JP3562131B2 - 3−オキソジシクロペンタジエンの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の生理活性物質の合成中間体として有用な3−オキソジシクロペンタジエンの新規製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、3−オキソジシクロペンタジエンの製造法としては、3−ヒドロキシジシクロペンタジエンの酸化による方法が広く知られており、酸化剤としては、ビスマス酸亜鉛(Bull.Chem.Soc.Jpn.,65,1131(1992))、クロロクロム酸亜鉛(Synthesis,1992,999)、フルオロクロム酸ピリジニウム(Synthesis,1982,588)、フルオロクロム酸キノリニウム(Bull.Chem.Soc.Jpn.,67,1894(1994))、ジメチルスルホキシド/クロロスルホニルイソシアネート(Synthesis,1980,141)等多くの例がある。
しかしながらこれらの酸化剤はいずれも入手方法、廃水処理、反応温度等に問題があるため量産化に適した方法とは言い難く、より実用性の高い、効率的な製造法の開発が望まれていた。
本発明における3−オキソジシクロペンタジエンは、種々の生理活性物質の合成中間体として広範に利用できる有用な化合物である。例えば、本化合物を出発物質とすれば、経口避妊薬として有望なエストロゲンステロイドホルモンの一種である(+)−エキレニン(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1990,1544)や(+)−エストロン(Tetrahedron Lett.,33,1909(1992))を容易に合成できる。また、麻酔・鎮痛作用を示すモルフィン系アルカロイドである(−)−アファノルフィン(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1990,290)や、中枢神経興奮作用を有する(−)−フィソベニン(J.Org.Chem.,56,5982(1991))も3−オキソジシクロペンタジエンから効率良く合成することが出来る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
以上の点を踏まえ、本発明者らは、3−オキソジシクロペンタジエンを効率よく得る方法を見出すべく鋭意検討した結果、4−アルコキシ−2−シクロペンテン−1−オンとシクロペンタジエンとを金属ハロゲン化物の存在下Diels−Alder反応させることにより前記式(III )で表される3−オキソジシクロペンタジエンを効率よく得る製造法を見い出し本発明に至った。以上の記述から明らかなように、本発明の目的は、上述の方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の(1)から(7)の構成を有する。
【0005】
(1)式(I)
【化12】
(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖または分枝アルキル基を表す。)で表される4−アルコキシ−2−シクロペンテン−1−オンを、金属ハロゲン化物存在下、シクロペンタジエンとDiels−Alder反応させることにより、式(II)
【化13】
及び式(II’ )
【化14】
(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖または分枝アルキル基を表す。)で表されるDiels−Alder付加体の異性体混合物を得、続いてチタン化合物を用いる脱アルキル化、塩基性条件下での脱水工程を経て式(III )
【化15】
(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖または分枝アルキル基を表す。)で表される3−オキソジシクロペンタジエンを得る製造法。
【0006】
(2)金属ハロゲン化物がハロゲン化亜鉛またはハロゲン化チタンであり、チタン化合物がハロゲン化チタンである前記(1)記載の製造法。
【0007】
(3)4−アルコキシ−2−シクロペンテン−1−オンのアルコキシ基がtert−ブトキシ基である前記(1)記載の製造法。
【0008】
(4)前記(1)において、式(I)
【化16】
(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖または分枝アルキル基を表す。)で表される4−アルコキシ−2−シクロペンテン−1−オンが光学活性体である式(III )
【化17】
(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖または分枝アルキル基を表す。)で表される3−オキソジシクロペンタジエンの光学活性体の製造法。
【0012】
次に本発明について詳細に述べる。本発明の3−オキソジシクロペンタジエン(III )は、以下の工程に従って製造することが出来る。
【0013】
【化23】
【0014】
(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖または分枝アルキル基を表す。)
【0015】
本発明に用いられる式(I)で表される化合物のラセミ体は、文献既知の方法(例えば、高野ら、Heterocycles,16,605(1981))により容易に合成することができる。
すなわち、式(I)で表される化合物とシクロペンタジエン(VI)とを、金属ハロゲン化物存在下、Diels−Alder反応に付すことにより、式(II)と式(II’ )で表される化合物の異性体混合物を得ることが出来る。
金属ハロゲン化物の例としては塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等の亜鉛化合物、四塩化チタン等のチタン化合物等を挙げることができる。
金属ハロゲン化物は基質に対して0.01〜10当量用いることが出来るが、特に好ましくは0.1〜5当量である。反応は溶媒中で行うのが好ましく、反応溶媒としては塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等を用いることが出来る。反応温度は−50〜150℃が適当であり、特に好ましくは0〜50℃である。
【0016】
式(VII )と式(VII’)で表される化合物の混合物は、式(II)と式(II’ )で表される化合物の混合物をチタン化合物を用いて脱アルキル化することにより得ることが出来る。
チタン化合物の例としては四塩化チタンを挙げることができる。チタン化合物は基質に対して0.1〜10当量用いることが出来るが、特に好ましくは0.5〜5当量である。反応溶媒としては、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒を好ましく用いることが出来る。反応温度は−50〜100℃が適当であり、特に好ましくは−10〜50℃である。
【0017】
式(III )で表される化合物は、式(VII )と式(VII’)で表される化合物の混合物を塩基性水溶液中で脱水することにより得ることができる。
脱水反応に用いられる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩が挙げられる。塩基は基質に対して0.1〜50当量用いることが出来るが、特に好ましくは1〜10当量である。反応溶媒としては、反応を阻害しない有機溶媒であれば広く用いることができ、例えば塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等を好ましく用いることが出来る。反応温度は−50〜150℃が適当であり、特に好ましくは−10〜100℃である。
【0018】
以上の操作により、(±)−3−オキソジシクロペンタジエンを効率的に製造することが出来る。
上記三工程は各工程をステップワイズに行ってもよいが、反応溶媒に溶解した式(I)で表される化合物にシクロペンタジエン−金属ハロゲン化物、チタン化合物、塩基性水溶液を順次滴下、反応させることにより、(±)−3−オキソジシクロペンタジエンをワンポットで製造することも出来る。
また、本発明の出発原料として光学活性な((+)−I)及び((−)−I)を用いれば、同様の工程を経て光学活性な3−オキソジシクロペンタジエンを製造することができる。
【0019】
式((+)−I)及び式((−)−I)で表される化合物は、文献既知の方法(例えば、Hambleyら、J.Org.Chem.,56,4760(1991))により容易に合成することができる。
あるいは、(±)−4−アルコキシ−2−シクロペンテン−1−オール(IV)をリパーゼ存在下、脂肪酸ビニルとのエステル交換反応に付すことにより光学分割し、得られる光学活性な((−)−IV)と((+)−V)の混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の方法を用いて分離した後、脱エステル化、酸化を行うことによっても得ることができる。以下に工程を示す。
【0020】
【化24】
【0021】
リパーゼとしては、次表に示した市販のリパーゼを用いることができる。
【0022】
【表1】
【0023】
これらの他にエステル交換能を有するリパーゼを産生する微生物であれば、その種類を問わずにそのリパーゼを使用することができる。かかる微生物の例として、
シュウドモナス(Pseudomonus )属、
クロモバクテリウム(Chromobacterium )属、
アルスロバクタ−(Arthrobacter)属、
アクロモバクタ−(Acromobacter)属、
アルカリゲネス(Alcaligenes )属、
アスペルギルス(Aspergilius )属、
カンジダ(Candida )属、
ムコ−ル(Mucor )属、
リゾプス(Rhizopus)属、
等に属するものが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、シュウドモナス属由来のものである。
【0024】
脂肪酸ビニルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。脂肪酸ビニルは基質に対して0.1〜50当量用いることができるが、特に好ましくは0.5〜10当量である。反応溶媒としては、ヘプタン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が代表的なものであるが、リパーゼ活性を阻害しない有機溶媒であれば広く用いることができる。反応温度は10〜100℃が適当であり、特に好ましくは20〜50℃である。反応時間は1〜300時間であり、好ましくは10〜100時間である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0028】
実施例1
(±)−3−オキソジシクロペンタジエンの合成
工程1
(±)−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエンの合成
(±)−4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オン(536mg、3.5mmol)を無水ベンゼン(30ml)に溶解し、塩化亜鉛(570mg、4.2mmol)を加えて、アルゴン気流下室温で30分間攪拌した。次いでシクロペンタジエン(0.84ml、10.4mmol)を滴下し、同温度で3時間攪拌した。反応液に氷冷下、飽和重曹水を加えてアルカリ性とし、混合物をセライトで濾過した。
セライト層を酢酸エチルで洗浄し、有機相を分取した。水相を酢酸エチルで抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥後、濾過、減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2/98(v/v))を用いて精製し、無色固形の(±)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(703mg、92%)と無色油状の(±)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(48mg、6%)を得た。
(±)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン;
mp:42−42.5℃
IR(Nujol):1735cm−1
1 H−NMR(CDCl3 ):δ 1.19(s),1.34(d,J=8.0Hz),1.48(d,J=8.0Hz),2.05(dd,J=19.0,9.5Hz),2.31(ddd,J=19.0,9.0,1.5Hz),2.87(dd,J=8.5,4.8Hz),3.06(m),3.13(brs),3.19(brs),4.28(q,J=9.2Hz),5.94(dd,J=5.5,2.9Hz),6.33(dd,J=5.5Hz)
(±)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン;
IR(Neat):1735cm−1
1 H−NMR(CDCl3 ):δ 1.19(s),1.41(d,J=8.0Hz),1.55(d,J=8.0Hz),2.24(ddd,J=19.0,5.1,1.5Hz),2.34(dd,J=19.0,7.3Hz),2.95(dt,J=6.6,2.9Hz),3.17(m),3.69(m),3.19(brs),6.15(brs)
【0029】
工程2
(±)−3−オキソ−5−ヒドロキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエンの合成
(±)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(375mg、1.7mmol)を無水塩化メチレン(7ml)に溶解し、四塩化チタン(0.23ml、2.0mmol)を加えて、アルゴン気流下0℃にて5分間攪拌した。反応液に飽和重曹水を加えてアルカリ性とし、混合物をセライトで濾過した。セライト層を塩化メチレンで洗浄し、有機相を分取した。
水相を塩化メチレンで抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥後、濾過、減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/9→1/4(v/v))を用いて精製し、無色固形の(±)−3−オキソジシクロペンタジエン(46mg、19%)と(±)−エンド−3−オキソ−5−ヒドロキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(225mg、80%)を得た。
同様にして、(±)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(150mg、0.68mmol)から、無色固形の(±)−3−オキソジシクロペンタジエン(10mg、10%)と(±)−エキソ−3−オキソ−5−ヒドロキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(84mg、75%)を得た。
(±)−エンド−3−オキソ−5−ヒドロキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン;
mp:154−155℃
IR(Nujol):3220,1720cm−1
1 H−NMR(CDCl3 ):δ 1.42(d,J=8.4Hz),1.56(d,J=8.4Hz),1.70(brs),2.10(dd,J=18.6,10.3Hz),2.49(ddd,J=18.6,9.2,1.1Hz),3.00(m),3.21(m),4.62(m),6.05(dd,J=5.5,2.9Hz),6.38(dd,J=5.5,2.6Hz)
(±)−エキソ−3−オキソ−5−ヒドロキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン;
IR(Neat):3418,1731cm−1
1 H−NMR(CDCl3 ):δ 1.43(d,J=8.4Hz),1.55(d,J=8.4Hz),1.71(brs),2.17(d,J=19.0Hz),2.34(dd,J=19.0,6.6Hz),2.93(dd,J=9.2,4.0Hz),3.09(m),3.19(brs),4.05(brs),6.11(brs)
【0030】
工程3
(±)−3−オキソジシクロペンタジエンの合成
(±)−エンド−3−オキソ−5−ヒドロキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(39mg、0.23mmol)をテトラヒドロフラン(0.48ml)に溶解し、5%水酸化ナトリウム水溶液(0.48ml、0.6mmol)を滴下して室温で30分間攪拌した。反応液にエーテル(5ml)と水(1ml)を加えて有機相を分取した。
水相をエーテルで抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥後、濾過、減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル/ヘキサン=1/9(v/v))を用いて精製し、無色固形の(±)−3−オキソジシクロペンタジエン(30mg、87%)を得た。
同様にして、(±)−エキソ−3−オキソ−5−ヒドロキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(36mg、0.22mmol)から、無色固形の(±)−3−オキソジシクロペンタジエン(27mg、85%)を得た。
mp:52−55℃
IR(Nujol):1713cm−1
1 H−NMR(CDCl3 ):δ 1.62(d,J=8.4Hz),1.72,dt,J=8.4,1.6Hz),2.80(t,J=5.1Hz),2.97(brs),3.22(brs),3.42(m),5.78(dd,J=5.6,3.0Hz),5.94(dd,J=5.6,2.7Hz),5.96(dd,J=5.8,1.6Hz),7.39(dd,J=5.8,2.5Hz)
MS(m/z):146(M+ ),117,66
【0031】
実施例2〜4
(±)−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエンの合成
実施例1工程1と同様にして、(±)−4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オンから(±)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン及び(±)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエンを得た結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
実施例5
(±)−3−オキソジシクロペンタジエンの合成
(±)−4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オン(185mg、1.2mmol)を無水ベンゼン(10ml)に溶解し、アルゴン気流下、0℃にてシクロペンタジエン(0.29ml、3.6mmol)を加え、次いで四塩化チタン(66μl、0.6mmol)を滴下して同温度で1時間攪拌した。続いて無水塩化メチレン(2.5ml)を加え、攪拌下四塩化チタン(0.13ml、1.2mmol)を滴下した。同温度で5分間攪拌した後、5%水酸化ナトリウム水溶液(10ml、12.5mmol)を滴下して室温で更に40分間攪拌した。反応混合物をセライトで濾過し、セライト層をエーテルで洗浄し、有機相を分取した。
水相をエーテルで抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥後、濾過、減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/9(v/v))を用いて精製し、無色固形の(±)−3−オキソジシクロペンタジエン(146mg、83%)を得た。
各スペクトルデータは、実施例1工程3で得られたものと完全に一致した。
【0034】
実施例6
(±)−3−オキソジシクロペンタジエンの合成
(±)−4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オン(185mg、1.2mmol)を無水ベンゼン(10ml)に溶解し、アルゴン気流下、0℃にてシクロペンタジエン(0.29ml、3.6mmol)を加え、次いで塩化亜鉛(196mg、1.4mmol)を滴下して同温度で12時間攪拌した。続いて無水塩化メチレン(2.5ml)を加え、攪拌下四塩化チタン(0.14ml、1.3mmol)を滴下した。
同温度で5分間攪拌した後、5%水酸化ナトリウム水溶液(10ml、12.5mmol)を滴下して室温で更に40分間攪拌した。実施例5と同様に後処理及び精製を行い、無色固形の(±)−3−オキソジシクロペンタジエン(141mg、81%)を得た。
各スペクトルデータは、実施例1工程3で得られたものと完全に一致した。
【0036】
工程2
光学活性4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オンの合成
(+)−4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オール(357mg、2.3mmol)を塩化メチレン(8ml)に溶解し、室温にてピリジニウムクロロクロメート(741mg、3.4mmol)を少量ずつ加えた。室温で1.5時間攪拌後、反応混合物を塩化メチレンで希釈し、シリカゲルで濾過した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/9(v/v))を用いて精製し、無色油状の(+)−4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オン(289mg、82%)を得た。
[α]D 28 +47.8゜(CHCl3 )
光学異性体分離カラム(CHIRALCEL OB,イソプロパノール:ヘキサン=1:99)を用いたHPLCにより光学純度を求めたところ、光学純度は91%eeであった。
同様にして、(−)−4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オール(147mg、0.9mmol)から(−)−4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オン(117mg、81%)を得た。
[α]D 29 −53.1゜(CHCl3 )
光学異性体分離カラム(CHIRALCEL OB,イソプロパノール:ヘキサン=1:99)を用いたHPLCにより光学純度を求めたところ、光学純度は97%eeであった。
【0037】
実施例8
光学活性3−オキソジシクロペンタジエンの合成
工程1
(−)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン、及び(+)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエンの合成
(+)−4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オン(64mg、0.4mmol)を無水ベンゼン(2.5ml)に溶解し、塩化亜鉛(67mg、0.5mmol)を加えて、アルゴン気流下室温で30分間攪拌した。次いでシクロペンタジエン(0.1ml、1.2mmol)を滴下し、同温度で2時間攪拌した。実施例1工程1と同様に後処理し、無色油状の(−)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(69mg、76%)と無色油状の(+)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(7mg、8%)を得た。
(−)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン;
[α]D 27 −185.5゜(CHCl3 )
(+)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン;
[α]D 27 +103.2゜(CHCl3 )
各スペクトルデータは、実施例1工程1で得られたものと一致した。
【0038】
工程2
光学活性3−オキソジシクロペンタジエンの合成
(−)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(54mg、0.25mmol)を無水塩化メチレン(1ml)に溶解し、四塩化チタン(32μl、0.3mmol)を加えて、アルゴン気流下0℃にて5分間攪拌した。次いで5%水酸化ナトリウム水溶液(1.4ml、1.7mmol)を滴下し、室温で2.5時間攪拌した。反応液をエーテルで抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥後、濾過、減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル/ヘキサン=1/6(v/v))を用いて精製し、無色結晶状の(−)−3−オキソジシクロペンタジエン(28mg、78%)を得た。
mp:75.5−76℃
[α]D 30 −161.7゜(CHCl3 )
各スペクトルデータは、実施例1工程3で得られたものと一致した。また、光学異性体分離カラム(CHIRALCEL OB,イソプロパノール:ヘキサン=1:99)を用いたHPLCにより光学純度を求めたところ、光学純度は99%eeであった。
同様にして、(+)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(22mg、0.1mmol)から(+)−3−オキソジシクロペンタジエン(9mg、62%)を得た。
mp:74−75℃
[α]D 28 +151.1゜(CHCl3 )
各スペクトルデータは、実施例1工程3で得られたものと一致した。また、光学異性体分離カラム(CHIRALCEL OB,イソプロパノール:ヘキサン=1:9)を用いたHPLCにより光学純度を求めたところ、光学純度は99%ee以上であった。
【0039】
実施例9
光学活性3−オキソジシクロペンタジエンの合成
工程1
(+)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン、及び(−)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエンの合成
(−)−4−tert−ブトキシ−2−シクロペンテン−1−オン(133mg、0.86mmol)を無水ベンゼン(7.5ml)に溶解し、塩化亜鉛(141mg、1.0mmol)を加えて、アルゴン気流下室温で30分間攪拌した。次いでシクロペンタジエン(0.2ml、2.6mmol)を滴下し、同温度で4時間撹拌した。実施例1工程1と同様に後処理し、無色油状の(+)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(139mg、73%)と無色油状の(−)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(21mg、11%)を得た。
(+)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン:
[α]D 25 +180.7゜(CHCl3 )
(−)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン;
[α]D 28 −97.8゜(CHCl3 )
各スペクトルデータは、実施例1工程1で得られたものと一致した。
【0040】
工程2
光学活性3−オキソジシクロペンタジエンの合成
(+)−エンド−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(100mg、0.45mmol)を無水塩化メチレン(2ml)に溶解し、四塩化チタン(60μl、0.55mmol)を加えて、アルゴン気流下0℃にて5分間攪拌した。次いで5%水酸化ナトリウム水溶液(2.6ml、3.2mmol)を滴下し、室温で2.5時間攪拌した。実施例7工程2と同様に後処理し、(+)−3−オキソジシクロペンタジエン(50mg、76%)を得た。
mp:75−76℃
[α]D 25 +153.5゜(CHCl3 )
各スペクトルデータは、実施例1工程3で得られたものと一致した。また、光学異性体分離カラム(CHIRALCEL OB,イソプロパノール:ヘキサン=1:99)を用いたHPLCにより光学純度を求めたところ、光学純度は99%ee以上であった。
同様にして、(−)−エキソ−3−オキソ−5−tert−ブトキシ−4,5−ジヒドロジシクロペンタジエン(19mg、0.09mmol)から(−)−3−オキソジシクロペンタジエン(11mg、86%)を得た。
mp:75.5−76℃
[α]D 26 −158.5゜(CHCl3 )
各スペクトルデータは、実施例1工程3で得られたものと一致した。また、光学異性体分離カラム(CHIRALCEL OB,イソプロパノール:ヘキサン=1:9)を用いたHPLCにより光学純度を求めたところ、光学純度は99%ee以上であった。
【0041】
【発明の効果】
本製造法を用いることにより、ラセミまたは光学活性な3−オキソジシクロペンタジエンが効率的に製造できる。3−オキソジシクロペンタジエンは、種々の生理活性物質等の合成中間体として有用な化合物である。
Claims (4)
- 金属ハロゲン化物がハロゲン化亜鉛またはハロゲン化チタンであり、チタン化合物がハロゲン化チタンである請求項1記載の製造法。
- 4−アルコキシ−2−シクロペンテン−1−オンのアルコキシ基がtert−ブトキシ基である請求項1記載の製造法。
- 請求項1において、式(I)で表される4−アルコキシ−2−シクロペンテン−1−オンが光学活性体である式( III )で表される3−オキソジシクロペンタジエンの光学活性体の製造法。
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