JP3604193B2 - 外壁の接続構造 - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、外壁の接続構造に係り、複数の住戸が設けられたアパートやマンション等の建物に利用できる。
【０００２】
【背景技術】
従来より、建物内部に複数の住戸を備えた共同住宅が利用されており、共同住宅としては、高層マンション等の大型のものから、木造二階建等の比較的小型のものまで各種のものがある。
このような共同住宅では、住戸の間取りが同一であっても、住戸の数によって建物の大きさが異なり、大きさが異なる建物毎に設計や構造計算を行っていた。一方、建物毎に設計を行っていたのでは、設計が煩雑となるので、予め所定数の住戸を備えた建物を設計しておき、この設計済みの建物を必要に応じた数だけ連続させて建築すれば、設計の煩雑さを解消することができる。
また、複数の建物を別々に建築すると、建物毎に階段等の設備を設ける必要がある。このため、複数の建物を一列に隣接配置し、各建物の外壁、屋根、および、通路等をエキスパンション・ジョイント等の伸縮自在な接続部材で相互に接続し、複数の建物を連結している。
これにより、外観上、複数の建物が一つの建物となり、階段等の設備が共用化され、階段等の設備の個数が低減されるうえ、接続部材が地震等による横荷重を伝達することがない。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のエキスパンション・ジョイント等の接続部材では、伸縮自在の接続部材で接続を行っていたので、接続部材自体の構造が複雑であるうえ、接続部材の両端が両側の被接続物にそれぞれ支持されるので、部品点数が多くなり、外壁を接続するにあたり、接続作業が面倒となって手間および時間がかかる。このため、建築現場での作業が容易に行える接続構造が要望されている。
【０００４】
本発明の目的は、建物の外壁の接続作業が容易に行える外壁の接続構造を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明は、所定間隔の隙間をあけて配列された複数の建物の外壁を相互に接続する外壁の接続構造であって、前記建物の互いに対向する外壁の一方に取付けられるブラケットと、前記ブラケットに支持されるとともに前記隙間を塞ぐための接続部材とを備えたことを特徴とする。
以上において、前記接続部材は可撓性を有する面材から形成したものであることが望ましい。
また、前記接続部材には鉤状の係合片が設けられ、前記ブラケットには前記接続部材の係合片が係合される受部が設けられていることが好ましい。
さらに、前記ブラケットには、前記接続部材と重なり合う平板部が設けられていることが好ましい。
また、前記ブラケットは、前記建物に設けられる縦樋を取付けるために前記外壁に埋め込まれた雌ねじ部材と螺合するねじにより、当該外壁に取付けられていることが望ましい。
さらに、前記建物の各々は、工場で製造された建物ユニットを建築現場で相互に接合して組み立てられたユニット式建物であり、かつ、これらの建物は、一つの共通した基礎の上に構築されていることが好ましい。
【０００６】
【作用】
このような本発明では、ブラケットに支持される接続部材は、相互に接続されるべき外壁の一方のみに支持されるため、従来のように両端が支持されず、伸縮自在である必要はなくなり、単に、可撓性を有していれば、地震等による横荷重を伝達することがなくなる。
このため、接続部材自体の構造が簡単となるうえ、一方の外壁に支持させるだけで済むので、接続部材の取付構造が簡単なものとなる。
また、外壁の一方へ支持させることから、取付構造の部品点数も低減し、建物の外壁の接続作業が容易となり、これにより前記目的が達成される。
【０００７】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図１には、本発明の第１実施例に係る共同住宅１が示されている。この共同住宅１は、一つの基礎２の上に構築された二階建ての建物３，４を桁方向に配列したものである。建物３，４の桁方向に延びる外壁５，６は、端縁５Ａ， ６Ａが接続構造２０により相互に接続されている。
建物３の一階および二階には、住戸７Ａ，７Ｂがそれぞれ設けられ、建物４の一階および二階には、住戸８Ａ，８Ｂがそれぞれ設けられている。
建物３，４は、工場で製造された箱状の建物ユニット１０を、建築現場に打設した基礎２の上に複数配置し、かつ、相互に接合することにより、建築されたユニット式建物である。
【０００８】
共同住宅１の基礎２は、図２に示されるように、共同住宅１の外周縁に沿って設けられた周縁基礎部２Ａと、この周縁基礎部２Ａの桁側に延びる辺の中間部分を連結する中間基礎部２Ｂとを有するものとなっている。
図３には、建物３，４の境界部分が示されており、この図からは、外壁５，６を接続する接続構造２０は省略されている。図において、建物ユニット１０は、四隅に配置された柱１１の上端および下端をそれぞれ長辺梁１２および短辺梁１３で連結した六面体状のフレーム１４を有するものである。
建物３，４の外壁部分には、建物ユニット１０の側面に沿った平板状の外壁材１５と、建物ユニット１０の角部に沿った断面Ｌ字形状の外壁材１６とが取付けられている。建物３および建物４は、妻方向に沿って配列された外壁材１５の間に所定間隔Ｌの隙間１７をおいて隣接配置されている。
なお、外壁材１５， １６は、軽量気泡コンクリート等の耐火性を有する厚手の外壁材である。
【０００９】
建物３，４の隙間１７には、図４および図５に示されるように、外壁５，６を接続する接続構造２０が配置されている。この接続構造２０は、隙間１７を塞ぐ接続部材２１を備えたものとなっている。
接続部材２１は、可撓性を有した断面コ字形状の長尺部材であり、建物ユニット１０の高さ寸法の約２倍の長さ寸法を有している。接続部材２１の両端には、隙間１７の奥へ向かって延びる延出部２２が設けられている。この延出部２２の先端には、鉤状の係合片２３が設けられている。なお、延出部２２の外側面には、外壁材１６に先端が密着するシール部材２４が取付けられている。
一方、建物３側の外壁５の端縁近傍に配置された外壁材１６には、断面Ｌ字形状の支持部２５が釘２６で取付けられている。
【００１０】
支持部２５は、建物ユニット１０の高さ寸法の１／２以下の長さ寸法を有するものであり、高さ方向に沿って外壁材１６に複数配置されている。なお、外壁材１６と支持部２５との間には、ブチルゴム等からなる防水部材２７が介装されている。支持部２５には、断面形状が略コ字片の係合部２８がビス２９で固定されている。
係合部２８は、支持部２５よりも短い短尺部材である。支持部２５には、複数の係合部２８が固定されるようになっている。係合部２８の両側には、隙間１７の出口側に向かって延びるとともに、開口側が広がるように中間部分が階段状に折れ曲がった受部３０が設けられている。
受部３０の中間部分の段付面３１は、接続部材２１の係合片２３と係合するようになっている。この段付面３１に係合片２３を係合させることにより、接続部材２１が、支持部２５および係合部２８を介して外壁材１６に取付けられている。
ここにおいて、支持部２５および係合部２８は、外壁５を形成する外壁材１６に取付けられ、かつ、接続部材２１を支持するブラケット３２となっている。
【００１１】
前述のような本実施例によれば、次のような効果がある。
すなわち、ブラケット３２に支持される接続部材２１は、相互に接続すべき外壁５，６の一方の外壁材１６のみに支持されるため、従来のように両端が支持されず、伸縮自在である必要はなく、単に、可撓性を有していれば、建物５および建物６の一方から他方へ地震等による横荷重を伝達することがない。
【００１２】
また、可撓性を有していればよいので、接続部材２１自体の構造が簡単となるうえ、一方の外壁５側にブラケット３２で支持させるだけで済むことから、接続部材２１を取付けるための構造は簡単なものとなり、取付構造の部品点数が低減され、接続部材２１による接続作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【００１３】
さらに、接続部材２１に鉤状の係合片２３を設け、ブラケット３２の係合部２８に接続部材２１の係合片２３と係合する受部３０を設けたので、接続部材２１を係合部２８に向かって押し付けるだけで、接続部材２１を係合部２８に取付けることができ、この点からも、接続部材２１による接続作業を容易かつ迅速とできる。
【００１４】
図６および図７には、本発明の第２実施例が示されている。本第２実施例は、前記第１実施例における単に接続部材２１と係合する係合部２８を、接続部材と係合し、かつ、ビスで接続部材が固定される係合部としたものである。なお、以下の説明では既に説明した部材と同じ部材には同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略にする。
図において、ブラケット３２の係合部３３には、地面に向かって延びる下方延出部３４が設けられている。この下方延出部３４の先端には、上方へ折り返された平面部３６が設けられている。この平面部３６は、ブラケット３２に支持される接続部材３６の裏面に重なるものとなっている。
一方、接続部材３６には、ビス３７の頭部を収納する凹部３８が設けられている。接続部材３６は、係合部３３の平板部３５に重ねられた状態で、ビス３７で係合部３３に固定されるようになっている。
このような第２実施例においても前記第１実施例と同様な作用、効果を奏することができる他、接続部材３６をさらに強固に固定できるという効果を付加することができる。
【００１５】
図８および図９には、本発明の第３実施例が示されている。本第３実施例は、前記第１および第２実施例における支持部と係合部とに分割されていたブラケットを、支持部と係合部とを一体化したブラケットとしたものである。
図において、ブラケット４０は、金属板等の面材を折り曲げ加工することにより、支持部４１と係合部４２とを一体的に形成したものである。ブラケット４０の長さは、建物ユニット１０の高さ寸法よりも若干短い寸法とされている。
支持部４１は、外壁材１６に埋め込まれたフィッシャーアンカー等の雌ねじ部材４３と螺合するねじ４４により、基端が外壁材１６に取付けられれている。
雌ねじ部材４３は、外壁材１６に取付けられる図示しない縦樋を固定するために設けられたものである。
係合部４２は、断面が細長いＣ字形に形成されたものである。係合部４２の一端は、直線状に形成された連結部４５を介して支持部４１の先端に連結されている。
このような第３実施例においても前記第１および第２実施例と同様な作用、効果を奏することができる他、接続部材の取付けに要する部品点数をさらに低減できるいう効果を付加することができる。
【００１６】
以上、本発明について好適な実施例を挙げて説明したが、本発明は、この実施例に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更が可能である。
例えば、接続部材としては、係合片を有するものに限らず、図１０に示されるように、両側の係合片が省略され、ビス３７により固定されるだけの接続部材４６でもよい。この際、図に示すように、接続部材の係合片と係合する受部が省略されたブラケット４７を採用することもできる。要するに、接続部材のブラケットへの具体的な取付構造は、実施にあたり適宜選択すればよい。
【００１７】
また、接続部材および外壁材の間にできる狭い隙間を塞ぐものとしては、先端が外壁材に密着するシール部材２４に限らず、図１０に示されるように、接続部材４６および外壁材１６の間に充填される発泡ウレタン製等のバックアップ材４８およびシリコンゴム等のコーキング剤４９でもよい。
【００１８】
【発明の効果】
前述のように本発明によれば、部品点数が低減されることから、建物の外壁の接続作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の第１実施例に係る建物全体を示す斜視図である。
【図２】前記実施例の基礎を示す平面図である。
【図３】前記実施例の基礎および建物の一部を示す平断面図である。
【図４】前記実施例の外壁の接続構造を示す拡大平断面図である。
【図５】前記実施例の外壁の接続構造を示す分解斜視図である。
【図６】本発明の第２実施例を示す図４に相当する図である。
【図７】前記実施例の要部を示す斜視図である。
【図８】本発明の第３実施例を示す図４に相当する図である。
【図９】前記実施例を示す図５に相当する図である。
【図１０】本発明の変形例を示す図４に相当する図である。
【符号の説明】
２ 基礎
３，４ 建物
５，６ 外壁
１０ 建物ユニット
１６ 外壁を形成する外壁材
１７ 隙間
２０ 外壁の接続構造
２１， ３６， ４６ 接続部材
２３ 係合片
３０ 受部
３２， ４０ ブラケット
３５ 平板部
４３ 雌ねじ部材
４４ 雌ねじ部材と螺合するねじ

Claims (6)

1. 所定間隔の隙間をあけて配列された複数の建物の外壁を相互に接続する外壁の接続構造であって、
   前記建物の互いに対向する外壁の一方に取付けられるブラケットと、
   前記ブラケットに支持されるとともに前記隙間を塞ぐための接続部材と、
   を備えたことを特徴とする外壁の接続構造。
2. 請求項１に記載の外壁の接続構造において、前記接続部材は可撓性を有する面材から形成したものであることを特徴とする外壁の接続構造。
3. 請求項１または請求項２に記載の外壁の接続構造において、前記接続部材には鉤状の係合片が設けられ、前記ブラケットには前記接続部材の係合片が係合される受部が設けられていることを特徴とする外壁の接続構造。
4. 請求項１から請求項３までのいずれかに記載の外壁の接続構造において、前記ブラケットには、前記接続部材と重なる平板部が設けられていることを特徴とする外壁の接続構造。
5. 請求項１から請求項４までのいずれかに記載の外壁の接続構造において、前記ブラケットは、前記建物に設けられる縦樋を取付けるために、前記外壁に埋め込まれた雌ねじ部材と螺合するねじにより、当該外壁に取付けられていることを特徴とする外壁の接続構造。
6. 請求項１から請求項５までのいずれかに記載の外壁の接続構造において、前記建物の各々は、工場で製造された建物ユニットを建築現場で相互に接合して組み立てられたユニット式建物であり、かつ、これらの建物は、一つの共通した基礎の上に構築されていることを特徴とする外壁の接続構造。

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