JP3555207B2 - 陰極線管用電子銃 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばカラー受像管やカラーディスプレイ装置等を構成するカラー陰極線管に用いられる陰極線管用電子銃に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にカラー陰極線管の解像度特性は、蛍光体スクリーン面上における電子ビームスポットの大きさ及び形状に大きく依存している。即ち、かかる電子ビームスポットのスポット径が小さく、且つ真円に近くなければ、良好な解像度特性を得ることができない。
【0003】
電子ビームの偏向角度が大きくなるに従い、陰極線管用電子銃から蛍光体スクリーン面に至る電子ビームの軌道は長くなる。それ故、蛍光体スクリーン面の中央部で径小、且つ真円の電子ビームスポットが得られるようにフォーカス電圧を保つと、蛍光体スクリーン面の周辺部ではオーバーフォーカス状態となる。その結果、蛍光体スクリーン面の周辺部においては径小且つ真円の電子ビームスポットが得られず、良好な解像度が得られなくなる。
【0004】
そこで、近年、電子ビームの偏向角度が大きくなるに従い、即ち、蛍光体スクリーン面の周辺部に衝突する電子ビームに対して、フォーカス電圧を高くして主レンズ作用を弱める、ダイナミックフォーカス方式の陰極線管用電子銃が案出されている。しかしながら、このダイナミックフォーカス方式はインライン3ビーム方式の陰極線管用電子銃には余り適していない。即ち、3つのカソードが水平一直線上に配置されたインライン3ビーム方式の従来の陰極線管用電子銃において、偏向ヨークの偏向磁界を斉一磁界とした場合、蛍光体スクリーン面の中心部でコンバーゼンスさせても、蛍光体スクリーン面の上下左右の周辺部においては、図12に示すように、縦弓型のコンバーゼンスエラー(オーバーコンバーゼンス)が生じる。尚、図12において、R(赤)、B(青)は両側電子ビームを示し、G(緑)は中央電子ビームを示す。
【0005】
それ故、従来、偏向ヨークによる水平偏向磁界分布をピンクッション状とし、垂直偏向磁界分布をバレル状として、ダイナミックコンバーゼンスを行っている。しかしながら、このような構成の偏向ヨークを用いた場合、偏向ヨークを通過し、そして蛍光体スクリーン面の周辺部に向かって偏向された電子ビームは、その垂直方向(縦方向)に集束作用(凸レンズ効果)を受け、一方、水平方向(横方向)に発散作用(凹レンズ効果)を受ける。その結果、蛍光体スクリーン面の周辺部における電子ビームスポットは真円にはならず、横長の形状となる。従って、蛍光体スクリーン面の上下左右の周辺部では、電子ビームスポットが歪んだり、フォーカス特性が劣化するという問題がある。
【0006】
偏向ヨークによる発散作用(凹レンズ効果)は、電子ビームの偏向角度の増大に伴い電子ビームスポットのオーバーフォーカス状態を打ち消す向きに作用する。従って、蛍光体スクリーン面上における電子ビームスポットの形状は、その水平方向に関しては全偏向期間を通じて最適のスポット形状を保つことが可能である。然るに、電子ビームの垂直方向に関しては、偏向ヨークによる集束作用(凸レンズ効果)は、電子ビームの偏向角度の増大に伴い電子ビームスポットのオーバーフォーカス状態を増加させる向きに作用する。その結果、電子ビームスポットに長いヘイズ部が生成し、解像度が損なわれる。この蛍光体スクリーン面の周辺部におけるオーバーフォーカス状態をダイナミックフォーカス方式で補正した場合、電子ビームスポットはその水平方向にアンダーフォーカスとなってしまい、適切な補正効果を得ることができない。
【0007】
このような問題を解決するために、四重極レンズを備えた陰極線管用電子銃が、例えば、Shoji Shirai, Masakazu Fukushima et al. ”Quadrupole Lens for Dynamic Focus and Astigmatism Control in an Elliptical Aperture Lens Gun”, Proceeding SID 87 DIGEST P162−165(以下、文献と呼ぶ)、あるいは、特開平3−93135号公報に提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の四重極レンズを備えた陰極線管用電子銃にあっては、次のような問題が生じていた。即ち、例えば上記の文献に記載された陰極線管用電子銃においては、蛍光体スクリーン面の周辺部における主レンズ作用を弱めるためのダイナミックな四重極レンズが、主レンズよりカソード側に設けられている。また、制御電極(第1グリッド)には、円形形状の電子ビーム通過孔が設けられている。このような構成の光学的モデルを、従来技術1の陰極線用管電子銃の光学的モデルとして、図10の(A)及び(B)に示す。図中、QPは四重極レンズ、MLは主レンズ、DYは偏向ヨークを意味する。四重極レンズQPにはダイナミックな電圧が印加されるので、四重極レンズQPによる四重極効果は、蛍光体スクリーン面の中央部に衝突する電子ビームに対しては働かず(又は、働いても弱く)、蛍光体スクリーン面の周辺部に衝突する電子ビームに対しては強く働く。また、偏向ヨークの作用も、蛍光体スクリーン面の中央部に衝突する電子ビームに対しては働かず、蛍光体スクリーン面の周辺部に衝突する電子ビームに対しては強く働く。尚、四重極レンズQPは、電子ビームの垂直方向に発散作用(凹レンズ効果)、水平方向に集束作用(凸レンズ効果)を有する。
【0009】
このような構成においては、電子ビームの歪みが発生する場所である偏向ヨークと、かかる電子ビームの歪みを補正するための四重極レンズとの間の距離が大きい。それ故、電子ビームの歪みを補正するために四重極レンズに印加すべき電圧が高くなり、四重極レンズを作動させるための補正回路の負担が増す。また、蛍光体スクリーン面の周辺部において、四重極レンズによって補正された電子ビームスポットの縦横比が悪くなる。即ち、蛍光体スクリーン面における電子ビームスポットの横方向の長さが長くなり、縦方向の長さが短くなるという問題がある。これは、蛍光体スクリーン面における電子ビームの縦(垂直)方向の集束角と横(水平)方向の集束角の相違が大きいことに起因する(図10の(B)参照)。一般に、電子ビームスポットの長さ(大きさ)は集束角の逆数に比例する。
【0010】
このような蛍光体スクリーン面の周辺部における電子ビームスポットの縦横比の改善を図る方法の1つに、制御電極(第1グリッド)における電子ビーム通過孔を縦長形状とする方法が考えられる。このような構成の光学的モデルを、従来技術2の陰極線管用電子銃の光学的モデルとして、図11の(A)及び(B)に示す。このような方法を採用した場合、制御電極を通過した電子ビームの物点形状は縦長となり、その結果、蛍光体スクリーン面の周辺部における電子ビームスポットの縦横比は改善される(図11の(B)参照)。しかしながら、蛍光体スクリーン面の中央部における電子ビームスポットの縦横比が劣化し、電子ビームスポット形状が縦長となるという問題を有する(図11の(A)参照)。
【0011】
一方、特開平3−93135号公報に開示された陰極線管用電子銃においては、2つの四重極レンズを組み合わせて補正時の電子ビームスポットの縦横比を改善する。しかしながら、2つの四重極レンズが主レンズよりもカソード側に設けられているため、上記の文献に記載された陰極線管用電子銃と同様の問題がある。更には、特開平3−93135号公報に開示された陰極線管用電子銃においては、蛍光体スクリーン面における電子ビームスポットの縦方向の長さを長くする効果はあるものの、横方向の長さはあまり短くならない。そのため、陰極線管の解像度が実質的には改善されないという欠点がある。また、四重極レンズに印加すべきダイナミックな電圧が増加し、かかる電圧を生成する回路に負担がかかると共に、陰極線管の製造コストの上昇を招くという問題もある。
【0012】
水平偏向磁界分布をピンクッション状とし垂直偏向磁界分布をバレル状とする従来の偏向ヨークにおける縦弓型のコンバーゼンスエラー(オーバーコンバーゼンス、図12参照)を解消し、しかも、蛍光体スクリーン面の周辺部における電子ビームスポットの歪みを低減し得るダイナミックコンバーゼンス装置を、本出願人は平成5年8月12日付の特許出願「ダイナミックコンバーゼンス装置」(特願平5−200856号、特開平6−165195号公報参照)にて提案した。
【0013】
この特開平6−165195号公報に開示されたダイナミックコンバーゼンス装置は、陰極線管用電子銃の管内に水平方向に配されており、互いに対向する一対の高圧側電極板と、この一対の高圧側電極板に対向するようにその両外側に配された一対の低圧側電極板から成り、一対の高圧側電極板の間を電子ビームが通過し、一方の高圧側電極板と一方の低圧側電極板との間を別の電子ビームが通過し、他方の高圧側電極板と他方の低圧側電極板との間を更に別の電子ビームが通過する。更に、例えば、高抵抗器及びダイオードの並列回路が設けられており、ダイオードのアノードが低圧側電極板側に共通に接続されている。一方、ダイオードのカソードが高圧側電極板側に共通に接続されている。そして、高圧直流電圧を一対の高圧側電極板に印加すると共に、水平及び垂直偏向周期に同期した擬パラボラ波によって振幅変調して得られた被変調電圧の水平帰線区間に垂直パラボラ波電圧を加算して得られたコンバーゼンス電圧をコンデンサを通じて一対の低圧側電極板に共通に供給する。
【0014】
特開平6−165195号公報に開示されたこのような構成を有するダイナミックコンバーゼンス装置においては、場合によっては偏向ヨークの磁界を斉一磁界とすることができ、蛍光体スクリーン面の全面に亙ってコンバーゼンスエラーを補正することができ、蛍光体スクリーン面の周辺部における電子ビームスポットの歪みが減少する。そして、フォーカシングが良好となり、蛍光体スクリーン面の周辺部におけるフォーカシングのためのダイナミックフォーカス電圧が小さくて済み、コンバーゼンスの調整が容易となり、マルチスキャンモニタへの採用が容易となり、局部的な電圧波形整形が容易となる。
【0015】
しかしながら、カラー受像管やカラーディスプレイ装置等が一層大型化し、しかも精緻な表示が要求される昨今、上述の特開平6−165195号公報に開示されたダイナミックコンバーゼンス装置と上記の文献や特開平3−93135号公報に開示された四重極レンズを組み合わせても、水平偏向磁界分布をピンクッション状とし垂直偏向磁界分布をバレル状とする偏向ヨークを用いざるを得ない場合、蛍光体スクリーン面における電子ビームスポットの歪みの改善を十分図ることができない場合があり、カラー陰極線管の解像度をより一層改善することができないことがある。
【0016】
従って、本発明の目的は、蛍光体スクリーン面の全面に亙って電子ビームスポットの形状及び径(大きさ)の改善を十分図ることができ、且つ、蛍光体スクリーン面の全面に亙ってコンバーゼンスエラーを補正することができ、カラー陰極線管の解像度を一層向上させ得る陰極線管用電子銃を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の陰極線管用電子銃は、カソードと、加速電極と、主レンズとを備えた陰極線管用電子銃であって、
(イ)カソードと加速電極(第2グリッド)との間に設けられ、縦長形状の電子ビーム通過孔を有する制御電極(第1グリッド)と、
(ロ)加速電極と主レンズとの間に設けられ、陰極線管の蛍光体スクリーン面の周辺部に電子ビームが衝突するとき、電子ビームの垂直方向に発散作用(凹レンズ効果)、水平方向に集束作用(凸レンズ効果)を有する第1の四重極レンズと、
(ハ)主レンズの下流に設けられ、陰極線管の蛍光体スクリーン面の中央部に電子ビームが衝突するとき、電子ビームの垂直方向に集束作用(凸レンズ効果)、水平方向に発散作用(凹レンズ効果)を有する第2の四重極レンズと、
(ニ)該第2の四重極レンズの下流に設けられたダイナミックコンバーゼンス装置、
を更に備えていることを特徴とする。
【0018】
尚、四重極レンズとは、四重極効果を生じさせるための四重極電界を形成し得る手段を意味し、主レンズとは、主レンズ電界を形成し得る手段を意味する。また、主レンズの上流とは、主レンズよりカソード側を意味し、主レンズより下流とは、主レンズより蛍光体スクリーン側を意味する。
【0019】
本発明の陰極線管用電子銃においては、場合によっては、加速電極(第2グリッド)の電子ビーム通過孔の形状を縦長とすることができる。
【0020】
本発明の陰極線管用電子銃においては、ダイナミックコンバーゼンス装置は、陰極線管用電子銃の管内に水平方向に配されており、(イ)互いに対向する一対の高圧側電極板と、(ロ)この一対の高圧側電極板に対向するようにその両外側に配された一対の低圧側電極板から成り、一対の高圧側電極板の間を電子ビームが通過し、一方の高圧側電極板と一方の低圧側電極板との間を別の電子ビームが通過し、他方の高圧側電極板と他方の低圧側電極板との間を更に別の電子ビームが通過する構造を有することが好ましい。
【0021】
本発明の陰極線管用電子銃においては、第1の四重極レンズは一対の電極部から成り、第2の四重極レンズも一対の電極部から成ることが好ましい。そして、更に、(イ)高抵抗器と、(ロ)この高抵抗器に並列に接続されたダイオードと、(ハ)陰極線管の管体、この管体の外側に形成された外側電極、及びこの管体の内側に形成された内側電極から成るコンデンサから構成されたクランプ回路を更に備え、ダイオードの一端は、第2の四重極レンズの一方の電極部及びダイナミックコンバーゼンス装置の一対の低圧側電極板に電気的に接続され、ダイオードの他端は、第2の四重極レンズの他方の電極部及びダイナミックコンバーゼンス装置の一対の高圧側電極板に電気的に接続されていることが望ましい。このように、所謂クランプ回路を備えることによって、簡素な回路で第2の四重極レンズ及びダイナミックコンバーゼンス装置を適切に且つ確実に駆動することができる。しかも、陰極線管のネック部のネックガラスを誘電体として形成したコンデンサを介して第2の四重極レンズ及びダイナミックコンバーゼンス装置にダイナミックな電圧を供給するので、別に変調回路を設けてこの変調回路で高圧を直接変調する必要がなくなり、回路構成を簡素化して大幅なコストダウンを図ることができる。
【0022】
この場合、ダイオードの一端であるアノードは、第2の四重極レンズの一方の電極部及びダイナミックコンバーゼンス装置の一対の低圧側電極板に電気的に接続され、一方、ダイオードの他端であるカソードは、第2の四重極レンズの他方の電極部及びダイナミックコンバーゼンス装置の一対の高圧側電極板に電気的に接続され、高圧直流電圧を第2の四重極レンズの他方の電極部及び一対の高圧側電極板に印加すると共に、水平及び垂直偏向周期に同期した擬パラボラ波によって振幅変調して得られた被変調電圧の水平帰線区間に垂直パラボラ波電圧を加算して得られた電圧をコンデンサを通じて第2の四重極レンズの一方の電極部及び一対の低圧側電極板に供給することが好ましい。このような構成にすることで、所謂上端クランプ回路が構成され、簡素な回路で第2の四重極レンズ及びダイナミックコンバーゼンス装置を適切に且つ確実に駆動することができる。また、ステム側から供給される中高圧のフォーカス電圧の変調度を低減することができ、回路のコストダウンを図ることができる。
【0023】
【作用】
図2に光学的モデルを示す本発明の陰極線管用電子銃においては、蛍光体スクリーン面の中央部において、第1の四重極レンズQPの四重極効果は最小となり、第2の四重極レンズQPの四重極効果は最大となる。尚、この理由は後述する。従って、蛍光体スクリーン面の中央部においては、電子ビームの水平方向に主に発散作用(凹レンズ効果)が、そして、垂直方向に主に集束作用(凸レンズ効果)が生じる。その結果、蛍光体スクリーン面の中央部における電子ビームスポットは横長のスポット形状となり、結果的に解像度の改善が図られない虞がある。
【0024】
このような電子ビームスポットのスポット形状の劣化を改善する方法として、例えば、陰極線管のネック部の外部に、電子ビームの水平方向に集束作用(凸レンズ効果)を有し且つ垂直方向に発散作用(凹レンズ効果)を有する一定の強さを有する四重極レンズで補正する方法が考えられるが、この場合、蛍光体スクリーン面の中央部でスタティックコンバーゼンスが変化してしまう。従って、かかる一定の強さを有する四重極レンズで蛍光体スクリーン面の中央部における電子ビームスポットのスポット形状の劣化を回避する方法は、例えば、図4の(C)に示した回路的に比較的作り易い波形を有する電圧をダイナミックコンバーゼンス装置の一対の低圧側電極板に供給する方式には適しておらず、コンバーゼンスエラーの補正効果と四重極効果を同時に得ることは困難である。
【0025】
然るに、本発明の陰極線管用電子銃においては、制御電極(第1グリッド)の電子ビーム通過孔が縦長形状を有するので、制御電極(第1グリッド)を通過した電子ビームの物点形状は縦長となる。その結果、蛍光体スクリーン面の中央部における電子ビームスポットを横長のスポット形状から真円の形状に近づけることができ、結果的に解像度の改善を図ることが可能になる(図2の(A)参照)。
【0026】
従来の円形形状の電子ビーム通過孔を有する制御電極を基準として、本発明の制御電極を構成する電子ビーム通過孔の縦横比を調整することで、電子ビームの水平方向と垂直方向のビームの物点径を調整することができる。即ち、制御電極の電子ビーム通過孔が円形形状を有する場合に、蛍光体スクリーン面上に形成される電子ビームスポットの縦方向及び横方向の大きさ(長さ)を、それぞれS、Sとする。一方、制御電極を縦長形状(非点孔形状)とすることで、制御電極を通過した電子ビームによって形成される物点の縦方向及び横方向の大きさ(長さ)を、それぞれ、d及びdとする。
【0027】
そして、S/S≒d/d となるように、制御電極を構成する電子ビーム通過孔の縦横比を調整すれば、蛍光体スクリーン面の中央部における電子ビームスポットの形状をほぼ真円に近づけることができる。
【0028】
一方、蛍光体スクリーン面の周辺部においては、第2の四重極レンズQPの四重極効果は消滅するが、水平偏向磁界分布をピンクッション状又は弱ピンクッション状とし垂直偏向磁界分布をバレル状又は弱バレル状とする偏向ヨークDYを備えている場合、かかる偏向ヨークDYによって第2の四重極レンズQPと同じ極性(性質)の四重極効果が形成される。また、第1の四重極レンズQPの四重極効果は最大となる。従って、主レンズMLを通過した縦長の電子ビームは真円に近づく方向に偏向ヨークDYによって補正される。但し、通常、偏向ヨークDYによる四重極効果はかなり強いため、過補正となって蛍光体スクリーン面上で電子ビームスポットの形状がやや横長となる。しかしながら、電子ビーム通過孔が円形形状である従来の制御電極(従来技術1参照)と比較して、制御電極を通過した電子ビームによって形成される物点が縦長である分だけ、蛍光体スクリーン面上における電子ビームスポットの縦方向の潰れが軽減される。即ち、図11の(B)に示した従来技術2の陰極線管用電子銃の光学的モデルと同程度の電子ビームスポットの形状を得ることができる。
【0029】
更には、本発明の陰極線管用電子銃においては、第2の四重極レンズの下流にダイナミックコンバーゼンス装置が設けられているので、偏向ヨークの磁界分布をより斉一に近づけることが可能となり(即ち、水平偏向磁界分布を弱ピンクッション状とし垂直偏向磁界分布を弱バレル状とすることが可能になり)、蛍光体スクリーン面の周辺部における電子ビームスポットの歪みを減少させることが可能になるし、蛍光体スクリーン面の全面に亙ってコンバーゼンスエラーを補正することができる。
【0030】
必要に応じて、更に、加速電極(第2グリッド)の電子ビーム通過孔の形状を縦長とすれば、蛍光体スクリーン面の中央部における電子ビームスポットの縦横比をより一層正確に制御することができる。尚、加速電極を構成する電子ビーム通過孔の縦横比は、制御電極と同様の調整を行えばよい。
【0031】
【実施例】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【0032】
本発明の実施例の陰極線管用電子銃の全体の構成を、図1に模式的な端面図として示す。尚、図1は陰極線管用電子銃を上方から眺めた図である。実施例の陰極線管用電子銃は、例えばカラー陰極線管用のインライン3ビーム方式の電子銃であり、陰極線管10のネック部11に配置されている。そして、実施例の陰極線管用電子銃においては、陰極線管の蛍光体スクリーン面(図示せず)に向かって、カソードK,K,Kと、第1グリッドG〜第6グリッドGと、第2の四重極レンズQPを構成する第1の電極部E及び第2の電極部Eが順次位置するように構成されている。尚、陰極線管用電子銃より下流の陰極線管には偏向ヨーク(図示せず)が配置されている。
【0033】
図1に示すように、RGBの各色のための電子ビームを放出するカソードK,K,Kが、インライン3ビーム方式に、即ち水平一直線上に配列されている。
【0034】
第1グリッドG〜第6グリッドGは、管軸(Z軸)上に配置されている。尚、第1グリッドG〜第6グリッドGには、特に符号を付さない場合があるが、それぞれ電子ビームを通過させるためのビーム通過孔が形成されている。尚、グリッドによっては、ビーム通過孔にて電極あるいは電極部が構成される。
【0035】
第1グリッドGによって制御電極が構成されている。第2グリッドGは加速電極を構成する。第3グリッドG及び第4グリッドGはプリフォーカスレンズPLを構成するための電極である。第2グリッドG〜第4グリッドGは、公知の構造を有する電極である。
【0036】
第5グリッドは、2つのグリッド(第5前方グリッドG5−1及び第5後方グリッドG5−2)から構成されており、主レンズのための集束電極を構成する。第1の集束電極である第5前方グリッドG5−1の後方電極部G5aである電子ビーム通過孔は、本発明の陰極線管用電子銃の特徴の1つである、第1の四重極レンズQPの電極部を構成する。また、第5後方グリッドG5−2は、主レンズのための第2の集束電極を構成し、ダイナミックフォーカス電圧が印加される。第5後方グリッドG5−2の前方電極部G5bである電子ビーム通過孔は、第1の四重極レンズQPの電極部を構成する。
【0037】
第6グリッドGは、最終加速電極である。第5後方グリッドG5−2の後方電極部G5c及び第6グリッドGの前方電極部G6aによって、主レンズMLが構成されている。
【0038】
更には、第1の電極部E及び第2の電極部Eによって、本発明の陰極線管用電子銃の特徴の1つである第2の四重極レンズQPが構成されている。即ち、電極部G5a及び電極部G5bから成る一対の電極部から構成された第1の四重極レンズQPが、加速電極である第2グリッドGと主レンズMLとの間に設けられている。一方、電極部E,Eから成る一対の電極部から構成された第2の四重極レンズQPが、主レンズMLの下流に設けられている。尚、第1の電極部E及び第2の電極部Eも、管軸(Z軸)上に配置されている。
【0039】
第2の電極部Eの後方(下流)には、本発明の陰極線管用電子銃の特徴であるダイナミックコンバーゼンス装置CP,CP,CP,CPが設けられている。このダイナミックコンバーゼンス装置は、通常コンバーゼンスカップと呼ばれる部品ではなく、トリニトロン(登録商標)でコンバーゼンス電極板として用いられている4枚の平行平板の電極板から成る。そして、ダイナミックコンバーゼンス装置は、陰極線管用電子銃の管内に水平方向に配されている。
【0040】
実施例におけるダイナミックコンバーゼンス装置は、互いに対向する一対の高圧側電極板CP,CPと、この一対の高圧側電極板CP,CPに対向するようにその両外側に配された一対の低圧側電極板CP,CPとから成る。そして、一対の高圧側電極板CPとCPの間を中心電子ビーム(緑電子ビーム)が通過し、一方の高圧側電極板CPと一方の低圧側電極板CPの間を別の電子ビーム(例えば赤電子ビーム)が通過し、他方の高圧側電極板CPと他方の低圧側電極板CPの間を更に別の電子ビーム(例えば青電子ビーム)が通過する。これら電極板CP〜CPの管軸(Z軸)方向の長さは10mm程度、その各間隔は5mm程度である。
【0041】
第2グリッドG(加速電極)及び第4グリッドGはリード線12によって接続されており、これらの第2グリッドG及び第4グリッドGには電子ビームを加速及び集束するための電圧が供給される。一方、第3グリッドG(プリフォーカスレンズPLを構成する)及び第5前方グリッドG5−1(第1の四重極レンズQP及び第1の集束電極を構成する)は、それぞれ、リード線13を介して直流電源14(フォーカス電圧V)に接続されている。更に、第1の四重極レンズQP及び主レンズMLを構成する第5後方グリッドG5−2は、第1のダイナミック電圧発生回路15に接続されており、この第1のダイナミック電圧発生回路15は直流電源14に接続されている。第1のダイナミック電圧発生回路15から出力される電圧は、電圧Vにダイナミック変調電圧ΔVが加わった電圧、即ち、ダイナミックフォーカス電圧である。尚、例えば、Vは6〜10kV程度であり、一方、ΔVは1kV程度の範囲内をダイナミックに変動する。
【0042】
図1に示すように、最終加速電極を構成する第6グリッドGと第2の四重極レンズQPを構成する第2の電極部Eとは、リード線16を介して電気的に接続されている。そして、第2の電極部Eは、弾性導電片から成る接続部材17を介して陰極線管10の内面に形成された内部導電膜18に電気的に接続されている。この内部導電膜18はネック部11からファンネル部へと延び、アノードボタン(図示せず)に接続されている。従って、最終加速電極を構成する第6グリッドGと第2の四重極レンズQPを構成する第2の電極部Eは、高圧直流電圧(アノード電圧Hであり、例えば30kV)に保たれる。一対の高圧側電極板CP,CPは、第2の電極部Eに取り付けられている。従って、一対の高圧側電極板CP,CPには、一定の高圧直流電圧であるアノード電圧Hが印加される。
【0043】
一方、第2の四重極レンズQPを構成する第1の電極部Eは、弾性導電片から成る接続部材20を介してネックコンデンサ21に電気的に接続されている。このネックコンデンサ21は、誘電体としての管体(陰極線管10のネック部11のネックガラス)と、かかる管体の外側に形成された導電材料から成るリング状の外側電極21Aと、かかる管体の内側に形成された導電材料から成るリング状の内側電極21Bとから成る。そして、例えば数十pF程度の静電容量を有するように構成されている。低圧側電極板CP,CPは第1の電極部Eに電気的に接続されている。
【0044】
第1の電極部Eと最終加速電極である第6グリッドGとの間には、高耐圧のダイオード(逆耐圧、1KV程度以上)22と、高抵抗(数10MΩ程度)の抵抗器(高抵抗器)23が並列に接続されている。実施例においては、ダイオード22の一端に相当するアノードは、第2の四重極レンズQPを構成する一方の電極部である第1の電極部Eと電気的に接続されている。尚、第1の電極部Eと低圧側電極板CP,CPとは電気的に接続されているので、ダイオード22の一端に相当するアノードは、ダイナミックコンバーゼンス装置の一対の低圧側電極板CP,CPにも電気的に接続されている。
【0045】
一方、ダイオード22の他端に相当するカソードは、第6グリッドG及びリード線16を介して第2の電極部E(第2の四重極レンズQPを構成する他方の電極部に相当する)に電気的に接続されている。尚、一対の高圧側電極板CP,CPが第2の電極部Eに取り付けられているので、ダイオード22の他端に相当するカソードは、ダイナミックコンバーゼンス装置の一対の高圧側電極板CP,CPにも電気的に接続されている。例えば、抵抗器23を低圧側電極板CP上に溶接し、ダイオード22を低圧側電極板CP上に取り付けることができる。
【0046】
これにより、図3に示すような等価回路が構成される。即ち、第2のダイナミック電圧発生回路24、ネックコンデンサ21、ダイオード22及び抵抗器23によって、所謂上端クランプ回路が構成されている。ダイオード22には保護用の抵抗器rが必要に応じて直列に接続されている。ダイオードの内部抵抗値が比較的に高い場合には、保護用の外付けの抵抗器rは不要である。図1に示した陰極線管用電子銃においては、外付けの抵抗器rは設けられていない。
【0047】
実施例においては、高圧直流電圧Hを第2の四重極レンズの他方の電極部(第2の電極部E)及び一対の高圧側電極板CP,CPに印加すると共に、水平及び垂直偏向周期に同期した擬パラボラ波によって振幅変調して得られた被変調電圧の水平帰線区間に垂直パラボラ波電圧を加算して得られた電圧をコンデンサ21を通じて第2の四重極レンズの一方の電極部(第1の電極部E)及び一対の低圧側電極板CP,CPに供給する。
【0048】
具体的には、実施例においては、第2のダイナミック電圧発生回路24から出力されるダイナミックな電圧の波形として、例えば図4の(B)に示すように、水平帰線区間(ブランキング区間)にパルス波形を重畳し、水平及び垂直偏向周期に同期した擬パラボラ状波形を有する電圧を用いる。即ち、先ず、水平及び垂直偏向周期に同期した擬パラボラ波によって振幅変調して、被変調電圧を得る(図4の(A)参照)。この被変調電圧の振幅の絶対値はVQP(例えば、1kV)である。そして、この被変調電圧の水平帰線区間に垂直パラボラ波電圧を加算することで、図4の(B)に示すような0(V)〜−VQP(V)の間で変化する電圧を得ることができる。かかる電圧が、第2のダイナミック電圧発生回路24から出力される。尚、図4の(B)に示す電圧VQPの波形は、図4の(A)に示す電圧波形の水平帰線区間内に垂直周期波形で振幅変調されたクランプパルスCPが挿入された波形である。水平帰線区間内では、第2の四重極レンズの作動やコンバーゼンスの補正は不要であるが故に、クランプパルスCPを挿入しても不都合は発生しない。
【0049】
ネックコンデンサ21の外側電極21Aには、陰極線管10の外部に設けた第2のダイナミック電圧発生回路24から、図4の(B)に示した、偏向周期に同期した変調電圧0(V)〜−VQP(V)が供給される。第2のダイナミック電圧発生回路24、ネックコンデンサ21、ダイオード22及び抵抗器23によって上端クランプ回路が構成されており、しかも、かかる上端クランプ回路の一端には第2の電極部Eからアノード電圧Hが供給されるので、第1の電極部Eに印加される電圧の波形、及び第1の電極部Eと電気的に接続されている低圧側電極板CP,CPに印加される電圧の波形は、図4の(C)に示すように、アノード電圧Hに上端がクランプされ、H〜H−V’QPの間で変動する波形となる。
【0050】
こうして、第1の電極部Eに印加される電圧は、図4の(C)に示すように変調される。また、低圧側電極板CP,CPにも、図4の(C)に示すように、コンバーゼンス補正電圧として、偏向周期に同期した変調電圧H〜H−V’QPが供給される。
【0051】
尚、この波形は、必要に応じて変形されたものでもよく、また必ずしも図4の(B)に示すように、0(V)で上端クランプされている必要はない。但し、もしも上端クランプ回路を設けない場合、低圧側電極板CP,CPに印加される電圧の波形は、図4の(D)に示すように、単純に交流結合された波形となる。この場合、偏向周期に同期した変調電圧の垂直周期の成分が忠実に伝送されない。あるいは又、第2の四重極レンズを構成する第2の電極部Eに印加される電圧よりも、第1の電極部Eに印加される電圧の方が高くなる場合があり、この場合には第2の四重極レンズQPによる所望の四重極効果が得られなくなる。一方、図3に等価回路を示すように、上端クランプ回路を設けることによって、図4の(C)に示すように、クランプパルスCPのピーク電圧値が高圧直流電圧(アノード電圧)Hにクランプされるので、第1の電極部Eや低圧側電極板CP,CPに印加される電圧は、高圧直流電圧Hより高い部分が抑えられ、負側に押し下げられる。その結果、HからH−V’QPまで変化するダイナミックな電圧が、第1の電極部E及び低圧側電極板CP,CPに確実に印加される。
【0052】
コンデンサ21に印加される電圧は、図4の(D)に示すような交流結合された電圧であってもよい。この場合においても、第1の電極部E及び低圧側電極板CP,CPには、上端がアノード電圧Hにクランプされた電圧が印加される。
【0053】
陰極線管10のネック部11のネックガラスを誘電体として形成したコンデンサ21を介して第2の四重極レンズQPを構成する第1の電極部E及び低圧側電極板CP,CPにダイナミックな電圧を供給することができるので、別に変調回路を設けてこの変調回路で高圧を直接変調する必要はない。
【0054】
実施例における各グリッドの電極部分の平面形状を模式的に図5に示す。実施例においては、制御電極を構成する第1グリッドGにおける電極である電子ビーム通過孔は縦長形状を有する(図5の(A)参照)。また、加速電極を構成する第2グリッドGにおける電極である電子ビーム通過孔は、略円形の開口部から成る(図5の(B)参照)。
【0055】
また、第1の四重極レンズQPを構成する第5前方グリッドG5−1の後方電極部G5aは、図5の(C)に模式的に示すように、縦長の矩形形状を有する。一方、第1の四重極レンズQPを構成する第5後方グリッドG5−2の前方電極部G5bは、図5の(D)に模式的に示すように、横長の矩形形状を有する。
【0056】
実施例においては、第5後方グリッドG5−2の前方電極部G5bには、第5前方グリッドG5−1の後方電極部G5aに印加される電圧(V)以上のダイナミックな電圧(V+ΔVであり、V+ΔVF1〜V+ΔVF2の間を変動する)が印加される。V及び(V+ΔV)の波形を図6に示すが、ΔVは擬パラボラ波形を有する。その結果、第1の四重極レンズQPには、縦(垂直)方向に発散作用(凹レンズ効果)、横(水平)方向に集束作用(凸レンズ効果)を有する、非軸対称の所謂四重極効果が生ずる。この状態を、図7に模式的に示す。
【0057】
水平走査において、蛍光体スクリーン面の中央部に衝突する電子ビームに対しては、第5前方グリッドG5−1に印加される電圧(V)と、第5後方グリッドG5−2に印加される電圧(V+ΔV)との電位差が最小(ΔVF1)となるので、第1の四重極レンズQPの四重極効果は最低となる。また、蛍光体スクリーン面の中央部から周辺部に向かって移動する電子ビームに対しては、第5前方グリッドG5−1に印加される電圧(V)と、第5後方グリッドG5−2に印加される電圧(V+ΔV)との電位差が増加するので、第1の四重極レンズQPの四重極効果は増大する。尚、第5後方グリッドG5−2に印加される電圧と、第6グリッドGに印加される電圧との電位差が減少するので、主レンズMLの主レンズ作用は弱まる。更に、蛍光体スクリーン面の周辺部に衝突する電子ビームに対しては、第5前方グリッドG5−1に印加される電圧(V)と、第5後方グリッドG5−2に印加される電圧(V+ΔV)との電位差が最大(ΔVF2)となるので、第1の四重極レンズQPの四重極効果は最大となる。
【0058】
更に、第1の電極部E及び第2の電極部Eによって、本発明の陰極線管用電子銃の特徴の1つである、第2の四重極レンズQPが構成されている。第1の電極部Eの形状を図8の(A)に模式的に斜視図で示す。第1の電極部Eには電子ビーム通過孔である開口部が設けられており、この開口部の上方及び下方に突起部E1aが設けられている。そして、かかる突起部E1aが庇状に第2の電極部Eに向かって延びている。一方、第2の電極部Eの形状を図8の(B)に模式的に示す。尚、図8の(B)は、蛍光体スクリーン面側から第2の電極部E及び第1の電極部Eを眺めた図であり、第1の電極部Eの庇状の突起部E1aが第2の電極部Eの略矩形の開口部(電子ビーム通過孔)を貫通して延びている。
【0059】
実施例においては、第1の電極部Eに印加される電圧は、第6グリッドG及び第2の電極部Eに印加される電圧以下である。従って、第2の四重極レンズQPには、電子ビームに対して縦(垂直)方向に集束作用(凸レンズ効果)、横(水平)方向に発散作用(凹レンズ効果)を有する、非軸対称の四重極効果が生ずる。
【0060】
そして、水平走査においては、蛍光体スクリーン面の中央部に衝突する電子ビームに対しては、第1の電極部Eに印加される電圧と、第6グリッドG及び第2の電極部Eに印加される電圧との電位差が最大(例えばV’QP、図4の(C)参照)となるので、第2の四重極レンズQPの四重極効果は最大となる。また、蛍光体スクリーン面の中央部から周辺部に向かって移動する電子ビームに対しては、第1の電極部Eに印加される電圧と第6グリッドG及び第2の電極部Eに印加される電圧との電位差が減少するので、第2の四重極レンズQPの四重極効果は低下し(図4の(C)参照)、蛍光体スクリーン面の周辺部に衝突する電子ビームに対しては、第1の電極部Eに印加される電圧と第6グリッドG及び第2の電極部Eに印加される電圧との電位差が無くなるので、第2の四重極レンズQPの四重極効果は消滅する。
【0061】
また、垂直走査においては、蛍光体スクリーン面の上端の中央部に衝突する電子ビームに対しては、第1の電極部Eに印加される電圧と、第6グリッドG及び第2の電極部Eに印加される電圧との電位差の最大値は小さく、蛍光体スクリーン面の垂直方向中央部においては、かかる電圧の電位差は最大(−V’QP)となる。従って、蛍光体スクリーン面の上下端よりも、蛍光体スクリーン面の垂直方向中央部の方が、第2の四重極レンズQPの四重極効果は大きくなる。
【0062】
以上に説明した実施例の陰極線管用電子銃における第1の四重極レンズQP、主レンズML、第2の四重極レンズQP及び偏向ヨークDYの光学的モデルを図2の(A)及び(B)に示す。尚、図2の(A)に示した光学的モデルは、蛍光体スクリーン面の中央部に電子ビームが衝突する際の光学的モデルである。一方、図2の(B)に示した光学的モデルは、蛍光体スクリーン面の周辺部に電子ビームが衝突する際の光学的モデルである。
【0063】
図2の(A)に示すように、蛍光体スクリーン面の中央部に電子ビームが衝突する際には、第1の四重極レンズQPの四重極効果は最低であり、第2の四重極レンズQPの四重極効果は最大であり、偏向ヨークDYの四重極効果はかかる電子ビームには及ばない。そして、制御電極である第1グリッドGの電子ビーム通過孔は縦長形状を有するので、制御電極を通過した電子ビームの物点形状は縦長である。従って、蛍光体スクリーン面の中央部における電子ビームのスポット形状は真円形状に近づく。
【0064】
一方、図2の(B)に示すように、蛍光体スクリーン面の周辺部に電子ビームが衝突する際には、第1の四重極レンズQPの四重極効果は最大であり、第2の四重極レンズQPの四重極効果は消滅しており、偏向ヨークDYの四重極効果は最大である。通常、偏向ヨークによる四重極効果はかなり強いため、過補正となって蛍光体スクリーン面上で電子ビームスポットの形状がやや横長となる。しかしながら、電子ビーム通過孔が円形形状の従来の制御電極と比較して、制御電極を通過した電子ビームによって形成される物点が縦長である分だけ、蛍光体スクリーン面上における電子ビームスポットの縦方向の潰れが軽減される。
【0065】
更には、ダイナミックコンバーゼンス装置によって、確実にダイナミックコンバーゼンスを行うことができる。即ち、蛍光体スクリーン面の中央部に衝突する電子ビームに対しては、高圧側電極板CP,CPと低圧側電極板CP,CPによって強い電界が形成される。一方、蛍光体スクリーン面の周辺部に衝突する電子ビームに対しては、高圧側電極板CP,CPと低圧側電極板CP,CPによって、蛍光体スクリーン面の中央部に衝突する電子ビームに対するよりは弱い電界が形成される。従って、蛍光体スクリーン面の全面に亙ってコンバーゼンスエラーを補正することができる。それ故、たとえ水平偏向磁界分布をピンクッション状とし垂直偏向磁界分布をバレル状とする従来の偏向ヨークを使用する場合にあっても、各磁界分布強度を低くすることができ、陰極線管の蛍光体スクリーン面の周辺部でのフォーカスの劣化を抑制することができる。尚、蛍光体スクリーン面の中央部では、ダイナミックコンバーゼンス装置を構成する高圧側電極板CP,CPと低圧側電極板CP,CPとの間に電位差が生じているため、従来のように電子銃本体でのスタティックコンバーゼンスは、この電位差を考慮して設定する必要がある。
【0066】
尚、本発明の陰極線管用電子銃においては、図9の(A)に模式的な平面図を示すように、加速電極を構成する第2グリッドGにおける電極である電子ビーム通過孔の形状を縦長としてもよい。また、制御電極(第1グリッドG)及び加速電極(第2グリッドG)の縦長形状(非点孔形状)は、図2の(A)や図9の(A)に示した矩形に限らず、長円形状(図9の(B)参照)あるいは楕円形状(図9の(C)参照)とすることもできる。
【0067】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。第1の四重極レンズQPや第2の四重極レンズQPの電極部の構造は各実施例にて説明した構造に限定されず、適宜変更することができる。また、実施例にて挙げた数値は例示であり、適宜変更することができる。
【0068】
実施例においては、主レンズMLを形成するためのフォーカス電圧Vをダイナミックに変調(ΔV)している。これによって、蛍光体スクリーン面の各位置における電子ビームスポット形状を最適化することができる。この場合、第1のダイナミック電圧発生回路15とネックコンデンサ21の外側電極21Aとを直接接続して第1のダイナミック電圧発生回路15からの出力電圧(V+ΔV)を第1の電極部Eに供給するように構成すれば、第2のダイナミック電圧発生回路24を省略することができる。あるいは又、例えばファンネル部に設けた同軸ボタンから同軸ケーブルを介して第2の四重極レンズQPやダイナミックコンバーゼンス装置の低圧側電極板CP,CPを作動させるためのダイナミックな電圧を供給するように構成してもよい。
【0069】
実施例における第2の四重極レンズQPを構成する第1の電極部E及び第2の電極部Eの構造を、例えば、それぞれ図5の(C)及び(D)に模式的な平面図で示したと類似の形状に変更することができる。即ち、第1の電極部Eは、横長の矩形形状の電子ビーム通過孔を有する。一方、第2の電極部Eは、縦長の矩形形状の電子ビーム通過孔を有する。第1の電極部Eに印加される電圧は、第6グリッドG及び第2の電極部Eに印加される電圧以下である。従って、このような電極部構造とすることで、第2の四重極レンズQPには、電子ビームに対して縦(垂直)方向に集束作用(凸レンズ効果)、横(水平)方向に発散作用(凹レンズ効果)を有する、非軸対称の四重極効果が生ずる。
【0070】
本発明の陰極線管用電子銃は、バイポテンシャル型やユニポテンシャル型電子銃に適用し得る。
【0071】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明の陰極線管用電子銃においては、主レンズMLの上流及び下流にそれぞれ四重極レンズを配置し、且つ制御電極の電子ビーム通過孔を縦長形状とすることによって、蛍光体スクリーン面の中央部に衝突する電子ビームスポットをより真円に近づけることができ、陰極線管の解像度を向上させることができる。更には、四重極レンズによる電子ビームスポット形状の補正効果が高まるので、四重極レンズに印加すべきダイナミックな電圧を低減することができ、ダイナミック電圧発生回路の簡素化及びコストダウンを図ることができる。
【0072】
加えて、本発明の陰極線管用電子銃によれば、電子ビームスポットが真円に近づくことから、水平方向の解像度の劣化、蛍光体の輝度飽和が防止され、輝度飽和による色純度の低下、縦方向の電子ビームスポットの大きさ(サイズ)が小さすぎるための色選別機構との干渉等の従来技術における問題を解消することができるし、ホワイトユニフォミニティが改善されるという効果もある。
【0073】
また、本発明の陰極線管用電子銃においては、第2の四重極レンズの下流にダイナミックコンバーゼンス装置が設けられているので、水平偏向磁界や垂直偏向磁界の歪みを小さくすることができ、従来の偏向ヨークにおけるピンクッション状の水平偏向磁界分布やバレル状の垂直偏向磁界分布に起因した蛍光体スクリーン面の周辺部における電子ビームスポットの歪みを減少させることが可能になるし、蛍光体スクリーン面の全面に亙ってコンバーゼンスエラーを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の陰極線管用電子銃の全体を示す模式図である。
【図2】第1の四重極レンズQP、主レンズML、第2の四重極レンズQP及び偏向ヨークDYの光学的モデルを示す図である。
【図3】実施例の第2の四重極レンズ及びダイナミックコンバーゼンス装置の等価回路を示す図である。
【図4】実施例の第2の四重極レンズ及びダイナミックコンバーゼンス装置に供する電圧波形図である。
【図5】実施例における各グリッドの電極部分の平面形状を模式的に示す図である。
【図6】実施例の第1の四重極レンズに供する電圧波形図である。
【図7】四重極レンズの作用を説明するための模式図である。
【図8】実施例における第2の四重極レンズを構成する電極部を模式的に示す図である。
【図9】制御電極(第1グリッドG)及び加速電極(第2グリッドG)の変形を示す模式的な平面図である。
【図10】従来技術1の陰極線管用電子銃の光学的モデルを示す図である。
【図11】従来技術2の陰極線管用電子銃の光学的モデルを示す図である。
【図12】コンバーゼンスエラーを説明するための図である。
【符号の説明】
,K,K カソード
第1グリッド(制御電極)
第2グリッド(加速電極)
第3グリッド(プリフォーカスレンズ)
第4グリッド(プリフォーカスレンズ)
5−1 第5前方グリッド(第1の集束電極)
5a 第5前方グリッドの後方電極(第1の四重極レンズを構成)
5−2 第5後方グリッド
5b 第5後方グリッドの前方電極部
5c 第5後方グリッドの後方電極部
第6グリッド
6a 第6グリッドの前方電極(主レンズを構成)
第1の電極部(第2の四重極レンズを構成)
第2の電極部(第2の四重極レンズを構成)
ML 主レンズ
QP 第1の四重極レンズ
QP 第2の四重極レンズ
CP,CP,CP,CP
ダイナミックコンバーゼンス装置
10 陰極線管
11 ネック部
12 リード線
13 リード線
14 直流電源
15 第1のダイナミック電圧発生回路
16 リード線
17 接続部材
18 内部導電膜
20 接続部材
21 ネックコンデンサ
22 ダイオード
23 抵抗器
24 第2のダイナミック電圧発生回路

Claims (3)

  1. カソードと、加速電極と、主レンズとを備えた陰極線管用電子銃であって、
    (イ)カソードと加速電極との間に設けられ、縦長形状の電子ビーム通過孔を有する制御電極と、
    (ロ)加速電極と主レンズとの間に設けられ、電子ビームの垂直方向に発散作用、水平方向に集束作用を有する第1の四重極レンズと、
    (ハ)主レンズの下流に設けられ、電子ビームの垂直方向に集束作用、水平方向に発散作用を有する第2の四重極レンズと、
    (ニ)該第2の四重極レンズの下流に設けられたダイナミックコンバーゼンス装置、
    を備えており、
    陰極線管の蛍光体スクリーン面の周辺部に電子ビームが衝突するとき、第1の四重極レンズの有する電子ビームの垂直方向への発散作用及び水平方向への集束作用が最大となり、且つ、第2の四重極レンズの有する電子ビームの垂直方向への集束作用及び水平方向への発散作用が消滅し、
    陰極線管の蛍光体スクリーン面の中央部に電子ビームが衝突するとき、第1の四重極レンズの有する電子ビームの垂直方向への発散作用及び水平方向への集束作用が最小となり、且つ、第2の四重極レンズの有する電子ビームの垂直方向への集束作用及び水平方向への発散作用が最大となることを特徴とする陰極線管用電子銃。
  2. 前記加速電極の電子ビーム通過孔の形状は縦長であることを特徴とする請求項1に記載の陰極線管用電子銃。
  3. 前記ダイナミックコンバーゼンス装置は、陰極線管用電子銃の管内に水平方向に配されており、
    (イ)互いに対向する一対の高圧側電極板と、
    (ロ)該一対の高圧側電極板に対向するようにその両外側に配された一対の低圧側電極板、
    から成り、
    該一対の高圧側電極板の間を電子ビームが通過し、一方の高圧側電極板と一方の低圧側電極板との間を別の電子ビームが通過し、他方の高圧側電極板と他方の低圧側電極板との間を更に別の電子ビームが通過することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の陰極線管用電子銃。
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