JP3546573B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク不吐出回復等のメンテナンス処理を行うインクジェット記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット記録装置は、インク液滴を吐出し、ドット記録を行うが、インクの不吐出あるいは吐出不良が生じることがある。
【0003】
この不吐出あるいは吐出不良は、インク液滴を吐出するノズルの先端にゴミが付着したり、ノズルの先端から空気を吸い込んだり、ノズル内でインクが乾燥したりする等の各種の理由によって生じる。
【0004】
そこで、このような不吐出を回復するメンテナンス処理手段を有するインクジェット記録装置が提案されている。例えば、キャリッジがメンテナンス処理を行う位置にくることによって、切り換え手段を作動させて紙送りモータの駆動力をヘッド内のインクを吸引する吸引ポンプに伝達可能としたものが提案されており、紙送りモータの駆動力によって吸引ポンプを作動させることによりメンテナンスを実行可能としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したインクジェット記録装置では、メンテナンス処理の駆動を紙送りモータ等からなる紙送り手段の駆動力を利用しているため、メンテナンス処理時に紙送りモータ等が回転する。このとき、用紙が紙送り手段にセットされていると、用紙を送る動作も同時に行われることになる。
【0006】
通常このメンテナンス処理は、用紙が紙送り手段にセットされていない場合に使用者が必要に応じて操作パネルを操作することによって行われる。しかし、使用者がヘッドの印字状態をみてインク不吐出等の異常を発見したため、用紙への印字途中であるにもかかわらず、メンテナンス処理を行わなければならない場合がある。この場合、印字が中断され、メンテナンス処理のための紙送り手段の作動によって、空白のまま用紙が送られてしまう。そのため、メンテナンス処理が終了して印字を再開したとしても、用紙の途中から印字が始まってしまう。そこで、使用者の手動操作によって、途中に空白が生じた用紙を排出し、新たな用紙に所定のページを指定して印字を再開しなければならない。このように、印字途中にメンテナンス処理を行うと、印字を再開するために使用者による面倒な操作が必要になるという問題点があった。
【0007】
また、例えば、特開昭62−263058号公報に示されるように、紙送りモータとその紙送りモータによって駆動される用紙送り部材(プラテン)との間に接離機構を介在させ、メンテナンス処理時には、紙送りモータと用紙送り部材(プラテン)との連結を解除することにより、メンテナンス処理手段のみを駆動させるようにしたものも提案されている。
【0008】
これによれば、メンテナンス処理時に、用紙が紙送り手段にセットされていたとしても、紙送りモータの駆動に伴って用紙が送られることはない。しかしながら、メンテナンス処理の終了後、再び、紙送りモータと用紙送り部材(プラテン)とを連結する際に、元の連結状態と全く同じ状態に復帰させることはむずかしく、どうしても多少の位置ずれが発生しています。従って、この場合においても、印字途中にメンテナンス処理を実行したときには、上記と同様に面倒な操作が必要となる問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、印字途中に、紙送り手段の駆動力を利用して印字ヘッドのメンテナンス処理を行った場合であっても、メンテナンス処理が終了した後には自動的に用紙の先頭から印字を再開することができるインクジェット記録装置を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、インクを噴出する複数のノズルを有した記録ヘッドと、用紙を搬送する紙送り手段と、その紙送り手段の駆動力を利用して、上記記録ヘッドのメンテナンス処理を行うメンテナンス処理手段とを備え、情報処理装置からの出力データを用紙に印字し、前記メンテナンス処理手段の動作時には、前記紙送り手段が同時に動作するインクジェット記録装置において、情報処理装置からの制御データに基づいて、試し印刷等の簡易印刷による用紙への印字途中でメンテナンス処理を行ったときには、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開し、前記簡易印刷以外の通常印刷による用紙への印字途中でメンテナンス処理を行ったときには、新たな用紙に印字を再開する印字再開手段とを有していることを特徴とするインクジェット記録装置である。従って、例えば、試し印刷等の簡易印刷による用紙への印字途中で、メンテナンス処理を行った場合であって、用紙の先頭から印字を再開する必要がないときには、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開することができ、繰り返し部分の印字時間を短縮して印刷作業を効率良く行うことができる。一方、簡易印刷以外の、印字品質を優先する通常印刷の場合には、新たな用紙の先頭から印字を再開することができる。また、使用者が面倒な切り替え操作を行わなくとも、印刷の使用目的に応じた印字の再開を行うことができる。
【0011】
請求項2の発明は、情報処理装置からの出力データを用紙に印字するインクジェット記録装置であって、インクを噴出する複数のノズルを有した記録ヘッドと、上記用紙を搬送する紙送り手段と、上記紙送り手段の駆動力を利用して、上記記録ヘッドのメンテナンス処理を行うメンテナンス処理手段と、上記用紙の1頁分の出力データを記憶可能な出力データ記憶手段と、上記用紙への印字途中でメンテナンス処理を行ったときに、上記出力データ記憶手段の1頁分の出力データを新たな用紙に印字する印字再開手段とを有していることを特徴とするインクジェット記録装置である。上記構成により、インクジェット記録装置は、バッファメモリ等の出力データ記憶手段に記憶している一頁分の出力データを有効に利用して、インクジェット記録装置単独でメンテナンス処理後の印字を用紙の先頭から自動的に再開することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のインクジェット記録装置を、情報処理装置の一つであるパソコンに接続して使用するインクジェットプリンタとして具体化したものを実施形態として図面を参照しつつ説明する。またメンテナンス処理としてノズル前面からインクを吸引するパージ処理の場合を例にして説明する。
【0013】
まず、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の制御系を図1のブロック図を参照しつつ説明する。この制御系は、公知の演算処理装置であるCPU20を中心に構成される。CPU20は、インターフェース21を介してホスト(情報処理装置)22に接続される。ホスト22の典型例はパソコンである。即ちインクジェットプリンタ1は、ホスト22からの印刷指令を受け、その指令に従い種々の印刷を実行するものである。
【0014】
ホスト22の機能構成として典型的なものにウインドウシステムがある。このウインドウシステム上で、各種のアプリケーション(A)(B)・・・(n)が実行可能に設けられ、また、フォントドライバ、CRTドライバ、キーボードドライバ、マウスドライバ、プリンタドライバ等が組み込まれている。各種のアプリケーションプログラムの実行中に、プリンタ1を使用して、カラー画像等を印字する場合には、このプリンタドライバによってプリンタ1の印字機能に適合した画像に関する出力データが作成される。カラー画像であると、シアン、マゼンダ、イエロー及び黒の4色の各ドットイメージデータが作成されたのち、通信用のインターフェース21を介してプリンタ1に出力される。
【0015】
このプリンタドライバによるプリンタの制御方式を大別すると次の二種類がある。第1方式は、ホスト22からプリンタ1に一行毎に出力データを送り、プリンタ1がその行の印刷を終えてから次の行の出力データを送る方式である。第2方式は、ホスト22からプリンタ1に予め一頁の全ての行を印刷するのに必要なデータを一括して送り、その一頁分のデータに基づいてプリンタ1が一頁の印刷を行う方式である。この第1方式又は第2方式により、プリンタ1内の制御系と記憶手段の容量が異なる。つぎに、第1方式及び第2方式に共通のプリンタ制御系を図1により説明する。
【0016】
CPU20には、操作パネル23、ROM24、RAM25が接続されている。操作パネル23は、用紙サイズその他の種々のパラメータを設定し、それらを表示するものである。ROM24は、インクジェットプリンタ1の制御上必要な種々のプログラム類を格納するものである。ROM24に格納される代表的なプログラムとして、印字ヘッド(記録ヘッド)3内のインクを吸引して印字ヘッド3の回復を行う吸引プログラム等がある。RAM25は、ホスト22から転送された印刷データや、インクジェットプリンタ1の制御上必要な種々のデータの一時記憶を行うものである。なおRAM25におけるバッファメモリ25aは、第1方式による場合、少なくとも一行分の出力データを記憶し、第2方式による場合、少なくとも一頁分の出力データを記憶する。
【0017】
CPU20は、LF駆動回路26、CR駆動回路27、ヘッド駆動回路28を介してLFモータ29、CRモータ12、印字ヘッド3を駆動制御する。また後述するフローによって、印刷途中のパージが行われた場合の印刷再開を自動的に行う。
【0018】
LFモータ29は、切り換え機構30を介して、紙送り機構LMのみ、又は、パージ機構32と紙送り機構LMの両方を駆動する。即ちメンテナンス処理としてのパージは紙送り手段の駆動源であるLFモータ29を利用し、その駆動力を切り換え機構30を介して伝達する構成になっている。このパージを行うパージ機構32は、吸引キャップ17を有するパージ装置18、ポンプカム19等により構成される。なお、紙送り機構LMは、プラテンローラ5、プラテンギア6、図示しないプレッシャーローラ等により構成される。
【0019】
CRモータ12は、キャリッジ機構31を駆動する。キャリッジ機構31は、キャリッジ7の他、ベルト11やそのプーリを含む。キャリッジ7の動きにより、前記の切り換え機構30の切り換えがなされる。パージ機構32、紙送り機構LM、キャリッジ機構31は、それぞれセンサを備えており、検知信号をCPU20に設けられたカウンタ群36に報知する。パージ機構32には、パージHPセンサ33が備えられている。パージHPセンサ33は、ポンプカム19が原点(基準位置)にあるときにはその旨をカウンタ群36のパージ位置カウンタに報知する。この信号はパージ機構32によるパージ動作の基準とされる。
【0020】
紙送り機構LMには、PEセンサ34が備えられている。PEセンサ34は、新たに供給される印刷用紙の先端により信号を発し、カウンタ群36のLF位置カウンタに報知する。この信号が縦方向(副走査方向)の記録位置制御の基準となる。キャリッジ機構31には、CR位置センサ35が備えられている。CR位置センサ35は、CRモータ12の駆動パルスをカウントしてキャリッジ9の位置を検知し、カウンタ群36のCR位置カウンタに報知する。この位置情報は、横方向(主走査方向)の印字位置制御の基準となる他、パージ、ワイピング、フラッシング等の各種メンテナンス制御の基準ともなる。
【0021】
以上説明した制御系を有するプリンタ1にあっては、使用者の判断によって操作パネル23上でパージを行うパージボタンが押される。すると、メンテナンス処理手段の一つであるパージ機構32を作動させるモードに入る。まずCRモータ12によるキャリッジ機構31の駆動によって、印字ヘッド3を搭載したキャリッジをパージ可能な位置に移動させる。同時に切り換え機構30が紙送り機構LM単独動作からパージ機構32と紙送り機構LMの連動へと切り換える。そして、LFモータ29の制御された駆動により、所定位置にある印字ヘッド3に対してノズル前面からインクの吸引を行うパージ処理が行われる。このとき紙送り機構LMも作動するので、用紙がセットされていると送られることになる。
【0022】
つぎに、上述したパージを行った場合の、CPU20による印字処理の手順を図2のフローチャート図に基づいて説明する。図2の右側はプリンタ1の印字処理フローを示し、同図の左側はホスト22のページ印刷処理フローを示し、両者の間の矢印が通信のタイミングを示す。以下に述べるCPU20の作動手順が、印字途中にパージが行われた場合に、用紙の先頭から印刷を再開する印字再開手段を構成している。
【0023】
先ず、ホスト22で「印刷実行」のメニューが指定され、ページ印刷処理に入ると、まず、プリンタ1に対して何ページ目の印刷であるかを示す印刷ページナンバーを転送し(S10)、続いて該当ページナンバーの印刷データを先頭行から一行ずつ転送する。具体的には、プリンタ1が一行の印字を終了する毎に、次の行の印字データを順次転送する(S11)。プリンタ1においては、印刷ページナンバーに続いて先頭行の印刷データを受け取ると、用紙を印字位置まで供給し、先頭行の印刷データを印刷する。そして、一行の印刷を終了したならば、二行目の印刷データを受け取って、二行目の印刷を実行する。そして、以下、同様にして最終行までの印刷を実行する(S13)。このS13の印刷途中において、パージが行われたかどうかを判断する(S14)。ページ印刷途中のパージが行われなかった場合(S14,NO)、そのページの印刷処理が終了する。そして、一頁の印刷が終了したならば、再び最初に戻ってS10〜S13を繰り返すことによって、所定ページ分の印刷が順次行われる。
【0024】
プリンタ1において、一頁の印刷途中にパージが行われた場合(S14,YES)、現在印刷している印刷ページナンバーがホスト22へと転送される(S15)。ホスト22において、前記の印刷ページナンバーを受信したかどうかを判断する(S16)。この印刷ページナンバーを受信すると(S16,YES)、プリンタ1へ印刷中のデータリセット(コマンドA)を転送する(S17)。プリンタ1では、前記のコマンドAを受信したかどうかを判断する(S18)。コマンドAを受信すると(S18,YES)、印字途中のデータをクリアし、印字途中の用紙を排出する(S19)。ホスト22では、S17のコマンドAの転送後にS10→S11に戻るため、もう一度印刷ページナンバーを転送し(S10)、印刷データを先頭行から再度転送する(S11)。そのため、プリンタ1ではパージが行われた印刷ページが用紙の始めから自動的に印刷されることになる(S13,S14)。
【0025】
ところで、上記実施形態においては、用紙への印字途中でパージ(メンテナンス処理)が行なわれたとき、該用紙の先頭行の印刷データから再出力するようにホスト(情報処理装置)に対して指示し、再出力された印刷データを新たな用紙に印字するようにしたものであるが、例えば、以下のような構成とすることによって、更に効率のよい印刷を行うことができる。
【0026】
すなわち、用紙の先頭から印字を再開する第1の印字再開モードのほかに、パージ(メンテナンス処理)を行う前の印字の続きから印字を再開する第2の印字再開モードにも切り替え可能として、例えば、試し印刷(ドラフト印刷)等の簡易印刷による印字途中でメンテナンス処理が行なわれた場合であって、印字品質があまり要求されない(途中に空白行や多少の印字ずれがあっても差し支えない)ときには、メンテナンス処理を行う前に第2の印字再開モードに切り替えるか、あるいは、印刷開始前にあらかじめ第2の印字再開モードに切り替えておくことによって、メンテナンス処理の終了後、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開させることができ、繰り返し部分の印字時間を短縮して印刷作業を効率よく行うことができる。
【0027】
この場合、第1の印字再開モードと第2の印字再開モードとの切り替えは、記録装置の操作パネルを操作することによって、新たな用紙の先頭から印字を再開するか、あるいは、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開するかを、切り替えるようにしてもよいし、あるいは、ホスト(情報処理装置)からの制御データ(コマンド信号)に基づいて、第1の印字再開モードと第2の印字再開モードとの切り替えを行うようにしてもよい。
【0028】
特に、ホストからの制御データに基づいて切り替えを行う場合には、これから行われる印刷の種類に応じて、すなわち、印字品質を優先する通常の印刷か、あるいは、試し印刷等の簡易印刷であるかに応じて、ホストからの制御データに基づき、通常の印刷であれば第1の印字再開モードに、試し印刷等の簡易印刷であれば第2の印字再開モードに自動的に切り替えることが可能となり、使用者が面倒な切り替え操作を行わなくとも、印刷の使用目的に応じた印字の再開を行うこができる。
【0029】
また、試し印刷等の簡易印刷であれば必ず第2の印字再開モードが設定されるようにしなければならないということはなく、例えば、簡易印刷を行う場合であっても、それなりの印字品質を持った(空白行や印字ずれのない)印刷物としてほしい場合もあるので、そのような場合には、メンテナンス処理を行う直前にでも、パネル操作等によって第1の印字再開モードに切り替え可能としてもよく、これによって、そのときどきの使用目的に応じて効率のよい印字を行うことができる。
【0030】
つぎに、プリンタの制御方式が、ホスト22からプリンタ1に予め一頁の全ての行を印刷するのに必要なデータを一括して受け取る第2方式であり、この場合のCPU20による印字処理の手順を図3乃至図5のフローチャート図に基づいて説明する。このCPU20の作動手順も、印字途中にパージが行われた場合に、用紙の先頭から印刷を再開する印字再開手段を構成している。
【0031】
図3において、まずホスト22から一頁の印刷に必要な全ての行の印刷データを受信し(S21)、ページ印刷フラグをセットする(S22)。そして、用紙を挿入し(S23)、パージフラグがセットされていない限り(S24,NO)、ページ印刷を行う。このページ印刷は、行印刷(S26)と改行(S27)を繰り返し、一頁の全行の印刷が終了するまで行われる(S25,NO)。なお、S26の行印刷において、先頭行の印刷を開始する場合、用紙がセットされていなければ、新たに用紙を挿入してから印刷が開始される。S25において、一頁の全行の印刷が終了すると(S25,YES)、ページ印刷フラグがクリアされ(S28)、一頁の印刷処理を終える。
【0032】
S24において、ページ印刷中にパージがなされ、パージフラグが確認されると(S24,YES)、印刷途中の用紙が排出され(S28)、ページ印刷ポジション(現在何行目の印刷をしていたかを示すポジションカウンタ)のリセットと、ページ印刷中に行われたパージを示すパージフラグのリセットが行われる(S30)。そして、S30からS23に戻り、用紙の最初からページの印刷が行われる。
【0033】
さらに、ページ印刷途中のパージ処理によってパージフラグがセットされるまでのフローを図4及び図5により説明する。図4は、所定のタイミングで繰り返し実行されるキー割込処理の一部を示すものであり、ここでパージ処理が指定されたかどうかがチェックされる。すなわち、使用者が操作パネルによってパージキーを押したかどうかが判断される(S41)。パージキーが押されると(S41,YES)、図5のパージ処理が行われる(S42) 。
【0034】
図5において、パージ処理は、印字ヘッド3のノズル前面からインクを強制的に吸引することによって行われる(S51)。次にこのS51の動作がページ印刷中のものかどうかをページ印刷フラグがセットされているかどうかで判断する(S52)。ページ印刷フラグがセットされていないと(S52,NO)、そのままパージ処理を終える。しかし、ページ印刷フラグがセットされていると(S52,NO)、ページ印刷中にパージが行われたことを示すパージフラグのセットを行う(S52,YES)。このパージフラグのセットの有無によって、印刷をし直すかどうかの判断を行うことは図3のS24のところで説明した通りである。
【0035】
なお、この実施形態においても、前実施形態と同様に、用紙の先頭から印字を再開する第1の印字再開モードのほかに、パージ(メンテナンス処理)を行う前の印字の続きから印字を再開する第2の印字再開モードにも切り替え可能として、例えば、試し印刷(ドラフト印刷)等の簡易印刷による印字途中でメンテナンス処理が行なわれた場合であって、印字品質があまり要求されない(途中に空白行や多少の印字ずれがあっても差し支えない)ときには、記録装置のパネル操作によって、あるいは、ホスト(情報処理装置)からの制御データ(コマンド信号)に基づいて、第2の印字再開モードに切り替え可能としてもよいことは勿論である。
【0036】
以上説明したように、使用者が操作パネルを操作して印刷途中でパージ処理を行った場合には、使用者にとって特別な操作が要求されることなく、自動的に用紙の最初から印刷を再開することができる。
【0037】
つぎに、上述したパージ処理を紙送り機構を利用して行うものの具体的装置例を図6乃至図11により説明する。まず、インクジェット記録装置の全体構成を図6により説明する。
【0038】
図6において、インクジェット記録装置1の本体フレーム2には、複数のノズルを有する印字ヘッド(記録ヘッド)3やメンテナンス処理手段(回復機構)RM、紙送り機構LMを有するサブフレーム4とが内蔵されている。本体フレーム2の内部後方には円筒形状のプラテンローラ5が配置されている。プラテンローラ5は、給紙カセットまたは手差し給紙部から供給された印刷用紙Pを印字ヘッド3に対面させながら搬送するものであり、紙送り機構LMの一部をなす。プラテンローラ5は、この上側に設けられた図示しないプレッシャーローラで印刷用紙Pが密着されると共に、LFモータ29(図8参照)により、プラテンギヤ6を介して駆動されて印刷用紙Pを副走査させる。
【0039】
プラテンローラ5の前方には、キャリッジ7が設けられている。キャリッジ7は、インクジェット式の印字ヘッド3が搭載されるとともに、同印字ヘッド3に供給するためのインク(ブラックB,イエローY,シアンC,マゼンダMのインク)を収容した複数のインク収容器8A〜8Dをそれぞれ着脱可能に搭載しており、プラテンローラ5と平行に設けられたキャリッジ軸9に沿って移動可能にされている。これにより、印字ヘッド3はプラテンローラ5に沿って主走査される。
【0040】
サブフレーム4の左側裏面には、キャリッジ7を駆動するCRモータ10が配置されている。CRモータ10は、ベルト11を介してキャリッジ7を駆動するものであり、ステップモータまたはDCモータを使用する。更に、サブフレーム4の左側裏面には、フラッシュ用インク吸収体12が設けらている。フラッシュ用インク吸収体12は、キャリッジ7の駆動で主走査される印字ヘッド3の上記ノズルに対面して、フラッシュ処理時に各ノズルから噴出されるインクを吸収するものである。
【0041】
プラテンローラ5の右側には、印字ヘッド3の回復機構RMが配置されている。インクジェット式の印字ヘッド3は、使用中に内部に気泡が発生したり、吐出面上にインクの液滴が付着したり等の原因によりインクの噴出不良を起こすので、これを良好な噴出状態に回復するためである。回復機構RMとしては、印字ヘッド3内のインクを吸引するパージ装置18や印字ヘッド3のノズル面をワイピングするワイピング装置15等が設けられている。なお、符号13は印字ヘッド3が使用されない場合のキャップ装置である。
【0042】
パージ装置18の先端には吸引キャップ17が設けられている。パージ装置18は、印字ヘッド3が吸引キャップ17に覆われているときに公知のポンプ14により負圧を発生させ印字ヘッド3の所定ノズル内部の不良インクを吸引して回復させるものである。パージ装置18とともにパージ機構32を構成するポンプ14は、ポンプカム19を介してLFモータ29(図8)により駆動される。
【0043】
図7に示すように、吸引キャップ17は、キャップホルダ17a内に進退自在に保持されている。キャップホルダ17aやポンプ14は、サブフレーム4に載せられたハウジング16に支持されている。
【0044】
次に、LFモータ29の駆動の伝達先をパージ機構32と紙送り機構LMの連動に切り換える切り換え機構30を説明する。図8に切り換え機構30を形成するギヤ群等を示す。切り換え機構30は、軸方向(矢印A)に移動可能な駆動力分配ギヤ41と、駆動力分配ギヤ41を軸方向に移動させるアイドルキッカ43と、駆動力分配ギヤ41を矢印A左向きに付勢する圧縮バネ45とを有している。尚、図8は理解容易のため各部分を分離して描いているが、実際には各部分は図中左右方向(矢印Aと平行な方向)にもっと接近して配置されている。
【0045】
駆動力分配ギヤ41は、LFモータ29と同軸のモータギヤ46との噛み歯41a、プラテンローラ6と同軸のプラテンギヤ6との噛み歯41b、ポンプカム19と一体的に回転するパージギヤ48との噛み歯41c、の3つの噛み歯を有している。噛み歯41aとモータギヤ46及び噛み歯41bとプラテンギヤ6は常時噛み合っている。噛み歯41cとパージギヤ48については、駆動力分配ギヤ41の軸方向の移動により噛み合ったり噛み合わなかったりする。
【0046】
アイドルキッカ43は、リンク機構によってキック位置(図9の(a))とオフ位置(図9の(b))とに自己保持状態で切換可能になっている。その構造を以下に説明する。このリンク機構は、第1キッカ軸52、第2キッカ軸52a、リンク53等からなっている。第1キッカ軸52は中央が凹状に曲げられおり、その一端側にアイドルキッカ43が設けられ、その他端側に第1キック部50aとアーム部52cが設けられている。第2キッカ軸52aの他端側には第1キック部50aとアーム部52dが設けられている。アーム部52cとアーム部52dとの間にリンク53を連結することにより、第1キッカ軸52と第2キッカ軸52aは連動して回動する。第1キッカ軸52の凹状部には引きバネ54が掛けられており、図10又は図11の姿勢を自己保持する。なお符号55はキャリッジ7の下方に突出したリブ55であり、このリブ55が第1キック部50a又は第2キック部50bを蹴って、図10又は図11の姿勢に切り換わる。
【0047】
図10及び図11において、引きバネ54の中心線が、第1キッカ軸52の回動中心O1と引きバネ54の固定点O2とを通る中立線の左右のいずれかに位置することにより、図10又は図11の姿勢が自己保持される。図10の姿勢では、第1キック部50aは立ち上がっており、第2キック部50bは倒れている。図11の姿勢では、第1キック部50aは倒れており、第2キック部50bは立ち上がっている。
【0048】
パージ処理を行う場合、キャリッジ7がオーバーラン(印字領域より更に外側に移動)しようとすると、図10の状態になる。すると、リブ55が立ち上がり状態の第1キック部50aに当たり、第1キック部50aを倒す。すると、図9に示されるアイドルキッカ43が実線位置から二点鎖線位置に切り換わり、分配ギア41が圧縮バネ45で押されて図面右側に移動し、パージギヤ48と噛み歯41cとが噛み合う図9(b)の状態になり、ポンプカム19がLFモータ29の回転に伴って駆動可能な状態となる。なお、プラテンギヤ6と噛み歯41bとは噛み合ったままであるため、紙送りのためのプラテンローラ5も引き続き回転可能な状態となる。
【0049】
そして、キャリッジ7がパージ可能な位置(リブ55が第1キック部50aと第2キック部50bの間にある位置)に移動し、LFモータ29の制御された回転によってパージ処理が行われる。パージ処理が終わると、キャリッジ7が印字可能な位置に戻ろうとするが、この状態が図11に示される。キャリッジのリブ55が立ち上がり状態の第2キック部50bに当たり、第2キック部50bを倒す。すると、図9に示されるアイドルキッカ43が二点鎖線位置から実線位置に切り換わり、分配ギア41が圧縮バネ45を押し込んで図面左側に移動し、パージギヤ48と噛み歯41cとが離れる図9(a)の状態になり、パージ機構32とLFモータ29とが切り離される。
【0050】
さらに上述した機構によるキャリッジ7の移動やパージ機構32の動作を図12により説明する。図12の(a−1)において、K,Y,C,Mの4個のノズル部3a〜3dを有する印字ヘッド3の右端のノズル部3d前面がパージされるものとする。キャリッジ7は図示のノズル位置になるまで移動して停止する。その後LFモータ29の制御された回転によって、吸引キャップ17が前進してノズル前面を覆い、ポンプ14(図6参照)によりインクの吸引が行われる。図12の(a−2)において、吸引キャップ17が後退し、代わりにワイピング装置15が前進する。そして、キャリッジが図面左側に移動すると、ワイピング装置15によるノズル前面の清掃が行われる。4つのノズル部3a〜3dの全部のパージを行う場合には、以上の動作を繰り返し、キャリッジ7がピッチLだけ順番に左から右へと移動すればよい。ノズルの吸引が終わると、キャリッジ7即ち印字ヘッド3が図面左側へと移動する。この移動の際に、リブ55が立ち上がり状態の第2キック部50bを蹴り、アイドルキッカ43が分配ギアの噛み歯41cを図面左側に押し込んで、パージ機構32とLFモータ29の駆動とを切り離すことは、図9乃至図11で説明した通りである。なお、符号13は印字ヘッド3を使用しない場合のキャップであり、キャリッジ7が図10に示す位置から図11に示す位置に移動するとき、キャリッジの一部が突出片13aを押すと、キャップ13の全体がノズルにかぶさる構造になっている。
【0051】
このように、パージ機構32の作動と紙送り機構LMとの作動とが連動しているため、印刷途中にパージ処理が行われると、印刷されないまま用紙が送られることになる。しかし、図2乃至図5のフローにより、プリンタ1が有する機能により自動的に用紙の始めから印刷を再開することができる。
【0052】
なお、図8および図9に示す切り換え機構30は、LFモータ29の回転によってパージ処理を行う場合であっても、依然として駆動力配分ギア41の噛み歯41bがプラテンギア6に噛み合ったままであるため、パージ処理に伴って用紙が紙送りされるが、これに限定されることなく、例えば、図9(b)に示す状態、すなわち、パージ処理を行う状態においては、駆動力分配ギア41の噛み歯41bがプラテンギア6から外れるようにしてもよい。これは、特に、前述したような第1の印字再開モードと第2の印字再開モードとを切り替え可能とした場合に好適であり、例えば、試し印刷(ドラフト印刷)等の簡易印刷による印字途中でパージ(メンテナンス処理)が行なわれたとき、その後、第2の印字再開モードによって、パージ処理を行う前の印字の続きから印字を再開した場合の印字ずれ量を少なくできる。すなわち、パージ処理を連続して行った場合であっても、用紙に大きな空白行が発生することはなくなる。
【0053】
【発明の効果】
請求項1の発明は、以上のように、試し印刷等の簡易印刷による用紙への印字途中で、メンテナンス処理を行った場合であって、用紙の先頭から印字を再開する必要がないときには、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開することができ、繰り返し部分の印字時間を短縮して印刷作業を効率良く行うことができる。一方、簡易印刷以外の、印字品質を優先する通常印刷の場合には、新たな用紙の先頭から印字を再開することができ、パージ等のメンテナンス処理後に用紙の途中から印字が再開されることを防止することができ、使用者にとって面倒な操作が不要になるという効果を奏する。
【0054】
請求項2の発明は、以上のように、インクジェット記録装置自体が、バッファメモリ等の出力データ記憶手段に記憶している一頁分の出力データを有効に利用して、インクジェット記録装置単独でメンテナンス処理後の印字を用紙の先頭から自動的に再開することができる。従って、パージ等のメンテナンス処理後に用紙の途中から印字が再開されることを防止することができ、使用者にとって面倒な操作が不要になる。さらに、出力データの再送ができない装置例えばメモリ機能のないファクシミリ装置であっても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置の制御系の全体構成を示すブロック図である。
【図2】一行ずつデータを転送する場合のページ印刷処理を示すフローチャート図である。
【図3】一頁分のデータを一括して転送する場合のページ印刷処理を示すフローチャート図である。
【図4】図3のページ印刷処理に付属するキー割り込み処理を示すフローチャート図である。
【図5】パージ処理の詳細を示すフローチャート図である。
【図6】紙送り機構やメンテナンス機構を示す斜視図である。
【図7】メンテナンス機構の一部を切り欠いて示す側面図である。
【図8】切り換え機構を示す分解斜視図である。
【図9】メンテナンス機構の駆動系統の切り換え状態を示す図である。
【図10】切り換え機構の作動を示す図である。
【図11】切り換え機構の作動を示す図である。
【図12】メンテナンス機構の作動を示す図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)
3 印字ヘッド(記録ヘッド)
8 ノズル
20 CPU(印字再開手段)
22 ホスト(情報処理装置)
23 操作パネル
24 ROM
25 RAM
29 LFモータ(紙送り手段の駆動源)
12 CRモータ
30 切り換え機構
31 キャリッジ機構
32 パージ機構
LM 紙送り機構
RM 回復機構(メンテナンス処理手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク不吐出回復等のメンテナンス処理を行うインクジェット記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット記録装置は、インク液滴を吐出し、ドット記録を行うが、インクの不吐出あるいは吐出不良が生じることがある。
【0003】
この不吐出あるいは吐出不良は、インク液滴を吐出するノズルの先端にゴミが付着したり、ノズルの先端から空気を吸い込んだり、ノズル内でインクが乾燥したりする等の各種の理由によって生じる。
【0004】
そこで、このような不吐出を回復するメンテナンス処理手段を有するインクジェット記録装置が提案されている。例えば、キャリッジがメンテナンス処理を行う位置にくることによって、切り換え手段を作動させて紙送りモータの駆動力をヘッド内のインクを吸引する吸引ポンプに伝達可能としたものが提案されており、紙送りモータの駆動力によって吸引ポンプを作動させることによりメンテナンスを実行可能としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したインクジェット記録装置では、メンテナンス処理の駆動を紙送りモータ等からなる紙送り手段の駆動力を利用しているため、メンテナンス処理時に紙送りモータ等が回転する。このとき、用紙が紙送り手段にセットされていると、用紙を送る動作も同時に行われることになる。
【0006】
通常このメンテナンス処理は、用紙が紙送り手段にセットされていない場合に使用者が必要に応じて操作パネルを操作することによって行われる。しかし、使用者がヘッドの印字状態をみてインク不吐出等の異常を発見したため、用紙への印字途中であるにもかかわらず、メンテナンス処理を行わなければならない場合がある。この場合、印字が中断され、メンテナンス処理のための紙送り手段の作動によって、空白のまま用紙が送られてしまう。そのため、メンテナンス処理が終了して印字を再開したとしても、用紙の途中から印字が始まってしまう。そこで、使用者の手動操作によって、途中に空白が生じた用紙を排出し、新たな用紙に所定のページを指定して印字を再開しなければならない。このように、印字途中にメンテナンス処理を行うと、印字を再開するために使用者による面倒な操作が必要になるという問題点があった。
【0007】
また、例えば、特開昭62−263058号公報に示されるように、紙送りモータとその紙送りモータによって駆動される用紙送り部材(プラテン)との間に接離機構を介在させ、メンテナンス処理時には、紙送りモータと用紙送り部材(プラテン)との連結を解除することにより、メンテナンス処理手段のみを駆動させるようにしたものも提案されている。
【0008】
これによれば、メンテナンス処理時に、用紙が紙送り手段にセットされていたとしても、紙送りモータの駆動に伴って用紙が送られることはない。しかしながら、メンテナンス処理の終了後、再び、紙送りモータと用紙送り部材(プラテン)とを連結する際に、元の連結状態と全く同じ状態に復帰させることはむずかしく、どうしても多少の位置ずれが発生しています。従って、この場合においても、印字途中にメンテナンス処理を実行したときには、上記と同様に面倒な操作が必要となる問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、印字途中に、紙送り手段の駆動力を利用して印字ヘッドのメンテナンス処理を行った場合であっても、メンテナンス処理が終了した後には自動的に用紙の先頭から印字を再開することができるインクジェット記録装置を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、インクを噴出する複数のノズルを有した記録ヘッドと、用紙を搬送する紙送り手段と、その紙送り手段の駆動力を利用して、上記記録ヘッドのメンテナンス処理を行うメンテナンス処理手段とを備え、情報処理装置からの出力データを用紙に印字し、前記メンテナンス処理手段の動作時には、前記紙送り手段が同時に動作するインクジェット記録装置において、情報処理装置からの制御データに基づいて、試し印刷等の簡易印刷による用紙への印字途中でメンテナンス処理を行ったときには、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開し、前記簡易印刷以外の通常印刷による用紙への印字途中でメンテナンス処理を行ったときには、新たな用紙に印字を再開する印字再開手段とを有していることを特徴とするインクジェット記録装置である。従って、例えば、試し印刷等の簡易印刷による用紙への印字途中で、メンテナンス処理を行った場合であって、用紙の先頭から印字を再開する必要がないときには、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開することができ、繰り返し部分の印字時間を短縮して印刷作業を効率良く行うことができる。一方、簡易印刷以外の、印字品質を優先する通常印刷の場合には、新たな用紙の先頭から印字を再開することができる。また、使用者が面倒な切り替え操作を行わなくとも、印刷の使用目的に応じた印字の再開を行うことができる。
【0011】
請求項2の発明は、情報処理装置からの出力データを用紙に印字するインクジェット記録装置であって、インクを噴出する複数のノズルを有した記録ヘッドと、上記用紙を搬送する紙送り手段と、上記紙送り手段の駆動力を利用して、上記記録ヘッドのメンテナンス処理を行うメンテナンス処理手段と、上記用紙の1頁分の出力データを記憶可能な出力データ記憶手段と、上記用紙への印字途中でメンテナンス処理を行ったときに、上記出力データ記憶手段の1頁分の出力データを新たな用紙に印字する印字再開手段とを有していることを特徴とするインクジェット記録装置である。上記構成により、インクジェット記録装置は、バッファメモリ等の出力データ記憶手段に記憶している一頁分の出力データを有効に利用して、インクジェット記録装置単独でメンテナンス処理後の印字を用紙の先頭から自動的に再開することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のインクジェット記録装置を、情報処理装置の一つであるパソコンに接続して使用するインクジェットプリンタとして具体化したものを実施形態として図面を参照しつつ説明する。またメンテナンス処理としてノズル前面からインクを吸引するパージ処理の場合を例にして説明する。
【0013】
まず、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の制御系を図1のブロック図を参照しつつ説明する。この制御系は、公知の演算処理装置であるCPU20を中心に構成される。CPU20は、インターフェース21を介してホスト(情報処理装置)22に接続される。ホスト22の典型例はパソコンである。即ちインクジェットプリンタ1は、ホスト22からの印刷指令を受け、その指令に従い種々の印刷を実行するものである。
【0014】
ホスト22の機能構成として典型的なものにウインドウシステムがある。このウインドウシステム上で、各種のアプリケーション(A)(B)・・・(n)が実行可能に設けられ、また、フォントドライバ、CRTドライバ、キーボードドライバ、マウスドライバ、プリンタドライバ等が組み込まれている。各種のアプリケーションプログラムの実行中に、プリンタ1を使用して、カラー画像等を印字する場合には、このプリンタドライバによってプリンタ1の印字機能に適合した画像に関する出力データが作成される。カラー画像であると、シアン、マゼンダ、イエロー及び黒の4色の各ドットイメージデータが作成されたのち、通信用のインターフェース21を介してプリンタ1に出力される。
【0015】
このプリンタドライバによるプリンタの制御方式を大別すると次の二種類がある。第1方式は、ホスト22からプリンタ1に一行毎に出力データを送り、プリンタ1がその行の印刷を終えてから次の行の出力データを送る方式である。第2方式は、ホスト22からプリンタ1に予め一頁の全ての行を印刷するのに必要なデータを一括して送り、その一頁分のデータに基づいてプリンタ1が一頁の印刷を行う方式である。この第1方式又は第2方式により、プリンタ1内の制御系と記憶手段の容量が異なる。つぎに、第1方式及び第2方式に共通のプリンタ制御系を図1により説明する。
【0016】
CPU20には、操作パネル23、ROM24、RAM25が接続されている。操作パネル23は、用紙サイズその他の種々のパラメータを設定し、それらを表示するものである。ROM24は、インクジェットプリンタ1の制御上必要な種々のプログラム類を格納するものである。ROM24に格納される代表的なプログラムとして、印字ヘッド(記録ヘッド)3内のインクを吸引して印字ヘッド3の回復を行う吸引プログラム等がある。RAM25は、ホスト22から転送された印刷データや、インクジェットプリンタ1の制御上必要な種々のデータの一時記憶を行うものである。なおRAM25におけるバッファメモリ25aは、第1方式による場合、少なくとも一行分の出力データを記憶し、第2方式による場合、少なくとも一頁分の出力データを記憶する。
【0017】
CPU20は、LF駆動回路26、CR駆動回路27、ヘッド駆動回路28を介してLFモータ29、CRモータ12、印字ヘッド3を駆動制御する。また後述するフローによって、印刷途中のパージが行われた場合の印刷再開を自動的に行う。
【0018】
LFモータ29は、切り換え機構30を介して、紙送り機構LMのみ、又は、パージ機構32と紙送り機構LMの両方を駆動する。即ちメンテナンス処理としてのパージは紙送り手段の駆動源であるLFモータ29を利用し、その駆動力を切り換え機構30を介して伝達する構成になっている。このパージを行うパージ機構32は、吸引キャップ17を有するパージ装置18、ポンプカム19等により構成される。なお、紙送り機構LMは、プラテンローラ5、プラテンギア6、図示しないプレッシャーローラ等により構成される。
【0019】
CRモータ12は、キャリッジ機構31を駆動する。キャリッジ機構31は、キャリッジ7の他、ベルト11やそのプーリを含む。キャリッジ7の動きにより、前記の切り換え機構30の切り換えがなされる。パージ機構32、紙送り機構LM、キャリッジ機構31は、それぞれセンサを備えており、検知信号をCPU20に設けられたカウンタ群36に報知する。パージ機構32には、パージHPセンサ33が備えられている。パージHPセンサ33は、ポンプカム19が原点(基準位置)にあるときにはその旨をカウンタ群36のパージ位置カウンタに報知する。この信号はパージ機構32によるパージ動作の基準とされる。
【0020】
紙送り機構LMには、PEセンサ34が備えられている。PEセンサ34は、新たに供給される印刷用紙の先端により信号を発し、カウンタ群36のLF位置カウンタに報知する。この信号が縦方向(副走査方向)の記録位置制御の基準となる。キャリッジ機構31には、CR位置センサ35が備えられている。CR位置センサ35は、CRモータ12の駆動パルスをカウントしてキャリッジ9の位置を検知し、カウンタ群36のCR位置カウンタに報知する。この位置情報は、横方向(主走査方向)の印字位置制御の基準となる他、パージ、ワイピング、フラッシング等の各種メンテナンス制御の基準ともなる。
【0021】
以上説明した制御系を有するプリンタ1にあっては、使用者の判断によって操作パネル23上でパージを行うパージボタンが押される。すると、メンテナンス処理手段の一つであるパージ機構32を作動させるモードに入る。まずCRモータ12によるキャリッジ機構31の駆動によって、印字ヘッド3を搭載したキャリッジをパージ可能な位置に移動させる。同時に切り換え機構30が紙送り機構LM単独動作からパージ機構32と紙送り機構LMの連動へと切り換える。そして、LFモータ29の制御された駆動により、所定位置にある印字ヘッド3に対してノズル前面からインクの吸引を行うパージ処理が行われる。このとき紙送り機構LMも作動するので、用紙がセットされていると送られることになる。
【0022】
つぎに、上述したパージを行った場合の、CPU20による印字処理の手順を図2のフローチャート図に基づいて説明する。図2の右側はプリンタ1の印字処理フローを示し、同図の左側はホスト22のページ印刷処理フローを示し、両者の間の矢印が通信のタイミングを示す。以下に述べるCPU20の作動手順が、印字途中にパージが行われた場合に、用紙の先頭から印刷を再開する印字再開手段を構成している。
【0023】
先ず、ホスト22で「印刷実行」のメニューが指定され、ページ印刷処理に入ると、まず、プリンタ1に対して何ページ目の印刷であるかを示す印刷ページナンバーを転送し(S10)、続いて該当ページナンバーの印刷データを先頭行から一行ずつ転送する。具体的には、プリンタ1が一行の印字を終了する毎に、次の行の印字データを順次転送する(S11)。プリンタ1においては、印刷ページナンバーに続いて先頭行の印刷データを受け取ると、用紙を印字位置まで供給し、先頭行の印刷データを印刷する。そして、一行の印刷を終了したならば、二行目の印刷データを受け取って、二行目の印刷を実行する。そして、以下、同様にして最終行までの印刷を実行する(S13)。このS13の印刷途中において、パージが行われたかどうかを判断する(S14)。ページ印刷途中のパージが行われなかった場合(S14,NO)、そのページの印刷処理が終了する。そして、一頁の印刷が終了したならば、再び最初に戻ってS10〜S13を繰り返すことによって、所定ページ分の印刷が順次行われる。
【0024】
プリンタ1において、一頁の印刷途中にパージが行われた場合(S14,YES)、現在印刷している印刷ページナンバーがホスト22へと転送される(S15)。ホスト22において、前記の印刷ページナンバーを受信したかどうかを判断する(S16)。この印刷ページナンバーを受信すると(S16,YES)、プリンタ1へ印刷中のデータリセット(コマンドA)を転送する(S17)。プリンタ1では、前記のコマンドAを受信したかどうかを判断する(S18)。コマンドAを受信すると(S18,YES)、印字途中のデータをクリアし、印字途中の用紙を排出する(S19)。ホスト22では、S17のコマンドAの転送後にS10→S11に戻るため、もう一度印刷ページナンバーを転送し(S10)、印刷データを先頭行から再度転送する(S11)。そのため、プリンタ1ではパージが行われた印刷ページが用紙の始めから自動的に印刷されることになる(S13,S14)。
【0025】
ところで、上記実施形態においては、用紙への印字途中でパージ(メンテナンス処理)が行なわれたとき、該用紙の先頭行の印刷データから再出力するようにホスト(情報処理装置)に対して指示し、再出力された印刷データを新たな用紙に印字するようにしたものであるが、例えば、以下のような構成とすることによって、更に効率のよい印刷を行うことができる。
【0026】
すなわち、用紙の先頭から印字を再開する第1の印字再開モードのほかに、パージ(メンテナンス処理)を行う前の印字の続きから印字を再開する第2の印字再開モードにも切り替え可能として、例えば、試し印刷(ドラフト印刷)等の簡易印刷による印字途中でメンテナンス処理が行なわれた場合であって、印字品質があまり要求されない(途中に空白行や多少の印字ずれがあっても差し支えない)ときには、メンテナンス処理を行う前に第2の印字再開モードに切り替えるか、あるいは、印刷開始前にあらかじめ第2の印字再開モードに切り替えておくことによって、メンテナンス処理の終了後、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開させることができ、繰り返し部分の印字時間を短縮して印刷作業を効率よく行うことができる。
【0027】
この場合、第1の印字再開モードと第2の印字再開モードとの切り替えは、記録装置の操作パネルを操作することによって、新たな用紙の先頭から印字を再開するか、あるいは、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開するかを、切り替えるようにしてもよいし、あるいは、ホスト(情報処理装置)からの制御データ(コマンド信号)に基づいて、第1の印字再開モードと第2の印字再開モードとの切り替えを行うようにしてもよい。
【0028】
特に、ホストからの制御データに基づいて切り替えを行う場合には、これから行われる印刷の種類に応じて、すなわち、印字品質を優先する通常の印刷か、あるいは、試し印刷等の簡易印刷であるかに応じて、ホストからの制御データに基づき、通常の印刷であれば第1の印字再開モードに、試し印刷等の簡易印刷であれば第2の印字再開モードに自動的に切り替えることが可能となり、使用者が面倒な切り替え操作を行わなくとも、印刷の使用目的に応じた印字の再開を行うこができる。
【0029】
また、試し印刷等の簡易印刷であれば必ず第2の印字再開モードが設定されるようにしなければならないということはなく、例えば、簡易印刷を行う場合であっても、それなりの印字品質を持った(空白行や印字ずれのない)印刷物としてほしい場合もあるので、そのような場合には、メンテナンス処理を行う直前にでも、パネル操作等によって第1の印字再開モードに切り替え可能としてもよく、これによって、そのときどきの使用目的に応じて効率のよい印字を行うことができる。
【0030】
つぎに、プリンタの制御方式が、ホスト22からプリンタ1に予め一頁の全ての行を印刷するのに必要なデータを一括して受け取る第2方式であり、この場合のCPU20による印字処理の手順を図3乃至図5のフローチャート図に基づいて説明する。このCPU20の作動手順も、印字途中にパージが行われた場合に、用紙の先頭から印刷を再開する印字再開手段を構成している。
【0031】
図3において、まずホスト22から一頁の印刷に必要な全ての行の印刷データを受信し(S21)、ページ印刷フラグをセットする(S22)。そして、用紙を挿入し(S23)、パージフラグがセットされていない限り(S24,NO)、ページ印刷を行う。このページ印刷は、行印刷(S26)と改行(S27)を繰り返し、一頁の全行の印刷が終了するまで行われる(S25,NO)。なお、S26の行印刷において、先頭行の印刷を開始する場合、用紙がセットされていなければ、新たに用紙を挿入してから印刷が開始される。S25において、一頁の全行の印刷が終了すると(S25,YES)、ページ印刷フラグがクリアされ(S28)、一頁の印刷処理を終える。
【0032】
S24において、ページ印刷中にパージがなされ、パージフラグが確認されると(S24,YES)、印刷途中の用紙が排出され(S28)、ページ印刷ポジション(現在何行目の印刷をしていたかを示すポジションカウンタ)のリセットと、ページ印刷中に行われたパージを示すパージフラグのリセットが行われる(S30)。そして、S30からS23に戻り、用紙の最初からページの印刷が行われる。
【0033】
さらに、ページ印刷途中のパージ処理によってパージフラグがセットされるまでのフローを図4及び図5により説明する。図4は、所定のタイミングで繰り返し実行されるキー割込処理の一部を示すものであり、ここでパージ処理が指定されたかどうかがチェックされる。すなわち、使用者が操作パネルによってパージキーを押したかどうかが判断される(S41)。パージキーが押されると(S41,YES)、図5のパージ処理が行われる(S42) 。
【0034】
図5において、パージ処理は、印字ヘッド3のノズル前面からインクを強制的に吸引することによって行われる(S51)。次にこのS51の動作がページ印刷中のものかどうかをページ印刷フラグがセットされているかどうかで判断する(S52)。ページ印刷フラグがセットされていないと(S52,NO)、そのままパージ処理を終える。しかし、ページ印刷フラグがセットされていると(S52,NO)、ページ印刷中にパージが行われたことを示すパージフラグのセットを行う(S52,YES)。このパージフラグのセットの有無によって、印刷をし直すかどうかの判断を行うことは図3のS24のところで説明した通りである。
【0035】
なお、この実施形態においても、前実施形態と同様に、用紙の先頭から印字を再開する第1の印字再開モードのほかに、パージ(メンテナンス処理)を行う前の印字の続きから印字を再開する第2の印字再開モードにも切り替え可能として、例えば、試し印刷(ドラフト印刷)等の簡易印刷による印字途中でメンテナンス処理が行なわれた場合であって、印字品質があまり要求されない(途中に空白行や多少の印字ずれがあっても差し支えない)ときには、記録装置のパネル操作によって、あるいは、ホスト(情報処理装置)からの制御データ(コマンド信号)に基づいて、第2の印字再開モードに切り替え可能としてもよいことは勿論である。
【0036】
以上説明したように、使用者が操作パネルを操作して印刷途中でパージ処理を行った場合には、使用者にとって特別な操作が要求されることなく、自動的に用紙の最初から印刷を再開することができる。
【0037】
つぎに、上述したパージ処理を紙送り機構を利用して行うものの具体的装置例を図6乃至図11により説明する。まず、インクジェット記録装置の全体構成を図6により説明する。
【0038】
図6において、インクジェット記録装置1の本体フレーム2には、複数のノズルを有する印字ヘッド(記録ヘッド)3やメンテナンス処理手段(回復機構)RM、紙送り機構LMを有するサブフレーム4とが内蔵されている。本体フレーム2の内部後方には円筒形状のプラテンローラ5が配置されている。プラテンローラ5は、給紙カセットまたは手差し給紙部から供給された印刷用紙Pを印字ヘッド3に対面させながら搬送するものであり、紙送り機構LMの一部をなす。プラテンローラ5は、この上側に設けられた図示しないプレッシャーローラで印刷用紙Pが密着されると共に、LFモータ29(図8参照)により、プラテンギヤ6を介して駆動されて印刷用紙Pを副走査させる。
【0039】
プラテンローラ5の前方には、キャリッジ7が設けられている。キャリッジ7は、インクジェット式の印字ヘッド3が搭載されるとともに、同印字ヘッド3に供給するためのインク(ブラックB,イエローY,シアンC,マゼンダMのインク)を収容した複数のインク収容器8A〜8Dをそれぞれ着脱可能に搭載しており、プラテンローラ5と平行に設けられたキャリッジ軸9に沿って移動可能にされている。これにより、印字ヘッド3はプラテンローラ5に沿って主走査される。
【0040】
サブフレーム4の左側裏面には、キャリッジ7を駆動するCRモータ10が配置されている。CRモータ10は、ベルト11を介してキャリッジ7を駆動するものであり、ステップモータまたはDCモータを使用する。更に、サブフレーム4の左側裏面には、フラッシュ用インク吸収体12が設けらている。フラッシュ用インク吸収体12は、キャリッジ7の駆動で主走査される印字ヘッド3の上記ノズルに対面して、フラッシュ処理時に各ノズルから噴出されるインクを吸収するものである。
【0041】
プラテンローラ5の右側には、印字ヘッド3の回復機構RMが配置されている。インクジェット式の印字ヘッド3は、使用中に内部に気泡が発生したり、吐出面上にインクの液滴が付着したり等の原因によりインクの噴出不良を起こすので、これを良好な噴出状態に回復するためである。回復機構RMとしては、印字ヘッド3内のインクを吸引するパージ装置18や印字ヘッド3のノズル面をワイピングするワイピング装置15等が設けられている。なお、符号13は印字ヘッド3が使用されない場合のキャップ装置である。
【0042】
パージ装置18の先端には吸引キャップ17が設けられている。パージ装置18は、印字ヘッド3が吸引キャップ17に覆われているときに公知のポンプ14により負圧を発生させ印字ヘッド3の所定ノズル内部の不良インクを吸引して回復させるものである。パージ装置18とともにパージ機構32を構成するポンプ14は、ポンプカム19を介してLFモータ29(図8)により駆動される。
【0043】
図7に示すように、吸引キャップ17は、キャップホルダ17a内に進退自在に保持されている。キャップホルダ17aやポンプ14は、サブフレーム4に載せられたハウジング16に支持されている。
【0044】
次に、LFモータ29の駆動の伝達先をパージ機構32と紙送り機構LMの連動に切り換える切り換え機構30を説明する。図8に切り換え機構30を形成するギヤ群等を示す。切り換え機構30は、軸方向(矢印A)に移動可能な駆動力分配ギヤ41と、駆動力分配ギヤ41を軸方向に移動させるアイドルキッカ43と、駆動力分配ギヤ41を矢印A左向きに付勢する圧縮バネ45とを有している。尚、図8は理解容易のため各部分を分離して描いているが、実際には各部分は図中左右方向(矢印Aと平行な方向)にもっと接近して配置されている。
【0045】
駆動力分配ギヤ41は、LFモータ29と同軸のモータギヤ46との噛み歯41a、プラテンローラ6と同軸のプラテンギヤ6との噛み歯41b、ポンプカム19と一体的に回転するパージギヤ48との噛み歯41c、の3つの噛み歯を有している。噛み歯41aとモータギヤ46及び噛み歯41bとプラテンギヤ6は常時噛み合っている。噛み歯41cとパージギヤ48については、駆動力分配ギヤ41の軸方向の移動により噛み合ったり噛み合わなかったりする。
【0046】
アイドルキッカ43は、リンク機構によってキック位置(図9の(a))とオフ位置(図9の(b))とに自己保持状態で切換可能になっている。その構造を以下に説明する。このリンク機構は、第1キッカ軸52、第2キッカ軸52a、リンク53等からなっている。第1キッカ軸52は中央が凹状に曲げられおり、その一端側にアイドルキッカ43が設けられ、その他端側に第1キック部50aとアーム部52cが設けられている。第2キッカ軸52aの他端側には第1キック部50aとアーム部52dが設けられている。アーム部52cとアーム部52dとの間にリンク53を連結することにより、第1キッカ軸52と第2キッカ軸52aは連動して回動する。第1キッカ軸52の凹状部には引きバネ54が掛けられており、図10又は図11の姿勢を自己保持する。なお符号55はキャリッジ7の下方に突出したリブ55であり、このリブ55が第1キック部50a又は第2キック部50bを蹴って、図10又は図11の姿勢に切り換わる。
【0047】
図10及び図11において、引きバネ54の中心線が、第1キッカ軸52の回動中心O1と引きバネ54の固定点O2とを通る中立線の左右のいずれかに位置することにより、図10又は図11の姿勢が自己保持される。図10の姿勢では、第1キック部50aは立ち上がっており、第2キック部50bは倒れている。図11の姿勢では、第1キック部50aは倒れており、第2キック部50bは立ち上がっている。
【0048】
パージ処理を行う場合、キャリッジ7がオーバーラン(印字領域より更に外側に移動)しようとすると、図10の状態になる。すると、リブ55が立ち上がり状態の第1キック部50aに当たり、第1キック部50aを倒す。すると、図9に示されるアイドルキッカ43が実線位置から二点鎖線位置に切り換わり、分配ギア41が圧縮バネ45で押されて図面右側に移動し、パージギヤ48と噛み歯41cとが噛み合う図9(b)の状態になり、ポンプカム19がLFモータ29の回転に伴って駆動可能な状態となる。なお、プラテンギヤ6と噛み歯41bとは噛み合ったままであるため、紙送りのためのプラテンローラ5も引き続き回転可能な状態となる。
【0049】
そして、キャリッジ7がパージ可能な位置(リブ55が第1キック部50aと第2キック部50bの間にある位置)に移動し、LFモータ29の制御された回転によってパージ処理が行われる。パージ処理が終わると、キャリッジ7が印字可能な位置に戻ろうとするが、この状態が図11に示される。キャリッジのリブ55が立ち上がり状態の第2キック部50bに当たり、第2キック部50bを倒す。すると、図9に示されるアイドルキッカ43が二点鎖線位置から実線位置に切り換わり、分配ギア41が圧縮バネ45を押し込んで図面左側に移動し、パージギヤ48と噛み歯41cとが離れる図9(a)の状態になり、パージ機構32とLFモータ29とが切り離される。
【0050】
さらに上述した機構によるキャリッジ7の移動やパージ機構32の動作を図12により説明する。図12の(a−1)において、K,Y,C,Mの4個のノズル部3a〜3dを有する印字ヘッド3の右端のノズル部3d前面がパージされるものとする。キャリッジ7は図示のノズル位置になるまで移動して停止する。その後LFモータ29の制御された回転によって、吸引キャップ17が前進してノズル前面を覆い、ポンプ14(図6参照)によりインクの吸引が行われる。図12の(a−2)において、吸引キャップ17が後退し、代わりにワイピング装置15が前進する。そして、キャリッジが図面左側に移動すると、ワイピング装置15によるノズル前面の清掃が行われる。4つのノズル部3a〜3dの全部のパージを行う場合には、以上の動作を繰り返し、キャリッジ7がピッチLだけ順番に左から右へと移動すればよい。ノズルの吸引が終わると、キャリッジ7即ち印字ヘッド3が図面左側へと移動する。この移動の際に、リブ55が立ち上がり状態の第2キック部50bを蹴り、アイドルキッカ43が分配ギアの噛み歯41cを図面左側に押し込んで、パージ機構32とLFモータ29の駆動とを切り離すことは、図9乃至図11で説明した通りである。なお、符号13は印字ヘッド3を使用しない場合のキャップであり、キャリッジ7が図10に示す位置から図11に示す位置に移動するとき、キャリッジの一部が突出片13aを押すと、キャップ13の全体がノズルにかぶさる構造になっている。
【0051】
このように、パージ機構32の作動と紙送り機構LMとの作動とが連動しているため、印刷途中にパージ処理が行われると、印刷されないまま用紙が送られることになる。しかし、図2乃至図5のフローにより、プリンタ1が有する機能により自動的に用紙の始めから印刷を再開することができる。
【0052】
なお、図8および図9に示す切り換え機構30は、LFモータ29の回転によってパージ処理を行う場合であっても、依然として駆動力配分ギア41の噛み歯41bがプラテンギア6に噛み合ったままであるため、パージ処理に伴って用紙が紙送りされるが、これに限定されることなく、例えば、図9(b)に示す状態、すなわち、パージ処理を行う状態においては、駆動力分配ギア41の噛み歯41bがプラテンギア6から外れるようにしてもよい。これは、特に、前述したような第1の印字再開モードと第2の印字再開モードとを切り替え可能とした場合に好適であり、例えば、試し印刷(ドラフト印刷)等の簡易印刷による印字途中でパージ(メンテナンス処理)が行なわれたとき、その後、第2の印字再開モードによって、パージ処理を行う前の印字の続きから印字を再開した場合の印字ずれ量を少なくできる。すなわち、パージ処理を連続して行った場合であっても、用紙に大きな空白行が発生することはなくなる。
【0053】
【発明の効果】
請求項1の発明は、以上のように、試し印刷等の簡易印刷による用紙への印字途中で、メンテナンス処理を行った場合であって、用紙の先頭から印字を再開する必要がないときには、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開することができ、繰り返し部分の印字時間を短縮して印刷作業を効率良く行うことができる。一方、簡易印刷以外の、印字品質を優先する通常印刷の場合には、新たな用紙の先頭から印字を再開することができ、パージ等のメンテナンス処理後に用紙の途中から印字が再開されることを防止することができ、使用者にとって面倒な操作が不要になるという効果を奏する。
【0054】
請求項2の発明は、以上のように、インクジェット記録装置自体が、バッファメモリ等の出力データ記憶手段に記憶している一頁分の出力データを有効に利用して、インクジェット記録装置単独でメンテナンス処理後の印字を用紙の先頭から自動的に再開することができる。従って、パージ等のメンテナンス処理後に用紙の途中から印字が再開されることを防止することができ、使用者にとって面倒な操作が不要になる。さらに、出力データの再送ができない装置例えばメモリ機能のないファクシミリ装置であっても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置の制御系の全体構成を示すブロック図である。
【図2】一行ずつデータを転送する場合のページ印刷処理を示すフローチャート図である。
【図3】一頁分のデータを一括して転送する場合のページ印刷処理を示すフローチャート図である。
【図4】図3のページ印刷処理に付属するキー割り込み処理を示すフローチャート図である。
【図5】パージ処理の詳細を示すフローチャート図である。
【図6】紙送り機構やメンテナンス機構を示す斜視図である。
【図7】メンテナンス機構の一部を切り欠いて示す側面図である。
【図8】切り換え機構を示す分解斜視図である。
【図9】メンテナンス機構の駆動系統の切り換え状態を示す図である。
【図10】切り換え機構の作動を示す図である。
【図11】切り換え機構の作動を示す図である。
【図12】メンテナンス機構の作動を示す図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)
3 印字ヘッド(記録ヘッド)
8 ノズル
20 CPU(印字再開手段)
22 ホスト(情報処理装置)
23 操作パネル
24 ROM
25 RAM
29 LFモータ(紙送り手段の駆動源)
12 CRモータ
30 切り換え機構
31 キャリッジ機構
32 パージ機構
LM 紙送り機構
RM 回復機構(メンテナンス処理手段)
Claims (2)
- インクを噴出する複数のノズルを有した記録ヘッドと、
用紙を搬送する紙送り手段と、
その紙送り手段の駆動力を利用して、上記記録ヘッドのメンテナンス処理を行うメンテナンス処理手段とを備え、
情報処理装置からの出力データを用紙に印字し、前記メンテナンス処理手段の動作時には、前記紙送り手段が同時に動作するインクジェット記録装置において、
情報処理装置からの制御データに基づいて、試し印刷等の簡易印刷による用紙への印字途中でメンテナンス処理を行ったときには、メンテナンス処理を行う前の印字の続きから印字を再開し、前記簡易印刷以外の通常印刷による用紙への印字途中でメンテナンス処理を行ったときには、新たな用紙に印字を再開する印字再開手段と、
を有していることを特徴とするインクジェット記録装置。 - 情報処理装置からの出力データを用紙に印字するインクジェット記録装置であって、
インクを噴出する複数のノズルを有した記録ヘッドと、
上記用紙を搬送する紙送り手段と、
上記紙送り手段の駆動力を利用して、上記記録ヘッドのメンテナンス処理を行うメンテナンス処理手段と、
上記用紙の1頁分の出力データを記憶可能な出力データ記憶手段と、
上記用紙への印字途中でメンテナンス処理を行ったときに、上記出力データ記憶手段の1頁分の出力データを新たな用紙に印字する印字再開手段と
を有していることを特徴とするインクジェット記録装置。
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JP35317995A JP3546573B2 (ja) | 1995-12-29 | 1995-12-29 | インクジェット記録装置 |
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JP35317995A JP3546573B2 (ja) | 1995-12-29 | 1995-12-29 | インクジェット記録装置 |
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JPH09183220A JPH09183220A (ja) | 1997-07-15 |
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JP35317995A Expired - Fee Related JP3546573B2 (ja) | 1995-12-29 | 1995-12-29 | インクジェット記録装置 |
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Families Citing this family (1)
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-
1995
- 1995-12-29 JP JP35317995A patent/JP3546573B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH09183220A (ja) | 1997-07-15 |
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