JP3569336B2 - 同期電動機のステータの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、複数の磁性薄板を軸方向へ積層して形成され、ロータを囲繞する内周面に複数のスロットを凹設した積層ステータコアと、積層ステータコアの複数のスロットに設置される巻線とを具備した同期電動機のステータの、製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
同期電動機、特に小形の同期電動機は、例えば工作機械の主軸やテーブルの送り動作の駆動源として多用されている。この種の同期電動機では、ロータが永久磁石界磁を構成し、ロータを囲繞するステータに電機子巻線が配置される構成が一般的である。このステータにおいては、ロータに対向する積層ステータコアの内周面に軸方向へ延びる複数のスロットが凹設され、それらスロットに電機子巻線が配置される。
【0003】
このようなステータでは、スロットを画成する積層ステータコアの複数の突歯のロータ対向端面とロータの磁極外周面との間の空隙を磁束が通るが、このとき磁束の高調波成分を除去し、ロータの回転むら(トルクリップル)を低減するために、軸線に対し傾斜して延びるいわゆる斜めスロットを有するステータが、高い動作精度を要求される同期電動機において広く採用されている。斜めスロットは、スロット開口部に起因する磁気抵抗の変化率及び変化量を減少させるので、この変化により永久磁石と突歯との間に生じるコギングトルク(スロットリップル)を低減するためにも有効である。
【0004】
複数の磁性薄板の積層体からなる積層ステータコアに上記の斜めスロットを設ける場合、まず珪素鋼板等の磁性薄板材料から内周部に複数の切欠きを有した環状の薄板コアを打抜き形成する。次に複数の薄板コアを、隣接する薄板コアの各切欠きが一方向へ所定角度づつ僅かにずれるように相対回転して軸方向へ積層し、かしめや接着によって相互に固定する。このようにして、所定角度づつ僅かにずれて積層された複数の切欠きにより、軸線に対し斜めに延びる複数の斜めスロットが積層ステータコアに形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
積層ステータコアに斜めスロットを形成する場合、上記のように複数の薄板コアを相対回転して積層するので、例えば薄板コアの外周部の輪郭が多角形のときは積層ステータコアの外形が本来期待される多角柱形状を周方向へ捩じった形状となり、外観を損なうだけでなく、電動機の取扱いを不便にする課題が生じた。薄板コアの外周部の輪郭を円形にして円柱状の積層ステータコアを形成すれば、このような課題は排除されるが、それにより積層ステータコアの外形は円柱形状に限定される。このような積層ステータコアの外形の限定は電動機の外形に直接影響を及ぼし、例えば電動機の使用環境に応じた外形設計が困難となったり、他の外形によって意匠上の付加価値及び付帯効果を得ようとする際の隘路となったりする課題が生じる。
【0006】
また、積層ステータコアを一体的に締着支持するために複数の薄板コアを軸方向へ貫通する複数のロッド部材を使用したステータ構造が知られているが、このような構造では、上記方法で積層ステータコアに斜めスロットを形成すると、薄板コアに設けたロッド穴が積層によって軸線に対し斜めに連通されてしまい、ロッド部材の挿入及び締着が困難になる課題が生じた。
【0007】
このように、同期電動機において回転むらを低減するためにステータに斜めスロットを設けることは、解決すべき種々の課題を有していた。そこで従来は、例えばロータ表面に貼着される永久磁石の平面形状を略平行四辺形にする等、界磁磁極の形状や配置に様々な工夫を凝らし、斜めスロットと略同等の回転むら低減効果を得ていた。しかしながら、磁石形状や磁極配置を調整することは焼結等の磁石製造工程やロータの組立工程を煩雑にし、製造コストを上昇させるという課題を生じていた。
【0008】
本願発明の目的は、積層ステータコアの外形や薄板コア締着用ロッド部材の挿通穴形状に影響を与えることなく、積層ステータコアに巻線設置用の斜めスロットを設けることができ、以てロータの回転むらを効果的に低減できる同期電動機のステータを、容易に製造できる製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の磁性薄板を軸方向へ積層して形成され、ロータを囲繞する内周面に複数のスロットを凹設した積層ステータコアと、積層ステータコアの複数のスロットに設置される巻線とを具備し、複数の磁性薄板が、同一の非円形輪郭を有した外周部、同一の略円形輪郭を有した内周部、及び内周部に開口して積層により複数のスロットを形成する略同一の輪郭を有した複数の切欠きを各々に備えてなる同期電動機のステータの製造方法であって、それぞれにプレス型を備えた複数のステーションにより多様なプレス加工を連続的に遂行可能な順送金型装置を用意し、所定経路に沿って並置された順送金型装置の各ステーションに帯状の電磁鋼板を連続的に送り、磁性薄板の複数の切欠きの少なくとも内周部における開口部を形成する孔を打抜く可動ステーションで、プレス型の上型及び下型を同時に同一の所望角度ずつ回転して所定の回転位置に配置し、この所定回転位置でそれら複数の孔を打抜き、この可動ステーションの他の固定ステーションで、固定位置に配置されたプレス型により磁性薄板の内周部を打抜き、これら可動ステーション及び固定ステーションの後段の最終固定ステーションで、固定位置に配置されたプレス型により磁性薄板の外周部を打抜き、これら各ステーションを通過して、所定中心角度ずつずれて形成された複数の切欠きの少なくとも内周部における開口部を有した異なる形状の複数の磁性薄板を、その開口部が隣接する磁性薄板の間で周方向に一様にずれるとともに外周部にずれが無い相対配置で互いに積層し、以て、複数のスロットの内周面における開口部が軸線に対し傾斜して延びる積層ステータコアを形成し、積層ステータコアのスロットに巻線を配置する、各ステップを有したことを特徴とする同期電動機のステータの製造方法を提供する。
【0011】
【作用】
本発明においては、順送金型装置の可動ステーションで、プレス型の上型及び下型を同時に同一の所望角度ずつ回転して所定の回転位置に配置し、この所定回転位置で、磁性薄板の複数の切欠きの少なくとも内周部における開口部を形成する孔を打抜くとともに、可動ステーションの他の固定ステーションで、固定位置に配置されたプレス型により磁性薄板の内周部及び外周部を打抜くので、所定中心角度ずつずれて形成された複数の切欠きの少なくとも内周部における開口部を有した異なる形状の複数の磁性薄板を、容易に形成できる。このような磁性薄板を積層して形成される積層ステータコアの、内周面における開口部が軸線に対し傾斜して延びる複数のスロットに電機子巻線を配置したステータを用いると、ロータの回転時にスロット開口部に起因する磁気抵抗の変化が緩和され、回転むらが低減される。しかも複数の磁性薄板は外周部にずれが無いように積層されるので、積層ステータコアの外形に何らの影響も与えない。
【0013】
【実施例】
以下、添付図面を参照して、本発明をその実施例に基づきさらに詳細に説明する。図面において、同一の構成要素には共通の参照符号を付す。
図1及び図2は、本発明の実施例による同期電動機のステータ10を示す。ステータ10は、ロータ(図示せず)を囲繞する内周面に複数のスロット12を凹設した積層ステータコア14と、積層ステータコア14の複数のスロット12に設置される電機子巻線16とを備える。積層ステータコア14は略正八角柱の外形を有し、その稜線に沿って軸方向へ延びる複数の貫通穴18が形成される。各貫通穴18は、積層ステータコア14を一体に締着するためのロッド部材(図示せず)を受容する。
【0014】
積層ステータコア14のスロット12は、積層ステータコア14の筒状部分20から半径方向内方へ突出して周方向へ等間隔に配置される複数の突歯22によって画成される。各突歯22は、半径方向へ延びる支柱24と、支柱24の先端(半径方向内端)から周方向両側へ延びる一対のフック26a、26bとを備え、隣接する突歯22のフック26aとフック26bとの間に、スロット開口部28が画成される。また、フック26a、26bを含む複数の突歯22の半径方向内周面は同一円周上に配置され、ロータ(図示せず)を囲繞する積層ステータコア14の内周面を構成する。図示実施例では、積層ステータコア14の各突歯22に1つずつ電機子巻線16が巻付けられる。
【0015】
積層ステータコア14は、珪素鋼板等の磁性薄板材料から所定形状に打抜かれた薄板コア30(図3参照)を軸方向へ多数積層して形成される。薄板コア30は、略正八角形輪郭の外周部32と、外周部32に同心の略円形輪郭の内周部34とを備えた平板要素である。さらに薄板コア30は、内周部34に開口する複数の切欠き36を備える。それらの切欠き36は、複数の薄板コア30の積層により軸方向へ連通して、それぞれにスロット12を形成する。なお、複数の薄板コア30の軸線方向両端面には、周知の凹凸構造からなるかしめ部38が形成され、積層工程においてかしめ部38同士が係合することにより、複数の薄板コア30が一体に連結される。また、薄板コア30の各頂点近傍には、積層によりロッド部材用の貫通穴18を形成する円形孔39が設けられる。
【0016】
薄板コア30の切欠き36は、薄板コア30の環状部分40から半径方向内方へ突出して周方向へ等間隔に配置される複数の歯42によって画成される。歯42は、半径方向へ延びる柱部分44と、柱部分44の先端(半径方向内端)から周方向両側へ延びる一対のフック部分46a、46bとを備え、隣接する歯42のフック部分46aとフック部分46bとの間に、切欠き36の開口部48が画成される。また、フック部分46a、46bを含む複数の歯42の半径方向内周部は、同一円周上に配置されて薄板コア30の内周部34を構成する。それら複数の歯42は、複数の薄板コア30の積層により軸方向へ連結されて、積層ステータコア14の複数の突歯22を形成する。
【0017】
積層ステータコア14を形成する複数の薄板コア30は、積層時に複数の切欠き36の開口部48のみが隣接する薄板コア30の間で周方向に一様に所定角度づつずれて配置されるような、それぞれに僅かに異なる形状を有する。すなわち、複数の薄板コア30は実質的に同一の形状を有するが、複数の歯42のフック部分46a、46bのみは、柱部分44からの延長寸法が各薄板コア30の間で異なっている。
【0018】
この構成を図4を参照してさらに詳述すれば、積層ステータコア14の1つの突歯22を形成する複数の薄板コア30の歯42は、内周部34の周方向寸法が同一であるが、周方向一側に延びるフック部分46aが積層ステータコア14の軸方向一端面に配置される薄板コア301から他端面に配置される薄板コア302に向かって最小寸法から最大寸法まで漸増し、周方向他側に延びるフック部分46bが薄板コア301から薄板コア302に向かって最大寸法から最小寸法まで漸減するように、それぞれに寸法設定された形状を有する。それにより積層ステータコア14の1つの突歯22は、図2の矢印IVから見た内周面の平面形状が略平行四辺形を呈し、突歯22のフック26a、26bの周方向両縁部が軸線Aに対し所定角度θだけ傾斜して直線的に延びる。
【0019】
図3に示すように、各々の薄板コア30において、複数の歯42は同一の形状を有する。したがって積層ステータコア14の複数の突歯22は、いずれもフック26a、26bの周方向両縁部が軸線Aに対し所定角度θだけ傾斜して直線的に延びる。その結果、積層ステータコア14のスロット開口部28が軸線Aに対し所定角度θだけ傾斜して直線的に延びることになる(図4参照)。
【0020】
なお、スロット開口部28の傾斜角度θは、理論的には積層ステータコア14の全長(薄板コア301と薄板コア302との間)で1スロットピッチだけずれるような角度であることが理想であるが、図示実施例のようにスロット数が比較的少なく隣接するスロット開口部間の間隔が大きい場合は、θが大きくなりすぎ、電機子巻線16の設置が困難となる。そのような場合、スロット開口部28の傾斜角度θは、スロット12の個数やステータ10を使用する同期電動機の磁極数によって決まる波長を有したトルクリップルの主成分を低減できるように、計算により設定される。
【0021】
上記構成を有するステータ10によれば、スロット開口部28のみが軸線に対し傾斜した積層ステータコア14を備えることにより、従来の斜めスロットを有したステータと同等のリップル低減効果が得られる。また、斜めスロットを形成するために従来のように薄板コアを回転させて積層する必要が無いので、積層ステータコア14は略正八角柱の外形を維持することができるとともに、ロッド部材用の複数の貫通穴18を軸線Aに平行に形成できる。さらに、突歯22では、一対のフック26a、26bが軸線Aに対し傾斜して延びる一方で支柱24は軸線Aに対し平行に延びる(図4参照)。このような構成によれば、機械による突歯22への電機子巻線16の自動巻付け作業が容易となる。ただし、突歯22に巻付けることのできる電機子巻線16の量は、フック26a、26bの延長寸法によって決まるので、この場合、積層ステータコア14の軸方向各端面に配置される薄板コア301、302における最小のフック部分46a、46bの寸法に依存する。
【0022】
上記構成を有するステータ10は、所望のプレスステーションを指定して多様な作業工程を遂行可能な1つの順送金型装置によって製造することが、生産性を向上させる観点から好都合である。順送金型装置によれば、磁性薄板材料からの薄板コア30の打抜き作業並びに複数の薄板コア30の積層及び固定作業が、所望順序で自動的に行われる。そのようなステータ10の製造工程を、図5を参照して説明する。なお図5では、各ステーションにおいて使用される打抜き型の形状を実線(太線)で示し、既に打抜かれた部分の輪郭を破線で示す。
【0023】
順送金型装置(図示せず)では、電磁鋼板50がロール状に巻かれた状態から引出され、所定経路に沿って並置された各ステーションに連続的に送られる(図示矢印)。したがって図示のように、電磁鋼板50の移動に伴って帯状の電磁鋼板50に複数の製品部分が形成される。まず最初のステーションS1で、ロッド部材を挿入可能な寸法及び形状を有した8個の円形孔39を所定の相対配置で打抜く。図示しないが、好ましくはこの時点で、かしめ部38も形成しておく。
【0024】
次のステーションS2には、上型及び下型を同時に同一の所望角度ずつ回転可能な打抜き型が配置される。そこで上型及び下型を所定の回転位置に配置し、切欠き36の開口部48に対応する位置に複数の孔48′を打抜く。さらに、後続のステーションS3で切欠き36を打抜き、ステーションS4で内周部34を打抜き、最終ステーションS5で外周部32を打抜く。このようにして、薄板コア30が形成される。なお、ステーションS1〜S4の順序は交換可能であるが、微小な角度調整を必要とする孔48′の打抜きステーションは、なるべく早い段階に配置することが好ましい。
【0025】
ステーションS2では、ステーションS1を経過した後続の製品部分が到達するたびに上型及び下型を微小な所定角度だけ同一方向へ回転させ、それぞれの角度位置で開口部48に対応する複数の孔48′を形成する。それにより、後のステーションS3〜S5を経て、複数の歯42のフック部分46a、46bの柱部分44からの延長寸法のみが所定中心角度ずつ周方向へずれて形成された異形状の薄板コア30が形成される。他の各ステーションS1及びS3〜S5では、打抜き型は全ての製品部分に対して同一の位置に配置される。
【0026】
最終ステーションS5では、外周部32及び複数の歯42の柱部分44にずれを生じないように、異形状の薄板コア30を打抜かれた順に積層し、かしめにより相互に結合することによって、スロット開口部28のみが軸線に対し所定角度だけ傾斜して延びる積層ステータコア14(図1)が形成される。このようにして形成された積層ステータコア14に電機子巻線16を巻付け、適宜に樹脂含浸工程等を経て、図1のステータ10が製造される。
【0027】
このような構成では、積層ステータコア14を形成する薄板コア30の枚数が多い程、また開口部48に対応する複数の孔48′を徐々にずらして形成する際の打抜き型の回転角度が小さい程、積層ステータコア14のスロット開口部28の傾斜が直線状になり、トルクリップルの低減効果が向上することが理解されよう。
【0028】
上記の製造工程は、順送金型装置によらず、異なる型を有する多数のプレス機械によって実施することもできる。その場合、図示のような帯状の電磁鋼板ではなく、それぞれに1つの製品が形成される独立した電磁鋼板に対して打抜き加工が実施される。上記ステーションS2に対応するプレス機械では、電磁鋼板及び打抜き型のいずれか一方を所定角度ずつ回転させて、切欠き36の開口部48のみを所定中心角度ずつ周方向へずらして形成すればよい。
【0029】
図6は、本発明の他の実施例による同期電動機のステータに使用される積層ステータコア52を示す。積層ステータコア52は、図1の積層ステータコア14と同様に略正八角柱の外形を有し、ロータ(図示せず)を囲繞する内周面に複数のスロット54を備える。また積層ステータコア52の外周面の稜線に沿って、軸方向へ延びる複数のロッド部材用貫通穴56が形成される。
【0030】
積層ステータコア52のスロット54は、積層ステータコア52の筒状部分58から半径方向内方へ突出して周方向へ等間隔に配置される複数の突歯60によって画成される。各突歯60は、半径方向へ延びる支柱62と、支柱62の先端(半径方向内端)から周方向両側へ延びる一対のフック64a、64bとを備え、隣接する突歯60のフック64aとフック64bとの間に、スロット開口部66が画成される。また、フック64a、64bを含む複数の突歯60の半径方向内周面は同一円周上に配置され、ロータ(図示せず)を囲繞する積層ステータコア52の内周面を構成する。
【0031】
積層ステータコア52は、珪素鋼板等の磁性薄板材料から所定形状に打抜かれた薄板コア68(図7参照)を軸方向へ多数積層して形成される。薄板コア68は、略正八角形輪郭の外周部70と、外周部70に同心の略円形輪郭の内周部72とを備えた平板要素である。さらに薄板コア68は、内周部72に開口する複数の切欠き74を備える。それらの切欠き74は、複数の薄板コア68の積層により軸方向へ連通して、それぞれにスロット54を形成する。なお、複数の薄板コア68の軸線方向両端面には、周知の凹凸構造からなるかしめ部76が形成され、積層工程においてかしめ部76同士が係合することにより、複数の薄板コア68が一体に連結される。また、薄板コア68の各頂点近傍には、積層によりロッド部材用貫通穴56を形成する円形孔78が設けられる。
【0032】
薄板コア68の切欠き74は、薄板コア68の環状部分80から半径方向内方へ突出して周方向へ等間隔に配置される複数の歯82によって画成される。歯82は、半径方向へ延びる柱部分84と、柱部分84の先端(半径方向内端)から周方向両側へ延びる一対のフック部分86a、86bとを備え、隣接する歯82のフック部分86aとフック部分86bとの間に、切欠き74の開口部88が画成される。また、柱部分84からの両フック部分86a、86bの延長寸法は同一であり、フック部分86a、86bを含む複数の歯82の半径方向内周部は、同一円周上に配置されて薄板コア68の内周部72を構成する。それら複数の歯82は、複数の薄板コア68の積層により軸方向へ連結されて、積層ステータコア52の複数の突歯60を形成する。
【0033】
積層ステータコア52を形成する複数の薄板コア68は、積層時に複数の切欠き74及びその開口部88が隣接する薄板コア68の間で周方向に一様に所定角度づつずれて配置されるような、それぞれに僅かに異なる形状を有する。すなわち、複数の薄板コア68は実質的に同一の形状を有するが、複数の歯82の柱部分84が、各薄板コア68の間で各々の環状部分80上の周方向へ僅かにずれた位置に形成されている。
【0034】
この構成を図8を参照してさらに詳述すれば、積層ステータコア52の1つの突歯60を形成する複数の薄板コア68の歯82は、柱部分84及びフック部分86a、86bの寸法は同一であるが、柱部分84が積層ステータコア14の軸方向一端面に配置される薄板コア681と他端面に配置される薄板コア682との間で軸線Aに対し所定角度θだけずれた位置に配置される。それにより積層ステータコア52の1つの突歯60は、図6の矢印VIIIから見た内周面の平面形状が略平行四辺形を呈し、突歯60のフック64a、64bの周方向両縁部が軸線Aに対し所定角度θだけ傾斜して直線的に延びる。
【0035】
図7に示すように、各々の薄板コア68において、複数の歯82は同一の形状を有する。したがって積層ステータコア52の複数の突歯60は、いずれも支柱62及びフック64a、64bが軸線Aに対し所定角度θだけ傾斜して直線的に延びる。その結果、積層ステータコア52のスロット54及びスロット開口部66が軸線Aに対し所定角度θだけ傾斜して直線的に延びることになる。
【0036】
このようにして形成された斜めスロット54を有する積層ステータコア52は、同期電動機において効果的なリップル低減効果を発揮する。また、斜めスロットを形成するために従来のように薄板コアを回転させて積層する必要が無いので、積層ステータコア52は略正八角柱の外形を維持することができるとともに、ロッド部材用貫通穴56を軸線Aに平行に形成できる。さらに、突歯60では、支柱62からの一対のフック64a、64bの延長寸法が一定なので、図1の積層ステータコア14に比べて、より多くの電機子巻線を突歯60に巻付けることが可能となる。寸法諸元が等しい場合、より多くの電機子巻線を有した電動機の方が高出力で運転できることは周知である。ただし、支柱62が軸線に対し傾斜しているので、機械による巻線自動巻付けの作業性は積層ステータコア14に比べて若干劣る。
【0037】
上記構成を有する積層ステータコア52は、図9に示すように、積層ステータコア14と同様に1つの順送金型装置によって製造することができる。なお図9では、各ステーションにおいて使用される打抜き型の形状を実線(太線)で示し、既に打抜かれた部分の輪郭を破線で示す。
【0038】
順送金型装置(図示せず)では、電磁鋼板90がロール状に巻かれた状態から引出され、所定経路に沿って並置された各ステーションに連続的に送られる(図示矢印)。まず最初のステーションS1で、ロッド部材を挿入可能な寸法及び形状を有した8個の円形孔78を所定の相対配置で打抜く。図示しないが、好ましくはこの時点で、かしめ部76も形成しておく。
【0039】
次のステーションS2には、上型及び下型を同時に同一の所望角度ずつ回転可能な打抜き型が配置される。そこで上型及び下型を所定の回転位置に配置し、切欠き74及び開口部88に対応する位置に複数の孔74′を打抜く。さらに、後続のステーションS3で内周部72を打抜き、最終ステーションS4で外周部70を打抜く。このようにして、薄板コア68が形成される。なお、ステーションS1〜S3の順序はやはり交換可能である。
【0040】
ステーションS2では、ステーションS1を経過した後続の製品部分が到達するたびに上型及び下型を微小な所定角度だけ同一方向へ回転させ、それぞれの角度位置で切欠き74及び開口部88に対応する複数の孔74′を形成する。それにより、後のステーションS3及びS4を経て、複数の歯82の柱部分84が環状部分80上で所定中心角度ずつ周方向へずれた位置に形成された異形状の薄板コア68が形成される。他の各ステーションS1、S3及びS4では、打抜き型は全ての製品部分に対して同一の位置に配置される。
【0041】
最終ステーションS4では、外周部70にずれを生じないように、異形状の薄板コア68を打抜かれた順に積層し、かしめにより相互に結合することによって、スロット54及びスロット開口部66が軸線に対し所定角度だけ傾斜して延びる積層ステータコア52が形成される。
【0042】
本発明に係るステータは、上記以外の様々な形状を有することができる。例えば図10に示すように、正多角柱以外の外形を有する積層ステータコア92に斜めスロット94を形成することもできる。積層ステータコア92は、36個の斜めスロット94を有する。斜めスロット94は、図6の積層ステータコア52と同様に、所定中心角度ずつ周方向へずれた位置に形成された歯96を有する多数の薄板コアの積層により形成される。この場合も、積層ステータコア92の外形は、斜めスロット94を形成したことによる何らの影響も受けない、また、積層ステータコア92の外周部近傍に形成された複数のロッド部材用貫通穴98及び冷却媒体通路100も、斜めスロット94の影響を受けず、軸方向へ直線的に形成される。
【0043】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、積層ステータコアの外形に影響を与えることなく、積層ステータコアに巻線設置用の斜めスロットを設けることができ、以てロータの回転むらを効果的に低減できる高性能の同期電動機のステータが、容易な製造方法のもとに提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるステータの斜視図である。
【図2】図1のステータの線II−IIに沿った断面図である。
【図3】図1のステータの積層ステータコアを形成する薄板コアの平面図である。
【図4】図2の矢印IVから見た積層ステータコアの部分正面図である。
【図5】図1のステータの積層ステータコアの製造工程を説明する図で、電磁鋼板のブランクを示す。
【図6】本発明の他の実施例によるステータの積層ステータコアの平面図である。
【図7】図6の積層ステータコアを形成する薄板コアの平面図である。
【図8】図6の矢印VIIIから見た積層ステータコアの部分正面図である。
【図9】図6の積層ステータコアの製造工程を説明する図で、電磁鋼板のブランクを示す。
【図10】図6の積層ステータコアの変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
12、54、94…スロット
14、52、92…積層ステータコア
16…電機子巻線
18、56、98…貫通孔
22、60、96…突歯
24、62…支柱
26a、26b、64a、64b…フック
28、66、72…スロット開口部
30、68…薄板コア
32、70…外周部
34、72…内周部
36、74…切欠き
38、76…かしめ部
42、82…歯
44、84…柱部分
46a、46b、86a、86b…フック部分
48、88…開口部
50、90…電磁鋼板
Claims (1)
- 複数の磁性薄板を軸方向へ積層して形成され、ロータを囲繞する内周面に複数のスロットを凹設した積層ステータコアと、該積層ステータコアの該複数のスロットに設置される巻線とを具備し、前記複数の磁性薄板が、同一の非円形輪郭を有した外周部、同一の略円形輪郭を有した内周部、及び該内周部に開口して積層により前記複数のスロットを形成する略同一の輪郭を有した複数の切欠きを各々に備えてなる同期電動機のステータの製造方法であって、
それぞれにプレス型を備えた複数のステーションにより多様なプレス加工を連続的に遂行可能な順送金型装置を用意し、
所定経路に沿って並置された前記順送金型装置の各ステーションに帯状の電磁鋼板を連続的に送り、
前記磁性薄板の前記複数の切欠きの少なくとも前記内周部における開口部を形成する孔を打抜く可動ステーションで、プレス型の上型及び下型を同時に同一の所望角度ずつ回転して所定の回転位置に配置し、該所定回転位置で複数の該孔を打抜き、
前記可動ステーションの他の固定ステーションで、固定位置に配置されたプレス型により前記磁性薄板の前記内周部を打抜き、
前記可動ステーション及び前記固定ステーションの後段の最終固定ステーションで、固定位置に配置されたプレス型により前記磁性薄板の前記外周部を打抜き、
前記各ステーションを通過して、所定中心角度ずつずれて形成された前記複数の切欠きの少なくとも前記内周部における前記開口部を有した異なる形状の複数の前記磁性薄板を、該開口部が隣接する該磁性薄板の間で周方向に一様にずれるとともに前記外周部にずれが無い相対配置で互いに積層し、以て、前記複数のスロットの前記内周面における開口部が軸線に対し傾斜して延びる前記積層ステータコアを形成し、
前記積層ステータコアの前記スロットに前記巻線を配置する、
各ステップを有したことを特徴とする同期電動機のステータの製造方法。
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