JP3672721B2 - 3−塩素化−1,1,1−トリフルオロ−2−アリール−2−プロパノール類の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は医薬・農薬の中間体、機能性物質などの製造においてトリフルオロメチル基と芳香族環の導入試薬として有用な、塩素化メチル基とヒドロキシ基という活性な官能基を有する、3−クロロ、3,3−ジクロロおよび3,3,3−トリクロロ−1,1,1−トリフルオロ−2−アリール−2−プロパノール類の合成に関する。
【0002】
【従来技術】
3,3,3−トリクロロ−1,1,1−トリフルオロ−2−フェニル−2−プロパノールの製造法としては、トリフルオロアセトフェノンへの四塩化炭素による親核的トリクロロメチル化反応によるものが文献(CA.118:101725)に記載されている。
【0003】
一方、トリフルオロメチルケトン類への芳香族化合物の付加反応として、当モル量の塩化アルミニウムの存在下でトリフルオロメチルメチルケトンとベンゼンを反応させて2−クロロ−1,1,1−トリフルオロ−2−フェニル−プロパンが得られることがBull. Soc.Chim. Fr. (1986), (6), 933-6に報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般式(3)
【0005】
【化4】
【0006】
(式中、Rは、同一または異なるアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基を表し、nは1、2または3を表し、mは0または1〜5の整数を表す。)で表される3−塩素化−1,1,1−トリフルオロ−2−アリール−2−プロパノールを製造する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を加えたところ、一般式(1)で表される化合物を芳香族化合物とルイス酸の存在下で反応させると前記文献(Bull. Soc. Chim. Fr. (1986), (6), 933-6)での反応と同様にカルボニル炭素にアリール基の付加反応は起こるが、塩素の置換は起こらず、ヒドロキシ基を有する化合物が得られることを見いだし本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(1)
【0009】
【化5】
【0010】
(式中、nは1、2または3を表す。)で表される3−塩素化−1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノンと一般式(2)
【0011】
【化6】
【0012】
(式中、Rは、同一または異なるアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基を表し、mは0または1〜5の整数を表す。)で表される芳香族化合物を、−40〜100℃においてルイス酸存在下で反応させ、次いで得られた反応物をプロトン供与性化合物と接触させることからなる一般式(3)
【0013】
【化7】
【0014】
(式中、Rは、同一または異なるアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、ハロゲン、ニトロ基を表し、nは1、2または3を表し、mは0または1〜5の整数を表す。)で表される3−塩素化−1,1,1−トリフルオロ−2−アリール−2−プロパノールの製造方法である。
【0015】
本発明にかかる一般式(1)で表される化合物は、具体的には、3−クロロ−1,1,1−トリフルオロアセトン、3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロアセトン、3,3,3−トリクロロ−1,1,1−トリフルオロアセトンである。
【0016】
本発明にかかる一般式(2)で表される芳香族化合物は、具体的には例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのアルキルベンゼン類、クロロメチルベンゼン、ジクロロメチルベンゼン、トリクロロメチルベンゼンなどのハロアルキルベンゼン類、アニソール、エトキシベンゼン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、ニトロベンゼンなどが挙げられるがこれらに限られない。芳香族化合物は、一般式(1)で表される化合物1モルに対し、1〜10モル程度の量を使用し、1〜5モル程度が好ましい。この量が1モル未満または10モルを超えた範囲でも反応自体は正常に進行するが、生成物や未反応原料の回収が煩雑になるので避けるのが好ましい。
【0017】
また、本発明は本発明にかかる反応に不活性な溶媒を用いることができる。例えば、過剰量の一般式(1)で表される化合物、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、トランス−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジクロロエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類を挙げることができる。このような溶媒は、例えば、反応速度を調整したり、反応温度で固体の反応試剤または生成物を溶解したりするために用いられるが、必ずしも必要ではなく、その使用量もこれらの目的にあわせて任意に決めることができる。
【0018】
本発明にかかるルイス酸は、通常フリーデル・クラフツ反応で使用される触媒が使用できるが、例えば、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、四塩化スズ、四塩化チタン、五塩化アンチモン、三塩化鉄、二塩化テルル、四塩化テルル、三塩化ビスマスなどが挙げられる。これらのルイス酸の使用量は、一般式(1)で表される化合物1モルに対し0.01〜10モル程度であり、0.1〜2モル程度が好ましい。0.01モルより少ない場合には反応率が低下し、10モルを超えても反応は進行するが、多量に使用することによるメリットは得られない。
【0019】
本発明にかかる反応は、反応試剤の組み合わせにより異なるが−40〜100℃で行い、−30〜50℃が好ましく、冷却しながら行うことが多い。温度を高くすると異常反応が起こり生成物の収率を下げるので好ましくない。
【0020】
本発明に使用するプロトン供与性化合物としては、水、鉱酸、例えば、塩酸、硫酸等、有機酸、例えば、酢酸等、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、アミルアルコールなどを挙げることができる。
【0021】
本発明の方法は、反応領域に一般式(1)で表される3−塩素化−1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノンと芳香族化合物とルイス酸を存在させることで行われるが、どの様な順序でこれらを反応領域に導入してもよい。例えば、反応容器に芳香族化合物と塩化アルミニウムを入れ所定の温度としたところへ一般式(1)で表される化合物を添加し、そこへプロトン供与性化合物を注入することで行うことができる。反応終了後、反応液は水洗して蒸留精製し、高純度の一般式(3)で表される化合物を得ることができる。水洗の過程において必要に応じて、水に代えて塩基性水溶液、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリム、炭酸水素ナトリウムなどの水溶液を使用することもできる。本発明にかかる一般式(3)で表される化合物はアルカリ処理、具体的には例えば上記の塩基性溶液と接触させることでヒドロキシ基の酸素原子と塩素化メチル基の炭素原子との間で環化反応を生じさせエポキシ基とすることができる。
【0022】
以下に実施例をもって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限られない。
【0023】
【実施例】
〔実施例1〕
滴下ロートと温度計を備えたガラス反応器に塩化アルミニウム42.7g、ベンゼン100gを入れ10℃以下に冷却し、3−クロロ−1,1,1−トリフルオロアセトン80gをゆっくり滴下した。滴下終了後6時間撹拌を続けながら室温(約25℃)まで昇温した。反応器に水を加えて反応を停止し、取り出した内容物を水洗した。有機物を分取し、減圧下(84℃/6mmHg)で蒸留したところ、3−クロロ−1,1,1−トリフルオロ−2−フェニル−2−プロパノール73.6gが得られ、収率60%であった。
【0024】
得られた生成物の1H−NMRと13C−NMRを測定した。結果を示す。
1H−NMR(CDCl3溶媒、TMS)
3.31ppm 1H s OH
4.00ppm,4.12ppm 2H ABq J=12.2Hz CH2−CCl
7.45ppm 3H s Ph(フェニル、以下同じ)
7.61ppm 2H s Ph
13C−NMR(CDCl3溶媒)
47.55ppm s CH2−Cl
76.42ppm q J=28.1Hz C−OH
124.31ppm q J=284.6Hz CF3
126.2ppm,128.6ppm,129.3ppm,134.6ppm s Ph
〔実施例2〕
滴下ロートと温度計を備えたガラス反応器に塩化アルミニウム9.9g、ベンゼン39gを入れ10℃以下に冷却し、3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロアセトン90gをゆっくり滴下した。滴下終了後6時間撹拌を続けながら室温(約25℃)まで昇温した。反応器に水を加えて反応を停止し、取り出した内容物を水洗した。有機物を分取し、減圧下(105℃/11mmHg)で蒸留したところ、3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロ−2−フェニル−2−プロパノール82.5gが得られ、収率64%であった。
【0025】
得られた生成物の1H−NMRと13C−NMRを測定した。結果を示す。
1H−NMR(CDCl3溶媒、TMS)
3.67ppm 1H s OH
6.30ppm 1H s CH−CCl2
7.26ppm 3H m Ph
7.56ppm 2H m Ph
13C−NMR(CDCl3溶媒)
73.94ppm s CH−Cl2
80.31ppm q J=29.1Hz C−OH
123.81ppm q J=288.5Hz CF3
125.6ppm,128.3ppm,128.6ppm,129.5ppm,134.0ppm s Ph
〔実施例3〕
滴下ロートと温度計を備えたガラス反応器に塩化アルミニウム6.2g、塩化メチレン10mlを入れ−30℃以下に冷却し、ベンゼン9.1gと3,3,3−トリクロロ−1,1,1−トリフルオロアセトン10gの混合溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後撹拌を続けながら−20℃で6時間反応を続けた。反応液を氷水にそそぎ込み反応を停止し、内容物を水洗した。有機物を分取し、減圧下(76℃/0.3mmHg)で蒸留した。3,3,3−トリクロロ−1,1,1−トリフルオロ−2−フェニル−2−プロパノール9.1gが得られ、収率67%であった。
【0026】
【発明の効果】
本発明の方法によると、塩素化メチル基とヒドロキシ基という活性な官能基を有する、医農薬、機能性物質などで有用なトリフルオロメチル基の導入試薬を簡便な方法で製造することができる。
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