JP3685216B2 - 窒化チタン薄膜の作成方法及び薄膜デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、各種半導体デバイスや各種センサー等のデバイスに使用される窒化チタン薄膜の作成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ロジックやメモリ等の各種半導体デバイスや光センサー等の各種センサーの構造には、従来より窒化チタン薄膜が使用されている。例えば、LSI(大規模集積回路)では、上層の金属と下層の金属との合金化等を防止するバリアメタルとして窒化チタン薄膜を介在させた構造が採用されることがある。
【0003】
このような窒化チタン薄膜は、従来スパッタ法により作成されていたが、ステップカバレッジの問題から最近では化学的気相成長(CVD)法により作成することが提案されている。即ち、例えば64メガビットを越えるDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出し型メモリ)の設計ルールはほぼ3.5μm以下となり、コンタクトホールのアスペクト比(溝又は孔の深さ/溝又は孔の幅)は4もしくはそれ以上にまで達している。従来のスパッタ法では、ステップカバレッジ特性が悪く充分なコンタクトホールの電気特性が得られないため、CVD法によって均一な窒化チタン薄膜をステップカバレッジ性良く作成することが研究されている。
【0004】
このCVD法による窒化チタン薄膜の作成方法として、テトラキスジアルキルアミノチタンのようなチタンを含む有機金属化合物ガスを使用する構成が研究されている。
例えば、Raajimakerは、Thin solid films,247(1994)85 やその引用文献において、テトラキスジエチルアミノチタン(TDEAT)やテトラキスジメチルアミノチタン(TDMAT)を使用したCVD法による窒化チタン薄膜の作成例が報告されている。また、この報告では、アンモニアガスの添加によって、比抵抗が数千μオームまで低下するとされている。
【0005】
尚、テトラキスジアルキルアミノチタンを厳密に分類すると、金属チタンと炭化水素基との間に窒素の結合が存在するので、金属と炭化水素基とが直接結合した有機金属化合物ではないが、本明細書中では広く解釈し、テトラキスジアルキルアミノチタンも有機金属化合物に含める。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような従来の窒化チタン薄膜の作成では、以下のような問題がある。
まず第一に、成膜した基板を大気圧雰囲気中に戻した際、大気中の酸素が窒化チタン薄膜内に拡散し、経時的に比抵抗が増大する問題がある。このような経時的な比抵抗の増大を防止するためには、成膜後にパシベーション(表面不働態化)を行う必要がある。パシベーションは、例えば成膜後に薄膜をアンモニア雰囲気に晒して高温に維持するアニール法等が採用されるが、成膜後の工程が増えるため、生産性が低下する問題がある。
本願の発明の第一の目的は上記問題を解決することであり、経時的な比抵抗の増大を防止するパシベーションを成膜後に別途行うことを不要にし、生産性の高い窒化チタン薄膜及びその作成方法を提供することを目的とする。
【0007】
次に、従来の成膜方法の第二の問題として、上述の文献のように比抵抗を低下させるためアンモニアガスを添加した場合、ステップカバレッジ特性が低下する傾向がある。このため、アスペクト比が年々増大する集積回路用の薄膜としては好ましくなく、比抵抗の小さい薄膜が作成できるとしても、64メガビット以上のDRAM等では実用化が困難である。
本願の発明の第二の目的は上記問題を解決することであり、比抵抗の小さい窒化チタン薄膜を高いステップカバレッジ特性で得ることができる成膜方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記第一第二の目的の達成のため、本願の請求項1記載の発明は、チタンを含む有機金属化合物ガスと、作成される窒化チタン薄膜の比抵抗を減少させる添加ガスとを使用して、化学的気相成長法により窒化チタン薄膜を作成する窒化チタン薄膜の作成方法であって、前記有機金属化合物ガスに対する前記添加ガスの流量を最初少ない第一の流量比とし、その後第一の流量比より大きい第二の流量比に増加させながら成膜を行う方法であり、
前記第一の流量比は、窒化チタン薄膜がアモルファスとなる値に設定され、前記第二の流量比は、窒化チタン薄膜が結晶化する流量比に設定されるという構成を有する。
同様に上記第一第二の目的の達成のため、請求項2記載の発明は、上記請求項1の構成において、窒化チタン薄膜は、溝又は孔が形成された対象物の表面に作成されるものであり、必要なステップカバレッジが得られるように、第一の流量比での成膜時間と第二の流量比での成膜時間とが決められているという構成を有する。
同様に上記第一第二の目的の達成のため、請求項3記載の発明は、チタンを含む有機金属化合物ガスと、作成される窒化チタン薄膜の比抵抗を減少させる添加ガスとを使用して、化学的気相成長法により窒化チタン薄膜を作成する窒化チタン薄膜の作成方法であって、成膜温度を最初低く第一の成膜温度とし、その後第一の成膜温度より高い第二の成膜温度に上昇させながら成膜を行う方法であり、
前記第一の成膜温度は、窒化チタン薄膜がアモルファスとなる値に設定され、前記第二の成膜温度は、窒化チタン薄膜が結晶化する流量比に設定されるという構成を有する。
同様に上記第一第二の目的の達成のため、請求項4記載の発明は、上記請求項3の構成において、窒化チタン薄膜は、溝又は孔が形成された対象物の表面に作成されるものであり、必要なステップカバレッジが得られるよう第一の成膜温度での成膜時間と第二の成膜温度での成膜時間とが決められているという構成を有する。
同様に上記第一第二の目的の達成のため、請求項5記載の発明は、上記請求項1,2,3又は4の構成において、前記チタンを含む有機金属化合物がテトラキスジアルキルアミノチタンであるという構成を有する。
同様に上記第一第二の目的の達成のため、請求項6記載の発明は、上記請求項1,2,3又は4の構成において、添加ガスがアンモニアガスであるという構成を有する。
同様に上記第一第二の目的の達成のため、請求項7記載の発明は、窒化チタン薄膜を有する薄膜デバイスであって、当該窒化チタン薄膜は、アモルファス状の第一層と、第一層よりも結晶化の度合いが進んだ結晶構造を有する第二層とから成り、第一層の上に第二層を積層した膜質構造を有しているという構成を有する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。
図1は、本願発明の窒化チタン薄膜の作成方法の実施に使用される成膜装置の一例を示したものであり、図1を使用しながら、本実施形態の方法について説明する。
図1に示す成膜装置は、排気系11を備えた反応容器1と、反応容器1内に配設された基板ホルダー2と、反応容器1内に所定のガスを導入するガス導入機構3等から主に構成されている。
【0010】
反応容器1はステンレス製であり、配管やゲートバルブ等の接続部分を除き気密に構成されている。排気系11には、回転ポンプやターボ分子ポンプ等を組み合わせたシステムが採用され、10-4Torr程度まで排気可能に構成される。反応容器1の外面には、反応容器1の温度を制御する容器用ヒータ12が配設されており、容器用ヒータ12には容器加熱用制御部13が設けられている。
【0011】
基板ホルダー2は、静電吸着機構等を使用して基板20を保持するよう構成されている。基板ホルダー2内には、基板20を所定の温度まで加熱するための基板用加熱機構21が配設されている。基板用加熱機構21には、基板加熱用制御部22が設けられており、所定の気相反応が生じるように基板20の温度を所定の温度に維持するよう構成される。基板ホルダー2には温度検出のための熱電対等の温度センサ23が設けられており、検出信号が基板加熱用制御部22に送られてフィードバック制御される。
【0012】
ガス導入機構3は、チタンを含む金属化合物としてのテトラキスジアルキルアミノチタン(TDAAT)を導入する第一のガス導入系31と、キャリアガスを導入する第二のガス導入系32と、添加ガスを導入する第三のガス導入系33とから構成されている。
【0013】
本実施形態では、TDAATとして、テトラキスジエチルアミノチタン(TDEAT)を使用している。TDEATは室温で固体であるため、第一のガス導入系31は気化器311を有している。気化器311は、液体の状態で運ばれたTDEATを所定の流量で気化させるよう構成されている。また、TDEATを溜めたタンク312と気化器311とをつなぐ配管上には液体流量調整器313が設けられており、気化器311に供給するTDEATの量を制御する。
【0014】
キャリアガスを導入する第二のガス導入系32の配管は、第一のガス導入系31の配管に接続されている。キャリアガスとしては、本実施形態では窒素ガスが採用される。また、第二のガス導入系32の配管には、気体流量調整器321が設けられている。尚、気化器311におけるTDEATの気化を助けるため、第一のガス導入系31の配管を気化器311に接続するようにしても良い。
第三のガス導入系33は、添加ガスとしてアンモニアガスを導入するよう構成されており、気体流量調整器331を有している。
【0015】
図1の装置は、装置全体の動作を制御する制御機構4を有している。制御機構4の制御信号は、容器加熱用制御部13、基板加熱用制御部22、液体流量調整器313、気体流量調整器321,331等にそれぞれ送られるよう構成されている。
【0016】
さて、図1に示す装置の動作を説明しながら、本実施形態の方法について説明する。
まず、不図示のゲートバルブを通して反応容器1内に基板20を搬入し、基板ホルダー2上に配置する。ゲートバルブを閉じて排気系11を動作させ、反応容器1内を1×10-4Torr程度まで排気する。また、基板ホルダー2内の基板用加熱機構21が動作して加熱温度を第一の成膜温度に調整し、基板20をこの程度の温度まで加熱する。同時に容器用ヒータ12も動作し、容器加熱用制御部13が反応容器1の温度を所定の温度に制御する。
【0017】
第一のガス導入系31の気化器311が予め動作しており、第一のガス導入系31のバルブ314を開けることにより、キャリアガスとしての窒素ガスに混合されたTDEATガスが反応容器1内に導入される。また、同時に第三のガス導入系33のバルブ332を開けて、添加ガスとしてのアンモニアを反応容器1内に導入する。
この際、制御機構4は、液体流量調整器313及び気体流量調整器331を制御して、TDEATに対するアンモニアとの流量比が所定の第一の流量比となるよう制御する。
導入されたTDEATは、反応容器1内での気相反応によって基板20の表面上に窒化チタンを析出し、窒化チタン薄膜が堆積する。この際、添加されたアンモニアの作用によって、堆積する窒化チタン薄膜の比抵抗が減少する。
【0018】
このようにして第一の成膜条件を所定時間行うと、制御機構4は、第二の成膜条件で連続して成膜が行われるよう装置全体を制御する。即ち、まず基板加熱用制御部22に信号を送り、第一の成膜温度より高い第二の成膜温度に基板20が加熱されるよう制御する。また、液体流量調整器313及び気体流量調整器331に制御信号を送り、TDEATに対するアンモニアの流量比が第一の流量比より大きな所定の第二の流量比になるよう制御する。尚、流量比と成膜温度のいずれか一方のみを変えた条件にしても良い。
このようにして第二の成膜条件で成膜が行われ、この条件で所定時間成膜を行うと、バルブ314,332を閉じ、基板20を反応容器1外に搬出する。これによって成膜が完了する。
【0019】
図2は、上述した実施形態の方法により作成した薄膜デバイスの断面構造を概略的に示したものである。
上述した異なる成膜条件での成膜を連続して行うと、図2に示すように、基板20上には、第一の成膜条件で成膜した第一層51の上に、第二の成膜条件で成膜した第二層52が積層された状態となる。この場合、適切な成膜温度及びガス流量比を選定することで、第一層51をアモルファス状バッファ層とし、第二層52をパシベーション改質層とすることを可能となる。この点をさらに詳しく説明する。
【0020】
表1は、本願発明の実施例の各成膜条件を示したものである。
【表1】
この条件で窒化チタン薄膜の作成を実際行い、第一の成膜条件により第一層51を600オングストロームの厚さで堆積させ、第二層52を300オングストロームの厚さで堆積させた。このようにして作成された窒化チタン薄膜の成膜直後の比抵抗は5000μΩcm程度であった。比較例として、同様な条件でアンモニアの流量をゼロにした場合(第一第二の成膜条件とも)、成膜直後の比抵抗は20000μΩcm程度であった。従って、まずアンモニアの添加の効果によって、成膜直後の比抵抗は75%程度減少したことが分かった。
【0021】
次に、表1の条件で作成した窒化チタン薄膜を24時間以上大気に露出させたところ、比抵抗の増加は100%程度であった。比較例として、第一の成膜条件のままで終始成膜を行った場合、24時間以上大気に露出させた後の比抵抗の増加は260%程度であった。このことから、表1に示す例では、経時的な比抵抗の増加は、第二の成膜条件の採用によって採用しない場合の1/3程度に抑えられることが分かった。
【0022】
このような経時的な比抵抗の増加の抑制即ちパシベーションの作用は、第二層52において、窒化チタン薄膜の結晶化が進んだことに起因するものと考えられる。即ち、薄膜が結晶構造を有する場合、アモルファス構造の場合に比べて酸素の拡散が困難になり、この結果、経時的な比抵抗の増加が抑制されるのである。尚、窒化チタン薄膜の結晶化は、成膜温度を上昇させることによっても進む。従って、第二の成膜条件を、添加ガスの流量比が同じで成膜温度のみを上昇させた条件としても良い。
【0023】
図3は、窒化チタン薄膜の結晶化を確認した実験の説明図であり、作成した窒化チタン薄膜のX線回折パターンを示した図である。
図3(a)は、TDEAT:7sccm,N2 :150sccm,NH3 :0sccm,成膜温度:300℃,圧力:50mTorrの条件で作成した窒化チタン薄膜のX線回折パターンを示している。この例では、窒化チタン結晶のピークは殆ど出現していない。これは、アンモニアの流量がゼロであることによると考えられる。
次に、図3(b)は、TDEAT:7sccm,N2 :150sccm,NH3 :150sccm,成膜温度:300℃,圧力:50mTorrの条件で作成した窒化チタン薄膜のX線回折パターンを示している。この例では、窒化チタン結晶のピーク(111)(200)(220)がそれぞれ出現しており、結晶化が進んだことを示している。これは、多量のアンモニアガスを添加したことの効果によるものだと考えられる。
さらに図3(c)は、TDEAT:7sccm,N2 :150sccm,NH3 :15sccm,成膜温度:400℃,圧力:50mTorrの条件で作成した窒化チタン薄膜のX線回折パターンを示している。この例では、窒化チタン結晶のピーク(111)(200)(220)がさらに強調されて出現している。これは、成膜温度を上昇させたことの効果によるものと考えられる。
図3(a)(b)(c)に示した結果から分かる通り、NH3 /TDEATが20を越える大きな流量比でアンモニアを添加したり、300℃を越える高い成膜温度で成膜を行ったりすると、窒化チタン薄膜の結晶化が進む。
【0024】
さて、上述のように、第一の成膜条件によってアモルファス状の第一層51を形成し、その上に、第二の成膜条件によって結晶状の第二層52を形成すると、成膜直後の比抵抗が小さく且つ経時的な比抵抗の増大も抑制された質の良い窒化チタン薄膜の作成が可能となる。ここで、第二の成膜条件で終始成膜を行っても同様な結果が得られるのではないかとも考えられるが、発明者の研究によると、この構成は次のような問題がある。
【0025】
即ち、まず、添加ガスの流量比をあまり増大させると、必要なステップカバレッジ特性が得られない問題がある。例えば、前述した文献では、4sccmのTDEATに対して3リットル毎分のアンモニアを添加した例で85%のステップカバレッジが得られているが、この例はアスペクト比1のコンタクトホールに対する成膜であり、64メガビット以上のDRAMの設計ルールに準拠した0.35μm以下のコンタクトホールに対しては、20%以下のステップカバレッジになってしまうと予想される。
また、添加ガスの流量比を大きくして薄膜を結晶化させると、結晶化に伴って内部応力の増大し、このため熱的安定性が低下する等の問題が生ずる。また、結晶粒界の破壊によって表面にスパイク状の凹凸が発生することがある。さらに、結晶状窒化チタン薄膜は、下地に対する密着性が悪いという問題もある。
【0026】
従って、必要な厚さの窒化チタン薄膜を、添加ガス流量比の大きな第二の性膜条件で終始作成すると、ステップカバレッジ性が著しく低下したり、膜質や下地密着性等の点で無視し得ない問題が生ずることになる。
そこで、本実施形態の発明では、上述のように、第一の成膜条件では薄膜をアモルファスのままにして結晶化させないようにし、第二の成膜条件によって結晶化させるようにしている。そして、必要な膜厚の大部分を第一の成膜条件で成膜することで、薄膜全体の膜質を低下させることなく良好なステップカバレッジ性で且つ良好な下地密着性で成膜を行うようにしている。
【0027】
参考までに、前述した表1の条件に関するステップカバレッジ特性について説明すると、直径0.3μmアスペクト比4のコンタクトホールに対して、表1中の第一の成膜条件で45秒、第二の成膜条件で15秒成膜したところ、ステップカバレッジはほぼ90%であった。この際の窒化チタン薄膜の全体の膜厚は、200〜250オングストローム程度であった。尚、ステップカバレッジとは、ホール以外の部分の基板の表面への堆積量に対するホールの底面への堆積量の比率を意味している。
【0028】
上述の説明から分かる通り、パシベーション作用を有する結晶化した第二層52は、所定以上厚くならないようにすることが好ましい。即ち、第二層52が厚くなると、上述した内部応力の増大等の問題が無視し得なくなるからである。必要なパシベーション効果との関連から考えると、全体の膜厚の30%程度又は約100オングストローム程度以下にしておくべきである。
【0029】
また、第一の成膜条件から第二の成膜条件に変えるタイミングとしては、上記第一層の膜厚に対する第二層の膜厚の比によって決められるが、窒化チタン薄膜全体の必要なステップカバレッジ特性という観点も考慮に入れるべきである。つまり、上述したように第二の成膜条件ではステップカバレッジ特性が低下する。従って、第一の成膜条件での成膜時間に比して第二の成膜条件での成膜時間が長くなると、全体のステップカバレッジ特性が限度以上に低下してしまう。具体的には、一般的に要求されるステップカバレッジ特性は50%以上であるから、この値以上のステップカバレッジ特性が得られるよう、全体の膜厚を考慮しながら成膜条件変更のタイミングを決定すべきである。このような意味から、第一層51は、必要なステップカバレッジを稼ぐ「バッファ層」であるともいえる。
【0030】
尚、上述の説明から明かな通り、第一層51を得る際の添加ガスの流量の下限は、成膜直後の比抵抗低下の効果が充分得られる限度で決定され、添加ガスの流量の上限は、窒化チタンが結晶化しない限度で決められる。また、第二の成膜条件での添加ガスの流量の下限は窒化チタンの結晶化が相当程度進む条件であり、上限は薄膜作成が可能な限度である。即ち、あまり添加ガスが多くなると、窒化チタンが粉状になってしまい薄膜として堆積しないからである。
例えば、上述したTDEATが7sccmの例でいうと、第一の成膜条件でのアンモニアの流量の下限は1sccm、上限は150sccmである。また第二の成膜条件でのアンモニア流量の下限は150sccm、上限は200sccmである。尚、これらの流量の条件は、成膜温度や圧力によっても変わることは言うまでもない。
【0031】
上述した実施形態の方法において、第一の成膜条件から第二の成膜条件への変化を徐々に又は段階的に行うようにしても良い。この場合、得られる窒化チタン薄膜の結晶化の度合いは、膜厚が増える方向に徐々に又は段階的に増加することになる。この構成によっても、上述したのと同様な効果が得られる。
【0032】
また、表1の条件では添加ガスの流量比を増加させるのみであったが、成膜温度を上昇させるようにしても良い。表2は、この実施形態に属する実施例の条件を示したものである。
【表2】
この表2の条件によっても、表1の条件の場合と同様の効果を得ることができる。尚、添加ガスの流量比の増大と成膜温度の上昇との両方を行うようにしてもよい。この場合、成膜温度の上昇は小さくて済むので、低温処理の要請という意味からは好適である。
尚、成膜温度の上昇は、反応容器1内の圧力を上昇させて熱伝導効率を向上させることによっても行える。従って、キャリアガスの流量を増大させるなどして圧力を上昇させる条件によっても、上述と同様な結果を得ることができる。
【0033】
また、上記説明において、100%の結晶化ということは物理的に困難であり、膜厚方向に垂直な平面内で結晶化している部分とアモルファスのままの部分とが混在していると考えられる。尚、上述の通り、パシベーションの効果は窒化チタン薄膜の結晶化によってもたらされるが、充分なパシベーションの効果を得るためには、少なくとも第二層52の50%が結晶化していなければならないと考えられる。結晶化は、電子顕微鏡写真によって観察できるが、結晶化したと見られる領域が面内の50%になっているものが充分なパシベーションを達成できると推測される。尚、充分なパシベーション効果とは、例えば成膜後24時間経過の比抵抗の増大が200%以下に抑えられるものをいうと表現できる。
【0034】
上記実施形態では、TDAATの例としてTDEATを採用したが、テトラキスジメチルアミノチタン(TDMAT)等の他のTDAATを採用することができる。その他、TDAATの代わりに、シクロペンタジエニルシクロヘプタトリエニルチタン((C5H5)Ti(C7H7))等の有機金属化合物を採用することができる。
【0035】
本実施形態で作成した窒化チタン薄膜は、上述したバリアメタルの他、密着層膜としても使用できる。例えば、下地Al層に設けたビアホールをW又はAl等で埋め込み配線する場合、両者の密着性を改善するため、窒化チタン薄膜を200〜500オングストローム程度介在させる場合があるが、この窒化チタン薄膜も上述した方法により作成できる。この他、フォトリソグラフィの際の反射防止膜としても窒化チタン薄膜は使用されるが、この場合にも本願発明の方法を適用することが可能である。
【0036】
次に、本願発明の薄膜デバイスの実施形態について説明する。
図4は、本願発明の薄膜デバイスの実施形態を説明する断面概略図である。
図4に示す薄膜デバイスは、表面にコンタクトホールが形成された基板20と、コンタクトホールを含む基板20の表面上に作成した窒化チタン薄膜5と、コンタクトホールに埋め込まれた配線金属6とから構成されている。このうち、窒化チタン薄膜5は、上述した実施形態の方法によって200〜500オングストロームの厚さで形成される。また、配線金属6は、Al,W,Cu等の材料で形成され、スパッタ又はブランケットCVD法等によって形成される。
【0037】
このような構造の薄膜デバイスは、採用された窒化チタン薄膜5の比抵抗が小さいことから、コンタクト特性が良好であり、上層の配線金属6のバリア用として良好に機能する。この図4に示す薄膜デバイスは、DRAMや論理素子等に採用される構造である。尚、「薄膜デバイス」とは、薄膜を有するデバイスの総称である。
【0038】
【発明の効果】
以上説明した通り、本願の請求項1,2,3,4,5又は6の発明によれば、ステップカバレッジ特性を低下させたり、内部応力の増大等の問題を大きくしたりすることなく、経時的な比抵抗の増大の無い良質な窒化チタン薄膜を作成することができる。
また、請求項7の薄膜デバイスによれば、酸素の拡散による経時的な比抵抗の増大が抑制された構造となり、この点で電気特性の良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の窒化チタン薄膜の作成方法の実施に使用される成膜装置の一例を示したものである。
【図2】本願発明の実施形態の方法により作成した薄膜デバイスの断面構造を概略的に示したものである。
【図3】窒化チタン薄膜の結晶化を確認した実験の説明図である。
【図4】本願発明の薄膜デバイスの実施形態を説明する断面概略図である。
【符号の説明】
20 基板
51 第一層
52 第二層
Claims (7)
- チタンを含む有機金属化合物ガスと、作成される窒化チタン薄膜の比抵抗を減少させる添加ガスとを使用して、化学的気相成長法により窒化チタン薄膜を作成する窒化チタン薄膜の作成方法であって、前記有機金属化合物ガスに対する前記添加ガスの流量を最初少ない第一の流量比とし、その後第一の流量比より大きい第二の流量比に増加させながら成膜を行う方法であり、
前記第一の流量比は、窒化チタン薄膜がアモルファスとなる値に設定され、前記第二の流量比は、窒化チタン薄膜が結晶化する流量比に設定されることを特徴とする窒化チタン薄膜の作成方法。 - 前記窒化チタン薄膜は、溝又は孔が形成された対象物の表面に作成されるものであり、必要なステップカバレッジが得られるように、第一の流量比での成膜時間と第二の流量比での成膜時間とが決められていることを特徴とする請求項1記載の窒化チタン薄膜の作成方法。
- チタンを含む有機金属化合物ガスと、作成される窒化チタン薄膜の比抵抗を減少させる添加ガスとを使用して、化学的気相成長法により窒化チタン薄膜を作成する窒化チタン薄膜の作成方法であって、成膜温度を最初低く第一の成膜温度とし、その後第一の成膜温度より高い第二の成膜温度に上昇させながら成膜を行う方法であり、
前記第一の成膜温度は、窒化チタン薄膜がアモルファスとなる値に設定され、前記第二の成膜温度は、窒化チタン薄膜が結晶化する流量比に設定されることを特徴とする窒化チタン薄膜の作成方法。 - 前記窒化チタン薄膜は、溝又は孔が形成された対象物の表面に作成されるものであり、必要なステップカバレッジが得られるように、第一の成膜温度での成膜時間と第二の成膜温度での成膜時間とが決められていることを特徴とする請求項3記載の窒化チタン薄膜の作成方法。
- 前記チタンを含む有機金属化合物がテトラキスジアルキルアミノチタンであることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の窒化チタン薄膜の作成方法。
- 前記添加ガスがアンモニアガスであることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の窒化チタン薄膜の作成方法。
- 窒化チタン薄膜を有する薄膜デバイスであって、当該窒化チタン薄膜は、アモルファス状の第一層と、第一層よりも結晶化の度合いが進んだ結晶構造を有する第二層とから成り、第一層の上に第二層を積層した膜質構造を有することを特徴とする薄膜デバイス。
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