JP3675768B2 - 複合部材の製造方法及び複合部材形成用多孔質基材並びに複合部材形成用感光性化合物及び複合部材形成用組成物 - Google Patents

複合部材の製造方法及び複合部材形成用多孔質基材並びに複合部材形成用感光性化合物及び複合部材形成用組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フレキシブル基板、多層配線基板、インターポーザー、三次元配線等の配線基板や、アンテナ、コイル、センサー、電気化学セル、マイクロマシンなど、微細な導電パターンが基材上あるいは基材中に形成された複合部材を製造するための複合部材の製造方法、および、それに用いる複合部材形成用多孔質基材、並びに、複合部材形成用感光性化合物、および、複合部材形成用感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話やウェアラブルコンピュータ等の電子機器を小型化するためには、微細な配線パターンを低コストで製作できる方法が必須である。
【0003】
更に、このような低コストな配線パターンの製作方法は、DNAチップや各種センサー等の製造にも欠かすことができない。
【0004】
また、各種アンテナやコイルの製作においては、立体的な部材に配線を三次元的に形成する必要がある。このような三次元配線の製作技術は、電子機器の筐体上に配線する場合や、マイクロマシンやオプトエレクトロニクスデバイスの配線においても重要である。
【0005】
一般に、配線パターンを形成するには、先ず基材上にCu層を形成し、次いで、レジストパターンをマスクした後、このCu層をエッチングすることによって製作する。しかしながら、この様な手法は、煩雑な上、微細化、三次元配線化が難しい。
【0006】
そこで、低コストでしかも三次元配線も可能な配線パターンの製作方法として、露光部或いは未露光部のみを選択的に無電解鍍金する方法がある。例えば、本発明者らはイオン交換性基を発生又は消失する感光性物質を用いる手法について既に特願2001−96683号として提案している。
【0007】
この提案手法について更に詳細に述べるならば、基材上に形成された感光層を露光して陽イオン交換性基のパターンを形成し、陽イオン交換性基に金属イオンや金属コロイド等を吸着させた後、次いで、吸着させた金属イオンや金属コロイドを鍍金の触媒核として、無電解鍍金して配線パターンを形成する方法である。
【0008】
この様な手法は、レジストパターンの形成やエッチングが不要で、プロセスが非常にシンプルであるため、低コスト化が可能な上に、配線パターンの微細化、三次元化が容易である。
【0009】
しかしながら、この様な手法においても大きな問題点がある。
【0010】
例えば、配線材料として重要な銅の無電解鍍金液は一般的に非常に強いアルカリ性を示すものである。これに対して陽イオン交換性基は酸性基、あるいはその塩であるため、強アルカリ性の鍍金液中では親水性の塩となる。
【0011】
それ故、陽イオン交換性基の発生した後の感光性層は水溶液である鍍金液に対する耐性に乏しく、鍍金中に鍍金液に溶解したり、基材から剥離したりするおそれがある。こうした問題は、特に鍍金核の吸着量を増やすために、感光層中に存在する陽イオン交換性基の量を増やすと更に深刻になる。このため強アルカリ性の鍍金液にも良好に適用できる手法が求められている。
【0012】
また、別の問題点として、基材に多孔質体を用いる場合に、配線パターン等の導電パターンの導電率が充分でない点がある。
【0013】
例えば、多孔質体内に無電解鍍金により導電パターンを形成する手法としては、特開昭55−161306号公報、特開平7−207450号公報のほか、米国特許第5498467号等に開示されているように、多くの手法が知られている。
【0014】
しかしながら、こうした手法によって形成した導電パターンにおいては、鍍金金属の多孔質体内への充填率が充分でなく、導電パターンの導電率を高くすることが難しい場合が多い。何故ならば、無電解鍍金においては、導電パターンとする領域の空孔内表面から一斉に鍍金金属が析出する。このため、析出が進んで空孔への鍍金金属の充填率が大きくなると、空孔が狭まってしまい多孔質体外部から鍍金液が充分に補給されなくなる。それ故、析出が途中で止まってしまい、充分な充填率を得ることは難しい。特に、導電パターンとする領域の辺縁部に先に鍍金が充填されて皮膜となり、領域の中心部がほとんど鍍金されずに残ってしまい易い。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、選択的な無電解鍍金は、低コストな上、三次元的な配線パターンの製作が可能であるが、触媒核の吸着量を増やすためにイオン交換性基を増やすと、感光層が鍍金液に溶解してしまったり、剥離してしまうという問題点があった。
【0016】
また、多孔質体内に無電解鍍金によって配線パターン等を形成する場合に、空孔内への鍍金金属等の充填率を高くできず、充分な導電率を得ることが難しかった。
【0017】
それ故、本発明は基材に配線パターン等の導電部(導電パターン)が形成された複合部材の製造方法であって、導電部の製作にあたって、充分なイオン交換性基を導入することが可能で、かつ感光層が鍍金液に溶解して剥離することのない方法を提供したり、また、高い充填率で鍍金金属等を充填して、充分な導電率を有する配線パターン等の導電部を多孔質体に形成する方法を提供することが求められていた。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様である複合部材の製造方法は、基材の所定の部位に導電部を選択的に形成させる複合部材の製造方法において、前記導電部の形成を下記の感光性層形成工程、エネルギー線照射工程、吸着工程、鍍金工程を経て行うことを特徴とする。
感光性層形成工程:基材表面にエネルギー線を照射することにより、陰イオン交換性基が生成あるいは消失し、かつ後の吸着工程で、金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを含む溶液に対して膨潤性を示す感光性層を形成する工程、
エネルギー線照射工程: 前記感光性層にエネルギー線照射し、照射部或いは未照射部に陰イオン交換性基が配置された、陰イオン交換性基のパターンを形成する工程、
吸着工程:前記陰イオン交換性基のパターンに、金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを含む溶液を接触させ、前記金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを吸着せしめる工程、
鍍金工程: 前記金属含有イオン、又は、金属含有化合物、又は、金属コロイドを吸着せしめた陰イオン交換性基のパターンに、無電解鍍金を施して導電パターンを形成する工程。
【0019】
本発明の第2の態様である複合部材の製造方法は、基材の所定の部位に導電部を選択的に形成させる複合部材の製造方法において、前記導電部の形成を下記の感光性層形成工程、エネルギー線照射工程、吸着工程、鍍金工程を経て行うことを特徴とするものである。
感光性層形成工程: 基材表面にエネルギー線を照射することにより陰イオン交換性基が生成するアシルオキシム誘導体基含有化合物あるいはアジド誘導体基含有化合物を少なくとも有する感光性層を形成する工程、
エネルギー線照射工程: 前記感光性層にエネルギー線照射し、照射部或いは未照射部に陰イオン交換性基が配置された、陰イオン交換性基のパターンを形成する工程、
吸着工程: 前記陰イオン交換性基のパターンに金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを吸着せしめる工程、
鍍金工程: 前記金属含有イオン、又は、金属含有化合物、又は、金属コロイドを吸着せしめた陰イオン交換性基のパターンに、無電解鍍金を施して導電パターンを形成する工程。
【0020】
また、第3の態様である複合部材の製造方法は、絶縁性の多孔質体の所定の部位に導電部を選択的に形成させる複合部材の製造方法において、下記の電極設置工程、表面部分改質工程、鍍金液浸透工程、及び、電解鍍金工程を備えることを特徴とするものである。
電極設置工程: 前記多孔質体に電極を設置する工程、
表面部分改質工程: 前記多孔質体の一部を改質してその表面エネルギーを変化させ、改質部の水に対する親和性を、非改質部の水に対する親和性と異ならしめたパターンを形成する工程、
鍍金液浸透工程: 前記電極表面に接して選択された多孔質体内の改質部あるいは非改質部の絶縁性の領域に選択的に鍍金液を浸透させる工程、
電解鍍金工程: 電極に通電して、電解鍍金を前記領域内に析出させて導電部を形成する工程。
【0021】
前記第3の態様において、前記感光性層は、エネルギー線照射によってイオン交換性基が生成或いは消失される感光性層であることが好ましい。また、前記イオン交換性基は、陰イオン交換性基であることが好ましい。
【0022】
前記第1、第2、及び第3の態様において、前記陰イオン交換性基としては、アミノ基であることが好ましい。
【0023】
更に、本発明の第4の態様である複合部材形成用多孔質基材は、空孔を有する多孔質体と、該空孔内の表面に形成されているエネルギー線の照射により陰イオン交換性基が生成或いは消失される感光性層とから構成されることを特徴とするものである。
【0024】
前記発明の第4の態様において、前記多孔質体の少なくとも片面が保護フィルムによって被覆されていることが好ましい。また、前記多孔質体に密着して電極が設置されていることが好ましい。
【0025】
また、本発明の第5の態様である複合部材形成用感光性化合物は、 1 の様態の複合部材の製造方法における感光性層形成用に用いられる複合部材形成用の感光性化合物であって、エネルギー線の照射工程によって陰イオン交換性基を発生或いは消失する感光性基と、架橋性基とを有し、前記吸着工程で、金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを含む溶液に対して膨潤性を示すことを特徴とするものである。
【0026】
更に、本発明の第6の態様である複合部材形成用組成物は、 1 の様態の複合部材の製造方法における感光性層形成用に用いられる複合部材形成用の感光性組成物であって、エネルギー線の照射によって陰イオン交換性基を発生或いは消失する感光性基を有する化合物と、架橋性基を有する化合物とを有し、前記吸着工程で、金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを含む溶液に対して膨潤性を示すことを特徴とすることを特徴とするものである。
【0027】
前記第5の態様の複合部材形成用感光性化合物、あるいは第6の態様の複合部材形成用組成物を用いて、複合部材を製造するには、光照射することによって陰イオン交換性基を発生或いは消失する感光性基と、架橋性基とを同時に有する化合物、あるいは光照射することによって陰イオン交換性基を発生或いは消失する感光性基を有する化合物と、架橋性基を有する化合物との組成物に、必要に応じて溶剤、光塩基発生剤、光酸発生剤、酸増殖剤、触媒、架橋助剤、ラジカル発生剤、および増感剤からなる群から選ばれる添加剤のうちの少なくとも1種を配合し、複合部材形成用感光性材料として用いることが好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
[I] 複合部材の製造方法(第1の態様)
先ず、複合部材の製造方法の第1の態様における各製造工程について述べる。
【0029】
以下の説明では、本発明の第1の態様である複合部材の製造方法の理解を助けるために、各工程についてそれぞれ説明する。
【0030】
(1) 製造工程
本発明の第1の態様である複合部材の製造方法は、以下に示す感光層形成工程、エネルギー線照射工程、吸着工程、及び、鍍金工程の各工程から基本的に構成されている。
【0031】
(A)感光性層形成工程
先ず、基材表面に、エネルギー線の照射により陰イオン交換性基が生成あるいは消失し、かつ膨潤性の感光性層を形成する。配線基板等を製作する場合には、絶縁性の基材を用いる。
【0032】
また、基材の形状については、特に限定されず、板状、線状、筒状、球状等さまざまな形状の基材に適用可能である。特に多孔質の基材を用いれば、多孔質内部にも導電パターンを形成することが可能である。
【0033】
感光性層を基材に形成する方法としては、特に限定されないが、一般的には感光剤の溶液を基材に塗布するなどして形成する。塗布する感光性層の層厚は特に限定されないが、一般的には0.5〜1000nm程度の間で設定され、好ましくは1〜100nm、より望ましくは20〜50nmの範囲に設定されるのが良い。
【0034】
(B)エネルギー線照射工程
感光性層を形成した基材にエネルギー線を照射して、陰イオン交換性基のパターンを形成する。例えば、エネルギー線照射によって陰イオン交換性基を生成する感光性層を用いる場合、基材上に形成した感光性層に対してパターン照射し、感光性層の照射部に陰イオン交換性基を生成させる。パターン照射は露光マスクを用いても良いし、レーザー光線を走査する等をしても良いし、光源からの光を微小なミラーをマトリックス状に多数配列したマイクロミラーアレイで変調する等をしても良い。
【0035】
多孔質基材を用いる場合、多孔質内部にも透過して露光することによって、多孔質内部に導電パターンを形成することができる。
【0036】
上記エネルギー線照射するための条件としては、一般的には例えば高圧水銀灯などを光源として、パターン通りのマスクを通して、0.1〜10000mJ/cm程度の露光量で露光することによって行う。露光はマスクを用いても良いし、レーザー光線を走査する等をしても良いし、光源からの光を微小なミラーをマトリックス状に多数配列したマイクロミラーアレイで変調する等をしても良い。
【0037】
(C)吸着工程
次に、形成した陰イオン交換性基のパターンに、鍍金の触媒(鍍金核)、あるいはその前駆体である、金属含有イオン、金属含有化合物、又は、金属コロイドを吸着させる。
【0038】
金属含有イオン
金属含有イオンとしては陰イオンを用いる。陰イオンは陰イオン交換性基と塩を形成し、陰イオン交換性基の対イオンとして吸着される。
【0039】
金属含有化合物
金属含有化合物としては、陰イオン交換性基と結合可能な結合基を有する化合物を用いる。この結合基が陰イオン交換性基と結合して吸着される。
【0040】
金属コロイド
金属コロイドとしては、例えば負電荷に帯電しているものを用いる。帯電した金属コロイドは電離した陰イオン交換性基に静電的に吸着される。
【0041】
金属化
これら金属含有イオン、金属含有化合物又は金属コロイドは、次工程の無電解鍍金において触媒となる。金属含有イオンや金属含有化合物を吸着させた場合、必要に応じて還元処理して金属イオンを金属化する。金属化することによって、無電解鍍金の触媒能が向上する。
【0042】
上記吸着は、一般的には例えば上記金属含有イオン、金属含有化合物又は金属コロイドの溶液に、陰イオン交換性基のパターンを形成した基材を浸漬することによって行われる。浸漬する時間は、一般的には10秒から5時間程度の間で設定される。膨潤性感光性層は、これら鍍金核の溶液によって膨潤して、感光性層中にまで溶液が浸透する。このため感光性層の表層のみならず層内部に存在する陰イオン交換性基にも鍍金核を吸着させることができる。このため鍍金核の吸着量を大きくすることが可能なため、鍍金時間も短時間で可能な上、形成された導電パターンの導電率も高くすることができる。
【0043】
(D)鍍金工程
上記吸着させた金属含有イオン、金属含有化合物、又は、金属コロイドを触媒核として銅などの無電解鍍金を施して導電パターンを形成する。
【0044】
なお、露光によりイオン交換性基を消失する化合物を含む感光性材料を用いれば、上記「エネルギー線照射工程」において未照射部にイオン交換性基が残留したネガ型のパターンが形成される。
【0045】
また、パターン照射によって照射部に生じた陰イオン交換性基を選択的にフッ素化合物等と反応させて陰イオン交換能を消失させ、しかる後に全面露光或いは加熱等して、先のパターン照射時の未照射部に陰イオン交換性基を生じさせ、この陰イオン交換性基に金属含有イオン、金属含有化合物、又は、金属コロイドを吸着させて鍍金しても良い。
【0046】
この手法によると2回の露光操作と加熱操作が必要となる。このため、パターン照射によって形成した陰イオン交換性基のパターンに直接、金属含有イオン、金属含有化合物、又は、金属コロイドを吸着させて鍍金する方法の方が、工程が単純な上に、製作した複合部材の寸法安定性等にも優れている。
【0047】
例えば配線材料としてとりわけ重要な銅の無電解鍍金液は強アルカリ性であることが多い。従って、陽イオン交換性基を用いると、強アルカリ性の鍍金液中に感光性層が溶け出したり、剥離し易くなる。これに対して、陰イオン交換性基であれば、鍍金液等に対する耐性に優れているため、欠陥のない鍍金を行うことができる。
【0048】
また、本発明の第1の態様の複合部材の製造方法は、水晶やガラス、或いは、カーボン等を基材として用いる場合にも非常に有効である。
【0049】
通常、水晶やガラス等は、基材表面にシラノール基が存在する。また、カーボン基材の表面には、通常、カルボキシル基が存在する。シラノール基やカルボキシル基は陽イオン交換性基として機能して、鍍金の触媒、あるいはその前駆体となる金属カチオンや金属コロイド等を吸着してしまう。
【0050】
このため陽イオン交換性基に鍍金の触媒(金属カチオン等)を吸着させて鍍金する従来法では、基材表面のシラノール基やカルボキシル基にも鍍金の触媒が吸着してしまう。それ故、鍍金したくない部分の基材表面にも鍍金が異常析出し易かった。
【0051】
これに対して、陰イオン交換性基に吸着する鍍金の触媒は、シラノール基やカルボキシル基には吸着し難い。それ故、鍍金の異常析出を防止することができる。水晶、ガラス、カーボンに限らず、基材表面には基材が酸化されて生じる陽イオン交換性基が存在することが多い。
【0052】
特に濡れ性を改善するために酸素プラズマ処理を施した場合には基材表面に多量の陽イオン交換性基が発生する。例えば、炭素系のポリマー基材の場合にはカルボキシル基が生じる。鍍金の触媒を吸着させる基として陰イオン交換性基を用いることは、鍍金の異常析出を防止する上で非常に有効である。
【0053】
更に、陰イオン交換性基であるアミノ基等は、形成した銅やニッケル等の金属からなる導電部を腐食し難い。鍍金の触媒を吸着させる基は基材と析出した鍍金の間に残留する。それ故、酸性である陽イオン交換性の基は残留すると導電部を腐食し易い。陰イオン交換性基ではそうしたおそれが無い。陰イオン交換性基を用いると、金属からなる導電部を形成する場合に非常に有効である。
【0054】
また、アミノ基等はエポキシ樹脂等の硬化性樹脂を硬化させることができる。鍍金析出後、或いは、鍍金触媒を吸着した後等に、鍍金を析出させた部位以外にもアミノ基を発生させれば、多孔質体に含浸させた硬化性樹脂を基材表面と密着性良く硬化させることができる。
矢部らも、基材表面にアミノ基のパターンを形成して、これに鍍金の触媒を吸着させた後に無電解鍍金する手法を開示している(日本経済新聞 1993年2月19日朝刊掲載)。この手法では、基材としてポリテトラフルオロエチレン基板を用い、ヒドラジンガス雰囲気下でエキシマレーザーを照射する。照射部のポリテトラフルオロエチレンがヒドラジンと反応することによってアミノ基が生成する。この手法においては、感光性ではない基材を反応させるために、高いエネルギーのエキシマレーザーを照射する必要がある。またヒドラジンガス雰囲気下で照射するため基材をヒドラジンガスで満たされたチャンバーに収納する必要があるため、照射装置が高価となる上、スループットも高くできない。基材を水溶液と接触された状態でエキシマレーザーを照射して、基材表面に親水性基を発生させる方法も提案されているが、露光装置内で液状物質を扱うために同様な問題がある。またエキシマレーザーなどの短波長の光はほとんどの樹脂に吸収されるため、例えば基材として多孔質体を用い、多孔質体内部にまで鍍金しようとしても、基材に照射した光が吸収されてしまい、効率よく多孔質体の内部まで照射することが難しい。対して本発明ではエネルギー線を吸収する感光性層は基材表面に薄く形成されているだけなので、基材が多孔質体の場合でも内部まで良好に照射することができる。
【0055】
上記無電解鍍金の条件としては、特に限定されないが、一般的には鍍金液の温度を20〜60℃の間に設定し、鍍金する時間は30分から10時間の間で設定する。
【0056】
(2) 各工程の詳細な説明
次に上記本発明の複合部材の製造方法の第1の態様の各工程の詳細について、以下に具体的に説明する。
【0057】
なお以下の説明において、金属含有イオン、金属含有化合物および金属コロイドの総称として、鍍金核と称することがある。
【0058】
(A)基 材
(a)基材を構成する材料
導電部が形成される基材は、特に限定されず、様々な無機材料、或いは有機材料から構成されるものが用いられる。例えば、ポリマー、セラミックス、カーボン、金属等である。
【0059】
導電部として配線やビア等を形成した配線基板等の複合部材を形成するには、基材は絶縁体が良い。導電部が形成される絶縁性基材としては、いかなる絶縁材料からなるものであっても良いが、具体的にはポリマーやセラミックス等が挙げられる。
【0060】
ポリマー
前記ポリマーとしては、例えば、エポキシ樹脂や、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、PEEK樹脂、ブタジエン樹脂等プリント配線基板の絶縁体として従来からよく用いられる樹脂や、その他ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルエチレン等のポリジエン類、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル等のポリアクリロニトリル誘導体、ポリオキシメチレン等のポリアセタール類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等や芳香族ポリエステル類を含むポリエステル類、ポリアリレート類、アラミド樹脂等の芳香族ポリアミドやナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、エポキシ樹脂類、ポリp−フェニレンエーテル等の芳香族ポリエーテル類、ポリエーテルスルホン類、ポリスルホン類、ポリスルフィド類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系ポリマー、ポリベンゾオキサゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリパラフェニレン等のポリフェニレン類、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ノボラック樹脂類、メラミン樹脂類、ウレタン樹脂類、ポリカルボジイミド樹脂類等が挙げられる。
【0061】
セラミックス
前記セラミックスとしては、シリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸カリウム等の金属酸化物、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0062】
これら絶縁性基材の中でも、低誘電率なことからポリマー類が好ましく、耐熱性に優れることから、特にポリイミド類、芳香族ポリアミド類などの液晶性ポリマー類、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系ポリマー類などを用いることが好ましい。
【0063】
(b)基材の形状
特に本発明において立体的に導電部を形成する場合、すなわち、例えば、シート状の絶縁体に平面方向のみならず厚み方向にも導電部を形成する場合には、絶縁体として前記絶縁体材料からなる連続空孔を有する多孔質体を用いることにより精度の良い導電部を容易に形成することができる。
【0064】
多孔質体を用いて、多孔質体の空孔内で鍍金を析出させる。すると多孔質体に析出物が含浸した領域からなる立体的な導電部を形成できる。この導電部は、連続空孔が三次元的に連続な場合、多孔質体を構成する絶縁材料と析出物とが相互貫入した、等方的に導電性の複合体である。このような複合体からなる立体的な形状の導電部は、三次元配線や多層配線或いは多層配線の層間接続用のビア等として用いることができる。
【0065】
多孔質体
多孔質体としては、具体的にはポリマー材料等のシートに三次元連続空孔が形成された多孔質シートや、ポリマー繊維やセラミックス繊維を三次元網目状に絡めたクロスや不織布等が用いられる。
【0066】
具体的には、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の結晶性ポリマーのシートを延伸して製作したものや、ポリマーのスピノーダル分解やミクロ相分離等の相分離現象を利用して形成したポリイミド等の多孔質体でも良い。
【0067】
クロスや不織布としてはセラミックス繊維やポリマー繊維から製作したものが用いられる。
【0068】
セラミック繊維としては、例えば、シリカガラス繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイト繊維、チタン酸カリウム繊維等が用いられる。
【0069】
ポリマー繊維としては、例えば、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維等の液晶性ポリマーや高Tgポリマー繊維や、PTFE繊維等のフッ素系ポリマー繊維、ポリパラフェニレンスルフィド繊維、芳香族ポリイミド繊維、ポリベンゾオキサゾール誘導体繊維等が用いられる。
【0070】
上記セラミック繊維とポリマー繊維を混ぜても良いし,セラミックスとポリマーの複合繊維でも良い。
【0071】
クロスよりも不織布の方が三次元的に繊維が絡み合って、空孔径が均一であることから好ましい。さらに不織布としては、例えばメルトブロー法によって製作したポリマー繊維の不織布や、芳香族ポリアミド等の液晶性ポリマーの繊維を細かく粉砕して得られる直径が0.1〜0.3μm程度の微細な繊維を漉いた不織布などが繊維径が微細で空孔径も均一であることから好ましい。これらの不織布は寸法安定性を向上させるために、繊維同士を溶着させたり、ポリマー等をコーティングすることによって、繊維同士がずれたりしないようにするのが良い。
【0072】
これら多孔質体の中でも、ポリテトラフルオロエチレンを延伸した多孔質体や、相分離現象を利用して形成したポリイミド等の多孔質体や、液晶性ポリマーの微細繊維の不織布が、三次元的に均質で異方性が少ない多孔質構造を有し、空孔径が均一なことから好ましい。
【0073】
連続空孔の平均空孔径は0.05〜5μmの範囲で設定されることが好ましく、更には0.1〜0.5μmの範囲であることが望ましい。あまり空孔径が小さすぎると鍍金液等が充分多孔質内部まで浸透せず、多孔質内部を均一に鍍金することができない。また空孔径が大きすぎると、微細な鍍金金属のパターンを形成することが難しい上、紫外線や可視光線等で露光する場合に露光光線が多孔質構造によって散乱されてしまいコントラスト良くパターン露光することが難しい。また露光光線の過度の散乱を防止し、鍍金金属が空孔内で均一に成長するために、空孔径は均一であるのが良い。空孔率は20〜95%の範囲に設定されることが好ましく、更には45〜90%の範囲であることが望ましい。あまり空孔率が小さすぎると、鍍金液等が充分浸透しなかったり、形成され鍍金金属のパターンの導電性が低かったりする。あまり空孔率が大きすぎると多孔質体の強度が充分でなく、寸法安定性も悪くなってしまう。
【0074】
(c)親水性化処理
基材の表面は、鍍金液等との濡れ性を良くするために親水性化処理するのが良い。特に、基材として多孔質体を用い、多孔質体内部まで鍍金する場合には、鍍金液を多孔質体の内部まで浸透させるために、親水性化処理は重要である。
【0075】
親水性化処理する方法は、特に限定されず広く公知の手法を用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール等の親水性ポリマー等の親水性物質を塗布する方法や、光学的、熱的、化学的処理等により表面を改質する方法等が用いられる。
【0076】
具体的には、酸素気流下、或いは、オゾン気流下等で紫外線を照射したり、オゾン雰囲気やオゾン溶液に暴露して基材表面を酸化する。また、例えば、大気中、或いは、真空中の酸素などのプラズマ処理によって基材表面を酸化する手法もある。また、酸やアルカリで処理したりしても良い。更には、特開2000−290413号公報に開示されているような酸化手法によって親水性化しても良い。
【0077】
ポリマーやガラス等に酸化処理を行うと、カルボキシル基やシラノール基等の金属陽イオンを吸着できる酸性基が発生する。しかしながら、前述したように、陰イオン交換性基を用いる本発明の方法によれば、これら酸性基が存在しても鍍金が異常析出するおそれはない。
【0078】
これら親水性化処理の中でも大気中のプラズマ処理が、工程が簡便なことから好ましい。
【0079】
(B)感光性層
(a)陰イオン交換性基
本発明における、陰イオン交換性基とは、陰イオンを吸着可能な基のことであり、陽イオン性の基か、塩基性の基のことを言う。
【0080】
陽イオン性の基
具体的には、陽イオン性の基としては、例えば、アンモニウム基等の脂肪族系アミン、或いは、芳香族系アミンの四級アンモニウム塩誘導体基、或いは、ピリジニウム基やイミダゾリウム基等の含窒素複素環の四級アンモニウム塩誘導体基が挙げられる。
【0081】
塩基性の基
塩基性基としては、脂肪族系や芳香族系のアミノ基、ピリジン残基やイミダゾール残基等の含窒素複素環誘導体基が挙げられる。
【0082】
(b)膨潤性
本実施の形態における感光性層は、膨潤性を有する層である。膨潤性とは、後の工程で基材上に鍍金核を吸着させる際に、鍍金核吸着に用いる溶液と親和性を有し、この溶液を層内に取り込んで体積膨張を起こす性質を言う。これによって、鍍金核吸着工程において、感光性層の内部まで充分鍍金核が浸透し、感光性層に高密度に鍍金核が吸着するので、短時間に充分量の無電解鍍金層を形成することができる。
【0083】
(c)感光性層の形成
感光性層
また、本発明における、エネルギー線照射により陰イオン交換性基を生成あるいは消失する感光性層とは、基材表面に形成された層であり、エネルギー線照射によって陰イオン交換性基を生成あるいは消失する感光性基を有する層である。
【0084】
感光性層は、感光性基を有する感光性化合物のみから構成することができるが、他の化合物との混合体であっても良い。こうした感光性基を含む感光性層の所望のパターンでエネルギー線を照射することによって、照射部位にイオン交換性基を生成または消失させる。例えば配線基板などとして複合部材を用いる場合、基材には電気的特性、耐熱性、機械的強度などが要求される。基材自身に感光性を持たせる場合、これらの要求特性との両立が難しい。このため非感光性の基材表面に感光性層を形成するのが良い。特に基材として多孔質体を用い、多孔質体内部にまで導電部を形成する際には、基材とは別に感光性層が形成されているのが良い。多孔質体そのものが感光性であると、照射されるエネルギー線を強く吸収するため、多孔質体の内部まで充分に露光することが難しくなる。照射するエネルギー線に対して吸収が無いか、吸収が少ない材質からなる多孔質体の表面に薄く感光性層が形成されるのが良い。多孔質体の空孔内表面に形成される感光性層の層厚は、好ましくは1〜100nm、より望ましくは20〜50nmの範囲に設定されるのが良い。あまり薄すぎると陰イオン交換性基の量が充分でなく、充分な量の鍍金の触媒を吸着させることが出来ない。また、あまり厚すぎると空孔を閉塞してしまうおそれがある。また照射したエネルギー線が表面付近で全て吸収されてしまって、多孔質体内部の感光性層まで充分に感光させることができなくなってしまう。感光性層の層厚は空孔を閉塞しないように、空孔径と比較して充分薄くするのは言うまでもない。感光性層の厚さは、空孔径の20%以下、好ましくは10%以下であるのが良い。
【0085】
感光性層の形成
感光性層は、感光性基と架橋性基を有する感光性化合物や感光性基を有する化合物を含有する感光性組成物を、基材表面にコーティングすることによって形成することができる。或いは、基材表面に存在する官能基と結合できる基と、感光性基とを合わせ持つ分子を基材表面に結合させて感光性層を形成しても良い。
【0086】
特開平6−202343号公報には、金属イオンを吸着するカルボキシル基を発生する基と、ガラス基板表面に結合できるトリアルコキシシリル基を合わせ持つシランカップリング剤を用いて選択的な鍍金をする方法が開示されている。
【0087】
しかし、この方法では、トリアルコキシ基から発生するシラノール基にも金属イオンが吸着してしまい、無秩序に鍍金が析出する可能性がある。しかしながら、陰イオン交換性基とシラノール基は電荷の極性が逆なため、こうした無秩序な鍍金の析出は起き難い。
また金属イオンを吸着する陰イオン交換性基であるアミノ基と、ガラス基板表面に結合できるトリアルコキシシリル基を合わせ持つシランカップリング剤を用いて選択的な鍍金をする方法も知られている。200nm以下の短波長の紫外線を照射して、炭素―炭素間の共有結合を切断して、照射部のアミノ基を消失させて潜像を形成する。この潜像にパラジウムコロイドを吸着させる。しかしながらこの方法でも、シランカップリング剤で充分な膜厚の感光性層を形成することが難しい上、高密度に架橋してしまうため、感光性層が鍍金核溶液に対して膨潤しない。そのため感光性層表面のみにパラジウムコロイドが付着するだけで、鍍金核の吸着量が充分でない。また炭素―炭素間の共有結合を短波長の紫外線で直接切断する方法なため、露光の際の感度が悪い。また基材が多孔質体の場合、基材内部まで露光することが難しい。しかしながら感光性基を持つポリマーや高分子化合物からなる感光性層であれば、膨潤しやすく、充分な量の鍍金核を吸着させることが可能である。また本発明で述べるような感光性基、特にアシルオキシム誘導体基やアジド誘導体基を感光性基として用いることによって、高感度で潜像を形成することができる。また波長の選択の幅も広く、多孔質体の内部にまで鍍金パターンを形成する場合に優れている。
【0088】
また、化学反応によって基材表面を改質することにより感光性層を形成することもできる。
【0089】
例えば、界面グラフト重合法によって、基材表面に形成した成長点から感光性基を有する感光性グラフトポリマー鎖を成長させて、基材表面を感光性グラフトポリマー鎖によって被覆しても良い。更には、ポリイミド多孔質シート等の芳香環を有するポリマーの多孔質シート等の基材表面に官能基を導入して、導入した官能基を化学修飾して感光性基を形成しても良い。官能基を導入するにはフリーデルクラフツ反応等によってスルホン酸基等を導入しても良いし、特開2000−290413号に開示されているような酸化手法によって水酸基やカルボキシル基を導入しても良い。基材の材料選択の幅が広いこと、及び、感光性層を容易に形成できることから、基材表面に感光性化合物や感光性組成物からなる感光材料をコーティングして感光性層を形成することが最も好ましい。
【0090】
(d)感光性基
感光性基とは、照射されたエネルギー線を吸収することによって単独で化学反応して陰イオン交換性基を発生するもの、或いは、照射により化学反応を生じて何らかの陰イオン交換性基の前駆体を生じ、前記前駆体がさらに周囲に存在する物質と化学反応を生じることにより陰イオン交換性基を生成するもの、エネルギー線照射によって塩基発生剤から発生した塩基等と作用して陰イオン交換性基を生成するもの、更にはエネルギー線照射によって陰イオン交換性基を消失するもののいずれかである。なかでも単独で化学反応して陰イオン交換性基を発生あるいは消失する感光性基が最も良い。なぜなら単独で反応するために、湿度などの周囲の雰囲気の影響を受けにくく、また感光性基を有する化合物を含む組成物を塗布することよって感光性層を形成する際などに起こりやすい、組成の偏りに起因する反応性のばらつきを防止することが可能だからである。また照射によって生じた前駆体が周囲の物質と化学反応して陰イオン交換性基を生ずる場合も、周囲の物質が水などの湿気として大気中にあたりまえに含有される物質や、感光性層中にあらかじめ混合などされて含有されている物質であるのがプロセスが簡略であるため優れている。また陰イオン交換性基を消失する感光性基よりも、生成する感光性基の方がよい。鍍金の反応は増幅反応なため、微量の鍍金核が存在すれば、そこからある程度の鍍金が成長することが可能である。よって陰イオン交換性基を消失させる場合には、ほぼ完全に消失させないと、鍍金したくな部分(この場合にはすなわち照射部位)から鍍金が異常析出する恐れがあり、絶縁不良などの原因となる。対して、陰イオン交換性基を生成する場合、たとえ反応率があまり高くなくとも、少なくとも鍍金したくない部分(この場合にはすなわち非照射部位)に鍍金が異常析出するおそれがない。
【0091】
エネルギー線を吸収して単独で陰イオン交換性基を生成する感光性基としては、例えばアミン等の塩基性基を生成するカルバモイルオキシイミノ基などのカルバモイルオキシム誘導体基、カルバミン酸誘導体基、ホルムアミド誘導体基等が挙げられる。ピペリジン誘導体のカルバミン酸誘導体は塩基が触媒となって熱的にアミンであるピペリジン誘導体を生成する。この為、他の塩基性基を生成する感光性基や光塩基発生剤と組み合わせることによって、少ない露光量で多量の塩基性基を発生することが可能である。
【0092】
エネルギー線照射により化学反応を生じて何らかの陰イオン交換性基の前駆体を生じ、前記前駆体が更に化学反応を生じることにより陰イオン交換性基を生成するもの、いわゆる照射による化学反応をきっかけとする多段階反応により陰イオン交換性基を生じる感光性基としては、例えば、アシルオキシム誘導体基、アジド誘導体基が挙げられる。
【0093】
エネルギー線照射によって塩基発生剤から発生した塩基等と作用して陰イオン交換性基を生成する感光性基としては、ピペリジン誘導体のカルバミン酸誘導体基等が挙げられる。
【0094】
光塩基発生剤
このエネルギー線照射によって塩基発生剤から発生した塩基等と作用して陰イオン交換性基を生成する感光性基を用いる場合はエネルギー線照射で塩基を発生する光塩基発生剤を添加する。エネルギー線を照射すると、光塩基発生剤から塩基が発生し、その発生した塩基で前記保護基が分解して陰イオン交換性基が生成する。
【0095】
光塩基発生剤としては、例えば、コバルトアミン錯体、ケトンオキシムエステル類、o−ニトロベンジルカルバメート類等のカルバメート類、ホルムアミド類等が用いられ、具体的には、例えば、みどり化学製NBC−101(CAS.No.[119137−03−0])等のカルバメート類やみどり化学製TPS−OH(CAS.No.[58621−56−0])等のトリアリールスルホニウム塩類が用いられる。
【0096】
光塩基発生剤を用いる代わりに、光酸発生剤と塩基性化合物を組み合わせても良い。すなわち、エネルギー線照射部位においては光酸発生剤から酸が発生して塩基性化合物を中和する。
【0097】
これに対して未照射部位においては塩基性化合物が作用して陰イオン交換性基が生成する。これにより未照射部位にのみ選択的に陰イオン交換性基を配置することが可能となる。
【0098】
光酸発生剤
光酸発生剤としては、CFSO 、p−CHPhSO 、p−NOPhSO 等を対アニオンとするオニウム塩、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩等の塩、トリアジン類、有機ハロゲン化合物、2−ニトロベンジルスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類、N−スルホニロキシイミド類、芳香族スルホン類、キノンジアジドスルホン酸エステル類等を用いることができる。
【0099】
具体的には、光酸発生剤としては、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、2,3,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−4−ナフトキノンジアジドスルフォネート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウムスルフェート、ジフェニルスルフォニルメタン、ジフェニルスルフォニルジアゾメタン、ジフェニルジスルホン、α−メチルベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ベンゾイントシレート、ナフタルイミジルトリフルオロメタンスルホネート、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノエチル)アミノ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン・ジメチル硫酸塩、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0100】
これら光酸発生剤と、酸により新たに自己触媒的に酸を発生する酸増殖剤とを組み合わせて用いても良い。また、光酸発生性の酸増殖剤を単独で用いてももちろん良い。酸増殖剤としては、例えば、t−ブチル 2−メチル−2−(p−トルエンスルホニロキシメチル)アセトアセテートおよびその誘導体、シス−1−フェニル−2−(p−トルエンスルホニロキシ)−1−シクロヘキサノールおよびその誘導体、3−ニトロ−4−(t−ブトキシカルボニロキシ)ベンジルトシレートおよびその誘導体、3−フェニル−3,3−エチレンジオキシプロピルトシレートなど3−フェニル−3,3−エチレンジオキシプロピルスルホネート誘導体、シス−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−ピナノールなどの2−ヒドロキシビシクロアルカン−1−スルホネート誘導体、1,4−ビス(p−トルエンスルホニルオキシ)シクロヘキサンなどの1,4−シクロヘキサンジオールのスルホネート誘導体、2,4,6−トリス[2−(p−トルエンスルホニルオキシ)エチル]−1,3,5−トリオキサンなどのトリオキサン誘導体等が挙げられる。光酸発生性の酸増殖剤としては、3−フェニル−3,3−o−ニトロフェニルエチレンジオキシプロピルトシレートなどの3−フェニル−3,3−エチレンジオキシプロピルスルホネート誘導体が挙げられる。
【0101】
塩基性化合物
光酸発生剤と組み合わされて用いられる塩基性化合物は、光酸発生剤から放出される酸によって中和され、かつ陰イオン交換性基の生成反応の触媒として作用するものであれば任意のものを用いることができ、有機化合物、無機化合物いずれでも構わない。好ましくはアンモニア、一級アミン類、二級アミン類、三級アミン類等が挙げられる。
【0102】
エネルギー線照射により陰イオン交換性基を消失する感光性基とは、すなわち照射前には陰イオン交換性基を有し、この陰イオン交換性基がエネルギー線照射によって脱離するか、疎水性基に変化する基である。
【0103】
具体的には、例えば、Cl、PF 、AsF 、SbF 、BF 、ClO 、CFSO 、HSO 、FSO 、FPO 、p−CH−C−SO 、p−NO−C−SO 等の陰イオンを対アニオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩やセレノニウム塩等のオニウム塩等の構造を有する基が挙げられる。これらは陰イオン交換反応によって金属含有イオンや金属含有化合物を吸着することが可能である。正電荷に帯電しているため、金属コロイドを吸着することができる。またエネルギー線照射によって分解して、非イオン性になることによって、鍍金核を吸着し難くなる。
【0104】
(e)感光性基が結合されるポリマーあるいは高分子化合物
感光性層は鍍金核を吸着させる際や鍍金の際に、アルカリまたは酸性の水溶液中に曝されるため、それらに溶解し難いように陰イオン交換性基を生成あるいは消失する感光性基がポリマーや高分子化合物等に結合されているものが好ましい。感光性基がポリマーや高分子化合物に結合されていると、鍍金核溶液や鍍金液などに溶解することなく、これらの溶液によって膨潤させることができる。すると溶液が感光性層内部にまで浸透するため、鍍金核の吸着量や鍍金の析出量を増大させることができる。鍍金核の吸着量が導電部の導電率に大きく影響するため、鍍金溶液に膨潤することがとりわけ重要である。溶液に溶解することなく膨潤させるためには、ポリマーや高分子化合物はあまり高密度に架橋されておらず、かつ溶液に対して適度な親和性を有するものが好ましい。
【0105】
このようなポリマーとしては、フェノールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂、ピロガロール樹脂、ビニルフェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系樹脂やポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸エステル誘導体やポリメタクリル酸エステル誘導体などのアクリル樹脂系樹脂、ポリシロキサン誘導体等、樹脂分子中に架橋点の少ない長い直鎖状の部分が豊富な樹脂が挙げられる。これらの中でも塗布性などの観点からフェノール系樹脂やアクリル樹脂系樹脂を用いることが好ましい。
【0106】
高分子化合物としては、芳香環および炭素鎖よりなる高分子化合物で、好ましくは枝分かれしているものがよい。
【0107】
ポリマーあるいは高分子化合物の分子量は特に限定されないが、分子量(ポリマーの場合は重量平均分子量)が1000〜500万であることが好ましく、2000〜5万であることがより望ましい。
【0108】
ポリマーあるいは高分子化合物の分子量が小さすぎる場合には、成膜性が悪く、鍍金液等に対する耐溶剤性も低下するおそれがある。すなわち鍍金液等に溶解しやすくなる。また、溶剤に対する耐性を損なうことなく、ポリマーあるいは高分子化合物に膨潤性を付与することは困難である。一方、分子量が過剰に大きい場合には、塗布用の溶媒への溶解性が低下するうえ、塗布性も悪くなってしまう。
【0109】
ポリマーあるいは高分子化合物中の感光性基の導入量が少なすぎると充分に鍍金核を吸着させることができないし、多すぎると鍍金液等へ溶解し易くなるうえ、製作した複合部材が吸湿し易くなり、絶縁不良等の不具合を起こし易くなる。
【0110】
陰イオン交換性基を生成したり消失したりする感光性基のポリマーあるいは高分子化合物中への導入率は好ましくは5〜300%、より望ましくは30〜70%の範囲の導入率とするのが良い。ここでの導入率とはそれぞれ以下の式で表される。
【0111】
ポリマーへの感光性基の導入率(%)=(陰イオン交換性基を生成あるいは消失する基の数)÷(ポリマーのモノマー単位の数)×100
高分子化合物への感光性基の導入率(%)=(陰イオン交換性基を生成あるいは消失する基の数)÷(高分子化合物の分子量÷100)×100
耐溶剤性を高めて、鍍金液等へ溶解し難くするには、ポリマーや高分子化合物を架橋するのが良い。ポリマーや高分子化合物を架橋するには、有機過酸化物等のラジカル発生剤を添加して、ポリマー中の水素引き抜き反応によりポリマー分子間に炭素―炭素結合を生成させる等してもよい。またポリマーの主鎖あるいは側鎖や、高分子化合物中に架橋性基を導入しても良い。
【0112】
架橋性基
架橋性基としては、架橋性基同士が自己重合して架橋しても良いし、感光性層中の他の物質と結合形成して架橋しても良い。
【0113】
自己重合できる架橋性基の具体例としては、例えば、グリシジル基のようなエポキシ基、ビニルエーテル基、クロロメチルフェニル基、メチロール基、ベンゾシクロブテン基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミジル基、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基、エノキシシリル基、及び、オキシムシリル基、及び、これらの誘導体基等が挙げられる。
【0114】
これらの架橋性基は必要に応じて、光照射や加熱、或いは、触媒を作用させることによって架橋させる。
【0115】
触媒としては、エポキシ基、メチロール基、ビニルエーテル基、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基、エノキシシリル基、及び、オキシムシリル基等には酸や塩基の触媒を用い、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミジル基等の多重結合を有する基などのラジカル重合性基にはラジカル発生剤を用いる。ラジカル反応によって架橋する架橋性基は、架橋によって生じた結合が、鍍金液等強アルカリ液や強酸性液等に対する耐性に優れており好ましい。
【0116】
また、ラジカル反応は常温でも速やかに反応が進行するため、通常は加熱処理が不要である。このため、基材である基材の加熱処理に伴なう寸法安定性の低下や熱劣化を防止することが可能である。
【0117】
感光性層中の他の物質と結合形成して架橋させる場合の架橋性基としては、例えば、水酸基、イソシアネート基、カルボン酸無水物基、マレイミジル基、アルデヒド基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
【0118】
架橋助剤
この際、これらの架橋性基と結合して架橋結合を形成するために、架橋性基と結合可能な基を、1分子中に複数有する架橋助剤が用いられる。
【0119】
架橋助剤としては、例えば、水酸基にはアルコキシシラン類、アルミニウムアルコキサイド類、カルボン酸無水物、ビスマレイミド誘導体、イソシアネート化合物、多価メチロール化合物、およびエポキシ化合物等が用いられる。イソシアネート基、カルボン酸無水物基、アルコキシシリル基には多価アルコール等が用いられる。
【0120】
陰イオン交換性基と反応して架橋するものでも良い。例えば、エポキシ基、クロロメチルフェニル基、メチロール基、アルコキシシリル基、マレイミジル基、イソシアネート基、カルボン酸無水物基、アルデヒド基等はアミノ基等と反応して架橋する。特にエポキシ基はアミノ基が反応した後も、鍍金核を吸着する性質を良好に保持できるため優れている。
【0121】
また、単にこれらの基を1分子中に複数有する架橋助剤を添加して、陰イオン交換性基が導入されたポリマーを相互に架橋しても良い。これらの場合にも適宜、酸触媒等の触媒を添加しても良い。
【0122】
架橋性基としては、エネルギー線照射によって二量化するような以下の基を用いることもできる。このような基は、エネルギー線の一部を吸収するが、照射部のみを選択的に架橋することができる点で優れている。例えば、シンナモイル基、シンナミリデン基、カルコン残基、イソクマリン残基、2,5−ジメトキシスチルベン残基、スチリルピリジニウム残基、チミン残基、α−フェニルマレイミジル基、アントラセン残基、および2−ピロン残基である。
【0123】
架橋性基のポリマーや高分子化合物への導入率は好ましくは1〜100%の範囲内であり、より望ましくは10〜50%の範囲の導入率とするのが良い。ここでの導入率とはそれぞれ以下の式で表わされる。
【0124】
ポリマーへの架橋性基の導入率(%)=(架橋性基の数)÷(ポリマーのモノマー単位の数)×100
高分子化合物への架橋性基の導入率(%)=(陰イオン交換性基を生成あるいは消失する基の数)÷(高分子化合物の分子量÷100)×100
ポリマーや高分子化合物中における架橋性基の導入量が少なすぎる場合には、充分に架橋させることが困難となるので、鍍金液等へ溶解し易くなる。一方、架橋性基が過剰に導入されていると、架橋した際に、鍍金核溶液などに膨潤しにくくなる上、感光層が硬化収縮して、基材が変形したり、基材から感光層が剥離するおそれがある。
【0125】
架橋反応は、感光性層を形成した後に行うのが良い。感光性層を形成する前に架橋してしまうと、ポリマーや高分子化合物の溶媒への溶解性が低下して、絶縁性基材への塗布が困難となってしまう。感光性層を形成後、加熱、エネルギー線照射、空気中の湿気等の刺激によって架橋反応を進行させるのが良い。
【0126】
エネルギー線照射は、陰イオン交換性基を発生あるいは消失させる際のエネルギー線照射によって兼ねるのが良い。例えば、エネルギー線照射によって活性化する触媒としては、光酸発生剤、光塩基発生剤、ラジカル発生剤が用いられる。照射するエネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線等の光線や、X線、電子線、α線、γ線、重粒子線等、特に限定されない。通常は紫外線、可視光線、電子線等が最もよく用いられる。
【0127】
既に説明したように、架橋反応はラジカル反応であることが最も望ましく、ラジカル発生剤をラジカル重合性の架橋性化合物や架橋性基と組み合わせて用いることが好ましい。
【0128】
ラジカル発生剤
ラジカル発生剤としては、例えば、以下のような有機過酸化物類を用いることができる。
【0129】
例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド、メチルアセトアセテートパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール類、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、t−ヘキシルハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキサイド類、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキシド、スクシニックアッシドパーオキサイド、m−トルオイルアンドベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオドデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシメレイクアシッド、t−ブチルパーオキシ 3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ イソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキシル モノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等のパーオキシエステル類、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキシド、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、及び、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等である。特に、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及び、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等の多官能ラジカル発生剤は、架橋助剤としても作用するため好ましい。また、過酸化物以外のアゾビスイソブチロニトリル等アゾニトリル類を用いることもできる。
【0130】
増感剤
感光性層に各種増感剤を添加しても良い。増感剤を添加することによって感度を向上したり、用いる光源に合わせて感光波長を様々に変化させることが可能となる。
【0131】
また、多孔質基材内部まで感光させようとする場合、基材の吸収波長以外の波長の光等基材を透過し易いエネルギー線で感光させるのが好ましい。
【0132】
例えば、ポリイミドの多孔質基材等は多くの場合、約500nm以下の光を吸収してしまうため、例えば、g線やi線等では多孔質内部まで露光することは難しい。こうした場合でも500nm以上の波長領域に吸収帯を有する可視光増感剤を用いることで、多孔質内部まで良好に感光させることが可能となる。
【0133】
増感剤の具体例としては、例えば、芳香族炭化水素及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、o−ベンゾイル安息香酸エステル及びその誘導体、アセトフェノン及びその誘導体、ベンゾイン並びにベンゾインエーテル及びその誘導体、キサントン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体ジスルフィド化合物、キノン系化合物、ハロゲン化炭化水素含有化合物並びにアミン類、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキアゾリジノン、5−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−3−エチル−2−チオキソ−4−オキサゾリジノン等のメロシアニン系色素、3−ブチル−1,1−ジメチル−2−[2[2−ジフェニルアミノ−3−[(3−ブチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エチエニル]−1H−ベンズ[e]インドリウム パーコレート、2−[2−[2−クロロ−3−[(3−エチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−1,1−ジメチル−3−エチル−1H−ベンズ[e]インドリウム テトラフルオロボレート、2−[2−[2−クロロ−3−[(3−エチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エテニル]−1,1−ジメチル−3−エチル−1H−ベンズ[e]インドリウム アイオダイド等のシアニン系色素、スクアリウム系シアニン色素、2−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]ベンゾチアゾール、2−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]ナフト[1,2−d]チアゾール、2−[(m−ヒドロキシ−p−メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール等のスチリル系色素、エオシンB(C.I.No.45400)、エオシンJ(C.I.No.45380)、シアノシン(C.I.No.45410)、ベンガルローズ、エリスロシン(C.I.No.45430)、2,3,7−トリヒドロキシ−9−フェニルキサンテン−6−オン、ローダミン6G等のキサンテン色素、チオニン(C.I.No.52000)、アズレA(C.I.No.52005)、アズレC(C.I.No.52002)等のチアジン色素、ピロニンB(C.I.No.45005)、ピロニンGY(C.I.No.45005)等のピロニン色素、3−アセチルクマリン、3−アセチル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンズイミダゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、10−(2−ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−カルベトキシ−7−(ジエチルアミノ)クマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等のクマリン系色素、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)等のケトクマリン系色素、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジブチルアミノスチリル)−4H−ピラン等のDCM系色素がある。
【0134】
このような増感剤の配合割合は露光により陰イオン交換性基を生成あるいは消失する化合物に対して、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%であることが望ましい。
【0135】
増感剤は感光性層中に単に混ぜ込むだけでなく、例えば感光性基を有するポリマーの側鎖等に導入しても良い。また感光性層が充分薄い場合には、増感剤を含む層を感光性層上に積層しても良い。
【0136】
本発明において、前述の感光性層の形成においては、後述の複合部材形成用感光性化合物あるいは複合部材形成用感光性組成物を含有する感光性材料を用いることができる。
【0137】
(C)照射するエネルギー線
照射するエネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線等の光線や、X線、電子線、α線、γ線、重粒子線等特に限定されない。通常は紫外線、可視光線、電子線等が最もよく用いられる。とりわけ280nm以上、好ましくは350nm以上の紫外線および可視光線が良い。例えば高圧水銀ランプを光源とするi線(波長=365nm)、g線(波長=435nm)、アルゴンイオンレーザー光(例えば波長=488nm)、各種半導体レーザー光(例えば波長=405nm)などが用いられる。これらのエネルギー線は照射装置が比較的簡便な上、大気中での大面積の照射が可能である。またマスクを用いる場合も、マスクとして一般的なポリマーフィルムマスクやガラスマスクを用いることが可能である。あまり短波長であると、マスクのガラスやポリマーフィルム自体に吸収されてしまう。また前述したように、多孔質の基材の内部まで鍍金する場合、照射するエネルギー線は多孔質基材を透過させる必要がある。耐熱性の芳香族ポリマーからなる多孔質基材の場合、例えば250〜260nm付近にピークを有するベンゼン環などの強い吸収がある。このため280nm以下では、充分な透過率を得ることが難しくなる。
【0138】
(D)吸 着
鍍金核を陰イオン交換性基に吸着させるには、鍍金核の溶液に、感光性層を形成した基材を接触させることによって行う。
【0139】
接触の方法は基材を溶液に浸漬するのが最もよいが、溶液を基材にスプレーする等して塗布しても良い。
【0140】
鍍金核としては、金属含有イオン、金属含有化合物、金属コロイドが用いられる。
【0141】
(a)金属含有イオン
金属含有イオンとしては、還元等して無電解鍍金の触媒となる金、白金、パラジウム、銅、銀、ニッケル、ルテニウム、ロジウム等の有機酸や無機酸、或いは、有機塩や無機塩等が挙げられる。
【0142】
金属含有イオンは陰イオン交換性基に対イオンとして吸着されるため、陰イオンであることが望まれる。
【0143】
陰イオンとしては、具体的には、例えば、(AuCl 、PtCl 2−、PtCl 2−、PdCl 2−、PdCl 2−、CuCl 2−等が挙げられる。通常これらの陰イオンは、有機酸や無機酸、あるいはナトリウム塩、カリウム塩等の無機塩、アンモニウム塩などの有機塩などの形で、水やアルコールなどに溶解して用いられる。陰イオン交換性基としてアミノ基等の塩基性基を用いる場合は、酸等を作用させてイオン化してから陰イオンを吸着させるのが良い。
【0144】
酸としては強酸である塩酸や硫酸等を用いて、塩基性基の強酸との塩を発生させると良い。このとき金属塩として、強塩基の塩であるナトリウム塩やカリウム塩を用いると、強酸(塩酸や硫酸等)の塩と、強塩基(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等)の塩とから強酸と強塩基との塩を速やかに生成する反応により、金属含有イオンが陰イオン交換性基に対イオンとして反応性良く吸着させることができる。
【0145】
イオン化と吸着を同時に行うことが可能なことから、金属含有イオンを発生可能な有機酸や無機酸を用いるのが良い。
【0146】
有機酸や無機酸
これらの金属含有の陰イオンを発生可能な有機酸や無機酸としては、テトラクロロ金(III)酸、ヘキサクロロ白金(IV)酸、テトラクロロパラジウム(II)酸が挙げられる。
【0147】
有機塩や無機塩
有機塩や無機塩としては、テトラクロロ金(III)酸カリウム、テトラクロロ金(III)酸ナトリウム等の塩化金酸塩、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、テトラクロロ白金(II)酸ナトリウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム等の塩化白金酸塩、テトラクロロパラジウム(II)酸カリウム、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウム等の塩化パラジウム酸塩、テトラクロロ銅(II)酸カリウム、テトラクロロ銅(II)酸ナトリウム、テトラクロロ銅(II)酸アンモニウム等の塩化銅酸塩、ジシアノ銀酸カリウム等の銀塩等が挙げられる。
【0148】
(b)金属含有化合物
金属含有化合物としては、陰イオン交換性基に吸着あるいは結合可能な結合性基を有する有機金属錯体が挙げられる。
【0149】
具体的には、例えば、β−ジケトン誘導体、ビピリジン誘導体、ビキノリン誘導体、フェナントロレン誘導体、ポルフィリン誘導体等の配位子からなる有機金属錯体に結合性基を導入したものが用いられる。
【0150】
結合性基としては、例えば、フッ素置換アルキル基等に結合した水酸基やメルカプト基、フェノール性水酸基、チオフェノール性水酸基等の酸性の水酸基やメルカプト基、カルボキシル基、スルホ基(スルホン酸基)、ホスホノ基(リン酸基)等の酸性基およびこれらの塩が挙げられる。これらの酸性基および塩は陰イオン交換性基の対イオンとして吸着したり、エステル結合等を形成して結合したりする。
【0151】
また、アルデヒド基、エポキシ基、活性エステル基、酸無水物誘導体基、マレイミド誘導体基等の陰イオン交換性基であるアミノ基等と反応して結合するものも用いることができる。またアルコキシシリル基等の金属アルコキサイド誘導体基やニトロアリールハライド誘導体基等でも良い。活性エステル基としては、4−ニトロフェニルオキシカルボニル基誘導体、カルボキシル基とN−ヒドロキシスクシンイミドやN−ヒドロキシベンズイミドとの活性エステル基、イミドエステル誘導体基等が挙げられる。アルコキシシリル基としては、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、メトキシジメチルシリル基等が挙げられる。
【0152】
通常、これらの金属含有イオンや金属含有化合物は、水溶液やアルコール溶液等の溶液とする。この溶液に陰イオン交換性基のパターンが形成された基材を浸漬或いは塗布する等して接触させて、陰イオン交換性基への吸着を行う。溶液は取り扱いが容易で、安全であることから水溶液にするのが良い。
【0153】
金属含有化合物は、結合性基がカルボキシル基等の酸性基の場合、強塩基との塩、すなわちナトリウム塩やカリウム塩等として水溶性を付加するのが良い。この場合、陰イオン交換性基は強酸との塩とするのが良い。アミノ基等の陰イオン交換性基は塩酸や硫酸等で処理して塩酸塩や硫酸塩などの強酸塩とする。これにナトリウム塩やカリウム塩とした金属含有化合物を作用させると、強酸+弱塩基の塩と弱酸+強塩基の塩から強酸+強塩基の塩と弱酸+弱塩基の塩が発生する反応により、金属含有化合物を陰イオン交換性基に効率よく吸着させることができる。
【0154】
吸着された金属含有イオンや金属含有化合物は、そのまま或いは還元して金属化することによって無電解鍍金の触媒として用いる。
【0155】
鍍金する金属よりイオン化傾向の小さな金属のイオンは還元せずとも、鍍金液中の鍍金金属のイオンによって還元される。
【0156】
例えば、銅鍍金する場合、金、白金、パラジウム、銀等のイオンはそのまま用いることが出来る。銅イオンは還元して銅微粒子にしてから無電解鍍金の触媒として用いる。
【0157】
還元剤としては、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩等の公知の還元剤を用いることができる。
還元剤は一般には水溶液等の溶液として、この溶液に溶液に基材を浸漬する等して還元する。還元する前に基材を水等で洗浄して余分の金属含有イオンや金属含有化合物を除去しておくことが好ましい。
【0158】
(c)金属コロイド
金属コロイド溶液としては、金、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル等のコロイドの水溶液、或いは、アルコール等の有機溶媒の溶液が用いられる。
金属コロイドは界面活性剤やポリマー等保護物質によって保護された保護コロイドを用いるのが、金属コロイド溶液の貯蔵安定性の点から望ましい。金属コロイドは多くの場合、正か負に帯電しており、帯電する極性は保護物質によって変化させることができる。
【0159】
陰イオン交換性基も多くの場合、液中で帯電するため、金属コロイドは陰イオン交換性基との静電引力によって吸着される。金属コロイドは負に帯電しているものを用いるのが好ましい。
【0160】
結合性基を表面に有する金属コロイドを用いて、この結合性基を陰イオン交換性基に結合させてもよい。
結合性基としては、例えば、フェノール性水酸基、チオフェノール性水酸基、フッ素置換アルキル基等に結合した水酸基やメルカプト基等の酸性の水酸基やメルカプト基、カルボキシル基、スルホ基(スルホン酸基)、ホスホノ基(リン酸基)等の酸性基やその塩が挙げられる。これらの酸性基は陰イオン交換性基の対イオンとして吸着したり、エステル結合等を形成して結合したりする。また、アルデヒド基、エポキシ基、金属アルコキサイド誘導体基、活性エステル基、アルコキシシリル基などの金属アルコキサイド誘導体基、酸無水物誘導体基、マレイミド誘導体基、ニトロアリールハライド誘導体基等の陰イオン交換性基であるアミノ基等と反応して結合するものも用いることができる。活性エステル基としては、4−ニトロフェニルオキシカルボニル基誘導体、カルボキシル基とN−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンズイミドとの活性エステル基、イミドエステル誘導体基等が挙げられる。アルコキシシリル基としては、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、メトキシジメチルシリル基等が挙げられる。
【0161】
金属コロイドは還元する必要は無く、そのまま無電解鍍金の触媒として用いることができる。保護コロイドの場合、酸やアルカリ溶液、酸化剤溶液等を用いたエッチング等で保護物質を除去した方が触媒としての活性は向上する。
【0162】
金属コロイド溶液の具体例としてはパラジウムヒドロゾルが挙げられる。パラジウムヒドロゾルは例えば塩化パラジウム(II)と塩化ナトリウムの水溶液に、激しく攪拌しながら界面活性剤の水溶液を加え、続いて還元剤の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を加えて調製する。
【0163】
界面活性剤としては特に限定されず、広く公知のものを用いることができる。例えばステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン性界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールモノ−p−ノニルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤等が用いられる。負に帯電した金属コロイドを調整するには、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤を用いるとよい。
【0164】
金属コロイドのコロイドの粒子径は特には限定されないが、陰イオン交換性基の微細なパターンに均一に、かつ高密度に吸着させるためには、一般的には1〜100nm、好ましくは1〜20nmがよい。特に多孔質体内部にまで金属コロイドを吸着させる場合には、粒子径は1〜10nmにするのがよい。
【0165】
鍍金核の溶液の濃度は好ましくは重量比で0.1〜30%、より望ましくは1〜15%の範囲に設定するのが良い。濃度が小さすぎると陰イオン交換性基に充分な量の鍍金核が吸着しなかったり、吸着速度が遅く、吸着に時間がかかってしまう。濃度が大き過ぎると、陰イオン交換性基が存在する領域以外にも無秩序に鍍金核が吸着してしまうおそれがあり、良好な複合部材を形成することが難しくなる。鍍金核の溶液に基材を浸漬する等して、溶液と基材を接触させる時間は特に限定されないが、一般的は10秒から5時間程度の間で行われる。
【0166】
鍍金核の溶液には、基材表面への濡れ性を良くするために、界面活性剤等を添加するのが良い。特に基材として多孔質基材を用いる場合には、多孔質内部まで充分溶液が浸透するように、界面活性剤を添加した方が良い。界面活性剤としては、鍍金核の吸着を阻害したり、異常吸着を防ぐために非イオン性界面活性剤を用いるのがよい。また化学変化し難いフッ素系の界面活性剤等が良い。鍍金核の超臨界流体の溶液を用いても良い。超臨界流体は多孔質内部等細かい構造内部にも良好に浸透可能なため優れている。
【0167】
また多孔質基材の内部にまで無電解鍍金する場合、金属含有イオン溶液や金属含有化合物溶液を用いた方が良好な結果を得られる。金属コロイドは溶液中での拡散速度が小さく、多孔質内部にまで拡散し難い。そのため多孔質基材の表面近傍のみに鍍金する場合に適している。
【0168】
これに対して金属含有イオンや金属含有化合物は拡散速度が大きいため多孔質内部に充分に吸着させることができる。そのためビアを形成する場合等、多孔質内部にも鍍金する必要がある場合に適している。また多孔質基材でなくとも、基材表面に微細な凸凹がある場合等は、金属含有イオン溶液や金属含有化合物溶液を用いた方が微細な凸凹に追従して密着性よく鍍金することが出来る。
【0169】
基材を鍍金核の溶液と接触させた後、洗浄して余分な鍍金核を除去するのが好ましい。例えば、水等の、鍍金核の溶液の溶媒と同じ溶媒で洗浄するのがよい。洗浄することによって、陰イオン交換性基が存在する領域以外に付着した鍍金核を除去し、陰イオン交換性基が存在する領域以外に無秩序に鍍金されることを防止することができる。
【0170】
基材として多孔質基材を用いる場合は、洗浄は特に重要である。洗浄は水等の洗浄液の入った洗浄槽に基材を浸漬したり、洗浄液をスプレー等で吹き付ける等する。基材として平面板等、凸凹が少なく、溶液がたまりにくい基材を用いる場合には、単にエアナイフや超音波振動エア等、空気や窒素等のガス流で余分な鍍金核の溶液を吹き飛ばしても良い。また、更には、振動を加えたり、遠心分離等の方法で溶液を振り飛ばしても良い。
【0171】
アダプター分子
通常は鍍金核を陰イオン交換性基に直接吸着させるが、より広範な鍍金条件へ対応できるようにしたり、吸着能を向上させるために、アダプター分子を用いることがある。ここでアダプター分子とは、陰イオン交換性基と鍍金核とを結合する分子のことを称す。アダプター分子は分子中に陰イオン交換性基と結合するための結合性基と、鍍金核を吸着するための吸着性基をあわせ持つ。まず陰イオン交換性基にアダプター分子を結合させる。しかる後に、結合したアダプター分子に鍍金核を吸着させる。
【0172】
こうしたアダプター分子を用いると、主に次の二つの利点がある。
【0173】
一つ目の利点としては、鍍金核の種類や吸着条件、鍍金液の種類や鍍金条件の選択の幅を広く出来ることである。
【0174】
例えば、吸着性基として陽イオン交換性基を有するアダプター分子を用いれば、金属陽イオンや正に帯電した金属コロイド等を吸着できるようになる。また、吸着性基として様々な配位子を用いれば、様々な金属含有イオンを高い吸着性と選択性で吸着することができる。また、用いる鍍金核の変化や、様々な吸着条件に対応することが可能となる。同様に鍍金工程においても、様々な鍍金液の組成及び性状や、鍍金条件に対応可能となる。
【0175】
もちろん、従来の陽イオン交換性基にも同様なアダプター分子を適用することは可能である。しかしながら、陰イオン交換性基であるアミノ基等の方が結合反応に対する高い反応性を有する。このため温和な反応条件においても、結合性基と強固な結合を形成することが可能である。
【0176】
二つ目の利点としては、鍍金核の吸着量を増大できる点である。1分子中に多数の吸着性基を有するアダプター分子を用いれば、結果として陰イオン交換性基一つ当たり、多数の鍍金核を吸着させることが可能である。
【0177】
アダプター分子の結合性基としては、フェノール性水酸基、チオフェノール性水酸基、フッ素置換アルキル基等に結合した水酸基やメルカプト基等の酸性の水酸基やメルカプト基、カルボキシル基、スルホ基(スルホン酸基)、ホスホノ基(リン酸基)等の酸性基やその塩を用いることができる。
【0178】
これらの酸性基は陰イオン交換性基の対イオンとして結合したり、エステル結合等を形成して結合したりする。しかしながら、対イオンとして結合した場合は、酸性やアルカリ性の条件下で解離し易い。そこで、より強固な共有結合による結合を形成できるアルデヒド基、エポキシ基、金属アルコキサイド誘導体基、活性エステル基、アルコキシシリル基などの金属アルコキサイド誘導体基、酸無水物誘導体基、マレイミド誘導体基、ニトロアリールハライド誘導体基等の陰イオン交換性基であるアミノ基等と反応して結合するものが好ましい。活性エステル基としては、4−ニトロフェニルオキシカルボニル基誘導体、カルボキシル基とN−ヒドロキシスクシンイミドやN−ヒドロキシベンズイミドとの活性エステル基、イミドエステル誘導体基等が挙げられる。アルコキシシリル基としては、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、メトキシジメチルシリル基等が挙げられる。
【0179】
アダプター分子の吸着性基としては、フェノール性水酸基、チオフェノール性水酸基、フッ素置換アルキル基等に結合した水酸基やメルカプト基等の酸性の水酸基やメルカプト基、カルボキシル基、スルホ基(スルホン酸基)、ホスホノ基(リン酸基)等の酸性基およびその塩、あるいはクラウンエーテル誘導体、オリゴエチレンオキシドやポリエチレンオキシド等のエチレンオキシド誘導体、β―ジケトン誘導体、ビピリジン誘導体、ビキノリン誘導体、フェナントロレン誘導体、ポルフィリン誘導体等の金属配位子の誘導体等が挙げられる。鍍金核の吸着量を大きくするために、これらの吸着性基を1分子中に複数有するのが良い。ポリマー状のアダプター分子の主鎖あるいは側鎖中にこれらの吸着性基を導入したもの等も用いることができる。
【0180】
これらのアダプター分子の溶液に陰イオン交換性基のパターンを形成した基材を浸漬する等して接触させ、アダプター分子を陰イオン交換性基と結合させる。その後、これまでと同様に鍍金核を吸着させる。
【0181】
(E)無電解鍍金
次に、吸着させた鍍金核或いはその還元体を鍍金触媒として無電解鍍金を施して導電パターンを形成する。
【0182】
無電解鍍金は、鍍金核或いはその還元体を吸着させた基材を無電解鍍金液に浸漬等して接触させることによって行う。
【0183】
無電解鍍金液は特に限定されず、銅、ニッケル、金、銀、白金等の広く公知の鍍金液を用いることができる。無電解鍍金は陰イオン交換性基に吸着された鍍金核やその還元体を触媒として鍍金が進行するため、結果として陰イオン交換性基が存在する領域のみ選択的に鍍金することが可能となる。
【0184】
鍍金核を吸着させる陰イオン交換性基のパターンは、陰イオン交換性基を生成または消失する感光性層にパターン露光して形成した陰イオン交換性基のパターンを用いるのが露光を1回で済むため好ましい。しかし、露光パターンと反転したパターンに鍍金するには、陰イオン交換性基を消失する感光性層を用いる他に、露光を2回以上行う方法もある。
【0185】
陰イオン交換性基を生成する感光性層を用い、パターン露光して陰イオン交換性基のパターンを形成する。次に、生じた陰イオン交換性基に保護基でキャップして鍍金核が吸着しないようにする。次に、全面露光して先にパターン露光した部分以外に陰イオン交換性基を生成させる。これに鍍金核を吸着させて鍍金して、露光パターンと反転したパターンの導電部を形成する。
【0186】
陽イオン交換性基であるカルボキシル基を用いた同様の方法が特開平6−202343号公報に開示されている。
【0187】
しかしながら、カルボキシル基は反応性が充分でないため、強アルカリ性の鍍金液等に対する耐性が高い保護基をキャップし難い。耐性の高い保護基をキャップしようとすると、加熱が必要であったり特殊な試薬が必要であったりして、プロセスが煩雑になり易い。
【0188】
これに対してアミノ基等の陰イオン交換性基は反応性が高いので、室温等の温和な条件で耐性の高い保護基をキャップすることが可能である。
【0189】
保護基
保護基としてキャップする化合物としては、鍍金核を吸着しないキャップ部位と陰イオン交換性基と結合可能な結合性基を合わせ持つ化合物が良い。
【0190】
キャップ部位としては、例えば、置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、フッ素置換した基やシロキサン誘導体基等も用いることができる。ただし、キャップ部位があまり疎水性であると、鍍金液をはじき過ぎてしまって、パターンが微細な場合や、多孔質基材を用いる場合等に鍍金不良を生じ易い。そのため鍍金液に対する適度な親和性を有することが好ましく、水酸基、シラノール基、アルコキシ基、エステル基、アミド基等の極性基やこれらの極性基が置換されているのが良い。
【0191】
結合性基としては、例えば、フェノール性水酸基、チオフェノール性水酸基、フッ素置換アルキル基等に結合した水酸基やメルカプト基等の酸性の水酸基やメルカプト基、カルボキシル基、スルホ基(スルホン酸基)、ホスホノ基(リン酸基)等の酸性基やその塩が挙げられる。これらの酸性基は陰イオン交換性基の対イオンとして吸着したり、エステル結合等を形成して結合したりする。またアルデヒド基、エポキシ基、活性エステル基、酸無水物誘導体基、マレイミド誘導体基、アルコキシシリル基等の陰イオン交換性基であるアミノ基等と反応して結合するものも用いることができる。鍍金液等に対する耐性が高い結合を形成可能なことからアルデヒド基、エポキシ基、活性エステル基、酸無水物誘導体基、マレイミド誘導体基、アルコキシシリル基等を用いるのがよい。
【0192】
[II] 複合部材の製造方法(第2の態様)
次に、複合部材の製造方法の第2の態様の各工程について述べる。
この第2の態様は、前記第1の態様と比較して、感光性層を形成する材料が異なるものである。すなわち、第1の態様においては、感光性層として、基材表面にエネルギー線を照射することにより、陰イオン交換性基が生成あるいは消失する膨潤性感光性層を用いたが、この第2の態様においては、基材表面にエネルギー線を照射することにより陰イオン交換性基を生成するアシルオキシム誘導体基含有化合物、あるいはアジド誘導体基含有化合物を少なくとも有する感光性層を用いる点に特徴がある。そこで、この態様の説明においては、この基材表面にエネルギー線を照射することにより陰イオン交換性基が生成するアシルオキシム誘導体基含有化合物、あるいはアジド誘導体基含有化合物を少なくとも有する感光性層についてのみ説明し、他は省略する。
【0193】
この実施の形態において用いているアシルオキシム誘導体基、あるいはアジド誘導体基は、必要に応じて増感剤などを併用することによって、280〜800nm程度の長波長域のエネルギー線に感光する。そしてこの領域のエネルギー線は、基材となる材料に吸収されることなく、多孔質の基材の内部にある感光性層を照射することができるため、エネルギー線照射工程後の吸着工程において、基材内部まで十分に鍍金核を吸着させることができ、充分量の鍍金層を形成することができる。
またこれらの基は、感光前は鍍金核を異常吸着してしまいやすいアミド結合などを持たない。そのため照射領域と非照射領域において、コントラストの高い鍍金を行うことが可能である。また例えばオニウム塩類のように、残存した感光性基から鍍金後に酸が発生して、導電パターンを腐食したり、導電パターン間の絶縁性を低下させたりする恐れもない。よって電気的特性や信頼性に優れた複合部材を形成することが可能となる。さらにアシルオキシム誘導体基はベンゾキノンなどの架橋助剤を作用させることによって、感光部を架橋させることができる。またアジド誘導体基も、ナイトレンの水素引き抜き反応によって架橋基としても作用する。架橋助剤としてフェノールノボラック樹脂などを加えても良い。
またこれらの感光性基は、増感剤によって容易に感光波長を制御することができるため、基材内部まで充分にめっきすることが可能となる。
【0194】
この実施の形態において用いられるアシルオキシム誘導体基としては、例えば以下に示すようなものが用いられる。
【化1】
Figure 0003675768
なお、式中、R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す。
【0195】
またアジド誘導体基としては、例えば以下に示すようなものが用いられる。
【化2】
Figure 0003675768
なお、式中、Rは炭素数1から20の置換または非置換の2価の芳香環構造。具体的には例えばフェニレンなどを示す。
【0196】
これらの感光性基を含有する化合物としては、具体的には、これらの基を側鎖あるいは主鎖などに有するポリマー、あるいはこれらの基を複数個有する高分子化合物が好ましい。これらのポリマーあるいは高分子化合物としては、前述の第1の態様において説明したポリマーあるいは高分子化合物を用いることができる。
【0197】
より好ましい感光性層の材料としては、これらの感光性基を有するアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルと、前記架橋性基を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの2元共重合体であるポリマー、あるいはこれにさらに増感作用を有する基を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルを共重合させた3元共重合体、さらには溶解性を調節するための疎水性基などを有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルを共重合させた4元共重合体などが挙げられる。またアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの代わりに、スチレン誘導体、ノルボルネン誘導体、N置換マレイミド誘導体、ビニルアルコール誘導体などを用いても良い。架橋性基としては、グリシジル基などのエポキシ基や、ビニル基、アクリロイル基、あるいはメタクリロイル基などのラジカル重合性基などが良い。ポリマーの分子量としては、2000から5万程度のものが良い。
【0198】
アシルオキシム誘導体基を感光性基として有するアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの一例としては例えば以下のようなものが挙げられる。
【化3】
Figure 0003675768
なお、式中、R1は水素、メチル基。R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す。R2,R3の具体例としては、メチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基などが挙げられる。
【0199】
アジド誘導体基を感光性基として有するモノマー単位の一例としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【化4】
Figure 0003675768
【化5】
Figure 0003675768
【0200】
なお、式中、R1は水素あるいはメチル基を示す。R2は炭素数1から10の炭化水素鎖を示す。R2の具体例としては例えばメチレン、あるいはエチレンが挙げられる。
【0201】
また、本態様の感光性層は、膨潤性を有することがさらに好ましい。これによって、前述したように、20〜50nmの厚さを有することが好ましい感光性層の内部にまで、鍍金核形成組成物を含浸できるできるばかりでなく、基材の内部に存在する感光性層を十分に感光させることができるため、鍍金核を充分形成することができ、その結果厚い鍍金層を形成することができるからである。
【0202】
[III] 複合部材の製造方法(第3の態様)
次に、複合部材の製造方法の第3の態様の各工程について述べる。
【0203】
以下の説明では、理解を助けるためにシート状の多孔質体である多孔質シートを用いた場合を例に説明するが、多孔質体や電極の形状や各工程の順序等本発明がこれに限定されないことはいうまでもない。
【0204】
(1) 製造工程
(A)電極設置工程
図1のように絶縁性の多孔質シート1の片面に電極2を設置する。多孔質シートとしてはシートの表裏に貫通した空孔を有するハニカム状シートか三次元網目状シートを用いる。多孔質シートの空孔内表面にはエネルギー線の照射によって表面エネルギーが変化する感光性層を形成するのが良い。
【0205】
上記感光性層を基材に形成する方法としては、特に限定されないが、一般的には感光剤の溶液を基材に塗布するなどして形成する。塗布する感光性層の層厚は特に限定されないが、一般的には0.5〜1000nm程度の間で設定され、好ましくは1〜100nm、より望ましくは20〜50nmの範囲に設定されるのが良い。
【0206】
また電極は多孔質シートに密着して設置される。この際、多孔質シートに密着している電極面は、多孔質シートの裏表に貫通した空孔によって、多孔質シートの反対側と通じていることが重要である。後の工程において、この貫通した空孔を通して鍍金液を電極表面にまで浸透させ、鍍金金属の析出を行う。電極の設置はエネルギー線の照射後でもよい。
【0207】
(B)表面部分改質工程
次に、前記多孔質体の一部を改質してその表面エネルギーを変化させ、改質部の水に対する親和性を、非改質部の水に対する親和性と異ならしめた領域のパターンを形成する。これにより多孔質シートへの鍍金液の浸透性が変化し、親水性の部分には鍍金液が浸透しやすくなる。
この表面改質工程として、改質手段として、エネルギー線照射による方法、薬剤により改質する方法、部分加熱により改質する方法、機械的手段により一部表面を改質する方法などを採用することができる。
薬剤によって改質する方法としては、親水性物質や疎水性物質を塗布して、表面に親水性層や疎水性層を形成することによって改質することができる。また基材の一部に酸化剤、還元剤、親水性基導入反応開始剤、親油性基導入反応開始剤などの薬剤を付与して所要の反応を生起させ、表面を改質することができる。これらの薬剤を付与する場合、薬剤をインクジェットで吐出するなどして、基材の必要部分にのみ薬剤を付与しても良いし、不要部分にワックスなどのマスク剤を塗布し全面に薬剤を塗布しても良い。
また、部分加熱による方法は、酸化雰囲気下で部分的に加熱し一部表面を酸化して表面エネルギーを変化させることができる。
さらに、機械的手段による改質は、基材表面の一部を擦過して粗面化することによってその表面エネルギーを変化させることもできる。
しかしながら、これらの方法に比較して、作業性、改質効率などの点から、次のエネルギー線照射による方法が最も効率がよく、好ましい。
【0208】
このエネルギー線照射は、多孔質シートにエネルギー線をパターン照射して、照射部の空孔内表面の表面エネルギーを変化させ、照射部或いは未照射部が選択的に親水性であるパターンを形成する。これにより多孔質シートへの鍍金液の浸透性が変化し、親水性の部分には鍍金液が浸透しやすくなる。空孔内表面に感光性層を形成した場合は、感光性層が感光して表面エネルギーが変化する。図1では一例として、照射部の表面エネルギーが変化して、鍍金液が浸透しやすい状態に変化する場合を示す。この場合、照射前の感光性層は鍍金液をはじくものを用いて、未照射部には鍍金液が浸透しないようにする。照射によって、前記電極表面に接して選択された多孔質体内の絶縁性の領域3に選択的に鍍金液を浸透させる。表面エネルギーを変化させる方法は特に限定されないが、照射前と照射後の表面エネルギーの変化を大きくできることから、エネルギー線照射によってイオン交換性基を生成あるいは消失する感光性基を用いるのが最も良い。例えば銅の電解鍍金液は一般的に酸性である。そこで領域3内に塩基性のアミノ基等を発生させると、アンモニウム塩を生成して親水性化する。このため鍍金液が染み込みやすい領域3が形成される。このように表面エネルギーを変化させることによって鍍金液が選択的に浸透する領域を形成する方法は、プロセスが簡便な上に微細なパターンが形成可能である。例えば鍍金液を浸透させたくない領域の空孔内にワックスやレジスト等を充填したりする方法では、微細なパターンを形成することが難しい上、鍍金後にワックスやレジストを除去することが難しい。本発明の方法によれば、多孔質体は終始、多孔質のままであるので、導電パターン形成後に硬化性樹脂等を含浸させたりすることも容易である。
【0209】
上記エネルギー線を照射するための条件としては、一般的には例えば高圧水銀灯などを光源として、パターン通りのマスクを通して、0.1〜10000mJ/cm2程度の露光量で露光することによって行う。露光はマスクを用いても良いし、レーザー光線を走査する等をしても良いし、光源からの光を微小なミラーをマトリックス状に多数配列したマイクロミラーアレイで変調する等をしても良い。
【0210】
(C)鍍金液浸透工程
こうして領域3を形成した電極付き多孔質シートを電解鍍金液に浸漬等することによって、領域3に鍍金液が選択的に浸透する。領域3は電極表面に接しているので、電極表面まで鍍金液が浸透して電解鍍金を行うことが出来るようになる。また領域3の空孔内表面は絶縁性であるために、鍍金の析出は電極表面からのみ進行して順次、空孔内を充填率高く充填していくことが可能となる。もし領域3内の空孔内表面が導電性であると、空孔内表面からも鍍金の析出が起こり、領域3の外周部の空孔が先に閉塞されてしまいやすい。このため領域3の中心部に鍍金液が充分供給されなくなって、充填率高く鍍金することが困難となってしまう。
【0211】
上記鍍金液を浸透させる工程は、一般的には電解鍍金するために基材を電解鍍金槽に浸漬すれば、直ちに電解鍍金液が浸透することによって完了する。
【0212】
(D)電解鍍金工程
鍍金液が浸透した後に、電極に通電して電解鍍金を行う。すると電解鍍金は領域3のみで選択的に進行して、導電部4が形成される。鍍金の析出は電極表面から始まって順次に領域3を埋めていく。鍍金の析出が電極表面から順次進行するため、多孔質体内の空孔を非常に高い充填率で埋めていくことが可能となる。また通電時間を調整する等すれば、導電部4のように多孔質シート1の中ほどで止めることも出来るし、さらに鍍金を続けて導電部5のように多孔質シート1を貫通させることも出来る。さらには導電部6のように多孔質シート1の上面に突出させることもできる。また電解鍍金は、無電解鍍金と比較して鍍金の析出速度を速くすることが可能なため、導電部の形成を短時間でスループット高く行うことが可能である。
【0213】
電解鍍金工程の際の鍍金条件は特に限定されず、一般的には通常行われている公知の電解鍍金と同様な条件を適用することができる。
【0214】
(3) 各工程の詳細な説明
次に上記本発明の複合部材の製造方法の第3の態様の各工程の詳細について、以下に具体的に説明する。
【0215】
(A)基 材
(a)基材を構成する絶縁性材料
多孔質体を形成する絶縁性材料は有機材料であっても無機材料であってもよく、また、有機材料と無機材料の複合材料であっても良い。
【0216】
有機材料
前記有機材料としては、一般的にはポリマー材料が用いられる。
【0217】
ポリマー材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルエチレン等のポリジエン類、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル等のポリアクリロニトリル誘導体、ポリオキシメチレン等のポリアセタール類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等や芳香族ポリエステル類を含むポリエステル類、ポリアリレート類、アラミド樹脂等の芳香族ポリアミドやナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、エポキシ樹脂類、芳香族ポリエーテル類、ポリエーテルスルホン類、ポリスルホン類、ポリスルフィド類、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー、ポリベンゾオキサゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリパラフェニレン等のポリフェニレン類、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ノボラック樹脂類、メラミン樹脂類、ウレタン樹脂類等が挙げられる。
【0218】
無機材料
前記無機材料としては、一般的にはセラミックス材料が用いられる。
【0219】
セラミックス材料としては、シリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸カリウム等の金属酸化物、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0220】
これら絶縁性基材の中でも、低誘電率なことからポリマー類が好ましく、耐熱性に優れることから、特にポリイミド類、芳香族ポリアミド類などの液晶性ポリマー類、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系ポリマー類などを用いることが好ましい。
【0221】
(b)多孔質基材の形状
多孔質体としては、多孔質体表面に開口部を有する連続空孔を有するものが良く、好ましくは連続空孔は三次元網目状に形成されていることが良い。
【0222】
三次元網目状に形成されることによって、空孔内に鍍金された金属は三次元的に連続するため、強度や導電性が優れている。
【0223】
多孔質基材の空孔
連続空孔の平均空孔径は0.05〜5μmの範囲で設定されることが好ましく、更には0.1〜0.5μmの範囲であることが望ましい。あまり空孔径が小さすぎると鍍金液等が充分多孔質内部まで浸透せず、空孔径が大きすぎると微細な鍍金金属のパターンを形成することが難しい上、紫外線や可視光線等で露光する場合に露光光線が多孔質構造によって散乱されてしまい、コントラスト良くパターン露光することが難しい。空孔径は均一であるのが良い。空孔率は20〜95%の範囲に設定されることが好ましく、更には45〜90%の範囲であることが望ましい。あまり空孔率が小さすぎると、鍍金液等が充分浸透しなかったり、形成され鍍金金属のパターンの導電性が低かったりする。あまり空孔率が大きすぎると多孔質体の強度が充分でなく、寸法安定性も悪くなってしまう。
【0224】
多孔質体の具体例と製法
多孔質体としては具体的にはポリマー材料等のシートに三次元連続空孔が形成された多孔質シートや、ポリマー繊維やセラミックス繊維を三次元網目状に絡めたクロスや不織布等が用いられる。
【0225】
多孔質シートの製法としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の結晶性ポリマーのシートを延伸して製作したものが用いられる。また、ポリマーのスピノーダル分解やミクロ相分離等の相分離現象を利用して形成した物でも良く、界面活性剤を用いたエマルジョンテンプレーティング法によって形成したものでも良い。
【0226】
また、Y.A.Vlasovら(Adv.Mater.11, No.2,165,1999)やS.A.Johnsonら(Science Vol.283,963,1999)が報告しているような、シリカやポリマーのビーズの集積体のビーズ間の隙間にポリマーやセラミックスを充填した後にビーズを除去して形成した多孔質シートであっても良い。
【0227】
更には、例えば、S.H.Parkら(Adv.Mater.10,No.13,1045,1998)やS.A.Jenekheら(Science Vol.283,372,1999)が報告しているように、ビーズの代わりに気泡や液泡の集積体を用いて製作しても良い。
【0228】
更には、B.H.Cumpstonら(Nature,vol.398,51,1999)やM.Campbellら(Nature,vol.404,53,2000)が報告しているような三次元光造形法を用いて製作しても良い。
【0229】
クロスや不織布としては、セラミックス繊維やポリマー繊維から製作したものが用いられる。
【0230】
セラミック繊維としては、例えば、シリカガラス繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイト繊維、チタン酸カリウム繊維等が用いられる。
【0231】
ポリマー繊維としては、例えば、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維等の液晶性ポリマーや、高Tgポリマー繊維や、PTFE繊維等のフッ素系ポリマー繊維、ポリパラフェニレンスルフィド繊維、芳香族ポリイミド繊維、ポリベンゾオキサゾール誘導体繊維等が用いられる。
【0232】
セラミック繊維とポリマー繊維を混ぜても良いし,セラミックスとポリマーの複合繊維でも良い。不織布としてはメルトブロー法によって製作したポリマーの不織布や、芳香族ポリアミド等の液晶性ポリマーの繊維を細かく粉砕して得られる直径が0.1〜0.3μm程度の微細な繊維を漉いた不織布などが繊維径が微細で空孔径も均一であることから好ましい。
【0233】
これらの不織布は寸法安定性を向上させるために、繊維同士を溶着させたり、ポリマー等をコーティングすることによって、繊維同士がずれたりしないようにするのが良い。異方性が少なく、構造が均質なことからクロスよりも不織布の方が好ましい。
【0234】
もちろん多孔質体の形状としてはシート状に限定されず、繊維状、中空糸状、筒状、球状、塊状等様々なものが用途に応じて用いられる。
【0235】
シート状の多孔質体の一例を挙げるならば、フレキシブル配線基板や多層配線基板に用いるシート状の多孔質体としては、例えば、厚さが10〜100μm程度、空孔径が0.1〜0.5μm程度、空孔率が60〜85%程度のスピノーダル分解やミクロ相分離で製作したポリイミド多孔質シートや、延伸法で製作したポリテトラフルオロエチレンの多孔質シート、微細アラミド繊維の不織布(アラミドペーパー)等を用いることができる。
【0236】
(c)多孔質体の空孔内表面の濡れ性
これら多孔質体の空孔内表面に後述するような感光性層を形成する場合、感光性層を形成する前の空孔内表面の鍍金液に対する濡れ性は、感光性層の特性に合わせて設定される。すなわち本発明の第3の態様の複合部材の製造方法は、特定の領域の空孔内表面を鍍金液に対して濡れ易くして、この領域に鍍金液を選択的に浸透させることに特徴がある。この時、他の領域の空孔内表面は鍍金液をはじいて、鍍金液が浸透するのを防止する必要がある。感光性層がエネルギー線照射によって鍍金液に濡れるようになる場合は、空孔内表面は撥水性として鍍金液をはじくようにした方が良い。逆に感光性層がエネルギー線照射によって鍍金液をはじくようになる場合は、空孔内表面は親水性として鍍金液が浸透し易くした方が良い。もちろん最表層たる感光性層の表面が露光前後で鍍金液に対する濡れ性が大きく変化すれば本発明の目的は達せられる。しかしながら、感光性層で多孔質体の空孔内表面を完全に覆うことが難しい場合もあり、多少なりとも多孔質体の空孔内表面が露出する場合がある。こうした場合、多孔質体の空孔内表面の性質が鍍金液の浸透性に反映される。つまり空孔内表面の鍍金液に対する濡れ性を感光性層のエネルギー線照射前の状態と合わせておくのが好ましい。
【0237】
(B)電極の設置
電極は少なくとも部分的に多孔質体に密着して設置される。例えば、多孔質体がシート状の場合、シート状の電極を貼り付ければ良い。円柱状の電極にシート状の多孔質体を巻き付ける等しても良い。また、中空糸状の多孔質体の中空部にワイヤー状やパイプ状の電極を挿入する等しても良い。
【0238】
電極と多孔質体は密着していれば、接着して固定されていても良いし、粘着等して再剥離可能な状態で固定しても良い。また、単に押し付けただけでも良い。
【0239】
例えば、図2に示すように、回転するロール状の電極7にシート状の多孔質体8をリールtoリールで供給して連続的に鍍金しても良い。電極7に密着して巻きついた多孔質体8はそのまま鍍金液槽11に入り、例えば、13のようなビア等の導電部を鍍金した後、鍍金液槽11から出て電極から離れていく。ロール状電極7はステンレス製のものが腐食等せず良い。
【0240】
電極表面は平滑である方が、導電部が電極から剥離させ易い。或いは、電極表面に凸凹等のテクスチャーを付けて、導電部表面を凸凹にする等しても良い。ビアの端面等を凸凹にすることによって配線等との電気的な導通を向上させることができる。
【0241】
また、更には、多孔質体内の選択された領域の空孔内に導電性物質を充填して電極としても良い。多孔質体電極と多孔質体が密着せず隙間があると、この隙間で鍍金の析出が起こってしまう。電極が多孔質体に密着していれば、鍍金の析出が多孔質体の選択された領域内でのみ進行するため精度の良い導電パターンの形成が可能になる。
【0242】
(C)エネルギー線照射
照射するエネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線等の光線や、X線、電子線、α線、γ線、重粒子線等、特に限定されない。通常は紫外線、可視光線、電子線等が最も良く用いられる。とりわけ280nm以上、好ましくは350nm以上の紫外線および可視光線が良い。例えば高圧水銀ランプを光源とするi線(波長=365nm)、g線(波長=435nm)、アルゴンイオンレーザー光(例えば波長=488nm)、各種半導体レーザー光(例えば波長=405nm)などが用いられる。これらのエネルギー線は照射装置が比較的簡便な上、大気中での大面積の照射が可能である。またマスクを用いる場合も、マスクとして一般的なポリマーフィルムマスクやガラスマスクを用いることが可能である。あまり短波長であると、マスクのガラスやポリマーフィルム自体に吸収されてしまう。また例えば耐熱性の芳香族ポリマーからなる多孔質基材の場合、250〜260nm付近にピークを有するベンゼン環などの強い吸収がある。このため280nm以下では、充分な透過率を得ることが難しくなる。
エネルギー線照射によって表面エネルギーを変化させる方法は、特に限定されず、広く公知の手法を用いることができる。例えば、特開平6−293837に開示されているような、PTFE多孔質シートにエキシマレーザーを照射して親水化する方法を用いる等しても良い。しかしながら、多孔質体内部にまでエネルギー線を充分透過させるには、好ましくは波長280nm以上で感光するような感光性層を多孔質体の空孔内表面に形成するのが良い。
【0243】
(a)感光性層
プロセスが簡便であり、かつ表面エネルギーの変化が大きいことから、エネルギー線の照射によってイオン交換性基を生成あるいは消失する感光性層を空孔内表面に形成するのが良い。多孔質体自体を感光性にしてしまうと、多孔質体によるエネルギー線の吸収が大きく、多孔質体内部にまで照射することが難しくなる。また多孔質体に要求される電気的特性、耐熱性、あるいは機械的強度などの特性と、感光性とを両立させるのが難しい。対して、エネルギー線の吸収が無いか、弱い材質からなる多孔質体の空孔内表面に薄い感光性層を形成すれば、エネルギー線は多孔質体内部まで充分に透過することが可能になる。また多孔質体の材質自体は感光性とする必要がないため、多孔質体の電気的特性、耐熱性、あるいは機械的強度などを確保しやすい。感光性層はエネルギー線の照射によってイオン交換性基を生成あるいは消失する基を有するのがプロセスが簡便でよい。
【0244】
イオン交換性基
本発明におけるイオン交換性基とは、イオンを吸着可能な基のことであり、イオン性の基か酸性或いは塩基性の基のことを言う。
【0245】
イオン交換性基は親水性か或いは鍍金液と反応して親水性となり、鍍金液を浸透させ易くする。イオン性の基の極性や酸性か塩基性どちらを選択するかは、電解鍍金する際の鍍金液の液性によって決定する。
【0246】
イオン交換性基が強い親水性なのは、イオン化しているからである。よって鍍金液中でもイオン化できるものが良い。例えば、一般的に、銅の電解鍍金用には硫酸銅水溶液を用いる。硫酸銅水溶液は強い酸性である。このため、例えば、弱酸性基であるフェノール性水酸基やカルボキシル基はイオン化できず親水性が充分でない。同様にこれら弱酸性基が塩基と反応して形成される陰イオン性の基も、強酸性の鍍金液中では弱酸性基になってしまい親水性が充分でない。これに対して、例えば、アミノ基等の塩基性の基やアンモニウム基等の陽イオン性の基は、強酸性の鍍金液中ではいずれもアンモニウム基となり、強い親水性を示すことができる。つまり鍍金液が酸性の場合は、陽イオン性の基あるいは塩基性基を用いるのが良い。
【0247】
一方、鍍金液がアルカリ性の場合は、陰イオン性の基あるいは酸性基を用いるのが良い。
【0248】
陰イオン性の基或いは酸性基としては、フッ素置換アルキル基等に結合した水酸基やメルカプト基、フェノール性水酸基、チオフェノール性水酸基等の酸性の水酸基やメルカプト基、カルボキシル基、スルホ基(スルホン酸基)、ホスホノ基(リン酸基)等の酸性基やその塩が挙げられる。陽イオン性の基あるいは塩基性基としては、アミノ基、アミド基、ピリジン誘導体基、イミダゾール残基やオキサゾール残基やチアゾール残基等のイミダゾール誘導体基、トリアゾール誘導体残基やその塩が挙げられる。
【0249】
エネルギー線照射によって陰イオン性の基或いは酸性基を発生する基
エネルギー線照射によって陰イオン性の基或いは酸性基を発生する基としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸或いはシラノールのo−ニトロベンジルエステル誘導体、p−ニトロベンジルエステルスルフォネート誘導体およびナフチル或いはフタルイミドトリフルオロスルフォネート誘導体等が挙げられる。
【0250】
更には、カルボン酸のtert−ブチルエステルの過酸化物のような過酸化エステル類を用いることもできる。また、ベンゾキノンジアジド、ナフトキノンジアジド、及び、アントラキノンジアジド等のキノンジアジド誘導体も挙げられる。
【0251】
更に、カルボキシル基、フェノール性水酸基、シラノール基等のイオン交換性基に、酸触媒などで脱保護可能な保護基を導入した基が挙げられる。
【0252】
光酸発生剤
酸触媒によって脱保護可能な保護基が導入されたイオン交換性基を用いる場合は、エネルギー線照射により酸を発生する光酸発生剤を添加する。
【0253】
エネルギー線を照射することによって、光酸発生剤から酸が発生し、その発生した酸で保護基が分解されてイオン交換性基が生成する。
【0254】
カルボキシル基の保護基としては、例えば、tert−ブチル基、tert−ブトキシカルボニル基や、テトラヒドロピラニル基等のアセタール基等が挙げられる。また、フェノール性水酸基、シラノール基等の保護基としてはtert−ブトキシカルボニル基等が挙げられ、tert−ブトキシカルボニルオキシ基として用いられる。
【0255】
こうした保護基の脱保護のために好適な光酸発生剤としては、CFSO 、p−CHPhSO 、p−NOPhSO 等を対アニオンとするオニウム塩、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩等の塩、トリアジン類、有機ハロゲン化合物、2−ニトロベンジルスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類、N−スルホニロキシイミド類、芳香族スルホン類、キノンジアジドスルホン酸エステル類等を用いることができ、具体的には、本発明の複合部材の製造方法の第一態様の説明において述べたような光酸発生剤を用いることができる。これら光酸発生剤と、酸により新たに自己触媒的に酸を発生する酸増殖剤とを組み合わせて用いても良い。またさらには酸性基を生じるものとして、ポリマー側鎖等に導入した2−ヒドロキシビシクロアルカン−1−スルホネート残基等の酸により新たに自己触媒的に酸性基を発生する酸増殖性基を用い、これを光酸発生剤とを組み合わせて用いても良い。
【0256】
エネルギー線照射によって陰イオン性の基或いは酸性基を消失する基
エネルギー線照射によって陰イオン性の基あるいは酸性基を消失する基としては、例えば脱炭酸反応を起こして分解し得るカルボキシル基誘導体基が挙げられる。カルボキシル基誘導体基としては、塩基性化合物により脱炭酸反応が進行する基が好ましい。そのような基としては、カルボキシル基のα位又はβ位に電子吸引性基または不飽和結合を有するものが挙げられる。ここで、電子吸引性基は、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、カルボニル基、またはハロゲンであるものが好ましい。
【0257】
このようなカルボキシル基誘導体基あるいはカルボキシル基誘導体基を含む感光性分子の具体例としては、α−シアノカルボン酸誘導体、α−ニトロカルボン酸誘導体、α−フェニルカルボン酸誘導体、およびβ,γ−オレフィンカルボン酸誘導体、インデンカルボン酸誘導体等が挙げられる。塩基性化合物として光塩基発生剤を用いた場合には、エネルギー線照射によって塩基が発生し、発生した塩基の作用によってカルボキシル基が脱炭酸して消失する。
【0258】
光塩基発生剤
光塩基発生剤としては、例えば、コバルトアミン錯体、ケトンオキシムエステル類、o−ニトロベンジルカルバメート類等のカルバメート類、及び、ホルムアミド類等が挙げられる。
【0259】
具体的には、例えば、みどり化学製NBC−101(CAS.No.[119137−03−0])等のカルバメート類を用いることができる。更には、みどり化学製TPS−OH(CAS.No.[58621−56−0])等のトリアリールスルホニウム塩類を用いることもできる。
【0260】
光塩基発生剤の代わりに、光酸発生剤と塩基性化合物とを組み合わせて用いることもできる。この場合には、エネルギー線を照射した部位においては、光酸発生剤から酸が発生して塩基性化合物が中和される。
【0261】
一方、未照射部位においては、塩基性化合物がカルボキシル基含有化合物に作用して脱炭酸反応が進行してカルボキシル基が消失する。これによって、照射部位にのみ選択的にカルボキシル基を配置することが可能となる。光酸発生剤としては既述の光酸発生剤を用いることができる。
【0262】
塩基性化合物
添加する塩基性化合物としては、光酸発生剤から放出される酸によって中和することが可能で、かつカルボキシル基含有化合物の脱炭酸反応の触媒として作用するものであれば任意のものを用いることができる。
【0263】
この塩基性化合物は、有機化合物および無機化合物いずれでも構わないが、好ましいのはアンモニアや含窒素有機化合物である。
【0264】
具体的には、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、及び、3級アミン類等が挙げられる。
【0265】
これら光塩基発生剤や塩基性化合物の含有量は、感光性組成物中0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜15重量%である。
【0266】
0.1重量%未満の場合には、脱炭酸反応が充分に進まなくなり、30重量%を超えると、未露光部に残存するカルボキシル基誘導体基の劣化を促すおそれがある。
【0267】
また、光酸発生剤と塩基性化合物とを組み合わせて用いる場合には、当然のことながら、光酸発生剤から発生し得る酸の量は、塩基性化合物の塩基の量よりも多く、具体的には1当量以上、さらには1.2当量以上であることが好ましい。ここで当量とは、以下の式で表わされる量である。
【0268】
当量=(光酸発生剤のモル数×1分子の光酸発生剤から発生する酸の数×発生する酸の価数)÷(塩基性化合物のモル数×塩基性化合物の価数)
エネルギー線照射によって陽イオン性の基或いは塩基性基を発生または消失する基としては、本発明の第一の複合部材の製造方法において用いられる、エネルギー線照射によって陰イオン交換性基を生成あるいは消失する感光性基と同様なものを用いることができる。
【0269】
本発明において、前述の感光性層の形成においては、後述の複合部材形成用感光性化合物あるいは複合部材形成用感光性組成物を含有する感光性材料を用いることができる。
【0270】
感光性層の形成方法
感光性層は、感光性基を有する感光性分子や感光性分子を含有する感光性組成物を、多孔質体の空孔内表面にコーティングすることによって形成することができる。或いは、シランカップリング剤のように空孔内表面に存在する官能基と結合する基と感光性基をあわせ持つ分子を空孔内表面に結合させて感光性層を形成してもよい。
【0271】
また、化学反応によって空孔内表面を改質することにより感光性層を形成することもできる。例えば、界面グラフト重合法によって、空孔内表面に形成した成長点から感光性基を有する感光性グラフトポリマー鎖を成長させて、空孔内表面を感光性グラフトポリマー鎖によって被覆してもよい。更には、ポリイミド多孔質シート等の芳香環を有するポリマー多孔質シートの空孔内表面に、フリーデルクラフツ反応等によってスルホン酸基等の官能基を導入して、導入した官能基を化学修飾して感光性基を形成しても良い。
【0272】
多孔質体の材料選択の幅が広いこと、及び、感光性層を容易に形成できることから、空孔内表面に感光性分子や感光性組成物からなる感光材料をコーティングして感光性層を形成することが最も好ましい。
【0273】
コーティングする感光性材料としては、塗布性が良好で、鍍金液などに対する耐性に優れることから、感光性基が、本発明の第1あるいは第2の態様の複合部材の製造方法において述べたのと同様なポリマーの主鎖、あるいは側鎖中に導入されたものがよい。
【0274】
コーティングするには、例えば、感光材料の溶液を多孔質体に含浸させてから乾燥させれば良い。感光材料の溶液を用いる場合には、多孔質体の空孔を閉塞しないように希釈しておくことが望まれる。その他、溶液をコーティングする手段は特に限定されず、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法等が用いられる。溶液をコーティングする以外にも、蒸着法やCVD法により感光性層を形成しても良い。
【0275】
感光性層は多孔質体の空孔内表面に空孔を閉塞することなく薄く形成されていることが好ましい。多孔質体そのものが感光性であっても良いが、照射するエネルギー線の吸収が強くなるため、多孔質体の内部まで充分に露光することが難しくなる。照射するエネルギー線に対して吸収が無いか、吸収が少ない材質からなる多孔質体の表面に薄く感光性層が形成されるのが良い。
【0276】
感光性層の層厚は特に限定されないが、好ましくは1〜100nm、より望ましくは20〜50nmの範囲に設定されるのが良い。あまり薄すぎるとイオン交換性基の量が充分でなく、充分に鍍金液を浸透させることが出来ない。また、あまり厚すぎると空孔を閉塞してしまうおそれがある。また照射したエネルギー線が表面付近で全て吸収されてしまって、多孔質体内部の感光性層まで充分に感光させることができなくなってしまう。
【0277】
感光性層の層厚は空孔を閉塞しないように、空孔径と比較して充分薄くするのは言うまでもない。感光性層の厚さは、空孔径の20%以下、好ましくは10%以下であるのが良い。
【0278】
2回露光する方法
パターン露光によって形成したイオン交換性基のパターンに保護基をキャップした後、全面露光してパターン露光した部分以外にイオン交換性基を生成させて親水性化してもよい。この方法によれば、パターン露光したパターンとは反転したパターンの導電部を形成することが可能となる。イオン交換性基としてカルボキシル基を用いて、このような2回の露光によって親水性と疎水性のパターンを形成する方法が特開平6−202343号公報に開示されており、この手法は本発明の複合部材の製造方法の第二の態様にも適用することが出来る。
【0279】
しかしながら、カルボキシル基は反応性が充分でないため、強アルカリ性の鍍金液等に対する耐性が高い保護基をキャップし難い。耐性の高い保護基をキャップしようとすると、加熱が必要であったり特殊な試薬が必要であったりして、プロセスが煩雑になり易い。また酸性の電解銅鍍金液中などでは、充分に親水性を示すことができない。これに対して、アミノ基等の陰イオン交換性基は反応性が高いので、室温等の温和な条件で耐性の高い保護基をキャップすることが可能である。また酸性の電解銅鍍金液中でもイオン化して、充分な親水性を示すことができる。
【0280】
保護基としてキャップする化合物としては、鍍金液をはじきやすい疎水性部位と陰イオン交換性基と結合可能な結合性基を合わせ持つ化合物が良い。
【0281】
疎水性部位としては例えば、置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、フッ素置換した基やシロキサン誘導体基等も用いることができる。
【0282】
結合性基としては、例えば、フェノール性水酸基、チオフェノール性水酸基、フッ素置換アルキル基等に結合した水酸基やメルカプト基等の酸性の水酸基やメルカプト基、カルボキシル基、スルホ基(スルホン酸基)、ホスホノ基(リン酸基)等の酸性基が挙げられる。これらの酸性基は陰イオン交換性基の対イオンとして吸着したり、エステル結合等を形成して結合したりする。
【0283】
また、アルデヒド基、エポキシ基、活性エステル基、酸無水物誘導体基、マレイミド誘導体基、アルコキシシリル基等の陰イオン交換性基であるアミノ基等と反応して結合するものも用いることができる。鍍金液等に対する耐性が高い結合を形成可能なことからアルデヒド基、エポキシ基、活性エステル基、酸無水物誘導体基、マレイミド誘導体基等を用いるのが良い。また、アルコキシシリル基等の金属アルコキサイド誘導体基等でも良い。活性エステル基としては、4−ニトロフェニルオキシカルボニル基誘導体、ベンズイミジルオキシカルボニル基誘導体等が挙げられる。アルコキシシリル基としては例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、メトキシジメチルシリル基等が挙げられる。
【0284】
(D)鍍金液の浸透
多孔質体内の照射部或いは未照射部の絶縁性の領域に選択的に鍍金液を浸透させる方法は特に限定されず様々な手法を用いることができる。通常は多孔質体を鍍金液に浸漬するのが良い。
【0285】
(E)電解鍍金
電解鍍金する方法や用いる鍍金液は特に限定されず、広く公知の鍍金方法と鍍金液を用いることができる。特に陰イオン交換性基を生成または消失する感光性層が形成された多孔質体を用いる場合には、酸性の鍍金液を用いるのがよい。鍍金液は通常、金属イオンや金属含有イオンが含まれるものを用いるが、例えばポリマーやセラミックスの微粒子が鍍金液中に分散したものを用いても良い。また電解鍍金させる物質は金属に限らず、セラミックスやポリマーなどでもよい。
【0286】
多孔質体の空孔内での鍍金析出を促進し、鍍金が多孔質体外に露出した後の鍍金析出を抑制するために、レベリング剤を添加するのが良い。多孔質体内は鍍金液の供給が充分でないため、一旦鍍金が多孔質体外に露出した部分が優先的に鍍金されてしまい易い。レベリング剤を添加することによって、多孔質体内に均一に鍍金することが可能となる。レベリング剤としては特に限定されず広く公知のものを用いることができ、例えば、塩化カルシウム等から得られる塩化物イオンなどが挙げられる。また電極に印加する極性を激しく入れ替えるパルス鍍金を行うことによって、多孔質体外に露出した部分に優先的に鍍金が析出してしまうことを抑制することができる。
【0287】
(3) 「リールtoリール」連続工程
以上述べたような第1の態様、第2の態様、および第3の態様の複合部材の製造方法は、帯状の基材を用いて「リールtoリール」の連続工程で行うことが可能である。図3に「リールtoリール」の連続工程で行う本発明の第1あるいは第2の態様の複合部材の製造方法の一例を示す。リール14から感光性層を形成した帯状の基材を供給する。露光装置15で配線のパターンを露光して感光性層に配線のパターン通りの潜像を形成する。潜像を形成した基材を塩化白金酸水溶液などの鍍金核の溶液が入った鍍金核吸着槽16に導入して、基材上のイオン交換性基に鍍金核を吸着させる。余分の鍍金核溶液をエアーナイフ17で除去する。さらに水洗用槽18で残留している余分の鍍金液溶液を洗浄する。余分の洗浄水をエアーナイフで除去する。次に還元槽19に基材を導入して、鍍金核を還元して、鍍金核を活性化させる。鍍金核が金属コロイドの場合は特に還元槽を通す必要はない。余分の還元液を水洗用槽20で洗浄してから、無電解鍍金槽21で無電解鍍金して導電部を形成する。無電解鍍金後、水洗用槽22で余分な鍍金液を除去した後、導電部を形成した基材を乾燥器23で乾燥してからリール24に収納する。
【0288】
図4には「リールtoリール」の連続工程で行う本発明の第3の態様の複合部材の製造方法の一例を示す。リール25からは帯状の基材として、両面を保護フィルムで保護された感光性の多孔質シート26が供給される。保護フィルム28はロール27によって剥がし取られてリール29に回収される。保護フィルムを剥がされた多孔質シートに露光装置30で配線パターンを露光して潜像(鍍金液浸透性領域のパターン)を形成する。潜像が形成された多孔質シート31は、ロール状電極32に密着して巻き付いたまま、電解鍍金液33が満たされた電解鍍金液槽34に導入される。この際、多孔質シートの鍍金液浸透性領域に電解鍍金液が浸透する。さらにロール状電極32に通電されることによって、鍍金液浸透性領域内で鍍金が析出して導電部が形成される。導電部が形成された多孔質シート36は、余分な鍍金液をエアーナイフ35で除去した後、水洗用槽37にて洗浄する。導電部が形成された多孔質シートは洗浄後、乾燥器39で乾燥した後、リール40に収納される。
【0289】
[IV] 複合部材形成用多孔質基材(第4の態様)
次に、本発明の複合部材形成用多孔質基材について述べる。
【0290】
上記、第1の態様、第2の態様、あるいは第3の態様の複合部材の製造方法において用いられる本発明の複合部材形成用多孔質基材としては、空孔を有する多孔質体と、該空孔内の表面に形成されているエネルギー線の照射により陰イオン交換性基が生成或いは消失される感光性層とから構成されている。
【0291】
(1) 空孔を有する多孔質体
上記空孔を有する多孔質体としては、具体的にはポリマー材料等のシートに三次元連続空孔が形成された多孔質シートや、ポリマー繊維やセラミックス繊維を三次元網目状に絡めたクロスや不織布等が用いられる。
【0292】
具体的には、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の結晶性ポリマーのシートを延伸して製作したものや、ポリマーのスピノーダル分解やミクロ相分離等の相分離現象を利用して形成したポリイミド等の多孔質体でも良い。
【0293】
クロスや不織布としてはセラミックス繊維やポリマー繊維から製作したものが用いられる。
【0294】
セラミック繊維としては、例えば、シリカガラス繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイト繊維、チタン酸カリウム繊維等が用いられる。
【0295】
ポリマー繊維としては、例えば、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維等の液晶性ポリマーや高Tgポリマー繊維や、PTFE繊維等のフッ素系ポリマー繊維、ポリパラフェニレンスルフィド繊維、芳香族ポリイミド繊維、ポリベンゾオキサゾール誘導体繊維等が用いられる。
【0296】
上記セラミック繊維とポリマー繊維を混ぜても良いし,セラミックスとポリマーの複合繊維でも良い。
【0297】
クロスよりも不織布の方がより三次元的に繊維が絡み合って、多孔質構造の異方性が少ない上、空孔径が均一であるためことから好ましい。不織布としては、メルトブロー法によって製作したポリマーの不織布や、芳香族ポリアミド等の液晶性ポリマーの繊維を細かく粉砕して得られる直径が0.1〜0.3μm程度の微細な繊維を漉いた不織布などが、繊維径が微細で空孔径も均一であることから好ましい。これらの不織布は寸法安定性を向上させるために、繊維同士を溶着させたり、ポリマー等をコーティングすることによって、繊維同士がずれたりしないようにするのが良い。
【0298】
空孔の平均空孔径は0.05〜5μmの範囲で設定されることが好ましく、更には0.1〜0.5μmの範囲であることが望ましい。あまり空孔径が小さすぎると鍍金液等が充分多孔質内部まで浸透せず、空孔径が大きすぎると微細な鍍金金属のパターンを形成することが難しい上、紫外線や可視光線等で露光する場合に露光光線が多孔質構造によって散乱されてしまいコントラスト良くパターン露光することが難しい。空孔径は均一であるのが良い。空孔率は20〜95%の範囲に設定されることが好ましく、更には45〜90%の範囲であることが望ましい。あまり空孔率が小さすぎると、鍍金液等が充分浸透しなかったり、形成され鍍金金属のパターンの導電性が低かったりする。あまり空孔率が大きすぎると多孔質体の強度が充分でなく、寸法安定性も悪くなってしまう。
【0299】
親水性化処理
本発明の第1および第2の態様の複合部材の製造方法に用いられる場合は、基材の表面は、鍍金液等との濡れ性を良くするために親水性化処理するのが良い。特に、基材として多孔質体を用い、多孔質体内部まで鍍金する場合には親水性化処理は重要である。
【0300】
親水性化処理する方法は、特に限定されず広く公知の手法を用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール等の親水性ポリマー等の親水性物質を塗布する方法や、光学的、熱的、化学的処理等により表面を改質する方法等が用いられる。
【0301】
具体的には、酸素気流下、或いは、オゾン気流下等で紫外線を照射したり、オゾン雰囲気やオゾン溶液に暴露して基材表面を酸化する。また、例えば、大気中、或いは、真空中の酸素プラズマ処理によって基材表面を酸化する手法もある。また、酸やアルカリで処理したりしても良い。更には、特開2000−290413号公報に開示されているような酸化手法によって親水性化しても良い。
【0302】
ポリマーやガラス等に酸化処理を行うと、カルボキシル基やシラノール基等の金属陽イオンを吸着できる酸性基が発生する。しかしながら、前述したように、陰イオン交換性基を用いる本発明の第1および第2の態様の複合部材の製造方法によれば、これら酸性基が存在しても鍍金が異常析出するおそれはない。
【0303】
(2) 感光性層
上記空孔内の表面に形成されているエネルギー線の照射により陰イオン交換性基が生成或いは消失される感光性層とは、多孔質体の空孔内の表面に形成された層であり、エネルギー線照射によって陰イオン交換性基を生成あるいは消失する感光性基を有する層である。
【0304】
(a)陰イオン交換性基
上記陰イオン交換性基とは、陰イオンを吸着可能な基のことであり、陽イオン性の基か、塩基性の基のことである。
【0305】
陽イオン性の基
具体的には、陽イオン性の基としては、例えば、アンモニウム基等の脂肪族系アミン、或いは、芳香族系アミンの四級アンモニウム塩誘導体基、或いは、ピリジニウム基やイミダゾリウム基等の含窒素複素環の四級アンモニウム塩誘導体基が挙げられる。
【0306】
塩基性基
塩基性基としては、脂肪族系や芳香族系のアミノ基、ピリジン残基やイミダゾール残基等の含窒素複素環誘導体基が挙げられる。
【0307】
(b)感光性層の形成
感光性層
感光性層は、感光性基を有する感光性化合物のみから構成することができるが、他の化合物との混合体であっても良い。こうした感光性基を含む感光性層を所望のパターンでエネルギー線を照射することによって、照射部位にイオン交換性基を生成または消失させる。特に本発明の第1の態様の複合部材の製造方法に用いる場合は、感光性層は膨潤性を有するのが、鍍金核の吸着量が多いため良い。
【0308】
感光性層の形成
感光性層は、感光性基および架橋性基を有する感光性化合物や、感光性分子を含有する感光性組成物を、基材表面にコーティングすることによって形成することができる。或いは、シランカップリング剤のように基材表面に存在する官能基と結合する基と感光性基を合わせ持つ分子を基材表面に結合させて感光性層を形成しても良い。
【0309】
また、化学反応によって基材表面を改質することにより感光性層を形成することもできる。
【0310】
例えば、界面グラフト重合法によって、基材表面に形成した成長点から感光性基を有する感光性グラフトポリマー鎖を成長させて、基材表面を感光性グラフトポリマー鎖によって被覆しても良い。更には、ポリイミド多孔質シート等の芳香環を有するポリマー多孔質シートの基材表面に官能基を導入して、導入した官能基を化学修飾して感光性基を形成しても良い。官能基を導入するにはフリーデルクラフツ反応等によってスルホン酸基等を導入しても良いし、特開2000−290413に開示されているような酸化手法によって水酸基やカルボキシル基を導入しても良い。基材の材料選択の幅が広いこと、及び、感光性層を容易に形成できることから、基材表面に感光性分子や感光性組成物からなる感光材料をコーティングして感光性層を形成することが最も好ましい。
【0311】
感光性層の層厚は特に限定されないが、好ましくは1〜100nm、より望ましくは20〜50nmの範囲に設定されるのが良い。あまり薄すぎるとイオン交換性基の量が充分でなく、充分に鍍金液を浸透させることが出来なかったり、鍍金核の吸着量が充分でない。また、あまり厚すぎると空孔を閉塞してしまうおそれがある。また照射したエネルギー線が表面付近で全て吸収されてしまって、多孔質体内部の感光性層まで充分に感光させることができなくなってしまう。
【0312】
感光性層の層厚は空孔を閉塞しないように、空孔径と比較して充分薄くするのは言うまでもない。感光性層の厚さは、空孔径の20%以下、好ましくは10%以下であるのが良い。
【0313】
(c)感光性基
感光性基とは、照射されたエネルギー線を吸収することによって単独で化学反応して陰イオン交換性基を発生するもの、或いは、照射により化学反応を生じて何らかの陰イオン交換性基の前駆体を生じ、前記前駆体がさらに周囲に存在する物質と化学反応を生じることにより陰イオン交換性基を生成するもの、更には、エネルギー線照射によって塩基発生剤から発生した塩基等と作用して陰イオン交換性基を生成するもの、あるいは陰イオン交換性基を消失するもののいずれかである。なかでも単独で化学反応して陰イオン交換性基を発生あるいは消失する感光性基が最も良い。なぜなら単独で反応するために、湿度などの周囲の雰囲気の影響を受けにくく、また感光性基を有する化合物を含む組成物を塗布することよって感光性層を形成する際などに起こりやすい、組成の偏りに起因する反応性のばらつきを防止することが可能だからである。また照射によって生じた前駆体が周囲の物質と化学反応して陰イオン交換性基を生ずる場合も、周囲の物質が水などの湿気として大気中にあたりまえに含有される物質や、感光性層中にあらかじめ混合などされて含有されている物質であるのがプロセスが簡略であるため優れている。
【0314】
エネルギー線を吸収して単独で陰イオン交換性基を生成する感光性基としては、例えばアミン等の塩基性基を生成するカルバモイルオキシム誘導体基、カルバミン酸誘導体基、ホルムアミド誘導体基等が挙げられる。ピペリジン誘導体のカルバミン酸誘導体は塩基が触媒となって熱的にアミンであるピペリジン誘導体を生成する。この為、他の塩基性基を生成する感光性基と組み合わせることによって、少ない露光量で多量の塩基性基を発生することが可能である。
【0315】
エネルギー線照射により化学反応を生じて何らかの陰イオン交換性基の前駆体を生じ、前記前駆体が更に化学反応を生じることにより陰イオン交換性基を生成するもの、いわゆる照射による化学反応をきっかけとする多段階反応により陰イオン交換性基を生じる感光性基としては、例えば、アシルオキシム誘導体基、アジド誘導体基が挙げられる。
【0316】
エネルギー線照射によって塩基発生剤から発生した塩基等と作用して陰イオン交換性基を生成する感光性基としては、ピペリジン誘導体のカルバミン酸誘導体基等が挙げられる。
【0317】
光塩基発生剤
この塩基等と作用して陰イオン交換性基を生成する感光性基を用いる場合はエネルギー線照射で塩基を発生する光塩基発生剤を添加する。エネルギー線を照射すると、光塩基発生剤から塩基が発生し、その発生した塩基で前記保護基が分解して陰イオン交換性基が生成する。
【0318】
光塩基発生剤としては、例えば、コバルトアミン錯体、ケトンオキシムエステル類、o−ニトロベンジルカルバメート類等のカルバメート類、ホルムアミド類等が用いられ、具体的には、例えば、みどり化学製NBC−101(CAS.No.[119137−03−0])等のカルバメート類やみどり化学製TPS−OH(CAS.No.[58621−56−0])等のトリアリールスルホニウム塩類が用いられる。
【0319】
光塩基発生剤を用いる代わりに、光酸発生剤と塩基性化合物を組み合わせても良い。すなわち、エネルギー線照射部位においては光酸発生剤から酸が発生して塩基性化合物を中和する。
【0320】
これに対して未照射部位においては塩基性化合物が作用して陰イオン交換性基が生成する。これにより未照射部位にのみ選択的に陰イオン交換性基を配置することが可能となる。
【0321】
光酸発生剤
光酸発生剤としては、CFSO 、p−CHPhSO 、p−NOPhSO 等を対アニオンとするオニウム塩、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩等の塩、トリアジン類、有機ハロゲン化合物、2−ニトロベンジルスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類、N−スルホニロキシイミド類、芳香族スルホン類、キノンジアジドスルホン酸エステル類等を用いることができる。
【0322】
具体的には、光酸発生剤としては、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、2,3,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−4−ナフトキノンジアジドスルフォネート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウムスルフェート、ジフェニルスルフォニルメタン、ジフェニルスルフォニルジアゾメタン、ジフェニルジスルホン、α−メチルベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ベンゾイントシレート、ナフタルイミジルトリフルオロメタンスルホネート、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノエチル)アミノ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン・ジメチル硫酸塩、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0323】
これら光酸発生剤と、酸により新たに自己触媒的に酸を発生する酸増殖剤とを組み合わせて用いても良い。また、光酸発生性の酸増殖剤を単独で用いてももちろん良い。
【0324】
酸増殖剤
酸増殖剤としては、例えば、t−ブチル 2−メチル−2−(p−トルエンスルホニロキシメチル)アセトアセテートおよびその誘導体、シス−1−フェニル−2−(p−トルエンスルホニロキシ)−1−シクロヘキサノールおよびその誘導体、3−ニトロ−4−(t−ブトキシカルボニロキシ)ベンジルトシレートおよびその誘導体、3−フェニル−3,3−エチレンジオキシプロピルトシレートなど3−フェニル−3,3−エチレンジオキシプロピルスルホネート誘導体、シス−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−ピナノールなどの2−ヒドロキシビシクロアルカン−1−スルホネート誘導体、1,4−ビス(p−トルエンスルホニルオキシ)シクロヘキサンなどの1,4−シクロヘキサンジオールのスルホネート誘導体、2,4,6−トリス[2−(p−トルエンスルホニルオキシ)エチル]−1,3,5−トリオキサンなどのトリオキサン誘導体等が挙げられる。光酸発生性の酸増殖剤としては、3−フェニル−3,3−o−ニトロフェニルエチレンジオキシプロピルトシレートなどの3−フェニル−3,3−エチレンジオキシプロピルスルホネート誘導体が挙げられる。
【0325】
塩基性化合物
また、用いる塩基性化合物は、光酸発生剤から放出される酸によって中和され、かつ陰イオン交換性基の生成反応の触媒として作用するものであれば任意のものを用いることができ、有機化合物、無機化合物いずれでも構わない。好ましくはアンモニア、一級アミン類、二級アミン類、三級アミン類等が挙げられる。
【0326】
エネルギー線照射により陰イオン交換性基を消失する感光性基とは、すなわち照射前には陰イオン交換性基を有し、この陰イオン交換性基がエネルギー線照射によって脱離するか、疎水性基に変化する基である。
【0327】
具体的には、例えば、Cl、PF 、AsF 、SbF 、BF 、ClO 、CFSO 、HSO 、FSO 、FPO 、p−CH−C−SO 、p−NO−C−SO 等の陰イオンを対アニオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩やセレノニウム塩等のオニウム塩等の構造を有する基が挙げられる。これらは陰イオン交換反応によって金属含有イオンや金属含有化合物を吸着することが可能である。正電荷に帯電しているため、金属コロイドを吸着することができる。またエネルギー線照射によって分解して、非イオン性になることによって、鍍金核を吸着し難くなる。
【0328】
感光性層は鍍金核を吸着させる際や鍍金の際に、アルカリまたは酸性の水溶液中に曝されるため、それらに溶解し難いように陰イオン交換性基を生成あるいは消失する感光性基がポリマーや高分子化合物等に担持、或いは、結合されているものが好ましい。本発明におけるポリマーとは繰り返し単位を有する高分子重合体のことを示し、高分子化合物とは、特定の繰り返し単位を有さない高分子のことを示す。
【0329】
ポリマーとしては、フェノールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂、ビニルフェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系樹脂やポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸エステル誘導体やポリメタクリル酸エステル誘導体などのアクリル樹脂系樹脂、ポリシロキサン誘導体等が挙げられる。これらの中でも塗布性などの観点からフェノール系樹脂やアクリル樹脂系樹脂を用いることが好ましい。
【0330】
高分子化合物としては、芳香環および炭素鎖よりなる高分子化合物で、好ましくは枝分かれしているものがよい。
【0331】
ポリマーあるいは高分子化合物の分子量は特に限定されないが、分子量(ポリマーの場合は重量平均分子量)が1000〜500万であることが好ましく、2000〜5万であることがより望ましい。
【0332】
ポリマーあるいは高分子化合物の分子量が小さすぎる場合には、成膜性が悪く、鍍金液等に対する耐溶剤性も低下するおそれがある。すなわち鍍金液等に溶解しやすくなる。また、溶剤に対する耐性を損なうことなく、ポリマーあるいは高分子化合物に膨潤性を付与することは困難である。一方、分子量が過剰に大きい場合には、塗布用の溶媒への溶解性が低下するうえ、塗布性も悪くなってしまう。
【0333】
またポリマーあるいは高分子化合物中の感光性基の導入量が少なすぎると充分に鍍金核を吸着させることができないし、多すぎると鍍金液等へ溶解し易くなるうえ、製作した複合部材が吸湿し易くなり、絶縁不良等の不具合を起こし易くなる。
【0334】
陰イオン交換性基を生成したり消失したりする感光性基のポリマーあるいは高分子化合物中への導入率は好ましくは5〜300%、より望ましくは30〜70%の範囲の導入率とするのが良い。ここでの導入率とはそれぞれ以下の式で表される。
【0335】
ポリマーへの感光性基の導入率(%)=(陰イオン交換性基を生成あるいは消失する基の数)÷(ポリマーのモノマー単位の数)×100
高分子化合物への感光性基の導入率(%)=(陰イオン交換性基を生成あるいは消失する基の数)÷(高分子化合物の分子量÷100)×100
耐溶剤性を高めて、鍍金液等へ溶解し難くするには、ポリマーあるいは高分子化合物を架橋するのが良い。ポリマーあるいは高分子化合物を架橋するには、有機過酸化物等のラジカル発生剤を添加して、ポリマーあるいは高分子化合物中の水素引き抜き反応によりポリマーあるいは高分子化合物の分子間に炭素―炭素結合を生成させる等してもよい。またポリマーの主鎖あるいは側鎖に架橋性基を導入しても良い。
【0336】
架橋性基
架橋性基としては、架橋性基同士が自己重合して架橋しても良いし、感光性層中の他の物質と結合形成して架橋しても良い。
【0337】
自己重合できる架橋性基の具体例としては、例えば、グリシジル基のようなエポキシ基、ビニルエーテル基、クロロメチルフェニル基、メチロール基、ベンゾシクロブテン基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミジル基、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基、エノキシシリル基、及び、オキシムシリル基、及び、これらの誘導体基等が挙げられる。
【0338】
これらの架橋性基は必要に応じて、光照射や加熱、或いは、触媒を作用させることによって架橋させる。
【0339】
触媒としては、エポキシ基、メチロール基、ビニルエーテル基、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基、エノキシシリル基、及び、オキシムシリル基等には酸や塩基の触媒を用い、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミジル基等の多重結合を有する基などのラジカル重合性基にはラジカル発生剤を用いる。ラジカル反応によって架橋する架橋性基は、架橋によって生じた結合が、鍍金液等強アルカリ液や強酸性液等に対する耐性に優れており好ましい。
【0340】
また、常温でも速やかに反応が進行するため、通常は加熱処理が不要である。このため、基材である基材の加熱処理に伴なう寸法安定性の低下や熱劣化を防止することが可能である。
【0341】
感光性層中の他の物質と結合形成して架橋させる場合の架橋性基としては、例えば、水酸基、イソシアネート基、カルボン酸無水物基、マレイミジル基、アルデヒド基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
【0342】
架橋助剤
この際、これらの架橋性基と結合して架橋結合を形成するために、架橋性基と結合可能な基を、1分子中に複数有する架橋助剤が用いられる。
【0343】
架橋助剤としては、例えば、水酸基にはアルコキシシラン類、アルミニウムアルコキサイド類、カルボン酸無水物、ビスマレイミド誘導体、イソシアネート化合物、多価メチロール化合物、およびエポキシ化合物等が用いられる。イソシアネート基、カルボン酸無水物基、アルコキシシリル基には多価アルコール等が用いられる。
【0344】
陰イオン交換性基と反応して架橋するものでも良い。例えば、エポキシ基、クロロメチルフェニル基、メチロール基、アルコキシシリル基、マレイミジル基、イソシアネート基、カルボン酸無水物基、アルデヒド基等はアミノ基等と反応して架橋する。特にエポキシ基はアミノ基が反応した後も、鍍金核を吸着する性質を良好に保持できるため優れている。
【0345】
また、単にこれらの基を1分子中に複数有する架橋助剤を添加して、陰イオン交換性基が導入されたポリマーを相互に架橋しても良い。これらの場合にも適宜、酸触媒等の触媒を添加しても良い。
【0346】
架橋性基としては、エネルギー線照射によって二量化するような以下の基を用いることもできる。このような基は、エネルギー線の一部を吸収するが、照射部のみを選択的に架橋することができる点で優れている。例えば、シンナモイル基、シンナミリデン基、カルコン残基、イソクマリン残基、2,5−ジメトキシスチルベン残基、スチリルピリジニウム残基、チミン残基、α−フェニルマレイミジル基、アントラセン残基、および2−ピロン残基である。
【0347】
ポリマーあるいは高分子化合物への架橋性基の導入率は好ましくは1〜100%の範囲内であり、より望ましくは10〜50%の範囲の導入率とするのが良い。ここでの導入率とはそれぞれ以下の式で表わされる。
【0348】
ポリマーへの架橋性基の導入率(%)=(架橋性基の数)÷(ポリマーのモノマー単位の数)×100
高分子化合物への架橋性基の導入率(%)=(陰イオン交換性基を生成あるいは消失する基の数)÷(高分子化合物の分子量÷100)×100
ポリマーあるいは高分子化合物への架橋性基の導入率が少なすぎる場合には、充分に架橋させることが困難となるので、鍍金液等へ溶解し易くなる。一方、架橋性基が過剰に導入されていると、架橋した際に、鍍金核溶液などに膨潤しにくくなる上、感光層が硬化収縮して、基材が変形したり、基材から感光層が剥離するおそれがある。
【0349】
架橋反応は、感光性層を形成した後に行うのが良い。感光性層を形成する前に架橋してしまうと、ポリマーの溶媒への溶解性が低下して、絶縁性基材への塗布が困難となってしまう。感光性層を形成後、加熱、エネルギー線照射、空気中の湿気等の刺激によって架橋反応を進行させるのが良い。
【0350】
エネルギー線照射は、陰イオン交換性基を発生あるいは消失させる際のエネルギー線照射によって兼ねるのが良い。
【0351】
エネルギー線
照射するエネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線等の光線や、X線、電子線、α線、γ線、重粒子線等特に限定されない。通常は紫外線、可視光線、電子線等が最もよく用いられる。
【0352】
また、エネルギー線照射によって活性化する触媒を配合することもできる。
【0353】
該触媒としては、光酸発生剤、光塩基発生剤、ラジカル発生剤が用いられる。
【0354】
既に説明したように、架橋反応はラジカル反応であることが最も望ましく、ラジカル発生剤をラジカル重合性の架橋性化合物や架橋性基と組み合わせて用いることが好ましい。
【0355】
ラジカル発生剤
ラジカル発生剤としては、例えば、以下のような有機過酸化物類を用いることができる。
【0356】
例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド、メチルアセトアセテートパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール類、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、t−ヘキシルハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキサイド類、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキシド、スクシニックアッシドパーオキサイド、m−トルオイルアンドベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオドデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシメレイクアシッド、t−ブチルパーオキシ 3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ イソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキシル モノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等のパーオキシエステル類、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキシド、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、及び、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等である。特に、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及び、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等の多官能ラジカル発生剤は、架橋助剤としても作用するため好ましい。また、過酸化物以外のアゾビスイソブチロニトリル等アゾニトリル類を用いることもできる。
【0357】
増感剤
感光性層に各種増感剤を添加しても良い。増感剤を添加することによって感度を向上したり、用いる光源に合わせて感光波長を様々に変化させることが可能となる。
【0358】
また、多孔質基材内部まで感光させようとする場合、基材の吸収波長以外の波長の光等の基材を透過し易いエネルギー線で感光させるのが好ましい。
【0359】
例えば、ポリイミドの多孔質基材等は多くの場合、約500nm以下の光を吸収してしまうため、例えば、g線やi線等では多孔質内部まで露光することは難しい。こうした場合でも500nm以上の波長領域に吸収帯を有する可視光増感剤を用いることで、多孔質内部まで良好に感光させることが可能となる。
【0360】
増感剤の具体例としては、例えば、芳香族炭化水素及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、o−ベンゾイル安息香酸エステル及びその誘導体、アセトフェノン及びその誘導体、ベンゾイン並びにベンゾインエーテル及びその誘導体、キサントン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体ジスルフィド化合物、キノン系化合物、ハロゲン化炭化水素含有化合物並びにアミン類、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキアゾリジノン、5−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−3−エチル−2−チオキソ−4−オキサゾリジノン等のメロシアニン系色素、3−ブチル−1,1−ジメチル−2−[2[2−ジフェニルアミノ−3−[(3−ブチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エチエニル]−1H−ベンズ[e]インドリウム パーコレート、2−[2−[2−クロロ−3−[(3−エチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−1,1−ジメチル−3−エチル−1H−ベンズ[e]インドリウム テトラフルオロボレート、2−[2−[2−クロロ−3−[(3−エチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エテニル]−1,1−ジメチル−3−エチル−1H−ベンズ[e]インドリウム アイオダイド等のシアニン系色素、スクアリウム系シアニン色素、2−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]ベンゾチアゾール、2−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]ナフト[1,2−d]チアゾール、2−[(m−ヒドロキシ−p−メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール等のスチリル系色素、エオシンB(C.I.No.45400)、エオシンJ(C.I.No.45380)、シアノシン(C.I.No.45410)、ベンガルローズ、エリスロシン(C.I.No.45430)、2,3,7−トリヒドロキシ−9−フェニルキサンテン−6−オン、ローダミン6G等のキサンテン色素、チオニン(C.I.No.52000)、アズレA(C.I.No.52005)、アズレC(C.I.No.52002)等のチアジン色素、ピロニンB(C.I.No.45005)、ピロニンGY(C.I.No.45005)等のピロニン色素、3−アセチルクマリン、3−アセチル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンズイミダゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、10−(2−ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−カルベトキシ−7−(ジエチルアミノ)クマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等のクマリン系色素、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)等のケトクマリン系色素、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジブチルアミノスチリル)−4H−ピラン等のDCM系色素がある。
【0361】
このような増感剤の配合割合は露光により陰イオン交換性基を生成あるいは消失する化合物に対して、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%であることが望ましい。
【0362】
増感剤は感光性層中に単に混ぜ込むだけでなく、例えば感光性基を有するポリマーの側鎖等に導入しても良い。また感光性層が充分薄い場合には、増感剤を含む層を感光性層上に積層しても良い。
【0363】
本発明において、前述の感光性層の形成においては、後述の複合部材形成用感光性化合物あるいは複合部材形成用感光性組成物を含有する感光性材料を用いることができる。
【0364】
(4) 保護フィルム
多孔質基材は部材表面をポリマーや金属の保護フィルムによって包まれていることが望ましい。例えば、シート状の多孔質体の場合、2枚の保護フィルムに挟まれている状態が良い。保護フィルムによって多孔質体内部への酸素や湿気の侵入を防止し、感光性層の劣化を防止し、多孔質体の保存安定性を大幅に改善することが可能である。ドライフィルムレジスト等も通常、保護フィルムでラミネートされるが、多孔質体はこうしたドライフィルムレジスト等と比較して、外気に接する表面積が大きいために、感光性層が酸素や湿気あるいは空気中の酸や塩基等の影響を受け易い。
【0365】
保護フィルムは多孔質体の保存安定性の向上に非常に効果的である。多孔質体の空孔内には乾燥した窒素やアルゴンガス等を充填しておくのが好ましい。遮光性の保護フィルムを用いて感光性層の異常な感光を防止しても良い。保護フィルムは通常はエネルギー線照射前或いは照射後に除去して、その後の鍍金工程を行う。
【0366】
保護フィルムとしては、通常5〜30μm程度のポリエチレンテレフタレート等のポリマーフィルムやアルミニウムやステンレス等の金属箔あるいはポリエチレンテレフタレート等のポリマーフィルムの表面にシリカゲルやアルミニウム蒸着膜等を形成した複合フィルムが用いられる。金属等の導電性の保護フィルムは電解鍍金時の電極を兼ねることができる。
【0367】
また、シート状の多孔質基材を用いてリールtoリール法で連続的に行う場合、こうした保護フィルムはキャリアフィルムとしての役割も果たすことが可能であり、多孔質体の寸法安定性を向上させる。
【0368】
キャリアフィルムとして用いる場合、裏と表の2枚の保護フィルムの内、片方の1枚だけ除去して、残りの1枚は残して以後の吸着工程や鍍金工程を行なえばよい。このような保護フィルムは粘着によって多孔質体に貼り付けられていると、容易に剥がすことが可能であり好ましい。
【0369】
[V] 複合部材形成用感光性化合物(第5の態様)、感光性組成物(第6の態様)
次に、本発明の複合部材形成用感光性化合物、及び感光性組成物について述べる。
【0370】
上記本発明の第1、第2、および第3の態様の複合部材の製造方法において用いられる本発明の複合部材形成用感光性化合物は、主鎖又は側鎖に光照射することによって陰イオン交換性基を発生或いは消失する感光性基と架橋性基とを有するポリマーあるいは高分子化合物であり、本発明の複合部材形成用組成物は、感光性基を有する化合物、ポリマーあるいは高分子化合物と、架橋性基を有する化合物、ポリマーあるいは高分子化合物との混合物からなる組成物である。本発明におけるポリマーとは繰り返し単位を有する高分子重合体のことを示し、高分子化合物とは、特定の繰り返し単位を有さない高分子のことを示す。また化合物とは、前記高分子化合物より分子量の小さい化合物を示す。
これらの感光性化合物および感光性組成物を使用して複合部材を製造する際には、これらの感光性化合物あるいは感光性組成物に溶剤、酸発生剤、塩基発生剤、増感剤、界面活性剤などの成分を添加し、成膜性などの特性を改善した感光材料として用いることができる。
【0371】
(1) 複合部材形成用感光性化合物
(a)感光性基
感光性基とは、照射されたエネルギー線を吸収することによって単独で化学反応して陰イオン交換性基を発生するもの、或いは、照射により化学反応を生じて何らかの陰イオン交換性基の前駆体を生じ、前記前駆体がさらに周囲に存在する物質と化学反応を生じることにより陰イオン交換性基を生成するもの、エネルギー線照射によって塩基発生剤から発生した塩基等と作用して陰イオン交換性基を生成するもの、さらにはエネルギー線照射によって陰イオン交換性基を消失するもののいずれかである。なかでも単独で化学反応して陰イオン交換性基を発生あるいは消失する感光性基が最も良い。なぜなら単独で反応するために、湿度などの周囲の雰囲気の影響を受けにくく、また感光性基を有する化合物を含む組成物を塗布することよって感光性層を形成する際などに起こりやすい、組成の偏りに起因する反応性のばらつきを防止することが可能だからである。また照射によって生じた前駆体が周囲の物質と化学反応して陰イオン交換性基を生ずる場合も、周囲の物質が水などの湿気として大気中にあたりまえに含有される物質や、感光性層中にあらかじめ混合などされて含有されている物質であるのがプロセスが簡略であるため優れている。
【0372】
エネルギー線を吸収して単独で陰イオン交換性基を生成する感光性基としては、例えばアミン等の塩基性基を生成するカルバモイルオキシム誘導体基、カルバミン酸誘導体基、ホルムアミド誘導体基等が挙げられる。ピペリジン誘導体のカルバミン酸誘導体は塩基が触媒となって熱的にアミンであるピペリジン誘導体を生成する。この為、他の塩基性基を生成する感光性基と組み合わせることによって、少ない露光量で多量の塩基性基を発生することが可能である。
【0373】
エネルギー線照射により、単独で陰イオン交換性基を生成する感光性基の具体例カルバモイルオキシム誘導体基としては、例えば以下に示すようなものが用いられる。
【化6】
Figure 0003675768
なお、式中、R1は炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、R2は炭素数1〜20の置換または非置換のアリール基を示す。R1の具体例としては、メチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基など。R2の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基などが挙げられる。
【0374】
また、カルバミン酸誘導体基としては、例えば以下に示すようなものが用いられる。
【化7】
Figure 0003675768
【0375】
以下に示すようなカルバミン酸誘導体基も用いることができる。
【化8】
Figure 0003675768
なお、式中、R1は炭素数1〜20の置換または非置換のアリール基を示す。
【0376】
ホルムアミド誘導体基としては、例えば以下に示すようなものが用いられる。
【化9】
Figure 0003675768
なお、式中、Rは炭素数1から20の置換または非置換の2価の芳香環構造。具体的には例えばフェニレンなどを示す。
【0377】
エネルギー線照射により化学反応を生じて何らかの陰イオン交換性基の前駆体を生じ、前記前駆体が更に化学反応を生じることにより陰イオン交換性基を生成するもの、いわゆる照射による化学反応をきっかけとする多段階反応により陰イオン交換性基を生じる感光性基としては、例えば、アシルオキシム誘導体基、アジド誘導体基が挙げられる。
【0378】
エネルギー線照射により化学反応を生じて何らかの陰イオン交換性基の前駆体を生じ、前記前駆体が更に化学反応を生じることにより陰イオン交換性基を生成する感光性基
アシルオキシム誘導体基としては、例えば以下に示すようなものが用いられる。
【化10】
Figure 0003675768
なお、式中、R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す。
【0379】
アジド誘導体基としては、例えば以下に示すようなものが用いられる。
【化11】
Figure 0003675768
なお、式中、Rは炭素数1から20の置換または非置換の2価の芳香環構造を示す。具体的には例えばフェニレンなどが挙げられる。
【0380】
エネルギー線照射により陰イオン交換性基を消失する感光性基とは、すなわち照射前には陰イオン交換性基を有し、この陰イオン交換性基がエネルギー線照射によって脱離するか、疎水性基に変化する基である。
【0381】
具体的には、例えば、Cl、PF 、AsF 、SbF 、BF 、ClO 、CFSO 、HSO 、FSO 、FPO 、p−CH−C−SO 、p−NO−C−SO 等の陰イオンを対アニオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩やセレノニウム塩等のオニウム塩等の構造を有する基が挙げられる。これらは陰イオン交換反応によって金属含有イオンや金属含有化合物を吸着することが可能である。正電荷に帯電しているため、金属コロイドを吸着することができる。またエネルギー線照射によって分解して、非イオン性になることによって、鍍金核を吸着し難くなる。
【0382】
陰イオン交換性基がエネルギー線照射によって脱離するか、疎水性基に変化する感光性基
ジアゾニウム塩誘導体基としては例えば以下のようなものが用いられる。
【化12】
Figure 0003675768
なお、式中、Rは炭素数1から20の置換または非置換の2価の芳香環構造を示す。具体的には例えばフェニレンを示す。また、置換基としては、具体的には例えばニトロ基、メトキシ基、モルホリノ基、塩素などが挙げられる。Aは、Cl、PF 、AsF 、SbF 、BF 、SnCl 2−、FeCl 、BiCl 2−、ClO 、CFSO 、HSO 、FSO 、FPO 、p−CH−C−SO 、p−NO−C−SO 等の陰イオンを示す。
【0383】
エネルギー線照射によって塩基発生剤から発生した塩基等と作用して陰イオン交換性基を生成する感光性基としては、ピペリジン誘導体のカルバミン酸誘導体基等が挙げられる。
【0384】
(b)架橋性基
架橋性基としては、架橋性基同士が自己重合して架橋しても良いし、感光性層中の他の物質と結合形成して架橋しても良い。
【0385】
自己重合できる架橋性基の具体例としては、例えば、グリシジル基のようなエポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、クロロメチルフェニル基、メチロール基、ベンゾシクロブテン基、マレイミジル基、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基、エノキシシリル基、及び、オキシムシリル基、及び、これらの誘導体基等が挙げられる。
【0386】
これらの架橋性基は、光照射や加熱、或いは、触媒を作用させることによって架橋させる。
【0387】
(c)ポリマーおよび高分子化合物
本発明の複合部材形成用感光性化合物においては、鍍金核を吸着させる際や鍍金の際に、感光性層がアルカリまたは酸性の水溶液中に曝されるため、それらに溶解し難いように陰イオン交換性基を生成あるいは消失する感光性基や架橋性基がポリマーや高分子化合物に担持、或いは、結合されている。
【0388】
上記ポリマーとしては、フェノールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂、ビニルフェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系樹脂やポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸エステル誘導体やポリメタクリル酸エステル誘導体などのアクリル樹脂系樹脂、ポリシロキサン誘導体等が挙げられる。これらの中でも塗布性などの観点からフェノール系樹脂やアクリル樹脂系樹脂を用いることが好ましい。
【0389】
上記高分子化合物としては、芳香環および炭素鎖よりなる高分子化合物で、好ましくは枝分かれしているものがよい。
【0390】
ポリマーや高分子化合物の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が1000〜500万であることが好ましく、2000〜5万であることがより望ましい。
【0391】
ポリマーや高分子化合物の分子量が小さすぎる場合には、成膜性が悪く、鍍金液等に対する耐溶剤性も低下するおそれがある。すなわち鍍金液等に溶解しやすくなる。また、溶剤に対する耐性を損なうことなく、ポリマーあるいは高分子化合物に膨潤性を付与することは困難である。一方、分子量が過剰に大きい場合には、塗布用の溶媒への溶解性が低下するうえ、塗布性も悪くなってしまう。
【0392】
(d)感光性基および架橋性基の導入量
ポリマー中の感光性基の導入量が少なすぎると充分に鍍金核を吸着させることができないし、多すぎると鍍金液等へ溶解し易くなるうえ、製作した複合部材が吸湿し易くなり、絶縁不良等の不具合を起こし易くなる。
【0393】
陰イオン交換性基を生成したり消失したりする感光性基のポリマーあるいは高分子化合物への導入率は好ましくは5〜300%、より望ましくは30〜70%の範囲の導入率とするのが良い。ここでの導入率とはそれぞれ以下の式で表される。
【0394】
ポリマーへの感光性基の導入率(%)=(陰イオン交換性基を生成あるいは消失する基の数)÷(ポリマーのモノマー単位の数)×100
高分子化合物への感光性基の導入率(%)=(陰イオン交換性基を生成あるいは消失する基の数)÷(高分子化合物の分子量÷100)×100
架橋性基のポリマーあるいは高分子化合物への導入率は好ましくは1〜100%の範囲内であり、より望ましくは10〜50%の範囲の導入率とするのが良い。ここでの導入率とは以下の式で表わされる。
【0395】
ポリマーへの架橋性基の導入率(%)=(架橋性基の数)÷(ポリマーのモノマー単位の数)×100
高分子化合物への架橋性基の導入率(%)=(陰イオン交換性基を生成あるいは消失する基の数)÷(高分子化合物の分子量÷100)×100
ポリマーあるいは高分子化合物への架橋性基の導入量が少なすぎる場合には、充分に架橋させることが困難となるので、鍍金液等へ溶解や膨潤し易くなる。一方、架橋性基が過剰に導入されていると、鍍金核溶液などに膨潤しにくくなる上、架橋した際に、感光層が硬化収縮して、基材が変形したり、基材から感光層が剥離するおそれがある。
【0396】
複合部材形成用感光性化合物
以上に記載した本発明の複合部材形成用感光性化合物としては、より好ましくは、前記感光性基を有するアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルと、前記架橋性基を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの2元共重合体であるポリマー、あるいはこれにさらに増感作用を有する基を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルを共重合させた3元共重合体、さらには溶解性を調節するための疎水性基などを有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルを共重合させた4元共重合体などが挙げられる。アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの代わりに、スチレン誘導体、ノルボルネン誘導体、N置換マレイミド誘導体、ビニルアルコール誘導体などを用いても良い。
【0397】
感光性基を有するモノマー単位としては、例えば以下の一般式で示されるカルバモイルオキシ誘導体基を感光性基として有するモノマー単位が用いられる。
【化13】
Figure 0003675768
なお、式中、R1は水素あるいはメチル基。R2は炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、R3は炭素数1〜20の置換または非置換のアリール基を示す。R2の具体例としては、メチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基など。R3の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基などが挙げられる。
【0398】
また、感光性基を有するモノマー単位としては、例えば以下の一般式で示されるカルバミン酸誘導体基を感光性基として有するモノマー単位が用いられる。
【化14】
Figure 0003675768
【化15】
Figure 0003675768
なお、式中、R1は水素あるいはメチル基を示す。
【0399】
また、感光性基を有するモノマー単位としては、例えば以下の一般式で示されるホルムアミド誘導体基を感光性基として有するモノマー単位も用いられる。
【化16】
Figure 0003675768
なお、式中、R1は水素あるいはメチル基を示す。
【0400】
また、感光性基を有するモノマー単位としては、例えば以下の一般式で示されるアシルオキシム誘導体基を感光性基として有するアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルモノマー単位も用いられる。
【化17】
Figure 0003675768
なお、式中、R1は水素、メチル基を示す。また、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す。R2,R3の具体例としては、メチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基などが挙げられる。
【0401】
また、感光性基を有するモノマー単位としては、例えば以下の一般式で示されるアジド誘導体基を有するモノマー単位も用いられる。
の例。
【化18】
Figure 0003675768
【化19】
Figure 0003675768
なお、式中、R1は水素あるいはメチル基を示す。また、R2は炭素数1から10の炭化水素鎖を示す。R2の具体例としては例えばメチレン、あるいはエチレンが挙げられる。
【0402】
また、感光性基を有するモノマー単位としては、例えば以下の一般式で示されるスルホニウム基を感光性基として有するアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルモノマー単位も用いられる。
【化20】
Figure 0003675768
なお、式中、R1は、水素、メチル基を示す。R1、R2は、それぞれ独立に炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す。R2,R3の具体例としては、メチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基などが挙げられる。Aは、Cl、PF 、AsF 、SbF 、BF 、ClO 、CFSO 、HSO 、FSO 、FPO 、p−CH−C−SO 、p−NO−C−SO 等の陰イオンを示す。
【0403】
架橋性基を有するモノマー単位としては、例えば以下の一般式で示されるものが用いられる。
【化21】
Figure 0003675768
【化22】
Figure 0003675768
なお、式中、それぞれR1は水素あるいはメチル基を表す。
【0404】
【化23】
Figure 0003675768
【化24】
Figure 0003675768
【化25】
Figure 0003675768
なお、式中、R1,R2はそれぞれ独立に水素、メチル基を表す。
【0405】
【化26】
Figure 0003675768
なお、式中、R1,R2は、それぞれ独立に水素、メチル基を表す。
【0406】
増感作用を示す基を有するモノマーとしては、例えば以下の一般式で示されるものが用いられる。
【化27】
Figure 0003675768
【化28】
Figure 0003675768
【化29】
Figure 0003675768
【0407】
なお、式中、それぞれR1は、水素あるいはメチル基を、R2はそれぞれ炭素数1〜20の置換または非置換のアリール基を示す。R2の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基などが挙げられる。
【0408】
疎水性基を有するモノマーとしては、例えばエステル部位として、炭素数1から20の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基を有するアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルや、スチレン誘導体などが用いられる。
【0409】
各種モノマーの共重合比としては、感光性モノマーの共重合体比は10%以上が良く、好ましくは30から90%が良い。架橋性モノマーを含まない場合、感光性モノマーの共重合体比は30から60%とするのが良い。架橋性モノマーの共重合体比は5から30%程度が良く、その場合、感光性モノマーの共重合体比は60から90%が良い。
【0410】
複合部材形成用感光性化合物の具体例
複合部材形成用感光性化合物の具体例としては例えば以下のようなものが挙げられる。
【0411】
具体例1
下記化学式(30)で示されるような光照射によって陰イオン交換性基(アミノ基)を生成する感光性基と、架橋性基であるグリシジル基などを側鎖に有するポリマー
【化30】
Figure 0003675768
(重量平均分子量1万から5万程度、(a+b)/(a+b+c)=0.2〜0.9程度、a/(a+b)=0.1〜0.6程度、R1、R2はそれぞれ独立にメチル基、フェニル基など炭素数1〜12程度の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す。)
このポリマーは感光性基から発生したアミノ基が、グリシジル基の架橋反応の触媒として作用する。またアミノ基がグリシジル基と反応して生じる二級あるいは3級のアミノ基も陰イオン交換基として機能することができる。
【0412】
具体例2
下記化学式(31)で示されるような光照射によって陰イオン交換性基(アミノ基)を生成する感光性基を側鎖に、架橋性基であるビニル基を側鎖に、炭素―炭素二重結合を主鎖中に有するポリマー
【化31】
Figure 0003675768
(重量平均分子量1万から5万程度、(a+b)/(a+b+c+d)=0.2〜0.9程度、a/(a+b)=0.1〜0.6程度、c/(c+d)=0.1〜0.2程度、R1,R2はそれぞれ独立にメチル基、フェニル基など炭素数1〜12程度の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基を示す。)
このポリマーはラジカル発生剤、特にBTTBなどの多官能ラジカル発生剤を添加して用いるのが良い。
【0413】
具体例3
下記化学式(32)で示されるような光照射によって陰イオン交換性基(スルホニウム基)を消失する感光性基と、グリシジル基などを側鎖に有するポリマー
【化32】
Figure 0003675768
(重量平均分子量1万から5万程度、m/(m+n)=0.2〜0.9程度)
このポリマーは感光性基が光照射によって陰イオン交換性基を消失すると同時にトリフルオロメタンスルホン酸を発生する。この酸がグリシジル基の架橋反応の触媒にもなる。
【0414】
具体例4
下記化学式(33)で示されるような光照射によって陰イオン交換性基(スルホニウム基)を消失する感光性基と、アルコキシシリル基を側鎖に有するポリマー
【化33】
Figure 0003675768
(重量平均分子量1万から5万程度、m/(m+n)=0.2〜0.9程度、R6はメチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、フェニル基など炭素数1〜6程度の置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基など。)
このポリマーは感光性基が光照射によって陰イオン交換性基を消失すると同時にトリフルオロメタンスルホン酸を発生する。この酸がアルコキシシリル基の架橋反応の触媒にもなる。
これらの中でも特に、ラジカル架橋性である具体例2のポリマーが良い。
【0415】
(2) 複合部材形成用感光性組成物
本発明の複合部材形成用感光性組成物は、上記の陰イオン交換性基を発生あるいは消失する感光性基を有する化合物、ポリマーあるいは高分子化合物と、上記架橋性基を有する化合物、ポリマーあるいは高分子化合物を含有することを特徴とする組成物である。
この複合部材形成用感光性組成物において、感光性基、架橋性基、化合物、ポリマー、および高分子化合物としては、前記複合部材形成用感光性化合物において説明したものと同等のものを用いることができる。塗布性や鍍金液などに対する耐性が優れていることから、感光性基や架橋性基はポリマーあるいは高分子化合物に導入されているのがよい。
感光性基を有するポリマーあるいは高分子化合物としては、具体的には、前記感光性基を有するアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン誘導体、ノルボルネン誘導体、N置換マレイミド誘導体などのホモポリマーあるいは共重合体、複数の感光性基を有するポリエステルあるいはポリエーテル高分子化合物などを挙げることができる。
また、架橋性基を有するポリマーあるいは高分子化合物としては、前記架橋性基を有するものが挙げられ、具体的には、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、シリコーン樹脂、複数の架橋性基を有するポリエステルあるいはポリエーテル高分子化合物などを挙げることができる。
該感光性基を有するポリマーあるいは高分子化合物の構成割合が感光性組成物中に1〜99重量%、好ましくは20〜95重量%含有するものである。
【0416】
(3) 複合部材形成用感光性材料
本発明の複合部材形成用感光性化合物および複合部材形成用感光性組成物は、さらに必要に応じて、下記の光塩基発生剤、光酸発生剤、酸増殖剤、触媒、架橋助剤、ラジカル発生剤、増感剤等の成分を配合して複合部材形成用感光性材料とすることができる。また一般的には、この材料を溶剤に溶解して溶液とし、この溶液を基材に塗布して乾燥して感光性層を形成する。
溶剤としては、この感光性材料を構成する成分を溶解するものであれば種類を問わないが、例えば有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、グライム、ジグライムなどのエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、アセト酢酸エチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、トルエン、クメン、石油エーテルなどを用いることができる。水を用いても良い。この感光性材料の濃度は、0.1〜30%の範囲で用いることができる。濃度がこれより高いと、塗布が困難になり、一方、これより低いと、塗布膜厚が薄くなり、塗布作業の効率が低下する。
【0417】
光塩基発生剤
複合部材形成用感光性化合物の感光性基として、ピペリジン誘導体のカルバミン酸誘導体基などの、塩基の作用によって陰イオン交換性基を生成する感光性基を用いる場合は、エネルギー線照射で塩基を発生する光塩基発生剤を添加する。エネルギー線を照射すると、光塩基発生剤から塩基が発生し、その発生した塩基の作用により陰イオン交換性基が生成する。
【0418】
光塩基発生剤としては、例えば、コバルトアミン錯体、ケトンオキシムエステル類、o−ニトロベンジルカルバメート類等のカルバメート類、ホルムアミド類等が用いられ、具体的には、例えば、みどり化学製NBC−101(CAS.No.[119137−03−0])等のカルバメート類やみどり化学製TPS−OH(CAS.No.[58621−56−0])等のトリアリールスルホニウム塩類が用いられる。
【0419】
光塩基発生剤を用いる代わりに、光酸発生剤と塩基性化合物を組み合わせても良い。すなわち、エネルギー線照射部位においては光酸発生剤から酸が発生して塩基性化合物を中和する。
【0420】
これに対して未照射部位においては塩基性化合物が作用して陰イオン交換性基が生成する。これにより未照射部位にのみ選択的に陰イオン交換性基を配置することが可能となる。
【0421】
光酸発生剤
光酸発生剤としては、CFSO 、p−CHPhSO 、p−NOPhSO 等を対アニオンとするオニウム塩、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩等の塩、トリアジン類、有機ハロゲン化合物、2−ニトロベンジルスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類、N−スルホニロキシイミド類、芳香族スルホン類、キノンジアジドスルホン酸エステル類等を用いることができる。
【0422】
具体的には、光酸発生剤としては、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、2,3,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−4−ナフトキノンジアジドスルフォネート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウムスルフェート、ジフェニルスルフォニルメタン、ジフェニルスルフォニルジアゾメタン、ジフェニルジスルホン、α−メチルベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ベンゾイントシレート、ナフタルイミジルトリフルオロメタンスルホネート、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノエチル)アミノ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン・ジメチル硫酸塩、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0423】
これら光酸発生剤と、酸により新たに自己触媒的に酸を発生する酸増殖剤とを組み合わせて用いても良い。また、光酸発生性の酸増殖剤を単独で用いてももちろん良い。
【0424】
酸増殖剤
酸増殖剤としては、例えば、t−ブチル 2−メチル−2−(p−トルエンスルホニロキシメチル)アセトアセテートおよびその誘導体、シス−1−フェニル−2−(p−トルエンスルホニロキシ)−1−シクロヘキサノールおよびその誘導体、3−ニトロ−4−(t−ブトキシカルボニロキシ)ベンジルトシレートおよびその誘導体、3−フェニル−3,3−エチレンジオキシプロピルトシレートなど3−フェニル−3,3−エチレンジオキシプロピルスルホネート誘導体、シス−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−ピナノールなどの2−ヒドロキシビシクロアルカン−1−スルホネート誘導体、1,4−ビス(p−トルエンスルホニルオキシ)シクロヘキサンなどの1,4−シクロヘキサンジオールのスルホネート誘導体、2,4,6−トリス[2−(p−トルエンスルホニルオキシ)エチル]−1,3,5−トリオキサンなどのトリオキサン誘導体等が挙げられる。光酸発生性の酸増殖剤としては、3−フェニル−3,3−o−ニトロフェニルエチレンジオキシプロピルトシレートなどの3−フェニル−3,3−エチレンジオキシプロピルスルホネート誘導体が挙げられる。
【0425】
塩基性化合物
光酸発生剤と併せて用いられる塩基性化合物は、光酸発生剤から放出される酸によって中和され、かつ陰イオン交換性基の生成反応の触媒として作用するものであれば任意のものを用いることができ、有機化合物、無機化合物いずれでも構わない。好ましくはアンモニア、一級アミン類、二級アミン類、三級アミン類等が挙げられる。
【0426】
架橋触媒
架橋触媒は、含有する複合部材形成用感光性化合物が有する架橋性基に応じて選択される。例えばエポキシ基、メチロール基、ビニルエーテル基、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基、エノキシシリル基、及び、オキシムシリル基等の架橋性基には酸や塩基の触媒を用い、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の架橋性基にはラジカル発生剤を用いる。
【0427】
例えば、水酸基、イソシアネート基、カルボン酸無水物基、マレイミジル基、アルデヒド基、アルコキシシリル基等の、他の物質と結合形成して架橋する架橋性基を用いる場合には、これら架橋性基同士を結合するための架橋助剤が添加される。
【0428】
架橋助剤
架橋助剤としては、これらの架橋性基と結合して架橋結合を形成するために、架橋性基と結合可能な基を、1分子中に複数有するものが用いられる。
【0429】
架橋助剤としては、例えば、水酸基にはアルコキシシラン類、アルミニウムアルコキサイド類、カルボン酸無水物、ビスマレイミド誘導体、イソシアネート化合物、多価メチロール化合物、およびエポキシ化合物等が用いられる。イソシアネート基、カルボン酸無水物基、アルコキシシリル基には多価アルコール等が用いられる。
【0430】
ラジカル発生剤
含有する複合部材形成用感光性化合物が有する架橋性基が、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミジル基等の多重結合を有する基などのラジカル重合性基である場合には、ラジカル発生剤が添加される。ラジカル発生剤としては、例えば、以下のような有機過酸化物類を用いることができる。
【0431】
例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド、メチルアセトアセテートパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール類、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、t−ヘキシルハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキサイド類、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキシド、スクシニックアッシドパーオキサイド、m−トルオイルアンドベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオドデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシメレイクアシッド、t−ブチルパーオキシ 3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ イソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキシル モノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等のパーオキシエステル類、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキシド、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、及び、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等である。特に、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及び、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等の多官能ラジカル発生剤は、架橋助剤としても作用するため好ましい。また、過酸化物以外のアゾビスイソブチロニトリル等アゾニトリル類を用いることもできる。
【0432】
増感剤
各種増感剤を添加しても良い。増感剤を添加することによって含有する複合部材形成用感光性化合物が有する感光性基の感度を向上したり、用いる光源に合わせて感光波長を様々に変化させることが可能となる。
【0433】
特に多孔質基材内部まで感光させようとする場合、基材の吸収波長以外の波長の光等基材を透過し易いエネルギー線で感光させるのが好ましい。
【0434】
例えば、ポリイミドの多孔質基材等は多くの場合、約500nm以下の光を吸収してしまうため、例えば、g線やi線等では多孔質内部まで露光することは難しい。こうした場合には、500nm以上の波長領域に吸収帯を有する可視光増感剤を用いることで、多孔質内部まで良好に感光させることが可能となる。
【0435】
増感剤の具体例としては、例えば、芳香族炭化水素及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、o−ベンゾイル安息香酸エステル及びその誘導体、アセトフェノン及びその誘導体、ベンゾイン並びにベンゾインエーテル及びその誘導体、キサントン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体ジスルフィド化合物、キノン系化合物、ハロゲン化炭化水素含有化合物並びにアミン類、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキアゾリジノン、5−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−3−エチル−2−チオキソ−4−オキサゾリジノン等のメロシアニン系色素、3−ブチル−1,1−ジメチル−2−[2[2−ジフェニルアミノ−3−[(3−ブチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンズ[エ]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エチエニル]−1H−ベンズ[エ]インドリウム パーコレート、2−[2−[2−クロロ−3−[(3−エチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンズ[エ]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−1,1−ジメチル−3−エチル−1H−ベンズ[e]インドリウム テトラフルオロボレート、2−[2−[2−クロロ−3−[(3−エチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エテニル]−1,1−ジメチル−3−エチル−1H−ベンズ[e]インドリウム アイオダイド等のシアニン系色素、スクアリウム系シアニン色素、2−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]ベンゾチアゾール、2−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]ナフト[1,2−d]チアゾール、2−[(m−ヒドロキシ−p−メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール等のスチリル系色素、エオシンB(C.I.No.45400)、エオシンJ(C.I.No.45380)、シアノシン(C.I.No.45410)、ベンガルローズ、エリスロシン(C.I.No.45430)、2,3,7−トリヒドロキシ−9−フェニルキサンテン−6−オン、ローダミン6G等のキサンテン色素、チオニン(C.I.No.52000)、アズレA(C.I.No.52005)、アズレC(C.I.No.52002)等のチアジン色素、ピロニンB(C.I.No.45005)、ピロニンGY(C.I.No.45005)等のピロニン色素、3−アセチルクマリン、3−アセチル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンズイミダゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、10−(2−ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−カルベトキシ−7−(ジエチルアミノ)クマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等のクマリン系色素、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)等のケトクマリン系色素、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジブチルアミノスチリル)−4H−ピラン等のDCM系色素がある。
【0436】
光塩基発生剤、光酸発生剤、酸増殖剤、触媒、架橋助剤、ラジカル発生剤、などの成分の配合割合は、複合部材形成用感光性化合物に対して、それぞれ0.1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%であることが望ましい。
また、増感剤の配合割合は複合部材形成用感光性化合物に対して、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%であることが望ましい。
【0437】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0438】
評価方法
以下に示す実施例及び比較例における評価は、以下に示す方法によって行った。
【0439】
[鍍金不良評価]
鍍金不良や鍍金の異常析出の有無の評価は、形成した鍍金のパターンを光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察することにより行った。
【0440】
[導電性評価]
導電性の評価は、形成した鍍金のパターンの抵抗値を四端子法により測定することにより行った。
【0441】
(実施例1)
実施例1では、本発明の第1あるいは第2の態様の複合部材の製造方法の一例として、露光によりアミノ基を発生する感光性ポリマーを用いて、多孔質シートに銅パターンを形成する方法を説明する。
【0442】
ポリマー1の合成
露光により陰イオン交換性基であるアミノ基を発生する感光性ポリマーとして下記化学式(34)で示されるランダム共重合体であるポリマー1を用いた。
【0443】
【化34】
Figure 0003675768
ポリマー1はアゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと称す)をラジカル重合開始剤として用いたラジカル重合法により下記の如き重合方法により合成した重量平均分子量3万のものである。
【0444】
まず、乾燥してアルゴンガスで置換した100mlのナスフラスコに、下記化学式(35)で示されるモノマー1:1g、下記化学式(36)で示されるモノマー2:3g、AIBN:0.1gを乾燥テトラヒドロフラン(以下THFと称す)14gに溶解した溶液を攪拌子と共に入れた。
【0445】
【化35】
Figure 0003675768
【化36】
Figure 0003675768
溶液はフラスコに入れた後、1分間アルゴンガスでバブリングして脱気した。アルゴン気流下、ゆっくり攪拌しながら60℃で40時間加熱した。加熱後、室温に戻してからメタノール溶媒に再沈した。再沈後、ガラスフィルターで沈殿を濾別した。濾過物を真空乾燥して、白色粉末としてポリマー1を得た。
【0446】
感光性層の形成
合成したポリマー1の5重量%THF溶液に親水化処理したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂多孔質シート(平均空孔径0.2μm,膜厚20μm)を浸漬した。浸漬により多孔質シートに充分溶液が浸透してから引き上げて、自然乾燥して多孔質シートの空孔内表面にポリマー1をコーティングした。コーティング後も多孔質シートの空孔が閉塞されておらず多孔質状態を保持していた。
【0447】
露 光
平行露光器(キャノン(株)製PLA501)で、ライン幅20μm、スペース30μmの配線パターンのマスクを介して光量2J/cm2の条件で露光して、露光部にアミノ基が生成したパターン潜像を形成した。
【0448】
鍍金核の吸着
パターン潜像を形成した多孔質シートを10wt%塩化白金酸水溶液に30分間浸漬して、アミノ基に塩化白金酸イオンを吸着させた。吸着後、蒸留水で洗浄して余分の塩化白金酸水溶液を除去した。洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に5分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。
【0449】
鍍 金
更に、無電解銅鍍金液PS−503に40℃で3時間浸漬して銅鍍金を施し、ライン幅20μm、スペース30μmのマスク通りのCu配線パターンが形成された配線シートとして用いることのできる複合部材を得た。また50μm径のビアパターンのマスクを用いて同様の手法で鍍金を行いビアが形成された配線シート(ビアシート)として用いることのできる複合部材を得た。
【0450】
評 価
製作した配線シート、ビアシートは、感光性組成物層の剥がれに起因する鍍金不良等も観察されず、良好な配線およびビアのパターンを有する複合部材を作成することができた。
【0451】
用 途
これらの配線シート4枚とビアシート3枚を交互に積層した後、1,2−ポリブタジエン(分子量8000)100重量部に5重量部のジクミルパーオキサイドを加えた樹脂液を含浸後、170度で1時間加熱して硬化させて多層配線基板を製作した。
【0452】
(比較例1)
上記実施例1の比較例として、ポリマー1に代えて、以下のように陽イオン交換性基を発生するポリマーを用いて配線シートの製作を試みた。
まず光酸発生剤としてのナフタルイミド・トリフルオロメタンスルホネートを、ポリメチルメタクリレート−ポリテトラヒドロメタクリレート(60mol%:40mol%、Mw=40000)のランダムコポリマーに対して1重量部添加した。樹脂と光酸発生剤の固形分との合計が1重量部になるようにアセトン溶液にして、感光性組成物を調製した。
実施例1と同様の多孔質シートを用い、前述の感光性組成物をディップ法にて多孔質シートにコーティングした。 塗布後、この多孔質シートに対して、実施例1と同様の露光装置およびマスクを用いて露光し、露光部に潜像を形成させた。その後、ホットプレート上で加熱することにより脱保護反応を促進させて、露光部に陽イオン交換性基であるカルボキシル基を生成させた。 潜像が形成されたシートを、0.5Mに調整した硫酸銅水溶液に5分間浸漬後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。続いて、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に30分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。洗浄後、実施例1と同様の無電解銅鍍金液PS−503に40度で3時間浸漬し、銅鍍金を行い配線シートを作製した。
作製した配線シートは、一部感光性層の多孔質シートからの剥がれに起因すると思われる鍍金パターンの欠損がみられた。
【0453】
(実施例2)
実施例2も本発明の第1あるいは第2の態様の複合部材の製造方法の一例として、基材に微細アラミド繊維の不織布からなる多孔質シートを用いた例を説明する。
【0454】
不織布の製造
直径0.2から0.3μmの微細アラミド繊維(ダイセル化学社製、商品名ティアラ)を漉いて厚さ50μmの不織布を製作した。
【0455】
親水性化処理
この不織布を脱脂後、メタノールで洗浄してから、N−ヒドロキシフタルイミド5mmol、コバルトアセチルアセトナト(II)0.05mmol、及び酢酸30mlの混合液中に浸漬し、酸素雰囲気下(1atm)、75℃で4時間静置して酸化して親水性化処理した。親水性化処理後、洗浄した。
【0456】
コーティング
ポリマー1の5重量%THF溶液に親水性化処理した不織布を浸漬した。浸漬により不織布に充分溶液が浸透してから引き上げて、自然乾燥して不織布の繊維表面にポリマー1をコーティングした。コーティング後も不織布の空孔が閉塞されておらず多孔質状態を保持していた。
【0457】
露 光
平行露光器(キャノン(株)製PLA501)で、ライン幅100μm、スペース200μmの配線パターンのマスクを介して光量200mJ/cm2の条件で露光して、露光部に陰イオン交換性基であるアミノ基が生成したパターン潜像を形成した。
【0458】
鍍金核の吸着
パターン潜像を形成した不織布を、0.1Nの塩酸水溶液に10分間浸漬した。塩酸によりアミノ基がアンモニウム塩に変化する。浸漬後、水洗してから、下記化学式(37)で示される錯体1の水溶液に浸漬した。錯体1は結合性基としてカルボキシル基のナトリウム塩を有する。この結合性基が陰イオン交換性基であるアンモニウム塩基に吸着する。
【0459】
【化37】
Figure 0003675768
錯体1の水溶液に30分間浸漬して、アミノ基に錯体1を吸着させた。吸着後、蒸留水で洗浄して余分の錯体1を除去した。洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に5分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。
【0460】
鍍 金
更に、無電解銅鍍金液PS−503に40度で3時間浸漬して銅鍍金を施し、ライン幅100μm、スペース200μmのマスク通りのCu配線パターンが形成された配線シートとして用いることのできる複合部材を得た。
【0461】
評 価
配線パターンは幅100μmの配線が不織布の露光面側に厚さ約20μmで形成されていた。未露光部には鍍金の異常析出は観察されなかった。これにエポキシ樹脂を含浸して、加圧しながら窒素気流下120度で1時間加熱して硬化させて配線基板を製作した。製作した配線基板は十分な曲げ強度を有し、配線のシート抵抗値は約1.5mΩ/□以下と充分な導電率を有していた。
【0462】
(実施例3)
実施例3も本発明の第1あるいは第2の態様の複合部材の製造方法の一例として、基材にメルトブロー法により作製したPPS繊維の不織布からなる多孔質シートを用いた例を説明する。
【0463】
不織布の製造
メルトブロー法により製作した直径1〜2μm程度のPPS繊維からなる厚さ50μmの不織布を製作した。
【0464】
親水性化処理
この不織布をプラズマ照射器(キーエンス社製)にて大気中プラズマ処理して親水性化処理した。
【0465】
配線パターンの形成
親水性化処理後、実施例2と同様にして100μm幅、厚さ約20μmの配線を有する配線基板を製作した。
【0466】
評 価
この配線基板は、十分な曲げ強度を有し、配線のシート抵抗値は約1.5mΩ/□と充分な導電率を有していた。
【0467】
(実施例4)(表面配線とビアの一括形成)
実施例4では、本発明の第1あるいは第2の態様の複合部材の製造方法の一例として、露光によりアミノ基を発生する感光性ポリマーを用いて、多孔質シートに表面配線とビアとを一回の露光により一括形成する方法を説明する。
【0468】
感光性層の形成
実施例1で用いたのと同様のポリマー1の5重量%THF溶液に親水化処理したPTFE多孔質シート(平均空孔径0.2μm,膜厚30μm)を浸漬した。浸漬して多孔質シートに充分溶液が浸透してから引き上げて、自然乾燥して多孔質シートの空孔内表面にポリマー1をコーティングした。コーティング後も多孔質シートの空孔が閉塞されておらず多孔質状態を保持していた。
【0469】
露 光
平行露光器(キャノン(株)製PLA501)を用いて、ライン幅50μm、スペース50μmの配線パターンと、直径50μmのビアパターンが形成されたマスクを介して、光量2J/cm2の条件で露光した。マスクとして、ビアパターン部の透過率を100%、配線パターン部の透過率を10%としたハーフトーンマスクを用いた。この露光により配線パターン部は多孔質シートの表面付近のみ感光し、ビアパターン部は多孔質シートを貫通して感光する。
【0470】
鍍金核の吸着
露光した多孔質シートを10wt%塩化金酸水溶液に30分間浸漬して、アミノ基に塩化金酸イオンを吸着させた。吸着後、蒸留水で洗浄して余分の塩化金酸水溶液を除去した。洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に5分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。
【0471】
鍍 金
更に、無電解銅鍍金液PS−503に40度で3時間浸漬して銅鍍金を施し、ライン幅50μm、スペース50μm、厚さ10μmのCu表面配線と、直径50μmのCuビアとが形成された配線シートとして用いることのできる複合部材を得た。
【0472】
評 価
このCu表面配線のシート抵抗値は約2mΩ/□と充分な導電率を有していた。この複合部材を両面配線基板等のコア配線基板の両面に貼り付けると、ビルドアップ配線基板を製作することができる。
【0473】
(実施例5)(塩基増殖性感光性ポリマーを用いた例)
実施例5では、本発明の第1の態様の複合部材の製造方法の一例として、露光によりアミノ基を発生するポリマーと、アミノ基により自己増殖的にアミノ基を発生する塩基増殖性ポリマーとを組み合わせた感光性ポリマーを用いて、多孔質シートに銅パターンを形成する方法を説明する。
【0474】
感光性層の形成
ポリマー1と下記化学式(38)で示される塩基増殖性ポリマー2との重量比で1:2の混合物の5重量%溶液に親水性化処理したPTFE多孔質シート(平均空孔径0.2μm,膜厚20μm)を浸漬した。浸漬によりPTFE多孔質シートに充分溶液が浸透してから引き上げて、自然乾燥して、多孔質シートの空孔内の表面にポリマー1をコーティングした。コーティング後も多孔質シートの空孔が閉塞されておらず多孔質状態を保持していた。
【0475】
【化38】
Figure 0003675768
露 光
平行露光器(キャノン(株)製PLA501)で、ライン幅100μm、スペース200μmの配線パターンのマスクを介して光量200mJ/cm2の条件で露光した。露光後、130度で5分間加熱処理して、露光部に陰イオン交換性基であるアミノ基が生成したパターン潜像を形成した。
【0476】
鍍金核の吸着
パターン潜像を形成した多孔質シートを、実施例2で用いたのと同様な塩酸水溶液および錯体1の水溶液に浸漬した。錯体1は結合性基としてカルボキシル基のナトリウム塩を有する。この結合性基がアミノ基に吸着する。
【0477】
錯体1の水溶液に30分間浸漬して、アミノ基に錯体1を吸着させた。吸着後、蒸留水で洗浄して余分の錯体1を除去した。洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に5分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。
【0478】
鍍 金
更に、無電解銅鍍金液PS−503に40度で3時間浸漬して銅鍍金を施し、ライン幅100μm、スペース200μmのマスク通りのCu配線パターンが形成された配線シートとして用いることのできる複合部材を得た。
【0479】
評 価
配線パターンは幅100μmの配線が多孔質シートの裏表に貫通して形成されていた。未露光部には鍍金の異常析出は観察されなかった。これにエポキシ樹脂を含浸して、加圧しながら窒素気流下120度で1時間加熱して硬化させて配線基板を製作した。製作した配線基板は十分な曲げ強度を有し、配線のシート抵抗値は約1.5mΩ/□と充分な導電率を有していた。
【0480】
(実施例6)(陰イオン交換性基を消失する感光性ポリマーを用いた例)
実施例6では、本発明の第1の態様の複合部材の製造方法の一例として、陰イオン交換性基を消失する感光性基を有する感光性ポリマーを用いて、多孔質シートに銅パターンを形成する方法を説明する。
【0481】
ポリマー3の合成
感光性層を形成するポリマーとして、それぞれ下記化学式(39)(40)で示されるモノマー3、モノマー4およびメチルメタクリレートの共重合ポリマー3を合成した。モノマー3は光照射によって陰イオン交換性基(スルホニウム基)を消失する基を有し、モノマー4は三次元的に架橋可能な基であるポリヘドラルオリゴシルセスキオキサン誘導体基を有する。
【0482】
【化39】
Figure 0003675768
【化40】
Figure 0003675768
共重合体ポリマー3の合成は、3種類のモノマーの混合物を脱気したテトラヒドロフラン(THF)に溶解した混合溶液に、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加えて、アルゴン雰囲気下、重合することによって行った。ポリマー3の重量平均分子量=17万。各モノマーのポリマー3中における重量分率は次の通り。モノマー3=17%、モノマー4=22%、メチルメタクリレート=61%。
【0483】
感光性層の形成
合成したポリマー3の5重量%THF溶液に親水化処理したPTFE多孔質シート(平均空孔径0.2μm,膜厚20μm)を浸漬した。浸漬して多孔質シートに充分溶液が浸透してから引き上げて、自然乾燥して多孔質シートの空孔内表面にポリマーをコーティングした。コーティング後も多孔質シートの空孔が閉塞されておらず多孔質状態を保持していた。
【0484】
露 光
平行露光器CANON PLA501で、ドット径=200μmのドット状の遮光部を有するドットアレイパターン(ドットピッチ=500μm)のマスクを介して光量800mJ/cm2の条件で露光した。露光部の陰イオン交換性基(スルホニウム基)は分解して陰イオン交換能を失うため、未露光部のみ陰イオン交換性基が配置されたパターン潜像が形成できた。
【0485】
鍍金核の吸着
パターン潜像を形成した多孔質シートを実施例2で用いたのと同様な錯体1の水溶液に浸漬した。錯体1は結合性基としてカルボキシル基のナトリウム塩を有する。この結合性基が陰イオン交換性基であるスルホニウム基に吸着する。
【0486】
錯体1の水溶液に30分間浸漬して、陰イオン交換性基であるスルホニウム基に錯体1を吸着させた。吸着後、蒸留水で洗浄して余分の錯体1を除去した。洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に5分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。
【0487】
鍍 金
蒸留水で洗浄後、無電解銅メッキ液PS−503に40度で3時間浸漬して銅メッキを施し、ドット径=200μm、ドットピッチ=500μmのドットアレイ状に多孔質シートの表裏両面に貫通して銅が析出した異方性導電シートとして用いることのできる複合部材を得た。作製した複合部材は、感光性組成物層の剥がれに起因するメッキ不良なども観察されず、良好な銅パターンが形成されていた。
【0488】
(実施例7)(陰イオン交換性基を消失する感光性ポリマーを用いた例)
実施例7では、本発明の第1の態様の複合部材の製造方法の一例として、陰イオン交換性基を消失する感光性基を有する感光性ポリマーを用いて、樹脂基板上に銅パターンを形成する方法を説明する。
【0489】
ポリマー4の合成
感光性層を形成するポリマーとして、下記化学式(41)で示されるポリマー4を用いた。ポリマーの側鎖のスルホニウム基は陰イオン交換性基として機能し、露光によって陰イオン交換能を消失する。
【0490】
【化41】
Figure 0003675768
ポリマー4は以下のようにして合成した。還流管を装着した300mlナスフラスコ中、キシリレンジクロライド10gのメタノール溶液(0.75M)に15gのテトラヒドロチオフェンを加え、50度で20時間攪拌した。攪拌後、溶媒を留去した。メタノールに少量の水を混合した混合溶媒少量に残留物を溶解し、0度のアセトン中に再沈した。沈殿を0度のアセトンで洗浄した後、真空乾燥し、白色沈殿を得た。
【0491】
アルゴン気流下、得られた白色沈殿3.51gを脱気した水50mlに溶解し、氷冷下、0.1M水酸化ナトリウム水溶液50mlを5分間かけて滴下した。滴下後、氷冷下で1時間攪拌した。攪拌後、1Mの塩酸水溶液を加え、pH6程度に中和した。中和後、反応液を半透膜(商品名スペクトラ/ポア3、Mw3500)に充填し、アルゴンガスを吹き込んで脱気した水で三日間透析した。透析後、ポリマー4の水溶液が淡黄色液体として得られた。
【0492】
感光性層の形成
表面粗化したガラス繊維強化ビスマレイミド―トリアジン樹脂基板上に得られたポリマー4の水溶液を塗布した。塗布はスピンコーティング法により回転数3000rpmで行った。塗布後、室温で風乾して、基板表面にポリマー4の薄膜を形成した。
【0493】
露 光
ポリマー4の薄膜を形成したビスマレイミド―トリアジン樹脂基板にライン幅=200μmのライン状の遮光部を有する配線パターン(ラインピッチ=500μm)のマスクを介して光量7J/cm2の条件で露光した。露光部の陰イオン交換性基(スルホニウム基)は分解して陰イオン交換能を失うため、未露光部のみ陰イオン交換性基が配置されたパターン潜像が形成できた。
【0494】
鍍金核の吸着
パターン潜像を形成したビスマレイミド―トリアジン樹脂基板を10重量%塩化金酸ナトリウム水溶液に30分間浸漬して、スルホニウム基に塩化金酸イオンを吸着させた。吸着後、蒸留水で洗浄して余分の塩化金酸ナトリウム水溶液を除去した。洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に5分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。未露光部は生成した金の微粒子の表面プラズモン吸収に起因する紫色を呈した。
【0495】
鍍 金
蒸留水で洗浄後、無電解銅鍍金液PS−503に40度で3時間浸漬して銅鍍金を施した。銅鍍金後、窒素気流下、200度で30分間加熱処理して、ライン幅=200μm、ラインピッチ=500μmのライン状にビスマレイミド―トリアジン樹脂基板上に銅が析出した配線基板として用いることのできる複合部材を得た。この加熱工程において、ポリマー4の残存するスルホニウム基は脱離して、腐食の恐れのない非イオン性で、かつ耐熱性のポリパラフェニレンビニレン、あるいはその酸化物へと変化する。
【0496】
評 価
作製した複合部材は、感光性組成物層の剥がれに起因するメッキ不良なども観察されず、良好な銅パターンが形成されていた。また配線のシート抵抗値は約1.5mΩ/□と充分な導電性を示した。さらに配線の基板に対する引き剥がし強度も1N/cm以上と良好であった。
【0497】
(実施例8)(シランカップリングタイプの感光性化合物を用いた例)
実施例8では、本発明の第2の態様の複合部材の製造方法の一例として、1分子中に、基板表面の官能基と結合する基と感光性基とを併せ持つ感光性化合物を用いて、ガラス基板上に銅パターンを形成する方法を説明する。
【0498】
感光性層の形成
下記化学式(42)で示される感光性化合物と、トリイソプロポキシアルミニウムとを重量比で80:1の割合で混合した感光性組成物の溶液を調整した。
【0499】
【化42】
Figure 0003675768
調整した感光性組成物溶液を、常法により清浄にしたガラス基板上に、スピンコーティング法により塗布した。塗布後、ホットプレート上でガラス基板を100℃で1分間加熱して、塗布膜を乾燥させて感光性層を形成した。得られた感光性層の厚さは5nm程度であった。感光性化合物から発生するシラノール基はガラス表面のシラノール基と脱水縮合反応によりシロキサン結合を形成する。
【0500】
露 光
感光性層を形成したガラス基板に、ライン幅=200μm(ラインピッチ=500μm)の配線パターンのマスクを介して光量50mJ/cm2の条件で露光して、露光部にアミノ基が生成したパターン潜像を形成した。
【0501】
鍍金核の吸着
パターン潜像を形成したガラス基板を10wt%塩化白金酸水溶液に30分間浸漬して、アミノ基に白金錯イオンを吸着させた。吸着後、蒸留水で洗浄して余分の塩化白金酸水溶液を除去した。洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に5分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。
【0502】
鍍 金
蒸留水で洗浄後、無電解銅鍍金液PS−503に40度で5時間浸漬して銅鍍金を施した。ライン幅=200μm、ラインピッチ=500μmのライン状にガラス基板上に銅が析出した配線基板として用いることのできる複合部材を得た。
【0503】
評 価
作製した複合部材は、感光性組成物層の剥がれに起因するメッキ不良なども観察されず、良好な銅パターンが形成されていた。また配線のシート抵抗値は約8mΩ/□と配線として利用可能な導電性を示した。
【0504】
反転パターンの形成
上述のパターン潜像を形成したガラス基板にフッ素化合物(3−パーフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン)を接触させ、80度で10分間加熱した。これによりフッ素化合物は露光部に発生したアミノ基と結合を形成して吸着する。フッ素化合物が吸着した部分は撥水性に変化する。吸着後、光量200mJ/cm2の条件で全面露光した。これによりフッ素化合物が吸着した部分以外にアミノ基を発生させた。全面露光後、ガラス基板を10重量%塩化金酸ナトリウム水溶液に30分間浸漬して、アミノ基に塩化金酸イオンを吸着させた。吸着後、蒸留水で洗浄して余分の塩化金酸ナトリウム水溶液を除去した。洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に5分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。蒸留水で洗浄後、無電解銅鍍金液PS−503に40度で5時間浸漬して銅鍍金を施した。最初に露光した際のマスクパターンとは反転した、ライン幅=300μm、ラインピッチ=500μmのライン状にガラス基板上に銅が析出した配線基板として用いることのできる複合部材を得た。
【0505】
(実施例9)(電解鍍金)
実施例9では本発明の第3の態様の製造方法の一例として、露光により陰イオン交換性基であるアミノ基を発生する感光性ポリマーを用いて、電解鍍金により多孔質シートに配線やビアを形成する方法を説明する。
【0506】
感光性層の形成
実施例1で用いたのと同様のポリマー1の5重量%THF溶液に親水化処理したPTFE多孔質シート(平均空孔径0.2μm,膜厚20μm)を浸漬した。浸漬して多孔質シートに充分溶液が浸透してから引き上げて、自然乾燥して多孔質シートの空孔内表面にポリマー1をコーティングした。コーティング後も多孔質シートの空孔が閉塞されておらず多孔質状態を保持していた。
【0507】
露 光
平行露光器(キャノン(株)製PLA501)を用いて、ライン幅50μm、スペース50μmの配線パターンと、直径50μmのビアパターンが形成されたマスクを介して、光量1.2J/cm2の条件で露光して、露光部にアミノ基が生成したパターン潜像を形成した。
【0508】
電解鍍金
露光した多孔質シートを導電性粘着テープを介して厚さ0.5mmの銅電極に貼り付けた。これを電解鍍金液に浸漬して銅板を対向電極として印加電圧6Vで電解鍍金した。電解鍍金液は硫酸銅と塩化カルシウムの混合溶液を用いた。電解鍍金液は酸性であるために、露光部に生成したアミノ基は、強い親水性を示すアンモニウムイオンに変化する。このため露光部に選択的に鍍金液が浸透していた。電解鍍金により鍍金液が浸透した露光部にのみ銅が析出して、ライン幅50μm、スペース50μmのCu配線と、直径50μmのCuビアとが形成された配線シートや異方性導電シートとして用いることのできる複合部材を得た。
【0509】
評 価
Cu配線やCuビアの部分の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、多孔質シートの空孔はほぼ完全に銅によって充填されていた。
【0510】
(実施例10)
実施例10では本発明の第3の態様の製造方法の一例として、露光により陰イオン交換性基であるスルホニル基を消失する感光性ポリマーを用いて、電解鍍金により多孔質シートに配線やビアを形成する方法を説明する。
【0511】
ポリマー5の合成
実施例6で用いたのと同様なモノマー3と、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の共重合体ポリマー5を合成した。共重合体ポリマー5の合成は、2種類のモノマーの混合物を脱気したテトラヒドロフラン(THF)に溶解した混合溶液に、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加えて、アルゴン雰囲気下、重合することによって行った。ポリマー3の重量平均分子量=3万。各モノマーのポリマー5中における重量分率は次の通り。モノマー3=32%、メチルメタクリレート=68%。
【0512】
感光性層の形成
合成したポリマー5の5重量%THF溶液に親水化処理したPTFE多孔質シート(平均空孔径0.2μm,膜厚20μm)を浸漬した。浸漬して多孔質シートに充分溶液が浸透してから引き上げて、自然乾燥して多孔質シートの空孔内表面にポリマーをコーティングした。コーティング後も多孔質シートの空孔が閉塞されておらず多孔質状態を保持していた。
【0513】
露 光
平行露光器CANON PLA501で、ドット径=200μmのドット状の遮光部を有するドットアレイパターン(ドットピッチ=500μm)のマスクを介して光量1.2J/cm2の条件で露光した。露光部の陰イオン交換性基(スルホニウム基)は分解して疎水性に変化する。対してドット状の未露光部に存在する陰イオン交換性基は親水性であり、鍍金液が浸透することができる。
【0514】
電解鍍金
露光した多孔質シートを直径2cmのステンレス製の円柱に密着して巻き付けて固定した。これを電解鍍金液に浸漬して銅板を対向電極として印加電圧6Vで電解鍍金した。電解鍍金液は硫酸銅と塩化カルシウムの混合溶液を用いた。電解鍍金液は、スルホニウム基が存在する未露光部に選択的に浸透した。ステンレス電極に通電すると、電解鍍金により鍍金液が浸透した未露光部にのみ銅が析出して、ドット径=200μmのドットアレイパターン(ドットピッチ=500μm)のCuビアとが形成された配線シートや異方性導電シートとして用いることのできる複合部材を得た。
【0515】
評 価
Cu配線やCuビアの部分の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、多孔質シートの空孔はほぼ完全に銅によって充填されていた。
【0516】
(実施例11)
実施例11では本発明の第3の態様の複合部材の製造方法の一例として、ロール状の電極を用いて、多孔質シートに連続的に銅パターンを形成する方法を説明する。
【0517】
多孔質シートの準備
実施例9と同様にして、パターン潜像が形成された多孔質シートを準備した。
【0518】
多孔質シートは幅5cm、長さ1mの帯状とした。
【0519】
ロール状電極を用いた電解鍍金
ロール状電極を用いて、潜像が形成された多孔質シートに連続的に電解鍍金した。図5に用いた電解鍍金装置の模式図を示す。潜像が形成された多孔質シートはリール41から引き出されて、電解鍍金槽43に導入される。電解鍍金槽43には電解鍍金液44が満たされている。多孔質シートは回転するロール状電極45に巻き付いて密着したまま電解鍍金液中に浸漬される。ロール状電極45と銅製の対極46には通電されており、ロール状電極45に密着した多孔質シートの鍍金液浸透性領域(本実施例の場合は露光部)に鍍金が析出して導電部が形成される。導電部が形成された多孔質シート47は検査用ロール48によって多孔質シートの裏表で導電部が貫通しているかどうかを検査する。検査用ロールは一対の表面が導電性ゴムで被覆されたロールからなる。二つのロールは多孔質シートを挟み込むように配置され、それぞれ多孔質シートの表面と裏面に接触する。二つのロール間の導電率を測定することによって、導電部が多孔質シートの表裏に貫通して形成されていることを確認する。検査後、水洗用槽49に導入され、残留した電解鍍金液が洗い落とされる。洗浄後、導電部が形成された多孔質シートはリール50に巻き取られる。
【0520】
ロール状電極45としては、直径2cm、長さ10cmのステンレス製の円柱を用いた。ロール状電極45の表面と対極46の表面との間の距離は1cmとした。電解鍍金液は実施例9と同様のものを用いた。多孔質シートを送る速度は検査用ロール48による検査結果を元に調整した。その結果、ライン幅50μm、スペース50μmのCu配線と、直径50μmのCuビアとが形成された配線シートや異方性導電シートとして用いることのできる複合部材を得た。
【0521】
評 価
Cu配線やCuビアの部分の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、多孔質シートの空孔はほぼ完全に銅によって充填されていた。
【0522】
(実施例12)
実施例12では本発明の複合部材形成用感光性化合物の一例として、陰イオン交換性基を発生する感光性基と架橋性基とを有する感光性ポリマーを用いた、本発明の第1あるいは第2の態様の複合部材の製造方法について説明する。
【0523】
感光性ポリマーおよび感光性組成物
それぞれ下記化学式(43)および(44)で示される感光性のポリマー6およびポリマー7を用いた。ポリマー6およびポリマー7はいずれもラジカル重合法により合成した。
【0524】
【化43】
Figure 0003675768
【化44】
Figure 0003675768
ポリマー6
重量平均分子量Mw=31000、a:b:c=2:5:1
ポリマー7
重量平均分子量Mw=22000、a:b:c:d=6:14:5:1
ポリマー7は5重量%のBTTBを添加して用いた。
【0525】
銅パターンの形成
感光性層を形成するポリマーとして、ポリマー6、あるいはポリマー7とBTTBの組成物を用いたほかは、実施例1と同様にしてCu配線パターンを形成したところ、いずれも問題なくCu配線パターンが形成された複合部材を形成することができた。
【0526】
またポリマー6、あるいはポリマー7とBTTBの組成物を用い、塩化白金酸水溶液に浸漬した後、水洗してから、アセトンによる超音波洗浄を2分間行った他は実施例1と同様にしてCu配線パターンを形成したところ、やはりいずれも問題なくCu配線パターンが形成された複合部材を形成することができた。
【0527】
ところが比較例として、ポリマー1を用い、塩化白金酸水溶液に浸漬した後、水洗してから、アセトンによる超音波洗浄を5分間行った他は実施例1と同様にしてCu配線パターンを形成したところ、配線の所々に感光性層の剥離に起因すると考えられるCu配線パターンの欠損が顕微鏡観察により確認できた。
【0528】
これより、架橋性基を有するポリマー6あるいはポリマー7は、ポリマー1と比較して溶剤(この場合はアセトン)に対する耐久性が向上していることがわかった。
【0529】
ポリマー6あるいはポリマー7は本発明の第3の態様の複合部材の製造方法にも用いることができる。
【0530】
(実施例13)
実施例13では本発明の複合部材形成用感光性化合物の一例として、陰イオン交換性基を消失する感光性基と架橋性基とを有する感光性ポリマーを用いた、本発明の第1の態様の複合部材の製造方法について説明する。
【0531】
感光性ポリマーおよび感光性組成物
それぞれ下記化学式(45)および(46)で示される感光性のポリマー8およびポリマー9を用いた。ポリマー8およびポリマー9はいずれもラジカル重合法により合成した。
【0532】
【化45】
Figure 0003675768
【化46】
Figure 0003675768
ポリマー8
重量平均分子量Mw=34000、m:n=7:3
ポリマー9
重量平均分子量Mw=21000、m:n:l=6:5:1
ポリマー9は5重量%のBTTBを添加して用いた。
【0533】
銅パターンの形成
感光性層を形成するポリマーとして、ポリマー8、あるいはポリマー9とBTTBの組成物を用いたほかは、実施例6と同様にしてCu配線パターンを形成したところ、いずれも問題なくCu配線パターンが形成された複合部材を形成することができた。
【0534】
またポリマー8、あるいはポリマー9とBTTBの組成物を用い、錯体1の水溶液に浸漬した後、水洗してから、アセトンによる超音波洗浄を2分間行った他は実施例6と同様にしてCu配線パターンを形成したところ、やはりいずれも問題なくCu配線パターンが形成された複合部材を形成することができた。
【0535】
ところが比較例として、ポリマー5を用い、錯体1の水溶液に浸漬した後、水洗してから、アセトンによる超音波洗浄を5分間行った他は実施例6と同様にしてCu配線パターンを形成したところ、配線の所々に感光性層の剥離に起因すると考えられるCu配線パターンの欠損が顕微鏡観察により確認できた。ちなみにポリマー5を用いた他は実施例6と同様にして作製したところ、こうしたCu配線パターンの欠損は認められなかった。
【0536】
これより、架橋性基を有するポリマー6あるいはポリマー7は、ポリマー5と比較して溶剤(この場合はアセトン)に対する耐久性が向上していることがわかった。
【0537】
ポリマー8あるいはポリマー9は本発明の第3の態様の複合部材の製造方法にも用いることができる。
【0538】
(実施例14)
実施例14では本発明の複合部材形成用感光性材料の一例として、陰イオン交換性基を生成する感光性基であるアジド誘導体基を有する感光性ポリマーと、架橋助剤として、アジド基が感光して生成するナイトレンと反応して架橋するフェノールノボラック樹脂を含有する感光性材料を用いた、本発明の第1あるいは第2の態様の複合部材の製造方法について説明する。
【0539】
感光性ポリマーおよび架橋助剤
下記化学式(47)で示される感光性のアジド基含有ポリマーを用いた。アジド基含有ポリマーは部分アセチル化ポリビニルアルコールから合成した。フェノールノボラック樹脂は分子量6500のものを用いた。
【0540】
【化47】
Figure 0003675768
【0541】
ポリマー
重量平均分子量Mwが、24000で、m:nの比が、6:4のものを用いた。
銅パターンの形成
感光性層を形成する際に、アジド基含有ポリマーとフェノールノボラック樹脂の重量比で9:1の混合溶液を塗布した他は、実施例1と同様にしてCu配線パターンを形成したところ、同様にCu配線パターンが形成された複合部材を形成することができた。
アジド基含有ポリマーあるいはこのポリマーとフェノールノボラック樹脂との混合物は、本発明の第3の態様の複合部材の製造方法にも用いることができる。
【0542】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の複合部材の製造方法の第1あるいは第2の態様によれば、感光性層が形成された基材を、露光して鍍金するだけの簡単なプロセスで、多層配線基板等として用いることのできる微細な配線等の導電パターンを製作することが可能である。この際、感光性層が鍍金液に溶解して剥離することがなく、充分な量の鍍金の触媒を吸着することが可能である。このため鍍金により形成された導電部の導電率を向上させることができる。更に鍍金の異常析出や導電部の腐食を防止することができる。このため導電率が良好で信頼性の高い配線基板などを提供することが可能である。
【0543】
また、本発明の複合部材の製造方法の第3の態様によれば、導電部の金属の充填率を充分に高くして、導電率を向上させることができる。
【0544】
本発明の複合部材形成用多孔質基材と複合部材形成用感光性化合物および複合部材形成用感光性組成物は、上記複合部材の製造方法に用いることができる。
【0545】
更に本発明の複合部材の製造方法はいずれも「リールtoリール」で連続的に各工程を行うこともできるため、製造時のスループットを高くすることができる等の利点もあり、その産業的価値は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1の(a)〜(e)は、本発明の第3の態様の複合部材の製造方法の製造過程を示す図である。各過程における基材の断面図を示す。
【図2】本発明の複合部材の製造方法の第3の態様において、ロール状の電極を用いて製造する製造装置の断面図である。
【図3】「リールtoリール」の連続工程で本発明の複合部材の製造方法の第1あるいは第2の態様を行う際の製造装置の一例。
【図4】「リールtoリール」の連続工程で本発明の複合部材の製造方法の第3の態様を行う際の製造装置の一例。
【図5】ロール状電極で本発明の複合部材の製造方法の第3の態様を連続的に行う際の製造装置の一例。
【符号の説明】
1 多孔質シート
2 電極
3 鍍金液浸透性領域
4 電解鍍金により析出してきた導電部
5 多孔質シートを貫通して形成された導電部
6 多孔質シート上面に突出して形成された導電部
7 ロール状電極
8 鍍金液浸透性領域が形成されたシート状多孔質体
9 鍍金液浸透性領域
10 電解鍍金液
11 電解鍍金液槽
12 析出してきた導電部
13 シート状多孔質体に貫通して形成された導電部
14 感光性層が形成された感光性の多孔質シートを供給するリール
15 露光装置
16 塩化白金酸水溶液などの溶液が入った鍍金核吸着槽
17 残存液を除去するためのエアーナイフ
18 水洗用槽
19 鍍金核を還元して金属化するための還元槽
20 水洗用槽
21 無電解鍍金槽
22 水洗用槽
23 乾燥器
24 導電部を形成した多孔質シートを収納するリール
25 両面を保護フィルムで保護された感光性の多孔質シートを供給するリール
26 両面を保護フィルムで保護された感光性の多孔質シート
27 保護フィルムを剥がし取るためのロール
28 剥がし取られた保護フィルム
29 剥がし取った保護フィルムを回収するためのリール
30 露光装置
31 露光されて潜像が形成された多孔質シート
32 ロール状電極
33 電解鍍金液
34 電解鍍金液槽
35 鍍金液を除去するためのエアーナイフ
36 導電部が形成された多孔質シート
37 水洗用槽
38 水洗水を除去するためのエアーナイフ
39 乾燥器
40 導電部が形成された多孔質シートを収納するリール
41 潜像が形成された多孔質シートを供給するリール
42 潜像が形成された多孔質シート
43 電解鍍金用槽
44 電解鍍金液
45 ロール状電極
46 対極
47 導電部が形成された多孔質シート
48 検査用ロール
49 水洗用槽
50 導電部を形成した多孔質シートを収納するリール

Claims (8)

  1. 基材の所定の部位に導電部を選択的に形成させる複合部材の製造方法において、前記導電部の形成を下記の感光性層形成工程、エネルギー線照射工程、吸着工程、鍍金工程を経て行うことを特徴とする複合部材の製造方法。
    感光性層形成工程:基材表面にエネルギー線を照射することにより、陰イオン交換性基が生成あるいは消失し、かつ後の吸着工程で、金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを含む溶液に対して膨潤性を示す感光性層を形成する工程、
    エネルギー線照射工程: 前記感光性層にエネルギー線照射し、照射部或いは未照射部に陰イオン交換性基が配置された、陰イオン交換性基のパターンを形成する工程、
    吸着工程:前記陰イオン交換性基のパターンに、金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを含む溶液を接触させ、前記金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを吸着せしめる工程、
    鍍金工程: 前記金属含有イオン、又は、金属含有化合物、又は、金属コロイドを吸着せしめた陰イオン交換性基のパターンに、無電解鍍金を施して導電パターンを形成する工程。
  2. 前記前記鍍金工程における無電解鍍金に用いられる無電解鍍金液が強アルカリ性であることを特徴とする請求項1記載の複合部材の製造方法。
  3. 基材の所定の部位に導電部を選択的に形成させる複合部材の製造方法において、前記導電部の形成を下記の感光性層形成工程、エネルギー線照射工程、吸着工程、鍍金工程を経て行うことを特徴とする複合部材の製造方法。
    感光性層形成工程: 基材表面にエネルギー線を照射することにより陰イオン交換性基が生成するアシルオキシム誘導体基含有化合物あるいはアジド誘導体基含有化合物を少なくとも有する感光性層を形成する工程、
    エネルギー線照射工程: 前記感光性層にエネルギー線照射し、照射部或いは未照射部に陰イオン交換性基が配置された、陰イオン交換性基のパターンを形成する工程、
    吸着工程: 前記陰イオン交換性基のパターンに金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを吸着せしめる工程、
    鍍金工程: 前記金属含有イオン、又は、金属含有化合物、又は、金属コロイドを吸着せしめた陰イオン交換性基のパターンに、無電解鍍金を施して導電パターンを形成する工程。
  4. 前記感光性層が、膨潤性を示すことを特徴とする請求項に記載の複合部材の製造方法。
  5. 空孔を有する多孔質体と、該空孔内の表面に形成されているエネルギー線の照射により陰イオン交換性基が生成或いは消失される感光性層とから構成されることを特徴とする複合部材形成用多孔質基材。
  6. 前記多孔質体がシート状であって、シートの片面或いは両面が少なくとも部分的に粘着性であることを特徴とする請求項に記載の複合部材形成用多孔質基材。
  7. 請求項1記載の複合部材の製造方法における感光性層形成用に用いられる複合部材形成用の感光性化合物であって、エネルギー線の照射工程によって陰イオン交換性基を発生或いは消失する感光性基と、架橋性基とを有し、前記吸着工程で、金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを含む溶液に対して膨潤性を示すことを特徴とする複合部材形成用感光性化合物。
  8. 請求項1記載の複合部材の製造方法における感光性層形成用に用いられる複合部材形成用の感光性組成物であって、エネルギー線の照射によって陰イオン交換性基を発生或いは消失する感光性基を有する化合物と、架橋性基を有する化合物とを有し、前記吸着工程で、金属含有イオン、または、金属含有化合物、または、金属コロイドを含む溶液に対して膨潤性を示すことを特徴とする複合部材形成用組成物。
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