JP3565347B2 - 定着くさびの均等配置治具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PC構造物において、PC鋼材の端部定着用くさびの分割片を均等に配置するための治具に関するものである。特に、くさびの分割片をPC鋼材の周方向および軸方向にずれることなく配置することができる治具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PC鋼より線などのPC鋼材をPC構造物に定着する構造として、くさびを用いた定着具が知られている。この定着具は、図3に示すように、くさび200と、テーパー孔121、131を持つアンカーディスク120またはメスコーン130の組み合わせから構成される。
【0003】
くさび200は、通常2〜3つの分割片を組み合わせることで一端の径が太く、他端の径が細い円錐台状に形成されるものである。分割片を組み合わせた状態において、くさび200の中心部には軸方向に伸びる円孔が形成される。この円孔内にてPC鋼より線100がくさび200に把持される。また、各分割片の太径側外周には溝が形成されている。各分割片を円錐台状に組み合わせた状態において、この溝にOリング(図示せず)をはめ込むことで各分割片がばらばらにならないように結束される。
【0004】
端部をくさび200で把持したPC鋼より線100は、ジャッキで所定の緊張力を付与され、くさび200をアンカーディスク120またはメスコーン130のテーパー孔にはめ込むことで定着される。アンカーディスク120またはメスコーン130は、例えばコンクリート構造物の表面に位置するアンカープレート110上に配置される。なお、アンカープレートではなく、リブキャストアンカーやソケットの場合もある。
【0005】
ところで、このようなくさびでは、PC鋼より線の軸方向、場合によっては周方向にも各分割片が不均一に配置されるという問題がある。前述したように、従来のくさびは、各分割片がOリングで結束されることで円錐台状を保持しているだけである。そのため、図4に示すように、定着時にOリング140が容易に伸び、各分割片が軸方向や周方向にずれることがある。例えば、PC鋼より線が定着具近辺で曲げ配置される(直線配置されない場合)などにおいては軸方向に分割片を均一配置することが難しく、PC鋼より線にかかる付加応力も不均一に作用する場合がある。特に、高い疲労特性が要求される斜張橋の斜材ケーブルや外ケーブルに用いられるくさびは、各分割片の均一配置に対する要求レベルが高く、ずれ防止が一層求められる。
【0006】
一方、このようなずれ防止を目的とした従来技術として、特許文献1に記載のくさび打ち込み装置が知られている。この装置は、外筒と、外筒内にスライド自在に収納した中空の押し出し筒によって構成される。外筒の先端には、分割片同士を仮止めする板ばねと、分割片の間に位置して分割片の円周上の移動を防止するストッパーとを有する。
【0007】
【特許文献1】特開平7−279912号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に記載の技術でも次のような問題があった。
▲1▼くさび打ち込み装置の構成が複雑である。
分割片を円錐台状に組み合わせた状態に保持するため、ストッパーおよび板ばねを必要とし、部品点数が多く、装置の構成が複雑になる。
【0009】
▲2▼くさび分割片がOリングで結束されている場合、利用することができない。各分割片がOリングで結束されていると、外筒先端部に配置されるストッパーはOリングを広げることになり、Oリングによる分割片の結束ができなくなる。また、押し出し筒でくさびを押し込む場合、板ばねがOリングと干渉して、円滑なくさびの押し出しを阻害したり、Oリングが脱落するなどの問題が生じる。
【0010】
従って、本発明の主目的は、簡易な構成にて、各分割片を周方向または軸方向にずれなく配置してPC鋼材を把持し、PC鋼材にかかる付加応力の偏りを防止できる定着くさびの均等配置治具を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、くさび分割片がOリングで結束されている場合でも支障なく用いることができ、分割片の周方向または軸方向へのずれを防止できる定着くさびの均等配置治具を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、くさびをテーパー孔に挿入する際、各分割片が均等に配置されるような治具を用いることで上記の目的を達成する。
【0013】
すなわち、本発明治具は、PC鋼材の外側にはめ込まれる筒状部と、筒状部の端部に設けられると共に、PC鋼材を把持するくさび分割片の間に挿入されて各分割片を周方向に均等に配置する突起部とを具えることを特徴とする。
【0014】
筒状部の先端に均等に配置された突起部を有する治具を用いることで、この突起部を各くさび分割片の間に挿入すれば、自動的に分割片は周方向に均等に配列されることになり、ずれが生じたままPC鋼材を把持するといったことを解消できる。
【0015】
本発明治具は筒状部と突起部とを有する。この筒状部は、PC鋼材を挿通することができる内径を有する。筒状部の材質は、突起部をくさびの分割片の間に挿入する際、筒状部における突起部のない側を打撃したりするので、その衝撃に十分耐えられる程度の機械的強度を持つもので構成する。
【0016】
この筒状部において、突起部の設けられた端面は、各分割片を軸方向にも均等に配置できるように筒状部の軸方向と直交する面で構成することが好ましい。この構成により、突起部を分割片の間に挿入して治具をくさび側に打ち込んだ場合、筒状部の端面がくさびの太径側端面に当接し、各分割片が軸方向にずれることなく配列することができる。
【0017】
一方、突起部は、筒状部の端部に突設された複数の突片である。各突起部は円筒部の周方向に均等に配列される。通常、各突起部は筒状部と同一材料で、一体に構成されている。突起部の数は、分割片同士の隙間の数に応じた数とする。たとえば、3つの分割片でくさびが構成される場合、隙間の数も3つであり、突起部の数も3つとする。
【0018】
この突起部の形状は、先端に向かうに従って細くなるテーパー状であることが好ましい。突起部をテーパー状とすることで、分割片の間に突起部を挿入しやすく、抜きやすい。
【0019】
上記の治具は、くさびを構成する各分割片の間に突起部を挿入し、突起部と反対側の筒状部端部を叩くなどして利用する。各分割片の間に突起部が挿入されることで、各分割片を周方向に均等に配置できる。また、突起部が設けられた筒状部端面が各分割片に当接することで、各分割片を軸方向にずれることなく配置できる。
【0020】
この治具は、予め各分割片の間に突起部を挿入しておき、その後、この分割片をメスコーンなどのテーパー孔に挿入しても良いし、分割片をメスコーンなどのテーパー孔に挿入しておいてから、その分割片の間に突起部を挿入して用いても良い。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
<治具の構成>
図1は本発明治具を示すもので、(A)はその端面図、(B)はその正面図である。この治具は、筒状部10と、その一端側に突出される突起部20とを有する。筒状部10は、PC鋼より線が挿入される内径を有し、くさびの外径よりも若干小さい外径を有する円筒部材である。本例では、外径25.4mm、内径19.4mmの機械構造用炭素鋼鋼管(STKM13A)で筒状部10を構成した。
【0022】
この筒状部10の一端側には、突起部20が形成されている。本例では、3つの突起部20を、120°の間隔で周方向に均等に配列している。この突起部20も筒状部10と同一材料で構成され、筒状部10と一体化されている。
【0023】
この突起部20は、根元側の幅が広く、先端側に向かうに従って幅が細くなるテーパー形状をしている。その長さは10mm、根元側の幅が4mm、先端側の幅が3mmである。
【0024】
そして、突起部20が形成されている筒状部10の一端側、つまり筒状部端面における突起部20のない箇所は、筒状部10の軸方向と直交する面で構成されている。
【0025】
<治具の利用手順>
この治具は、次のような手順で利用する。
前提として、図3、図4で示したように、一端が太径側で他端が細径側となるくさび200を用意する。このくさび200は3つの分割片を組み合わせることでほぼ円錐台状に構成される。このような分割片を円錐台状に組み合わせ、その外周からOリングをはめ込んで各分割片がばらばらにならないようにしておく。
【0026】
図2に示すように、組み合わせた状態の各分割片(くさび200)の隙間に治具の突起部20を挿入する。突起部20は先端側ほど細いテーパー状に構成されているため、分割片同士の隙間に容易に挿入することができる。この治具の隙間への挿入により、各突起部20は筒状部10の周方向に均等に配列されているため、各分割片も周方向に均等に配列される。
【0027】
さらに、突起部20を分割片の隙間に挿入させると、筒状部端面における突起部20のない面がくさび太径側端面に当接する。この当接により、各分割片は軸方向にもずれることなく配置される。
【0028】
この状態で、治具と組み合わされたくさび200をメスコーン130にはめ込む。メスコーン130は、図2または図3(B)に示すように、テーパー孔131が形成され、そのテーパー孔131からPC鋼より線100が突出する状態に構成されている。
【0029】
治具と組み合わされたくさび200は、各分割片が周方向・軸方向のいずれにもずれがない状態でテーパー孔131に挿入されるため、メスコーン130と組み合わされた際に各分割片にずれが生じることがない。
【0030】
そして、筒状部10の他端側、つまり突起部のない側をハンマーなどで叩き、くさびをテーパー孔131内に圧入する。その後、治具をくさび200から取り外す。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明治具によれば、次の効果を奏することができる。
【0032】
▲1▼筒状部の先端に均等に配置された突起部を有する治具を用いることで、この突起部を各くさび分割片の間に挿入すれば、自動的に分割片は周方向に均等に配列されることになり、ずれが生じたままPC鋼材を把持するといった問題を解消することができる。
【0033】
▲2▼本発明治具は、筒状部の端部に複数の突起部が形成されているという極めて簡単な構造であり、かつくさび分割片の間に突起部を挿入させるという簡潔な使用方法で分割片のずれを抑制できる。特に、くさび分割片がOリングで結束されている場合でも、何ら支障なく本発明治具を用いることができる。
【0034】
▲3▼突起部の形状を、先端に向かうに従って細くなるテーパー状とすることで、くさび分割片の間に突起部を容易に挿入し、かつ引き抜くことができる。
【0035】
▲4▼突起部の設けられた筒状部端面を筒状部の軸方向と直交する面で構成することにより、各分割片を軸方向にも均等に配列することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明治具の端面図、(B)は同正面図である。
【図2】本発明治具をくさび分割片の間にはめ込んだ状態を示す説明図である。
【図3】(A)はアンカーディスクを用いた定着構造の説明図、(B)はメスコーンを用いた定着構造の説明図である。
【図4】くさびを構成する分割片のズレを示す説明図である。
【符号の説明】
10 筒状部
20 突起部
100 PC鋼より線
110 アンカープレート
120 アンカーディスク
121 テーパー孔
130 メスコーン
131 テーパー孔
140 Oリング
200 くさび
Claims (3)
- PC鋼材の外側にはめ込まれる筒状部と、
筒状部の端部に設けられると共に、PC鋼材を把持するくさび分割片の間に挿入されて各分割片を周方向に均等に配置する突起部とを具えることを特徴とする定着くさびの均等配置治具。 - 突起部は先端に向かうに従って細くなるテーパー状であることを特徴とする請求項1に記載の定着くさびの均等配置治具。
- 突起部の設けられた筒状部端面は、各分割片を軸方向にも均等に配置できるように筒状部の軸方向と直交する面で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の定着くさびの均等配置治具。
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