JP3597171B2 - 架橋剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出成形が可能な不飽和ポリエステル樹脂組成物に用いることができる架橋剤及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
不飽和ポリエステル樹脂は、強化プラスチック、塗料、化粧板など幅広い用途で用いられている熱硬化性樹脂であり、硬化の際に架橋剤として働く、スチレン、メタクリル酸メチル、ジアリルフタレート等のモノマーが含有されている。このような架橋剤としては、一般にスチレンが用いられている。メタクリル酸メチルは、不飽和ポリエステルとの共重合性が悪いので、一般にスチレンと併用されている。また、ジアリルフタレートは、ガラス繊維を入れた乾式不飽和ポリエステル成形材料に用いられる場合が多い。
【0003】
不飽和ポリエステル樹脂の成形方法としては、従来より、種々の方法が採用されており、例えば、注型法、ハンドレイアップ法、レジントランスファーモールディング法(RTM法)、圧縮成形法、射出成形法があり、これらの成形材料としてシートモールディングコンパウンド(SMC)、バルクモールディングコンパウンド(BMC)などが知られている。
【0004】
また、不飽和ポリエステル樹脂の用途の一つとして、衣服等のボタンが知られている。このようなボタンは、遠心ドラム法により不飽和ポリエステル樹脂をシート状にし、これを打ち抜いた後、硬化させ、面削り等の仕上げ加工を施して製造するのが一般的である。このようにボタンの製造工程においては、打ち抜き加工が行われるので、原料樹脂の3〜4割程度が屑として廃棄処分されている。廃棄物は、焼却や埋立等により処分しているが、焼却の際には臭い、すす、煙を生じ、また高温のため焼却炉を傷める等の問題を生じる。また埋立の処分においては、埋立地の確保が困難になってきているという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような問題を解決する方法として、不飽和ポリエステル樹脂を押出成形し、得られた押出成形物をカッティングすることによりボタンを製造する方法が考えられる。しかしながら、スチレンを架橋剤として用いる従来の不飽和ポリエステル樹脂は、プレキュアして得られるゲルが非常に脆いため、押出成形が困難であった。また、最終的に得られる硬化物は、硬くて脆い等の問題があり、不飽和ポリエステル樹脂を用い押出成形でボタンを成形することは実現されていない。
【0006】
一方、不飽和ポリエステル樹脂の注型成形においては、厚物の成形ができないという問題があった。すなわち、厚物の成形を行うと、硬化の際に重合熱が成形物内に蓄積されるため、短時間で硬化が進行し、成形物が割れる等の問題があった。
【0007】
上記のような問題を解決する方法として、不飽和ポリエステル樹脂の硬化を制御する方法が考えられる。硬化を制御する具体的な方法としては、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等の連鎖移動剤を用いる方法が知られている(伴野茂樹、駒井猛、強化プラスチックス、29(8)、 357(1983))。しかしながら、連鎖移動剤を用いる方法では、架橋(硬化)反応が完結しないおそれがある。
【0008】
また、硬化樹脂の物性を改善する方法としては、不飽和ポリエステル樹脂における不飽和結合の間の炭化水素鎖を長くする方法が考えられるが、このような不飽和ポリエステルの合成は困難であり、またこのような不飽和ポリエステルは反応性が低いため、硬化反応が完結しないおそれがある(滝山榮一郎著、ポリエステル樹脂ハンドブック、p.80、 (1988)日刊工業新聞社)。
【0009】
本発明の目的は、押出成形が可能で、かつ硬化時の急激な収縮による割れ等の発生を抑制することができ、硬化樹脂の脆さ及び耐衝撃性を改善することができる不飽和ポリエステル樹脂組成物を調製することができる架橋剤及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の問題を解消するため、不飽和ポリエステル樹脂に含有させる架橋剤について鋭意検討を行った結果、特定のポリエステルを架橋剤として用いることにより、押出成形が可能で、かつ硬化時の急激な収縮による割れ等の発生を抑制することができ、硬化樹脂の脆さ及び耐衝撃性を改善し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、末端にビニルフェニレン基を有する重量平均分子量300以上のポリエステルからなる架橋剤及びその製造方法である。
本発明において架橋剤として用いられるポリエステルは、末端にビニルフェニレン基を有するポリエステルである。ビニルフェニレン基は、CH2=CH−C6H4−の構造を有する重合性二重結合基である。
【0012】
本発明において架橋剤として用いるポリエステルの重量平均分子量は300以上であり、好ましくは300〜200,000、さらに好ましくは500〜20,000である。重量平均分子量が低すぎると、押出成形が可能でかつ硬化樹脂の脆さ及び耐衝撃性が改善されるという本発明の効果が得られないおそれがある。また重量平均分子量が高すぎると、樹脂組成物中において均一な混合が難しくなるというおそれがある。
【0013】
また、本発明において架橋剤として用いるポリエステルは、上記のように重量平均分子量が300以上であるので、そのポリエステル骨格中にエステル基を4つ以上含有しているものが好ましい。
【0014】
本発明において架橋剤として用いるポリエステルは、ポリエステル骨格を有するオリゴマーなどの化合物の片末端または両末端にビニルフェニレン基を有する化合物を反応させることにより合成することができる。
【0015】
例えば、片末端または両末端にカルボキシル基を有するポリエステルに、スチレンのハロゲン化物またはスチレンの誘導体のハロゲン化物を反応させて合成することができる。
【0016】
本発明においては、ポリエステルの片末端または両末端に設けられる重合性二重結合基として、ビニルフェニレン基を用いている。以下、この理由について説明する。
【0017】
架橋剤に用いられる重合性二重結合基は、不飽和ポリエステルの重合性炭素−炭素二重結合に対し、反応性が高いものであることが望ましい。不飽和ポリエステルの重合性炭素−炭素二重結合は、通常トランス体に異性化するため、フマレート基の構造を有しており、このフマレート基のエステル部分は長鎖であるが、その重合性はジイソプロピルフマレートとほぼ同じであると考えられる。従って、ジイソプロピルフマレートとの反応性から、不飽和ポリエステル中の炭素−炭素二重結合に対する反応性を評価することができる。表1は、各種ビニルモノマー(M1)とジイソプロピルフマレート(M2)とのラジカル共重合におけるモノマー反応性比(r1=k11/k12、r2=k22/k21)を示している。具体的には、ベンゼン中、60℃におけるモノマー反応性比を示している。なお、表1のラジカル共重合モノマー反応性比は、T.Otsu, A.Matsumoto, K.Shiraishi, N.Amaya, Y.Koinuma, J.Polym.Sci.:Part A:Polym.Chem., 30(8), 1559(1992) から引用したものである。
【0018】
【表1】
【0019】
表1から明らかなように、スチレン、塩化ビニルは、ジイソプロピルフマレートに対し良好な共重合性を有しており、メチルアクリレート、フェニルアクリレート>アクリロニトリル、メチルメタクリレート、塩化ビニリデン>メタクリロニトリルの順で共重合性が悪くなっており、これらのビニルモノマー(M1)の含有量の大きい共重合体が得られる。また、イソブテン、酢酸ビニル、イソプロペニルアセテートも、やはり共重合性が悪く、これらのビニルモノマーの場合は、ビニルモノマー(M1)の含有量の小さい共重合体が得られることがわかる。
【0020】
以上のことから、スチレンと同様の重合性二重結合基であるビニルフェニレン基を有するポリエステルの場合は、不飽和ポリエステルの二重結合に対し良好な反応性を有しており、従って架橋剤として単独で用いても、十分な反応性を示し架橋反応を生じることがわかる。
【0021】
参考のため、後述する比較例において架橋剤として用いるジアリルフタレート(M2)と各種フマレート(M1)とのラジカル共重合におけるモノマー反応性比を表2に示す。なお、表2に示す値は、Polymer handbook, Edited by J.Brandrup, E.H.Immergut, II/183, John Wiley & Sons から引用したものである。
【0022】
【表2】
【0023】
表2から明らかなように、ジアリルフタレートはフマレートと共重合可能であるが、ジアリルフタレート単位の少ない共重合体が得られる。また、一般にアリルモノマーは連鎖移動が大きいため重合性が悪いことが知られている。
【0024】
本発明において架橋剤として用いられるポリエステルの骨格となるポリエステル部分は、脂肪族または芳香族直鎖状飽和ポリエステルであることが好ましい。このようなポリエステル部分は、通常のポリエステルの合成方法により合成することができる。一般的なポリエステル合成方法は、例えば、大津隆行、木下雅悦、高分子合成の実験法、化学同人(1972)に記載されている。具体的には、例えば、ポリプロピレンフタレートの場合、プロピレングリコールと無水フタル酸を等モル入れ、窒素気流下、1時間かけて150℃に上げ、150℃で1時間反応させ、さらに1時間かけて210℃に上げ、210℃で数時間脱水反応させて得ることができる。ポリエチレンテレフタレートの場合、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを用い、酢酸カルシウム及び三酸化アンチモンをエステル交換触媒として用い、加熱し、縮合反応させて合成することができる。フェニルイソフタレートの場合、トリクロルビフェニル中でヒドロキノンとイソフタル酸ジクロリドを加熱溶液重縮合して合成することができる。また、ラクトンの開環重合によってもポリエステルを合成することができる。
【0025】
上述のように、両末端にビニルフェニレン基を導入する場合、上記のようにして得られるポリエステルの両末端にカルボキシル基を導入し、このカルボキシル基と反応させることにより上記重合性二重結合基を導入することができる。ポリエステルの両末端にカルボキシル基を導入する方法の1つとして、ポリエステルの末端のヒドロキシル基をピリジン中、100℃で、1.1倍当量の無水二塩基酸と数時間反応させる方法がある。また、ポリエステルの合成の最終段階において、末端のヒドロキシル基の1.1倍当量の二塩基酸成分(無水物、酸クロリド、ジカルボン酸)を投入し、数時間反応させる方法によっても、カルボキシル基を導入することができる。
【0026】
その他の架橋剤
本発明の不飽和ポリエステル組成物においては、上記の架橋剤としてのポリエステルに加えて、スチレンなどのビニルモノマーの架橋剤を添加することができる。特にスチレンなどの液状モノマーは、溶剤としての機能も有する。この他、架橋剤として使用することができるモノマーとしては、メタクリル酸メチル、ジアリルフタレート等を挙げることができる。メタクリル酸メチルは、スチレンと併用することが好ましい。
【0027】
架橋剤の配合割合
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物における架橋剤としてのポリエステルの配合割合は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対し200〜1重量部が好ましく、さらに好ましくは100〜10重量部である。架橋剤としてのポリエステルの配合割合が少ないと、押出成形が可能で、硬化樹脂の脆さ及び耐衝撃性が改善されるという本発明の効果が十分に得られない場合があり、逆に架橋剤としてのポリエステルの配合割合が多すぎると、耐熱性等の物性が損なわれるおそれがある。
【0028】
スチレン等の他のビニルモノマーを併用する場合は、これらのビニルモノマーは、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対し、10〜100重量部であることが好ましく、さらに好ましくは30〜70重量部であり、架橋剤全体の20〜80重量%となるように配合することが好ましい。
【0029】
不飽和ポリエステル樹脂
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物において用いる不飽和ポリエステル樹脂は、特に限定されるものではなく、一般的な不飽和ポリエステル樹脂を用いることができる。すなわち、無水マレイン酸のような不飽和二塩基酸及び無水フタル酸のような飽和二塩基酸とグリコールのエステルであり、分子内にエステル結合と不飽和結合を有する分子量数千程度の直鎖状のプレポリマーを用いることができる。
【0030】
不飽和二塩基酸としては、無水マレイン酸、フマル酸等が挙げられ、飽和二塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、テトラクロロ無水フタル酸、ヘット酸、無水ナジン酸等が挙げられ、二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。これらの各成分は単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0031】
重合開始剤
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、一般に架橋反応により硬化させるための重合開始剤が添加される。このような重合開始剤としては、一般にラジカル開始剤が用いられる。ラジカル開始剤は、熱によるラジカル開始剤であってもよいし、光によるラジカル開始剤であってもよい。また、ラジカル開始剤と共に、あるいはラジカル開始剤を用いずに、電子線を照射して架橋反応させ本発明の不飽和ポリエステル樹脂を硬化してもよい。
【0032】
常温硬化に用いるラジカル開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド−ナフテン酸コバルト等が挙げられ、中温加熱硬化(60〜80℃)に用いるラジカル開始剤としては、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられ、100℃以上の高温硬化に用いるラジカル開始剤としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエート等が挙げられる。開始剤の配合量としては、不飽和ポリエステル樹脂に対して0.1〜5重量%程度が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。開始剤の量が少なすぎると、硬化が不十分となり、開始剤の量が多すぎると、樹脂のライフが短くなったり、あるいは硬化樹脂に黄変が生じるおそれがある。
【0033】
成形助剤
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、押出成形時における樹脂の流動性を良好にし成形性を高めるための成形助剤を添加してもよい。このような成形助剤としては、熱可塑性樹脂などを用いることができる。成形助剤に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンフタレート等のポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、アクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン等が挙げられる。特に、ガラス転移温度(Tg)が押出成形温度以下である熱可塑性樹脂を用いると、成形時における流動性がより良好になる。このような成形助剤を添加することにより、成形時に押し出された樹脂の強度を増加させることができ、押出成形性を高めることができる。
【0034】
成形助剤の添加量としては、不飽和ポリエステル樹脂組成物全体の1〜30重量%となるように添加することが好ましい。成形助剤の添加量が少ないと、押出成形時における成形性を高めるという効果が得られない場合があり、成形助剤の添加量が多すぎると、得られる硬化樹脂の耐熱性が低下するおそれがある。
【0035】
その他の添加剤
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、不飽和ポリエステル樹脂に通常添加する添加剤を添加することができる。例えば、炭酸カルシウム等の充填剤、MgO、Ca(OH)2等の増粘剤、ポリエチレンテレフタレート等の低収縮剤、ガラス繊維等の補強剤、ステアリン酸亜鉛等の離型剤、着色剤等を配合することができる。
【0036】
樹脂の成形
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、押出成形が可能な不飽和ポリエステル樹脂組成物である。押出成形は、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を加熱してプレキュアしながら押し出すことにより行うことができる。本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物のプレキュア成形物は、優れた可塑性を有しているので、プレキュアしながら押し出すことにより成形することができる。また、予めプレキュアした後、これを押出成形することもできる。このようにして得られる押出成形後のプレキュア成形物は、硬化反応を完全にするため、ポストキュアすることが好ましい。プレキュアの温度は、特に限定されるものではないが、一般には30〜80℃程度の温度で行われる。また、ポストキュアの温度も特に限定されるものではないが、一般には80〜160℃程度の温度で行われる。
【0037】
以上のようにして得られるプレキュア成形物は、上述のように優れた可塑性を有しているので、プレキュア成形後に切削加工等を行うことができる。
また、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、上述のように押出成形が可能な不飽和ポリエステル樹脂組成物であるが、その成形方法は、押出成形に限定されるものではなく、例えば、注型成形、圧縮成形、射出成形、ハンドレイアップ成形法等の従来から知られている一般的な成形方法により成形することができる。このような成形方法において、上述のように、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物のプレキュア成形物は、優れた可塑性を有しているので、従来は困難であった切削加工等を行うことができる。従って、押出成形以外の成形方法においても、適宜必要に応じてプレキュアを行い、適度の強度のプレキュア硬化物とした後、成形することができる。
【0038】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を押出成形してボタンを製造する場合、例えば、液状の原料樹脂を低温で一旦押し出し、プレキュアされた棒状の固体樹脂とし、複数の異なる色柄の棒状固体樹脂を柄組した後、再度高温で押し出し、柄組された絵柄を有する棒状体を得ることができる。また、固体状(粘土状)の原料樹脂を直接柄組し、これを高温で一度に棒状に押し出し、柄組された絵柄を有する棒状体を製造してもよい。このようにして得られた棒状体をカッティングし、カッティングしたものはそのままボタンに用いるか、あるいは圧縮成形するか、あるいは切削加工した後ポストキュアするか、あるいはポストキュアした後切削加工することにより最終製品に仕上げることができる。不飽和ポリエステル樹脂組成物を完全に硬化させるためには、カッティング後、圧縮成形またはポストキュアにより加熱することが好ましい。本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いることにより、ポストキュア後、薄いボタンであっても、欠けることなしに穴あけ加工等を行うことができる。
【0039】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物の用途は、特に限定されるものではなく、上記のようなボタン、ブローチ等の装飾品、FRPとしての、テラス等の波平板、下水道用等のパイプ、浴槽ユニット、浄化槽、漁船、ヨット、タンク、トレー等の通常の不飽和ポリエステル樹脂の用途に用いることができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、架橋剤としてのポリエステルを用いて不飽和ポリエステル樹脂を硬化させるので、ゲル化時におけるゲルの脆さを改善することができ、押出成形が可能となる。また、重合時の収縮を軽減することができ、硬化後の不飽和ポリエステル樹脂の脆さも改善することができ、耐衝撃性を向上させることができる。また、注型成形等においても、急激に硬化、収縮しないので、厚みのある成形物であっても、成形時に割れを生じることなく成形物を得ることができる。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を挙げ本発明を具体的に説明する。
以下の実施例及び比較例においては、架橋剤及びラジカル開始剤を添加した不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化挙動をレオロジ社製レオメーターMR−300により貯蔵弾性率(G´、単位dyn/cm2)を測定することにより評価した。弾性率G´が103オーダーになる手前の温度及び時間を、それぞれ硬化開始温度及び硬化開始時間とし、貯蔵弾性率G´が107オーダーになるときの温度及び時間を、それぞれ硬化終了温度及び硬化終了時間とした。なお、弾性率G´が107オーダーにならない場合には、106のオーダーの最も大きな測定値になるときの温度及び時間を、それぞれ硬化終了温度及び硬化終了時間とした。
【0042】
(実施例1)ビニルフェニレン基片末端ポリエステル(架橋剤)の合成
攪はん機、冷却器付き3つ口2リットル丸底フラスコに、プロピレングリコール76.10g(1.0モル)、無水フタル酸148.12g(1.0モル)を入れ、窒素気流下、オイルバスにて、150℃、1時間加熱し、さらに、210℃に1時間かけて上げ、210℃、4時間脱水縮合反応させた。反応後、反応物を500mlビーカーに入れ、無色、固体のポリプロピレンフタレート106.95g(収率51.9%)を得た。GPCにより分子量を測定した結果、数平均分子量=1,218、重量平均分子量=2,022、重量平均分子量/数平均分子量=1.66であった。また酸価は29.83であった。
【0043】
攪はん機、冷却器付き3つ口500ml丸底フラスコに、ポリプロピレンフタレート30.0g(酸価より求めたカルボキシル基=0.0249グラム当量)を入れ、DMF15mlに溶解した。次いで、クロロメチルスチレン11.38g(0.076モル)、50%水酸化ナトリウム水溶液2gを入れ、30℃で48時間反応させた。反応後、反応物をn−ヘプタン中に投入し、ポリマーを沈殿させ、水、ジエチルエーテル、n−ヘプタンで数回洗い、減圧乾燥し、ビニルフェニレン基片末端ポリエステル(淡黄色固体)、27.77g(収率84.5%)を得た。GPCにより分子量を測定した結果、数平均分子量=1,327、重量平均分子量=2,103、重量平均分子量/数平均分子量=1.59であった。そして酸価は0.26であり、この酸価から、反応率は99.1%であった。またIR吸収スペクトルは以下のとおりであった。
【0044】
IR吸収スペクトル:3530、3438cm−1、3072cm−1(=CH2基)、2983、2883cm−1(メチル基)、2948cm−1(メチレン基)、1723cm−1(エステル基)、1668cm−1(末端ビニル基)、1590、1488cm−1(フェニル基)、1449cm−1(メチル、メチレン、フェニル基)、1386cm−1(メチル基)、1265、1123、1067、987、920、850、784cm−1、745cm−1(オルソ置換フェニル基)、706、655、559、460cm−1。
【0045】
またバリアンUNITY−プラス400によりNMRを測定した。400MHz IHNMR(CDCl3)(ppm):δ=7.674(フェニル基プロトン、エステル基メタ位、2H)、7.470(フェニル基プロトン、エステル基オルト位、2H)、5.389(メチン基プロトン、1H)、4.369(メチレン基プロトン、2H)、1.310(メチル基のプロトン、3H)、7.32(末端ビニルベンジル基のフェニル基プロトン)、6.68(末端ビニルベンジル基の=CH−)、5.75(末端ビニルべンジル基の=CH2)、4.11(末端ビニルベンジル基のメチレン基プロトン)。100MHz13CNMR(CDCl3)(ppm):δ=167.087(カルボニル基炭素)、132.220(フェニル基炭素、エステル基メタ位)、131.483(フェニル基炭素、エステル基結合炭素)、129.365(フェニル基炭素、エステル基オルト位)、69.997(メチン基炭素)、67.438(メチレン基炭素)、16.574(メチル基炭素)、138.1(末端ビニルベンジル基、=CH−)、136.7(末端ビニルベンジル基、フェニル基炭素、ビニル基結合炭素)、134.0(末端ビニルベンジル基、フェニル基炭素、メチレン基結合炭素)、128.996(末端ビニルベンジル基、フェニル基炭素、ビニル基のメタ位)、126.639(末端ビニルベンジル基、フェニル基炭素、ビニル基のオルト位)、114.5(末端ビニルベンジル基、CH2=)、71.3(末端ビニルベンジル基、メチレン基炭素)。
【0046】
(実施例2)ビニルフェニレン基両末端ポリエステル(架橋剤)の合成
攪はん機、冷却器付き3つ口2リットル丸底フラスコに、プロピレングリコール76.10g(1.0モル)、無水フタル酸148.12g(1.0モル)を入れ、窒素気流下、オイルバスにて、150℃、1時間加熱し、さらに、210℃に1時間かけて上げ、210℃、4時間脱水縮合反応させた。反応後、反応物を500mlビーカーに入れ、無色、固体のポリプロピレンフタレート106.95g(収率51.9%)を得た。GPCにより分子量を測定した結果、数平均分子量=1,218、重量平均分子量=2,022、重量平均分子量/数平均分子量=1.66であった。そして酸価は29.83であった。
【0047】
攪はん機、冷却器付き3つ口500ml丸底フラスコに、ポリプロピレンフタレート30.0g(酸価より求めたカルボキシル基=0.0249グラム当量)、無水フタル酸4.05(0.0274モル)を入れ、ピリジン50mlに溶解した。そして100℃で3時間反応させた。反応後、反応物をn−ヘキサン中に投入し、ポリマーを沈殿させ、メタノール、ジエチルエーテル、n−ヘキサンで数回洗い、減圧乾燥し、カルボキシル基両末端ポリエステル(ポリプロピレンフタレート)25.48g(収率74.8%)を得た。GPCにより分子量を測定した結果、数平均分子量=1,242、重量平均分子量=2,118、重量平均分子量/数平均分子量=1.71であった。そして酸価は41.54であった。
【0048】
攪はん機、冷却器付き3つ口500ml丸底フラスコに、上記のカルボキシル基両末端ポリプロピレンフタレート20g(酸価より求めたカルボキシル基=0.023グラム当量)を入れ、DMF15mlに溶解した。次いで、クロロメチルスチレン10.57g(0.069モル)、50%水酸化ナトリウム水溶液0.92gを入れ、30℃で48時間反応させた。反応後、反応物をn−ヘプタン中に投入し、ポリマーを沈殿させ、水、ジエチルエーテル、n−ヘプタンで数回洗い、減圧乾燥し、ビニルフェニレン基両末端ポリエステル(黄色固体)、16.37g(収率69.6%)を得た。GPCにより分子量を測定した結果、数平均分子量=1,271、重量平均分子量=2,246、重量平均分子量/数平均分子量=1.77であった。そして酸価は0.27であり、この酸価から、反応率は99.4%であった。またIR吸収スペクトルは以下のとおりであった。
【0049】
IR吸収スペクトル:3529、3447cm−1、3072cm−1(=CH2基)、2984、2883cm−1(メチル基)、2947cm−1(メチレン基)、1728cm−1(エステル基)、1672cm−1(末端ビニル基)、1587、1486cm−1(フェニル基)、1452cm−1(メチル、メチレン、フェニル基)、1385cm−1(メチル基)、1264、1125、1069、988、919、850、784cm−1、745cm−1(オルソ置換フェニル基)、705、652、559、461cm−1。
【0050】
またバリアンUNITY−プラス400によりNMRを測定した。400MHz IHNMR(CDCl3)(ppm):δ=7.673(フェニル基プロトン、エステル基メタ位、2H)、7.467(フェニル基プロトン、エステル基オルト位、2H)、5.387(メチン基プロトン、1H)、4.390(メチレン基プロトン、2H)、1.326(メチル基のプロトン、3H)、7.32(末端ビニルベンジル基のフェニル基プロトン)、6.68(末端ビニルベンジル基の=CH−)、5.75(末端ビニルベンジル基の=CH2)、4.11(末端ビニルベンジル基のメチレン基プロトン)。100MHz13CNMR(CDCl3)(ppm):δ=166.775(カルボニル基炭素)、131.777(フェニル基炭素、エステル基メタ位)、131.167(フェニル基炭素、エステル基結合炭素)、129.024(フェニル基炭素、エステル基オルト位)、69.679(メチン基炭素)、66.991(メチレン基炭素)、16.269(メチル基炭素)、136.5(末端ビニルベンジル基、=CH−)、136.0(末端ビニルベンジル基、フェニル基炭素、ビニル基結合炭素)、133.5(末端ビニルベンジル基、フェニル基炭素、メチレン基結合炭素)、128.6(末端ビニルベンジル基、フェニル基炭素、ビニル基のメタ位)、126.6(末端ビニルベンジル基、フェニル基炭素、ビニル基のオルト位)、115.0(末端ビニルベンジル基、CH2=)、71.5(末端ビニルベンジル基、メチレン基炭素)。
【0051】
(実施例3)ビニルフェニレン基片末端ポリエステル(架橋剤)による不飽和ポリエステルの硬化
不飽和ポリエステル(大日本インキ化学工業社製、商品名「MR8141」、スチレン不含、数平均分子量=2,054、重量平均分子量=5,953、重量平均分子量/数平均分子量=2.90、プロピレングリコール−フタル酸−エチレングリコール−フマル酸を単位としたフマレート基当量=348g/eq(1グラム当量のフマレート基を含む樹脂のグラム数))35.0g(フマレート基=0.10グラム当量)、実施例1で得られたビニルフェニレン基片末端ポリエステル(数平均分子量=1,327、重量平均分子量=2,103、重量平均分子量/数平均分子量=1.59、ビニルフェニレン基当量=2,103g/eq)10.0g(ビニルフェニレン基=0.05グラム当量)、スチレン20.8g(0.20モル、(スチレン+ビニルフェニレン基)/フマレート基のモル比=2.05)、ラジカル開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド0.5g及びt−ブチルパーベンゾエート0.5gを混合し、プレキュアを70℃、2時間で行ない、ポストキュアを120℃、2時間で行なって注型成形した。
【0052】
プレキュア成形物はたわみが大きく、破断せず、その曲げ強度等は測定できなかった。ポストキュア成形物の曲げ強度は79.0MPa、曲げ弾性率は4.390GPa、破断たわみは3.32mmであった。
【0053】
レオロジ社製「レオメーターMR−300」にて、硬化挙動(貯蔵弾性率G′)を測定した。温度分散測定(25℃→125℃、昇温速度2℃/分)では、82.7℃(G′=4.32×102dyn/cm2)で硬化が始まり、98.7℃(G′=1.02×107dyn/cm2)で硬化は終了した。80℃一定の時間分散測定では、202秒(G′=8.05×102dyn/cm2)に硬化が始まり、882秒(G′=1.00×107dyn/cm2)に硬化は終了した。硬化に要する時間(ゲル化時間)は620秒であった。
【0054】
(実施例4)ビニルフェニレン基両末端ポリエステル(架橋剤)による不飽和ポリエステルの硬化
不飽和ポリエステル(大日本インキ化学工業社製、商品名「MR8141」、スチレン不含、数平均分子量=2,054、重量平均分子量=5,953、重量平均分子量/数平均分子量=2.90、プロピレングリコール−フタル酸−エチレングリコール−フマル酸を単位としたフマレート基当量=348g/eq(1グラム当量のフマレート基を含む樹脂のグラム数))35.0g(フマレート基=0.10グラム当量)、実施例2で得られたビニルフェニレン基両末端ポリエステル(数平均分子量=1,271、重量平均分子量=2,246、重量平均分子量/数平均分子量=1.77、ビニルフェニレン基当量=1,786g/eq)10g(ビニルフェニレン基=0.006グラム当量)、スチレン20.8g(0.20モル、(スチレン+ビニルフェニレン基)/フマレート基のモル比=2.06)、ラジカル開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド0.5g及びt−ブチルパーベンゾエート0.5gを混合し、プレキュアを70℃、2時間で行ない、ポストキュアを120℃、2時間で行なって注型成形した。
【0055】
プレキュア成形物はたわみが大きく、破断せず、その曲げ強度等は測定できなかった。ポストキュア成形物の曲げ強度は114.0MPa、曲げ弾性率は4.680GPa、破断たわみは4.89mmであった。
【0056】
レオロジ社製「レオメーターMR−300」にて、硬化挙動(貯蔵弾性率G′)を測定した。温度分散測定(25℃→125℃、昇温速度2℃/分)では、76.8℃(G′=6.41×102dyn/cm2)で硬化が始まり、94.7℃(G′=1.02×107dyn/cm2)で硬化は終了した。80℃一定の時間分散測定では、252秒(G′=5.15×102dyn/cm2)に硬化が始まり、842秒(G′=1.00×107dyn/cm2)に硬化は終了した。硬化に要する時間(ゲル化時間)は590秒であった。
【0057】
(比較例1)スチレンによる不飽和ポリエステルの硬化
不飽和ポリエステル(大日本インキ化学工業社製、商品名「MR8141」、スチレン不含、数平均分子量=2,054、重量平均分子量=5,953、重量平均分子量/数平均分子量=2.90、プロピレングリコール−フタル酸−エチレングリコール−フマル酸を単位としたフマレート基当量=348g/eq(1グラム当量のフマレート基を含む樹脂のグラム数))60.0g(フマレート基=0.17グラム当量)、スチレン40.0g(0.38モル、(スチレン/フマレート基のモル比=2.24)、ラジカル開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド0.5g及びt−ブチルパーベンゾエート0.5gを混合し、プレキュアを70℃、2時間で行ない、ポストキュアを120℃、2時間で行なって注型成形した。
【0058】
プレキュア成形物は脆くくずれやすいため、成形できず、その曲げ強度等は測定できなかった。
ポストキュア成形物の曲げ強度は92.0MPa、曲げ弾性率は4.350GPa、破断たわみは4.13mmであった。
【0059】
レオロジ社製「レオメーターMR−300」にて、硬化挙動(貯蔵弾性率G′)を測定した。温度分散測定(25℃→125℃、昇温速度2℃/分)では、80.6℃(G′=6.34×102dyn/cm2)で硬化が始まり、94.7℃(G′=1.09×107dyn/cm2)で硬化は終了した。80℃一定の時間分散測定では、222秒(G′=1.15×102dyn/cm2)に硬化が始まり、802秒(G′=1.00×107dyn/cm2)に硬化は終了した。硬化に要する時間(ゲル化時間)は580秒であった。
【0060】
(比較例2)ジアリルフタレートプレポリマーによる不飽和ポリエステルの硬化
不飽和ポリエステル(大日本インキ化学工業社製、商品名「MR8141」、スチレン不含、数平均分子量=2,054、重量平均分子量=5,953、重量平均分子量/数平均分子量=2.90、プロピレングリコール−フタル酸−エチレングリコール−フマル酸を単位としたフマレート基当量=348g/eq(1グラム当量のフマレート基を含む樹脂のグラム数))35g(フマレート基=0.1グラム当量)、ジアリルフタレートプレポリマー(ダイソー社製、商品名「ダイソーダップ」、数平均分子量=8,665、重量平均分子量=42,570、重量平均分子量/数平均分子量=4.91、ヨウ素価=60、アリル基当量417g/eq)20.0g(アリル基=0.048グラム当量)、スチレン20.8g(0.2モル、(スチレン+アリル基)/フマレート基のモル比=2.48)、ラジカル開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド0.5g及びt−ブチルパーベンゾエート0.5gを混合し、プレキュアを70℃、2時間で行ない、ポストキュアを120℃、2時間で行なって注型成形した。
【0061】
プレキュア成形物の曲げ強度は8.5MPa、曲げ弾性率は0.502GPa、破断たわみは1.11mmであった。ポストキュア成形物の曲げ強度は11.9MPa、曲げ弾性率は0.618GPa、破断たわみは1.28mmであった。
【0062】
レオロジ社製「レオメーターMR−300」にて、硬化挙動(貯蔵弾性率G′)を測定した。温度分散測定(25℃→125℃、昇温速度2℃/分)では、80.8℃(G′=8.34×10−1dyn/cm2)で硬化が始まり、104.7℃(G′=1.03×107dyn/cm2)で硬化は終了した。80℃一定の時間分散測定では、112秒(G′=8.44×102dyn/cm2)に硬化が始まり、1,742秒(G′=1.00×107dyn/cm2)に硬化は終了した。硬化に要する時間(ゲル化時間)は1,630秒であった。
【0063】
(比較例3)ジアリルイソフタレートプレポリマーによる不飽和ポリエステルの硬化
不飽和ポリエステル(大日本インキ化学工業社製、商品名「MR8141」、スチレン不含、数平均分子量=2,054、重量平均分子量=5,953、重量平均分子量/数平均分子量=2.90、プロピレングリコール−フタル酸−エチレングリコール−フマル酸を単位としたフマレート基当量=348g/eq(1グラム当量のフマレート基を含む樹脂のグラム数))35g(フマレート基=0.1グラム当量)、ジアリルイソフタレートプレポリマー(ダイソー社製、商品名「ダイソーイソダップ」、数平均分子量=10,469、重量平均分子量=153,769、重量平均分子量/数平均分子量=14.69、ヨウ素価=83、アリル基当量=303g/eq)20g(アリル基=0.066グラム当量)、スチレン20.8(0.2モル、(スチレン+アリル基)/フマレート基のモル比=2.66)、ラジカル開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド0.5g及びt−ブチルパーベンゾエート0.5gを混合し、プレキュアを70℃、2時間で行ない、ポストキュアを120℃、2時間で行なって注型成形した。
【0064】
プレキュア成形物の曲げ強度は13.6MPa、曲げ弾性率は0.512GPa、破断たわみは2.03mmであった。ポストキュア成形物の曲げ強度は21.5MPa、曲げ弾性率は0.825GPa、破断たわみは2.15mmであった。
【0065】
レオロジ社製「レオメーターMR−300」にて、硬化挙動(貯蔵弾性率G′)を測定した。温度分散測定(25℃→125℃、昇温速度2℃/分)では、66.7℃(G′=3.16×102dyn/cm2)で硬化が始まり、102.7℃(G′=1.02×107dyn/cm2)で硬化は終了した。80℃一定の時間分散測定では、32秒(G′=4.69×102dyn/cm2)に硬化が始まり、1,672秒(G′=1.00×107dyn/cm2)に硬化は終了した。硬化に要する時間(ゲル化時間)は1,640秒であった。
【0066】
実施例3及び4並びに比較例1〜3におけるプレキュア成形物及びポストキュア成形物の曲げ強度等の測定結果、並びに80℃での弾性率G´の時間分散による測定結果及び25℃−125℃での弾性率G´の温度分散による測定結果をそれぞれ表3及び表4にまとめて示す。
【0067】
また、各実施例及び各比較例のポストキュア成形物について、ガラス転移温度(Tg)及び橋かけ点間平均分子量(Mc)を測定した。ガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性の温度分散測定結果(10Hz)より求めたtanδのピーク温度をTgとした。また、橋かけ点間平均分子量(Mc)は、ゴム領域における貯蔵弾性率(E´、Tg+40℃の温度の値)より、次式のゴム弾性理論式を用いて求めた。
【0068】
E´=3φdRT/Mc
(φ:フロント係数、d:密度、R:気体定数、T:絶対温度)
以上のようにして得られたガラス転移温度及び橋かけ点間平均分子量の測定値を表3に併せて示す。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
表3から明らかなように、架橋剤としてスチレンを用いた比較例1では、脆くくずれやすいため、プレキュア成形物を得ることができなかった。また、架橋剤としてジアリルフタレートを用いた比較例2及び3では、プレキュア成形物の破断たわみが小さく、容易に破壊されてしまう成形物であり、押出成形等に適さないことがわかる。これに対し、各実施例のプレキュア成形物は、たわみが非常に大きく破断しない成形物であった。
【0072】
また、各実施例のポストキュア成形物の破断たわみは、比較例2及び3に比べ大きくなっており、脆さ及び耐衝撃性が改善されていることがわかる。
また、表4から明らかなように、本発明に従う各実施例の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、押出成形をはじめ種々の成形方法で硬化させることができる硬化挙動を示すことがわかる。
【0073】
(実施例5)不飽和ポリエステル樹脂組成物の押出成形
実施例3及び4において調製した各不飽和ポリエステル樹脂組成物を、 Custom Scientific Instruments社製、CS−194AV−270型押出機で75℃にて、3mm径の棒状に押し出した。得られた棒状のプレキュア成形体を、90℃にて30分間ポストキュアして棒状の硬化樹脂を得た。比較例1〜3において調製した各不飽和ポリエステル樹脂組成物についても、同様にして押出機で押出成形したが、脆くてくずれやすくまとまらないため、棒状の成形体は得られなかった。
Claims (2)
- 両末端にビニルフェニレン基を有する重量平均分子量300以上のポリエステルからなる架橋剤。
- ポリエステルの末端カルボキシル基に、スチレンまたはその誘導体のハロゲン化物を反応させて両末端にビニルフェニレン基を有する重量平均分子量300以上のポリエステルを合成することを特徴とする製造方法。
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