JP3617899B2 - イオン交換体ケミカルフィルターの試験方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケミカルフィルターの性能試験方法に関し、更に詳しくは、例えば精密電子機器工場あるいは医薬品製造工場のクリーンルームなどで使用する空気清浄器用のケミカルフィルターの性能試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に大気は窒素や酸素以外に、イオン性、非イオン性の様々なガス成分を微量に含んでいる。イオン性ガスと言えば、例えば建材や人体から発生したアルカリ性のアンモニアガスなどがあり、酸性ガスとしては塩化水素ガスなどがある。非イオン性ガスと言えば例えばアルコールなどの中性ガスがある。精密電子機器あるいは医薬品などの重要製品の場合、製造中にはこうした希薄成分が周囲に存在していること自体を嫌うことが少なくない。そのためそうした生産は空気清浄器を設けたクリーンルーム内で行うことが多い。
【0003】
クリーンルーム工場などに設置する空気清浄器では空気濾過にケミカルフィルターという特殊なフィルターを用いることがある。
ケミカルフィルターでは多くの場合、活性炭粒子や活性炭素繊維を使用し、またそれらに酸やアルカリを添着している例もある。活性炭以外の担体に酸化物や金属を担持させたり、無数のスルホン酸基などを置換させたイオン交換体を使用している場合もある。イオン交換体を用いたケミカルフィルターは濃度がppbレベルにある特殊成分の除去率が高いばかりでなく、いったん吸着した被吸着物の再放出がないので、近年特に半導体関連業界が使用をはじめている。将来的にはイオン交換体ケミカルフィルターで除去できない炭化水素なども専用のケミカルフィルターで除去することが検討されている。
【0004】
こうした用途で使用する空気清浄用のケミカルフィルターは常に高い性能レベルを維持していなければならない。ケミカルフィルターの性能試験は、市販の標準ガスを用い、所定の試験装置の中でそのケミカルフィルターが破過するまで継続的に吸収させて、その破過までの時間を測定するというのが一般である。市販の標準ガスというのは、試験対象のケミカルフィルターが除去しようとする、特定のガス成分などを窒素ガスのような不活性ガス中に所定濃度に希釈混合したもので、圧力容器に充填してある。最近はパーミエータという装置を使用することもある。これはガス発生装置で、試験対象のケミカルフィルターが除去しようとしている、特定のガス成分などを空気やその他のガスに添加できるようになっている。パーミエータによれば試験用の標準ガスをいちおう調製することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、市販の標準ガスは濃度についてある程度調整できるが、その範囲は濃度10ppm〜100%の範囲である。ケミカルフィルターが大気中から除去しようとする成分の大気中でのもともとの濃度は通常、極めて希薄である。市販の標準ガスをある程度希釈して濃度を下げ、そのような気体について試験用のケミカルフィルター中を通過させるとしても、十分な性能試験を行うには市販の標準ガスではなお濃度が高過ぎる。目的とする低濃度の容器入りの標準ガスを調製することは技術的には可能である。しかしながら試験対象のケミカルフィルターが破過するまでの試験時間は非常に長くなる。長期間連続的に試験を行っている間中、大量の容器入りの標準ガスが必要になり、コストも手間もかかってしまう結果になる。
【0006】
さらに、容器入り標準ガスは湿度ゼロ、つまり乾燥状態である。ケミカルフィルターの場合、その除去率や寿命などの除去性能は設置環境の温度や湿度に大きな影響を受ける。乾燥状態の試験では実使用での条件と異なり、そこからは有効なデータが得にくい。このように、市販の標準ガスを使用する従来の性能試験方法はケミカルフィルターの実使用条件下で十分な精度の性能評価が非常に困難であるという問題点があった。
【0007】
パーミエータという装置を使用する場合でも問題点の本質は異ならない。特定ガスを空気に添加するとしても、添加後の特定ガス成分の最終濃度はppbまたはpptレベルにならなければならない。大気はもともとから様々な汚染成分を含んでおり、添加前から既に特定ガス成分の濃度はその最終濃度以上になっているという場合が多い。アンモニアを例に採れば、例えばクリーンルーム内であってもそれは数十ppbから数百ppbの濃度で存在している。しかもこの値は一定でなく常に変動している。したがってパーミエータという装置を使用しても、事実上、低濃度での正確な試験はできないという問題点があった。加えて、簡便に調温調湿する適当な方法もなかった。
【0008】
ケミカルフィルターに関する性能評価上の難しさはアンモニア以外にも、例えば塩化水素、アルコールなどでも共通する。ケミカルフィルターが大気中から除去しようとする汚染成分の大気中での濃度は極めて希薄である。そのため、ケミカルフィルターの性能を正確に把握することは極めて難しい。結局、従来は次善策としていったんppmオーダーでケミカルフィルターの性能を評価し、この結果からppbオーダーの性能を推定するという方法を採用してきていた。
【0009】
高濃度状態での試験値から低濃度状態の性能を推定することには無理がある。高濃度状態で得た試験値に基づいてケミカルフィルターを設計して製作すると、しばしば保証値ぎりぎりの性能しかないという指摘を受けたり、反対に過剰設計ではないかという指摘を受けかねない。こうしたことから、非常に希薄なガス成分を除去対象とするケミカルフィルターについて、簡便にその性能を試験できるような方法を早期に確立することが急務になってきていた。
したがって本発明は、非常に希薄なガス成分を除去対象とするケミカルフィルターについて、簡便にかつ正確にその性能を試験できる方法について提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明の目的は下記の構成によって達成される。
(1) 除去対象成分を含有したままの大気をイオン交換体浄化フィルターでいったん浄化し、その浄化空気に該除去対象成分を改めて添加して20〜105ppbの除去対象成分の標準ガスを調製し、次いでその標準ガスを試験対象のイオン交換体ケミカルフィルター中に導通し、導通前後における標準ガス中の除去対象成分の濃度変化を測定することを特徴とするイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
【0011】
(2) イオン交換体ケミカルフィルターがグラフト重合法によって重合したイオン交換体を素材とするケミカルフィルターであることを特徴とする上記(1)記載のイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
(3) イオン交換体浄化フィルターがグラフト重合法によって重合したイオン交換体を素材とするケミカルフィルターであることを特徴とする上記(2)記載のイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
(4) イオン交換体浄化フィルターの総イオン交換容量がイオン交換体ケミカルフィルターの総イオン交換容量の10倍以上であることを特徴とする上記(3)記載のイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
(5) 前記標準ガスの調製及び除去対象成分に関する濃度変化測定の内の少なくとも一方は恒温・恒湿室内で行うことを特徴とする上記(1)に記載のイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
(6) 前記標準ガスの調製及び除去対象成分に関する濃度測定の両方を同一の恒温・恒湿室内で行うことを特徴とする上記(1)に記載のイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
(7) 除去対象成分を含有したままの大気をイオン交換体浄化フィルターでいったん浄化し、その浄化空気に該除去対象成分を改めて添加し20〜105ppbの除去対象成分の標準ガスとすることを特徴とするイオン交換体ケミカルフィルター試験用標準ガスの調製方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のケミカルフィルターの試験方法では、除去対象成分を含有したままの大気を浄化フィルターでいったん浄化する。一般に大気は、窒素や酸素以外に、微量ではあるがイオン性ガスや非イオン性ガスを含んでいる。大気中のイオン性ガス成分としては、アンモニアガス、トリメチルアミンガスなどの塩基性ガスを挙げることができる。また、塩化水素ガス、フッ化水素ガス、硫化水素ガス、窒素酸化物、硫黄酸化物、炭酸ガス、更に各種の有機酸ガスなど、このような酸性ガスも挙げることができる。非イオン性ガスとしてはアルコールなどが代表する多種類の炭化水素ガスなどを挙げることができる。アンモニアガスを例に採れば、大気中には通常、数十〜数百ppbのオーダーで存在する。アンモンニアを始めとするこうした微量成分は、しばしば空気中の水分と結びつき、精密電子機器あるいは医薬品などに対し、その製造過程で環境中の汚染物質として不測の被害を与えることがある。
【0013】
本発明の方法では、ケミカルフィルターの性能試験にあたり、このような大気を浄化フィルターでいったん浄化する。浄化フィルターは、性能試験を行おうとするケミカルフィルターが除去対象としている成分と同じ大気中の成分について、5ppb以下、好ましくは1ppb以下になるまで浄化可能な性能を有していることが望ましい。特に、イオン性成分を除去対象とするケミカルフィルターについてその性能試験を行おうとする場合、浄化フィルターの総イオン交換容量は試験対象のケミカルフィルターの10倍以上、好ましくは50倍以上が望ましい。
【0014】
このような浄化フィルターには、試験対象のケミカルフィルターと同じようにケミカルフィルターを使用するとよい。一般にケミカルフィルターとしては、活性炭粒子や活性炭素繊維、またそれらに酸やアルカリを添着したフィルターなどがある。活性炭粒子や活性炭素繊維以外の担体に酸化物や金属を担持させたフィルターもあり、有機物吸着樹脂フィルターもあり、イオン交換体を用いたケミカルフィルターもある。
【0015】
本発明では原則としてこのようなフィルターについていずれも使用することができる。例えば、試験対象のフィルターが除去対象とする汚染成分がイオン性ガスの場合、浄化フィルターには酸やアルカリを添着したフィルター又はイオン交換体フィルターなどを用いる。試験対象フィルターが除去対象とする汚染成分が非イオン性の炭化水素等の場合、最も一般的には活性炭フィルターを用いる。好ましくは、活性炭素繊維、粉末活性炭、その他の有機物吸着樹脂フィルターを用いるとよい。ただし、一般に汚染成分の除去性能はその素材によって異なる。例えばアンモニアを例に採れば、酸を活性炭粒子に添着したフィルターの場合、10ppb以下の濃度を安定的に維持することは困難である。これに対しイオン交換体ケミカルフィルターの場合、10ppb以下の濃度に抑えることが可能である。
【0016】
ケミカルフィルターに使用するイオン交換体は、通常、イオン交換基を有する枝ポリマーを幹ポリマーにグラフト重合してなる。グラフト重合する幹ポリマーとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン等を挙げることができる。幹ポリマーと重合する枝ポリマーとしては例えば、ポリメタクリル酸グリシジル(GMA)、ポリアクリル酸、ポリスチレン等を挙げることができる。ポリアクリル酸はイオン交換基を有するモノマーの重合体である。GMAやスチレンはグラフト重合の後でイオン交換基を導入できるモノマーである。特に枝ポリマーとしては、グリシジル基のように例えば、亜硫酸塩と反応してイオン交換基であるスルホン酸を形成するような特定の官能基を有したものが好ましい。
【0017】
枝ポリマーが有するイオン交換基としては、スルホン基、カルボキシル基などのカチオン交換基を挙げることができ、四級アンモニウム基、三級アミノ基などのアニオン交換基などを挙げることができる。こうした中で、アンモニアが代表する塩基性ガスに対するイオン交換体ケミカルフィルターとしては、スルホン基を有する強酸性カチオン交換体がよく、その他、カルボキシル基を有する弱酸性カチオン交換体なども選択できる。アンモニアと違って酸性ガス除去用のイオン交換体ケミカルフィルターとしては、四級アンモニウム基を有する強塩基性アニオン交換体、三級あるいは二級アミノ基を有する弱塩基性アニオン交換体、アルカリ金属を担体に担持させた交換体などを挙げることができる。
【0018】
これらのフィルターは空気中の濃度が極めて希薄な汚染物質の除去能力に優れている。そのようなフィルター中に大気を流通させれば、例えばアンモニアの場合、その濃度をpptレベルの希薄な状態に抑えた空気を安定的に得ることができる。したがって、アンモニアを高濃度に含有している気体を濾過するような特殊な場合を除き、本発明の方法で浄化フィルターにこのようなグラフト重合体フィルターを用いると、厳密に数ppbレベルで希薄にアンモニアガスを含有する標準ガスを高い精度で容易に調製できて好ましい。試験用フィルターがグラフト重合法によって重合したイオン交換体を素材にしている場合は、特に浄化フィルター側でもこうしたグラフト重合法によって重合したイオン交換体を素材したものを使用すると、精度の高い試験評価を得ることができて好ましい。
【0019】
ケミカルフィルターは形状にもさまざな種類がある。例えば単繊維、単繊維の集合体、それらの加工品である織布・不織布やさらにプリーツ状あるいはその他の形状の成形加工品、粉末・粒子、それらの加工品(例えば、樹脂等)、ビーズ、膜、中空糸膜それらの加工品(例えば、中空糸モジュールなど)、発泡体などの空隙性材料やその加工品(例えば、スポンジ等)などがある。浄化フィルターとしてどれを選ぶか、例えばその形状、通ガス速度、寿命などの特徴は、試験対象のケミカルフィルターの種類、その設置箇所、使用条件、要求性能などを考慮して適宜選択するとよい。浄化フィルターとしては通常、試験対象のケミカルフィルターより濾過面積が広く、フィルター素材の量も多いものを選ぶ。また、通ガス速度はより小さく、濾過寿命はより長いものを選ぶ。このようにすると交換頻度が少なくなり連続試験運転をより長く継続できるようになってよい。
【0020】
また、こうしたフィルターは一つではなく、同種類のフィルターを多数、あるいは素材、形状などが異種類のフィルターを多数組み合わせ、全体でひとつの浄化フィルターを形成してもよい。例えば塩基性ガス除去用のケミカルフィルターと酸性ガス除去用のケミカルフィルターを組み合わせてもよく、それらと非イオン性ガス除去用のケミカルフィルターとを組み合わせてもよい。
【0021】
本発明は、低濃度の除去対象成分の標準ガスの調製、及び汚染成分に関する濃度測定、この内の少なくともどちらかは空気清浄器を設けるようなクリーンルームと同じ条件の恒温・恒湿室内で行うとよい。好ましくは、この両方を空気清浄器を設けるようなクリーンルームと同一の恒温・恒湿室内で行うとよい。ケミカルフィルターの性能は通常、環境温度・湿度により変化する。例えば強酸性カチオン交換不織布ケミカルフィルターを用いたアンモニアの除去試験の結果によると、環境湿度20%の場合にケミカルフィルターが示すアンモニア吸着容量の値は、環境湿度55%の場合に示すアンモニア吸着容量の値の50%以下、つまり半分以下の値にまで低下してしまうという現象が認められている。
【0022】
本発明のケミカルフィルターの試験方法は、例えば次のような装置を用いて行うとよい。図1は、本発明の試験方法を実施するためのアンモニアガス除去用のケミカルフィルター試験装置の一例を示す概略図である。空気清浄器を設けるクリーンルームと同じ条件の恒温・恒湿室内に設けてある。
【0023】
図1に示すように、異径の空気採り入れ管1の大口側に浄化フィルター差し込み口2を設け、小口側は二又管継手3を介して気体混合器4の入路に結合している。気体混合器4は出路側が風洞5の取り入れ口6につながっている。この風洞5は、一部を切欠いて図示したように、整流格子7をその入路側にはめ込み、中央部には風路を直角に仕切る方向に試験用フィルターの差し込み口8を設けてある。試験用フィルターの差し込み口8の前後には、風洞5内を流通する濾過前の一部の気体を取り出す濾過前取り出し口9と、濾過後の一部の気体を取り出す濾過後取り出し口10とを設けてある。
【0024】
風洞5の出路側は分岐管11に通じ、その分岐管11はその流路に流量計12を有し、二つの出路にそれぞれ仕切り弁13,14を有している。二つある出路の内の一方の仕切り弁13は開口し、そこは排気ファン15につながっている。なお、気体混合器4の入路に設けてある二又管継手3の取り入れ口の一つは、標準アンモニア圧力タンク16と連結している。
【0025】
ケミカルフィルターの性能試験は例えば次のようして行うとよい。試験用フィルターの差し込み口8に試験対象のアンモニアガス除去用のケミカルフィルターを挿入する。試験対象のケミカルフィルターは、この差し込み口8に出し入れ自在である限り、原則として形状、種類を問わない。次いで、試験用フィルターに対応するアンモニア用浄化フィルターを浄化フィルター差し込み口2に挿入する。
【0026】
流量計14を見ながら排気ファン15を駆動し、天然のアンモニアガス成分を含有したままの大気をケミカルフィルター試験装置内に引き入れる。
浄化フィルター差し込み口2に設けた浄化フィルターでいったん浄化し、アンモニア濃度を1ppb以下に下げる。アンモニア濃度が下がって気体混合器4に流れ込んでいく浄化空気に改めて標準アンモニア圧力タンク16からアンモニアガスを送り込み、アンモニア濃度が95ppb〜105ppbなどの一定濃度になるように気体混合器4内で混合する。
【0027】
整流格子7を通過させて流れを乱流から層流に整え、風洞5の試験用フィルターの差し込み口8に設けたアンモニアガス除去用のケミカルフィルターを用い、流通する空気を浄化する。濾過前取り出し口9と濾過後取り出し口10から通過する空気の一部を取り出し、アンモニア濃度差を求め、その濾過性能を確認する。排気ファン15を連続的に駆動し、試験用フィルターのアンモニア除去率が90%を下回った時点をもって「破過」と判断、実験開始から破過までに要した時間を確認する。
本実施の形態は、空気清浄器を設けるクリーンルームと同じ条件の恒温・恒湿室内で性能試験をしているから、精度の高い性能評価実験を行うことができる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。〔実施例〕
温度22.5℃、湿度55%を維持する恒温・恒湿室のクリーンルームに、図1に示したような試験装置を設置し、塩基性ガス除去用ケミカルフィルターの性能試験を実施した。試験用ケミカルフィルターとしては、開口面10000mm2 、奥行き70mm、放射線グラフト重合で合成した強酸性カチオン交換繊維から形成した不織布ミニプリーツフィルターを用いた。浄化フィルターとしては、開口面70225mm2 、奥行き70mm、試験用ケミカルフィルターと同じ素材で形成した不織布プリーツフィルターを用いた。なお浄化フィルターには、そのイオン交換容量が試験用ケミカルフィルターの50倍のものを選んだ。
【0029】
排気ファン15を駆動し、浄化フィルターを通過した空気を300リットル/分の割合で風洞5内に引き入れ、流通させた。標準アンモニアボンベ16からアンモニアガスを混合器4に導入し、風洞5内を流通する空気を20ppbの濃度にアンモニア汚染した。
濾過前取り出し口9と濾過後取り出し口10を通過する空気の一部を取り出してその中のアンモニア濃度を測定し、試験用ケミカルフィルターの除去率が90%を下回って破過した時点を確認した。実験開始から連続的に実験を続け、3.5ケ月間を要した。この間、濾過前取り出し口9から採取する空気中のアンモニア濃度は20±3ppbと極めて安定していた。
【0030】
濾過前取り出し口9と濾過後取り出し口10を通過する空気中のアンモニア濃度の差と通ガス量から交換容量利用率を計算した。値は76%だった。破過した試験用ケミカルフィルターを解体し、湿式で滴定分析を行い、それを基に交換容量利用率を求めた。74%だった。76%と74%とは数値が極めて近く、このことから本実施例によれば、ケミカルフィルターについて正確な性能評価を行うことができることが分かった。
【0031】
〔比較例〕
浄化フィルターを取り外した他は実施例と同様に行った。
風洞5を流通して試験用ケミカルフィルターに至るまでの空気中のアンモニア濃度を目標値20ppbに固定的に設定しようとしたが、その濃度を安定させることができず、一定条件下での性能評価を行うことはできなかった。
【0032】
【発明の効果】
本発明は、大気をいったん浄化し、その浄化空気に特定の汚染ガス成分を添加しているから、非常に希薄なガス成分を除去対象とするイオン交換体ケミカルフィルターについて、簡便にかつ正確にその性能を試験できる方法を提供できる。このため、次世代向け半導体製造のための超清浄空間を安定して維持でき、製品の歩留りや品質向上に大きく寄与することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の試験方法を実施するアンモニアガス除去用のケミカルフィルター試験装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 空気採り入れ管
2 浄化フィルター差し込み口
3 二又管継手
4 気体混合器
5 風洞
6 風洞の取り入れ口
7 整流格子
8 試験用フィルター差し込み口
9 濾過前取り出し口
10 濾過後取り出し口
11 分岐管
12 流量計
13 仕切り弁
14 仕切り弁
15 排気ファン
16 標準アンモニア圧力タンク
Claims (7)
- 除去対象成分を含有したままの大気をイオン交換体浄化フィルターでいったん浄化し、その浄化空気に該除去対象成分を改めて添加して20〜105ppbの除去対象成分の標準ガスを調製し、次いでその標準ガスを試験対象のイオン交換体ケミカルフィルター中に導通し、導通前後における標準ガス中の除去対象成分の濃度変化を測定することを特徴とするイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
- イオン交換体ケミカルフィルターがグラフト重合法によって重合したイオン交換体を素材とするケミカルフィルターであることを特徴とする請求項1記載のイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
- イオン交換体浄化フィルターがグラフト重合法によって重合したイオン交換体を素材とするケミカルフィルターであることを特徴とする請求項2記載のイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
- イオン交換体浄化フィルターの総イオン交換容量がイオン交換体ケミカルフィルターの総イオン交換容量の10倍以上であることを特徴とする請求項3記載のイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
- 前記標準ガスの調製及び除去対象成分に関する濃度変化測定の内の少なくとも一方は恒温・恒湿室内で行うことを特徴とする請求項1に記載のイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
- 前記標準ガスの調製及び除去対象成分に関する濃度測定の両方を同一の恒温・恒湿室内で行うことを特徴とする請求項1に記載のイオン交換体ケミカルフィルターの試験方法。
- 除去対象成分を含有したままの大気をイオン交換体浄化フィルターでいったん浄化し、その浄化空気に該除去対象成分を改めて添加し20〜105ppbの除去対象成分の標準ガスとすることを特徴とするイオン交換体ケミカルフィルター試験用標準ガスの調製方法。
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