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バラン回路及びバランス型周波数変換器

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H01P5/10 Coupling devices of the waveguide type for linking dissimilar lines or devices for coupling balanced lines or devices with unbalanced lines or devices

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JP3576754B2

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健二郎 西川
一彦 豊田
恒雄 徳満
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1997 JP 1998 US EP DE

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2004-10-13
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、MMlC上に他の能動回路等と同時に形成され、例えば1GHz以上の高周波信号を分配合成するバラン回路及びそのバラン回路を利用したバランス型周波数変換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
バラン回路は、例えば1GHz以上の高周波信号を分配合成する電気回路として用いられる。一般に、高出力増幅器やバランス型周波数変換器(バランス型ミキサ)その他の高周波回路において、単位ユニットとなる増幅器やミキサを2つ以上使用して回路を構成し、高周波信号を各単位ユニットとなる増幅器やミキサに180度位相をずらして等分配または各単位ユニットから180度位相をずらして等合成する必要がある。そのために、高周波信号を180度位相をずらして分配合成する分配/合成回路を単位ユニットの入カ側または出力側に設け、高周波回路を構成している。
【0003】
図23は、従来のマーチャンドバランの等価回路図である。この図23に示すマーチャンドバランは、位相を180度ずらして信号を合成分配するバラン回路であり、R.Schwindtが報告しているものである(1994 IEEE MTT−S International Microwave Symposium Digest,pp.389−391)。
図23において、この従来のマーチャンドバランは、1/4波長の長さを持つ第1の結合線路1の第1端子Bと1/4波長の長さを持つ第2の結合線路2の第1端子A’とを接続し、第1の結合線路1の第1端子Bから見て当該第1の結合線路1のアイソレーション端子Cを接地すると共に、第2の結合線路2の第1端子A’から見て当該第2の結合線路2のアイソレーション端子D’を接地し、第2の結合線路2の第1端子A’から見て第2の結合線路2の通過端子B’を開放としたとき、第1の結合線路1の第1端子Bから見て通過端子A(端子1)から信号を入力し、第1の結合線路1の第1端子Bから見て第1の結合線路1の結合端子D(端子2)及び第2の結合線路2の第1端子A’から見て第2の結合線路2の結合端子C’(端子3)からそれぞれ信号を取り出すようになっている。
【0004】
図24は、結合線路が接続された側(A〜B’)の1/2波長伝送線路上の定在波の電圧、電流波形を模式的に示したものである。電流Iは、1/4波長の位置である接続部B(A’)で最大となり、電圧Vは、0となる。さらに、電圧Vは、接続部B(A’)の前後では等振幅で逆位相となる。このとき、D端とC’端は、それぞれ、B端とA’端から見たときの結合端子となっているので、B端、A’端での電圧Vは、等振幅で互いに逆位相となる。
【0005】
つまり、上記構成で、端子1から入力した信号は、端子2と端子3に180度の位相差をもって等振幅で出力される。
図23に示す従来のマーチャンドバランの特性は、何れも計算値であるが、図25(出力振幅特性)、図26(位相特性)に示すようになっている。両図において、太い実線は、従来の構成による特性(端子2、3からの出力振幅、位相差)を示し、細い実線は、理想的なバランの特性を示す。計算に用いた結合線路のパラメータは、以下に示す通りである。従来の構成のパラメータによって求めた計算結果は、測定値と良く一致している。
【0006】
Figure 0003576754
図25、図26から、図23に示すマーチャンドバランは、出力信号の振幅と位相のずれが大きく、動作帯域が狭くなっていることがわかる。これは、上記パラメータの比較から理解できるように、GaAsやSiなどの半導体基板上にFET等の能動素子と同時に受動回路を形成するマイクロストリップ型MMlCやユニプレーナ型MMlC、また上記半導体基板上に多層に誘電体膜を形成し、誘電体膜上に回路を形成する多層化及び3次元MMlCにおいては、マーチャンドバランを構成する結合線路の偶モードの特性インピーダンスが小さく原理的に大きくできないこと、直交モードの位相速度に差があること、さらにマーチャンドバランを構成する伝送線路の損失が導波管や同軸線路を用いて実現される高周波回路に比較して大きい(概ね0.1dB/mm以上)こと、等に起因するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、MMIC上に形成されるマーチャンドバランでは、バランを構成する結合線路の偶モードの特性インピーダンスを大きくできないことと直交モードの位相速度に差があることによって、バランの出力信号の振幅と位相のずれが大きくなり、動作帯域が狭くなるという問題があり、さらに、バランを構成する伝送線路の損失が大きいことも出力信号の振幅と位相のずれの拡大や動作帯域の帯域化を生じる原因となっていた。
【0008】
そこで、例えば図27、図28に示すような、MMlC上に実現された改良されたマーチャンドバランが提案されている。図27は、S.A.Massが提案しているものである(IEEE Trans.on MTT−41,No12,pp.2330−2335,Dec.,1993)。また、図28は、Y.I.Ryuが提案しているものである(1995 IEEE Microwave and Millimeter−Wave Monolithic Circuits Symposium Digest,pp.155−158)。
【0009】
これらの改良された構成では、マーチャンドバランを構成する結合線路がインタディジタル型で形成され、かつ基板厚が通常より厚い半導体基板上に形成されている。これによって、偶モードの特性インピーダンスを大きくでき、かつ両モードの位相速度を近付けることができ、図23に示した従来の構成よりも良好な回路特性を得ることができる。
【0010】
しかしながら、図27、図28の構成では、結合線路を構成する線路数が増加し、かつ基板厚が厚いために伝送線路幅が大きくなるので、回路の小型化が困難であるという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、MMlC上に形成されるマーチャンドバランにおいて、バラン回路を構成する結合線路の偶モードの特性インビータンスが大きくできない,直交モードの位相速度に差がある,損失が大きい,ことによって生じるバランの出力信号の振幅と位相のずれや挟帯域化を簡易な要素の付加によって改善し、出力信号の振幅と位相のずれが小さく、かつ広帯域化、小型化が可能なバラン回路を実現し、それを用いたバランス型周波数変換器を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、マーチャンドバランを構成する1/4波長の長さを持つ2つの結合線路の接続部に伝送線路を挿入したことを特徴とする。この伝送線路は、半導体基板表面に接地導体と信号線路の両方を形成するコプレーナ線路により形成される。
請求項2に記載の発明は、マーチャンドバランを構成する1/4波長の長さを持つ2つの結合線路の接続部に伝送線路を挿入したことを特徴とする。この伝送線路は、多層に積層された誘電体膜上に形成される。
請求項3に記載の発明は、マーチャンドバランを構成する1/4波長の長さを持つ2つの結合線路の接続部と接地導体との間に容量を挿入したことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、マーチャンドバランを構成する1/4波長の長さを持つ2つの結合線路のそれぞれにおいて結合端子とアイソレーション端子を持つ方の伝送線路の一部に、結合線路を構成しない伝送線路をそれぞれ挿入したことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、マーチャンドバランを構成する1/4波長の長さを持つ2つの結合線路のそれぞれにおいて結合端子とアイソレーション端子を持つ方の伝送線路の一部に、イングクタをそれぞれ挿入したことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至請求項5に記載のバラン回路において、マーチャンドバランを構成する1/4波長の長さを持つ2つの結合線路のそれぞれをマイクロストリップ線路で形成したことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載のバラン回路において、マーチャンドバランを構成する1/4波長の長さを持つ2つの結合線路のそれぞれをコプレーナ線路で形成したことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項3乃至請求項5に記載のバラン回路において、マーチャンドバランを構成する1/4波長の長さを持つ2つの結合線路のそれぞれを多層に積層された誘電体膜上に形成したことを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、バランス型周波数変換器において、180度信号分配回路が、請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のバラン回路で形成されることを特徴とする。
【0016】
マーチャンドバランでは、バランを構成する1/4波長の長さを持つ2つの結合線路の直交モードの位相速度に差がある場合には、バランの出力信号の振幅、位相のずれが生じる。一方、偶モード/奇モードの位相速度は、そのモードの単位長当たりの容量として求めることができるので、何れの形式のMMICを採用するかによって、当該MMICにおける結合線路の偶モードの位相速度と奇モードの位相速度との大小関係は特定できる。
【0017】
そこで、本発明では、結合線路の偶モードの位相速度が奇モードの位相速度よりも大きい場合には、偶モードの位相速度が小さくなるように補正する伝送線路(請求項1,2)または容量(請求項3)を付加し、逆に、結合線路の偶モードの位相速度が奇モードの位相速度よりも小さい場合には、偶モードの位相速度が大きくなるように補正する伝送線路(請求項4)またはインダクタ(請求項5)を付加する。
【0018】
その結果、バラン回路の出力信号の振幅、位相のずれを小さくでき、位相バランスを広帯域にわたって保つことができる。また、伝送線路、容量、インダクタという簡易かつ回路規模を大きくしないで済む要素の付加によって実現できるので、小型化が可能となる。 したがって、バランス型周波数変換器において、本発明に係るバラン回路を180度信号分配回路として用いれば(請求項9)、周波数変換器に対し局発信号を等振幅で、逆位相に分配できるので、局発信号が高周波出力端に漏れて出力されるのを抑制できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態:参考例
図1、図2は、本発明の基本となる実施形態のマーチャンドバランの構成を示す図である。図1は斜視図、図2は等価回路図である。この第1実施形態は、3次元MMIC構造のマーチャンドバランに関する。なお、両図において、端子1、2、3、A〜D及びA’〜D’の符号は、対応した位置を示している。また、これらの符号は、従来例(図23)で使用したものと対応している。
【0020】
図1、図2において、半導体基板11の上には接地導体10が積層され、接地導体10上には第1の誘電体膜12が積層される。この第1の誘電体膜12の上面には、図中左から右に向かって、第1の結合線路1の下層配線、第1の伝送線路3、第2の結合線路2の下層配線が、それぞれ形成される。第1の結合線路1及び第2の結合線路2の線路長は、それぞれ1/4波長である。
【0021】
第1の結合線路1の下層配線は、図中左方の一端が通過端子Aであり、他端が第1端子Bである。通過端子Aは、信号入力の端子1に接続される。また、第2の結合線路2の下層配線は、図中右方の一端が通過端子B’であり、他端が第1端子A’である。この第1実施形態では、第1の結合線路1の下層配線の他端(第1端子)Bと第2の結合線路2の下層配線の他端(第1端子)A’とを、第1の伝送線路3で接続する構成としてある。この第1の伝送線路3の線路長は、任意長L である。
【0022】
このような結合線路の下層配線と第1の伝送線路3が形成された第1の誘電体膜12上に第2の誘電体膜13が積層される。この第3の誘電体膜13の上面には、第1の結合線路1の上層配線、第2の結合線路2の上層配線がそれぞれ形成される。第1の結合線路1の上層配線は、図中左方の一端が接地されるアイソレーション端子Cであり、他端が結合端子Dである。この結合端子Dには、信号出力の端子2が接続される。また、第2の結合線路2の上層配線は、図中右方の一端が接地されるアイソレーション端子D’であり、他端が結合端子C’である。この結合端子C’には、信号出力の端子3が接続される。
【0023】
図3は、本発明の第1、第2実施形態の基本動作の説明図である。図3(a)は振幅特性図(計算値)、図3(b)は位相特性図( 計算値) である。
図3(a)(b)において、実線(イ)は、マーチャンドバランを構成する第1及び第2の結合線路の直交モードの位相速度に差がない場合、実線(ロ)は、結合線路の直交モードの位相速度に差がある場合、実線(ハ)は結合線路の接続部に伝送線路を挿入した場合の特性曲線をそれぞれ示す。なお、結合線路及び挿入した伝送線路のパラメータは次の通りである。
【0024】
実線(イ)(ロ)(ハ)において、結合線路では、偶モードの特性インピーダンスZeは、Ze=121Ω、奇モードの特性インピーダンスZoは、Zo=21Ω、線路長Lは、L =1.987mmであり、伝送線路では、特性インピーダンスZoは、Zo=60Ω、実効誘電率εeffは、εeff=3.3である。特性インピーダンスZe、Zoの値は、前述した従来例の場合と同様である。
【0025】
また、実線(イ)において、結合線路の偶モードの実効誘電率εe、奇モードの実効誘電率εoは、それぞれ等しく、εe=εo=3.04である。また、実線(ロ)において、結合線路の偶モードの実効誘電率εeは、εe=3.04、奇モードの実効誘電率εoは、εo=4.22である。また、実線(ハ)において、結合線路では、偶モードの実効誘電率εe、奇モードの実効誘電率εoは、それぞれ等しくεe=εo=3.04であり、伝送線路では、線路長Lは、L=0.28mmである。
【0026】
図3(a)(b)から、結合線路の位相速度に差がある場合(ロ)の振幅,位相の変化と、伝送線路を挿入した場合(ハ)の振幅,位相の変化とは、結合線路の位相速度に差がない場合(イ)を中心としてほぼ対称となっていることがわかる。従って、結合線路の偶モードの特性インピーダンスや損失は従来と同様であるが、直交モードの位相速度に差があることに基づき生ずるマーチャンドバランの位相,振幅のずれを、適宜線路長L の第1の伝送線路3を挿入する、簡易な構成によって補正することができる。
【0027】
以上のことから、この第1実施形態のバラン回路は、第1の結合線路1の下層配線の第1端子Bと第2の結合線路2の下層配線の第1端子A’との間を任意線路長L の第1の伝送線路3で接続した構成によって、従来例(図23)と同様に、端子1から信号を入力すると、端子2及び端子3には等振幅で、位相が180度異なる信号が出力されるマーチャンドバランとして機能することがわかる。
【0028】
以下、第1実施形態のバラン回路(マーチャンドバラン)の動作を図4〜図6を参照して説明する。
図4は、図1、図2に示す構成のマーチャンドバランの1/4波長の長さを持つ第1の結合線路1と第2の結合線路2を接続する第1の伝送線路3の線路長さL を変えたときのバランの帯域との関係を示したものである(計算値)。なお、バランの動作中心周波数20GHz帯での例を示した。
【0029】
ここで、バランの動作帯域は、信号合成分配回路がバランス型周波数変換器等に用いられる場合を想定し、位相差10度以内、振幅差1dB以内という条件に加えて各端子の出力信号の3dB帯域を満たす周波数領域としている。これは、S.A.Maasがその著書Microwave Mixers Second Edition,Artech House,INC.,1993で報告していることを参考にしたものである。挿入した第1の伝送線路3のパラメータは、特性インピーダンスZoが、Zo=60Ω、実効誘電率εeffが、εeff=3.3である。
【0030】
図4において、従来例(図23)での比帯域は、○印の狭い範囲であるが、結合線路を接続する伝送線路を導入する請求項1に係る本発明の構成では、枠で囲って示すように、バランの比帯域を1.8倍以上に拡大することができる。
図5は、挿入した伝送線路の線路長Lを一定値(L=0.3mm)とした場合の位相差及び振幅差の周波数特性図である。なお、位相速度は、偶モードの位相速度>奇モードの位相速度の関係である。
【0031】
図5において、太い実線が、線路長L(L=0.3mm)の伝送線路のある第1実施形態のバランの特性であり、細い実線が伝送線路のない従来構成のバランの特性である。図5に示すように、結合線路を接続する伝送線路を挿入することによってバランの出力信号の振幅及び位相のずれが小さくなっていることがわかる。
【0032】
つまり、図1、図2に示すように、1/4波長の2つの結合線路間に伝送線路を挿入する簡易な構成によって、バランの出力信号の振幅及び位相のずれを小さくし、動作帯域を拡大することができる。
図6は、マーチャンドバランを構成する結合線路の線路長(L)を変えたときのバランの動作帯域を示したものである(計算値)。図6において、縦軸は20GHzでの結合線路の1/4波長の長さ(L10=1.987mm)で規格化した結合線路の線路長(L/L10)である。横軸は周波数(GHz)である。また、○印と直線で結ばれた周波数範囲は、バランの動作帯域を示し、途中の●印は結合線路の中心周波数(Center frequency of coupler)を示している。
【0033】
図6に示すように、動作周波数の上限は、結合線路の中心周波数の上昇とともに高くなるが、動作周波数の下限については微増するのみである。つまり、結合線路の中心周波数を高く(線路長を短く)しても、バランの動作周波数の下限をほとんど変えずに上限のみを高くすることができるので、広帯域化が容易に実現でき、また結合線路長を短くできるので、回路の小型化が容易に実現できる。
【0034】
この第1実施形態では、半導体基板上に接地導体を形成し、その上に誘電体膜を2層形成し、その膜上に回路を形成する多層/3次元MMlCの構造について示したが、半導体基板裏面に接地導体を形成するマイクロストリップ型MMlCの構成でも同様の効果が得られる。また、結合線路や伝送線路は一層の小型化のためメアンダ状やスパイラル状に折り曲げて形成しても同様の効果が得られる。
【0035】
(第2実施形態)
図7は、本発明の請求項1に対応する実施形態のマーチャンドバランの構成を示す斜視図である。等価回路は、図2である。この第2実施形態は、コプレーナ線路で構成したマーチャンドバランに関する。なお、図7において、端子1、2、3、A〜D及びA’〜D’の符号は、図2の対応した位置を示している。また、これらの符号は、従来例(図23)で使用したものと対応している。
【0036】
図7に示すように、半導体基板11の上面には、第1の結合線路1の2つの伝送線路及び第2の結合線路2の2つの伝送線路が、それぞれ並列に配置され、それぞれの2つの伝送線路の一方が、若干幅広の第1の伝送線路3で接続される。また、半導体基板11の上面には、接地導体10が形成されている。
したがって、第1実施形態と同様にバランの出力信号の振幅及び位相のずれを小さくし、帯域を拡大することができる。また、結合線路長を所望の中心周波数よりも高い周波数帯の1/4波長としても、バランの周波数帯域の劣化はないので、結合線路長を短くできる分回路の小型化が実現できる。
【0037】
この第2実施形態では、結合線路や伝送線路は直線状に形成してあるが、一層の小型化のためメアンダ状やスバイラル状に折り曲げて形成しても同様である。
(第3実施形態)
図8、図9は、本発明の請求項3、6、8に対応する実施形態のマーチャンドバランの構成を示す図である。図8は斜視図、図9は等価回路図である。この第3実施形態は、3次元MMIC構造のマーチャンドバランに関する。なお、両図において、端子1、2、3、A〜D及びB’〜D’の符号は、対応した位置を示している。また、これらの符号は、従来例(図23)で使用したものと対応している。但し、図8の符号Bは、従来例での符号BとA’に対応している。
【0038】
図8、図9において、半導体基板11上には接地導体10が積層されるとともに、接地導体10の一部を削除して露出した半導体基板11上に第1の容量4が形成される。この第1の容量4の一端は、接地導体10に接続されている。この接地導体10上に第lの誘電体膜12が積層される。この第1の誘電体膜12の上面には、第1の結合線路1の下層配線と、第2の結合線路2の下層配線とがそれぞれ形成される。第1の結合線路1及び第2の結合線路の線路長は、それぞれ1/4波長である。
【0039】
第1の結合線路1の下層配線は、図中左方の一端が通過端子Aであり、他端が第1端子Bである。通過端子Aは、信号入力の端子1に接続される。また、第2の結合線路2の下層配線は、図中右方の一端が通過端子B’であり、他端が第1端子Bである。第1の結合線路1の下層配線の他端(第1端子)と第2の結合線路2の下層配線の他端(第1端子)との接続部Bは、スルーホール14を介して第1の容量4の他端に接続される。
【0040】
つまり、この第3実施形態では、第1の結合線路1の下層配線の他端(第1端子)と第2の結合線路2の下層配線の他端(第1端子)との接続部Bを第1の容量4を介して接地する構成としてある。
このような結合線路の下層配線が形成された第lの誘電体膜12上に第2の誘電体膜13が積層される。この誘電体膜13の上面には、第1の結合線路1の上層配線及び第2の結合線路2の上層配線がそれぞれ形成される。第1の結合線路1の上層配線は、一端が接地されるアイソレーション端子Cであり、他端が結合端子Dである。結合端子Dには、信号出力の端子2が接続される。また、第2の結合線路2の上層配線は、一端が接地されるアイソレーション端子D’であり、他端が結合端子C’である。結合端子C’には、信号出力の端子3が接続される。
【0041】
図10は、請求項2に記載の発明(結合線路と接地導体との間に容量を形成したバラン回路)に対応する第3、第4実施形態の基本動作の説明図である。図10(a)は振幅特性図(計算値)、図10(b)は位相特性図(計算値)である。
図10(a)(b)において、実線(イ)は、マーチャンドバランを構成する第1及び第2の結合線路の直交モードの位相速度に差がない場合、実線(ロ)は、結合線路の直交モードの位相速度に差がある場合、実線(ハ)は結合線路の接続部と接地導体との間に容量を形成した場合の特性曲線を示す。なお、結合線路及び形成した容量のパラメータは次の通りである。
【0042】
実線(イ)(ロ)(ハ)において、結合線路では、偶モードの特性インピーダンスZeは、Ze=121Ω、奇モードの特性インピーダンスZoは、Zo=21Ω、線路長Lは、L =1.987mmである。これらは、第1実施形態の場合と同様である。
また、実線(イ)において、結合線路の偶モードの実効誘電率εe、奇モードの実効誘電率εoは、それぞれ等しくεe=εo=3.04である。また、実線(ロ)において、結合線路の偶モードの実効誘電率εeは、εe=3.04、奇モードの実効誘電率εoは、εo=4.22である。また、実線(ハ)において、結合線路では、偶モードの実効誘電率εe、奇モードの実効誘電率εoは、それぞれ等しくεe=εo=3.04であり、形成した容量の値Cは、C=0.03pFである。
【0043】
図10(a)(b)から、結合線路の位相速度に差がある場合(ロ)の振幅,位相の変化と、容量を形成した場合(ハ)の振幅,位相の変化は、結合線路の位相速度に差がない場合(イ)を中心としてほぼ対称となっていることがわかる。従って、結合線路の偶モードの特性インピーダンスや損失は従来と同様であるが、直交モードの位相速度に差があることに基づき生ずるマーチャンドバランの位相,振幅のずれを、結合線路の接続部と接地導体との間に容量を形成する、簡易な構成によって補正することができる。
【0044】
以上のことから、この第3実施形態のバラン回路は、第1の結合線路1の下層配線の第1端子と第2の結合線路2の下層配線の第1端子との接続部Bを第1の容量4を介して接地した構成によって、第1実施形態と同様に、端子1から信号を入力すると、端子2及び端子3には等振幅で、位相が180度異なる信号が出力されるマーチャンドバランとして機能することがわかる。
【0045】
以下、第3実施形態のバラン回路(マーチャンドバラン)の動作を図11、図12を参照して説明する。
図11は、図8、図9に示す構成のマーチャンドバランの容量C(pF)を変えたときのバランの帯域との関係を示したものである(計算値)。なお、バランの動作中心周波数は、20GHzである。
【0046】
図11において、従来例(図23)での比帯域は、○印の狭い範囲であるが、結合線路の接続部を容量を介して接地する請求項2に係る本発明の構成では、枠で囲って示すように、バランの比帯域を1.8倍以上に拡大することができる。図12は、挿入した容量値Cを一定値(C=0.03pF)とした場合の位相差及び振幅差の周波数特性図である。位相速度は、偶モードの位相速度>奇モードの位相速度の関係にある。太い実線が、容量を備える第3実施形態のバランの特性であり、細い実線が容量のない従来構成のバランの特性である。図12に示すように、容量を挿入することによってバランのバランス特性を改善できることがわかる。
【0047】
つまり、図8、図9に示すように、1/4波長の2つの結合線路の接続部と接地導体との間に容量を挿入する簡易な構成によって、バランの出力信号の振幅及び位相のずれを小さくし、動作帯域を拡大することができる。
また、結合線路長を1/4波長よりも短い値(バランの中心周波数を所望の値よりも高く設定)としても、バランの周波数帯域が狭くなったり、出力信号の振幅及び位相のずれが大きくなることはないので、結合線路長を短くできる分回路の小型化が実現できる。
【0048】
この第3実施形態では、半導体基板上に接地導体を形成し、その上に誘電体膜を2層形成し、その膜上に回路を形成する多層/3次元MMlCの構造について示したが、半導体基板裏面に接地導体を形成するマイクロストリップ型MMlCの構成でも同様の効果が得られる。また、結合線路は一層の小型化のためにメアンダ状やスパイラル状に折り曲げて形成しても同様の効果が得られる。
【0049】
(第4実施形態)
図13は、本発明の請求項3、7に対応する実施形態のマーチャンドバランの構成を示す斜視図である。等価回路は、図9である。この第4実施形態はコプレーナ線路で構成したマーチャンドバランに関する。なお、図11において端子1、2、3、A〜D及びB’〜D’の符号は、図9の対応した位置を示している。
【0050】
図13に示すように、半導体基板11の上面には、第1の結合線路1の2つの伝送線路及び第2の結合線路2の2つの伝送線路が、それぞれ並列に配置され、また第1の容量4、接地導体10がそれぞれ形成され、2つの結合線路それぞれの2つの伝送線路の一方の伝送線路の接続部Bが、第1の容量4を介して接地導体10に接続される。
【0051】
したがって、第3実施形態と同様にバランの出力信号の振幅及び位相のずれを小さくし、帯域を拡大することができる。また、結合線路長を1/4波長よりも短い値(バランの中心周波数を所望の値よりも高く設定)としても、バランの周波数帯域やバランス特性の劣化はないので、結合線路長を短くできる分回路の小型化が実現できる。
【0052】
この第4実施形態では、結合線路は直線状に形成してあるが、一層の小型化のためにメアンダ状やスパイラル状に折り曲げて形成しても同様である。
(第5実施形態)
図14、図15は、本発明の請求項4、6、8に対応する実施形態のマーチャンドバランの構成を示す図である。図14は斜視図、図15は等価回路図である。この第5実施形態は、3次元MMIC構造のマーチャンドバランに関する。なお、両図において、端子1、2、3、A〜G及びB’〜G’の符号は対応した位置を示している。
【0053】
図14、図15において、半導体基板11上には接地導体10が積層され、接地導体10上には第1の誘電体膜12が積層される。この誘電体膜12の上面には、図中左から右に向かって、第1の結合線路31の下層配線、第3の結合線路33の下層配線、第2の結合線路32の下層配線、第4の結合線路34の下層配線が、それぞれ形成される。そして、端子1が第1の結合線路31の下層配線の通過端子Aに接続される。
【0054】
符号Bは、第1の結合線路31の下層配線と第3の結合線路33の下層配線との接続部を示し、符号B’は、第2の結合線路32の下層配線と第4の結合線路34の下層配線との接続部を示す。また、符号Fは、第3の結合線路33の下層配線と第2の結合線路32の下層配線との接続部を示す。
ここに、第1の結合線路31の線路長L11と第3の結合線路33の線路長L12とを加えた線路長(L11+L12)、及び、第2の結合線路32の線路長L21と第4の結合線路34の線路長L22とを加えた線路長(L21+L22)は、それぞれ、1/4波長である。つまり、接続部Fは、図20における接続部B、A’に対応している。
【0055】
このような結合線路の下層配線が形成された誘電体膜12上に第2の誘電体膜13が積層される。この第2の誘電体膜13の上面には、図中左から右に向かって、第1の結合線路31の上層配線、線路長L31の第1の伝送線路35、第3の結合線路33の上層配線、第2の結合線路32の上層配線、線路長L31の第2の伝送線路36、第4の結合線路34の上層配線が、それぞれ形成される。そして、第3の結合線路33の上層配線の結合端子Gは、端子2に接続され、第2の結合線路32の上層配線の結合端子C’は、端子3に接続される。また第1の結合線路31の上層配線のアイソレーション端子C及び第4の結合線路34の上層配線のアイソレーション端子G’は、それぞれ接地される。
【0056】
符号Dは、第1の結合線路31の上層配線と第1の伝送線路35との接続部を示し、符号Eは、第3の結合線路33の上層配線と第1の伝送線路35との接続部を示す。また、符号D’は、第2の結合線路32の上層配線と第2の伝送線路36との接続部を示し、符号E’は、第4の結合線路34の上層配線と第2の伝送線路36との接続部を示す。
【0057】
要するに、この第5実施形態のバラン回路は、結合線路の結合端子(G、C’)とアイソレーション端子(C、G’)のある方の伝送線路の一部に結合線路を構成しない伝送線路(第1の伝送線路35、第2の伝送線路35)を挿入したものである。
図16は、請求項3に記載の発明(結合線路の結合端子とアイソレーション端子のある方の伝送線路の一部に結合線路を構成しない伝送線路を挿入したバラン回路)に対応する第5、第6実施形態の基本動作の説明図である。図16(a)は振幅特性図(計算値)、図16(b)は位相特性図(計算値)である。
【0058】
図16(a)(b)において、実線(イ)は、マーチャンドバランを構成する第1〜第4の結合線路の直交モードの位相速度に差がない場合、実線(ロ)は、結合線路の直交モードの位相速度に差がある場合、実線(ハ)は結合線路の接続部に伝送線路を挿入した場合の特性曲線を示す。なお、結合線路のパラメータは次の通りである。
【0059】
実線(イ)(ロ)(ハ)において結合線路の偶モードの特性インピーダンスZeは、Ze=121Ω、奇モードの特性インピーダンスZoは、Zo=21Ω、線路長L は、L =1.987mmである。また、実線(イ)において結合線路の偶モードの実効誘電率εe、奇モードの実効誘電率εoは、それぞれ等しくεe=εo=3.04である。
【0060】
また、実線(ロ)において、結合線路の偶モードの実効誘電率εeは、εe=4.22、奇モードの実効誘電率εoは、εo=3.04である。また、実線(ハ)において結合線路の偶モードの実効誘電率εe、奇モードの実効誘電率εoは、それぞれ等しく、εe=εo=3.04であり、挿入する伝送線路の線路長L31は、L31=0.33mmである。
【0061】
図16(a)(b)から、結合線路の位相速度に差がある場合(ロ)の振幅,位相の変化と、伝送線路を挿入した場合(ハ)の振幅,位相の変化は、結合線路の位相速度に差がない場合(イ)を中心としてほぼ対称となっていることがわかる。従って、結合線路の偶モードの特性インピーダンスや損失は従来と同様であるが、直交モードの位相速度に差があることに基づき生ずるマーチャンドバランの位相,振幅のずれを、結合線路の結合端子とアイソレーション端子のある方の伝送線路の一部に結合線路を構成しない伝送線路を挿入する、簡易な構成によって補正することができる。
【0062】
以上のことから、この第5実施形態のバラン回路は、結合線路の結合端子(G、C’)とアイソレーション端子(C、G’)のある伝送線路の一部に結合線路を構成しない伝送線路を挿入した構成によって、第1実施形態と同様に、端子1から信号を入カすると、端子2及び端子3には同振幅で、位相が180度異なる信号が出力されるマーチャンドバランとして機能することがわかる。
【0063】
以下、第5実施形態のバラン回路(マーチャンドバラン)の動作を図17を参照して説明する。
図17は、挿入した伝送線路の線路長L31をL31=0.33mm、結合線路の線路長を0.75×(l/4波長)としたときの位相差及び振幅差の周波数特性を示している。太い実線が、第5実施形態のバランの特性であり、細い実線が、従来の構成のバランの特性である。
【0064】
位相速度は、偶モードの位相速度<奇モードの位相速度の関係であるが、図17に示すように、バランの出力信号の振幅及び位相のずれを小さくすることができる。また、結合線路長が短くなる分回路も小型化できる。
従って、この第5実施形態の構成において、結合線路の結合端子とアイソレーション端子を持つ方の伝送線路の一部に結合線路を構成しない伝送線路を挿入することによってバランの出力信号の振幅及び位相のずれを小さくし、かつ帯域を拡大することができる。
【0065】
また、結合線路の線路長を1/4波長よりも短い値(バランの中心周波数を所望の値よりも高く設定)とすることによってバラン回路の一層の小型化が実現できる。
この第5実施形態では、半導体基板上に接地導体を形成し、その上に誘電体膜を2層形成し、その膜上にバラン回路を形成する多層/3次元MMICの構造について示したが、半導体基板裏面に接地導体を形成するマイクロストリップ型MMlCの構成でも同様の効果がある。また、結合線路は一層の小型化のためにメアンダ状やスパイラル状に折り曲げて形成しても同様の効果がある。
【0066】
(第6実施形態)
図18は、本発明の請求項4、7に対応する実施形態のマーチャンドバランの構成を示す図である。図18は、斜視図である。等価回路は、図15である。この第6実施形態は、コプレーナ線路で構成したマーチャンドバランに関する。なお、図18において端子1、2、3、A〜G及びB’〜G’の符号は、図15の対応した位置を示している。
【0067】
図18に示すように、半導体基板11の上面には、第1の結合線路31の2つの伝送線路、第3の結合線路33の2つの伝送線路、第2の結合線路32の2つの伝送線路、第4の結合線路34の2つの伝送線路が、それぞれ並列に配置されると共に、第1の結合線路31の2つの伝送線路の一方の伝送線路と、第3の結合線路33の2つの伝送線路の一方の伝送線路との間に第1の伝送線路35が、また第2の結合線路32の2つの伝送線路の一方の伝送線路と、第4の結合線路34の2つの伝送線路の一方の伝送線路との間に第2の伝送線路36が、それぞれエアブリッジ39によって形成され、接地導体10も形成されている。
【0068】
したがって、第5実施形態と同様にバランの出力信号の振幅及び位相のずれを小さくし、帯域を拡大することができる。また、同様に、結合線路の線路長を1/4波長よりも短い値(バランの中心周波数を所望の値よりも高く設定)とすることによってバラン回路の一層の小型化が実現できる。
この第6実施形態では、結合線路や伝送線路は直線状に形成してあるが、一層の小型化のためメアンダ状やスパイラル状に折り曲げて形成しても同様である。
【0069】
(第7実施形態)
図19は、本発明の請求項5、6、7、8に対応する実施形態のマーチャンドバランの構成を示す等価回路図である。この第7実施形態のマーチャンドバランは、第5実施形態及び第6実施形態の等価回路(図15)において、第1の伝送線路35に変えて第1のインダクタ40を挿入し、第2の伝送線路36に変えて第2のインダク41を挿入したものである。その他は、図15と同様である。
【0070】
図20は、請求項4に記載の発明(結合線路の結合端子とアイソレーション端子のある方の伝送線路の一部にインダクタを挿入したバラン回路)対応する第7実施形態の基本動作の説明図である。図20(a)は振幅特性図(計算値)、図20(b)は位相特性図(計算値)である。
図20(a)(b)において、実線(イ)は、マーチャンドバランを構成する第1〜第4の結合線路の直交モードの位相速度に差がない場合、実線(ロ)は、結合線路の直交モードの位相速度に差がある場合、実線(ハ)は結合線路の接続部に伝送線路を挿入した場合の特性曲線を示す。なお、結合線路のパラメータは次の通りである。
【0071】
実線(イ)(ロ)(ハ)において、結合線路の偶モードの特性インピーダンスZeは、Ze=121Ω、奇モードの特性インピーダンスZoは、Zo=21Ω、線路長Lは、L =1.987mmである。
【0072】
また、実線(イ)において結合線路の偶モードの実効誘電率εe、奇モードの実効誘電率εoは、それぞれ等しく、εe=εo=3.04である。また、実線(ロ)において、結合線路の偶モードの実効誘電率εeは、εe=4.22、奇モードの実効誘電率εoは、εo=3.04である。また、実線(ハ)において、結合線路の偶モードの実効誘電率εe、奇モードの実効誘電率εoは、それぞれ等しく、εe=εo=3.04であり、挿入するインダクタのインダクタンス値LはL=0.11nHである。
【0073】
図20(a)(b)から、結合線路の位相速度に差がある場合(ロ)の振幅,位相の変化と、インダクタを挿入した場合(ハ)の振幅,位相の変化は、結合線路の位相速度に差がない場合(イ)を中心としてほぼ対称となっていることがわかる。従って、接合線路の偶モードの特性インピーダンスや損失は従来と同様であるが、直交モードの位相速度に差があることに基づき生ずるマーチャンドバランの位相,振幅のずれを、結合線路の結合端子とアイソレーション端子のある方の伝送線路の一部にインダクタを挿入する、簡易な構成によって補正することができる。
【0074】
以上のことから、この第7実施形態のバラン回路は、結合線路の結合端子(G、C’)とアイソレーション端子(C、G’)のある方の伝送線路の一部にインダクタを挿入した構成によって、第1実施形態と同様に、端子1から信号を入力すると、端子2及び端子3には同振幅で、位相が180度異なる信号が出力されるマーチャンドバランとして機能することがわかる。
【0075】
以下、第7実施形態のバラン回路(マーチャンドバラン)の動作を図21を参照して説明する。図21は、挿入したインダクタ(40、41)の値L40をL40=0.11nH、結合線路の線路長を0.75×(1/4波長)としたときの位相差及び振幅差を示している。太い実線が、この第7実施形態の構成のときのバランの特性であり、細い実線が、従来の構成のバランの特性である。
【0076】
図21は、位相速度が、偶モードの位相速度<奇モードの位相速度の関係にある場合のものであるが、バランの出力信号の振幅及び位相のずれが小さくなることがわかる。また、図21は、結合線路の線路長を1/4波長よりも短くした場合を示している。
したがって、結合線路の結合端子とアイソレーション端子を持つ方の伝送線路の一部にインダクタを挿入する構成のバラン回路とすることによって、バランの出力信号の振幅及び位相のずれを小さくし、かつ帯域を拡大することができる。
【0077】
さらに、結合線路の線路長をl/4波長よりも短い値(バランの中心周技数を所望の値よりも高く設定)とすることによってバラン回路の一層の小型化が実現できる。
この第7実施形態では、等価回路のみを示したが、前述の3次元MMlCやマイクロストリップ型MMlCの構成、さらにはコプレーナ線路で構成しても同様の効果がある。また、結合線路は一層の小型化のためにメアンダ状やスパイラル状に折り曲げて形成しても同様の効果がある。
【0078】
(第8実施形態)
図22は、本発明の請求項9に対応する実施形態のバランス型周波数変換器の構成図である。即ち、この第8実施形態は、以上説明した7つの実施形態の何れか1つのマーチャンドバランを用いたバランス型周波数変換器に関する。
図22において、このバランス型周波数変換器は、本発明の7つの実施形態の何れか1つのマーチャンドバラン20、2個の周波数変換器21、ウイルキンソンディバイダ22を備える。マーチャンドバラン20は、LO入力端子に印加されるLO信号(局発信号)を2個の周波数変換器21の一方の入力端に互いに逆位相の関係で分配する。2個の周波数変換器21は、他方のIF入力端子に印加されるIF信号(中間周波帯信号)をマーチャンドバラン20からのLO信号に従って周波数変換し、ウイルキンソンディバイダ22に出力する。ウイルキンソンディバイダ22は、2個の周波数変換器21の出力を同位相で合成し、RF出カ端子にRF信号(高周波帯信号)を出力する。
【0079】
この第8実施形態のバランス型周波数変換器は、以上の構成によって、LO入力端子に印加されるLO信号が2つの周波数変換器に等振幅の逆位相で与えられるので、LO信号がRF出力端子に漏れて出力されるのが抑圧される。即ち、上記構成のバランス型周波数変換器は、3次元MMlC構造やマイクロストリップ型MMlC、コプレーナ型MMlCで実現できるが、本発明の実施形態に係るマーチャンドバランを用いることによって、LO信号の漏れを大幅に抑圧することができ、かつ回路を小型化、広帯域化することができる。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のバラン回路は、GaAsやSiなどの半導体基板上に実現されるマーチャンドバランにおいて、結合線路の接続部に伝送線路を挿入する、接続部と接地導体との間に容量を挿入する、さらに結合線路の結合端子とアイソレーション端子を持つ方の伝送線路の一部に結合線路を構成しない伝送線路やインダクタを挿入する構成であるので、偶モードの特性インピーダンスや損失は、従来と同様であるが、出力信号の振幅差及び位相差を小さくできる。
【0081】
また、挿入する伝送線路や容量によって、バランの出力端子間の位相差を補正することができるので、位相バランスを広帯域にわたって保つことができる。さらに、従来の改良されたマーチャンドバランのように、結合線路のインタディジタル化やMMIC基板の厚さを増加させることが不要となるので、小型化が可能である。
したがって、本発明に係るバラン回路を180度信号分配回路として用いるバランス型周波数変換器では、局発信号が高周波出力端に漏れ出すのを抑圧できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本となる実施形態のマーチャンドバランの回路構成図(斜視図)である。
【図2】本発明の基本となる実施形態のマーチャンドバランの等価回路図である。
【図3】結合線路を伝送線路を用いて接続した場合の基本動作の説明図である。(a)は振幅特性図(計算値)、(b)位相特性図(計算値)である。
【図4】第1の伝送線路の線路長と比帯域との関係図である。
【図5】第1の伝送線路の線路長を一定値とした場合の振幅差・位相差の周波数特性図である。
【図6】マーチャンドバランを構成する結合線路の線路長に対する動作帯域の関係図(計算値)である。
【図7】本発明の請求項1に対応する実施形態のマーチャンドバラン(コプレーナ線路型)の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の請求項3、6、8に対応する実施形態のマーチャンドバランの回路構成図(斜視図)である。
【図9】本発明の請求項3、6、8に対応する実施形態のマーチャンドバランの等価回路図である。
【図10】結合線路の接続部と接地導体の間に容量を形成した場合の基本動作の説明図である。(a)は振幅特性図(計算値)、(b)位相特性図(計算値)である。
【図11】容量値と比帯域との関係図である。
【図12】容量値を一定値とした場合の振幅・位相の周波数特性図である。
【図13】本発明の請求項3、7に対応する実施形態のマーチャンドバラン(コプレーナ線路型)の回路構成図(斜視図)である。
【図14】本発明の請求項4、6、8に対応する実施形態のマーチャンドバランの回路構成図(斜視図)である。
【図15】本発明の請求項4、6、8に対応する実施形態のマーチャンドバランの等価回路図である。
【図16】結合線路の結合端子とアイソレーション端子のある伝送線路の一部に結合線路を構成しない伝送線路を挿入した場合の基本動作の説明図である。(a)は振幅特性図(計算値)、(b)は位相特性図(計算値)である。
【図17】挿入した伝送線路及び結合線路の線路長を一定とした場合の振幅差・位相差の周波数特性図である。
【図18】本発明の請求項4、7に対応する実施形態のマーチャンドバラン(コプレーナ線路型)の構成を示す斜視図である。
【図19】本発明の請求項5、6、7、8に対応する第7実施形態のマーチャンドバランの構成を示す等価回路図である。
【図20】結合線路の結合端子とアイソレーション端子のある伝送線路の一部にインダクタを挿入した場合の基本動作の説明図である。(a)は振幅特性図(計算値)、(b)位相特性図(計算値)である。
【図21】挿入したインダクタ及び結合線路の線路長を一定とした場合の振幅差・位相差の周波数特性図である。
【図22】本発明の請求項9に対応する実施形態のバランス型周波数変換器の構成図である。
【図23】従来のマーチャンドバランの等価回路図である。
【図24】従来のマーチャンドバランの1/2波長線路上の定在波の電圧・電流波形の模式図である。
【図25】従来のマーチャンドバランの振幅特性図である。
【図26】従来のマーチャンドバランの位相特性図である。
【図27】改良されたマーチヤンドバランの等価回路図である。
【図28】改良されたマーチャンドバランの等価回路図である。
【符号の説明】
1 第1の結合線路
2 第2の結合線路
3 第1の伝送線路
4 第1の容量
5 第1の結合線路
6 第2の結合線路
7 第1の結合線路
8 第2の結合線路
10 接地導体
11 半導体基板
12 第1の誘電体膜
13 第2の誘電体膜
14 スルーホール
20 マーチャンドバラン
21 周波数変換器
22 ウイルキンソンディバイダ
31 第1の結合線路
32 第2の結合線路
33 第3の結合線路
34 第4の結合線路
35 第1の伝送線路
36 第2の伝送線路
39 エアブリッジ
40 第1のインダクタ
41 第2のインダクタ

Claims (9)
Hide Dependent

  1. 1/4波長の長さを持つ第1の結合線路の第1端子と1/4波長の長さを持つ第2の結合線路の第1端子とを接続し、
    前記第1の結合線路の第1端子から見て当該第1の結合線路のアイソレーション端子と、前記第2の結合線路の第1端子から見て当該第2の結合線路のアイソレーション端子とをそれぞれ接地し、
    前記第2の結合線路の第1端子から見て当該第2の結合線路の通過端子を開放としたとき、前記第1の結合線路の第1端子から見て当該第1の結合線路の通過端子から信号を入力し、前記第1の結合線路の第1端子及び第2の結合線路の第1端子から見てそれぞれの結合線路の結合端子から信号を取り出すバラン回路において、
    前記第1の結合線路及び前記第2の結合線路は、半導体基板表面に接地導体と信号線路の両方を形成するコプレーナ線路で形成され、
    前記第1の結合線路の第1端子と前記第2の結合線路の第1端子との間に、半導体基板表面に接地導体と信号線路の両方を形成するコプレーナ線路による伝送線路を形成した
    ことを特徴とするバラン回路。
  2. 1/4波長の長さを持つ第1の結合線路の第1端子と1/4波長の長さを持つ第2の結合線路の第1端子とを接続し、
    前記第1の結合線路の第1端子から見て当該第1の結合線路のアイソレーション端子と、前記第2の結合線路の第1端子から見て当該第2の結合線路のアイソレーション端子とをそれぞれ接地し、
    前記第2の結合線路の第1端子から見て当該第2の結合線路の通過端子を開放としたとき、前記第1の結合線路の第1端子から見て当該第1の結合線路の通過端子から信号を入力し、前記第1の結合線路の第1端子及び第2の結合線路の第1端子から見てそれぞれの結合線路の結合端子から信号を取り出すバラン回路において、
    前記第1の結合線路及び前記第2の結合線路は、半導体基板上に接地導体を形成し、その上に2層に積層された各誘電体膜の上面に形成する下層配線と上層配線で形成され、
    前記第1の結合線路の第1端子と前記第2の結合線路の第1端子との間に、一方の誘電体膜上の配線による伝送線路を形成した
    ことを特徴とするバラン回路。
  3. 1/4波長の長さを持つ第1の結合線路の第1端子と1/4波長の長さを持つ第2の結合線路の第1端子とを接続し、
    前記第1の結合線路の第1端子から見て当該第1の結合線路のアイソレーション端子と、前記第2の結合線路の第1端子から見て当該第2の結合線路のアイソレーション端子とをそれぞれ接地し、
    前記第2の結合線路の第1端子から見て当該第2の結合線路の通過端子を開放としたとき、前記第1の結合線路の第1端子から見て当該第1の結合線路の通過端子から信号を入力し、前記第1の結合線路の第1端子及び第2の結合線路の第1端子から見てそれぞれの結合線路の結合端子から信号を取り出すバラン回路において、
    前記第1の結合線路の第1端子と前記第2の結合線路の第1端子との接続部と接地導体との間に容量を形成した
    ことを特徴とするバラン回路。
  4. 1/4波長の長さを持つ第1の結合線路の第1端子と1/4波長の長さを持つ第2の結合線路の第1端子とを接続し、
    前記第1の結合線路の第1の端子から見て当該第1の結合線路のアイソレーション端子と、前記第2の結合線路の第1端子から見て当該第2の結合線路のアイソレーション端子とをそれぞれ接地し、
    前記第2の結合線路の第1端子から見て当該第2の結合線路の通過端子を開放としたとき、前記第1の結合線路の第1端子から見て当該第1の結合線路の通過端子から信号を入力し、前記第1の結合線路の第1端子及び第2の結合線路の第1端子から見てそれぞれの結合線路の結合端子から信号を取り出すバラン回路において、
    前記第1の結合線路及び第2の結合線路のそれぞれの結合端子とアイソレーション端子とを持つ方の伝送線路の一部に、それぞれ結合線路を構成しない伝送線路を挿入した
    ことを特徴とするバラン回路。
  5. 1/4波長の長さを持つ第1の結合線路の第1端子と1/4波長の長さを持つ第2の結合線路の第1端子とを接続し、
    前記第1の結合線路の第1端子から見て当該第1の結合線路のアイソレーション端子と、前記第2の結合線路の第1端子から見て当該第2の結合線路のアイソレーション端子とをそれぞれ接地し、
    前記第2の結合線路の第1端子から見て当該第2の結合線路の通過端子を開放としたとき、前記第1の結合線路の第1端子から見て当該第1の結合線路の通過端子から信号を入力し、前記第1の結合線路の第1端子及び第2の結合線路の第1端子から見てそれぞれの結合線路の結合端子から信号を取り出すバラン回路において、
    前記第1の結合線路及び第2の結合線路のそれぞれの結合端子とアイソレーション端子とを持つ方の伝送線路の一部に、それぞれイングクタを挿入した
    ことを特徴とするバラン回路。
  6. 請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載のバラン回路において、
    前記第1の結合線路及び第2の結合線路は、
    半導体基板裏面に接地導体、表面に信号線路を形成するマイクロストリップ線路で形成される
    ことを特徴とするバラン回路。
  7. 請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載のバラン回路において、
    前記第1の結合線路及び第2の結合線路は、
    半導体基板表面に接地導体と信号線路の両方を形成するコプレーナ線路で形成される
    ことを特徴とするバラン回路。
  8. 請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載のバラン回路において、
    前記第1の結合線路及び第2の結合線路は、
    半導体基板上に接地導体を形成し、その上に2層に積層された各誘電体膜の上面に形成する下層配線と上層配線で形成される
    ことを特徴とするバラン回路。
  9. 局発信号を180度の位相差で等分配する180度信号分配回路と、前記180度信号分配回路の2出力をそれぞれ受けてIF信号の周波数を変換する周波数変換器と、前記変換された信号を合成する信号合成回路とで構成されるバランス型周波数変換器において、
    前記180度信号分配回路は、
    請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のバラン回路で形成される
    ことを特徴とするバランス型周波数変換器。