JP3551555B2 - スタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、雪上あるいは氷結路面の走行に適する空気入りタイヤ、特にトレッド部分の雪上及び氷結路面での路面把持力を向上させたタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
氷雪路面を走行するために、粉塵公害を発生させるスパイクタイヤに代わりスタッドレスタイヤが普及してきた。それに伴って寒暖の大きい日には、凍結路面が出現しスリップを原因とする自動車事故が多発し社会問題化しており、氷上での制動性を高めたスタッドレスタイヤが強く求められている。
【0003】
スタッドレスタイヤの氷雪路面での制動性すなわち路面把持力を向上させるための手段として、ゴムの適正化を図る方法、加硫剤などの配合の適正化を図る方法、氷路面を掘り起こす為の物質(鉱物、動物性繊維、植物性物質など)を添加する方法、排水効果を高めるため微小発泡させる方法などが組み合わせて実施されている。
【0004】
原料ゴムに関しては、スタッドレスタイヤ用ゴムに、シス−ポリブタジエンゴムを用いると氷上性能を向上させるが完全凍結路面では性能低下をきたし、また天然ゴムでは氷雪路面での路面把持力は向上するものの、通常の湿潤路面での路面把持力が低下してしまう欠点がある。これに対して、低温でのゴム弾性を維持するためにガラス転移点の低いポリマーを用いたり、氷路面と摩擦を高めるための低融点の軟化剤を用いる方法(特開昭60−137945号公報)、モノマー組成とミクロ構造を適正化する方法(特公平6−263921号公報)などが検討されている。しかし、これらのゴムは低温性能を向上させる一方で、加工性、転がり抵抗などを犠牲にしており、要求性能を充分満足しているとは言えない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
現在、スタッドレスタイヤは氷雪路面での制動性能を更に高めたものが要求されており、加えて転がり抵抗性、加工性、湿潤路面での把持力をも含めた性能の向上が必要とされている。しかし、これらを充分満たすゴム組成物はまだ得られていない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはその要望に応えるべく検討を重ねた結果、原料ゴムとして特定のポリマー構造を有するスチレン−ブタジエンランダム共重合体と天然ゴムあるいは特定のポリマー構造を有するスチレン−ブタジエンランダム共重合体と天然ゴムとブタジエンゴムとを組み合わせて使用することにより、画期的に低温性能に優れ、加工特性、低転がり抵抗性、湿潤路面での把持力を向上させたタイヤ用ゴム組成物からなる本発明を完成したものである。
【0007】
すなわち本発明は、
(A)スチレン含量が3〜9重量%、ブタジエン部のビニル量が18〜29%、3官能性以上のカップリング剤でカップリングされ、カップリング前のムーニー粘度(ML1+4 (100℃);I)が10〜30、カップリング後のムーニー粘度(ML1+4 (100℃);C)が30〜80であり、カップリング前後のムーニー粘度の比(C/I)が1.5〜5であり、分子量分布パターンがモノモーダルであるスチレン−ブタジエンランダム共重合体10〜90重量部と
(B)天然ゴム90〜10重量部と
からなる原料ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを10〜80重量部、軟化剤を5〜50重量部添加配合した組成物であって、その低温特性が、粘弾性スペクトロメーターにて周波数10Hzで測定した貯蔵弾性率E’と損失係数tanδが夫々−30℃におけるE’が3.5×10 8 dyn/cm 2 以下、tanδが0.33以上であることを特徴とするスタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物、
【0008】
及び
(A)スチレン含量が3〜9重量%、ブタジエン部のビニル量が18〜29%、3官能性以上のカップリング剤でカップリングされ、カップリング前のムーニー粘度(ML1+4(100℃);I)が10〜30、カップリング後のムーニー粘度(ML1+4 (100℃);C)が30〜80であり、カップリング前後のムーニー粘度の比(C/I)が1.5〜5であり、分子量分布パターンがモノモーダルであるスチレン−ブタジエンランダム共重合体10〜90重量部と
(B)天然ゴム90〜10重量部と
(C)ブタジエンゴム1〜50重量部と
からなる原料ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを10〜80重量部、軟化剤を5〜50重量部添加配合した組成物であって、その低温特性が、粘弾性スペクトロメーターにて周波数10Hzで測定した貯蔵弾性率E’と損失係数tanδが夫々−30℃におけるE’が3.5×10 8 dyn/cm 2 以下、tanδが0.33以上であることを特徴とするスタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【0009】
本発明を構成するスチレン−ブタジエンランダム共重合体について、以下に詳しく説明する。
スチレン−ブタジエンランダム共重合体は、スチレン含量が3〜9重量%、ブタジエン含量が97〜91重量%であり、特に好ましくは、スチレン含量が5〜9重量%、ブタジエン含量が95〜91重量%である。スチレン含量が3重量%未満では、本発明組成物とした時の強度が低下し、9重量%を越えるとTgが上昇し、低温特性が低下するので好ましくない。また、スチレンが共重合体の分子鎖中にランダムな連鎖状態で重合している必要がある。スチレンがブロックまたは一部ブロックに重合していると組成物の反発弾性及び低温特性が低下するので好ましくない。
【0010】
ブタジエン部の結合様式には、シス−1,4結合(シス結合)とトランス−1,4結合(トランス結合)と1,2結合(ビニル結合)が存在する。ビニル量はシス結合とトランス結合とビニル結合の合計量に対するビニル結合の含量と定義される。本発明を構成するスチレン−ブタジエン共重合体中におけるブタジエン部分のビニル量は、18〜29%に制限される。ビニル量が29%を越えるとスチレン−ブタジエン共重合体のTgが高くなり本発明組成物の低温での硬度が上昇し、18%未満では氷上性能が低下する。ブタジエン部分のビニル結合は、分子鎖内に均一に存在しても、分子鎖に沿って増加或は減少してもよいが、均一に分布していることが好ましい。
【0011】
また、本発明を構成するスチレン−ブタジエンランダム共重合体は、活性末端を有するスチレン−ブタジエンランダム共重合体を3官能性以上のカップリング剤でカップリングし、カップリング前のムーニー粘度(ML1+4 (100℃);I)が10〜30、カップリング後のムーニー粘度(ML1+4 (100℃);C)が30〜80であり、カップリング前後のムーニー粘度の比(C/I)が1.5〜5であり、分子量分布パターンがモノモーダルであることが必要である。
【0012】
3官能以上のカップリング剤でカップリングした分岐構造を有することが、本発明のゴム組成物の低温性能と加工性を得るために必要である。2官能のカップリング剤で得られるスチレン−ブタジエンランダム共重合体はコールドフローしやすく、また物性に対して加工性が劣り好ましくない。更に、カップリング前のムーニー粘度ML1+4 (100℃)が10未満ではカップリング率を高くする必要性からカップリング剤の使用量が増し経済的に好ましくなく、30を越えるとポリマー溶液粘度の上昇からカップリング反応の効率が悪くなるので好ましくない。
【0013】
カップリング後のムーニー粘度ML1+4 (100℃)は30未満では組成物としたとき十分な強度を発現できず、80を越えると加工性が減少し工業的使用が困難になる。カップリング前後のムーニー粘度の比(C/I)は1.5未満ではカップリングの効果が小さく、5を越えるものはをカップリング反応効率をかなり高める必要があり工業的に好ましくない。GPCで測定される分子量分布パターンはモノモーダルでなければ、優れた低温性能が得られない。
【0014】
本発明を構成するスチレン−ブタジエンランダム共重合体は、前述の特定の構造に該当する共重合体であればその製造方法はいかなるものであってもよい。これら共重合体を得る代表的な製造方法を以下に示す。
【0015】
スチレン−ブタジエンランダム共重合体は、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン等の不活性溶媒中において、重合触媒としてn−ブチルリチウムなどの有機リチウムないし他のアルカリ金属化合物を用い、必要に応じて助触媒成分として、カリウムブトキシドなどのアルコキシド、ドデシルベンゼンスルフォン酸塩、ステアリン酸ナトリウムなどの有機酸塩を代表例とする有機化合物を用い、更に必要に応じてビニル結合量を調節する化合物として、エーテル、ポリエーテル、第三級アミン、ポリアミン、チオエーテル、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの極性有機化合物を用いて、モノマーのブタジエンとスチレンを所定の比率で共重合することにより得られる。ビニル結合量は、前記極性有機化合物の添加量及び重合温度によって制御できる。また、前記重合方法において、分子量調節剤として、アセチレン、1,2−ブタジエン、フルオレン、第一級アミン、第二級アミン等の各種化合物を使用することもできる。
【0016】
次に上記で得られた活性末端を有する共重合体鎖をカップリングし、本発明を構成するスチレンブタジエン共重合体を得る。カップリング剤としては、四塩化珪素、メチル三塩化珪素、エチル三塩化珪素、ブチル三塩化珪素、四塩化スズ、メチル三塩化スズ、エチル三塩化スズ、ブチル三塩化スズなどのハロゲン化合物、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノジフェニルメタン、エポキシ化大豆油、液状エポキシ化ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物の3官能以上の多官能性化合物が挙げられる。カップリング反応により分岐状ないしは放射状の共重合体が得られる。
【0017】
また、重合体の活性末端と反応する官能基含有化合物(変性剤)をカップリング剤と併用し、重合体末端に反応させることも可能である。具体的には、一塩化スズ化合物、カルボニル化合物、アミノ基含有ベンゾフェノン化合物、イソシアナート化合物、フォスフェート化合物などの変性剤が用いられる。好ましくは一塩化スズ化合物で、トリフェニル一塩化スズ、トリメチル一塩化スズ、トリブチル一塩化スズなどである。
【0018】
上記の重合体を得る重合プロセスは、バッチプロセス、連続プロセス、それらの組合せのいずれも用いることができる。
また、共重合体は、リチウム触媒を使用する以外の他の重合法、例えばニッケル、コバルト、チタン等の有機化合物と、リチウム、マグネシウム、アルミニウム等の有機金属成分とから成るチグラー系触媒を使用する方法ないしは乳化重合法によるものであっても前述の特定の構造の共重合体が得られれば何れの重合法も使用可能である。
【0019】
本発明の組成物を構成する原料ゴムに、上述したスチレン−ブタジエンランダム共重合体と天然ゴムをブレンドして用いることが低温特性、耐摩耗性及び加工性を向上させる目的に不可欠な手段である。ブレンド比率はスチレン−ブタジエンランダム共重合体が10〜90重量部、天然ゴムが90〜10重量部である。スチレン−ブタジエンランダム共重合体が10重量部未満では本発明組成物の特長である低温性能すなわち氷結路面での路面把持力を発現できず、90重量部を越えると加工性が低下してくるので好ましくない。好ましくはスチレン−ブタジエンランダム共重合体が30〜80重量部、天然ゴムが70〜20重量部である。
【0020】
また、更に本発明の組成物を構成する原料ゴムに、上述したスチレン−ブタジエンランダム共重合体と天然ゴムとブタジエンゴムをブレンドして用いることも可能である。ブタジエンゴムをブレンドすることにより低温での弾性率を下げることが出来る。ブレンド比率はスチレン−ブタジエンランダム共重合体が10〜90重量部、天然ゴムが90〜10重量部、ブタジエンゴムが1〜50重量部である。ブタジエンゴムのブレンド量が50重量部を越えると本発明の特徴である−30℃付近でのtanδが減少し低温性能が低下するので好ましくない。
本発明を構成するブタジエンゴムは、通常用いられる物であればいかなる種類の物であってもよく特に限定されない。
【0021】
本発明を構成するカーボンブラックは、一般にタイヤ用途に用いられるものであれば特に限定されない。具体的な品種としては、SAF,ISAF,HAF,FEFのファーネスブラックなどが使用できる。物性的に好ましいのは粒子の小さいカーボンブラックであり、更に小粒子・高凝集タイプ(高表面積・高吸油性)のものはゴムへの分散性も良く、物性・加工性の面で特に好ましい。
【0022】
カーボンブラックの量は原料ゴム100重量部に対して10〜80重量部必要である。好ましくは50〜75重量部である。80重量部を越えると、硬度が高くなり伸びも減少し良好なゴム特性が失われ、10重量部未満では、十分な補強効果が得られず強度が低下するので好ましくない。
【0023】
本発明の組成物を構成する軟化剤の必要量は、原料ゴム100重量部に対して5〜50重量部である。50重量部を越えると長期の硬さ変化が顕著になり経時的に低温性能が発現しなくなるので好ましくなく、5重量部未満では加工性が低下し、ゴムとカーボンブラック等との混練が極めて困難になり均一な組成物が得られなくなる。軟化剤には、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族(アロマチック)系プロセスオイルが用いられる。
【0024】
本発明の組成物の加硫剤としては、硫黄、塩化硫黄化合物、有機硫黄化合物などが使用できる。加硫剤の必要量は、原料ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部である。0.1重量部以下及び10重量部を越えると良好なゴム弾性が発現しない。その他に、加硫促進剤や架橋剤を併用することも可能である。加硫促進剤としては、グアジニン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が使用できる。架橋剤としては、有機パーオキサイド化合物およびアゾ化合物などのラジカル発生剤のほか、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物が使用できる。
【0025】
また、必要に応じて、補強剤、充填剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、接着促進剤、その他の配合剤などを添加することも可能である。
【0026】
氷雪路面のひっかき効果を発現させるための添加剤として、金属、砂、鉱物、ガラス、ガラス繊維、動物性繊維、植物性繊維、植物性物質などを添加することも可能である。
【0027】
必要に応じて添加されるその他の補強剤としては、シリカ、活性化炭酸カルシウムなどの無機補強剤や、ハイスチレン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の有機補強剤が使用され、これらの無機または有機の補強剤は原料ゴム100重量部に対して80重量部以下で使用される。また、これら補強剤と原料ゴムを結合させるためにシラン系化合物等の接着促進剤(カップリング剤)を組み合わせて使用することもできる。充填剤としては、炭酸カルシウム、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、ゼオライト、ケイソウ土、硫酸アルミニウム、硫酸バリウムなどが使用できる。
【0028】
酸化防止剤ないし老化防止剤としては、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系などのアミン誘導体、キノリン誘導体、ハイドロキノン誘導体、モノフェノール類、ジフェノール類、チオビスフェノール類、ヒンダードフェノール類、亜リン酸エステル類などが使用でき、これらは、原料ゴム100重量部当り、0.001〜10重量部添加され、2種以上を併用することもできる。
紫外線防止剤、滑剤、発泡剤、発泡助剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤その他のゴム配合薬品は、公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
【0029】
本発明のゴム組成物は、一般にゴム組成物の混合に用いられている各種混合装置、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー押出機などによって、原料ゴムと各種配合剤とを混合し、次いで目的の形状に成形した後、加硫される。本発明のゴム組成物は、その特徴を生かしてスタッドレスタイヤに好適であり、より具体的にはスタッドレスタイヤのトレッド部、キャップトレッド部、アンダートレッド部に適している。
【0030】
【実施例】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0031】
参考例1
スチレン−ブタジエンランダム共重合体(S−1)の製法:
内容積10リットルの撹拌機付き、ジャケット付きオートクレーブを反応器として2基直列に連結し、1基目の反応器底部より定量ポンプを用い、ブタジエンを28.5g/分、スチレンを1.5g/分、n−ヘキサンを120g/分、極性物質(ビニル化剤)としてテトラメチルエチレンジアミンを0.01g/分、触媒としてn−ブチルリチウムを0.012g/分の速度でそれぞれ連続的に供給し、反応器内温を100℃に保持した。重合器頭部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目の反応器に供給した。2基目の反応器には、活性重合体1モル当り0.5当量の四塩化珪素を連続的に添加しカップリング反応させた。得られたスチレン−ブタジエン共重合体に酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエンを重合体100部当り0.5部添加して、溶媒を除去した。得られた共重合体S−1の分析値を表1に示す。
【0032】
スチレン−ブタジエンランダム共重合体(S−2〜4、R−1〜4)の製法:スチレンモノマーの添加量、ビニル化剤としてテトラメチレンジアミンを用い、その添加量を変化させる以外はS−1と同じ条件でスチレン−ブタジエン共重合体を得た。得られた共重合体の分析値を表1に示す。
【0033】
スチレン−ブタジエンランダム共重合体(S−5〜7、R−5〜6)の製法:カップリング剤として四塩化スズ(S−5)、エチル三塩化珪素(S−6)、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(S−7)を用いた以外はS−2と同じ条件でスチレン−ブタジエン共重合体を得た。得られた共重合体の分析値を表1に示す。
【0034】
スチレン−ブタジエンランダム共重合体(R−7〜9)の製法:
R−7はカップリング剤の添加量を下げ、カップリング前後のムーニー粘度ML1+4 (100℃)の比を減少させた。R−8はブレンドにより分子量分布パターンがバイモーダルな共重合体を得た。R−9は市販の乳化重合SBR#1502(日本合成ゴム(株)製)をそのまま用いた。共重合体の分析値を表1に示す。
【0035】
共重合体のスチレン含量、ブタジエン部分のビニル量、ムーニー粘度、分子量分布パターンは、以下に示す方法で測定した。
1)スチレン含量及びブタジエン部分のミクロ構造
スチレン−ブタジエン共重合体を二硫化炭素に溶解し、赤外分光光度計によって赤外吸収スペクトルを測定し、ハンプトン法にて、スチレン含量、ブタジエン部のシス、トランス、ビニルの結合量を求めた。
2)ムーニー粘度ML1+4 (100℃)
L型ローターを使用し、100℃にてムーニー粘度を測定した。
3)分子量分布パターン
試料をTHF溶液とし、GPC(ポンプ:(株)島津製作所製LC−5A,カラム:ポリスチレンゲルHSG−40,50,60各1本、検出器:示差屈折計)にて、クロマトグラムを測定した。クロマトグラムの形状から分子量分布パターンを決定した。
【0036】
実施例1
参考例1で製造したスチレン−ブタジエンランダム共重合体(S−1)を下記に示す配合及び混練方法で混練し、160℃、20分加硫成形して、各種物性を測定した。この結果を表2にす。
【0037】
〔配合〕
スチレン−ブタジエン共重合体 50重量部
天然ゴム 50重量部
カーボンブラック *1 45重量部
アロマオイル 5重量部
亜鉛華 5重量部
ステアリン酸 2重量部
老化防止剤(810NA)*2 1重量部
加硫促進剤(CZ)*3 1重量部
硫黄 1.7重量部
*1 N339:東海カーボン(株)製シーストKH
窒素吸着比表面積93m2 /g、
DBP吸油量が119ml/100g
*2 N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
大内新興化学工業(株)製ノクラック810−NA
*3 N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
大内新興化学工業(株)製ノクラックCZ
【0038】
〔混練方法〕
バンバリーミキサー(容量1.7リットル、温度160℃)にてスチレン−ブタジエン共重合体にカーボンブラック、アロマオイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤を混練した。
オープンロール(10インチ、80℃)にて硫黄と加硫促進剤を混練した。
〔加硫成型〕
組成物を金型に入れ、160℃のプレスにて20分間加圧加熱し加硫成型した。
【0039】
表2に示す加硫物の各性能は、以下のように測定した。
1)硬さ:JIS−K−6301 JIS−A硬さ試験機による。
2)引張強度、破断伸び:JIS−K−6301 引張試験法による。
3)反発弾性:JIS−K−6301によるリュプケ法、試料を70℃オーブン中で1時間予熱後、素早く取り出して測定した。反発弾性は転がり抵抗を表すもので省燃費特性を表す指標となる。数値が大きいほど省燃費特性に優れる。
【0040】
4)ウェットスキッド抵抗:スタンレー・ロンドンのポータブル・スキッドテスターを使用し、路面としてセイフティー・ウォーク(スリー・エム社製)を使用してASTM E303−83の方法に従い測定した。濡れた路面でのグリップ特性の指標であり数値が大きいほど好ましい。
5)配合物ムーニー粘度:L型ローターを用い100℃で測定した。数値が80を越えると加工しにくくなり、また小さすぎるものも扱い難くなる。
【0041】
6)耐摩耗性:ASTM D2228−83に従い、ピコ摩耗試験機を用いて測定した。結果は相対値で表し、数値が大きいほど耐摩耗性が良好である。
7)粘弾性特性:粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所製)で周波数10Hzで貯蔵弾性率E’、損失弾性率E”、tanδを測定した。低温性能は−30℃におけるE’が小さく、tanδが大きい方向が氷上での制動性を高める性能であるとして評価した。
【0042】
実施例2〜7、比較例1〜8
参考例1で製造したスチレン−ブタジエンランダム共重合体(S−2〜7、R−1〜9)を用いた以外は実施例1と同じ条件にてゴム組成物を得た後、各種物性を測定した。結果は表2に示す。低温性能は図1にまとめた。
【0043】
実施例8〜10、比較例11〜13
参考例1で製造したスチレン−ブタジエンランダム共重合体(S−2)を用い、表3に示した原料ゴム組成を用いた以外は実施例1と同じ配合にてゴム組成物を得た。これらの物性結果を表4に示す。低温性能は図2にまとめた。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【発明の効果】
本発明のスチレン−ブタジエンランダム共重合体、天然ゴム、カーボンブラック、軟化剤からなる組成物を用いることにより、低温特性、加工性に極めて優れ、低転がり抵抗性、湿潤路面での把持力も良好なタイヤトレッド用ゴム組成物が得られる。このゴム組成物は、氷上性能を必要とするスタッドレスタイヤの材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ゴム組成物(実施例1〜7、比較例1〜9)の加硫物の低温性能評価図である。
【図2】本発明ゴム組成物(実施例8〜10、比較例10〜13)の加硫物の低温性能評価図である。
Claims (2)
- (A)スチレン含量が3〜9重量%、ブタジエン部のビニル量が18〜29%、3官能性以上のカップリング剤でカップリングされ、カップリング前のムーニー粘度(ML1+4 (100℃);I)が10〜30、カップリング後のムーニー粘度(ML1+4 (100℃);C)が30〜80であり、カップリング前後のムーニー粘度の比(C/I)が1.5〜5であり、分子量分布パターンがモノモーダルであるスチレン−ブタジエンランダム共重合体10〜90重量部と
(B)天然ゴム90〜10重量部
からなる原料ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを10〜80重量部、軟化剤を5〜50重量部添加配合した組成物であって、その低温特性が、粘弾性スペクトロメーターにて周波数10Hzで測定した貯蔵弾性率E’と損失係数tanδが夫々−30℃におけるE’が3.5×10 8 dyn/cm 2 以下、tanδが0.33以上であることを特徴とするスタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物。 - (A)スチレン含量が3〜9重量%、ブタジエン部のビニル量が18〜29%、3官能性以上のカップリング剤でカップリングされ、カップリング前のムーニー粘度(ML1+4 (100℃);I)が10〜30、カップリング後のムーニー粘度(ML1+4 (100℃);C)が30〜80であり、カップリング前後のムーニー粘度の比(C/I)が1.5〜5であり、分子量分布パターンがモノモーダルであるスチレン−ブタジエンランダム共重合体10〜90重量部と
(B)天然ゴム90〜10重量部と
(C)ブタジエンゴム1〜50重量部
からなる原料ゴム100重量部に対して、カーボンブラックを10〜80重量部、軟化剤を5〜50重量部添加配合した組成物であって、その低温特性が、粘弾性スペクトロメーターにて周波数10Hzで測定した貯蔵弾性率E’と損失係数tanδが夫々−30℃におけるE’が3.5×10 8 dyn/cm 2 以下、tanδが0.33以上であることを特徴とするスタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物。
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