JP3597546B2 - 光学異性体用分離剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は光学異性体の分離剤に関し、詳しくは担体に固定化されたペプシン又は分子構造の一部を修飾したペプシンを使用した光学異性体用分離剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
不斉炭素原子を含むキラルな化学物質について、その光学異性体を分離することが特に医薬品の分野において強く要求されている。すなわち一つのラセミ体を構成する複数の光学異性体の中の一つのものが特別に顕著な医薬上の有用性、例えば顕著な薬理作用、顕著な生体内利用性を示し、あるいは反対に顕著な毒性を示すことが一般事実として明らかになり、従って医薬品としてはラセミ体として投与されるよりも、分離された光学異性体として投与される方がより合理的であり、治療効果を高める結果となるからである。
【0003】
光学異性体の分離については従来から幾多の実験室的方法が報告されてきたが、工業的規模において実施できるものは少なく、これは非常に困難な技術課題であると考えられてきた。しかしカラムクロマトグラフィーの進歩により、とりわけ液体クロマトグラフィーにより光学異性体を分離する方法が一般に知られるようになった。これらの方法については、例えば下記文献1)〜7)に示されている。
1) イエルゲン・ヘルマンソン:ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー,325(1985)379頁−384頁(Joergen Hermansson:Journal of Chromatography, 325(1985)379−384)
2) エス・アレンマルクら:ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー,264(1983)63頁−68頁(S.Allenmark et al:Journal of Chromatography,264(1983)63−68)
3) エス・アレンマルクら:ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー,237(1982)473頁−477頁(S.Allenmark et al:Journal of Chromatography,237(1982)473−477)
4) 特開昭60−41619号公報
5) 三輪敏紳ら:ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリテン,35巻(1987)682頁−686頁(T.Miwa et al:Chemical and Pharmaceutical Bulletin,Vol 35(1987)682−686)
6) 萩中 淳ら:クロマトグラフィア,29巻(1990)587頁−592頁(J.Haginaka et al:Chromatographia, Vol 29(1990)587−592)
7) 特開昭64−3129号公報
上記文献のうち、1)はキラルなα1 −酸性糖蛋白を使用する技術を開示している。2)および3)は牛血清アルブミンをそれぞれシリカおよびアガロースに結合せしめた固定相を使用して分離する方法を開示している。4)はオロソムコイド、その官能類似体等を使用して分離する方法を開示している。5)および6)はオボムコイドを担体に結合せしめた固定相を使用して分離する方法を開示している。7)はアビジンを担体に結合せしめた固定相を使用して分離する方法を開示している。
【0004】
しかしながら1)〜4)及び7)の技術における使用資材は一般に高価である。またこれらの技術における分離方法は主として多量の有機溶媒を使用する液体クロマトグラフィーによって行われるので、使用資材は有機溶媒による変性に対して安定でなければならないが、例えばアルブミン、オロソムコイドはこの条件を十分に満足することができない。5)及び6)は比較的安価な資材を使用し、変性に対して安定である。しかしいずれの分離剤においてもサルブタモール及びアテノロールのエナンチオマーは分離することができないか又は非常に不十分な分離しかできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、サルブタモール、アテノロールのエナンチオマーが分離でき、安価でかつ有機溶媒による変性に対して安定な光学異性体用分離剤を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため種々の検討を行なった。その結果、動物の胃液に含まれるプロテアーゼの主成分であるペプシンを使用することにより上記目的を達成することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明はペプシン又は分子構造の一部を修飾したペプシンが担体に結合されている固定相からなることを特徴とする光学異性体用分離剤である。
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。
ペプシンは動物の胃液に含まれるプロテアーゼの主成分で分子量35,500、等電点1以下の蛋白質である。サフラニンによる沈殿吸着剤による分別および等電点沈殿など多くの方法で精製される。従って本発明に用いられるペプシンとしてこのような安価に製造されたペプシンを使用することが好ましいが、本発明に使用するペプシンの入手方法は、特別に限定される必要はない。市販品としては、シグマ製のペプシンがある。
【0008】
本発明に用いられる担体は、ペプシン又は分子の一部が修飾されたペプシンと結合し、固定相を形成し得るものであればよい。本発明の分離剤を用いた光学異性体の分離は、主として液体クロマトグラフィーによって行われるもので、担体としては例えばシリカゲル、ガラス、セルロース、カーボンまたは合成ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)等を挙げることができる。
【0009】
ペプシン又は分子の一部が修飾されたペプシン(以下リガンドと呼ぶ)が結合されている担体からなる固定相は、固定相を形成するために通常行われている方法に従って形成することができる。
例えば、ペプシンを担体に結合するには、例えばアミノプロピルシリカゲルを担体とし、N,N−ジサクシニミジルカーボネートを架橋剤としてペプシンを結合する方法、ガラスを担体とし、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを架橋剤としてペプシンを結合する方法、セルロースを担体とし、ブロムシアンで活性化してからこれにペプシンを結合する方法、イオン交換合成ポリマーにペプシンを結合する方法等が挙げられる。
【0010】
また、分子の一部を修飾したペプシンが担体に結合した固定相を得る方法には、あらかじめ分子の一部を修飾しておいたペプシンを共有結合やイオン結合などによって担体に結合する方法と、ペプシンを結合させておいた固定相に先に述べた方法による修飾を施して目的とする固定相を得る方法がある。
例えばアミノプロピルシリカゲルやアミノ基が結合した合成ポリマーを担体とし、グルタルアルデヒドやN,N−ジサクシニミジルカーボネートを架橋剤としてリガンドを結合したり、あるいはシリカゲルやガラス若しくはカーボンを担体として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを架橋剤としてリガンドを結合したり、あるいはセルロースを担体とし、ブロムシアンで活性化してからこれらにリガンドを結合したり、陰イオン交換合成ポリマーにリガンドを結合したりする方法により製造できる。
【0011】
一般に蛋白質分子を修飾する方法には、化学的方法、酵素的方法、物理的方法等が挙げられる。即ち、蛋白質分子中のアミノ基、イミダゾール基又はカルボキシル基にアルデヒド類、酸無水物又はアルコール類を反応させると、それぞれ、シッフ塩基、N−置換イミダゾール基又はエステルが生成して化学的修飾がなされる。又、酵素の持つ多彩な作用を用いれば、官能基の修飾、分子の酸化や還元、分子の一部を除去するなどの反応が緩和な条件で行い得る。例えば、ペプシンの一部をグルタル化したペプシンは次のようにして得ることができる。
【0012】
ペプシンおよびグルタルアルデヒドをpH6.8のりん酸塩緩衝液に入れ、30℃で15時間攪拌後、生成したグルタル化ペプシン(非還元型)、あるいはさらに水素化ほう素ナトリウムを用いてpH6.8のりん酸塩緩衝液中で、4℃で12時間攪拌し還元後、生成したグルタル化ペプシン(還元型)を得ることができる。
【0013】
グルタル化ペプシンの精製方法は、特に限定されず、一般に用いられる方法によることができる。例えば、セファデックスG25カラムクロマトグラフィーを使用して、上記反応液より未反応のグルタルアルデヒドおよび水素化ホウ素ナトリウムを除去することができる。
また、ペプシンの一部をジオール化したペプシンを得るには、例えば、ペプシンおよび2,3−エポキシプロパノールをpH8.0のりん酸塩緩衝液中に加え、室温で24時間攪拌後、精製すればよい。
【0014】
また、ペプシンの一部をアシル化したペプシンを得るには、例えば、ペプシンおよび対応する酸無水物をpH8.5のほう酸塩緩衝液にいれ、25℃で30〜60分攪拌後、精製すればよい。
グルタル化したペプシンをアミノプロピルシリカゲルに結合するには、具体的には次のようにすればよい。
【0015】
グルタル化したペプシンをpH6.8の炭酸水素ナトリウム緩衝液に溶解する。別にアミノプロピルシリカゲルおよびN,N−ジサクシニミジルカーボネートをpH6.8の炭酸水素ナトリウム緩衝液に溶解懸濁させ、一晩攪拌後、分取水洗して活性化アミノプロピルシリカゲル懸濁液を得る。先に用意したグルタル化ペプシンの溶液を活性化アミノプロピルシリカゲル懸濁液に加え、攪拌後水洗してシリカゲルにグルタル化ペプシンが架橋剤を介して結合した光学異性体分離剤を得ることができる。
【0016】
また、ペプシンを結合させておいた固定相上のペプシンに化学修飾を行うには次のようにすればよい。
例えば、親水性合成ポリマーにペンタエチルヘキサミン等のポリアミンを導入した担体とN,N−ジサクシニミジルカーボネートをpH6.8炭酸水素ナトリウム緩衝液に溶解、懸濁させ一晩攪拌し、分取水洗して活性化合成ポリマーの懸濁液を得る。別に、ペプシンをpH6.8炭酸水素ナトリウム緩衝液に溶解した溶液を用意し、前記懸濁液に加えることにより、ペプシンが結合したポリマー充填剤を得る。この充填剤およびグルタルアルデヒドをpH6.8のりん酸塩緩衝液に入れ、30℃で15時間攪拌後、生成したグルタル化ペプシン(非還元型)、あるいはさらに水素化ほう素ナトリウムを用いてpH6.8のりん酸塩緩衝液中で、4℃で12時間攪拌し、還元後、生成したグルタル化ペプシン(還元型)がアミド結合および架橋剤を介して合成ポリマーに結合した光学異性体分離剤を得ることができる。
【0017】
このようにペプシンを化学修飾することにより、光学異性体分離カラムとしてのカラムライフ(サンプル注入回数)を大幅に伸ばすことができる。
担体100重量部に対するペプシン又は修飾ペプシンの結合割合は、8〜11重量部、好ましくは9〜10重量部、一般に約10重量部が適当である。
本発明の分離剤は前記したごとく、ペプシンを担体に結合した固定相、担体に固定化されたペプシンの分子構造の一部を修飾した固定相、若しくは分子構造の一部を修飾したペプシンを担体に結合した固定相からなることを特徴とする。従って本発明の分離剤には当該固定相が必須の構成成分として含まれるが、同時に分離剤中の他の成分、例えばシリカゲル、ガラス、セルロース、カーボンやポリマー等、ペプシン又は修飾ペプシンが結合していない担体が任意に選択されて加えられることは自由であり、分離の向上のために適宜行うことができる。
【0018】
本発明の分離剤を用いて分離することができる光学異性体とは、分子内に不斉炭素原子を有するキラル化合物を言い、多くの医薬品にその例を見ることができる。前述のサルブタモール及びアテノロールの他、例えばクロルフェニラミン、クロルプレナリン、ピンドロール、ヴェラパミル、プロプラノロール、ジメチンデン、エチアジド等を挙げることができる。これらの化合物においては互いに鏡像関係にある複数の光学異性体が存在し、一体となってラセミ体を形成している。本発明の分離剤はこれらラセミ体を対象として、これらを構成する光学異性体を分離するのに特に有効である。
【0019】
本発明の分離剤は主として液体クロマトグラフィーにおいて使用される。従ってその使用方法は液体クロマトグラフィーにおける通常の操作によって行えばよく、例えば本発明の分離剤をカラムに充填し、光学異性体に係るセラミ体をチャージし、次にりん酸緩衝液、エタノール水溶液、イソプロパノール等の移動相を流通せしめ、保持時間の差によって、所望の光学異性体を分離すればよい。
【0020】
【実施例】
以下に記載する実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
アミノプロピルシリカゲル(信和化工(株)製:ULTRON NH2、アミノプロピル基含量:8重量%)3gおよびN,N−ジサクシニミジルカーボネート2gを0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)100mlに入れ、一夜攪拌し、ガラスフィルター上にとり、水洗して活性化アミノプロピルシリカゲルの懸濁液を調製した。別にペプシン(シグマ製)2gを0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)30mlに溶解した溶液を用意し、それを前記懸濁液に加え、30℃で15時間攪拌後、ガラスフィルター上にとり、水洗し、本発明の分離剤を得た。得られた分離剤をスチールカラムに充填し、光学異性体分離用カラムとした。
実施例2
グルタルアルデヒド0.1gおよびペプシン2gを0.6Mりん酸塩緩衝液(pH6.8)に入れ、30℃で15時間攪拌し、グルタル化ペプシンを合成した。セファデックスG25カラムクロマトグラフィーにより未反応のグルタルアルデヒドを除きグルタル化ペプシン(非還元型)を単離した。グルタル化ペプシン(非還元型)の一部を、水素化ほう素ナトリウムを用いてpH6.8のりん酸塩緩衝液中で、4℃で12時間攪拌し還元し、グルタル化ペプシン(還元型)を得た。
【0021】
次に、親水性ポリマー(ポリビニルアルコール共重合体)ゲルにポリアミン(ペンタエチルヘキサミン)を導入したカラム充填剤〔アサヒパックNH2P−50(昭和電工製)〕2gおよびN,N−ジサクシニミジルカーボネート2gを0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)100mlに入れ、一夜攪拌し、ガラスフィルター上にとり、水洗して活性化合成ポリマーゲルの懸濁液を調製した。別に非還元型あるいは還元型グルタル化ペプシン2gを0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)30mlに溶解した溶液を用意し、それを前記懸濁液に加え、30℃で15時間攪拌後、ガラスフィルター上にとり、水洗し、本発明の分離剤を得た。得られた分離剤をスチールカラムに充填し、光学異性体分離用カラムとした。
実施例3
アミノプロピルシリカゲル3gおよびN,N−ジサクシニミジルカーボネート2gを0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)100mlに入れ、一夜攪拌し、ガラスフィルター上にとり、水洗して活性化アミノプロピルシリカゲルの懸濁液を調製した。別にペプシン2gを0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)30mlに溶解した溶液を用意し、それを前記懸濁液に加え、ペプシン結合シリカゲル充填剤を得た。この充填剤2gおよびグルタルアルデヒド0.1gを0.06Mりん酸塩緩衝液(pH6.8)30mlに入れ、30℃で15時間攪拌し本発明の分離剤(非還元型)を得た。さらに0.2gの水素化ほう素ナトリウムを加え4℃で12時間攪拌、還元し本発明の分離剤(還元型)を得た。得られた分離剤をスチールカラムに充填し、光学異性体分離用カラムとした。
実施例4
アミノプロピルシリカゲル3gおよびグルタルアルデヒド0.1gを0.06Mりん酸塩緩衝液(pH6.8)100mlに入れ、30℃で15時間攪拌後、ガラスフィルター上にとり水洗した。このグルタル化シリカゲルにペプシン2gを0.1M炭酸水素ナトリウム(pH6.8)30mlに溶解し反応させるとともに、ペプシンのグルタル化も行わせしめ、本発明の分離剤を得た。得られた分離剤をスチールカラムに充填し、光学異性体分離用カラムとした。
実施例5A
実施例1と同様にアミノプロピルシリカゲルを用いてペプシン結合シリカゲル充填剤を得た。この充填剤を五酸化りんデシケーター中にて乾燥した後、0.06Mりん酸塩緩衝液(pH8.0)に懸濁し、2,3−エポキシプロパノール0.5mlを加えて室温にて24時間攪拌して本発明分離剤を得た。得られた分離剤をスチールカラムに充填し、光学異性体分離用カラムとした。
実施例5B
ペプシン2gを0.06Mりん酸塩緩衝液に懸濁し、2,3−エポキシプロパノール0.5mlを加えて室温にて24時間攪拌してジオール化ペプシンを得た。次に、アミノプロピルシリカゲル3gおよびN,N−ジサクシニミジルカーボネート2gを0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)100mlに入れ、一夜攪拌し、ガラスフィルター上にとり、水洗して活性化アミノプロピルシリカゲルの懸濁液を調製した。別にジオール化ペプシン2gを0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)30mlに溶解した溶液を用意し、それを前記懸濁液に加え、30℃で15時間攪拌後、ガラスフィルター上にとり、水洗し、本発明の分離剤を得た。得られた分離剤をスチールカラムに充填し、光学異性体分離用カラムとした。
実施例6A
実施例1と同様にアミノプロピルシリカゲルを用いてペプシン結合シリカゲル充填剤を得た。本充填剤1.8gおよび1mlのジオキサンに0.225mlの無水酢酸を溶解した溶液を0.1Mほう酸塩緩衝液(pH8.5)50mlに入れ、25℃で30分攪拌後、ガラスフィルター上にとり、水洗して本発明の分離剤を得た。得られた分離剤をスチールカラムに充填し、光学異性体分離用カラムとした。
実施例6B
ペプシン2gを1mlのジオキサン0.225mlの無水酢酸を溶解した溶液とともに0.1Mのほう酸塩緩衝液(pH8.5)に入れ、アセチル化ペプシンを得た。次に、アミノプロピルシリカゲル3gおよびN,N−ジサクシニミジルカーボネート2gを0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)100mlに入れ、一夜攪拌し、ガラスフィルター上にとり、水洗して活性化アミノプロピルシリカゲルの懸濁液を調製した。別にアセチル化ペプシン2gを0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)30mlに溶解した溶液を用意し、それを前記懸濁液に加え、本発明の分離剤を得た。得られた分離剤をスチールカラムに充填し、光学異性体分離用カラムとした。
【0022】
以下の実験例によって本発明の効果を示す。
実験例1
実施例1で調製した光学異性体分離用カラムを用いて従来のカラムでは分離できなかったサルブタモールのエナンチオマーにおける分離を試みた。
なお、移動相は20mMりん酸塩緩衝液(KH2PO4/K2HPO4)(pH5.1 )/エタノール=95/5(V/V)を使用し、流速を0.8 ml/min とした。
結果を図1に示す。図1より本発明分離剤によって各光学異性体が分離されたことが判明した。
【0023】
実験例2
実施例3で調製した(非還元型)光学異性体分離用カラムを用いて従来のカラムでは分離できなかったアテノロールのエナンチオマーにおける分離を試みた。なお、移動相は、20mMりん酸塩緩衝液(KH2PO4/K2HPO4)(pH5.1)/エタノール=95/5(V/V) を使用し、流速を0.8ml/minとした。
結果を図2に示す。図2より本発明分離剤によって各光学異性体が分離されたことが判明した。
【0024】
実験例3
実施例1及び実施例3で調整した光学異性体用カラムを用いて実験例1と同様にサルブタモールのエナンチマーにおける分離を繰り返し試みた。実施例1で調整したペプシンカラムで分析した場合、50回の注入でカラムの劣化が始まり、分離が充分に行われなくなったのに対して、実施例2で調製したグルタル化ペプシンカラムで分析した場合には、300回の注入でもカラムの劣化が起こらなかった。
【0025】
【発明の効果】
本発明の光学異性体用分離剤は、光学異性体を効率よく分離することができ、また安価であり、かつ有機溶媒による変性に対して安定である。例えば、従来の牛血清アルブミンでは、1−プロパノールは5%以下でしか使用できなかったが本発明の分離剤では、例えば、グルタル化ペプシンの場合、50%メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトニトリル等の溶媒の使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で調製した光学異性体分離用カラムを用いてサルブタモールのエナンチマーにおける分離を試みた結果を示す図面である。
【図2】実施例3で調整した(非還元型)光学異性体分離用カラムを用いてアテノロールのエナンチオマーにおける分離を試みた結果を示す図面である。
Claims (4)
- ペプシン又は分子構造の一部を修飾したペプシンが担体に結合されている固定相からなることを特徴とする、有機溶媒を含む移動相を用いる液体クロマトグラフィー用光学異性体分離剤。
- ペプシン分子構造の一部の修飾が、グルタル化若しくはその還元化、ジオール化、またはアシル化である請求項1記載の光学異性体分離剤。
- 担体がシリカゲル、ガラス、セルロース、カーボンまたは合成ポリマーである請求項1または2記載の光学異性体分離剤。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学異性体分離剤をカラムに充填し、不斉炭素原子を分子内に含む化合物のラセミ混合物を前記カラムにチャージし、次に有機溶媒を含む移動相を流通せしめることにより、前記化合物の光学異性体を分離することを特徴とする、光学異性体の分離方法。
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