JP3554087B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑油組成物に関し、更に詳しくはモリブデンジチオカルバメ−ト、及び/またはモリブデンジチオフォスフェ−ト及び/またはモリブデン−アミン化合物並びに(ポリ)グリセリンのエ−テル化合物、及び必要に応じてジンクジチオフォスフェ−トを潤滑油基油に配合することにより得られる、加水分解安定性に優れ、水混入時にも低摩擦を与える潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、自動車を取り巻く状況は、燃費規制、排ガス規制等厳しくなっている。この背景には地球温暖化、大気汚染、酸性雨等の環境問題と、有限である石油エネルギ−の枯渇の懸念からの資源保護がある。これらの対策として、現在のところ燃費の向上が最も有効的である。
【0003】
自動車の省燃費化を進める上で、自動車の軽量化、エンジンの改良等、自動車自体の改良と共にエンジンでの摩擦ロスを防ぐ為のエンジン油の低粘度化、良好な摩擦調整剤の添加等、エンジン油の改善も重要な要素となっている。エンジン油はピストン・ライナ間での潤滑剤として作用するが、この部分では流体潤滑が多い為エンジン油の低粘度化により摩擦ロスを低減することができる。この為近年では油の低粘度化が進んでいるが、低粘度化に伴うシ−ル性の悪化、摩耗量の増大という問題が発生している。また、エンジン油は動弁系、ベアリングにおいても重要な役割を果たしているが、この部分では混合潤滑、境界潤滑が多い為、油の低粘度化は摩耗の増大を引き起こす。そこで、油の低粘度化に伴う摩擦損失の低減、摩耗防止の目的で摩擦調整剤、極圧剤等が添加されている。
【0004】
摩擦調整剤としては、一般にオレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、オレイルアルコ−ル等の高級アルコ−ル、エステル、アミン、硫化油脂、塩素化油脂、有機モリブデン化合物などが用いられている。また、極圧剤としては、硫化油脂類、スルフィド類などの硫黄系、りん系、ジンクジチオホスフェート(ZnDTP)などの有機金属化合物系などが用いられている。
【0005】
例えば、特開昭59−25890号公報では摩擦調整剤として、グリセリンモノアルキルエ−テルあるいはグリセリンモノアルケニルエ−テルを提案しており、またZnDTP、及び無灰型清浄分散剤を組み合わせることにより製造される共通潤滑油組成物を提案している。
【0006】
しかし、現在の油の低粘度化に伴う諸問題を解決する為には、混合・境界潤滑下において低摩擦を与える摩擦調整剤である有機モリブデン化合物の使用が必須となりつつある。特開平5−279686号公報には有機モリブデン化合物、脂肪酸エステル、金属清浄剤(カルシウムスルホネ−ト、マグネシウムスルホネ−ト、カルシウムフェネ−ト及びマグネシウムフェネ−ト)、無灰清浄分散剤(ベンジルアミン、ベンジルアミンのホウ素誘導体、アルケニルこはく酸イミド及びアルケニルこはく酸イミドのホウ素誘導体)、耐摩耗剤[ZnDTP、ジンクジチオカーバメート(ZnDTC)]を配合することにより耐摩耗やその他の特性を損なうことなく、摩擦特性を改善できることが提案されている。
【0007】
また、特開平5−311186号公報では平均炭素原子数4以下のジチオカルバミン酸金属塩と油溶性アミン化合物との併用系、硫化オキシモリブデンジチオカルバメ−ト及び/または硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエ−ト、脂肪酸エステル及び/または有機アミド化合物を特定量比で含有せしめることにより、潤滑油の摩擦係数を大幅に低下させ得ることが提案されている。
【0008】
しかしながら、特開平5−279686号及び特開平5−311186号公報に開示されている組成物では、水分存在時にはモリブデン化合物が存在しているにも関わらず摩擦低減作用がみられない等の問題点があった。
【0009】
エンジン油には燃料燃焼時に発生する水分が混入する。特にエンジン油が温まらない状況下、すなわち近距離運転の多発時には水分が蒸発しない為水分増加を引き起こす。この水分は添加剤の劣化を引き起こすだけでなく、ブロ−バイガスの活性化をも引き起こしエンジン油に大きな悪影響を与える。したがって、水分混入時にも劣化が少なく優れた摩擦低減作用を持続させ、省燃費の性能が持続できる油の開発が必要であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
現在、メンテナンスフリ−を目標とした油のロングドレイン化が望まれているが、それに加えて初期からの性能である省燃費性を持続させるということも重要な課題の一つとなっている。エンジン油は潤滑油の中でも酸化劣化条件が最も厳しいものであり、自動車走行と共に劣化がはじまる。この時、潤滑油基油とともに添加剤も劣化する。そこで省燃費油の性能を持続させていく為には添加剤の長寿命化も必要である。つまり、現在の目標である省燃費化を実現していくには油溶性モリブデン化合物の使用が必須であることから、油溶性モリブデン化合物の性能をいかに発揮させ、更に持続させるかが重要なのである。
【0011】
従って、本発明の目的は、加水分解を受けず、水分存在時においても良好な摩擦低減作用を示す潤滑油組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、多数存在する潤滑油添加剤について鋭意検討した結果、油溶性モリブデン化合物と、(ポリ)グリセリンエ−テルとを組み合わせることにより水分存在時においても劣化が少なく良好な摩擦低減作用を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油に、(A)成分として、
一般式
【化6】
(式中、R1〜R4は、炭化水素基を表し、X1は、酸素原子または硫黄原子を表す)
で表わされる硫化オキシモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、
一般式
【化7】
(式中、R5〜R8は、炭化水素基を表し、X2は、酸素原子または硫黄原子を表す)
で表わされる硫化オキシモリブデンジチオホスフェート(MoDTP)、
一般式
【化8】
(式中、R9及びR10は、水素原子または炭化水素基を表し、bは0.95≦b≦1.05、cは0≦c≦1)
で表わされるモリブデン酸アミン(MoAm)からなる群から選択される1種または2種以上の油溶性モリブデン化合物と、
(B)成分として、一般式
【化9】
(式中、R11及びR12は、水素原子または炭化水素基であるが、R11とR12が共に水素原子であることはなく、nは1〜10の範囲の数である)
で表わされる(ポリ)グリセリンエーテル
を配合してなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の潤滑油組成物は、更に、(C)成分として、一般式
【化10】
(式中、aは0または1/3の値であり、R13及びR14は、炭化水素基を表す)で表わされるジンクジチオホスフェート(ZnDTP)を含有することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の潤滑油組成物必須の成分である(A)成分たる油溶性モリブデン化合物は、一般式(1)で表わされるMoDTC、一般式(2)で表わされるMoDTP、一般式(3)で表わされるMoAmのうち、1種であっても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
一般式(1)〜(3)で表される油溶性モリブデン化合物において、R1〜R10は炭化水素基であり、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等である。
【0017】
ここで、アルキル基としては例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2−オクチルドデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−テトラデシルオクタデシル、モノメチル分岐−イソステアリル等が挙げられる。
【0018】
また、アルケニル基としては例えば、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。
【0019】
更に、アルキルアリール基としては例えば、フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基等が挙げられる。
【0020】
また、シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0021】
なお、一般式(3)で表されるMoAmにおいては、R9及びR10は水素原子であってもよい。
【0022】
R1〜R10は互いに同一であっても異なってもよい。即ち、R1〜R4、R5〜R8、R9〜R10も、互いに同一であっても異なってもよい。R1〜R4が互いに異なる場合は、潤滑油組成物のロングドレイン化(長寿命化)を図る上では好ましいものである。
【0023】
これらの中でも、一般式(1)で表されるMoDTCにおいては、R1〜R4は、炭素原子数8〜13のアルキル基、一般式(2)で表されるMoDTPにおいては、R5〜R8は、炭素原子数6〜13のアルキル基、一般式(3)で表されるMoAmにおいては、R9〜R10は、炭素原子数1〜16のアルキル基が好ましい。
【0024】
また、一般式(1)で表されるMoDTC及び一般式(2)で表されるMoDTPにおいては、X1並びにX2は硫黄原子または酸素原子であり、X1並びにX2の全てが硫黄原子あるいは酸素原子であってもよいが、潤滑性及び腐食性を考慮した場合、硫黄原子/酸素原子の比が1/3〜3/1であるのが特に好ましい。
【0025】
本発明に用いられる一般式(1)で表されるMoDTCの製造方法は、例えば特公昭56−12638号公報に記載された方法によることが好ましい。つまり、三酸化モリブデンもしくはモリブデン酸塩と、硫化アルカリあるいは水硫化アルカリを反応させ、次いで二硫化炭素と二級アミンを加えて適当な温度で反応させることにより得ることができる。
【0026】
また、本発明に用いられる一般式(2)で表されるMoDTPの製造方法は、例えば特開昭61−87690号公報、特開昭61−106587号公報に記載された方法によることが好ましい。つまり、三酸化モリブデンもしくはモリブデン酸塩と、硫化アルカリあるいは水硫化アルカリを反応させ、次いでP2S5と二級アルコールを加えて適当な温度で反応させることにより得ることができる。
【0027】
更に、本発明に用いられる一般式(3)で表されるMoAmは、モリブデン酸(HMoO4)と、1級あるいは2級のアミンの塩であって、例えば特開昭61−285293号公報に示された方法により製造することが好ましい。つまり、三酸化モリブデンもしくはモリブデン酸塩と、1級あるいは2級のアミンを室温から100℃の間で反応させることにより得ることができる。ここで、bの値は製造の際の反応条件によって異なり、0.95≦b≦1.05なる範囲のものが本発明において油溶性モリブデン化合物として使用できる。MoAmは、水和型と非水和型の混合物であるので、cは0≦c≦1なる数である。
【0028】
本発明の潤滑油組成物において、(A)成分たる油溶性モリブデン化合物は、MoDTC、MoDTP、MoAmのうち、1種であっても、2種以上を併用してもよいが、少なくとも1種はMoDTCを用いるのが好ましい。添加量は特に制限されないが、添加量があまりに少ないと摩擦低減効果が十分でなく、添加量があまりに多いとスラッジや腐蝕の原因になる傾向があるため、潤滑油基油に対して、好ましくはモリブデン量にして0.001〜1重量%、なお好ましくは0.005〜0.5重量%、最も好ましくは0.01〜0.1重量%がよい。
【0029】
本発明の潤滑油組成物において、(B)成分である一般式(4)で表わされる化合物は、(ポリ)グリセリンエーテルである。一般式(4)で表される(ポリ)グリセリンエーテルにおいて、R11及びR12は水素原子または炭化水素基であり、互いに同一であっても異なってもよく、また、前述のR1〜R10と同じく、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基等が好ましい。ただし、R11及びR12が共に水素原子であることはない。R11及びR12は水素原子または炭素原子数1〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基が好ましく、炭素原子数12〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基がさらに好ましい。また、これらの中でも直鎖のアルキル基、アルケニル基が好ましく、ラウリル基、オレイル基、ステアリル基が最も好ましい。
【0030】
また、nは1〜10であり、モノグリセリンのエーテルでもポリグリセリンのエーテルであってもよい。但し、nが大きなものは合成が難しくなるので、nは1〜3が好ましい。
【0031】
本発明の潤滑油組成物において、(B)成分たる(ポリ)グリセリンエーテルは、1種であっても、2種以上を併用してもよい。添加量は特に制限されないが、添加量があまりに少ないと摩擦低減効果が十分でなく、添加量があまりに多いとスラッジの原因になる傾向があるため、潤滑油基油に対して、好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%がよい。
【0032】
一般式(4)で表される(ポリ)グリセリンエーテルは、潤滑油中に混入する水による加水分解を受けない。従って、常に加水分解の問題を抱える(ポリ)グリセリンエステル系の添加剤と比べて優れたものであり、特に、油溶性モリブデン化合物との組み合わせにおいて、優れた潤滑性を示す。
【0033】
また、モリブデン化合物と、(ポリ)グリセリンエーテルに、一般式(5)で表されるZnDTPを加えた潤滑油組成物は、さらに優れた潤滑性を示す。
【0034】
本発明の潤滑油組成物において、(C)成分たる一般式(5)で表わされるZnDTPにおいて、R13及びR14は炭化水素基であり、互いに同一であっても異なってもよく、また、前述のR1〜R10と同じく、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基等が好ましい。これらの中でも、炭素原子数3〜14のアルキル基が好ましい。
【0035】
また、用いる1種または2種以上のZnDTPのR13及びR14のうち、60%以上が1級アルキル基であるのが好ましい。残る40%以下は2級及び/または3級アルキル基であってもよい。
【0036】
aは0もしくは1/3であり、a=0の場合、中性ZnDTPと呼ばれ、a=1/3の場合、塩基性ZnDTPと呼ばれる。
【0037】
本発明に用いられる一般式(5)で表されるZnDTPは、例えば特公昭48−37251号公報に示す方法で製造されうる。すなわち、P2S5と所望のアルコールを反応させてアルキル置換ジチオリン酸を生成し、それを酸化亜鉛で中性化あるいは塩基性化し、亜鉛塩を形成させることにより製造される。
【0038】
本発明の潤滑油組成物において、(C)成分たるZnDTPは、1種であっても、2種以上を併用してもよい。添加量は特に制限されないが、添加量があまりに少ないと十分な極圧効果が得られず、添加量があまりに多いとZnDTPはリンを含有するため、排ガス処理装置の触媒を被毒してしまう傾向があるので、潤滑油基油に対して、好ましくはリン量にして0.001〜1重量%、なお好ましくは0.005〜0.5重量%、最も好ましくは0.01〜0.15重量%がよい。
【0039】
本発明の潤滑油組成物に用いることができる潤滑油基油は、鉱油、合成油のいずれであってもよい。ここで、鉱油とは、天然の原油から分離、蒸留、精製されるものをいい、パラフィン系、ナフテン系、あるいはこれらを水素化処理、溶剤精製したもの、水素化分解VHVI油などが挙げられる。また合成油とは、化学的に合成された潤滑油であって、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン、フッ素化化合物、アルキルベンゼン等である。
【0040】
また、本発明の目的の範囲内で必要に応じて公知の各種添加剤、例えば、高級脂肪酸、高級アルコール、アミン、エステル等の摩擦緩和剤、硫黄系、塩素系、リン系、有機金属系等の極圧剤、フェノール類、アミン類等の酸化防止剤、中性または高塩基性のアルカリ土類金属スルフォネ−ト、フェネ−ト、カルボキシレート等の清浄剤、コハク酸イミド、ベンジルアミン等の分散剤、高分子量のポリ(メタ)アクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体等の粘度指数向上剤、あるいはエステル類、シリコーン類等の消泡剤、その他の防錆剤、流動点降下剤等を通常の使用量の範囲で加えることもできる。
【0041】
本発明の潤滑油組成物は、自動車を含む車両用エンジン、2サイクルエンジン、航空機用エンジン、船舶用エンジン、機関車用エンジン(これらのエンジンはガソリン、ディーゼル、ガス、タービンを問わない)等を含む内燃機関用潤滑油、自動トランスミッション液体、トランスアクスル潤滑剤、ギヤ潤滑剤、金属加工潤滑剤等に用いることができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明の潤滑油組成物を詳細に説明する。なお、以下の本発明品及び比較品に使用した各成分は次の通りである。
潤滑油基油:原油から得られた鉱油を水素化分解プロセス法により得られた鉱油系高VI油。動粘度は100℃で4.1cst、VI=126。
【0043】
(A)成分
Mo化合物1:一般式(2)において、R5〜R8=2−エチルヘキシル基、X2=S/O=2.2であるMoDTP。
Mo化合物2:一般式(1)において、R1〜R4=2−エチルヘキシル基、X1=S/O=2.2であるMoDTC。
Mo化合物3:一般式(1)において、R1〜R4=2−エチルヘキシル基:イソトリデシル基=1:1、X1 =S/O=2.2であるMoDTC。
Mo化合物4:下記の方法で合成される一般式(3)の化合物。
窒素気流下で三酸化モリブデン1モルを水540mlに分散させ、次いで2モルのジトリデシルアミンを50〜60℃に保ちつつ、1時間で滴下し、更に同温度で1時間熟成した。この後、水層を分離除去し、淡青色オイル状のモリブデン酸アミン化合物(MoAm)を合成した。(R9及びR10=イソトリデシル基、b=0.95〜1.05、c=0〜1の混合物)
【0044】
(B)成分
グリセリンエーテル1:グリセリンモノオレイルエ−テル[一般式(4)において、R11=オレイル基、R12=H、n=1]。
グリセリンエーテル2:グリセリンジオレイルエ−テル(R11及びR12=オレイル基、n=1)。
グリセリンエーテル3:グリセリンモノステアリルエ−テル(R11=ステアリル基、R12=H、n=1)。
グリセリンエーテル4:トリグリセリンモノオレイルエ−テル(R11=オレイル基、R12=H、n=3)。
グリセリンエーテル5:グリセリンモノラウリルエ−テル(R11=ラウリル基、R12=H、n=1)。
グリセリンエーテル6:ジグリセリンモノミリスチルエ−テル(R11=ミリスチル基、R12=H、n=2)。
【0045】
グリセリンエステル1:グリセリンモノオレ−ト。
グリセリンエステル2:ジグリセリンモノオレ−ト。
グリセリンエステル3:グリセリンジステアレート。
グリセリンエステル4:グリセリンモノラウレート。
【0046】
(C)成分
ZnDTP1:一般式(5)において、R13及びR14=2−エチルヘキシル基(1級アルキル基)、中性塩(a=0):塩基性塩(a=1/3)=55:45(モル比)であるZnDTP。
ZnDTP2:一般式(5)において、R13及びR14=ドデシル基(1級アルキル基)、中性塩:塩基性塩=62:38(モル比)であるZnDTP。
ZnDTP3:一般式(5)において、R13及びR14=2級ヘキシル基:イソプロピル基=1:1、中性塩:塩基性塩=62:38(モル比)であるZnDTP。
【0047】
上記で各成分を下記の表に示す配合割合にて配合することにより本発明品並びに比較品の潤滑油組成物を得た。なお、表中の数値のうち、Mo化合物は潤滑油基油に対するモリブデン重量%、グリセリンエーテル、グリセリンエステルは重量%、ZnDTPはリン重量%である。
【0048】
得られた本発明品並びに比較品の潤滑油組成物について、下記の方法により加水分解安定性試験を行った:
加水分解安定試験
本発明品並びに比較品の潤滑油組成物に対し、水を0.2重量%添加し、93℃にて1週間保存し、下記の摩擦係数測定試験を行った。
摩擦係数測定試験
摩擦係数測定試験はSRV測定試験機を用いて下記の条件にて行った。
<条件>
線接触:試験条件はシリンダ−オンプレ−トの線接触条件で行った。即ち、上部シリンダ−(φ15×22mm)をプレ−ト(φ24×7.85mm)上に摺動方向に垂直にセットし、往復振動させ、15分後に摩擦係数を測定した。なお、材質は両者共SUJ−2であった。
荷重:200N
温度:80℃
測定時間:15分
振幅:1mm
サイクル:50Hz
測定の結果を以下の表に併記する。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【発明の効果】
本発明の効果は、モリブデン化合物と、(ポリ)グリセリンエ−テル、更に所望により、ZnDTPを組み合わせることにより水分存在時においても低摩擦を与える潤滑油組成物を提供したことにある。
Claims (5)
- 潤滑油基油に、(A)成分として、
一般式
で表わされる硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、
一般式
で表わされる硫化オキシモリブデンジチオホスフェート、
一般式
で表わされるモリブデン酸アミンからなる群から選択される1種または2種以上の油溶性モリブデン化合物と、
(B)成分として、一般式
で表わされる(ポリ)グリセリンエーテル
を配合してなることを特徴とする潤滑油組成物。 - (A)成分の配合量はモリブデン量にして0.001〜1重量%、(B)成分の配合量は0.01〜5重量%である請求項1記載の潤滑油組成物。
- 一般式(4)において、R11及びR12が水素原子または炭素原子数1〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基および/またはアルケニル基であり、nは1〜3である請求項1または2記載の潤滑油組成物。
- (C)成分の配合量はリン量にして0.001〜1重量%である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
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