JP3633598B2 - 電子放出素子の製造方法及び表示装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子を放出する電子放出素子の製造方法及び表示装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カーボンナノチューブと呼ばれるカーボンのグラファイトシートを巻いてできたチューブ構造をもつカーボンの結晶が発見された。カーボンナノチューブの直径はおおむね1nmから200nm程度(最近では0.5nmから300nm)まである。また、カーボンナノチューブは、一層のグラファイトシートからなる単層カーボンナノチューブと二層以上のグラファイトシートからなる多層カーボンナノチューブに大別される。このようにナノメータサイズのチューブ構造を有する結晶体は他に類をみず、特異な物質として位置付けられている。
【0003】
現在、カーボンナノチューブの製造方法としては、レーザアブレエーション法によるもの、アーク法によるもの、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によるものがある。レーザアブレーション法によるものでは、下記非特許文献1に記載されているように、ニッケル及びコバルトを含んだグラファイトターゲットを、1000℃以上に熱した反応チャンバー中でパルスレーザにより蒸発させる。これにより、チャンバー側壁にカーボンナノチューブが成長する。この方法は、パルスレーザの条件を変えることにより、カーボンナノチューブの長さなどのコントロールが可能なことや、作製されるカーボンナノチューブの純度が非常に高いことが特徴である。この方法では単層カーボンナノチューブを作製する場合に、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)などの触媒が必要である。
【0004】
【非特許文献1】
D. S. Bethune, C. H. Kiang, M. S. de Vries, G. Gorman, R. Savoy, J.Vazque, R. Beyers 、「Nature」、1993、 Vol 363、p.605
【0005】
アーク法によるものでは、下記非特許文献2に記載されているように、アルゴン100Torrの雰囲気中で炭素製の電極を用いて直流アーク放電を行う。これにより、負の電極の一部分に炭素微粒子とともにカーボンナノチューブが成長する。この方法は、上記レーザアブレーション法に比較して、作製されるカーボンナノチューブの量が非常に多いことが特徴である。この方法でも単層カーボンナノチューブを作製する場合に、Ni、Co、Feなどの触媒が必要である。
【0006】
【非特許文献2】
TW Ebbesen , PM Ajayan 、「Nature」、1992、Vol 358 、p.220
【0007】
CVD法によるものでは、下記非特許文献3に記載されているように、Ni(ニッケル)を触媒金属とし、Niコーティングされた基板、もしくはNi基板を使用するもので、先ず、反応容器にアンモニアを導入し、プラズマを発生させ、Niをアンモニアプラズマによって前処理する。次に、アセチレンなどのカーボンの原料ガスを導入する。このとき、アンモニアや水素、アルゴンなどのガスを混合しても構わない。このときの成膜温度は500〜550℃である。
【0008】
【非特許文献3】
O. M. Kuttel, O. Groening, C. Emmenegger, L. Schlapbach 、「Appl.Phys. Lett.」、1998、Vol 73、p.2113
【0009】
このような手法で製造されるカーボンナノチューブは、そのグラファイトシートの巻き方や直径に依存して半導体的な性質や金属的な性質を持つものとなる。これらの特異な性質から、カーボンナノチューブは、各種の電子デバイスや電気デバイスへの応用が期待されている。その最も顕著な例の一つとして、電界放出型の平面表示装置(ディスプレイ)であるFED(Field Emission Display)への応用がある。カーボンナノチューブを電子放出源としてカソード電極に取り付け、ある閾値以上の電界をかけると、これに伴う電界の集中によってナノチューブ表面のエネルギー障壁が低く薄くなり、トンネル効果によって電子が真空中に放出される。この現象は電界放出と呼ばれる。
【0010】
FEDでは、上記電界放出現象を利用して、電気的に選択(アドレッシング)されたエミッタから電界の集中によって電子を放出させるとともに、この電子をアノード基板側の蛍光体に衝突させて、蛍光体の励起・発光により画像を表示している。カーボンナノチューブは、高いアスペクト比を有し、先端の曲率半径も非常に小さいため、高い発光効率を実現するエミッタ材料として有望視されている。
【0011】
また、カーボンナノチューブは非常に細かい微粒子(粉末)であるため、カーボンナノチューブを用いてエミッタを形成する場合は、カーボンナノチューブを基板に固着する必要がある。一般に、カーボンナノチューブの固着には、銀ペーストやITO(Indium Tin Oxide)溶液などのように導電性の高いバインダ材料が用いられる。具体的には、バインダ材料にカーボンナノチューブを混入してペースト状(又はスラリー状、あるいはインク状)とし、これを印刷法、スプレー法、ダイコーター法等の手法で基板の表面に塗布することにより、バインダ材料の接着性を利用して基板上にカーボンナノチューブを固着する。
【0012】
ここで、カーボンナノチューブを含むペースト材料の塗布に関して、例えば下記特許文献1には、有機溶剤中に樹脂が溶解されているビヒクルとそのビヒクル中に分散された円筒状のグラファイトの層からなる複数のカーボンナノチューブとから導電性ペーストを構成すること、及び、この導電性ペーストを蛍光表示管の蛍光体層が形成されるアノード電極の形成に用いることが記載されている。また、特許文献1には、上記導電性ペーストを用いてパターンを形成した後、所定の温度で焼成することが記載されている。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−63726号公報(第2〜第3頁、第2図)
【0014】
また、カーボンナノチューブを用いてエミッタを形成する手法に関して、例えば下記特許文献2には、絶縁基板にカソード導体を被着する工程と、そのカソード導体にカーボンナノチューブ、フラーレン、ナノパーティクル、ナノカプセル及びカーボンナノホーンの中の少なくとも一つを含むペースト材料を塗布してカーボン層を形成する工程と、乾燥したカーボン層に粘着テープを貼付した後、その粘着テープを剥離させてエミッタを形成する工程と、エミッタから離間する位置にゲート電極を形成する工程とを有する電子放出源の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、上記乾燥したカーボン層を約500℃で約15分間程度、大気中で焼成して有機成分を除去することが記載されている。
【0015】
【特許文献2】
特開2001−35360号公報(第2頁、第4−5頁、第1−4図)
【0016】
また、下記特許文献3には、支持体上にカソード電極を形成する工程と、支持体及びカソード電極上に絶縁層を形成する工程と、絶縁層上に開口部を有するゲート電極を形成する工程と、ゲート電極に形成された開口部に連通する第2の開口部を絶縁層に形成する工程と、第2の開口部の底部に位置するカソード電極の部分の表面に、金属薄膜又は有機金属化合物薄膜の形成によって炭素薄膜選択成長領域を形成する工程と、炭素薄膜選択成長領域上に炭素薄膜を形成する工程とからなる冷陰極電界電子放出素子の製造方法が記載されている。
【0017】
【特許文献3】
特開2002−197965号公報(第2頁、第18頁、第5図)
【0018】
また、下記特許文献4には、支持体上にカソード電極を形成する工程と、カソード電極上を含む支持体上に絶縁層を形成する工程と、絶縁層上にゲート電極を形成する工程と、底部にカソード電極が露出した開口部を、少なくとも絶縁層に形成する工程と、導電性粒子及びバインダを含む導電性組成物からなる電子放出電極を、開口部の底部に露出したカソード電極上に形成する工程と、電子放出電極の表層部のバインダを除去することにより、電子放出電極の表面に導電性粒子を露出させる工程とを有する冷陰極電界電子放出素子の製造方法が記載されている。また、特許文献4には、導電性組成物層に含まれる水分を除去するための仮焼成を、大気中、400℃、30分間の条件で行うことと、リフトオフ後の電子放出電極の焼成を、乾燥大気中、400℃、30分間の条件で行うことが記載されている。
【0019】
【特許文献4】
特開2001−43790号公報(第2頁、第7−10頁、第1−9図)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来においては、カーボンナノチューブのような繊維状のエミッタ材料を用いて電子放出素子を製造する場合に、バインダ材料とカーボンナノチューブを混合した複合材料を用いて基板上にエミッタ層を形成するとともに、このエミッタ層を焼成して固体化することにより、基板上にカーボンナノチューブを固着している。その際、エミッタ層に含まれるバインダ材料を焼結するには基板全体に500℃程度の温度をかける必要があるものの、この温度でエミッタ層を焼成するとカーボンナノチューブ自体が焼失する恐れがある。また、カーボンナノチューブの焼失を回避すべく焼成時の温度を下げると、例えばバインダ材料に含まれる有機物などが残留し、この残留物に起因する出ガスによって電界放出特性が劣化したり、基板に対するエミッタ層の密着強度が不足するなどの不具合を招く恐れがある。
【0021】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、エミッタ層の焼成処理を最適化することにより、残留物に起因する出ガスの発生やエミッタ層の密着力不足などの不具合を確実に回避することが可能な電子放出素子の製造方法及び表示装置の製造方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電子放出素子の製造方法は、エミッタ材料とバインダ材料とを含むエミッタ層をカソード電極上に形成する工程と、エミッタ層を大気中で第1の焼成温度で焼成する工程と、エミッタ層を不活性ガス雰囲気中又は真空中で第1の焼成温度よりも高い第2の焼成温度で焼成する工程とを有するものである。
【0023】
また、本発明に係る表示装置の製造方法は、電子放出素子の製造工程として、エミッタ材料とバインダ材料とを含むエミッタ層をカソード電極上に形成する工程と、エミッタ層を大気中で第1の焼成温度で焼成する工程と、エミッタ層を不活性ガス雰囲気中又は真空中で第1の焼成温度よりも高い第2の焼成温度で焼成する工程とを有するものである。
【0024】
上記電子放出素子の製造方法及び表示装置の製造方法においては、カソード電極上にエミッタ層を形成した後、エミッタ層の焼成を2つのステップ、すなわち大気中で第1の焼成温度でエミッタ層を焼成するステップと、不活性ガス雰囲気中又は真空中で第1の焼成温度よりも高い第2の焼成温度でエミッタ層を焼成するステップに分けて行うことにより、バインダ材料に含まれる有機物などを燃焼・蒸発させたうえで、カーボンナノチューブなどのエミッタ材料を焼失させずにエミッタ層の密着強度を十分に高めることが可能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明が適用される表示装置のパネル構造の一例を示す断面図であり、図2はその分解斜視図である。図1及び図2においては、カソードパネル(カソード基板)1とアノードパネル(アノード基板)2とを所定の間隙を介して対向状態に配置するとともに、それらのパネル1,2を枠体3によって一体的に組み付けることにより、画像表示のための一つのパネル構体(表示パネル)が構成されている。
【0027】
カソードパネル1上には複数の電子放出素子が形成されている。これら複数の電子放出素子は、カソードパネル1の有効領域(実際に表示部分として機能する領域)に2次元マトリックス状に多数形成されている。各々の電子放出素子は、カソードパネル1のベースとなる絶縁性の支持基板(例えば、ガラス基板)4と、この支持基板4上に積層状態で順に形成されたカソード電極5、絶縁層6及びゲート電極7と、ゲート電極7及び絶縁層6に形成されたゲートホール8と、このゲートホール8の底部に形成された電子放出部9とによって構成されている。
【0028】
カソード電極5は、複数のカソードラインを形成するようにストライプ状に形成されている。ゲート電極7は、各々のカソードラインと交差(直交)する複数のゲートラインを形成するようにストライプ状に形成されている。ゲートホール8は、ゲート電極7に形成された第1の開口部8Aと、この第1の開口部8Aに連通する状態で絶縁層6に形成された第2の開口部8Bとから構成されている。電子放出部9は、主として繊維状のエミッタ材料とバインダ材料(マトリックス)とを含むエミッタ層10によって形成されている。エミッタ層10の表面には繊維状のエミッタ材料となる複数のカーボンナノチューブ11が配置されている。各々のカーボンナノチューブ11は、一端側がエミッタ層10の表面から垂直に突出し、他端側はエミッタ層10のバインダ材料中に埋め込まれた状態となっている。
【0029】
一方、アノードパネル2は、ベースとなる透明基板12と、この透明基板12上に形成された蛍光体層13及びブラックマトリックス14と、これら蛍光体層13及びブラックマトリックス14を覆う状態で透明基板12上に形成されたアノード電極15とを備えて構成されている。蛍光体層13は、赤色発光用の蛍光体層13Rと、緑色発光用の蛍光体層13Gと、青色発光用の蛍光体層13Bとから構成されている。ブラックマトリックス14は、各色発光用の蛍光体層13R,13G,13Bの間に形成されている。アノード電極15は、カソードパネル1の電子放出素子と対向するように、アノードパネル2の有効領域の全域に積層状態で形成されている。
【0030】
これらのカソードパネル1とアノードパネル2とは、それぞれの外周部(周縁部)で枠体3を介して接合されている。また、カソードパネル1の無効領域(有効領域の外側の領域で、実際に表示部分として機能しない領域)には真空排気用の貫通孔16が設けられている。貫通孔16には、真空排気後に封じ切られるチップ管17が接続されている。ただし、図1は表示装置の組み立て完了状態を示しているため、チップ管17は既に封じ切られた状態となっている。また、図1及び図2においては、各々のパネル1,2間のギャップ部分に介装される耐圧用の支持体(スペーサ)の表示を省略している。
【0031】
上記構成のパネル構造を有する表示装置においては、カソード電極5に相対的な負電圧がカソード電極制御回路18から印加され、ゲート電極7には相対的な正電圧がゲート電極制御回路19から印加され、アノード電極15にはゲート電極7よりも更に高い正電圧がアノード電極制御回路20から印加される。かかる表示装置において、実際に画像の表示を行う場合は、例えば、カソード電極5にカソード電極制御回路18から走査信号を入力し、ゲート電極7にゲート電極制御回路19からビデオ信号を入力する。あるいは又、カソード電極5にカソード電極制御回路18からビデオ信号を入力し、ゲート電極7にゲート電極制御回路19から走査信号を入力する。
【0032】
これにより、カソード電極5とゲート電極7との間に電圧が印加され、これによって電子放出部9の先鋭部(カーボンナノチューブ11の先端部)に電界が集中することにより、量子トンネル効果によって電子がエネルギー障壁を突き抜けて電子放出部9から真空中へと放出される。こうして放出された電子はアノード電極15に引き付けられてアノードパネル2側に移動し、透明基板12上の蛍光体層13(13R,13G,13B)に衝突する。その結果、蛍光体層13が電子の衝突により励起されて発光するため、この発光位置を画素単位で制御することにより、表示パネル上に所望の画像を表示することができる。
【0033】
続いて、本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造方法の具体例について、図3〜図5を用いて説明する。
【0034】
先ず、図3(A)に示すように、カソードパネル1のベースとなる支持基板4上にカソード電極形成用の導電材料を用いてカソード電極(導電層)5を形成する。このカソード電極5は、例えばスパッタリング法により形成される厚さ約0.2μmのクロム層によって形成される。
【0035】
次に、支持基板4の全面に例えばスパッタリング法によりSiCN膜を成膜することにより、図3(B)に示すように、カソード電極5を覆う状態でSiCN膜からなる厚さ約0.2μmの抵抗層21を形成する。この抵抗層21は、エミッタへの放電電流が大きくなった場合に、抵抗による電圧降下の増大によってエミッタに作用する実効電圧を減少させ、逆にエミッタへの放電電流が小さくなった場合はエミッタに作用する実効電圧を増加させることにより、放電電流を安定化させる役目を果たすものである。抵抗層21は必要に応じて形成される。
【0036】
次に、抵抗層21の上(抵抗層21を形成しない場合はカソード電極5の上)に、エミッタ材料となるカーボンナノチューブ11を配置するための処理を行う。具体的には、バインダ材料として熱分解性有機金属である有機スズ及び有機インジウムを用いるとともに、エミッタ材料としてカーボンナノチューブの粉末を用い、これらを以下の条件で揮発性溶液、例えば酢酸ブチル中に分散させた混合溶液を得る。その際、カーボンナノチューブの分散性を向上させるために超音波処理を行ってもよい。希釈剤は水系でも非水系でもかまわないが、どちらを使用するかによって分散剤も変わることを前提とする。また、他の添加剤を混ぜることも可能である。カーボンナノチューブは、例えば平均直径1nm、平均長さ1μmといった非常に細長いチューブ構造(繊維状)を有するものを用いる。
【0037】
(混合溶液の生成条件)
有機スズ及び有機インジウム:10〜50質量%
酢酸ブチル:30〜80質量%
分散剤(例えば、ドデチル硫酸ナトリウム):0.1〜5質量%
カーボンナノチューブ:0.001〜20質量%
【0038】
なお、エミッタ材料としては、カーボンナノチューブ以外にも、カーボンナノファイバを用いることが可能である。また、バインダ材料としては、上記熱分解性有機金属以外にも、例えば塩化スズ、塩化インジウムなどの金属塩、水ガラスなどの無機材料、銀ペーストなどの金属ペーストを用いることが可能である。
【0039】
続いて、上記の混合溶液をスプレー法等により支持基板4上に塗布することにより、図3(C)に示すように、カーボンナノチューブとバインダ材料とを含むエミッタ層(複合体層)10を形成する。このエミッタ層10は印刷法を用いて形成することも可能である。
【0040】
その後、エミッタ層10を所定の条件で焼成する。ここでは、図6に示すように、雰囲気条件と温度条件を異ならせた2つのステップでエミッタ層10を焼成する。先ず、第1のステップでは、大気中で第1の焼成温度T1でエミッタ層10を焼成する。次いで、第2のステップでは、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で第2の焼成温度T2でエミッタ層10を焼成する。この場合の温度条件として、第2の焼成温度T2は第1の焼成温度T1よりも高い(換言すると、第1の焼成温度T1は第2の焼成温度T2よりも低い)ものとする。なお、第2のステップでは、不活性ガス雰囲気に代えて、真空中などの非酸化性雰囲気中でエミッタ層10を焼成してもよい。
【0041】
これにより、第1のステップでは、大気中での焼成により、その焼成温度(第1の焼成温度T1)を適宜設定することにより、バインダ材料中の有機物などを燃焼して蒸発させることができる。また、第2のステップでは、不活性ガス雰囲気中での焼成により、その焼成温度(第2の焼成温度T2)を適宜設定することにより、カーボンナノチューブを焼失させることなく、支持基板4上でエミッタ層10を強固に密着させることができる。第1のステップと第2のステップの焼成処理条件の一例を以下に示す。
【0042】
(第1ステップの焼成処理条件)
雰囲気:大気中
焼成温度(T1):350℃
焼成時間:30分
(第2ステップの焼成処理条件)
雰囲気:窒素(N2)ガス雰囲気中
焼成温度(T2):500℃
焼成時間:30分
【0043】
ここで、バインダ材料として熱分解性有機金属を用いた場合は、第1の焼成温度T1を200℃以上、420℃(好ましくは380℃)未満に設定し、第2の焼成温度T2を420℃以上、580℃未満に設定すればよい。この場合、第1の焼成温度T1の下限温度は有機物の熱分解温度で規定される。
【0044】
また、バインダ材料として金属塩を用いた場合は、第1の焼成温度T1を250℃以上、420℃(好ましくは350℃)未満に設定し、第2の焼成温度T2を420℃以上、580℃未満に設定すればよい。この場合、第1の焼成温度T1の下限温度は、金属塩が脱離反応を起こす温度(脱離反応温度)で規定される。
【0045】
また、バインダ材料として水ガラスを用いた場合は、第1の焼成温度T1を250℃以上、440℃(好ましくは400℃)未満に設定し、第2の焼成温度T2を440℃以上、580℃未満に設定すればよい。この場合、第1の焼成温度T1の下限温度は無機物の熱分解温度で規定される。
【0046】
また、バインダ材料として金属ペーストを用いた場合は、第1の焼成温度T1を180℃以上、420℃未満に設定し、第2の焼成温度T2を420℃以上、580℃未満に設定すればよい。この場合、第1の焼成温度T1の下限温度は金属ペーストに含まれる有機物の熱分解温度で規定される。
【0047】
次いで、エミッタ層10をストライプ状に加工する。具体的には、レジスト材料(フォトレジスト)をスピンコート法によって塗布することにより、エミッタ層10を覆うレジスト膜を形成するとともに、このレジスト膜をフォトリソグラフィ技術によってパターニングすることにより、エッチングマスクとなるレジストパターンをエミッタ層10上に形成する。次に、レジストパターンで被覆されたエミッタ層10を除く部分を、例えば以下の条件に基づくウェットエッチングで除去することにより、図3(D)に示すように、支持基板4上でエミッタ層10をストライプ状に形成する。
【0048】
(ウェットエッチング条件)
エッチング液:塩酸(HCL)
エッチング時間:10秒〜30分
エッチング温度:10〜60℃
【0049】
このとき、所望の領域以外にカーボンナノチューブが存在する場合は、この不要なカーボンナノチューブを、酸素プラズマ又は酸化溶液を使用して以下の条件でエッチングにより除去する。
【0050】
(酸素プラズマエッチングの条件)
装置:RIE(reactive ion etching)装置
導入ガス:酸素を含むガス
プラズマ励起パワー:500W
バイアスパワー:0〜150W(DCでもRFでもよいが、RFが好ましい)
エッチング時間:10秒以上
【0051】
(酸化溶液エッチングの条件)
溶液:KMnO4
エッチング温度:20〜80℃
エッチング時間:10秒〜20分
【0052】
続いて、周知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング法(RIE法)により、抵抗層21及びカソード電極5をパターニングすることにより、図3(E)に示すように、支持基板4上でカソード電極5をストライプ状に形成する。この時点で支持基板4上に複数本のカソードラインが形成される。
【0053】
次に、図4(A)に示すように、支持基板4上において、カソード電極5、抵抗層21及びエミッタ層10の積層部を覆うように絶縁層6を形成し、さらにその絶縁層6の上に、図4(B)に示すように、ゲート電極形成用の導電材料を用いてゲート電極(導電層)7を形成する。具体的には、TEOS(テトラエトキシシラン)を原料ガスとして使用するCVD法により、支持基板4の全面に例えばSiO2からなる厚さ約1μmの絶縁層6を形成し、次いで、絶縁層6の上にクロムからなるゲート電極7をスパッタリング法によって形成する。
【0054】
次に、ゲート電極7の上に図示しないエッチングマスクを形成し、このエッチングマスクを用いてゲート電極7の所定部位をエッチングすることにより、図4(C)に示すように、絶縁層6上でゲート電極7をストライプ状に形成するとともに、このゲート電極7を貫通する第1の開口部8Aを形成する。このとき、ストライプ状のゲート電極7は、カソード電極5とほぼ直角に交差(直交)する状態で形成される。これにより、支持基板4上に上記カソードラインに直交する複数本のゲートラインが形成される。
【0055】
次に、ゲート電極7の第1の開口部8Aを通して絶縁層6を例えばRIE法でエッチングすることにより、図5(A)に示すように、エミッタ層10の表面を露出する状態で第2の開口部8Bを形成する。これにより、第1,第2の開口部8A,8Bからなるゲートホール8が得られる。このゲートホール8は、例えば直径20μmの円形に形成される。また、ゲートホール8は、1画素当たり複数個(例えば、数十個)形成される。
【0056】
次いで、エミッタ層10の上層部のバインダ材料(マトリックス)を除去することにより、図5(B)に示すように、ゲートホール8の底部でエミッタ層10の表面にカーボンナノチューブ11を露出させる。エミッタ層10の上層部でバインダ材料を除去する際の手法としては、ウェットエッチングやドライエッチングなどのエッチング法(ハーフエッチング)を好ましく用いることができる。一例として、ウェットエッチングを適用する場合の条件を以下に示す。
【0057】
(ウェットエッチング条件)
エッチング液:HCL 10%
エッチング温度:10〜60℃
エッチング時間:5〜60秒
【0058】
その後、図5(C)に示すように、エミッタ層10の表面で各々のカーボンナノチューブ11が一様にほぼ垂直に起立するように、カーボンナノチューブ11の配向処理を行う。具体的には、例えば支持基板4上で図示しない粘着テープをゲート電極7の上から貼り付けた後、粘着テープを引き剥がすことにより、支持基板4に対してカーボンナノチューブ11をほぼ垂直に配向させる。
【0059】
なお、上記実施形態においては、エミッタ層10の焼成を2つのステップで行うにあたって、第1のステップ(最初のステップ)においては大気中で第1の焼成温度T1でエミッタ層10を焼成し、第2のステップ(次のステップ)においては不活性ガス雰囲気中(又は真空中)で第2の焼成温度T2でエミッタ層10を焼成するとしたが、本発明はこれに限らず、例えばバインダ材料として金属ペーストなどを用いた場合は、図7に示すように、第1のステップにおいて不活性ガス雰囲気中(又は真空中)で第2の焼成温度T2でエミッタ層10を焼成し、これに続く第2のステップにおいて大気中で第1の焼成温度T1でエミッタ層10を焼成してもよい。さらに、上記第1のステップと第2のステップを含む3ステップ以上の多段ステップでエミッタ層10を焼成してもよい。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、電子放出素子の製造方法として、カソード電極上にエミッタ層を形成した後、それぞれ雰囲気条件と温度条件を変えた2つのステップでエミッタ層を焼成することにより、バインダ材料に含まれる有機物などを燃焼・蒸発させたうえで、カーボンナノチューブなどのエミッタ材料を焼失させずにエミッタ層の密着強度を十分に高めることができる。その結果、焼成時の残留物に起因する出ガスの発生やエミッタ層の密着力不足などを招くことなく、電子放出特性に優れた電子放出素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される表示装置のパネル構造の一例を示す断面図である。
【図2】本発明が適用される表示装置のパネル構造の一例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造方法の具体例を示す工程図(その1)である。
【図4】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造方法の具体例を示す工程図(その2)である。
【図5】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造方法の具体例を示す工程図(その3)である。
【図6】エミッタ層を焼成する際の温度プロファイルの一例を示す図である。
【図7】エミッタ層を焼成する際の温度プロファイルの他の例を示す図である。
【符号の説明】
1…カソードパネル、2…アノードパネル、4…支持基板、5…カソード電極6…絶縁層、7…ゲート電極、8…ゲートホール、9…電子放出部、10…エミッタ層、11…カーボンナノチューブ(エミッタ材料)
Claims (8)
- エミッタ材料とバインダ材料とを含むエミッタ層をカソード電極上に形成する工程と、
前記エミッタ層を大気中で第1の焼成温度で焼成する工程と、
前記エミッタ層を不活性ガス雰囲気中又は真空中で前記第1の焼成温度よりも高い第2の焼成温度で焼成する工程と
を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。 - 前記エミッタ材料として、カーボンナノチューブを用いる
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記バインダ材料として、熱分解性有機金属、金属塩、水ガラス又は金属ペーストを用いる
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記バインダ材料として前記熱分解性有機金属を用いた場合に、前記第1の焼成温度を200℃以上、420℃未満に設定し、前記第2の焼成温度を420℃以上、580℃未満に設定する
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記バインダ材料として前記金属塩を用いた場合に、前記第1の焼成温度を250℃以上、420℃未満に設定し、前記第2の焼成温度を420℃以上、580℃未満に設定する
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記バインダ材料として前記水ガラスを用いた場合に、前記第1の焼成温度を250℃以上、440℃未満に設定し、前記第2の焼成温度を440℃以上、580℃未満に設定する
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記バインダ材料として前記金属ペーストを用いた場合に、前記第1の焼成温度を180℃以上、420℃未満に設定し、前記第2の焼成温度を420℃以上、580℃未満に設定する
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 電子放出素子の製造工程として、
エミッタ材料とバインダ材料とを含むエミッタ層をカソード電極上に形成する工程と、
前記エミッタ層を大気中で第1の焼成温度で焼成する工程と、
前記エミッタ層を不活性ガス雰囲気中又は真空中で前記第1の焼成温度よりも高い第2の焼成温度で焼成する工程と
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
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