JP3605523B2 - 現像ローラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ等の現像装置に使用される現像ローラに係り、特には、非磁性一成分トナー現像方式の現像装置に用いて特に好適な現像ローラに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、レーザービームプリンタ等の現像装置については、磁性の二成分トナーを用いた現像方式が主流であった。しかしながら、近年ますます関心が高まっている地球環境の保全と資源の節約という観点から、トナーの回収が不要で廃トナーが発生せず、トナーカートリッジ内のトナーをすべて使用し尽くすことができる、非磁性一成分トナーを用いた現像方式が注目されるようになり、その実用化が進んでいる。
【0003】
この非磁性一成分トナー現像方式の現像装置は、基本的に、感光体ドラムと、感光体ドラムに静電潜像を形成するための静電潜像形成手段と、感光体ドラムに直接接するかあるいは近接して回転する現像ローラと、現像ローラに非磁性一成分トナーを供給する、ウレタンスポンジ製の供給ローラ等からなるトナー供給部材と、現像ローラ上に供給されたトナーを均一な厚さに規制する、ウレタンゴム、ウレタン樹脂製のブレード等からなるトナー規制部材とを備える。一般に、まず、静電潜像手段が所定の画像情報に基づいて感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する一方、トナー供給部材が現像ローラの表面にトナーを供給し、現像ローラ上に供給されたトナーをトナー規制部材が均一な厚さに規制し、現像ローラの表面に均一なトナーの薄層が形成される。表面に均一な厚さのトナー薄層が形成された現像ローラが、感光体ドラムとのニップ部あるいは近接部において、感光体ドラム上に形成された静電潜像に順次トナーを付着させる。このようにトナー現像が行われる。
【0004】
このような非磁性一成分トナー現像方式の現像装置で使用される現像ローラは、摩擦接触によって正または負に帯電したトナーを、静電的にその表面に付着させるものであり、導電性のローラにより構成されている。このような導電性ローラは、通常、ローラ本体を構成する導電性芯材(芯金)の円柱面に導電性材料からなる導電層が設けられた構造を有する。この導電層を形成する導電性材料として、従来から、シリコーンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーン変性エチレンプロピレンゴム等のゴム材料をベースとし、これに導電性を付与するためにカーボンブラックや金属粉等の導電物質を配合した導電性ゴム材料が用いられている。
【0005】
しかし、シリコーンゴムとシリコーン変性エチレンプロピレンゴムは低分子のシロキサンをゴム中に含有し、これが表面に移行するので、現像ローラと接触する感光体ドラムの表面がこの低分子のシロキサンによって汚染されるという問題がある。また、アクリロニトリルブタジエンゴムは、加硫剤に硫黄や硫黄誘導体を用いるので、やはり感光体ドラムの表面がこれら加硫剤により汚染される。他方、ウレタンゴムは、感光体ドラムを汚染することはほとんどないが、その体積抵抗値が環境の変化により大きく変化する(すなわち、抵抗値環境依存性が大きい)ので、実用性に欠けるという問題がある。
【0006】
また、一般にゴム単層ローラは表面の動摩擦係数が大きく、トナー薄層化ブレード、トナー供給ローラ等の接触部材との摩擦の関係から、現像ローラを回転させるために大きなトルクを必要とし、より強力なモーターが必要になり、装置の小型化、低電力化、低コスト化の障害となっていた。
【0007】
そこで、従来のゴムベースの導電層の問題点、特に感光体ドラム表面の汚染問題と現像ローラの駆動トルクの問題を解決するために、ゴムベースの導電層の表面に被覆層を設けることが行われている。例えば、特許第2504978号公報は、ウレタン樹脂と官能基を有する含フッ素化合物との反応生成物(含フッ素ポリウレタン)からなる被覆層をゴムベースの導電層表面に形成することを開示している。この被覆層は、ゴムベースの導電層中の上記移行性汚染物質をそこで阻止し得るので、当該移行性汚染物質による感光体ドラム表面の汚染を防止し得る。
【0008】
しかしながら、従来の被覆層を備えた現像ローラにおいても、トナーが現像ローラ表面と薄層化ブレードあるいは感光ドラムとの間で摺擦されるため、トナーがダメージを受け、現像ローラ表面に固着するいわゆるフィルミングの現象が現れ、プリント画像に悪影響を与える。フィルミングは、感光ドラム表面にも現れ、その場合にはフィルミング部がスジ状のすりぬけとなって画像に現れる。また、トナーにストレスが強くかかるトナーシール部においてフィルミングが顕著であり、その場合には、トナーのシール性にも影響を与え、最悪の場合、トナー漏れ等の問題も発生する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、従来のポリウレタン被覆層の利点を保持したまま耐フィルミング性に優れた現像ローラを提供することを主要課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は、現像ローラ表面層の動摩擦係数と現像ローラの駆動トルク、フィルミングの関係を調査したところ、現像ローラ表面層がある一定の動摩擦係数においてフィルミングの発生を抑制し、しかも現像ローラの駆動トルクを小さく抑える領域があることを見いだした。本発明者が鋭意研究したところ、導電性ゴム層を覆うポリウレタン被覆層について、ポリウレタンにシロキサン成分を導入することが有効であるが、このシロキサン成分を単にポリウレタン分子鎖に側鎖として結合するのではなく、ポリウレタン分子鎖内部に導入し、ポリウレタン分子をいわば橋架けるようにシロキサン分子を導入することがよいことがわかった。
【0011】
すなわち、本発明によれば、芯金と、該芯金の周面上に設けられ、導電性ゴム材料から形成された導電層と、該導電層の周面上に設けられた被覆層とを備え、該被覆層は、ポリオール、イソシアネート化合物および両末端反応性シリコーン油を含有する反応混合物をその反応条件に供して生成した反応生成物を包含し、紙に対して0.9以上、1.2未満の動摩擦係数を示すことを特徴とする現像ローラが提供される。
【0012】
上記反応混合物は、好ましくは、揮発性シリコーン油をさらに含有し、その場合、被覆層は、全体的に多孔質体により構成され得る。
【0014】
また、本発明において、ポリオールはフッ素含有ポリオールであることが特に好ましい。
【0015】
本発明において、両末端反応性シリコーンは、一般式(1):
【化2】
【0016】
(ここで、各Rは、−C3 H6 OC2 H4 OHを表し、nは、約20以下の整数を表す)で示されるものであることが最も好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図1を参照して詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明の一態様に係る現像ローラの断面を概略的に示す断面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の現像ローラ10は、基本的に、円柱状の導電性ローラ本体(芯金)12、この芯金12の円柱面を実質的に全面的に覆って設けられた導電層14、および導電層14の外周面を実質的に全体的に覆って設けられた被覆層16を備える。
【0020】
本発明において、芯金12は、従来の芯金と特に異なるものではなく、鉄等の金属で作製することができる。
【0021】
本発明において、導電層14は、合成ゴム材料をベースとし、これにカーボンブラック、金属粉末等の導電性付与剤を配合した導電性のゴム材料により形成される。ベースの合成ゴム材料としては、シリコーンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーン変性エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴム材料を用いることができる。また、導電性付与剤は、導電層14が102〜1010Ω・cmの体積抵抗値を示すような量的割合で合成ゴム材料に配合することが好ましい。さらに、導電層14は、20゜〜60゜のJIS A硬度を有することが好ましい。
【0022】
また、現像ローラ10は感光体ドラムやトナー規制部材とニップ部を形成して接触するので、下地の導電層14の圧縮歪が大きいと、ニップ跡が現像ローラに残ってしまい、画像に悪影響を与える。したがって、導電層14を構成する材料は、25%圧縮負荷の下に70℃で22時間置かれた後に、5%以下の圧縮永久歪を示すことが最も好ましいが、実用のレベルとして当該圧縮永久歪が10%以下であれば支障なく使用することができる。
【0023】
本発明において、現像ローラ全体としての硬度、体積抵抗値、圧縮永久歪等の物性は、導電性層14により実質的に決定される。
【0024】
さて、本発明の被覆層16は、両末端反応性シリコーン油で変性されたポリウレタンを包含し、かつ14.8gの荷重下、50mm/分の紙送り速度において、紙に対して1を超え、1.2未満の動摩擦係数を示すものである。本発明の被覆層16は、このようなシリコーン変性ポリウレタンで形成されるとともに所定の動摩擦係数を示すことによって、従来のポリウレタン被覆層の利点(移行性物質による感光ドラムの汚染防止)を保持しつつ、フィルミング現象の発生を抑制し得る。さらに、本発明の現像ローラは、従来問題となっていたネガゴーストの発生も抑制し得る。
【0025】
本発明において、被覆層16の動摩擦係数の測定は、図2に示すように、現像ローラ21にコピー用紙(富士ゼロックスL紙)22をわたし、その自由下端に14.8gの錘23を懸垂し、他端に荷重変換器24を接続し、荷重変換器23を水平方向に50mm/分の速度で移動させることによって行う。測定は、温度24℃、相対湿度69%の室内で行う。
【0026】
本発明の被覆層16は、ポリオール、イソシアネート化合物および両末端反応性シリコーン油を含有する反応混合物をそれら3成分の反応条件に供することによって形成される。
【0027】
本発明に用いられるポリオールは、常温(20〜30℃)で液状のものであることが好ましく、各種のポリオールが使用できる。被覆層16は、帯電性を有することが必要であり、ポリオールとしては、イソシアネート化合物と反応して摩擦帯電列が大きい被覆層(ポリウレタン)を生成し得るものが好ましい。そのようなポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、それらの共重合体等のポリアルキレングリコールのようなポリエーテルポリオールを好ましく例示することができる。
【0028】
しかしながら、本発明において使用されるポリオールとしては、フッ素含有ポリオールが特に好ましい。フッ素含有ポリオールは、イソシアネート化合物と反応してより大きい摩擦帯電列を有する被覆層を生成するばかりでなく、生成する被覆層の抵抗値環境依存性を減少させる。フッ素含有ポリオールのフッ素含有率が高いほど摩擦帯電列が負に大きくなる。そのようなフッ素含有ポリオールとしては、三フッ化エチレンモノマーを主原料とする共重合体(三フッ化エチレンモノマー単位を主成分として含む共重合体ポリオール)、四フッ化エチレンモノマーを主原料とする共重合体(四フッ化エチレンモノマー単位を主成分として含む共重合体ポリオール)を好ましく例示することができる。これらフッ素含有ポリオールは、ゼッフル(四フッ化エチレンモノマー単位を主成分として含む共重合体ポリオール)という商品名の下でダイキン工業(株)から、ルミフロン(トリフルオロモノハロエチレンモノマー単位を主成分として含む共重合体ポリオール)という商品名の下で旭ガラス工業(株)から市販されている。ディフェンサという商品名の下で大日本インキ化学工業(株)から市販されているフッ素含有ポリオールも使用することができる。そのようなフッ素含有ポリオールは、例えば、四フッ化エチレンモノマーを主原料とするものであって、これに共重合されたアクリル酸のヒドロキシモノカルボン酸エステルおよび/またはアクリル酸のグリコールモノエステルを合計で少なくとも2モル含有する。これらフッ素含有共重合体ポリオールは、上記アクリル酸エステルモノマーによりOH成分(アクリル酸のヒドロキシモノカルボン酸エステルにあってはカルボキシル基のOH、アクリル酸のグリコールモノエステルにあっては、エステル化されていないグリコールOH)が付与されている。本発明においては、四フッ化エチレンモノマーを主成分として含む共重合体ポリオールが特に好ましい。
【0029】
本発明に用いられるイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネート、およびそれらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等を好ましく使用することができる。特に好ましいイソシアネート化合物は、HDIおよびそのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等である。イソシアネート化合物は、その分子鎖が長いほど、より高い柔軟性を有するポリウレタン被覆層16を生成し得る。
【0030】
本発明に用いられる反応性シリコーン油は、両末端反応性のもの、すなわち両末端に活性水素を有するものである。両末端反応性であるので、当該反応性シリコーン油は、ポリオールとイソシアネート化合物との反応により生成するポリウレタン骨格内にそのシロキサン成分を導入し、および/またはポリウレタン分子を架橋してシロキサン成分をポリウレタンに導入し得る。なお、シロキサンもしくはシリコーンは、それ自体摩擦帯電列が正帯電性であり、その含有量を多くするほど、得られるシリコーン変性含フッ素ポリウレタン被覆層16の正帯電性を増加させることができる。すなわち、添加する反応性シリコーン油の量を変えることにより、被覆層の摩擦帯電列を制御することもできる。
【0031】
上記両末端反応性シリコーンは、イソシアネート化合物と反応し得るものであって、例えば、アミノ基(1級および/または2級アミノ基)を有するシリコーン油、メルカプト基を有するシリコーン油、ヒドロキシル基を有するシリコーン油(例えば、カルボキシル基を有するシリコーン油、フェノール性OH基を有するシリコーン油、アルコール性OH基を有するシリコーン油等が含まれる。これら反応性シリコーン油は、アミノ変性シリコーン油、メルカプト変性シリコーン油、カルボキシル変性シリコーン油、フェノール変性シリコーン油、カルビノール変性シリコーン油等として市販されている。本発明においては、上記反応性有機基を、両末端に有するシリコーン油のいずれをも使用することができる。シリコーン骨格中のケイ素に結合した水素を両末端に有するシリコーン油も使用することができる。
【0032】
最も好ましい反応性シリコーン油は、下記一般式(1):
【化3】
【0033】
(ここで、各Rは、−C3 H6 OC2 H4 OHまたは−C3 H6 OCH2 −C(CH2 OH)2 C2 H5 を表し、nは、約20以下の整数を表す)で示すことができる。特に好ましい反応性シリコーン油は、各Rが−C3 H6 OC2 H4 OHである一般式(1)のシリコーン油であり、その中でもnが約10であるものが殊に好ましい。このような両末端反応性シリコーン油も、市販されている。
【0034】
このシリコーンもしくはシロキサンを導入したポリウレタンからなる被覆層を形成するためには、最も好ましくは、酢酸ブチル等の好適な有機溶媒中に、ポリオール(特に、液状フッ素含有ポリオール)、イソシアネート化合物および両末端反応性シリコーン油を、必要に応じて、被覆層に導電性を付与する導電性付与剤(例えば、カーボンブラック、金属粉末等)および/または充填材(例えば、シリカ等)とともに分散させて含有する反応混合物を、必要に応じてプライマーを塗布した導電層14の表面にスプレー塗装等の手法により薄膜として塗布し、この塗膜をポリオールおよび両末端反応性シリコーン油とイソシアネート化合物とが反応し得る条件、通常約100〜約200℃の温度で加熱することによってその場で生成させることができる。この場合、塗膜は、通常、20ないし60分程度で硬化する。
【0035】
反応混合物中における(ポリオールからの)ヒドロキシル基当量プラス(両末端反応性シリコーン油からの)活性水素当量と(イソシアネート化合物からの)イソシアネート基当量との比は1:1であるか、イソシアネート化合物がやや過剰に存在し得る。
【0036】
フッ素含有ポリオールと両末端反応性シリコーン油の混合比率としては、両末端反応性シリコーン油の量を過剰に多くすると、得られる被覆層自体にシリコーン化合物の特性が強く出現して、被覆層16の耐摩耗性を低下させる等の悪影響が生じるので、好ましくない。一般に、フッ素含有ポリオールと両末端反応性シリコーン油との重量比は、1:3以下であることが好ましく、その範囲内で反応性シリコーン油の割合を変えることにより、被覆層の摩擦帯電列を負帯電性から正帯電性まで変化させることができる。
【0037】
ところで、このような本発明の被覆層16を形成するに当たり、ポリオールとイソシアネート化合物と両末端反応性シリコーン油とを含有する反応混合物中に揮発性シリコーン油をさらに存在させると、得られる被覆層が全体的に微多孔質となることがわかった。すなわち、揮発性シリコーン油をも含有する反応混合物を上に述べたように導電層14上にスプレー等により塗布すると、その直後は、溶媒が存在するために揮発性シリコーン油は、溶媒を介してポリオールとイソシアネート化合物と両末端反応性シリコーン油との混合物中に存在することができる。しかし、加熱により次第に溶媒が揮発してゆくと、ポリオールとイソシアネート化合物と両末端反応性シリコーン油との混合物に不溶な揮発性シリコーン油は、当該混合物中に溶けこんでいられなくなる。その結果、揮発性シリコーン油は、当該混合物において互いに離散した多数の微小液滴を形成して、ポリオールとイソシアネート化合物およびと両末端反応性シリコーン油を連続相(海)とし、揮発性シリコーン油の微小液滴を島とするいわゆる海島構造が生成すると考えられる。そして、溶媒が揮発したこの海島構造体がさらに加熱され、ポリオールおよび両末端反応性シリコーン油とイソシアネート化合物とが反応してシリコーン変性ポリウレタンを生成する間に、島となっていた揮発性シリコーン油の微小液滴が揮発して、その揮発した部分が孔となり、ポリウレタン被覆層16が多孔質体となるものと考えられる。
【0038】
本発明において使用される揮発性シリコーン油は、ポリオールおよび両末端反応性シリコーン油とイソシアネート化合物とが反応してシリコーン変性ポリウレタン被覆層16を生成する上記温度条件の下で、ポリウレタン生成反応(ポリオールのイソシアネート化合物による硬化)が終了するまでに実質的に完全に揮発し得るシリコーン油である。ポリオールおよび両末端反応性シリコーン油とイソシアネート化合物とのポリウレタン生成反応が実質的に完結するまでに揮発性シリコーン油が完全に揮発してしまわないと、生成したポリウレタン層(導電層16)にシリコーン油が残留し、これが感光体ドラム表面を汚染するおそれがある。最も望ましくは、揮発性シリコーン油は、150℃で加熱したときに30分以内に完全に揮発する揮発性を有するものである。特に好ましい揮発性シリコーン油は、使用するポリオールおよびイソシアネート化合物や両末端反応性シリコーン油と反応しない非反応性シリコーン油である。揮発性シリコーン油としては、ジメチルシリコーン油、環状シリコーン油のほか、そのアルキル変性体、ポリエーテル変性体等の誘導体をも好適に使用することができる。その中でも、10個以下のシロキサン結合単位(−SiO−)を有するシリコーン油が特に好ましい。非反応性であるためには、各−SiO−結合単位におけるSiの残りの2つの原子価は、それぞれ、アルキル基、アラルキル基、アリール基等活性水素を持たない有機基により満たされ、直鎖シリコーン油にあっては、さらにその両末端にも上記非反応性有機基を有する。
【0039】
揮発性シリコーン油は、好ましくは、使用するポリオールの重量の1ないし30%の割合で、より好ましくは使用するポリオールの重量の5ないし20%の割合で含まれる。
【0040】
なお、市販の反応性シリコーン油の中には、本発明で使用し得る揮発性のシリコーン油を10重量%以上も含有しているものがある。このように多量の揮発性シリコーン油を含有する反応性シリコーン油製品を使用するときは、反応性シリコーン油の使用量によっては、多孔質体を形成するために加える揮発性シリコーン油を別途添加する必要がない(すなわち、含有されている揮発性シリコーン油をそのまま利用できる)場合や別途添加する揮発性シリコーン油の量を少なくし得る場合もあるので、事前にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の分析手段によって反応性シリコーン油製品中の揮発性シリコーン油の量を把握しておく必要がある。
【0041】
本発明の被覆層16が上記のような微多孔質体で構成される場合、好ましくは本発明の被覆層16は、全体がそのような多孔質体により構成される。その場合、被覆層16中の孔は、被覆層と接触するトナー粒子がその中に入り込めない程度に小さいことが好ましい。より好ましい孔の大きさは、3μm以下、0.1μm以上であり、最も好ましくは0.1〜1μmである。被覆層16は、そのようなサイズの孔を有する多孔質体により全体が構成されていることが特に好ましい。
【0042】
なお、多孔質体からなる被覆層16の各孔の大きさは、使用する揮発性シリコーン油の種類により決定され得、上に例示した揮発性シリコーン油は、いずれも、上記範囲内の孔サイズを提供し得る。
【0043】
このように被覆層16が上記多孔質体により形成されると、フィルミング減少がより一層抑制されるばかりでなく、その表面は当該孔により微視的に粗面を構成しているため、最外層が平滑面を形成する従来の現像ローラと比較して、トナーに働く鏡像力がより緩和されるという追加の利点がもたらされる。その結果、トナー供給部材により行われる残留トナーの除去がより一層促進され、新たなトナーが当該最外層表面に付着しやすくなる。したがって、被覆層16が多孔質体からなる本発明の現像ローラは、表面が平滑な従来の現像ローラよりも、現像ローラ表面の残留トナーに起因して発生するネガゴーストが発生しにくくなる。さらに多孔質被覆層は、弾力性があり、外力に対して変形しやすく、しかもトナー粒子より柔らかな被膜となっているので、感光体ドラムあるいは薄層化ブレードとのニップ部等でトナーを傷つけることがないというさらなる効果を奏する。
【0044】
なお、本発明の被覆層16は、その厚さが30μm以下であって4μm以上であることが好ましい。厚さが30μm超えると、得られる被覆層の表面粗さが粗くなる傾向にあり、他方厚さが4μm未満であるとと、その被覆層は、下地の導電層14からの汚染物質の表面への移行を防止するバリアー層として作用し得ず、しかもその耐磨耗性が低下する傾向にある。被覆層16の厚さは、約10〜約20μmであることが最も好ましい。
【0045】
上にも述べたように、本発明の現像ローラは、芯金12の上に導電層14を有し、その上に塗布・形成された被覆層16を有するものであり、導電層14は、硬度、体積抵抗値および圧縮永久歪等の物性を決定し、被覆層16は、下地の導電層14の物性いかんにかかわらず一定の上記優れた表面物性を示す。従って、本発明の現像ローラは、所望の硬度、体積抵抗値および圧縮永久歪等の物性を得ようとする場合、導電層14の構成材料を適切に選定するだけでよい。
【0046】
なお、本発明の被覆層16、特に多孔質体からなる被覆層16は、動摩擦係数が本発明の範囲内で変化しても、ほぼ一定のトルク値(0.85〜0.87kgf/cm2 )を示すことがわかった。本発明において、現像ローラについてのトルク値は、図3に概略的に示すように、トルクゲージ((株)東日製作所製トルクゲージTG型)32を用いて、現像ローラ34とこれに接触するトナー供給ローラ36およびシリコーンゴム製のトナー規制ブレード38を備える測定ユニット30(三田工業(株)製DP−560用イメージングユニットから感光ドラムを取り外し、トルクゲージ32を取り付ける)において測定される。図3中、符号40はフィルムである。なお、この測定は、温度25℃、相対湿度70%の室内で行う。
【0047】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0048】
実施例1
外径が10mmの鉄製のシャフト芯金に体積固有抵抗率が106 Ω・cmでJIS A硬度が45゜の導電性シリコーンゴムを被覆し、研磨して、外径が16mmのシリコーンゴム被覆ローラを作製した。
【0049】
他方、フッ素含有ポリオール(ダイキン工業社製ゼッフル)100重量部と導電性カーボンブラック(キャボット社製)8重量部に酢酸ブチル300重量部を加え、分散機を用いて分散させた。この分散物に両末端カルビノール変性の反応性シリコーン油(信越化学工業社製X−22−16−AS)50重量部を加え、攪拌しコーティングの主剤とした。この主剤に硬化剤としてウレタン変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成工業社製デュラネート)を主剤中のヒドロキシル基の当量と、硬化剤中のイソシアネート基の当量とが1:1となるように配合してコーティング材Aを調製した。
【0050】
こうして得られたコーティング材Aを前記ゴム被覆ローラに厚さが10μmとなるようにスプレー塗装し、風乾した後、160℃で40分加熱して所望の微小多孔質被覆層を形成し、現像ローラを得た。
【0051】
実施例2
両末端カルビノール変性シリコーン油の量を75重量部に変え、導電性カーボンブラックの量を実施例1におけるコーティング材Aにおける導電性カーボンブラックの比率と合うように調整した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製した。
【0052】
実施例3
両末端カルビノール変性シリコーン油の量を100重量部に変え、導電性カーボンブラックの量を実施例1におけるコーティング材Aにおける導電性カーボンブラックの比率と合うように調整した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製した。
【0053】
実施例4
両末端カルビノール変性シリコーン油の量を150重量部に変え、導電性カーボンブラックの量を実施例1におけるコーティング材Aにおける導電性カーボンブラックの比率と合うように調整した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製した。
【0054】
実施例5
外径が10mmの鉄製のシャフト芯金に体積固有抵抗率が108 Ω・cmでJIS A硬度が50゜の導電性アクリロニトリルブタジエンゴムを被覆し、研磨して、外径が16mmのアクリロニトリルブタジエンゴム被覆ローラを作製した。
【0055】
こうして得られたアクリロニトリルブタジエンゴム被覆ローラに実施例1のコーティング材Aを実施例1と同様の条件でコーティングして現像ローラを得た。
【0056】
比較例1
実施例1で作製したシリコーンゴム被覆ローラを現像ローラとして使用した。
【0057】
比較例2
実施例1のコーティング材Aから両末端カルビノール変性の反応性シリコーン油を除き、他の配合は実施例1と同様になるように調整したコーティング材Bを用いた以外は実施例1と同様にして現像ローラを作製した。
【0058】
比較例3
実施例5で作製したアクリロニトリルブタジエンゴム被覆ローラの表面に比較例2のコーティング材Bを比較例2と同様の条件でコーティングして現像ローラを作製した。
【0059】
<トルクの測定>
三田工業社製レーザープリンタDP−560型用のイメージングユニットに被測定用現像ローラを組み込んで、プリンタ本体にセットし、白紙1枚をプリントしてトナーを現像ローラになじませた。次に、プリンタ本体からイメージングユニットを取り出し、感光ドラムを取り外した後、現像ロールの短ボス側(ギアとは反対側)に東日製作所製トルクゲージTG型を取り付け、レーザープリンタ中で現像ローラが回転する方向にトルクゲージをまわして、現像ローラが回転したときの最大トルクをトルク値として記録した。なお測定は、25℃の温度、70%の相対湿度の環境中で行った。
【0060】
<動摩擦係数の測定>
被測定用現像ローラを東洋精機製作所製摩擦測定機TR型に取り付け、20mm幅のテープ状に切断したコピー用紙(富士ゼロックスL紙)の片端を上記摩擦測定機TR型の荷重変換器に取りつけ、現像ローラ上面を回してもう一方の用紙端に14.8gの錘を取り付けた。
【0061】
荷重変換器を50mm/分の速度で水平方向に移動させ、そのときの力を記録し、錘の重量との関係から動摩擦係数を求めた。なお、測定は24℃の温度、69%の相対湿度の環境中で行った。
【0062】
<フィルミングの発生>
三田工業社製レーザープリンタDP−560型用のイメージングユニットに被測定用現像ローラを組み込んで、プリンタ本体にセットし、3000枚プリントして、現像ローラおよび感光ドラム上でのフィルミングの発生を目視により判定した。顕著なフィルミングが発生した状態の感光ドラムの一例を図4に示す。図4に示す感光ドラム42は、その両端に黒い帯状のフィルム44が付着している。
【0063】
実施例1〜5、および比較例1〜3で作製した現像ローラについての結果を下記表1および2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、現像ローラの最外表面層として、所定の動摩擦係数を示すシリコーン変性ポリウレタン被覆層を形成することにより、フィルミング現象が抑制されるとともに低トルクで駆動できる現像ローラが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係わる現像ローラの構成を示す概略断面図。
【図2】本発明における現像ローラの動摩擦係数を測定するための方法を説明する概略図。
【図3】本発明における現像ローラについてのトルクを測定するための方法を説明する概略図。
【図4】顕著なフィルミングが発生した感光ドラムの一例を示す平面図。
【符号の説明】
12…芯金
14…導電層
16…被覆層
Claims (5)
- 芯金と、該芯金の周面上に設けられ、導電性ゴム材料から形成された導電層と、該導電層の周面上に設けられた被覆層とを備え、該被覆層は、ポリオール、イソシアネート化合物および両末端反応性シリコーン油を含有する反応混合物をその反応条件に供して生成した反応生成物を包含し、紙に対して0.9以上、1.2未満の動摩擦係数を示すことを特徴とする現像ローラ。
- 反応混合物が、揮発性シリコーン油をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
- 被覆層が、全体的に多孔質体により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の現像ローラ。
- ポリオールがフッ素含有ポリオールであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の現像ローラ。
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