JP3564457B2 - 植物性搾汁粕の処理方法及び飼料 - Google Patents

植物性搾汁粕の処理方法及び飼料 Download PDF

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    • Y02P60/87Re-use of by-products of food processing for fodder production

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品製造工程から副生した植物性搾汁粕(例えばビール粕,ワイン粕,酒粕,ジュース粕等)の処理方法、及びその処理方法を用いて得られる飼料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばビールの製造工程においては、多量のビール粕が副生する。従来、このビール粕は、牛,豚,鶏等の家畜の飼料としたり、乾燥・堆肥化して肥料として用いたりしていた。
【0003】
しかし、ビール粕は動物性タンパク質を含んでいないので、これを単独で飼料として用いると栄養バランスが偏る。そのため、魚粉や肉骨粉等の動物性飼料と配合して用いることになるが、周知のように魚粉は原料となるマイワシ等の漁獲高の減少により価格が高騰しており、また、肉骨粉は昨今の狂牛病問題で使用が制限されており、栄養バランスのとれた配合飼料を安価に提供することが困難となりつつある。さらに、飼料へのビール粕の配合率を高くしすぎると、その飼料を食べた家畜から得られる牛乳や鶏卵に不快臭が付くことがある。以上のようなことから、従来はビール粕が家畜飼料として充分に有効利用されているとは言えなかった。
【0004】
また、ビール製造工程で搾汁した状態のビール粕(生のビール粕)は水分含量が75〜80%と高く、これを用いて堆肥を製造する場合は、乾燥コスト等が嵩むために割高となって、採算性が問題となった。
【0005】
なお、以上ではビール粕について述べたが、ビール粕以外の植物性搾汁粕についてもほぼ同様であって、飼料や肥料として有効に再資源化するのが困難なために、産業廃棄物として処理されている場合がほとんどである。
【0006】
他方、特開平10−215785号公報には、食品廃棄物を含む培地をイエバエの幼虫で処理して、成育した幼虫を飼料として利用するとともに、幼虫の消化残渣を肥料や土壌改良剤として利用する技術が記載されている。そして、食品廃棄物として、ビール粕,酒粕,ジュース粕等の植物性搾汁粕を用いることも例示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、イエバエは動物性の腐敗物や家畜の糞尿等を好む性質を有しており、前記公報に記載の技術において、ビール粕,酒粕,ジュース粕等の植物性搾汁粕のみからなる培地を用いた場合は、イエバエの産卵率や得られる幼虫の量が少なくなってしまい、処理効率も極めて悪くなる。
【0008】
なお、前記公報には、植物性搾汁粕と家畜糞尿とを混合してなる培地をイエバエの幼虫で処理することも記載されており、この場合は植物性搾汁粕を単独で処理する場合に比べて、得られるイエバエ幼虫の量が増え、処理効率も向上するものと考えられる。しかしながら、このように家畜糞尿を併用した場合は、得られる幼虫が家畜糞尿を食べて成育したものとなるため、衛生的見地から、その用途が限定される。そうした幼虫を家畜等の飼料として用いると、飼料を介して家畜が伝染病等に感染するのではないかという懸念が持たれるからである。
【0009】
また、仮に幼虫は飼料として用いることが可能であるとしても、幼虫の消化残渣には家畜糞尿が含まれるので、この消化残渣と幼虫とを混合状態で飼料に加工することはできず、消化残渣と幼虫とを分離する工程が必要となって、処理コストが嵩む等の問題も生じることになる。
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、ビール粕等の植物性搾汁粕を低コストで処理して有効に再資源化することが可能な植物性搾汁粕の処理方法、及びこの処理方法を用いて得られる安価で且つ栄養価の高い飼料を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明者は、家畜糞尿を併用せずに植物性搾汁粕を効率的に処理し得る方法について種々検討を重ねた結果、少なくとも処理の初期段階において、イエバエではなくショウジョウバエの幼虫に植物性搾汁粕を分解させれば効率的な処理が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0012】
すなわち、本発明に係る植物性搾汁粕の処理方法は、食品製造工程から副生した植物性搾汁粕をショウジョウバエの幼虫で分解処理し、ショウジョウバエの幼虫及び/又は蛹に由来する動物性資源と幼虫の消化残渣とを得ることを特徴とするものである。
【0013】
また、食品製造工程から副生した植物性搾汁粕の少なくとも一部をショウジョウバエの幼虫で分解処理した後、更にイエバエの幼虫で分解処理し、少なくともイエバエの幼虫及び/又は蛹に由来する動物性資源と幼虫の消化残渣とを得ることを特徴とするものである。
【0014】
また、前記いずれかの処理方法であって、植物性搾汁粕がビール粕であるものである。
【0015】
また、前記いずれかの処理方法であって、全工程を、有害微生物に汚染されたハエ等の野生昆虫が実質的に侵入しない閉鎖環境下で行なうものである。
【0016】
また、本発明に係る飼料は、前記いずれかの処理方法により得られた動物性資源と消化残渣とを混合状態で乾燥させてなるものである。
【0017】
なお、一般にビール粕とはビール製造工程から副生する糖化麦汁の搾り粕のことをいうが、本発明では、麦芽使用率が低いビール様の飲料(いわゆる発泡酒)の製造工程から副生した同様の搾り粕(すなわち発泡酒粕)も「ビール粕」に含まれるものとする。
【0018】
また、本発明で用いるショウジョウバエやイエバエは特に限定されないが、ショウジョウバエとしては入手が容易で且つ飼育しやすい等の理由からキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を用いるのが好ましい。以下の実施形態では、特に断り書きがない限り「ショウジョウバエ」との表記で「キイロショウジョウバエ」を示すものとする。
また、前記と同様に入手及び飼育が容易であるという理由から、以下の実施形態では「イエバエ」として世界的に広く分布しているMusca domesticaを用いるものとする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明方法が処理の対象とする植物性搾汁粕は、食品製造工程から副生したものであって、動物性の成分を実質的に含まない搾汁粕である。植物性搾汁粕として、具体的には、例えばビール粕,ワイン粕,酒粕,醤油粕等の発酵食品粕や、ジュース粕,おから等の発酵食品以外の搾り粕が挙げられる。これらの植物性搾汁粕は食品製造工程から副生したものであるため、原則として毒素を産生する微生物や病原菌等の有害微生物を含んでいない。したがって、その後の処理工程で適切な処置を講じることにより、得られる動物性資源(ショウジョウバエやイエバエの幼虫及び/又は蛹)や幼虫の消化残渣に有害微生物が含まれることを可及的に防止することができる。
【0020】
なお、ショウジョウバエは植物(果物等)が発酵した匂いを好み、また、その幼虫の成育も植物性発酵物を餌とした場合に良好となるので、搾汁粕が予め発酵してあるワイン粕や酒粕等の場合は、そのままショウジョウバエの幼虫で処理することができる。それに対し、ジュース粕のように発酵していない植物性搾汁粕を処理する場合は、自然発酵させるか、もしくは搾汁粕に酵母等の発酵菌を加えて発酵させた後、ショウジョウバエの幼虫で分解処理することが好ましい。
【0021】
また、本発明では、植物性搾汁粕として、特にビール粕を用いることが好ましい。それは以下のような理由による。
すなわち、ビール粕は、酵母を加えてアルコール発酵をさせる前の段階で麦汁から分離されたものであるため、搾汁直後のものは発酵していないが、その後常温下で保管しておくだけで速やかに自然発酵し、ショウジョウバエの餌として好適な状態となる。したがって、特に酵母等を加えて発酵させる必要がなく、処理コストを低廉にすることができる。
また、ビール粕はpHが7(中性)に近く、搾汁後の発酵によりそのpHは次第に低下してゆくものの、ショウジョウバエやイエバエの幼虫の成育が阻害されるほどに低下することはない。そのため、例えば焼酎粕(pH4程度)を処理する場合のようにpH調整剤を用いる必要がない。
さらに、ビール粕は発生量が多く、且つ発生量が年間を通じてあまり変動しないため、本発明方法によりビール粕を処理して飼料等を生産する業務の事業化が容易である。しかも、近年各地で盛んに生産されている地ビールの製造業者がビール粕の処理に苦慮している事例が多く、ビール粕を効率的且つ有効に処理することは社会的要求にも沿う。
【0022】
さて、本発明では、先ず、ビール粕等の植物性搾汁粕をショウジョウバエの幼虫で分解処理する。ここでは、植物性搾汁粕にショウジョウバエの卵もしくは孵化したての幼虫を接種することが必要となるが、人手により卵や幼虫を接種する作業には手間がかかる。そのため、例えば、必要に応じて発酵処理及びpH調製処理等が施された植物性搾汁粕を、上面が開口した浅い箱状の容器に収容し、この容器を適宜な広さのケージ(飼育舎)の中に入れ、このケージ内にショウジョウバエの成虫(種親)を放つというような方法で、植物性搾汁粕に直接産卵・接種させるのが効率的である。ケージ内が孵化に好適な温度及び湿度に保持されていれば、産み付けられた卵は2〜3日で孵化し、ショウジョウバエの幼虫が植物性搾汁粕を餌として成育する。
【0023】
そして、植物性搾汁粕を分解(消化)して消化残渣(糞)を排出しつつ成長した幼虫は、孵化後3〜6日程度で蛹となる。ショウジョウバエの幼虫及び/又は蛹を動物性資源として飼料等に用いる(イエバエの併用はしない)のであれば、この蛹化が始まる前後に加熱等によって殺虫する。ここでは、幼虫がある程度成熟した蛹化前の段階で殺虫しても構わないし、反対に、全ての幼虫が蛹化した後に殺虫しても構わない。ただし、個体によって成育の速さに差があるため、全ての幼虫が蛹化するのを待つと時間がかかりすぎて処理効率が低下する。したがって、一部の幼虫が蛹化し、残部が成熟した終齢幼虫となっている時点で殺虫するのが最も効率的である。幼虫及び/又は蛹の殺虫のしかた、及び、これらに由来する動物性資源及び消化残渣の用途等については後述する。
【0024】
次いで、植物性搾汁粕の少なくとも一部をショウジョウバエの幼虫で分解処理した後、更にイエバエの幼虫で分解処理する場合の実施形態について説明する。前記したように、植物性搾汁粕のみを直接イエバエの幼虫で分解処理しようとすると、幼虫の成育が遅くて効率的な処理ができず、得られる幼虫の量も少なくなってしまう。それに対し、ショウジョウバエの幼虫が糞として排出した消化残渣(すなわち植物性搾汁粕の分解物)は、食糞性を有するイエバエ幼虫の好適な餌となり、これを餌とすることでイエバエ幼虫の成育が良好となる。また、イエバエ成虫(種親)の産卵率も、ショウジョウバエ幼虫の消化残渣が含まれている植物性搾汁粕に対しては良好となる。そして、イエバエの幼虫及び蛹はショウジョウバエの幼虫及び蛹の数倍の大きさを有しているため、植物性搾汁粕をショウジョウバエの幼虫のみで分解処理した場合に比べて、幼虫及び/又は蛹の収量が大幅に増加する。そのため、動物性資源の生産性が極めて良好となる。
【0025】
イエバエの卵又は幼虫を接種する時期は、植物性搾汁粕の少なくとも一部がショウジョウバエの幼虫に分解され、消化残渣と植物性搾汁粕とが混在する状態となった後であれば、どのような時期であっても構わない。すなわち、例えば植物性搾汁粕に接種したショウジョウバエの卵が孵化し、その幼虫が消化残渣を排出し始めた直後であっても構わないし、反対にショウジョウバエの幼虫が全て蛹化した後であっても構わない。ただし、あまり接種時期が早すぎると、イエバエ幼虫の餌となるショウジョウバエ幼虫の消化残渣が少ないために、イエバエ幼虫の成育が悪くなる傾向が生じ、反対に接種時期が遅すぎると、イエバエ幼虫が充分に成長するまでにショウジョウバエ幼虫が蛹を経て羽化するので、ショウジョウバエの幼虫及び/又は蛹を動物性資源として利用することができなくなる。もちろん、イエバエの幼虫及び/又は蛹のみを得たい場合はそれでも構わないが、より多量の動物性資源を生産するという観点からは、効率が悪いと言える。
【0026】
その点、ショウジョウバエが孵化してから所定時間(例えば1〜2日程度)後にイエバエが孵化し、且つ、ショウジョウバエが羽化する前にイエバエ幼虫が充分に成長もしくは蛹化する結果が得られるよう、適宜な時期を見計らってイエバエの卵又は幼虫を接種することが望ましい。接種の方法は任意であるが、ショウジョウバエの場合と同様、ケージ内にイエバエの成虫(種親)を放って植物性搾汁粕(ここではショウジョウバエ幼虫の消化残渣を含んでいる)に直接産卵・接種させるのが効率的である。
【0027】
図1は、ショウジョウバエとイエバエの両方を動物性資源として利用する場合に好適な接種時期及び成育段階の一例を示す図である。なお、ショウジョウバエ及びイエバエの産卵から羽化までの各成育段階に要する期間は温度条件によって大幅に変化し、且つ、個体によっても若干相違するが、ここではショウジョウバエが産卵から孵化までに2日を、孵化から蛹化までに4日を、蛹化から羽化までに4日をそれぞれ要し、一方、イエバエは産卵から孵化までに1日を、孵化から蛹化までに5日をそれぞれ要するものと想定する。この条件では、図1に示すようにショウジョウバエの孵化から1日が経過した時点で、イエバエの成虫(種親)をケージ内に放って、ショウジョウバエ幼虫の消化残渣を含んだ植物性搾汁粕に産卵(接種)させる。すると、産み付けられたイエバエの卵はショウジョウバエの孵化から約2日後に孵化することになるため、イエバエ幼虫はショウジョウバエ幼虫の消化残渣を充分に食べ、この消化残渣を更に分解(消化)して消化残渣(糞)を排出しつつ成育する。そして、このイエバエ幼虫の成育中にショウジョウバエ幼虫が蛹化し、それから約3日後にイエバエ幼虫も蛹化を始める。そこで、このイエバエ幼虫が蛹化を始める直前の時期(ショウジョウバエの産卵から約9日後:図中に一点鎖線aで示す)に殺虫すれば、ショウジョウバエの蛹とイエバエの終齢幼虫とが同時に得られることになり、動物性資源の生産効率を最も良好にすることが可能となる。
なお、イエバエの終齢幼虫は乾いたところへ這い出したのち蛹化するので、この這い出した幼虫又はこの幼虫が蛹化してなる蛹を集めて動物性資源とすることも可能である。
【0028】
次いで、幼虫及び/又は蛹の殺虫のしかた、及び、これらに由来する動物性資源及び消化残渣の用途等について説明する。
殺虫を行なう場合、最も処理効率が良いのは、ショウジョウバエやイエバエの幼虫及び/又は蛹と、幼虫の消化残渣との混合物を、混合状態のままで加熱等により殺虫する方法である。なお、この殺虫を行なう時点で植物性搾汁粕の全部が幼虫によって分解され尽くしている必要はなく、前記混合物に未分解の植物性搾汁粕が含まれていても構わない。
具体的には、前記混合物を例えば100〜120℃程度の高温水蒸気に晒すことにより熱処理して殺虫を行なうとともに、混合物に含まれる雑菌等の微生物を死滅させ、次いで、この混合物を減圧乾燥・熱風乾燥等の方法で適宜な含水率となるまで乾燥させることが考えられる。乾燥させる前に混合物を粉砕もしくは破砕しておくと、乾燥工程での処理効率を向上させることができる。
【0029】
以上のようにして加熱・乾燥された混合物は、ショウジョウバエ及び/又はイエバエの幼虫及び/又は蛹に由来する動物性資源と、前記幼虫が成長する過程で排出した消化残渣とを含んでいる。そして、動物性資源は、幼虫や蛹を構成していた動物性タンパク質,脂肪,ビタミン,ミネラル等の栄養素を豊富に含有しており、前記動物性タンパク質は全ての必須アミノ酸を含有している。一方、消化残渣は、植物性搾汁粕が幼虫により分解されて、植物由来の栄養素が高度に濃縮された植物性有機資源となっている。すなわち、この混合物は動物性の栄養素と植物性の栄養素とをバランス良く含む極めて栄養価の高いものであるため、これを牛,豚,鶏等の家畜の飼料として用いれば、魚粉や肉骨粉等の動物性飼料を配合しなくても栄養バランスが偏ることはない。また、食品製造工程の副生物である植物性搾汁粕を原料としており、しかも幼虫及び/又は蛹と消化残渣とを分離(分別)せずに混合状態のままで飼料に加工しているために、原料コストや処理コストが嵩むことはなく、栄養価の高い飼料が低コストで得られることになる。さらに、原料に家畜糞尿を併用していない上に、加熱工程で殺菌及び悪臭成分の除去が行なわれているために、この飼料を介して家畜が伝染病に感染するおそれはなく(すなわち安全性が高く)、また、多量に摂取させても家畜から得られる牛乳や鶏卵等に不快臭が付くことがなく、しかも、乾燥させてあるために保存性が良好である。
【0030】
なお、ショウジョウバエ(及びイエバエ)の種親として、大学や企業の研究室等で無菌飼育されたハエを用いるとともに、植物性搾汁粕の運搬から接種,幼虫による分解,殺虫,乾燥に至るまでの全工程を野生昆虫が実質的に侵入しない閉鎖環境下で行なうことも考えられる。この場合は、例えば野生バエ等により持ち込まれる有害微生物(毒素を産生する微生物,病原菌等)によって植物性搾汁粕や幼虫が汚染されるのを防ぐことができるので、より衛生的な動物性資源及び消化残渣が得られる。したがって、動物性資源と消化残渣との混合物からなる飼料の安全性がより一層向上し、場合によっては加熱による殺菌処理工程を省略することも可能となる。(これにより、動物性資源を構成するタンパク質の変性を防止できる等の利点が得られる。)また、閉鎖環境下で処理することにより、処理に用いたショウジョウバエやイエバエの一部が羽化して成虫となった場合でも、そのハエが外部に逃げ出すことがなく、処理場近隣の環境を悪化させることがない。因みに、ここでいう「閉鎖環境」とは少なくともショウジョウバエ程度の大きさの野生昆虫が出入りできない程度に外部と隔てられた環境のことであり、必ずしも気密状に密閉された環境でなくても構わない。
【0031】
また、前記では動物性資源と消化残渣とを混合状態のまま乾燥させて飼料としたが、必要に応じて動物性資源(幼虫・蛹)を消化残渣から分離(分別)して、例えば養魚用の飼料や釣り餌として利用することも可能である。この場合、幼虫や蛹は生きたまま用いても良いし、例えば短時間熱湯に浸漬して殺虫した後、直ちに引き揚げ、半生状態で冷凍しても良い。幼虫や蛹を工業原料として利用することも考えられる。動物性資源を分離した後の消化残渣は乾燥させて肥料等に極めて有効に利用することができる。
【0032】
【実施例】
温度25℃,湿度50%程度に空調され、外部からハエ等の野生昆虫が侵入しないように構成された処理室内に、分解処理用ケージ,ショウジョウバエ成虫飼育用ケージ,及びイエバエ成虫飼育用ケージをそれぞれ設置した。各成虫飼育用ケージには、大学の研究室から分譲を受けた無菌飼育ショウジョウバエ及び無菌飼育イエバエの成虫(雌雄同数)をそれぞれ入れた。
【0033】
また、縦80cm,横50cm,深さ20cm程度の上面が開口した箱状の処理容器を複数用意し、各処理容器にビール工場から入手した生のビール粕(搾汁後数時間程度経過して自然発酵を始めたもの)を10cm程度の厚みとなるように敷きつめて、分解処理用ケージ内に置いた。
【0034】
ショウジョウバエの成虫をショウジョウバエ成虫飼育用ケージから分解処理用ケージに移し、各処理容器のビール粕に産卵させた後、成虫をショウジョウバエ成虫飼育用ケージに戻した。産み付けられた卵は2日程度で幼虫となり、ビール粕を分解した消化残渣を排出し始めた。
【0035】
ショウジョウバエの孵化から1日が経過した時点で、イエバエの成虫をイエバエ成虫飼育用ケージから分解処理用ケージに移し、各処理容器のビール粕(ショウジョウバエ幼虫の消化残渣を含んでいる)に産卵させた後、成虫をイエバエ成虫飼育用ケージに戻した。
【0036】
産み付けられたイエバエの卵は約1日で孵化し、各処理容器内はショウジョウバエ幼虫とイエバエ幼虫とが混在する状態となった。次いで、ショウジョウバエの幼虫が蛹化し、各処理容器内はショウジョウバエの蛹とイエバエ幼虫とが混在する状態となった。この状態で成育状態を観察し、イエバエ幼虫が蛹化する直前まで成長した段階で、次の殺虫工程を実行した。
【0037】
すなわち、1つの処理容器については、その処理容器の内容物(ショウジョウバエの蛹,イエバエの成熟幼虫,ショウジョウバエ幼虫及びイエバエ幼虫の消化残渣からなる)を混合状態のままで加熱乾燥させた。乾燥は、混合物の含水率が10〜15%となるまで行なった。
【0038】
また、別の処理容器については、その処理容器の内容物を動物性資源(ショウジョウバエの蛹及びイエバエの成熟幼虫)と消化残渣とに分離し、動物性資源は沸騰した湯に短時間浸漬して殺虫した後、半生状態で冷凍した。分離後の消化残渣は加熱乾燥させた。
【0039】
前記加熱乾燥させた混合物は、25〜30質量%の動物性資源を含むものであった。これを飼料として牛,豚,鶏等の家畜に与えたところ、嗜好性が良好で、家畜の健康状態も良好であった。また、多量に与えても牛乳や鶏卵に不快臭が付くことはなかった。
【0040】
一方、前記で消化残渣から分離して冷凍した動物性資源(ショウジョウバエの蛹及びイエバエの成熟幼虫)の成分を分析したところ、粗タンパク質,粗脂肪,カルシウムやカリウム等のミネラル類が豊富に含まれており、且つ、前記粗タンパク質には全ての必須アミノ酸が含まれており、しかもヒ素や水銀等の有害物質は含まれておらず、魚粉や肉骨粉に代わる動物性飼料として極めて有用なものであることがわかった。
この動物性資源のみを餌として体長17cm,体重90gのコイに与え続けたところ、20日後には体長23cm,体重160gにまで成長した。同様のコイに市販の養魚用飼料のみを与え続けた場合、20日後の体長は19.5cm、体重は105gであったので、本発明で得られる動物性資源は養魚用飼料としても極めて有用なものであることがわかった。
【0041】
なお、以上の実施例ではビール粕を処理したが、ビール粕以外の植物性搾汁粕を用いた場合でも前記とほぼ同様の結果が得られた。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る処理方法によれば、食品製造工程から副生した植物性搾汁粕をショウジョウバエの幼虫で分解処理するので、家畜糞尿を併用することなしに、低コストで効率的な処理が行なえるとともに、飼料等として利用価値の高い動物性資源及び消化残渣が得られ、従来処理に苦慮していた植物性搾汁粕を極めて有効に再資源化することができるという効果が奏される。
【0043】
また、ショウジョウバエの幼虫で分解処理した植物性搾汁粕を更にイエバエの幼虫で分解処理することにより、動物性資源の生産性が大幅に向上する。
【0044】
さらに、全工程を野生昆虫が実質的に侵入しない閉鎖環境下で行なうことにより、有害微生物による汚染を可及的に防止して、動物性資源及び消化残渣を衛生的なものとし、飼料として用いる場合の安全性をより一層高めることができる。
【0045】
また、本発明に係る飼料は、低コストで生産でき、安全性が高く、且つ動物性の栄養素と植物性の栄養素とをバランス良く含む栄養価の高いものであり、しかも乾燥させてあるので保存性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ショウジョウバエ及びイエバエの好適な接種時期及び成育段階の一例を示す図である。

Claims (5)

  1. 食品製造工程から副生した植物性搾汁粕をショウジョウバエの幼虫で分解処理し、ショウジョウバエの幼虫及び/又は蛹に由来する動物性資源と幼虫の消化残渣とを得ることを特徴とする植物性搾汁粕の処理方法。
  2. 食品製造工程から副生した植物性搾汁粕の少なくとも一部をショウジョウバエの幼虫で分解処理した後、更にイエバエの幼虫で分解処理し、少なくともイエバエの幼虫及び/又は蛹に由来する動物性資源と幼虫の消化残渣とを得ることを特徴とする植物性搾汁粕の処理方法。
  3. 植物性搾汁粕がビール粕である請求項1又は2に記載の植物性搾汁粕の処理方法。
  4. 全工程を、有害微生物に汚染されたハエ等の野生昆虫が実質的に侵入しない閉鎖環境下で行なう請求項1乃至3のいずれかに記載の植物性搾汁粕の処理方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の処理方法により得られた動物性資源と消化残渣とを混合状態で乾燥させてなる飼料。
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