JP3549443B2 - 回路保護素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器あるいは、バッテリー等を搭載したモバイル型電子機器等に用いられ、特に、ハードディスクドライブ装置,光ディスク装置などの記憶装置や、パーソナルコンピュータやモバイル型パーソナルコンピュータなどに用いられる回路保護素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来用いられている回路保護素子は、例えば特開平5−120985号公報等に示されているものがある。
【0003】
従来の技術のものは、絶縁基板上に一対の導電部を設け、この一対の導電部にわたってヒューズ部を設け、このヒューズ部を覆うJCRコート部を設け、JCRコート部を覆う樹脂モールド部が設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記従来の構成では、回路基板上などに回路保護素子を実装する際には、回路保護素子の実装面が予め決められているので方向性が存在することになり、どのような向きにでも回路基板上に実装できるわけではなかった。従って、バルク実装等には従来の回路保護素子では対応できないという問題点があった。また、従来の回路保護素子では、外形が大きくなり、回路基板などの小型化が難しかった。
【0005】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、実装性を良好にし若しくは小型化の少なくとも一方を実現できる回路保護素子を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、両端よりも周回状に段落ちし、断面形状を四角形状もしくは五角形状もしくは六角形状のいずれかとした段落ち部を設け、しかも前記段落ち部の角部に面取りを設け、断面形状が四角形状もしくは五角形状もしくは六角形状のいずれかとした基台と、前記基台の側面全周に設けられた導電膜と、前記導電膜において前記段落ち部内に設けられた部分に形成された溝と、前記基台の両端部に設けられた端子部とを備え、長さをL1,幅をL2,高さをL3としたときに、
L1=0.5〜2.2mm
L2=0.2〜1.3mm
L3=0.2〜1.3mm
とした回路保護素子であって、溝は周回状の一つの溝であってしかも前記溝の両端部同士は非接続となっており、前記溝の両端部のそれぞれの側部間に狭幅部を設けるとともに前記狭幅部は前記段落ち部の角部を避けて設けられ、少なくとも前記溝および狭幅部を覆うように前記段落ち部内に設けられた保護材を有し、前記導電膜は単層膜或いは複数の膜を積層して構成された積層膜とし前記導電膜は銅,銅合金,金,金合金,銀,銀合金から選ばれる導電材料で構成された膜を含む。
【0007】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の発明は、両端よりも周回状に段落ちし、断面形状を四角形状もしくは五角形状もしくは六角形状のいずれかとした段落ち部を設け、しかも前記段落ち部の角部に面取りを設け、断面形状が四角形状もしくは五角形状もしくは六角形状のいずれかとした基台と、前記基台の側面全周に設けられた導電膜と、前記導電膜において前記段落ち部内に設けられた部分に形成された溝と、前記基台の両端部に設けられた端子部とを備え、長さをL1,幅をL2,高さをL3としたときに、
L1=0.5〜2.2mm
L2=0.2〜1.3mm
L3=0.2〜1.3mm
とした回路保護素子であって、溝は周回状の一つの溝であってしかも前記溝の両端部同士は非接続となっており、前記溝の両端部のそれぞれの側部間に狭幅部を設けるとともに前記狭幅部は前記段落ち部の角部を避けて設けられ、少なくとも前記溝および狭幅部を覆うように前記段落ち部内に設けられた保護材を有し、前記導電膜は単層膜或いは複数の膜を積層して構成された積層膜とし前記導電膜は銅,銅合金,金,金合金,銀,銀合金から選ばれる導電材料で構成された膜を含むことにより、素子の実装性が向上し、しかも小型の回路保護素子を得ることができ、更には溶断特性のバラツキをも抑えることができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、段落ち部内に更に段落ちした別の段落ち部を設け、前記別の段落ち部内に狭幅部を設けたことにより、さらに狭幅部へ加わるダメージを小さく出来るので、特性のばらつきなどの抑制効果がさらに高まる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1において、保護材としてエポキシ樹脂を用いたことを特徴とする事によって、素子の耐候性を向上させることができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1において、狭幅部上に溶断促進助剤を設けたことによって、確実に溶断特性を向上させることが出来る。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項4において、基台を周回するように溶断促進助剤を設けたことによって、確実に溶断促進助剤を設けることが出来る。
【0023】
請求項6記載の発明は、請求項5において、狭幅部上と前記狭幅部を形成する溝内に溶断促進助剤を設けたことによって狭幅部の上面及び側面に溶断促進助剤が接触することになるので、溶断特性を飛躍的に向上させることができる。
【0027】
請求項7記載の発明は、請求項1において、基台の両端部の断面形状を略正方形としたことによって、実装性を飛躍的に向上させることが出来る。
【0028】
請求項8記載の発明は、請求項1において、基台における狭幅部を設ける部分よりも他の部分の充填密度を低くすることで、充填密度の低い部分は熱の拡散を妨げるので、狭幅部の溶断特性を向上させることが出来る。
【0029】
以下、本発明における回路保護素子についての実施の形態について説明する。
【0030】
図1,図2はそれぞれ本発明の一実施の形態における回路保護素子を示す斜視図及び側面図である。
【0031】
図1において、11は絶縁材料などをプレス加工,押し出し法等を施して構成されている基台、12は基台11の上に設けられている導電膜で、導電膜12は、メッキ法やスパッタリング法等の蒸着法等によって基台11上に形成される。13は基台11及び導電膜12に設けられた溝で、溝13は、レーザ光線等を導電膜12に照射することによって形成したり、導電膜12に砥石等を当てて機械的に形成されている。14は基台11及び導電膜12の溝13を設けた部分に塗布された保護材、15,16はそれぞれ端子電極が形成された端子部で、端子部15と端子部16の間には、溝13及び保護材14が設けられている。なお、図2は、保護材14の一部を取り除いた図である。
【0032】
また、13aは溝13の両端部間で形成された狭幅部で、狭幅部13aは導電膜12の一部である。この狭幅部13aの幅または膜厚の少なくとも一方の設定によって、溶断電流を制御するようにしている。すなわち、動作としては、例えば5Aの電流で溶断するように構成したい場合には、予め5Aで狭幅部13aが溶断するように、導電膜12の材料や膜厚、狭幅部13aの幅、基台11の材料等を実験等で算出しておき、その構造で回路保護素子を作製する。そして、所定の電流(例えば5Aの電流)が流れると、狭幅部13aが溶断して、過電流による回路基板や電子機器等の故障等を防止している。
【0033】
また、本実施の形態の回路保護素子は、回路保護素子の長さL1,幅L2,高さL3は以下の通りとなっていることが好ましい。
【0034】
L1=0.5〜2.2mm(好ましくは0.8〜1.8mm)
L2=0.2〜1.3mm(好ましくは0.4〜0.9mm)
L3=0.2〜1.3mm(好ましくは0.4〜0.9mm)
L1が0.5mm以下であると、加工が非常に難しくなり、生産性が向上しない。また、L1が2.2mmを超えてしまうと、素子自体が大きくなってしまい、電子回路等が形成された基板など(以下回路基板等と略す)回路基板等の小型化ができず、ひいてはその回路基板等を搭載した電子機器等の小型化を行うことができない。また、L2,L3それぞれが0.2mm以下であると、素子自体の機械的強度が弱くなりすぎてしまい、実装装置などで、回路基板等に実装する場合に、素子折れ等が発生することがある。また、L2,L3が1.3mm以上となると、素子が大きくなりすぎて、回路基板等の小型化、ひいては装置の小型化を行うことができない。なお、L4(段落ちの深さ)は20μm〜100μm程度が好ましく、20μm以下であれば、狭幅部13a上に溶断促進助剤を設け、その上に更に保護材14を設けたときに、保護材14を薄くしなければならず、その結果、実装の時などに衝撃などによって、前記溶断促進助剤が移動し、十分な溶断特性を得ることができないことがある。また、L4が100μmを超えると基台の機械的強度が弱くなり、やはり素子折れ等が発生することがある。
【0035】
以上の様に構成された回路保護素子について、以下各部の詳細な説明をする。図3は導電膜を形成した基台の断面図、図4(a)(b)はそれぞれ基台の側面図及び底面図である。
【0036】
まず、基台11の形状について説明する。
【0037】
基台11は、図3及び図4に示す様に、回路基板等に実装しやすいように断面が四角形状の中央部11aと中央部11aの両端に一体に設けられ、しかも断面が四角形状の端部11b,11cによって構成されている。なお、端部11b,11c及び中央部11aは断面四角形状としたが、五角形状や六角形状などの多角形状でも良い。中央部11aは端部11b,11cから段落ちした構成となっている。本実施の形態では、端部11b,11cの断面形状を略正四角状とすることによって、回路基板等への回路保護素子を装着性を良好にした。また、本実施の形態では中央部11aに横向きに溝13を形成することによって、どのように回路基板等に実装しても方向性が無いために、取り扱いが容易になる。また、中央部11aには素子部(溝13や保護材14)が形成されることとなり、端部11b,11cには端子部15,16が形成される。
【0038】
なお、本実施の形態では、中央部11a及び端部11b,11cをともに略正四角形状としたが、正五角形状等の正多角形状にしてもよい。さらに、本実施の形態では、中央部11aと端部11c,11bそれぞれの断面形状を正四角形というように同一にしたが、異なっても良い。すなわち、端部11b、11cの断面形状を正多角形状とし、中央部11aの断面形状を他の多角形状としても良い。
【0039】
さらに、本実施の形態では、中央部11aを端部11b,11cより段落ちさせることによって、保護材14を塗布した際に、その保護材14と回路基板等が接触することなどを防止していたが、特に保護材14の厚みや実装される回路基板等の状況(回路基板等の実装される部分に溝が形成されていたり、回路基板等の電極部が盛り上がっている等)によって、中央部11aを段落ちさせなくてもよい。中央部11aを端部11b,11cから段落ちさせないと、基台11の構造が簡単になり、生産性が向上し、さらに中央部11aの機械的強度も向上する。この様に段落ちさせない場合でも、断面四角形状の四角柱形状としてもよいし、さらに断面を多角形状とする角柱とすることもできる。
【0040】
また、図4(a)に示す様に基台11の端部の高さZ1及びZ2は下記の条件を満たすことが好ましい。
【0041】
|Z1−Z2|≦80μm(好ましくは50μm)
Z1とZ2の高さの違いが80μm(好ましくは50μm以下)を超えると、素子を基板に実装し、半田等で回路基板等に取り付ける場合、半田等の表面張力によって素子が一方の端部に引っ張られて、素子が立ってしまうというマンハッタン現象の発生する確率が非常に高くなる。このマンハッタン現象を図5に示す。図5に示すように、基板200の上に回路保護素子を配置し、端子部15,16それぞれと基板200の間に半田201,202が設けられているが、リフローなどによって半田201,202を溶かすと、半田201,202のそれぞれの塗布量の違いや、材質が異なることによる融点の違いによって、溶融した半田201,202の表面張力が端子部15と端子部16で異なり、その結果、図5に示すように一方の端子部(図5の場合は端子部15)を中心に回転し、回路保護素子が立ち上がってしまう。Z1とZ2の高さの違いが80μm(好ましくは50μm以下)を超えると、素子が傾いた状態で基板200に配置されることとなり、素子立ちを促進する。また、マンハッタン現象は特に小型軽量のチップ型の電子部品(チップ型回路保護素子を含む)において顕著に発生し、しかもこのマンハッタン現象の発生要因の一つとして、端子部15,16の高さの違いによって素子が傾いて基板200に配置されることを着目した。この結果、Z1とZ2の高さの差を80μm以下(好ましくは50μm以下)となるように、基台11を成形などで加工することによって、このマンハッタン現象の発生を大幅に抑えることができた。Z1とZ2の高さの差を50μm以下とすることによって、ほぼ、マンハッタン現象の発生を抑えることができる。
【0042】
次に基台11の面取りについて説明する。
【0043】
図6は本発明の一実施の形態における回路保護素子に用いられる基台の斜視図である。図6に示されるように、基台11の端部11b,11cそれぞれの角部11e,11dには面取りが施されており、その面取りした角部11e,11dのそれぞれの曲率半径R1及び中央部11aの角部11fの曲率半径R2は以下の通りに形成されることが好ましい。
【0044】
0.03<R1<0.15(mm)
0.01<R2(mm)
R1が0.03mm以下であると、角部11e,11dが尖った形状となっているので、ちょっとした衝撃などによって角部11e,11dに欠けなどが生じることがあり、その欠けによって、特性の劣化等が発生したりする。また、R1が0.15mm以上であると、角部11e,11dが丸くなりすぎて、前述のマンハッタン現象を起こしやすくなり、不具合が生じる。更にR2が0.01mm以下であると、角部11fにバリなどが発生しやすく、中央部11a上に形成され、しかも素子の特性を大きく左右する導電膜12の厚みが角部11fと平坦な部分で大きく異なることがあり、素子特性のばらつきが大きくなる。
【0045】
次に基台11の構成材料について説明する。基台11の構成材料として下記の特性を満足しておくことが好ましい。
【0046】
次に基台11の構成材料について説明する。基台11の構成材料として下記の特性を満足しておくことが好ましい。
【0047】
体積固有抵抗:1013Ωm以上(好ましくは1014Ωm以上)
熱膨張係数:5×10−4/℃以下(好ましくは2×10−5/℃以下)[20℃〜500℃における熱膨張係数]
曲げ強度:1300kg/cm2以上(好ましくは2000kg/cm2以上)
密度:2〜5g/cm3(好ましくは3〜4g/cm3)
基台11の構成材料の体積固有抵抗が1013Ωm以下であると、多大な電流が流れた場合に基台11にも所定に電流が流れ始めるので、回路保護素子としての役割が不十分となる。
【0048】
また熱膨張係数が5×10−4/℃以上であると、基台11にヒートショック等でクラックなどが入ることがある。すなわち熱膨張係数が5×10−4/℃以上であると、上述の様に溝13を形成する際にレーザ光線や砥石等を用いるので、基台11が局部的に高温になり、基台11にクラックなどが生じることあるが、上述の様な熱膨張係数を有することによって、大幅にクラック等の発生を抑止でき、導電膜12が劣化を防止し、溶断特性のばらつきを生じる事を防止できる。
【0049】
曲げ強度が1300kg/cm2以下であると、実装装置で回路基板等に実装する際に素子折れ等が発生することがある。
【0050】
密度が2g/cm3以下であると、基台11の吸水率が高くなり、基台11の特性が著しく劣化し、素子としての特性が悪くなる。また密度が5g/cm3以上になると、基台の重量が重くなり、実装性などに問題が発生する。特に密度を上述の範囲内に設定すると、吸水率も小さく基台11への水の進入もほとんどなく、しかも重量も軽くなり、チップマウンタなどで基板に実装する際にも問題は発生しない。
【0051】
この様に基台11の体積固有抵抗,熱膨張係数,曲げ強度,密度を規定することによって、特性のばらつきを抑制し、ヒートショック等で基台11にクラック等が発生することを抑制できるので、不良率を低減することができ、更には、機械的強度を向上させることができるので、実装装置などを用いて回路基板等に実装できるので、生産性が向上する等の優れた効果を得ることができる。
【0052】
上記の諸特性を得る材料としては、アルミナを主成分とするセラミック材料が挙げられる。しかしながら、単にアルミナを主成分とするセラミック材料を用いても上記諸特性を得ることはできない。すなわち、上記諸特性は、基台11を作製する際のプレス圧力や焼成温度及び添加物によって異なるので、作製条件などを適宜調整しなければならない。具体的な作製条件として、基台11の加工時のプレス圧力を2〜5t,焼成温度を1500〜1600℃,焼成時間1〜3時間等の条件が挙げられる。また、アルミナ材料の具体的な材料としては、Al2O3が92重量%以上,SiO2が6重量%以下,MgOが1.5重量%以下,Fe2O3が0.1%以下,Na2Oが0.3重量%以下等が挙げられる。
【0053】
次に基台11の表面粗さについて説明する。なお、以下の説明で出てくる表面粗さとは、全て中心線平均粗さを意味するものであり、導電膜12の説明等に出てくる粗さも中心線平均粗さである。
【0054】
基台11の表面粗さは0.15〜1.0μm程度、好ましくは0.2〜0.8μm程度がよい。図7は基台11の表面粗さと剥がれ発生率を示したグラフである。図7は下記に示すような実験の結果である。基台11及び導電膜12はそれぞれアルミナ,銅で構成し、基台11の表面粗さをいろいろ変えたサンプルを作製し、その各サンプルの上に同じ条件で導電膜12を形成した。それぞれのサンプルに超音波洗浄を行い、その後に導電膜12の表面を観察して、導電膜12の剥がれの有無を測定した。基台11の表面粗さは、表面粗さ測定器(東京精密サーフコム社製 574A)を用いて、先端Rが5μmのものを用いた。この結果から判るように平均表面粗さが0.15μm以下であると、基台11の上に形成された導電膜12の剥がれの発生率が5%程度であり、良好な基台11と導電膜12の接合強度を得ることができる。更に、表面粗さが0.2μm以上であれば導電膜12の剥がれがほとんど発生していないので、できれば、基台11の表面粗さは0.2μm以上が好ましい。導電膜12の剥がれは、素子の特性劣化の大きな要因となるので、歩留まり等の面から発生率は5%以下が好ましい。
【0055】
また、表面粗さは、端部11b,11cと中央部11aでは、平均表面粗さを異ならせた方が好ましい。すなわち、平均表面粗さ0.15〜0.5μmの範囲内で端部11b,11cの平均表面粗さを中央部11aの平均表面粗さよりも小さくすることが好ましい。端部11b,11cは導電膜12を積層することによって上述の様に端子部15,16が構成されるので、端部11b,11cの表面粗さを中央部11aより小さくすることによって、端部11b,11c上に形成される導電膜12の表面粗さを小さくできるので、回路基板等の電極との密着性を向上させることができ、確実な回路基板等と回路保護素子の接合をおこなうことができる。また、中央部11aには導電膜12を積層し溝13を形成するので、溝13をレーザ等で形成する際に導電膜12が基台11からはがれ落ちないように導電膜12と基台11の密着強度を向上させなければないので、端部11b,11cよりも中央部11aの表面粗さを大きくした方が好ましい。特にレーザで溝13を形成する場合、レーザが照射された部分は他の部分よりも急激に温度が上昇し、ヒートショック等で導電膜12が剥がれることがある。従って、レーザで溝13を形成する場合には導電膜12と基台11の接合密度を他の部分よりも向上させることが必要である。
【0056】
この様に中央部11aと端部11b,11cとの表面粗さを異ならせることによって、回路基板等との密着性及び溝13の加工の際の導電膜12のはがれを防止することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、導電膜12と基台11の接合強度を基台11の表面粗さを調整することによって、向上させたが、例えば、基台11と導電膜12の間にCr単体またはCrと他の金属の合金の少なくとも一方で構成された中間層を設けることによって、表面粗さを調整せずとも導電膜12と基台11の密着強度を向上させることができる。もちろん基台11の表面粗さを調整し、その上その基台11の上に中間層及び導電膜12を積層する場合では、より強力な導電膜12と基台11の密着強度を得ることができる。
【0058】
また、狭幅部13aを設ける部分と基台11の他の部分の充填密度は、他の部分の方が低くなるように形成することが好ましい。すなわち、充填密度を低くすることによって、熱の拡散を防止できるので、狭幅部13aで発生した熱を外部に伝わりにくくでき、溶断特性を向上させることが出来る。例えば、狭幅部13aを基台11の中央部に設けた場合、基台11の両端部の充填密度を中央部よりも低くすることで、熱の拡散を防止できる。
【0059】
次に導電膜12について説明する。
【0060】
以下具体的に導電膜12について説明する。
【0061】
導電膜12の構成材料としては、銅,銀,金,ニッケルなどの導電材料が挙げられる。この銅,銀,金,ニッケル等の材料には、耐候性等を向上させために所定の元素を添加してもよい。また、導電材料と非金属材料等の合金を用いてもよい。構成材料としてコスト面や耐食性の面及び作り易さの面から銅及びその合金がよく用いられる。導電膜12の材料として、銅等を用いる場合には、まず、基台11上に無電解メッキによって下地膜を形成し、その下地膜の上に電解メッキにて所定の銅膜を形成して導電膜12が形成される。更に、合金等で導電膜12を形成する場合には、スパッタリング法や蒸着法で構成することが好ましい。また、構成材料に銅及びその合金を用いた場合導電膜12の形成厚みは0.4μm〜15μmとすることが好ましい。
【0062】
導電膜12は単層で構成してもよいが、多層構造としてもよい。すなわち、構成材料の異なる導電膜を複数積層して構成しても良い。例えば、基台11の上に先ず銅膜を形成し、その上に耐候性の良い金属膜(ニッケル等)を積層する事によって、やや耐候性に問題がある銅の腐食を防止することができる。具体的には基台11の上に銅又はニッケルの少なくとも一方を形成し、その上に銀等を積層し、さらに好ましくはその銀等の上に錫を積層する事などが挙げられる。
【0063】
導電膜12の形成方法としては、メッキ法(電解メッキ法や無電解メッキ法など),スパッタリング法,蒸着法等が挙げられる。この形成方法の中でも、量産性がよく、しかも膜厚のばらつきが小さなメッキ法がよく用いられる。
【0064】
導電膜12の表面粗さは1μm以下が好ましく、更に好ましくは0.2μm以下が好ましい。導電膜12の表面粗さが1μmを超えると、導電膜12に膜厚のばらつきが生じ溶断特性にばらつきを生じる。
【0065】
なお、本実施の形態でいう導電膜12には、酸化ルテニウム等の抵抗膜をも含む。
【0066】
次に保護材14について説明する。
【0067】
保護材14としては、耐候性に優れた有機材料、例えばエポキシ樹脂などの絶縁性を示す材料が用いられる。また、保護材14としては、溝13の状況等が観測できるような透明度を有する事が好ましい。更に保護材14には透明度を有したまま、所定の色を有することが好ましい。保護材14に赤,青,緑などの、導電膜12や端子部15,16等と異なる色を着色する事によって、素子各部の区別をする事ができ、素子各部の検査などが容易に行える。また、素子の大きさ、特性、品番等の違いで保護材14の色を変えることによって、特性や品番等の異なる素子を誤った部分に取り付けるなどのミスを低減させることができる。
【0068】
また、保護材14は、図8に示すように溝13の角部13aと保護材14の表面までの長さZ1が5μm以上となるように塗布することが好ましい。Z1が5μmより小さいと特性劣化や放電などが発生し易くなり素子の特性が大幅に劣化することが考えられる。また、溝13の角部13aは特に放電などが発生しやすい部分であり、この角部13a上に厚さ5μm以上の保護材14が形成されることが非常に好ましい。また、保護材14を形成した後に再びメッキを施して電極膜等を形成することがあるが、角部13a上に5μm以上の保護材14が形成されていないと、電極膜等が付着すると不具合が生じる保護材14上に電極膜等が形成されることになり、特性の劣化が生じる。
【0069】
次に端子部15,16について説明する。
【0070】
端子部15,16は、導電膜12のみでも十分に機能するが、様々な環境条件等に順応させるために、多層構造とすることが好ましい。
【0071】
図9は端子部15の断面図である。図9において、基台11の端部11bの上に導電膜12が形成されており、しかも導電膜12の上には耐候性を有するニッケル,チタン等の材料で構成される保護層300が形成されており、更に保護層300の上には半田、鉛フリー半田等で構成された接合層301が形成されている。保護層300は接合層と導電膜12の接合強度を向上させるとともに、導電膜の耐候性を向上させることができる。本実施の形態では、保護層300の構成材料として、ニッケルかニッケル合金の少なくとも一方とし、接合層301の構成材料としては半田或いは鉛フリー半田を用いた。保護層300(ニッケル)の厚みは2〜7μmが好ましく、2μmを下回ると耐候性が悪くなり、7μmを上回ると保護層300(ニッケル)自体の電気抵抗が高くなり、素子特性が大きく劣化する。また、接合層301(半田)の厚みは5μm〜10μm程度が好ましく、5μmを下回ると半田食われ現象が発生して素子と回路基板等との良好な接合が期待できず、10μmを上回るとマンハッタン現象が発生し易くなり、実装性が非常に悪くなる。
【0072】
以上の様に構成された回路保護素子は、特性劣化が無く、しかも,実装性及び生産性が非常によい。
【0073】
確実な溶断特性を得るために狭幅部13a上に溶断促進助剤を設ける事が好ましい。すなわち狭幅部13a単独でも十分な溶断特性を有するものの、確実にしかも溶断する時間のばらつき等を小さくするにはこの溶断促進助剤を狭幅部13aの上かもしくは狭幅部13aの極近傍に設けることが好ましい。更に溶断促進錠剤は狭幅部13aの部分のみに設けたり、基台11を周回する様に溶断促進錠剤を塗布することによって、ポイント的に塗布するよりも精度が悪く塗布しても確実に狭幅部13a上に溶断促進助剤を設けることができる。また、溶断促進助剤は狭幅部13aを構成する溝13中にも設けることによって狭幅部13aの上面及び側面も溶断促進助剤が接触する構成となるので、確実に溶断特性を得ることが出来る。なお、溶断促進助剤を設けた場合の膜構成は基台11、導電膜12(狭幅部13a)溶断促進助剤、保護材14というような順番の構成になる。
【0074】
溶断促進助剤としては、例えば、鉛などが入った低融点ガラス等が用いられる。
【0075】
以上の様に構成された回路保護素子について、以下その製造方法について説明する。
【0076】
まず、アルミナ等の絶縁材料をプレス成形や押し出し法によって、基台11を作製する。次にその基台11全体にメッキ法やスパッタリング法などによって導電膜12を形成する。次に導電膜12を形成した基台11にスパイラル状の溝13を形成する。溝13はレーザ加工や切削加工によって作製される。レーザ加工は、非常に生産性が良いので、以下レーザ加工について説明する。
【0077】
レーザは、YAGレーザ,エキシマレーザ,炭酸ガスレーザなどを用いることができ、レーザ光をレンズなどで絞り込むことによって、基台11の中央部11aに照射する。更に、溝13の深さ等は、レーザのパワーを調整し、溝13の幅等は、レーザ光を絞り込む際のレンズを交換することによって行える。また、導電膜12の構成材料等によって、レーザの吸収率が異なるので、レーザの種類(レーザの波長)は、導電膜12の構成材料によって、適宜選択することが好ましい。なお、本実施の形態では、溝加工にレーザを用いたが、電子ビーム等の粒子ビームも用いることができる。すなわち、溝加工には高エネルギービームが用いられる。
【0078】
この様にレーザによって、溝13を形成することによって、狭幅部13aを作製する。
【0079】
溝13を形成した後に、溝13を形成した部分(中央部11a)に保護材14を塗布し、乾燥させる。溶断促進助剤を設ける場合には、保護材14を設ける前に狭幅部13a上に溶断促進助剤を設ける。
【0080】
この時点でも、製品は完成するが、特に端子部15,16にニッケル層や半田層を積層して、耐候性や接合性を向上させることもある。ニッケル層や半田層は、メッキ法等によって保護材14を形成した半完成品に形成する。
【0081】
また、他の実施の形態として、図1では、周回状の溝13を一つしか設けなかったが、複数の周回状の溝13を設けて、複数の狭幅部13aを設けても良い。
【0082】
さらに、図10に示すように連続していない2つの溝13b,13cを設けて狭幅部13aを設けても良い。図10の場合には、コ字型の溝13b,13cの端部同士を接合させて複数の狭幅部13aを設けている。
【0083】
なお、図10では、非連続の溝を2つしか設けなかったが3以上の非連続溝を設けても良い。
【0084】
また、図1などで示した回路保護素子は、基台11の長手方向とは交差した方向に沿って狭幅部13aを設けたが、図11に示すように溝13の先端部間で狭幅部13aを形成することで、基台11の長手方向に沿って形成してもよい。
【0085】
また、図12に示すように、断落ち部に更に断落ちさせた段部50を設け、その段部50内に狭幅部13aを設けることで、さらに狭幅部13aの保護を行うことが出来る。また、100は狭幅部13a上や溝13内に設けられた溶断促進助剤である。なお、図13に示すように段落ち部に更に周回状に段部51を設けても良い。また、図14に示すように断落ち部を基台11の中心部に行くにしたがって細く(このましくは、円弧状に細く)することもできる。
【0086】
【発明の効果】
本発明は、両端よりも周回状に段落ちし、断面形状を四角形状もしくは五角形状もしくは六角形状のいずれかとした段落ち部を設け、しかも前記段落ち部の角部に面取りを設け、断面形状が四角形状もしくは五角形状もしくは六角形状のいずれかとした基台と、前記基台の側面全周に設けられた導電膜と、前記導電膜において前記段落ち部内に設けられた部分に形成された溝と、前記基台の両端部に設けられた端子部とを備え、長さをL1,幅をL2,高さをL3としたときに、
L1=0.5〜2.2mm
L2=0.2〜1.3mm
L3=0.2〜1.3mm
とした回路保護素子であって、溝は周回状の一つの溝であってしかも前記溝の両端部同士は非接続となっており、前記溝の両端部のそれぞれの側部間に狭幅部を設けるとともに前記狭幅部は前記段落ち部の角部を避けて設けられ、少なくとも前記溝および狭幅部を覆うように前記段落ち部内に設けられた保護材を有し、前記導電膜は単層膜或いは複数の膜を積層して構成された積層膜とし前記導電膜は銅,銅合金,金,金合金,銀,銀合金から選ばれる導電材料で構成された膜を含むことによって、素子の実装性が向上し、しかも小型の回路保護素子を得ることができ、更には溶断特性のバラツキをも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における回路保護素子を示す斜視図
【図2】本発明の一実施の形態における回路保護素子を示す側面図
【図3】本発明の一実施の形態における回路保護素子に用いられる導電膜を形成した基台の断面図
【図4】本発明の一実施の形態における回路保護素子に用いられる基台を示す図
【図5】マンハッタン現象を示す側面図
【図6】本発明の一実施の形態における回路保護素子に用いられる基台の斜視図
【図7】本発明の一実施の形態における回路保護素子に用いられる基台の表面粗さと剥がれ発生率を示したグラフ
【図8】本発明の一実施の形態における回路保護素子の保護材を設けた部分の側面図
【図9】本発明の一実施の形態における回路保護素子の端子部の断面図
【図10】本発明の他の実施の形態における回路保護素子を示す斜視図
【図11】本発明の他の実施の形態における回路保護素子を示す側面図
【図12】本発明の他の実施の形態における回路保護素子を示す斜視図
【図13】本発明の他の実施の形態における回路保護素子を示す斜視図
【図14】本発明の他の実施の形態における回路保護素子を示す斜視図
【符号の説明】
11 基台
11a 中央部
11b,11c 端部
11d,11e,11f 角部
12 導電膜
13 溝
13a 狭幅部
13b,13c 溝
14 保護材
15,16 端子部
50,51 段部
100 溶断促進助剤
Claims (8)
- 両端よりも周回状に段落ちし、断面形状を四角形状もしくは五角形状もしくは六角形状のいずれかとした段落ち部を設け、しかも前記段落ち部の角部に面取りを設け、断面形状が四角形状もしくは五角形状もしくは六角形状のいずれかとした基台と、前記基台の側面全周に設けられた導電膜と、前記導電膜において前記段落ち部内に設けられた部分に形成された溝と、前記基台の両端部に設けられた端子部とを備え、長さをL1,幅をL2,高さをL3としたときに、
L1=0.5〜2.2mm
L2=0.2〜1.3mm
L3=0.2〜1.3mm
とした回路保護素子であって、溝は周回状の一つの溝であってしかも前記溝の両端部同士は非接続となっており、前記溝の両端部のそれぞれの側部間に狭幅部を設けるとともに前記狭幅部は前記段落ち部の角部を避けて設けられ、少なくとも前記溝および狭幅部を覆うように前記段落ち部内に設けられた保護材を有し、前記導電膜は単層膜或いは複数の膜を積層して構成された積層膜とし前記導電膜は銅,銅合金,金,金合金,銀,銀合金から選ばれる導電材料で構成された膜を含むことを特徴とする回路保護素子。 - 段落ち部内に更に段落ちした別の段落ち部を設け、前記別の段落ち部内に狭幅部を設けたことを特徴とする請求項1記載の回路保護素子。
- 保護材としてエポキシ樹脂を用いたことを特徴とする請求項1記載の回路保護素子。
- 狭幅部上に溶断促進助剤を設けたことを特徴とする請求項1記載の回路保護素子。
- 基台を周回するように溶断促進助剤を設けたことを特徴とする請求項4記載の回路保護素子。
- 狭幅部上と前記狭幅部を形成する溝内に溶断促進助剤を設けたことを特徴とする請求項4記載の回路保護素子。
- 基台の両端部の断面形状を略正方形としたことを特徴とする請求項1記載の回路保護素子。
- 基台における狭幅部を設ける部分よりも他の部分の充填密度を低くしたことを特徴とする請求項1記載の回路保護素子。
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