JP3651377B2 - 車両用シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シートバックが可倒式の車両用シートに関し、特にシートバックを前方に倒したときにシートバック側面と室内トリムの膨出部より前方の室内トリムとの間に形成される空間を閉塞して、荷室床面を広く活用できる車両用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
バン型車両あるいは所謂ワゴン車などは、図9に示すように、リヤシートのシートバック110が後輪のホイールハウスあるいはショックアブソーバの取付部による室内への出っ張りを包む室内トリム140の左右の膨出部141に位置することが多い。
しかも、このバン型車両あるいは所謂ワゴン車などのリヤシートのシートバック110はヒンジにより可倒式になっており、前方へ倒伏したときは、その背面がうしろに続く荷室床面151とほぼ同一面となって、荷室150を広くし、荷物が積みやすいように設定されている。
【0003】
すなわち、図10に示すように、シートバック110の両端部側面の下部は、シートバック110を起立した状態で前述の室内トリム140の膨出部141との干渉を避けるために、車両中心側にえぐられた凹部112が形成されている。
【0004】
ところで、このシートバック110と室内トリム140の膨出部141との関係は、シートへの乗降のしやすさ、着座時の座り心地すなわち乗員の腰部から上体にかけてのおさまり具合、着座時の乗員の脚部の余裕スペースを確保したシート配置などの観点から、シートバック110の前面からの室内トリム140の膨出部141の膨出量は極力少なくすることが望ましい。
例えば、シートバック110を膨出部141の直前に位置するようにシートを配置すると、シートバック110側面の凹部112は形成する必要がないが、車両後部の荷室150に膨出部141が全部配置されるので荷室が狭くなり、かつ、シートの配置から車両のホイールベースが長くなり、回転半径の大きな車両になってしまい、実用上問題を生じる。
【0005】
そこで、ホイールベースとシートの配置の関係を実用的なものとすると、前述のように、リヤシートのシートバック110は室内トリム140の左右の膨出部141と重なる位置で、極力前方とすることが望ましい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、シートバック110を膨出部141と重なる位置に配置するため、シートバック110側面に凹部112を形成する必要から、このシートバック110をヒンジ131の回動軸を中心として前方へ倒すと、図10に示すように、倒したシートバック110の裏面と膨出部141の前面に上記凹部112により生じる空間(陥没部)160が生じて、小さな荷物が落下するという問題が生じていた。
このため、従来は、図11に示すように、シートバック110の裏面に回転中心の異なる接続ボード170をあてがう構成としこの構成によればシートバック110を前方に倒すと、この接続ボード170も追従して倒れるが、回転中心が異なるためシートバック110とは少しずれて倒れることにり、図12に示すように陥没部160の開口を閉塞することができる。
しかし、この構成では、別途ボードが必要になり、コスト高、重量増につながり、この陥没部160の開口を使い勝手よく安価に閉塞する手段は提案されていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、シートバックを前方に倒したときにシートバック側面と室内トリムの膨出部との間に形成される空間を閉塞して、荷室床面を広く活用できる車両用シートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る請求項1に記載の車両用シートは、シートバックが室内トリムの左右の膨出部の間に配置され、かつ、シートバックを前方へ倒伏可能とした車両用シートであって、前記シートバック側端部に、シートバック背面と面一な展開位置から前方に回動可能に設けられるとともに、前記展開位置側にバネで付勢され、前記シートバックを倒伏したとき前記展開位置に回動してシートバック側面と前記膨出部より前方の室内トリムとの間に形成される空間を閉塞し、シートバックを起立させたとき前記膨出部に当接することにより前記バネに抗して前方へ回動させられて、シートバック側面と前記膨出部間に収納されるシートサイドボードを設けたことを特徴とする。
よって、シートバックを前方に倒伏したときに、シートサイドボードがシートバック背面と面一な展開位置に回動して、シートバックの側面と室内トリムの膨出部前方に形成される室内トリムとの空間部を閉塞するので、陥没部のない広い床面を安価に得ることができる。
また、シートバックを起立させたときに、シートサイドボードは膨出部に当接して前方に回動することによりシートバックの側面と膨出部との間の空間に自動的に収納されるので、シートバックの起倒動作以外の操作をすることなく広い床面を容易に得ることができる。
【0009】
また、本発明に係る請求項2に記載の車両用シートは、室内トリムに、シートバックを倒伏したときに展開位置にあるシートサイドボードの自由端部が当接して、該シートサイドボードを保持するボード受面を設けたことを特徴とする。
よって、シートバックを前方に倒伏してシートサイドボードがシートバック裏面と略同一面の展開位置に回動したときに、シートサイドボードの先端側をボード受面により保持するので、シートサイドボード上に荷重がかかってもシートサイドボードが傾くことなく、平面を保つことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る車両用シートの一の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態の車両用シートは、ワゴン車に設けられたものである。
ここで、図1は、リヤシートの全体を示した斜視図であり、図2は、シートサイドボードを取り付けたシートバックの部分平面図である。図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。
【0011】
(構成)
本発明に係る車両用シートの一の実施の形態の構成について説明する。
車両用シート1は、図1に示すように、左右に分割したシートクッション30とシートバック10とから構成され、シートバック10は従来と同様に、シートクッション30に対してシートバックヒンジ131(図10参照)により前方に倒伏回動可能に支持されている。
この車両用シート1は、ワゴン車のリヤサスペンションを支持するための室内の突出部を覆う室内トリム40の左右の膨出部41の間に配置されている。したがって、シートバック10の下方とシートクッション30の後方には、この膨出部41を逃げて室内側にえぐられた凹部12が形成されている。
このシートバック10の側端部のえぐられた凹部12に、図2に示すように、本発明の主要部をなすシートサイドボード20が取り付けられている。
【0012】
シートサイドボード20は、シートバック10を前方へ倒伏した平面視で前後方向に長い略平行四辺形をなし、室内側の辺でヒンジ21によりシートバック10の背面に取り付けられたシートバックボード11に、回動可能に支持されている。
すなわち、図3の断面図に示すように、シートサイドボード20は、樹脂製あるいは金属製の芯材201の上面を、荷室床面51と同一のカーペット材である表皮材202により覆い、端末を芯材201の下面に巻き込んで接着している。
シートバックボード11も同様に芯材101の上面を表皮材102により覆い、端末を芯材101の下面に巻き込んで接着し、シートバック10の背面に取り付けている。
【0013】
この両芯材101、201にヒンジ21のメール、ヒメールをリベット止めし、ピアノ線によるヒンジピン211を挿通して、シートサイドボード20がシートバック10の側端部の凹部12側に回動可能に支持されている。
ヒンジピン211には、捻りバネ22が支持され、該捻りバネ22の両腕部によりシートサイドボード20が常にシートバック10背面のシートバックボード11と同一面の展開位置となるように付勢されている。
なお、シートバック10が前方へ倒伏した位置で、シートサイドボード20の自由端部が室内トリム40に設けたボード受面42に上方から当接して、シートサイドボード20に対する上方からの荷重を保持できるようになっている。
この状態で、シートサイドボード20は、シートバック10の側面と室内トリム40との間の陥没部60を閉塞する。
【0014】
(作用)
次に、シートサイドボード20を取り付けた車両用シート1の動作について説明する。
図3の断面図は、シートバック10が前方に倒伏されてシートクッション30の上に重なり、シートバックボード11が略水平になった状態の正面断面であるが、図4は、そのシートバックボード11が略水平になった状態(図3の(イ))から徐々にシートバック10を起立させて、20°起立した状態(ロ)、40°起立した状態(ハ)、80°起立した状態(ニ)そして100°すなわちシートバック10が少しうしろへ傾斜して着座する状態(ホ)でのシートサイドボード20の動きを表した平面断面図である。
【0015】
すなわち、シートバック10が徐々に起立すると、シートサイドボード20が捻りバネ22により常にシートバックボード11と同一面となる展開位置に付勢されているので、シートサイドボード20の自由端が室内トリム40の膨出部41に当接しながら、ヒンジピン211を回動中心としてシートバックボード11に対して前方に回動する。
そして、図5に示すように、シートバック10が着座位置(ホ)よりさらに後方にわずか傾倒した(ヘ)の位置では、シートサイドボード20はシートバック10の側面とほぼ平行な位置で、シートバック10の側面と膨出部41との間に収納される。
【0016】
逆に、シートバック10の着座位置(ホ)あるいは後傾位置(へ)から前方へ徐々に倒伏すると、シートサイドボード20はその自由端が室内トリム40の膨出部41に当接しながら、図4の80°起立した状態(ニ)、40°起立した状態(ハ)、20°起立した状態(ロ)に示すようにシートバックボード11に対して角度を開きながら図3に示す倒伏位置(イ)に至る。
そして、シートサイドボード20の自由端は室内トリム40に設けられたボード受面42に乗り、上下方向で確実に位置決めされる。
すなわち、シートサイドボード20は、シートバック10の下方の凹部12と室内トリム40の膨出部41とで形成される陥没部60を閉塞する。
【0017】
このように、本実施の形態に係る車両用シート1は、シートバック10の側端部で、その裏面に取り付けられたシートバックボード11の端部にシートサイドボード20をヒンジ21により回動自在に支持し、シートバック10の起倒動作に伴って、シートサイドボード20の自由端が室内トリム40の膨出部41に当接しながら回動し、シートバック10の倒伏時には、シートバック10の側面の下端凹部12と室内トリム40の膨出部41とにより形成される陥没部60を閉塞するので、シートバック10の起倒動作だけで平坦で広い荷室床面の形成が可能となった。
【0018】
なお、本発明は前記実施の形態のものに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施の形態では、シートサイドボード20を回動自在に支持するヒンジ21を独立したヒンジで構成した例で示したが、これに限られず、図6(A)に示すように、シートサイドボード20側のヒンジを芯材201と一体に成形し、該芯材201も樹脂製(図6(B))あるいは金属板製(図6(C))で構成することも可能である。
また、図7(A)に示すように、ヒンジ21のシートバックボード11側のヒンジもシートバックボード11の芯材101と一体に成形したものであってもよい。(図7(B))
さらに、図8(A)に示すように、ヒンジ21と捻りバネ22の代わりに、その両者の機能を併せ持つ板バネ23としてもよい。すなわち、シートバックボード11の芯材101とシートサイドボード20の芯材201との両方に平面視H型の板バネ23を挿入して一体成形したものである。
【0019】
また、上述した実施の形態では、シートバック10の側端部が下方でえぐられた凹部112を有するもので説明したが、図13に示すようなシートバック10の略直線状の側面にシートサイドボード20を取り付けることも可能である。
すなわち、シートバック10に対して室内トリム40の膨出部41の高さが高い場合は、シートバック10の側端部は略直線状になり、この直線状のシートバック10側端部と室内トリム40で形成される陥没部60をシートサイドボード20により閉塞し、シートバック10の起立時はシートバック10の側端部と膨出部41との間にシートサイドボード20を収納する。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、シートバックが室内トリムの左右の膨出部の間に配置され、かつ、シートバックを前方へ倒伏可能とした車両用シートであって、前記シートバック側端部に、シートバック背面と面一な展開位置から前方に回動可能に設けられるとともに、前記展開位置側にバネで付勢され、前記シートバックを倒伏したとき前記展開位置に回動してシートバック側面と前記膨出部より前方の室内トリムとの間に形成される空間を閉塞し、シートバックを起立させたとき前記膨出部に当接することにより前記バネに抗して前方へ回動させられて、シートバック側面と前記膨出部間に収納されるシートサイドボードを設ける構成としたので、シートバックを前方へ倒伏するだけで陥没部をシートサイドボードにより閉塞でき、広い床面を有する車両荷室を得ることが可能となった。
また、シートバックの起立時、シートサイドボードはシートバック側面に設けた凹部に回動収納されるので、シートに着座時に邪魔になることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートの全体を示した斜視図である。
【図2】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートにシートサイドボードを取り付けたシートバックの部分平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートのシートバックの起倒位置でのシートサイドボードの動きを表した平面断面図である。
【図5】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートのシートバックの着座位置から少し後部に倒れた位置でのシートサイドボードの収納状態を示す平面断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る車両用シートのシートサイドボードを示す図で、(A)は斜視図、(B)は(A)のVI−VI線に沿う断面図で芯材が樹脂製の場合、(C)は同じく(A)のVI−VI線に沿う断面図で芯材が金属板製の場合を示している。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る車両用シートのシートサイドボードを示す図で、(A)は斜視図、(B)は(A)のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る車両用シートのシートサイドボードを示す図で、(A)は斜視図、(B)は(A)のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】従来のバン型車両のリヤシートおよび荷室を表す斜視図である。
【図10】従来のバン型車両のリヤシートのシートバックを前方へ倒伏した状態の斜視図である。
【図11】従来のバン型車両のリヤシートのシートバックを起立させた状態の側面図である。
【図12】従来のバン型車両のリヤシートのシートバックを前方へ倒伏させた状態の斜視図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る車両用シートにシートサイドボードを取り付けたシートバックの部分平面図である。
【符号の説明】
1 車両用シート
10 シートバック
12 凹部
20 シートサイドボード
21 ヒンジ
22 捻りバネ
30 シートクッション
40 室内トリム
41 膨出部
42 ボード受面

Claims (2)

  1. シートバックが室内トリムの左右の膨出部の間に配置され、
    かつ、シートバックを前方へ倒伏可能とした車両用シートにおいて、
    前記シートバック側端部に、シートバック背面と面一な展開位置から前方に回動可能に設けられるとともに、前記展開位置側にバネで付勢され、前記シートバックを倒伏したとき前記展開位置に回動してシートバック側面と前記膨出部より前方の室内トリムとの間に形成される空間を閉塞し、シートバックを起立させたとき前記膨出部に当接することにより前記バネに抗して前方へ回動させられて、シートバック側面と前記膨出部間に収納されるシートサイドボードを設けたことを特徴とする車両用シート。
  2. 請求項1に記載の車両用シートにおいて、
    前記室内トリムに、シートバックを倒伏したときに展開位置にある前記シートサイドボードの自由端部が当接して、該シートサイドボードを保持するボード受面を設けたことを特徴とする車両用シート。
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