の処理を行った後、ステップS21及びステップS22の処理を行ってステップS1に戻る。
【0041】
次に、図6において、ステップS11で、δh≠δh0であると共にδ≠δ0である場合(NO)、舵取り機構制御部72は、上記(5)式を用いて目標舵取り量δhtを算出し(ステップS23)、上記(6)式を用いて舵取り制御量δcを算出して(ステップS24)、図5のステップS1に戻る。このようにすることによって、ハイドロプレーン状態時に目標舵取り量δhtが小さくなるように算出するようにした場合と同様の効果を得ることができる。
【0042】
このように、本実施の形態における車両用操舵装置は、ハイドロプレーン検出部71で車両のハイドロプレーン状態を検出すると、舵取り機構制御部72は、この時の操舵量δhを操舵量基準値δh0に舵取り量δを舵取り量基準値δ0とし、目標舵取り量δhtを角度センサ11から得られた操舵量δhと操舵量基準値δh0との偏差から算出すると共に舵取り制御量δcを舵角センサ13から得られた舵取り量δと舵取り量基準値δ0との偏差から算出し、該目標舵取り量δht又は舵取り制御量δcが通常よりも小さくなるように算出するようにした。このことから、車両のハイドロプレーン状態時に運転者がステアリングの操作を行っても実際の前輪舵角の制御を抑制することができ、ハイドロプレーン状態解消時における車両の不安定状態を回避することができる。
【0043】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、本発明の車両用操舵装置によれば、ハイドロプレーン検出部の検出結果に応じて、上記目標舵取り量及び上記舵取り機構部に対する舵取り制御量を算出するようにした。このことから、車両のハイドロプレーン状態時に運転者がステアリングの操作を行っても実際の前輪舵角の制御を抑制することができ、ハイドロプレーン状態解消時における車両の不安定状態を回避することができる。
【0044】
具体的には、ハイドロプレーン検出部で車両のハイドロプレーン状態が検出されると、舵取り機構制御部は、この時の操舵量を操舵量基準値δh0に舵取り量を舵取り量基準値δ0とし、目標舵取り量を操舵量検出部で検出された操舵量と操舵量基準値との偏差から算出すると共に舵取り制御量を舵取り量検出部で検出された舵取り量と舵取り量基準値との偏差から算出するようにした。このことから、緩いカーブを走行中にハイドロプレーン状態になった場合においても、望ましいステアリングギヤ比に変更することができ、車両が不安定挙動に陥ることを抑制することができる。
【0045】
また、ハイドロプレーン検出部でハイドロプレーン状態が検出されている間、目標舵取り量を通常よりも小さく算出するようにしたことから、車両のハイドロプレーン状態時に運転者がステアリングの操作を行っても実際の前輪舵角の制御を抑制することができる。
【0046】
また、ハイドロプレーン検出部でハイドロプレーン状態が検出されている間、舵取り制御量を通常よりも小さく算出するようにしてもよく、このようにすることによって、車両のハイドロプレーン状態時に運転者がステアリングの操作を行っても実際の前輪舵角の制御を抑制することができる。
【0047】
更に、ハイドロプレーン状態が解消されたことが検出され、操舵量検出部で検出された操舵量が上記操舵量基準値に一致するか、及び/又は舵取り量検出部で検出された舵取り量が舵取り量基準値に一致すると、目標舵取り量及び舵取り制御量を通常の方法で算出するようにした。このことから、ハイドロプレーン状態解消後に、急激に舵取り量が変化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態における車両用操舵装置の例を示した図である。
【図2】 図1のステアリング系制御装置20の構成例を示した概略のブロック図である。
【図3】 図2で示した舵取り機構制御部72の動作例を示したフローチャートである。
【図4】 図2で示した舵取り機構制御部72の動作例を示したフローチャートである。
【図5】 図2で示した舵取り機構制御部72の他の動作例を示したフローチャートである。
【図6】 図2で示した舵取り機構制御部72の他の動作例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール(操舵部)
4a〜4d 車輪
11 角度センサ(操舵量検出部)
13 舵角センサ(舵取り量検出部)
20 ステアリング系制御装置
22,23 駆動回路
62a〜62d 車輪速度センサ
71 ハイドロプレーン検出部
72 舵取り機構制御部
R 反力アクチュエータ
M 操舵用アクチュエータ
Claims (4)
- 運転者によって操作される操舵部と、該操舵部に対する操作に応じて車輪の舵取りを行う舵取り機構部とを備える車両用操舵装置において、
上記操舵部に対する操舵量の検出を行う操舵量検出部と、
上記舵取り機構部で行われた舵取り量の検出を行う舵取り量検出部と、
車両のハイドロプレーン状態の検出を行うハイドロプレーン検出部と、
上記操舵量検出部で検出された操舵量から算出した目標舵取り量と該舵取り量検出部で検出された舵取り量が一致するように、上記舵取り機構部に対する舵取り制御量を算出して動作制御を行う舵取り機構制御部と、
を備え、
上記舵取り機構制御部は、ハイドロプレーン検出部でハイドロプレーン状態が検出されると、該検出時に操舵量検出部で検出された操舵量を操舵量基準値とすると共に該検出時に舵取り量検出部で検出された舵取り量を舵取り量基準値として、上記操舵量検出部で検出された操舵量と該操舵量基準値との偏差から目標舵取り量を算出し、上記舵取り量検出部で検出された舵取り量と上記舵取り量基準値との偏差が該算出した目標舵取り量になるように舵取り制御量を算出して上記舵取り機構部の動作制御を行うことを特徴とする車両用操舵装置。 - 上記舵取り機構制御部は、ハイドロプレーン検出部でハイドロプレーン状態が検出されている間、上記目標舵取り量を通常よりも小さく算出することを特徴とする請求項1記載の車両用操舵装置。
- 上記舵取り機構制御部は、ハイドロプレーン検出部でハイドロプレーン状態が検出されている間、上記舵取り制御量を通常よりも小さく算出することを特徴とする請求項1記載の車両用操舵装置。
- 上記舵取り機構制御部は、ハイドロプレーン検出部でハイドロプレーン状態が検出された後、ハイドロプレーン状態が解消されたことが検出されると共に、操舵量検出部で検出された操舵量が上記操舵量基準値に一致するか、及び/又は舵取り量検出部で検出された舵取り量が上記舵取り量基準値に一致すると、上記目標舵取り量及び舵取り制御量を通常の方法で算出することを特徴とする請求項1、2又は3記載の車両用操舵装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2000332430A JP3691748B2 (ja) | 2000-10-31 | 2000-10-31 | 車両用操舵装置 |
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