JP3670430B2 - 電動自転車用駆動装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方向クラッチを内蔵する電動自転車用駆動装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、電動機を補助動力源として用いる電動自転車（例えば特許第２５０６０４７号公報参照）においては、ブラシ付き直流電動機の回転と人力駆動系の回転とを合わせるために電動機の回転を減速機によって大きく減速させている。前記公報に示された電動自転車の前記減速機は、電動機の出力軸とともに太陽ローラが回転する構造の一段目の遊星ローラ式減速機と、この遊星ローラ式減速機の出力部材としての遊星ローラ支持用キャリアに連結したベベルギヤおよびリングギヤからなる２段目の減速機とから構成している。
【０００３】
また、この電動自転車においては、電動機を使用せずに人力のみによって走行するときに電動機が連れ回ってこれが抵抗になるのを阻止するために、電動機の動力伝達系の途中に一方向クラッチを介装している。この一方向クラッチは、前記動力伝達系における前記遊星ローラ支持用キャリアとベベルギヤとの間に配設している。すなわち、一方向クラッチを電動機の回転が減速されて伝達される部位に配設している。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、一方向クラッチを電動機の回転が減速されて伝達される部位に介装したのでは、この一方向クラッチには減速比分だけ増大した回転トルクが作用することから、一方向クラッチとしては容量が相対的に大きいものを使用しなければならない。すなわち、電動機の動力伝達系に大型の一方向クラッチを配設しなければならないので、この動力伝達系の構成が大きくなってしまうばかりか、重量も重くなってしまう。
【０００５】
本発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、容量が小さい一方向クラッチを介装しながら電動機の回転を減速して伝達できるようにし、電動自転車の動力伝達系の構成の簡素化および小型化を図ることを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電動自転車用駆動装置は、ペダルクランク軸を支持する駆動装置ハウジングと、この駆動装置ハウジングに設けられ電動機を内蔵する電動機ハウジング部と、前記駆動装置ハウジングに前記電動機ハウジング部とは隔壁を介して画成されるように設けられ、前記電動機の出力を減速する減速機を内蔵した減速機ハウジング部とを備え、前記電動機の出力軸の両端部をそれぞれ軸受によって前記電動機ハウジング部に回転自在に支持させ、この出力軸の一端部を、前記隔壁を貫通させ減速機ハウジング部内に臨ませるとともに前記減速機に連結し、この出力軸の外周部に、前記一対の出力軸支持用軸受どうしの間に位置付けた二つの回転子用軸受を介して電動機の回転子を回転自在に支持させ、前記回転子用軸受どうしの間であって出力軸と回転子との間に、前記回転子から前記出力軸側へのみ動力を伝達する一方向クラッチを介装したものである。
本発明によれば、動力伝達系の最も高速に回転する部位に一方向クラッチを配設することができる。このため、一方向クラッチに作用する回転トルクは電動機の動力伝達系の中で最も小さくなるから、容量が小さい一方向クラッチを使用することができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電動自転車用駆動装置の一実施の形態を図１によって詳細に説明する。
【００１０】
図１は本発明に係る電動自転車用駆動装置の断面図である。同図において、符号１はこの実施の形態による電動自転車用駆動装置を示す。この駆動装置１は、ペダルクランク軸２に加えられる人力と、本発明に係る電動機３の動力とを合わせた駆動力を後輪駆動用スプロケット４に伝達し、図示してない後輪を駆動する構造を採っている。なお、この駆動装置１は、ペダル（図示せず）を踏込む力を後述するトルクセンサによってペダルクランク軸２の回転トルクとして検出し、この踏力に応じて電動機３の出力を増減させるものである。
【００１１】
前記ペダルクランク軸２は、図示してないペダル付きクランクを両端に取付けることができるように形成し、軸線方向が車体（図示せず）の左右方向を指向するように駆動装置ハウジング５に回転自在に支持させている。この駆動装置ハウジング５は、図示してない電動自転車の車体フレームに固定する。前記ペダルクランク軸２の車体左側は軸受６を介して駆動装置ハウジング５に支持させ、車体右側は、ペダルクランク軸２が貫通する合力軸７と軸受８，９を介して駆動装置ハウジング５に支持させている。前記合力軸７は、前記軸受８を介してペダルクランク軸２を軸承する小径部７ａが駆動装置ハウジング５から側方へ突出し、先端部に前記後輪駆動用スプロケット４を固定している。なお、このスプロケット４は、図示してないチェーンを後輪側スプロケットとの間に巻掛ける。
【００１２】
また、このペダルクランク軸２は、軸線方向の中央より車体右側となる部位に、一方向クラッチ１０を介して前記合力軸７の大径部７ｂを連結している。前記一方向クラッチ１０は、ラチェット式のものを使用し、回転がペダルクランク軸２から合力軸７側へのみに伝達されるように形成している。
【００１３】
ペダルクランク軸２の回転トルクを検出するには、図中に符号１１で示す非接触磁歪式トルクセンサを用いている。このトルクセンサ１１は、ペダルクランク軸２における車体左側となる部分の外周面に刻設した螺旋状の傾斜溝１２，１２…と、この傾斜溝１２の周囲を覆うように設けた励磁コイル１３および検出コイル１４などから構成している。傾斜溝１２は、ペダルクランク軸２の周方向に多数並設し、ペダルクランク軸２の軸線方向の２箇所に形成している。また、これら２箇所の傾斜溝群の傾斜溝１２は、傾斜方向が前記軸線に対して対称になるように形成している。
【００１４】
ここで、前記トルクセンサ１１の動作について説明する。ペダルクランク軸２が捩られたときには、一方の傾斜溝群に引張応力が生じるとともに、他方の傾斜溝群に圧縮応力が生じる。この結果、逆磁歪効果により各傾斜溝群での透磁率がそれぞれ増加、減少する。この逆磁歪効果による透磁率変化を傾斜溝群毎の検出コイル１４，１４に誘導起電圧として発生させ、これを図示してないコントローラで直流変換、差動増幅することによりトルクに比例した電圧出力が得られる。このとき、引張応力が生じる傾斜溝群では引張応力による透磁率増加のため、コイル系からの検出出力電圧は増加し、他方の傾斜溝群では圧縮応力による透磁率減少のためコイル系からの検出出力電圧は減少する。
前記コントローラは、前記出力電圧の変化に応じて電動機３の給電電流を増減させる回路を採っている。なお、このコントローラは、車体の走行速度が法で定めた電動補助限界速度を越えたときには電動機の出力が０となるように構成している。
【００１５】
前記電動機３は、ブラシレス直流電動機であって、前記駆動装置ハウジング５と、これに結合させたカバー１５からなる電動機ハウジング部３ａの内部に軸線方向が車体の左右方向と一致するように組付けている。この電動機３の固定子１６は、鉄心１６ａとコイル１６ｂとからなる従来周知の構造を採り、電動機ハウジング部３ａ内であって駆動装置ハウジング５側に固定している。また、出力軸１７は、駆動装置ハウジング５とカバー１５に軸受１８，１９によって回転自在に支持させている。
【００１６】
この出力軸１７の外周部に回転子２０を軸受２１，２２を介して回転自在に支持させている。前記回転子２０は、円筒形の継鉄２３と、この継鉄２３の外周面に固着した永久磁石２４とからなり、前記出力軸１７と前記継鉄２３の間に一方向クラッチ２５を介装している。
【００１７】
前記出力軸１７は、車体右側の先端部に出力歯車２６を形成し、この出力歯車２６に噛合するはすば歯車式減速機２７を介して前記合力軸７に連結している。この減速機２７は、前記出力歯車２６に噛合する第１歯車２８と、この第１歯車２８を支持するとともに第１歯車２８と同じ回転数で回転する減速機軸２９と、この減速機軸２９に形成した第２歯車３０と、前記合力軸７の大径部７ｂに形成して前記第２歯車３０に噛合する第３歯車３１などから構成している。すなわち、この減速機２７は、前記出力軸１７の回転を２段に減速して合力軸７に伝達する構造を採っている。この減速機２７は、前記駆動装置ハウジング５に前記電動機ハウジング部３ａとは隔壁５ａを介して画成されるように設けられた減速機ハウジング部５ｂに内蔵されている。
【００１８】
前記永久磁石２４は、希土類磁石材料によって形成し、微小な隙間をおいて固定子１６の内面と対向させている。
前記継鉄２３と出力軸１７との間に介装した一方向クラッチ２５は、この実施の形態ではローラ式のものを使用し、この電動機３が正転するとき、すなわち固定子１６によって永久磁石２４および継鉄２３が車両の前進方向へ付勢されるときのみに動力が伝達されるように構成している。なお、この一方向クラッチ２５は、ローラ式の他にもラチェット式など様々な構造のものを採用することができるが、継鉄２３の厚みを確保できなくなるような大型のものは避ける。継鉄２３が薄いと、一方向クラッチ２５側への磁気漏洩が発生して電動機３の出力性能が低下するからである。
【００１９】
このように構成した電動機３は、ペダルを踏込む力に応じた電圧で固定子１６のコイル１６ｂが励磁されることによって、継鉄２３および永久磁石２４からなる回転子２０に回転トルクが生じる。この回転子２０の回転は、一方向クラッチ２５を介して出力軸１７に伝達され、この出力軸１７から減速機２７を介して合力軸７に伝達される。そして、踏力（ペダルクランク軸２の回転トルク）に電動機３の動力を加えてなる合力が合力軸７からスプロケット４および後輪駆動用チェーンを介して後輪に伝達される。なお、後輪と後輪側スプロケットとの間には、ペダルを踏むことなく惰性走行ができるように周知のフリーホイールを介装している。
【００２０】
車体の走行速度が法で定めた電動補助限界速度を越えて電動機３が停止されたとき、あるいは、電動機３に給電しない状態で走行する場合には、ペダルクランク軸２の回転トルクが合力軸７から減速機２７を介して電動機３の出力軸１７にも伝達される。しかし、このときには、電動機３内の一方向クラッチ２５が非連結状態になることから、ペダルクランク軸２を有する人力駆動系とともに継鉄２３および永久磁石２４が連れ回ることによって負荷が増えることはない。
【００２１】
したがって、この電動機３は、回転子２０の継鉄２３と出力軸１７との間に継鉄２３から出力軸１７側へのみ動力を伝達する一方向クラッチ２５を介装したため、電動機３の動力伝達系の最も高速に回転する部位に一方向クラッチ２５を配設することができる。このため、この一方向クラッチ２５は、減速された部位に介装する場合に較べて伝達する回転トルクが小さくてよく、容量の小さなもの、すなわち占有スペースが狭くかつ重量が相対的に軽いものを使用することができる。
【００２２】
また、この実施の形態で示した電動機３は、永久磁石２４を希土類磁石材料によって形成したブラシレス直流電動機（ブラシ付き直流電動機に較べ低速高トルク型にし易い交流同期電動機）であるから、この電動機３を備えた駆動装置１は、ブラシ付き直流電動機を使用するものに較べて減速比を低減させることができる。すなわち、この駆動装置１は、ブラシ付き直流電動機を使用する電動自転車用駆動装置に較べると、減速比が小さくてよい分、例えば従来電動機の出力を３段で減速して合力軸に導いていたものを本実施の形態のように２段減速とすることができ、動力伝達系の簡素化および小型化を図ることができるとともに、駆動効率の向上および歯車から生じる騒音の低減も図ることができる。
【００３４】
上述した実施の形態では、回転子をインナーロータ型としたが、固定子を内側に設けるとともに回転子を外側に設けるアウターロータ型や、扁平電動機に利用されるフラットロータ型のものにも適用することができる。
【００３５】
【発明の効果】
本発明に係る電動自転車用駆動装置は、ペダルクランク軸を支持する駆動装置ハウジングと、この駆動装置ハウジングに設けられ電動機を内蔵する電動機ハウジング部と、前記駆動装置ハウジングに前記電動機ハウジング部とは隔壁を介して画成されるように設けられ、前記電動機の出力を減速する減速機を内蔵した減速機ハウジング部とを備え、前記電動機の出力軸の両端部をそれぞれ軸受によって前記電動機ハウジング部に回転自在に支持させ、この出力軸の一端部を、前記隔壁を貫通させ減速機ハウジング部内に臨ませるとともに前記減速機に連結し、この出力軸の外周部に、前記一対の出力軸支持用軸受どうしの間に位置付けた二つの回転子用軸受を介して電動機の回転子を回転自在に支持させ、前記回転子用軸受どうしの間であって出力軸と回転子との間に、前記回転子から前記出力軸側へのみ動力を伝達する一方向クラッチを介装したため、動力伝達系の最も高速に回転する部位に一方向クラッチを配設することができる。
【００３６】
したがって、一方向クラッチに加えられる回転トルクは動力伝達系の中で最も小さくなるから、容量が小さい一方向クラッチを使用することができる。このため、一方向クラッチが占めるスペースを削減することができるとともに、重量が相対的に軽い一方向クラッチを使用することができるので、動力伝達系の構成の簡素化および小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明に係る電動自転車用駆動装置の断面図である。
【符号の説明】
２…ペダルクランク軸、３，４１…電動機、１６…固定子、１７…出力軸、２０…回転子、２３…継鉄、２４…永久磁石、２５…一方向クラッチ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方向クラッチを内蔵する電動自転車用駆動装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、電動機を補助動力源として用いる電動自転車（例えば特許第２５０６０４７号公報参照）においては、ブラシ付き直流電動機の回転と人力駆動系の回転とを合わせるために電動機の回転を減速機によって大きく減速させている。前記公報に示された電動自転車の前記減速機は、電動機の出力軸とともに太陽ローラが回転する構造の一段目の遊星ローラ式減速機と、この遊星ローラ式減速機の出力部材としての遊星ローラ支持用キャリアに連結したベベルギヤおよびリングギヤからなる２段目の減速機とから構成している。
【０００３】
また、この電動自転車においては、電動機を使用せずに人力のみによって走行するときに電動機が連れ回ってこれが抵抗になるのを阻止するために、電動機の動力伝達系の途中に一方向クラッチを介装している。この一方向クラッチは、前記動力伝達系における前記遊星ローラ支持用キャリアとベベルギヤとの間に配設している。すなわち、一方向クラッチを電動機の回転が減速されて伝達される部位に配設している。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、一方向クラッチを電動機の回転が減速されて伝達される部位に介装したのでは、この一方向クラッチには減速比分だけ増大した回転トルクが作用することから、一方向クラッチとしては容量が相対的に大きいものを使用しなければならない。すなわち、電動機の動力伝達系に大型の一方向クラッチを配設しなければならないので、この動力伝達系の構成が大きくなってしまうばかりか、重量も重くなってしまう。
【０００５】
本発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、容量が小さい一方向クラッチを介装しながら電動機の回転を減速して伝達できるようにし、電動自転車の動力伝達系の構成の簡素化および小型化を図ることを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電動自転車用駆動装置は、ペダルクランク軸を支持する駆動装置ハウジングと、この駆動装置ハウジングに設けられ電動機を内蔵する電動機ハウジング部と、前記駆動装置ハウジングに前記電動機ハウジング部とは隔壁を介して画成されるように設けられ、前記電動機の出力を減速する減速機を内蔵した減速機ハウジング部とを備え、前記電動機の出力軸の両端部をそれぞれ軸受によって前記電動機ハウジング部に回転自在に支持させ、この出力軸の一端部を、前記隔壁を貫通させ減速機ハウジング部内に臨ませるとともに前記減速機に連結し、この出力軸の外周部に、前記一対の出力軸支持用軸受どうしの間に位置付けた二つの回転子用軸受を介して電動機の回転子を回転自在に支持させ、前記回転子用軸受どうしの間であって出力軸と回転子との間に、前記回転子から前記出力軸側へのみ動力を伝達する一方向クラッチを介装したものである。
本発明によれば、動力伝達系の最も高速に回転する部位に一方向クラッチを配設することができる。このため、一方向クラッチに作用する回転トルクは電動機の動力伝達系の中で最も小さくなるから、容量が小さい一方向クラッチを使用することができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電動自転車用駆動装置の一実施の形態を図１によって詳細に説明する。
【００１０】
図１は本発明に係る電動自転車用駆動装置の断面図である。同図において、符号１はこの実施の形態による電動自転車用駆動装置を示す。この駆動装置１は、ペダルクランク軸２に加えられる人力と、本発明に係る電動機３の動力とを合わせた駆動力を後輪駆動用スプロケット４に伝達し、図示してない後輪を駆動する構造を採っている。なお、この駆動装置１は、ペダル（図示せず）を踏込む力を後述するトルクセンサによってペダルクランク軸２の回転トルクとして検出し、この踏力に応じて電動機３の出力を増減させるものである。
【００１１】
前記ペダルクランク軸２は、図示してないペダル付きクランクを両端に取付けることができるように形成し、軸線方向が車体（図示せず）の左右方向を指向するように駆動装置ハウジング５に回転自在に支持させている。この駆動装置ハウジング５は、図示してない電動自転車の車体フレームに固定する。前記ペダルクランク軸２の車体左側は軸受６を介して駆動装置ハウジング５に支持させ、車体右側は、ペダルクランク軸２が貫通する合力軸７と軸受８，９を介して駆動装置ハウジング５に支持させている。前記合力軸７は、前記軸受８を介してペダルクランク軸２を軸承する小径部７ａが駆動装置ハウジング５から側方へ突出し、先端部に前記後輪駆動用スプロケット４を固定している。なお、このスプロケット４は、図示してないチェーンを後輪側スプロケットとの間に巻掛ける。
【００１２】
また、このペダルクランク軸２は、軸線方向の中央より車体右側となる部位に、一方向クラッチ１０を介して前記合力軸７の大径部７ｂを連結している。前記一方向クラッチ１０は、ラチェット式のものを使用し、回転がペダルクランク軸２から合力軸７側へのみに伝達されるように形成している。
【００１３】
ペダルクランク軸２の回転トルクを検出するには、図中に符号１１で示す非接触磁歪式トルクセンサを用いている。このトルクセンサ１１は、ペダルクランク軸２における車体左側となる部分の外周面に刻設した螺旋状の傾斜溝１２，１２…と、この傾斜溝１２の周囲を覆うように設けた励磁コイル１３および検出コイル１４などから構成している。傾斜溝１２は、ペダルクランク軸２の周方向に多数並設し、ペダルクランク軸２の軸線方向の２箇所に形成している。また、これら２箇所の傾斜溝群の傾斜溝１２は、傾斜方向が前記軸線に対して対称になるように形成している。
【００１４】
ここで、前記トルクセンサ１１の動作について説明する。ペダルクランク軸２が捩られたときには、一方の傾斜溝群に引張応力が生じるとともに、他方の傾斜溝群に圧縮応力が生じる。この結果、逆磁歪効果により各傾斜溝群での透磁率がそれぞれ増加、減少する。この逆磁歪効果による透磁率変化を傾斜溝群毎の検出コイル１４，１４に誘導起電圧として発生させ、これを図示してないコントローラで直流変換、差動増幅することによりトルクに比例した電圧出力が得られる。このとき、引張応力が生じる傾斜溝群では引張応力による透磁率増加のため、コイル系からの検出出力電圧は増加し、他方の傾斜溝群では圧縮応力による透磁率減少のためコイル系からの検出出力電圧は減少する。
前記コントローラは、前記出力電圧の変化に応じて電動機３の給電電流を増減させる回路を採っている。なお、このコントローラは、車体の走行速度が法で定めた電動補助限界速度を越えたときには電動機の出力が０となるように構成している。
【００１５】
前記電動機３は、ブラシレス直流電動機であって、前記駆動装置ハウジング５と、これに結合させたカバー１５からなる電動機ハウジング部３ａの内部に軸線方向が車体の左右方向と一致するように組付けている。この電動機３の固定子１６は、鉄心１６ａとコイル１６ｂとからなる従来周知の構造を採り、電動機ハウジング部３ａ内であって駆動装置ハウジング５側に固定している。また、出力軸１７は、駆動装置ハウジング５とカバー１５に軸受１８，１９によって回転自在に支持させている。
【００１６】
この出力軸１７の外周部に回転子２０を軸受２１，２２を介して回転自在に支持させている。前記回転子２０は、円筒形の継鉄２３と、この継鉄２３の外周面に固着した永久磁石２４とからなり、前記出力軸１７と前記継鉄２３の間に一方向クラッチ２５を介装している。
【００１７】
前記出力軸１７は、車体右側の先端部に出力歯車２６を形成し、この出力歯車２６に噛合するはすば歯車式減速機２７を介して前記合力軸７に連結している。この減速機２７は、前記出力歯車２６に噛合する第１歯車２８と、この第１歯車２８を支持するとともに第１歯車２８と同じ回転数で回転する減速機軸２９と、この減速機軸２９に形成した第２歯車３０と、前記合力軸７の大径部７ｂに形成して前記第２歯車３０に噛合する第３歯車３１などから構成している。すなわち、この減速機２７は、前記出力軸１７の回転を２段に減速して合力軸７に伝達する構造を採っている。この減速機２７は、前記駆動装置ハウジング５に前記電動機ハウジング部３ａとは隔壁５ａを介して画成されるように設けられた減速機ハウジング部５ｂに内蔵されている。
【００１８】
前記永久磁石２４は、希土類磁石材料によって形成し、微小な隙間をおいて固定子１６の内面と対向させている。
前記継鉄２３と出力軸１７との間に介装した一方向クラッチ２５は、この実施の形態ではローラ式のものを使用し、この電動機３が正転するとき、すなわち固定子１６によって永久磁石２４および継鉄２３が車両の前進方向へ付勢されるときのみに動力が伝達されるように構成している。なお、この一方向クラッチ２５は、ローラ式の他にもラチェット式など様々な構造のものを採用することができるが、継鉄２３の厚みを確保できなくなるような大型のものは避ける。継鉄２３が薄いと、一方向クラッチ２５側への磁気漏洩が発生して電動機３の出力性能が低下するからである。
【００１９】
このように構成した電動機３は、ペダルを踏込む力に応じた電圧で固定子１６のコイル１６ｂが励磁されることによって、継鉄２３および永久磁石２４からなる回転子２０に回転トルクが生じる。この回転子２０の回転は、一方向クラッチ２５を介して出力軸１７に伝達され、この出力軸１７から減速機２７を介して合力軸７に伝達される。そして、踏力（ペダルクランク軸２の回転トルク）に電動機３の動力を加えてなる合力が合力軸７からスプロケット４および後輪駆動用チェーンを介して後輪に伝達される。なお、後輪と後輪側スプロケットとの間には、ペダルを踏むことなく惰性走行ができるように周知のフリーホイールを介装している。
【００２０】
車体の走行速度が法で定めた電動補助限界速度を越えて電動機３が停止されたとき、あるいは、電動機３に給電しない状態で走行する場合には、ペダルクランク軸２の回転トルクが合力軸７から減速機２７を介して電動機３の出力軸１７にも伝達される。しかし、このときには、電動機３内の一方向クラッチ２５が非連結状態になることから、ペダルクランク軸２を有する人力駆動系とともに継鉄２３および永久磁石２４が連れ回ることによって負荷が増えることはない。
【００２１】
したがって、この電動機３は、回転子２０の継鉄２３と出力軸１７との間に継鉄２３から出力軸１７側へのみ動力を伝達する一方向クラッチ２５を介装したため、電動機３の動力伝達系の最も高速に回転する部位に一方向クラッチ２５を配設することができる。このため、この一方向クラッチ２５は、減速された部位に介装する場合に較べて伝達する回転トルクが小さくてよく、容量の小さなもの、すなわち占有スペースが狭くかつ重量が相対的に軽いものを使用することができる。
【００２２】
また、この実施の形態で示した電動機３は、永久磁石２４を希土類磁石材料によって形成したブラシレス直流電動機（ブラシ付き直流電動機に較べ低速高トルク型にし易い交流同期電動機）であるから、この電動機３を備えた駆動装置１は、ブラシ付き直流電動機を使用するものに較べて減速比を低減させることができる。すなわち、この駆動装置１は、ブラシ付き直流電動機を使用する電動自転車用駆動装置に較べると、減速比が小さくてよい分、例えば従来電動機の出力を３段で減速して合力軸に導いていたものを本実施の形態のように２段減速とすることができ、動力伝達系の簡素化および小型化を図ることができるとともに、駆動効率の向上および歯車から生じる騒音の低減も図ることができる。
【００３４】
上述した実施の形態では、回転子をインナーロータ型としたが、固定子を内側に設けるとともに回転子を外側に設けるアウターロータ型や、扁平電動機に利用されるフラットロータ型のものにも適用することができる。
【００３５】
【発明の効果】
本発明に係る電動自転車用駆動装置は、ペダルクランク軸を支持する駆動装置ハウジングと、この駆動装置ハウジングに設けられ電動機を内蔵する電動機ハウジング部と、前記駆動装置ハウジングに前記電動機ハウジング部とは隔壁を介して画成されるように設けられ、前記電動機の出力を減速する減速機を内蔵した減速機ハウジング部とを備え、前記電動機の出力軸の両端部をそれぞれ軸受によって前記電動機ハウジング部に回転自在に支持させ、この出力軸の一端部を、前記隔壁を貫通させ減速機ハウジング部内に臨ませるとともに前記減速機に連結し、この出力軸の外周部に、前記一対の出力軸支持用軸受どうしの間に位置付けた二つの回転子用軸受を介して電動機の回転子を回転自在に支持させ、前記回転子用軸受どうしの間であって出力軸と回転子との間に、前記回転子から前記出力軸側へのみ動力を伝達する一方向クラッチを介装したため、動力伝達系の最も高速に回転する部位に一方向クラッチを配設することができる。
【００３６】
したがって、一方向クラッチに加えられる回転トルクは動力伝達系の中で最も小さくなるから、容量が小さい一方向クラッチを使用することができる。このため、一方向クラッチが占めるスペースを削減することができるとともに、重量が相対的に軽い一方向クラッチを使用することができるので、動力伝達系の構成の簡素化および小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明に係る電動自転車用駆動装置の断面図である。
【符号の説明】
２…ペダルクランク軸、３，４１…電動機、１６…固定子、１７…出力軸、２０…回転子、２３…継鉄、２４…永久磁石、２５…一方向クラッチ。
Claims (1)
- ペダルクランク軸を支持する駆動装置ハウジングと、この駆動装置ハウジングに設けられ電動機を内蔵する電動機ハウジング部と、前記駆動装置ハウジングに前記電動機ハウジング部とは隔壁を介して画成されるように設けられ、前記電動機の出力を減速する減速機を内蔵した減速機ハウジング部とを備え、前記電動機の出力軸の両端部をそれぞれ軸受によって前記電動機ハウジング部に回転自在に支持させ、この出力軸の一端部を、前記隔壁を貫通させ減速機ハウジング部内に臨ませるとともに前記減速機に連結し、この出力軸の外周部に、前記一対の出力軸支持用軸受どうしの間に位置付けた二つの回転子用軸受を介して電動機の回転子を回転自在に支持させ、前記回転子用軸受どうしの間であって出力軸と回転子との間に、前記回転子から前記出力軸側へのみ動力を伝達する一方向クラッチを介装したことを特徴とする電動自転車用駆動装置。
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