JP3670057B2 - 多段複動型シリンダ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ダムの水門開閉などに用いる多段複動型シリンダに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の多段複動型シリンダとしては、例えば、図4に示すものがあるが、これは、シリンダ本体51の両端をシリンダヘッド52およびシリンダボトム53で塞いで、その中に2つの油室を隔成する第一のピストン54を摺動自在に収容し、この第一のピストン54に一端が取り付けられた二重筒ロッド55を上記シリンダヘッド51の中心部に摺動自在に貫通支持させてある。
【0003】
また、図4において、56は、上記シリンダ51の伸び側に形成した縮みポート、57は、上記シリンダボトム53に形成した伸びポートで、上記二重筒ロッド55は、2つの筒を有し、これらの各筒どうしの隙間が、該二重筒ロッド55およびピストン取付部材54aに形成した油孔58a,58bを通じて上記縮みポート56に連通している。
【0004】
また、上記第一のピストン54は、中心孔59を有するピストン保持部材60の外周に嵌挿されており、これらの間にシール材などが介装されている。
【0005】
さらに、61は、上記二重筒ロッド55内に2つの油室を隔成するように摺動自在に設けられた第二のピストンであり、この第二のピストン61には二重筒ロッド55の伸び側開口端を塞ぐロッド蓋63を貫通するロッド62の内端が取り付けられている。
【0006】
また、64は、二重筒ロッド55の伸び側端付近に設けられ、上記隙間Gを介して上記油孔58a,58bに連通する油孔である。
【0007】
次に動作について説明するが、いま、最縮状態において伸びポート57からシリンダ本体51内に作動油を圧入すると、受圧面積の大きい第一のピストン54およびこれに一体のピストン保持部材60は、その油圧を受けて伸び方向にシリンダ本体61内を摺動する。
【0008】
そして、その第一のピストン54に一体に取り付けられて、上記二重筒ロッド55端を保持するピストン取付部材60がシリンダヘッド52の内端に当たる。
【0009】
なお、このピストン伸び動作中は、シリンダ本体51内の縮み側の油室内の作動油が縮みポート56を通じて排出される。
【0010】
また、引き続き上記伸びポート57より作動油を供給すると、第一のピストン54の中心孔59を通じて、受圧面積の小さい第二のピストン61がその油圧を受けて二重筒ロッド55内を伸び方向に摺動する。
【0011】
このため、この第二のピストン61に取り付けられた上記ロッド62は、ロッド蓋63に摺動支持されて、二重筒ロッド55の外へ伸び方向に伸長する。
【0012】
そして、このとき二重筒ロッド55の縮み側の油室内の作動油は、上記油孔64,隙間G,油孔58a,58bを通過して縮みポート56から外部へ排出され、2段構成のシリンダが最伸長状態に移行する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の多段複動型シリンダにあっては、ロッド62の伸長時において、二重筒ロッド55内に第二のピストン61により隔成された縮み側の油室内の作動油を上記隙間Gを用いて縮みポート56へ導出する構成となっているため、上記隙間Gの形成のために二重筒ロッド55の外径が必要以上に大きくなり、従って、シリンダ本体51の外径も必然的に大きくなり、伸縮段数の増加に応じて上記各外径寸法が過大になり、結果として設置空間の確保を困難にするとともに、重量が大きくなり、コストアップを招くという問題点があった。
【0014】
また、二重筒ロッド55内の上記縮み側の油室と縮み油路とを遮断するため、二重筒ロッド55の内周とピストン保持部材60との結合部にOリングとしてのシール材66が必要となるが、上記結合部が溶接されるため、そのシール材66が交換不能になるという問題点があった。
【0015】
この発明は、上記のような従来の問題点に着目してなされたものであり、外径寸法を必要最小限に抑えて、重量およびコストの低減を図るとともに、シール材などの交換が容易に行える多段複動型シリンダを得ることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する為、本発明の手段は、シリンダ本体内に一つまたは複数の筒状ロッドをそれぞれピストンを介して伸縮自在に挿入し、最内側の上記筒状ロッド内に他のピストンを介してラムを伸縮自在に挿入し、上記シリンダ本体と各筒状ロッド内にはそれぞれピストンを介してロッド側圧力室と反ロッド側圧力室を区画し、上記シリンダ本体のロッド側圧力室と反ロッド側圧力室とをそれぞれポンプまたはタンクに選択的に接続させ、上記シリンダ本体の反ロッド側圧力室と各筒状ロッドの反ロッド側圧力室とは上記各ピストンに形成した油圧供給孔を介して連通させ、上記各筒状ロッドのロッド側圧力室は通路を介してシリンダ本体のロッド側圧力室に接続され、各ロッド側圧力室と各反ロッド側圧力室に圧油を選択的に供給して各筒状ロッドとラムとを伸縮させる多段複動型シリンダにおいて、上記通路をシリンダ本体内のピストンと各筒状ロッド内の各ピストンにそれぞれ形成した通油孔と当該各ピストンにそれぞれ連結した各パイプ内の油路とで構成し、且つ各パイプをテレスコープ式に組み付けたことを特徴とする。
【0017】
この場合、シリンダ本体内のピストンと各筒状ロッド内の各ピストンにそれぞれロッド側圧力室に連通する通油孔を形成し、該各通油孔に上記パイプ内の油路を接続させているのが好ましい。
【0018】
同じく、 上記各パイプは基端部のガイドピストンと該ガイドピストンに結合された内側と外側の二重パイプで構成し、二重パイプ間に隙間からなる油路を形成しているのが好ましい。
【0019】
同じく、シリンダ本体に中空な固定パイプを軸方向に向けて連結し、この中空パイプ内に油室を形成し、シリンダ本体内のピストンと各筒状ロッド内の各ピストンにそれぞれ連結した各パイプを順次ガイドピストンを介して上記油室内でテレスコープ式に組付け且つ各パイプ内の油路をそれぞれ上記油室に開口させているのが好ましい。
【0020】
【作用】
本発明における多段複動型シリンダは、シリンダ本体内において、複数の筒状ロッドがピストンを介して伸縮自在に摺動するとともに、最内側の筒状ロッド内ではピストンを介してラムを伸縮自在に摺動させ、各ピストンにより区画された上記シリンダ本体のロッド側圧力室と反ロッド側圧力室の一方にはポンプから油圧を供給し、他方からは圧油をタンクへ戻させるようにしている。
【0021】
また、ピストンに形成した油圧供給孔を通じてシリンダ本体の反ロッド側圧力室と各筒状ロッドの反ロッド側圧力室へ伸側用の油圧供給を可能にし、各筒状ロッドのロッド側圧力室の油圧はピストンに結合したパイプ内油路を通路として、上記シリンダ本体のロッド側圧力室に供給可能としている。
【0022】
従って、例えば、ポンプからシリンダ本体の反ロッド側圧力室へ油圧を供給すると、各筒状ロッドおよびラムを順次伸長可能にし、このときシリンダ本体および筒状ロッドのロッド側各圧力室の圧油をシリンダ本体のロッド側圧力室からタンクへ排出する。
【0023】
【実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図について説明するが、図1は、この発明の実施の形態を示す縦断面図であり、図において、1はシリンダ本体、2はシリンダ本体1の一端を塞ぐシリンダヘッド、3はシリンダ本体1の他端を塞ぐシリンダボトムである。この場合、シリンダヘッド2はシリンダ本体1の取付部材を兼ねている。
【0024】
また、ポート1aがシリンダ本体1のシリンダヘッド2付近に設けられて外部のポンプ又はタンクに選択的に接続され、同じくポート3aが上記シリンダボトム3に設けられてシリンダ本体1の内外に貫通すると共にポンプ又はタンクに選択的に接続されるようになっている。
【0025】
ここで、シリンダヘッド2およびシリンダボトム3は、それぞれボルト12,13によりシリンダ本体1に固着されている。
【0026】
さらに、第一のピストン6が上記シリンダ本体1内を摺動すると共に反ロッド側圧力室Aとロッド側圧力室Bを区画し、この第一のピストン6には上記シリンダヘッド2の中心を摺動自在に貫通するように支持された第一の筒状ロッド4の一端が固定されている。
【0027】
そして、上記シリンダボトム3の中心部にはこれを貫通するように図中で右端となる一端が閉塞された固定パイプ3bの他端が固定され、この固定パイプ3b内には第一のガイドピストン6cを介して第一の二重パイプ6dが移動自在に挿入され、この二重パイプ6dはピストン6に嵌挿されたピストン取付部材6a,6bに一端が取り付けられている。
【0028】
この第一の二重パイプ6dは、各パイプ間に油路たる第一の二重パイプ隙間G1を有し、この隙間G1はヘッド側圧力室Bを固定パイプ3b内の油室25に連通させている。即ち、隙間G1は上記第一のピストン6に形成した通油孔21および切欠22、同じく第一のピストン6に形成されて、上記シリンダ本体1内および通油孔21に通じる第一の通油孔23、第一の二重パイプ6dの図中で右端部となる一端部において油室25に臨む第一の通孔24に連通している。
【0029】
また、上記第一の筒状ロッド4の他端は、第一のロッドガイド5によって塞がれており、その第一の筒状ロッド4内には反ロッド側圧力室Cおよびロッド側圧力室Dを区画する第二のピストン9が摺動自在に挿入されている。
【0030】
ここで、上記第一のロッドガイド5は、ボルト14によって第一の筒状ロッド4端に固定されている。そして、この第二のピストン9には第二の筒状ロッド7の一端が取り付けられており、これが上記第一のロッドガイド5の中心を貫通するように摺動自在に支持されている。
【0031】
また、上記第二のピストン9にはピストン取付部材9a,9bが取り付けられ、これらに先端に第二のガイドピストン9cを有する第二の二重パイプ9dの基端部が固定されている。
【0032】
なお、この第二のガイドピストン9cは、上記第一の二重パイプ6dの内周面に摺動自在に支持されている。
【0033】
上記第二の二重パイプ9dは、各パイプ間に油路たる第二の二重パイプ隙間G2を有し、この隙間G2はロッド側圧力室Dを油室25に連通させている。即ち、隙間G2は上記ピストン取付部材9aに形成した通油孔26および切欠27、第二のピストン9に形成されて、上記第一の筒状ロッド4内および通油孔26に通じる第二の通油孔28、第二の二重筒パイプ9dの一端部(図中、右端部)において油室25に臨む第二の通孔29に連通している。
【0034】
また、上記第二の筒状ロッド7の他端は、第二のロッドガイド8によって塞がれており、上記第二の筒状ロッド7内には反ロッド側圧力室Eおよびロッド側圧力室Fを区画する第三のピストン17が摺動自在に設けられている。
【0035】
この第三のピストン17にはヘッド側方向に一体に連設されたラム10が上記第二のロッドガイド8の中心部を貫通して外方へ突出されており、これの外端にはブラッケット11がねじ込み固定されている。
【0036】
ここで、上記第二のロッドガイド8は、ボルト15により第二の筒状ロッド7端に固着されている。
【0037】
さらに、上記第三のピストン17にはヘッド側圧力室Fと油室25とを連通する油路たる中心孔29と、この中心孔29および第二の筒状ロッド7内に連通する第三の通油路30を有する。
【0038】
上記第三のピストン17には、押え部材31によってパイプ32の基端部が固定されており、このパイプ32は、第二の筒状ロッド9d内に延設されている。
【0039】
また、このパイプ32の基端部に形成された第三のガイドピストン33がその第二の筒状ロッド9d内に摺動自在に支持されている。
【0040】
そして、上記パイプ32は、上記中心孔29,第三の通油孔30および上記油室25に連通している。
【0041】
次に、動作について説明すると、図1に示すように、この多段複動型シリンダが最縮状態にある場合において、ポート3aから作動油がシリンダ本体1内の反ロッド側圧力室Aに導入されると、その油圧を受けて第一のピストン6がそのシリンダ本体1内を伸び方向に摺動する。
【0042】
このため、第一の筒状ロッド4は、同方向にシリンダヘッド2に案内されながら伸長し、このとき、第一のピストン6により押された戻り油、即ち、作動油はポート1aからシリンダ本体1外へ排出される。
【0043】
こうして、上記第一のピストン6が上記シリンダヘッド2に当たると、こんどは第一のピストン6内の油圧供給孔35を通過する作動油が圧力室Cに供給されて第二のピストン9の受圧面に作用する。
【0044】
このため、この第二のピストン9は伸び方向に移動し、第二の筒状ロッド7も同方向に伸長していき、このとき、第二のピストン9により押された第一の筒状ロッド4内の圧力室Dの作動油が上記第二の通油孔28―切欠27―通油孔26―隙間G2―第二の通孔29―油室25―第一の通孔24―隙間G1―通油孔21―切欠22―第一の通油孔23―ポート1aを通ってシリンダ本体1外へ排出される。
【0045】
そして、上記第二のピストン9が第一のロッドガイド5に当たると、続いて、第二のピストン9内の油圧供給孔36を通じて作動油が圧力室Eに供給され第三のピストン17の受圧面に作用する。
【0046】
これにより、第三のピストン17は、伸び方向に移動し、ラム10が同方向に伸長していき、このとき、図3に示すように、第三のピストン17により押された第二の筒状ロッド7内の作動油が、上記第三の通油孔30―通孔29―パイプ32内―油室25―第一の通孔24―隙間G1―通油孔21―切欠22―第一の通油孔23―ポート1aを通ってシリンダ本体1外へ排出される。
【0047】
このようにして、第三のピストン17は、第二のロッドガイド8に当たり、この多段複動型シリンダは最伸長状態になる。
【0048】
一方、この多段複動型シリンダの縮み作動は、上記伸び作動とは逆にポート1aよりシリンダ本体1内に作動油が供給されて、各第一の筒状ロッド4,第二の筒状ロッド7およびラム10を上記とは逆方向に作動させて縮小し、このとき生じる戻り油が上記伸びポート3aからシリンダ本体1の外へ排出されることとなる。
【0049】
なお、この発明では部品組付け部分に溶接箇所がないため、上記ボルト12〜15の解除により、内部部品の修理,交換が容易となっている。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、各請求項の発明によれば、各筒状ロッド内のロッド側圧力室とシリンダ本体内のロッド側圧力室とを接続する通路を各ピストン内の通油孔と各ピストンにそれぞれ連結したパイプ内油路で構成し且つ各パイプをテレスコープ式に組み付けたので、シリンダ本体と筒状ロッドが多段に組み込まれても、これらの部材には通路を形成する必要が無く、したがってその分外径寸法も大きくする必要が無い。この為、従来のように組付け段数の応じてシリンダ本体と筒状ロッド寸法が過大になり、結果として、設置空間の確保を困難にしたり、重量が嵩張り、コストアップを招くという不具合の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例による多段複動型シリンダを示す縦断面図である。
【図2】 図1における多段複動型シリンダの要部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】 図1における多段複動型シリンダの最伸長作動状態を示す縦断面図である。
【図4】 従来の複動型シリンダを示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダ本体
1a ポート
2 シリンダヘッド
3 シリンダボトム
3a ポート
3b 固定パイプ
4 第一の筒状ロッド
5 第一のロッドガイド
6 第一のピストン
6c 第一のガイドピストン
6d 第一の二重パイプ
G1 第一の二重パイプ隙間
G2 第二の二重パイプ隙間
7 第二の筒状ロッド
8 第二のロッドガイド
9 第二のピストン
9c 第二のガイドピストン
9d 第二の二重パイプ
10 ラム
17 第三のピストン
23 第一の通油孔
28 第二の通油孔
30 第三の通油孔
32 パイプ
33 第三のガイドピストン
35,36 油圧供給孔
Claims (4)
- シリンダ本体内に一つまたは複数の筒状ロッドをそれぞれピストンを介して伸縮自在に挿入し、最内側の上記筒状ロッド内に他のピストンを介してラムを伸縮自在に挿入し、上記シリンダ本体と各筒状ロッド内にはそれぞれピストンを介してロッド側圧力室と反ロッド側圧力室を区画し、上記シリンダ本体のロッド側圧力室と反ロッド側圧力室とをそれぞれポンプまたはタンクに選択的に接続させ、上記シリンダ本体の反ロッド側圧力室と各筒状ロッドの反ロッド側圧力室とは上記各ピストンに形成した油圧供給孔を介して連通させ、上記各筒状ロッドのロッド側圧力室は通路を介してシリンダ本体のロッド側圧力室に接続され、各ロッド側圧力室と各反ロッド側圧力室に圧油を選択的に供給して各筒状ロッドとラムとを伸縮させる多段複動型シリンダにおいて、上記通路をシリンダ本体内のピストンと各筒状ロッド内の各ピストンにそれぞれ形成した通油孔と当該各ピストンにそれぞれ連結した各パイプ内の油路とで構成し、且つ各パイプをテレスコープ式に組み付けたことを特徴とする多段複動型シリンダ。
- シリンダ本体内のピストンと各筒状ロッド内の各ピストンにそれぞれロッド側圧力室に連通する通油孔を形成し、該各通油孔に上記パイプ内の油路を接続させている請求項1に記載の多段複動型シリンダ。
- 上記各パイプは基端部のガイドピストンと該ガイドピストンに結合された内側と外側の二重パイプで構成し、二重パイプ間に隙間からなる油路を形成している請求項1又は2に記載の多段複動型シリンダ。
- シリンダ本体に中空な固定パイプを軸方向に向けて連結し、この中空パイプ内に油室を形成し、シリンダ本体内のピストンと各筒状ロッド内の各ピストンにそれぞれ連結した各パイプを順次ガイドピストンを介して上記油室内でテレスコープ式に組付け且つ各パイプ内の油路をそれぞれ上記油室に開口させている請求項3に記載の多段複動型シリンダ
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