JP3679191B2 - ラッピング材並びにその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は金型等の最終工程の仕上材として使用するのに好適なラッピング材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のラッピング材としては用途に応じてふるい分けされたアルミナ、カーボランダム等の砥粒をバインダー等を用いて焼結してブロック化し、このブロックより用途に応じた平板状スティック等の所望形状に切り出して使用するようにしたものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、ブロックから平板状スティック状等に切り出されたラッピング材は強度が弱く、特に1mm〜数mm程度の厚みの平板状スティックでは普通に力をいれて金型等の表面を研磨することができず、少し力を入れ過ぎると折損してしまうという欠点を有していた。このような厚みが1mm〜数mmの平板状のラッピング材は、特に鉄等の金属の金型等の仕上げ用として、例えば細いリブ用の溝を持つというように、金型の形状によっては不可欠なものでありながら、従来の技術ではカバーが不可能な領域であった。
【0004】
これを解決する方法として、特開平1−222865号公報において、研磨材となり得る素材(アルミナ、炭化ケイ素等)の長繊維状になったもの、すなわち、アルミナ長繊維、炭化ケイ素長繊維等を用いることにより繊維としての強度を利用しながら、なおかつ素材自体の持つ研磨性能を利用することにより研磨スティックを作る方法が考えられた。すなわち、熱硬化性樹脂を含浸したアルミナ長繊維、炭化ケイ素長繊維等を一方向に引き揃え、これを加熱プレスすることにより硬化させ研磨用ブロックを作る方法である。
このブロックから切り出された厚み1mm〜数mmの平板状スティックは図6に示すようにスティックaの長手方向に繊維bが引き揃えられているため力をいれて研磨してもスティックaが折れることなく、かつ繊維bの先端cの破断面で金属面の研磨が可能となる。しかも、驚くべきことに、こうして作られたスティックaは繊維b,b同士の隙間に樹脂が完全に詰まっており、焼結により作られる砥石と違ってボイドが全く存在しないにもかかわらず研磨が可能である。これはおそらく削りかすが逆に入り込むようなボイドが全くないことにより、研磨時の研磨面に削りかすが入り込むことがなく完全に研磨面より排出されるためと思われる。この方法によればスティックaの強度は長繊維bが受け持つため十分である。
【0005】
しかし、研磨がスティックaの先端部でしかできないのでスティックaの側面では削れないという欠点を有する。例えば、手でスティックaを使って金型を磨くときは通常は磨く面積を増すためにスティックaの曲がりを利用してスティックaのはら部(平坦部)を使って磨くようにしているが、このスティックaにそれを期待するのは無理である。すなわち、特開平1−222865号公報によるスティックの最大の問題点として、繊維の先端部以外では磨けないために繊維の側面部が露出しているスティックのはら部(平坦部)では金型のリブ用の細い溝の側面が磨けないという欠点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のラッピング材は前記不都合を解消するべく、無機長繊維に樹脂を含浸させた成形体からなるラッピング材であって、前記無機長繊維を複数方向に引き揃えるようにしたことを特徴とする。
また、請求項2記載のラッピング材は、前記無機長繊維を複数方向に角度をつけて配向するようにしたことを特徴とする。
また、請求項3記載のラッピング材は、前記無機長繊維を2方向に対称な角度でクロスさせて配向するようにしたことを特徴とする。
また、請求項4記載のラッピング材は、前記無機長繊維を前記平坦面に対して7〜20度の角度で配向するようにしたことを特徴とする。
また、請求項5記載のラッピング材は、前記無機長繊維をガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維及び炭化ケイ素繊維からなる群から選ばれた無機長繊維としたことを特徴とする。
また、請求項6記載のラッピング材は、前記無機長繊維を30〜75容量%としたことを特徴とする。
また、請求項7記載のラッピング材の製造方法は、熱硬化性樹脂を含浸させた無機長繊維を回転体の回転方向に沿ってその外周に綾ふりさせつつ巻き取り、この回転体上に巻き取った成形材料を回転体の軸線方向にカットして切り開き、シート状に拡げ、これを必要ならば複数枚積層し、加熱加圧プレスすることにより硬化させてラッピング材ブロックを作成し、このブロックの厚味側が平坦面側となるように平板状にスライス切りすることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
前記無機長繊維としては、被研磨材に対して相対的に研磨性を有する材料、すなわち、研磨する材料よりも硬くてかつ脆い材料であれば特に限定されるものではないが、前記したとおり、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維等の使用が好ましい。特に、被研磨材がアルミニウム、銅、黄銅の場合にはガラス繊維が最適であり、鉄等の場合にはアルミナ繊維が適している。また、研磨する材料によってはこれらが混合していてもよい。
【0008】
前記無機繊維としては単繊維の平均繊維径が3〜40μm程度のものが使用され、6〜35μm程度のものが好ましい。これは、無機長繊維として現在ヤーンとして市販されている一番細い繊維が3μmであり、また、40μmを越えると非常に取り扱いがむずかしくなるからである。ただし、研磨領域を越えて研削領域での有効活用を考えるならば平均繊維径100μm〜200μmの繊維が理想である。また、逆に研磨よりもポリッシング領域での活用を考えるならば細いほどよく平均繊維径3μmの繊維が最良ということになる。
また、繊維束重量は500〜3000Tex程度のものが使用される。樹脂の含浸性からは500Tex程度の細い繊維束を多数本、樹脂に含浸させた後に引き揃えるのが理想であるが、繊維の含浸性がよい場合は1500Texの繊維束や3000Texの繊維束をそのまま樹脂中に含浸させて使うことも可能である。
【0009】
前記無機長繊維を固めるための結合剤であり、かつ、ラッピング材のマトリックスの構成材料でもある熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂等が使用され、特に、無機長繊維を含有するにも係わらずボイド(気泡)をその中に包含しないラッピング材が作成できるエポキシ樹脂が最適である。ボイドがあると、研磨の結果生じた金属粒子がFRP材の中に残留するボイドに入り込み、目詰まりを生じると共に、研磨の際、この金属粒子と同じ硬度である被研磨面を損傷することになる。
【0010】
前記無機長繊維の含有量としては、前記したとおり30〜75容量%とすることが好ましく、これは30容量%未満では研磨効果が悪くなり、75容量%を越えると繊維を並べたとき樹脂量が不足し1mm程度の厚みのスティックを作製したときにはわずかな力でスティックに縦割れを生じるからである。なお、金型等の磨き効率からすれば、繊維の含有量は多い方がよく、55〜65容量%の範囲が好ましい。
【0011】
図1に示すように、無機長繊維1を平板状成形体2の表裏平坦面2a,2bと先端面2cに繊維端面1aが現れるように角度を付けて配向するようにした場合、従来のラッピング材とは異なり、先端面2cだけでなく平坦面2a,2bでも研磨することが可能である。
なお、無機長繊維1を複数方向、例えば、図2に示したように無機長繊維1を2方向に対称な角度でクロスさせて配向するようにすれば、ラッピング材の強度が高まり、また、研磨方向も一方向のみというように制約されず使用し易くなる。
【0012】
また、前記無機長繊維は、ラッピング材の平坦面に対して7〜20度の角度、好ましくは7〜15の角度で配向するようにするのが好ましい。これは本発明者の実験によれば、7度未満であれば、例えば厚みが1mmのスティックをプレスしたブロックからスライスして切り出したとき、スティックの厚みを横切る繊維の長さは8.2mm以上となり、ほとんど繊維の側面が出ているのと変わらなくなり平坦部での研磨効率は著しく悪くなり、また、20度を越えれば、例えば厚みが1mmのスティックをプレスしたブロックからスライスして切り出したとき、スティックの厚みを横切る繊維の長さは3mm以下となり、スティックの曲げ強度が足らなくなり少しの力でスティックが折れるようになるからである。
【0013】
本発明のラッピング材の製造については、例えば、図1に示したラッピング材を製造するには、特に図示しないが、一方向に引き揃えた無機長繊維に熱硬化性樹脂を含浸したシート状物、例えばプリプレグシートを積層して加熱硬化して得たブロックを、繊維方向に対して角度を付け、かつ、ブロックの厚味側が切り出した研磨スティックの平坦面側となるように平板状にスライス切りすることにより得ることができる。
【0014】
また、例えば、図2に示したラッピング材を製造するには、図3に示すように熱硬化性樹脂を含浸させた無機長繊維1を回転体10の回転方向に沿ってその外周に綾ふりさせつつ巻き取り、この回転体10上に巻き取った成形材料3を図4に示すように回転体10の軸方向にカットし、これを切り開いてシート状に拡げて金型のサイズにカットし、厚みに応じて必要ならば成形材料を積層し、加熱した金型に入れ、加熱加圧プレスすることにより硬化させて図5に示すようなラッピング材ブロック11を作成し、同図に示すとおりこのブロックの厚味側が切り出した研磨スティックの平坦面側となるように平板状にスライス切りすることにより、図2に示したように表裏平坦面と先端面に前記無機長繊維の端面が露出しているスティックを作製することができる。
この場合、回転体10の外周に綾をふって巻く際、トラバースの行きと帰りで綾角度を円周方向に対して左右対称にすると、得られたスティック2は研磨の際押しでも引きでも平坦部での研磨が可能な物が得られる。
【0015】
本発明の製造方法は前記のものに限定されるものでなく、例えば、一方向に引き揃えられ熱硬化性樹脂を含浸した無機長繊維シートに他の方向に引き揃えられ熱硬化性樹脂を含浸した無機長繊維シートを積層し、その後、前記製造方法と同様に、金型のサイズにカットし、厚みに応じて必要ならば成形材料を積層し、加熱した金型に入れ、加熱加圧プレスすることにより硬化させてラッピング材ブロックを作成し、このブロックから表裏平坦面と先端面に前記無機長繊維の端面が露出するように平板状スティックとして切り出すことができる。
【0016】
なお、前記無機長繊維の繊維端は各方向に配向された無機長繊維を研磨スティックの平坦面に対して7〜20度の範囲となるように配向すればよい。この場合、互いに対称の角度に配向すれば、ラッピング材の押し方向、引き方向の両方向において研磨することができる。また、特に、前記綾ふりにより積層された繊維体は層間剥離をすることがなく、強度的にも非常に優れたものとなる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例につき説明する。
(実施例1)
まず、下記配合割合の樹脂組成物を用意した。
エポキシ樹脂(DER383J ダウケミカル) 100部
テトラヒドロメチル無水フタル酸(HN2200 日立化成) 80部
イミダゾール(2E4MZ−CN 四国化成) 1部
次に、前記樹脂組成物の入った樹脂槽のなかを1000フィラメントからなる、繊維径15μm、600Texのアルミナ繊維を通して樹脂を含浸せしめ、これを6本引き揃えて直径11cmの円筒に円周方向に一周に対し4.5mmづつずらして27cmの幅に平行巻き(パラレル巻き)に9.5往復した後、これを軸方向に切り開いてシートを作製した。このシートを引き揃えられた繊維方向に対し31cm長さにカットして31cm×27cmのシートを作製し、これを125℃に加熱した32cm×30cmのポジティブ金型にいれ、30kg/cm2 の圧力で加圧し、1時間保持した後取り出した。
こうして作製した厚み6mmの板より、引き揃えられた繊維方向に対して7度の角度に1mm幅にダイヤモンドカッターでスライス切りして、厚み1mm、幅6mmの研磨用スティックを作製した。このスティックの場合、繊維はスティックの平坦部(6mm幅の面)の面に対して7度の角度をなしていることになる。このスティックの平坦部で金型の垂直面を磨いたところ、研磨効率が非常によい上に線状の研磨傷がないきわめて良好な研磨面を得ることができた。なお、このスティック中のアルミナ繊維の容積%は60%であった。
【0018】
(実施例2)
実施例1と全く同様の樹脂組成を使用して、1000フィラメントからなる、繊維径25μm、500Texのアルミナ繊維をこの樹脂組成物中を通すことにより樹脂を含浸せしめ、これを3本引き揃え、円筒への巻きをパラレル(平行)巻きでなく軸方向に対して82.5度の綾角度で282mmの幅に8.5mmずらしながら巻き付けた。当然の事ながら右方向に巻き付けた後ターンして左方向に巻かれるときは左軸方向から82.5度の角度(厳密には−82.5度)で巻かれてゆく。この場合6往復で全面が一回覆われることになるが、これを14回、すなわち84往復繰り返した後、軸方向に切り開いてシートを作製した。このシートより実施例1と同様に長さ31cm、幅282mmのシートを切り取り、実施例1と同様にして厚み6.8mmの硬化板を作製した。
この板より繊維の長手方向に1mm幅にダイヤモンドカッターでスライス切りして厚み1mm、幅6.8mmのスティックを作製した。このスティックの場合、繊維はスティックの平坦部(6mm幅の面)の面に対して7.5度の角度をなしていることになる。このスティックを用い実施例1と同様に磨きテストを実施したところ、スティックの平坦部及び先端部での磨き効率は非常に優れ、しかも研磨傷のないきわめて良好な研磨面を得ることができた。なお、このスティックのアルミナ繊維の容積%は64%であった。
【0019】
【発明の効果】
このように本発明によれば、無機長繊維に熱硬化性樹脂を含浸させ平板状の成形体としたラッピング材において、前記無機長繊維を平板状成形体の表裏平坦面と先端面に繊維端面が現れるように角度を付けて配向するようにしたため、先端面以外でも研磨可能なラッピング材を得ることができる。特に、熱硬化性樹脂を含浸させた無機長繊維を回転体の回転方向に沿ってその外周に綾ふりさせつつ巻き取り、この回転体上に巻き取った成形材料を回転体の軸線方向にカットして切り開き、シート状に拡げ、これを必要ならば複数枚積層し、加熱加圧プレスすることにより硬化させてラッピング材ブロックを作成し、このブロックの厚味側が平坦面側となるように平板状にカットするようにすれば、表裏平坦面と先端面に前記無機長繊維の端面が露出するラッピング材を簡単に製造することができ、しかも各方向引き揃えられた繊維同士は綾ふりによって部分的に織りが加えられることになり層間剥離が生じにくく、強度的にも優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ラッピング材の一実施例の斜視図
【図2】本発明ラッピング材の他実施例の斜視図
【図3】本発明ラッピング材の製造工程を示す斜視図
【図4】本発明ラッピング材の製造工程を示す斜視図
【図5】本発明ラッピング材の製造工程を示す斜視図
【図6】従来のラッピング材の斜視図
【符号の説明】
1 無機長繊維
1a 繊維端面
2 成形体
2a 平坦面
2b 平坦面
2c 先端面
3 成形材料
10 回転体
11 ラッピング材ブロック
Claims (7)
- 無機長繊維に熱硬化性樹脂を含浸させ平板状の成形体としたラッピング材であって、前記無機長繊維を平板状成形体の表裏平坦面と先端面に繊維端面が現れるように角度を付けて配向するようにしたことを特徴とするラッピング材。
- 前記無機長繊維を複数方向に角度をつけて配向するようにしたことを特徴とする請求項1記載のラッピング材。
- 前記無機長繊維を2方向に対称な角度でクロスさせて配向するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載のラッピング材。
- 前記無機長繊維を前記平坦面に対して7〜20度の角度で配向するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のラッピング材。
- 前記無機長繊維はガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維及び炭化ケイ素繊維からなる群から選ばれた無機長繊維であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のラッピング材。
- 前記無機長繊維を30〜75容量%としたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のラッピング材。
- 熱硬化性樹脂を含浸させた無機長繊維を回転体の回転方向に沿ってその外周に綾ふりさせつつ巻き取り、この回転体上に巻き取った成形材料を回転体の軸線方向にカットして切り開き、シート状に拡げ、これを必要ならば複数枚積層し、加熱加圧プレスすることにより硬化させてラッピング材ブロックを作成し、このブロックの厚味側が平坦面側となるように平板状にスライス切りすることを特徴とするラッピング材の製造方法。
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