JP3662449B2 - 半導体単結晶におけるエッチピット密度の測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶欠陥を評価する技術として利用される半導体単結晶におけるエッチピット密度(EPD)の測定方法に係り、特に、画像処理技術を利用しかつ半導体単結晶における結晶面の平坦度に左右されることなくエッチピット密度を正確に求めることができるエッチピット密度の測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
化合物半導体であるGaPやGaAs単結晶等の半導体単結晶基板は電子デバイスとして広く用いられている。これ等半導体単結晶基板をデバイスに使用するには欠陥の少ない良質な単結晶であることが必要である。これは、例えば引上法等で成長させたGaP単結晶インゴットから得られたGaPウェハを基板としエピタキシャル成長法等で結晶成長させる場合、基板上の欠陥がエピタキシャル成長層へ伝播して悪影響を及ぼすからである。
【0003】
この結晶欠陥を評価する技術としてエッチピット密度(EPD)の測定がある。すなわち、欠陥が存在する部分は欠陥のない部分より原子間の結合力が弱い。このため、半導体単結晶の結晶面を薬液で処理すると、欠陥部分はそれのない部分より速く溶解されて穴(ピット)状になる。この穴をエッチピット、このとき用いる薬液をエッチャント、この操作をエッチングという。また、エッチング時間が長いとエッチピットは大きくなる。そして、このエッチピット密度(EPD)の測定により結晶の欠陥密度を評価することができる。
【0004】
ところで、EPDの測定は、上記エッチピットが認識できるように結晶面を顕微鏡等により拡大し、この拡大画像中に存在するエッチピットを単位面積(通常は平方センチメートル)当たりの個数に換算することにより行われている。
【0005】
そして、エッチピットを数える基本的な手段として、人間が拡大画像を見てエッチピットを認識しその個数を数えるという目視による方法が知られている。
【0006】
しかし、化合物半導体の場合、顕微鏡により拡大された結晶面をCRTモニターに表示しかつその映像に一辺が200μm〜500μm程度の線を引いてその矩形状内のエッチピットを数えると、数えるべきエッチピット数が100個を超えることも少なくない。また、目視による方法は、CRTモニターを見ながらの作業となるため作業者の目への負担が大きい問題があった。
【0007】
そこで、目視による従来法に代わって以下に述べるようなコンピュータシステムによる画像処理技術を利用した測定法の開発が進められている。但し、目視による方法は、作業者がエッチピット一つ一つについてその形状や色合い等を判断しながら測定する方法のため信頼性が高い。従って、画像処理技術を利用した測定法の開発に際しては、目視による方法と同程度の測定精度が得られるか否かが問題となる。
【0008】
以下、画像処理技術を利用した従来におけるエッチピットの測定法について説明する。
【0009】
まず、反射型顕微鏡を利用して上記結晶面の拡大画像を得る場合、暗視野と明視野の2つの照明方式がある。明視野照明の場合、照明光が測定面に対し垂直に落射するのでエッチピットが暗く見え、エッチピットでない部分は明るく見える。他方、暗視野の場合、レンズ周辺から照射された照明光が測定面に対しやや斜めに落射するので、照明光が上記レンズに丁度反射するような傾きを持った面が明るく見える。すなわち、エッチピットの一部分が明るく見え、エッチピットのない部分が暗く見える。
【0010】
また、エッチピットの形状は単結晶の種類や特に面方位によって特徴のある形をとる。例えば、GaP単結晶(111)エッチング面の暗視野照明による反射型顕微鏡のモノクロ拡大画像は図1のようになる。図1では暗い部分程黒くなっている。よって、エッチピット部分は白く見える。
【0011】
そして、画像処理技術を利用した従来法におけるエッチピットの測定は、以下のようにしてなされる。すなわち、白黒画像の各画素について濃度階調を基に白い部分と黒い部分に分類する基準濃度(閾値)をまず設定し、図1のモノクロ拡大画像を構成する画素群から上記閾値よりも白い部分の画素を抽出すると、図1のモノクロ拡大画像は図2の画像に変換される。この図2は、図1のモノクロ拡大画像からエッチピット部分を抽出したものとなっている。この方法を二値化といい、図2のような二値化された画像を二値化画像という。そして、二値化画像中に含まれる独立図形の数を機械計測あるいは目視により数えてエッチピット数とし、このエッチピット数からエッチピット密度(EPD)を求めている。尚、明視野画像を二値化する場合には、暗視野とは逆に閾値よりも黒い部分の画素を抽出して二値化する。
【0012】
また、上記閾値(基準濃度)は、エッチピットを除く全ての部分が取り出されないように設定する。そして、暗視野の場合、黒い部分の画素を取り除き過ぎるとエッチピットである部分(白い部分の画素)が検出できない。また、白い部分の画素を抽出し過ぎるとエッチピットでない部分(黒い部分の画素)までもが検出されてしまう。よって、この間で上記閾値を設定する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この画像処理技術を利用した従来の測定法は、エッチング処理された結晶面の平坦度が良い場合にはエッチピット密度を正確に測定することが可能であるが、上記結晶面の平坦度が悪い場合には図3に示すように結晶面の凹凸が拡大画像の濃淡として出てしまい、エッチピットをほとんど全て検出するように閾値を設定しただけでは図4に示すようにその凹凸までもが検出されエッチピット密度を正確に測定できなくなる問題点を有していた。
【0014】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、画像処理技術を利用しかつ半導体単結晶における結晶面の平坦度に左右されることなくエッチピット密度を正確に求めることができるエッチピット密度の測定方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者は半導体単結晶のエッチング面(エッチピットを生じさせる目的でエッチングした単結晶面をいう)について拡大フルカラー画像を求めかつこのフルカラー画像について検討を行った。
【0016】
すなわち、エッチング面の凹凸部分の勾配はなだらかであるのに対しエッチピット部分の勾配は急峻であるため、上記フルカラー画像を観察するとエッチング面の凹凸部分とエッチピット部分の色調は異なっている。尚、目視でエッチピットを数える方法においてはこの色調の違いを認識しながら行われている。
【0017】
従って、色調の違いでフルカラー画像を分離さえできればエッチング面の凹凸部分とエッチピット部分を分離できるのではないかと考えた。
【0018】
色調分離の一つとしてRGB(赤、緑、青)分離がある。このRGB分離の方法は、コンピュータの基本処理方法であり、フルカラー画像を赤、緑、青の濃淡画像(色分解画像)に分解する方法である。但し、上述の画像処理技術を利用した従来の測定法では、エッチング面のモノクロ(白黒)またはカラー画像そのものの二値化しか実施されておらずRGB分離の方法は適用されていなかった。
【0019】
そこで、上記エッチング面の拡大フルカラー画像についてこれをRGB分解したところ、驚くべきことに、得られた色分解画像にはエッチング面の上記凹凸部分が見える画像とこの凹凸部分を含まない画像があることが発見された。
【0020】
従って、赤、緑、青の各色分解画像を二値化した場合、エッチング面の上記凹凸部分が見える色分解画像からはエッチング面の凹凸部分とエッチピット部分がやはり抽出されるが、上記凹凸部分が見えない色分解画像からはエッチピット部分のみが抽出されることになる。よって、赤、緑、青の各色分解画像を二値化し、かつ、二値化された各画像中に含まれる独立図形の数を数えた場合、その最小値(上記凹凸部分が含まれない分、独立図形の数は小さくなるため)がエッチピット数となることが判明した。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されたものである。
【0021】
すなわち、請求項1に係る発明は、
半導体単結晶の結晶面をエッチング処理してエッチピットを形成しかつ上記結晶面の拡大画像からエッチピツト密度を測定する半導体単結晶におけるエッチピット密度の測定方法を前提とし、
エッチング処理された結晶面の拡大フルカラー画像を得る工程と、
得られたフルカラー画像を色分解して赤、緑、青の色分解画像を得る工程と、
赤、緑、青の各色分解画像を構成する各画素群から閾値となる基準濃度より高若しくは低い濃度を有する画素を抽出して各色分解画像を二値化画像にそれぞれ変換する工程と、
変換された各二値化画像中に含まれる独立図形をそれぞれ数える工程と、
各二値化画像中における独立図形数の内その最小値をエッチピット数としこのエッチピット数からエッチピツト密度を求める工程、
の各工程を有することを特徴とするものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
まず、測定対象となる半導体としては、SiやGe等の単体、および、結晶欠陥の多いGaAs、GaPやInP等の化合物半導体が例示される。特に、エッチング面の平坦度が悪い半導体単結晶の場合、上述した画像処理を行う際の閾値の設定が難しくなるので本発明は有用である。尚、エッチング面とは、上述したようにエッチピットを生じさせる目的でエッチング処理した単結晶面を意味し、エッチピットが生じればよいのでエッチャントの種類は任意である。また、本発明の測定方法により評価される半導体単結晶の用途は任意であるが、電子デバイスに使用される場合、上記エッチング面は、主に(100)や(111)等の低方位面付近である。
【0024】
次に、エッチング処理された結晶面(エッチング面)の拡大フルカラー画像とは、反射型顕微鏡や微分干渉顕微鏡等の手法によりエッチピットが認識できる大きさにエッチング面を拡大したフルカラー画像を意味する。また、赤、緑、青の色分解画像を変換して二値化画像にする場合、上記色分解画像としては、赤、緑、青色をそれぞれ呈する濃淡画像でもよいし、あるいは、赤、緑、青の色分解画像をそれぞれモノクロ(白黒)に変換した濃淡画像であってもよい。また、二値化画像中に含まれる独立図形を数える手段については、従来技術と同様、機械計測あるいは目視により数えてもよい。
【0025】
尚、本発明は画像処理技術を利用しているが、この画像処理とは、ビデオカメラ等撮像手段を介して上記フルカラー画像を画像データとしてコンピュータに取り込みかつこの画像データを二値化する等の演算処理を行う一連の処理を意味している。
【0026】
次に、本発明の測定方法を一般的なシステムで使用した場合について説明する。
【0027】
まず、顕微鏡にビデオカメラを取付け、かつ、ビデオカメラで撮影した画像が取り込めるようにビデオカメラの出力側をコンピュータに接続する。次に、測定するウェハを上記顕微鏡にセットし、測定点を顕微鏡の視野内に入れると共に焦点を合わせる。次に、ウェハ測定面の拡大画像がコンピュータのモニター上に表示されるので、この拡大画像をフルカラーでコンピュータに取り込む。
【0028】
そして、上記拡大画像を画像処理ソフトやイメージプロセッサ等でRGB分解し、各色分解画像を二値化した後、各二値化画像中に含まれる独立図形をそれぞれ数え、その最小値をエッチピット数としEPD濃度に換算して終了する。
【0029】
【実施例】
以下、表面の平坦度が悪いウェハについて本発明の測定方法によりEPD測定した実施例について具体的に説明する。
【0030】
まず、LEC法で引き上げたGaP単結晶インゴットから得られたウェハについて、その(111)面を加熱した王水で10分程度エッチングした後、HFを400ml、HNO3を600ml、H2Oを800ml、AgNO3を1gの割合で混合して得られたエッチャントを60〜70℃に加熱した状態で上記ウェハの(111)面を更に6〜7分間エッチング処理した。
【0031】
次に、このエッチング面を反射型顕微鏡の暗視野照明下で照明光量と焦点を合わせて拡大し、この拡大画像を工業用カメラを介してフルカラーでコンピュータに取り込んだ。この拡大フルカラー画像をモノクロ(白黒)に変換した画像が図3であり、その面積は0.24mm2である。また、上記拡大フルカラー画像をRGB分解しかつモノクロ(白黒)変換した色分解画像が図5(R部分)、図6(G部分)および図7(B部分)である。また、3枚の色分解画像からエッチピットを検出できるように閾値を設定し、二値化画像に変換したものが図8(R部分)、図9(G部分)および図10(B部分)である。
【0032】
そして、図8(R部分)、図9(G部分)および図10(B部分)に示された各二値化画像中に含まれる独立図形をそれぞれ数え、図形数の最小値をエッチピット数とした。これ等結果を以下の表1に示す。
【0033】
また、上記拡大フルカラー画像をモノクロ(白黒)変換した図3の画像についてRGB分解せずに二値化した画像(比較例)を図4に示す。
【0034】
そして、図4に示す二値化画像中に含まれる独立図形の数(エッチピット数)は以下の表1に示すように495と目視例に記載されたエッチピット数(196)より大きな数値になっている。これはエッチング面の凹凸部分まで検出されているためである。
【0035】
他方、図8(R部分)の二値化画像中に含まれる独立図形の数(エッチピット数)は以下の表1に示すように706と比較例より大きな値となっている。これはエッチング面の凹凸部分が強調されているためである。また、図9(G部分)の二値化画像中に含まれる独立図形の数(エッチピット数)は以下の表1に示すように344と目視例に記載されたエッチピット数(196)より大きいが比較例よりは小さくなっている。これはエッチング面の凹凸部分がわずかに含まれているためである。図10(B部分)の二値化画像中に含まれる独立図形の数(エッチピット数)は以下の表1に示すように185と目視例に記載されたエッチピット数(196)に極めて近似した値となっている。
【0036】
すなわち、図8、図9および図10に示された各二値化画像中に含まれる独立図形をそれぞれ数え、図形数の最小値をエッチピット数とすることにより目視による方法と同程度の精度でエッチピット数を求められることが確認できる。
【0037】
尚、図5、図6および図7の各色分解画像から二値化画像を得る場合の各閾値は共に同一に設定され、また、拡大フルカラー画像をモノクロ(白黒)変換した図3の画像から二値化画像を得る場合の閾値も各色分解画像から二値化画像を得る場合の上記閾値と同一に設定されている。但し、本発明において各色分解画像から二値化画像を得る場合の各閾値については必ずしも同一に設定することを要しない。
【0038】
また、エッチピットの個数を1cm2当たりに換算する(すなわちエッチピット密度を求める)には、上記個数を0.24×10-2で割ればよい。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】
請求項1記載の発明に係るエッチピット密度の測定方法によれば、
エッチング処理された結晶面の拡大フルカラー画像を得る工程と、
得られたフルカラー画像を色分解して赤、緑、青の色分解画像を得る工程と、赤、緑、青の各色分解画像を構成する各画素群から閾値となる基準濃度より高若しくは低い濃度を有する画素を抽出して各色分解画像を二値化画像にそれぞれ変換する工程と、
変換された各二値化画像中に含まれる独立図形をそれぞれ数える工程と、
各二値化画像中における独立図形数の内その最小値をエッチピット数としこのエッチピット数からエッチピツト密度を求める工程、
の各工程を有するため、半導体単結晶における結晶面の平坦度に左右されることなくエッチピット密度を正確に測定できる効果を有する。
【0041】
また、この測定方法は画像処理とその演算処理で実施できるため、エッチピット密度の自動測定に応用可能となる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】GaP単結晶(111)エッチング面の暗視野照明による反射型顕微鏡のモノクロ(白黒)拡大画像図。
【図2】図1における拡大画像の二値化画像図。
【図3】結晶面の平坦度が悪い単結晶エッチング面の暗視野照明による反射型顕微鏡のモノクロ(白黒)拡大画像図。
【図4】図3における拡大画像の二値化画像図。
【図5】図3のフルカラー拡大画像をRGB分解したR部分のモノクロ(白黒)拡大画像図。
【図6】図3のフルカラー拡大画像をRGB分解したG部分のモノクロ(白黒)拡大画像図。
【図7】図3のフルカラー拡大画像をRGB分解したB部分のモノクロ(白黒)拡大画像図。
【図8】図5における拡大画像の二値化画像図。
【図9】図6における拡大画像の二値化画像図。
【図10】図7における拡大画像の二値化画像図。
Claims (1)
- 半導体単結晶の結晶面をエッチング処理してエッチピットを形成しかつ上記結晶面の拡大画像からエッチピツト密度を測定する半導体単結晶におけるエッチピット密度の測定方法において、
エッチング処理された結晶面の拡大フルカラー画像を得る工程と、
得られたフルカラー画像を色分解して赤、緑、青の色分解画像を得る工程と、
赤、緑、青の各色分解画像を構成する各画素群から閾値となる基準濃度より高若しくは低い濃度を有する画素を抽出して各色分解画像を二値化画像にそれぞれ変換する工程と、
変換された各二値化画像中に含まれる独立図形をそれぞれ数える工程と、
各二値化画像中における独立図形数の内その最小値をエッチピット数としこのエッチピット数からエッチピツト密度を求める工程、
の各工程を有することを特徴とする半導体単結晶におけるエッチピット密度の測定方法。
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