JP3659225B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は燃料電池システム、特にシステムの氷点下からの起動性を改良する燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の固体高分子型燃料電池においては、水素イオン(H+)が固体高分子電解質膜を透過するためには、その電解質膜が常に湿潤状態を維持することが必要となる。しかしながら、電解質膜を湿潤状態に維持するために水分を補給する構成を燃料電池システム中に有すると、氷点下の温度域で水分が凍結し、この状態から燃料電池システムを起動するには、まず凍結した水分を解凍する必要が生じ、時間が掛かり始動性が著しく悪い。
【0003】
このような起動性の課題を解決する技術として、特開2000−315514号公報には、外部から高温のガスを燃料電池システムに供給し、凍結した水分を解凍する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来技術においても特に氷点下20℃以下の気温では、供給された高温のガスが電解質膜と触媒と電極から構成される膜電極接合体、いわゆるMEAに到達するまでに、そのガスの熱を配管やセパレータを加熱することに消費され、熱効率が悪く、また熱量が減少するためにMEAの解凍に時間が掛かり、起動時間が長いということになる。
【0005】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、電圧を燃料電池スタックに印加して電力を供給することによりMEA、ガス拡散層、セパレータを直接的に解凍することで、起動性を向上し、課題を解決するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜を狭持するように配置され、燃料が供給される燃料極と酸化材が供給される酸化剤極を備えた単セルを積層して形成される燃料電池スタックを備えた燃料電池システムにおいて、前記燃料電池スタックは、燃料電池スタック内の温度が氷点下からの燃料電池システム起動時に、前記各単セルの燃料極をプラス極、酸化剤極をマイナス極として水の電気分解電圧以上の電圧を印加し、燃料極に酸素、酸化剤極に水素を生成する電圧印加プロセスと、生成された水素及び酸素と、酸化剤極に供給された酸素及び燃料極に供給された水素を用いて発電し、かつ生成された水素及び酸素と、酸化剤極に供給された酸素及び燃料極に供給された水素の化学反応によって発熱する発電プロセスとを繰り返し行い、前記燃料電池スタック内を解氷する。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記電圧印加プロセスと発電プロセスとの切り換え時間を解氷状態に応じて変化させる。
【0008】
第3の発明は、第2の発明において、前記電圧印加プロセスと前記発電プロセスとの保持時間は、電圧印加開始時ほど電圧印加時間を長くし、解氷が進行するほど発電時間を長くする。
【0009】
第4の発明は、固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜を狭持するように配置され、燃料が供給される燃料極と酸化材が供給される酸化剤極を備えた単セルを積層して形成される燃料電池スタックを備えた燃料電池システムにおいて、前記燃料電池スタックは、燃料電池スタック内の温度が氷点下からの燃料電池システム起動時に、前記各単セルの燃料極をプラス極、酸化剤極をマイナス極として水の電気分解電圧以上の電圧を印加し、燃料極に酸素、酸化剤極に水素を生成する水素酸素生成プロセスと、前記各単セルの燃料極をマイナス極、酸化剤極をプラス極として水の電気分解電圧以上の電圧を印加し、燃料極に水素、酸化剤極に酸素を生成し、前記水素酸素生成プロセスで生成した水素と酸素と反応させて水を生成する水生成プロセスとを繰り返し行い、水生成時の反応熱によって前記燃料電池スタック内を解氷する。
【0010】
第5の発明は、第4の発明において、前記水素酸素生成プロセスと水生成プロセスの切り換え時間を解氷状態に応じて変化させる。
【0011】
第6の発明は、第1から第5のいずれか一つの発明において、前記燃料極に水素を供給し、酸化剤極に空気を供給する。
【0012】
【発明の効果】
第1の発明は、燃料電池スタック内の温度が氷点下からの燃料電池システム起動時に、前記各単セルの燃料極をプラス極、酸化剤極をマイナス極として水の電気分解電圧以上の電圧を印加し、燃料極に酸素、酸化剤極に水素を生成する電圧印加プロセスと、生成された水素及び酸素と、酸化剤極に供給された酸素及び燃料極に供給された水素を用いて発電し、かつ生成された水素及び酸素と、酸化剤極に供給された酸素及び燃料極に供給された水素の化学反応によって発熱する発電プロセスとを繰り返し行い、前記燃料電池スタック内を解氷するので、電圧の印加による水の分解時の発熱による解氷に加え、燃料電池の発電による発熱により解氷することができるのでより効率的に解氷することができる。また解氷時に発電することができるので、電圧印加に用いる電源の負荷を低減してシステムの効率を高めることができる。
【0013】
第2の発明は、電圧印加プロセスと発電プロセスとの切り換え時間を解氷状態に応じて変化させたので、より効率よく解氷を促進することができる。
【0014】
第3の発明は、電圧印加プロセスと発電プロセスとの保持時間は、電圧印加開始時ほど電圧印加時間を長くし、解氷が進行するほど発電時間を長く下ので、電源の負荷を抑制しつつ、解氷を促進することができる。
【0015】
第4の発明は、燃料電池スタック内の温度が氷点下からの燃料電池システム起動時に、まず各単セルの燃料極をプラス極、酸化剤極をマイナス極として水の電気分解電圧以上の電圧を印加し、燃料極に酸素、酸化剤極に水素を生成する。次に各単セルの燃料極をマイナス極、酸化剤極をプラス極として水の電気分解電圧以上の電圧を印加し、燃料極に水素、酸化剤極に酸素を生成する。そして水素酸素生成プロセスで生成した水素と酸素と反応させて水を生成する。この各電極での水素、酸素の生成と、水素と酸素の水生成を繰り返し行い、水生成時の反応熱によって燃料電池スタック内を解氷するので、電圧の印加による解氷とともに、水の生成時の反応熱によって解氷を促進できるので、解氷時間を短縮し、効率よく解氷することができる。
【0016】
第5の発明は、水素酸素生成プロセスと水生成プロセスの切り換え時間を解氷状態に応じて変化させるので、効率よく解氷することができる。また例えば、外部から燃料と酸化剤を供給することで、更に水の生成時の反応熱を増加することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の燃料電池システムの構成の一例を示す。
【0018】
単セル1が積層して構成される燃料電池スタック2には、コンプレッサ3から酸化剤(酸素)が圧力調整弁4を介して供給されるとともに、水素ボンベ5から圧力調整弁6を介して燃料としての水素が各セルに供給される。また水素の圧力を調整する圧力調整弁6と燃料電池スタック2との間にはエゼクタ7が設けられている。
【0019】
燃料電池スタック2では発電のための電気化学反応に供せられた水素と酸素は、排ガスとして大気中に放出されるが、排水素ガスの一部はエゼクタ7の作用によって燃料電池スタック2に再供給される。
【0020】
燃料電池スタック2を構成する単セル1は、固体高分子電解質膜(以下、単に高分子膜という。)8と、高分子膜8を両側から狭持するようにガス拡散層と触媒を担持した電極(水素極と酸素極)とさらに高分子膜8と触媒と燃料ガス(水素または酸素)とで形成される3層界面とが混在する層9と、その層9の外側に燃料ガスが流通する流路10を形成したセパレータ11とから形成されている。
【0021】
高分子膜8は、パーフルオロスルホン酸イオン交換膜、たとえば、DuPont社製Nafion112を用いて形成され、ガス拡散層はカーボンペーパを用い、各電極は触媒としてPtを担持したカーボンブラックを前記Nafionと混合してカーボンペーパに塗布して形成する。したがって、化学反応サイトである3相界面を高分子膜8近傍に形成することができる。
【0022】
燃料電池スタック2には、スイッチ制御回路12が接続されており、スイッチ制御回路12は2次電池(バッテリ)を電源13として燃料電池スタック2の単セルの各電極間に氷点下時でも確実に電圧を印加する。ここで、単セル1の水素極をプラス(+)極と、酸素極をマイナス(−)極として電圧を印加する。電流を一定化するための定電流回路14が、スイッチ制御回路12と電源13との間に設置される。例えば、この実施例での高分子膜の発電面積を25cm2とすると高分子膜8内を流れる電流が1A/cm2となるようにするには、電極間に流れる電流は、25Aの電流が必要とされる。
【0023】
スイッチ制御回路12は電源13の他に、電気制御回路17を介して通常発電時に接続する負荷(例えば、モータ)15と燃料電池スタック7を接続可能に構成される。燃料電池スタック7とこれら電源13、負荷15との接続の切り換えは、制御装置16によって制御される。更に制御装置16には図示しないが、燃料電池スタック2内の温度を検出するための温度センサからの出力が入力される。
【0024】
このように構成される燃料電池システムが、氷点下30℃の環境に設置された場合を模式的に示したのが図2である。図では氷がガス流路の一部を閉ざしているが、実際にはそのほとんどを閉鎖していると考えられる。この環境下では、高分子膜8のイオン導電率は約0.005S/cmであるので、高分子膜8の電圧降下は約0.6Vである。また触媒活性過電圧は約0.3V、ガス拡散層とセパレータ11との接触抵抗は約0.2Vであり、水の電気分解電圧である約1.2Vと合わせると各電極に印加する電圧は約2.4V必要となる。
【0025】
この環境下でスイッチ制御回路12によって燃料電池スタック7と電源13を接続し、電圧を印加すると印加した2.4Vのうち、高分子膜8の電圧降下分(抵抗分)の約0.6Vと触媒活性化抵抗分の約0.3Vとガス拡散層とセパレータ11との接触抵抗分の約0.2Vを合わせた約1.1Vが熱に変換されて、凍結した水の解凍に用いられる。この電圧による発熱量は、単セル1に1A/cm2の電流を流すようにすると、1.2W/cm2程度の発熱量となる。この発熱量を用いることで、氷点下30度という極寒の環境においても燃料電池スタック2の凍結を短時間に解凍することができ、システムの起動性を向上することができる。
【0026】
さらに水の電気分解電圧である約1.2Vについても、この電圧による水の分解により生成された酸素と水素とが外部より供給された水素と酸素と反応する際に生じる反応熱を解凍に用いることが可能である。
【0027】
つまり、電圧の印加の開始直後は、水素または酸素を供給するためのガス拡散層等が凍結しており、外部から水素または酸素を単セル1内に供給することはできないが、電圧の印加が継続され、氷の解凍が進むに連れて、外部からの酸素または水素が単セル1内に供給されるようになる。ここで、各電極間に電圧を印加することにより、水素極には酸素が、酸素極には水素が発生しており、この状態で水素極に水素を、酸素極に酸素を供給することで、発生した水素と供給された酸素または発生した酸素と供給された水素とが反応を生じ、水が生成される。この水を生成する際に生じる反応熱は、氷点下時に凍結した燃料電池スタック2内の氷を解凍するために使用することができる。したがって水の分解電圧分による反応熱により解凍が可能となり、解凍を一層促進することができる。
【0028】
さらに燃料電池スタック7内の温度が上昇し、例えば、20℃では高分子膜の導電率が0.03S/cm程度になり、電圧降下は約0.1Vに減少し、印加電圧は1.8Vで足りる。この状態では、過電圧による発熱量は、単セル1に1A/cm2流すと約0.6W/cm2となる。
【0029】
次に燃料電池スタックの単セルの各電極間への電圧の印加により生じる熱について説明する。
【0030】
一定以上の電圧を印加すると次の化学式で表される電気分解が生じる。
【0031】
【数1】
【0032】
印加下電圧から下記式2で示されるネルンスト平衡電圧式より算出される約1.23V(大気圧時)を差し引いた電圧の差から生じるエネルギ差の大半が熱に変換され、凍結した水を解凍することになる。この熱の内訳としては、主に高分子膜、ガス拡散層、セパレータ内部で発生するジュール熱と、ガス拡散層とセパレータとの接触面で発生する熱、触媒付近で発生する熱がある。
【0033】
【数2】
【0034】
ここで、Er:平衡電圧、R:気体定数、F:ファラデー定数、T:温度、p:それぞれのガスの分圧を示す。
【0035】
まずジュール熱については、各電極に電圧を印加することで単セル1の構成である高分子膜8、セパレータ11、ガス拡散層内で単位面積当たりi×R2(ここでi=電流密度、R=それぞれの抵抗、とする)の発熱が生じる。またガス拡散層とセパレータとの接触面では、一般に両者の内部よりも電子が通過可能な面積が小さくなるために抵抗が大きくなる。触媒付近では、式1で示す化学反応を促進するために必要な過電圧に相当するエネルギの大半が熱になる。これらの熱を凍結した水の解凍に用いることができる。
【0036】
次に本発明の要旨となる氷点下状態での電圧印加の制御方法について説明する。前述のように例えば、氷点下30℃では水素や酸素を単セル1に供給しても発電することは氷の存在によって不可能である。したがって、単セル1に電圧を印加する電圧印加プロセスで解氷を行うが、電圧印加後、例えば、60秒後には水素や酸素が解氷されたガス拡散層等の一部を通過し、発電が可能となる状態となりうる。この状態でスイッチ制御回路12を切り換え、燃料電池スタック7と負荷15を接続する。負荷15を接続することで燃料電池7での発電が開始される。発電は式(1)の逆反応、つまり下式(3)にて表すことができる。
【0037】
【数3】
【0038】
この発電プロセス時に高分子膜8内を移動する際の膜抵抗による電圧降下、ガス拡散層とセパレータ11間の接触抵抗、触媒活性化抵抗の過電圧に応じた熱を用いて残る氷を解氷することができる。例えば、25mΩの負荷を燃料電池スタック7に接続し、燃料電池スタック7での電流密度が1A/cm2(この電流密度で電圧が0.4V以下となるときには電圧を0.4V)となるように発電を行う。この時の過電圧による発熱量は単セル1の温度によって変動するが、0.6〜1.2W/cm2である。
【0039】
本発明では、電圧印加プロセスと発電プロセスとを氷点下時において順次繰り返し行うように制御する。このような制御とすることで、単に電圧の印加により水の電気分解等を用いて燃料電池システムを解氷する場合よりも、電圧の印加に用いる電源の消費量を低減してシステムの効率を高めることができるとともに、氷点下時に発電できるという効果がある。
【0040】
図3は、電圧印加プロセスと発電プロセスのパターンを模式的に示したものである。図においては、電圧印加時間T1と発電時間T2を略同一として記載したが、解氷状態に応じて異ならせることも可能である。例えば、電圧印加時間T1を発電時間T2に比して相対的に長く設定することで、単セル1の電極で水の電気分解によって発生した、例えば酸素(または水素)とその電極に供給された水素(または酸素)とが反応し、水が生成されるときに発生する反応熱を解氷に用いることでより一層解氷を促進させることができる。更には電圧印加開始後、時間が経過するにつれて、電圧印加時間と発電時間を徐々に短縮するように(つまり、T1>T3>T5、T2>T4>T6)制御することも可能である。
【0041】
図4は、最初の60秒間の電圧印加後、50秒間の発電、40秒間の電圧印加、50秒間の発電、30秒間の電圧印加を行った後に通常の発電に移行した場合の単セル1の温度変化を図示しない温度検出手段で検出した結果である。
【0042】
まず燃料電池スタック2内の温度が氷点下30度の状態から各セルの電極間に電圧を60秒間、印加すると単セル内でジュール熱が発生し、単セルの温度が上昇する。氷点下20℃で温度の上昇が一時的に停止するが、これは、高分子膜8中に存在する半結合水が解凍していることを示している。
【0043】
ここで高分子膜8中に存在する水について説明すると、高分子膜8中にはスルホン酸基に結合した凍結しない結合水と、結合せずに略0℃で凍結する自由水と、氷点下略20℃で凍結する半結合水とが混在して、重量濃度で自由水に対して10倍量の混合水を形成している。氷点下20℃で温度の上昇が停止しているのは.半結合水の解凍に熱が消費されていることを示している。
【0044】
半結合水の解凍が電圧印加後、約50秒で終了し、再び単セル1内の温度が上昇する。電圧印加終了後発電状態に移行すると発電によって生じた熱によって単セル内の温度が上昇する。このときに単セル内で消費される電力量は先に電気分解により生じた水素と酸素を用いるので、外部から供給する必要がなく電力量は0となる。
【0045】
50秒間の発電の後、再び電圧印加状態に移行し、移行後、約15秒後に単セル内の温度が0℃に達する。0℃に達すると電圧印加によって生じる熱量が、液化潜熱として自由水を解氷するために用いられ、単セルの温度上昇が一次的に停止する。以後、電圧印加開始から約250秒まで、熱は、自由水の解氷のために消費され、自由水の解凍が終了することで、セパレータやガス拡散層を遮蔽していた氷が解凍され、外部から供給される水素と酸素が各電極に供給可能となる。その後、発電による発熱により再び、単セル1の温度は上昇を始める。
【0046】
合計消費電力量は、電圧印加の状態でのみ消費され、発電時には発電した電力量だけ解氷に消費され、その時の電力消費量は0となる。
【0047】
また、最初に2.4V印加した電極の端子間電圧は、単セル1の昇温とともに減少し、0℃の状態では約1.8Vまで低下し、以降は一定の電圧となる。
【0048】
このように本条件では、電圧印加後、約250秒で単セル1の解氷を終了することができる。
【0049】
図5に示す第2の実施形態は、各単セル1の各電極の極性を変化できるように構成したものである。まず、単セル1の水素極を+極、酸素極を−極となるようにスイッチ制御回路12を接続し、各電極に電圧を印加する。このとき電流は例えば、高分子膜内の電流密度が1A/cm2となるように電流を流す。電圧の印加によって水素極には酸素が、酸素極には水素が生成される。水素極に酸素が、酸素極に水素が生成される過程を水素酸素生成プロセスと呼ぶ。
【0050】
ここで、高分子膜の導電率が0.006S/cmから0.03S/cmであるので、高分子膜での電圧降下は0.6Vから0.1Vである。また触媒活性化抵抗分の過電圧は約0.3V、ガス拡散層とセパレータとの接触抵抗は約0.2Vであり、水の電気分解電圧1.2Vと合わせると印加電圧の合計は、2.4Vから1.8V必要となる。この電圧のうち、高分子膜、ガス拡散層、セパレータでの電圧降下、触媒活性電圧、接触抵抗が解氷のための熱として用いることができる。この時の過電圧による発熱量は単セルに電流を1A/cm2だけ流すようにすると、1.2から0.6W/cm2程度となる。
【0051】
水素極に酸素が、酸素極に水素が生成された後、各電極の極性を切り換え、水素極を−極に、酸素極を+極として電圧を印加する。電圧の印加により今度は、水素極に水素が、酸素極に酸素が発生し、水素極ではこの発生した水素と極性切り換え前に発生した酸素が反応し水を生じ、酸素極では発生した酸素と極性切り換え前に発生した水素とが反応し水を生成する。そしてこの反応時に発生する反応熱を用いて解氷することができる。このサイクルを水生成プロセスと言う。
【0052】
そして水素酸素生成プロセスと水生成プロセスとの切り換えを繰り返し行うことで燃料電池スタック内の解氷をより効率的に進めることができる。なお解氷が進むにつれて、外部から供給される水素と酸素が電極に供給されるようになるので、このときには水素極が−極、酸素極が+極となる割合を減じるようにする。そして単セル1内の温度が、発電可能な0℃に達した時に電圧の印加を停止し、発電に切り換えるように制御する。
【0053】
図6は、水素酸素生成プロセスと水生成プロセスの制御パターンを模式的に示したものである。水素酸素生成プロセスと水生成プロセスとを順次繰り返し実施することでより効果的に解氷することができる。図においては、水素酸素生成時間T1と水生成時間T2を略同一として記載したが、解氷状態に応じて異ならせることも可能である。例えば、解氷が進み、外部から水素または酸素が供給可能となれば、水素酸素生成時間T1を水生成時間T2に比して相対的に長く設定することで、単セル1の電極で外部から供給された、例えば酸素(または水素)とその電極に供給された水素(または酸素)とが反応し、水が生成されるときに発生する反応熱を解氷に用いることでより一層解氷を促進させることができる。
【0054】
図7は第2実施形態を用いて単セル1の温度変化を測定した一例である。電圧印加の条件は、まず20秒間水素極(−)酸素極(+)で電圧を印加後、極性を切り換え、水素極(+)酸素極(−)で40秒間電圧を印加する。続いて、30秒間水素極(−)酸素極(+)で電圧を印加後、極性を切り換え、水素極(+)酸素極(−)で40秒間電圧を印加する。
【0055】
第1の実施形態の測定結果と比較すると、温度変化の傾向は同じであるが、その変化時間が著しく短縮されていることがわかる。すなわち第1実施形態では、氷点下30℃から0℃まで約250秒を要していたものが、第2実施形態では、約90秒に短縮できる。
【0056】
このように水素酸素生成プロセスと水生成プロセスの切り換え時間を解氷時間に応じて切り替えることでより効率よく解氷を促進することができる。
【0057】
また解氷が進み、外部から水素、酸素を各電極に供給可能なときには、水素酸素生成プロセスの時間を水生成プロセスより長くして、外部から供給された酸素と水素極で生成された酸素と、外部から供給された水素と酸素極で生成された水とから水が生成されることでより一層効果的に解氷を促進することができる。
【0058】
以上説明したように本実施形態では、水素酸素生成プロセスと水生成プロセスとを繰り返し実施することで、まず燃料電池スタック内の水分が凍結した氷点下状態において、水素酸素生成プロセスにより、単セルの酸素極に水素を、水素極に酸素を生成し、引き続き水生成プロセスに切り換えて、水素極に水素を、酸素極に酸素を生成し、各電極で水素酸素生成プロセスで生成された水素、酸素と反応し、水が生成され、この反応熱を用いて解氷することを繰り返すことで、燃料電池システムの起動性を向上することができるとともに、システムとしての効率を向上することができる。
【0059】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池システムの構成を説明するための図である。
【図2】燃料電池セルの高分子膜界面を模式的に説明するための図である。
【図3】電圧印加プロセスと発電プロセスの制御パターンを説明する図である。
【図4】単セル内の温度変化、印加電圧、合計消費電力の変化を説明するための図である。
【図5】第2の実施形態の燃料電池システムの構成を説明するための図である。
【図6】水素酸素生成プロセスと水生成プロセスの制御パターンを説明する図である。
【図7】単セル内の温度変化、印加電圧、合計消費電力の変化を説明するための図である。
【符号の説明】
1 単セル
2 燃料電池スタック
8 高分子膜
10 流路
11 セパレータ
12 スイッチ制御回路
14 定電流回路
17 制御装置
Claims (6)
- 固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜を狭持するように配置され、燃料が供給される燃料極と酸化剤が供給される酸化剤極を備えた単セルを積層して形成される燃料電池スタックを備えた燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックは、燃料電池スタック内の温度が氷点下からの燃料電池システム起動時に、前記各単セルの燃料極をプラス極、酸化剤極をマイナス極として水の電気分解電圧以上の電圧を印加し、燃料極に酸素、酸化剤極に水素を生成する電圧印加プロセスと、生成された水素及び酸素と、酸化剤極に供給された酸素及び燃料極に供給された水素を用いて発電し、かつ生成された水素及び酸素と、酸化剤極に供給された酸素及び燃料極に供給された水素の化学反応によって発熱する発電プロセスとを繰り返し行い、前記燃料電池スタック内を解氷することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記電圧印加プロセスと発電プロセスとの切り換え時間を解氷状態に応じて変化させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前 記電圧印加プロセスと前記発電プロセスとの保持時間は、電圧印加開始時ほど電圧印加時間を長くし、解氷が進行するほど発電時間を長くすることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
- 固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解質膜を狭持するように配置され、燃料が供給される燃料極と酸化材が供給される酸化剤極を備えた単セルを積層して形成される燃料電池スタックを備えた燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックは、燃料電池スタック内の温度が氷点下からの燃料電池システム起動時に、前記各単セルの燃料極をプラス極、酸化剤極をマイナス極として水の電気分解電圧以上の電圧を印加し、燃料極に酸素、酸化剤極に水素を生成する水素酸素生成プロセスと、前記各単セルの燃料極をマイナス極、酸化剤極をプラス極として水の電気分解電圧以上の電圧を印加し、燃料極に水素、酸化剤極に酸素を生成し、前記水素酸素生成プロセスで生成した水素と酸素と反応させて水を生成する水生成プロセスとを繰り返し行い、水生成時の反応熱によって前記燃料電池スタック内を解氷することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記水素酸素生成プロセスと水生成プロセスの切り換え時間を解氷状態に応じて変化させることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
- 前記燃料極に水素を供給し、酸化剤極に空気を供給することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
Priority Applications (7)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001396587A JP3659225B2 (ja) | 2001-12-27 | 2001-12-27 | 燃料電池システム |
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