JP3539409B2 - 医療用円筒容器の内壁に熱付着性潤滑剤コーティングを施すための装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器の一端に先細出口を、他端にプランジャーあるいはピストンとして作用する摺動可能なエラストマーの閉鎖装置を有する医療用円筒容器の内壁に熱付着性潤滑剤コーティングを施こすための装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
医療用容器、特に医薬容器又は診断目的用の容器は、ピストン又はピストンストッパー等の摺動可能なエラストマークロージャー装置を有している。これらの容器用の摺動可能なエラストマークロージャー装置は容器の中空本体の内室に挿入され、その中空本体の内壁を滑らかに摺動する。充填可能な注射器の注射器シリンダー、円筒アンプル及び容器のインジェクター本体は典型的な例である。しかしながら、他の例として分析化学で使用されるピストンビュレットがある。この課題を正確に解決するためにシリコーン潤滑剤コーティングが中空本体の内壁に施されることが多い。
ここでは充填可能な注射器が特に重要である。ガラス製の充填可能な注射器は以前から多数の文献に開示されており、公知である。これらの充填可能な注射器は一体針を備えていないガラスから構成されている。針を取付けたガラス注射器は周知である。
【０００３】
この種のガラス製の充填可能な注射器は可動エラストマーピストン又はプランジャーとガラス注射器シリンダーとの間に潤滑剤が必要である。シリコーン油がこの目的に好ましい。このシリコーン油は注射器シリンダーの内部洗浄により通常塗布される。針を備えた処理注射器本体と針を備えないものの製作では大きな違いがある。針は十分な耐熱性のない接着剤、例えばエポキシ樹脂、又はある程度は耐熱性のある接着剤で通常取付けられるため、異なったプロセス条件が必要である。
１３０℃の最大処理温度が、接着剤で取付けた中空針を有する完成注射器の接着剤の部位で可能である。しかしながら、潤滑油、好ましくはシリコーンが約３００℃の温度で塗布される場合、耐久性の潤滑剤コーティングが保証されるに過ぎない。
【０００４】
従って、約３００℃でガラス注射器シリンダーにシリコーンコーティングを施し、次に針支持部品をガラス製注射器本体に接続することが公知である。しかし、この方法は付随する組立て労力と、それに伴う付随コストを要し、その製品がマスプロ製品であるため、その方法がかなり不具合なものとなる。
すでに取付けられた針を有する注射器にシリコーン潤滑剤コーティングを施せば、非常に細い針の流路がシリコーン潤滑剤でしばしば詰まる危険があり、それにより使用時にあってはいけないシリコーン油の注入が起こりえる。
この問題は予め充填されるプラスチック注射器にもある。ＤＥ１９７５３７６６Ａ１は医療用の容器に内部シリコーンコーティングを施す方法を記載している。これらの容器は細長いプラスチック中空体、特に注射器シリンダーから構成されている。このシリコーンコーティングは、光の影響を受けて硬化する特殊な反応性シリコーン油で行なわれる。この方法により、例えばプラズマ処理によって内面を予め調製する等の従来の工程が回避される。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、容器の一端に先細の出口とその他方の一端に容器内でピストンのように摺動可能なエラストマーストッパーを有する医療用円筒容器の内壁に熱付着性潤滑剤コーティングを塗布する上記タイプの装置を提供するものであり、この装置は、内壁への潤滑油の熱接着が容器の出口端部での感温部品に損傷を与えずに非常に高温で可能なようにする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明の装置は、
容器の内壁に供給タンクから熱付着可能な潤滑剤を塗布する手段と、
前記潤滑剤コーティングを形成するために前記塗布手段により塗布された潤滑剤を層状に均すための手段と、
前記容器出口を赤外線から遮断するための放射線スクリーン又はバリヤーを有しており、前記容器の内部スペースに挿入可能なロッド状赤外線源を具備する。
【０００７】
赤外線による容器壁の選択的加熱によりその壁に施された潤滑剤コーティング又は層が単純な装置でしかも高温で確実に付着することが可能であり、一方、容器の出口は潤滑剤が無いままであり、それにより注射器針の付属品が損傷しない。同時に細菌の数及びエンドトキシンが高温のために低下する。さらに、本発明に係る装置は、潤滑剤を例えばプラズマ処理で塗布する表面の予備調製を必要としない。
従って、本発明を実施するための装置は、熱付着性潤滑剤コーティング、特にシリコンコーティングを、一体化針が付いたガラス又はプラスチック注射器本体及び一体化針の付かないものの双方に施すのに有利である。
本発明に係る装置で潤滑剤として使用されるシリコーン油は、反応性シリコーン油、非反応性シリコーン油、あるいはその双方のタイプのシリコーン油の混合物とすることが好ましい。他の熱固定性あるいは付着性潤滑剤を使用することもできる。
本発明の好ましい実施形態によれば、潤滑剤が、非常に簡単な方法で比較的均一に濡れるシリコーンコーティングとなるスプレー法により塗布される。しかしながら、潤滑剤、特にシリコーン油を塗布する他の公知方法も考えられる。
【０００８】
熱付着の温度範囲は、特に、ガラス又はプラスチック容器がコーティングされるのか否かによる。ガラス容器の場合には、その温度範囲が好ましくは約３００℃である。プラスチック容器の場合は、熱付着がプラスチック容器の最大使用温度より約５０℃以上の温度範囲で実施する必要がある。
容器内壁の選択的照射の場合、ロッド状赤外線源が放射線スクリーン又はシールドとして作用する円筒キャップの形態の好ましい先端側カバ−部材を有する。また、スクリーンは放射線源の先端部にそのステムを取付け、容器の出口から赤外線を遠ざけるマッシュルーム状物体とすることができる。スクリーン又はシールドの他の形態も考えられる。
ここで本発明の目的及び利点を、添付図面を参照して以下の好ましい実施形態の説明によりさらに詳細に説明する。
【０００９】
【発明の実施形態】
図１は一端に成形グリップ要素１ａを、及び他端の円錐部１ｂを有するガラスあるいはプラスチック本体を示している。スプレー用ノズル２が注射器本体１内に挿入される。公知のシリコーンエマルジョンあるいは反応性熱付着性シリコーン３が、スプレー用ノズル２によりコーティング予定の注射器本体１の内面にスプレーされる。別のタイプのシリコーン油混合物もこのスプレー用ノズル２でスプレーすることができる。
図１に係るスプレー法は複数の可能性の中の１つに過ぎない。シリコーン油エマルジョンあるいは反応性シリコーン油をスポンジで、あるいは適当な出口を有する可動ピストンで、あるいはブラシ等の他の公知方法により塗布することができる。
次に、未付着潤滑剤フィルム４が、適当な道具に付けた塗布装置又はスキージにより注射器本体１の内面にできるだけ均一に（一様に行き渡る。
【００１０】
この後、まだ移動できる潤滑剤フィルム４が選択的熱処理により内面に付着される。この熱処理は図２によりロッド状赤外線源５、例えばネレンスト（Ｎｅｒｎｓｔ）ロッド等を注射器本体１の内部に挿入して行なわれ、それにより全体の注射器本体１の内面をその注射器本体の最大使用温度以上の温度まで加熱し、それにより潤滑剤フィルム４が注射器本体１の内壁に付着される。
赤外線源の形状は、最少量の放射線が円錐部１ｂあるいは中空針及びその針を注射器ヘッドに取付ける接着剤（図示せず）を有する注射器ヘッドの方向に伝えられるように選択される。
図２において、このヘッド外形はヘッド端部カバーディスク５ａにより象徴的に示されている。図３Ａ及び図３Ｂはロッド状赤外線源５の先端あるいはヘッド端部構造の２つの異なった実施形態を示している。図３Ａにおいては、耐熱材料製円筒カバーキャップ６がロッド状赤外線源５のヘッドあるいは先端にねじ留めされ、一方、図３Ｂにおいては、マッシュルーム状物体７がロッド状赤外線源５の先端部にねじ留めされている。このマッシュルーム状物体７のスクリーン部分７ａは注射器からの赤外線を遮断する。
【００１１】
このような赤外線源の構造により、針流路の閉塞をもたらしかねない針流路でのシリコーン油の硬化なしに、シリコーン油等の熱付着潤滑剤コーティングを注射器本体１の円筒部分に施すことができる。
接着剤を配置した場所へ損傷を与えずに針を接着したガラス注射器本体のコーティング時に約３００℃の付着温度をかけることができる。細菌数のかなりの低減や、エンドトキシンの低減がその他の利点の例である。
プラスチック注射器本体に対する付着温度は、一体化針を付けたりあるいは付けないプラスチック注射器本体への潤滑剤コーティング付着時に、プラスチック注射器本体の最大使用温度より約５０℃以上とすることができる。潤滑剤を注射器本体の内面に付着あるいは結合する加熱と同時に（その部位で）界面活性化が起き、それが潤滑フィルムの付着に有利に作用する。
潤滑剤は上記参考文献ＤＥ１９７５３７６６Ａ１に係るシリコーン油エマルジョン、反応性シリコーン油又はそれらの混合物から好ましく構成される。
反応性シリコーン油は非反応性シリコーン油とは対照的にそれら反応性シリコーン油間や他の界面との架橋を可能にする反応性官能基を含有する。
【００１２】
反応性シリコーン油はその目的あるいは機能に応じて機構を硬化する官能基を含有するシロキサン分子である。反応性シリコーン油は温度と紫外線照射の影響を受けて架橋する特にビニル基を含有する。この架橋反応は特に白金化合物により触媒作用を受ける。
反応性及び非反応性シリコーン油の混合物は、注射器本体とピストンストッパー間で分離用コーティングとして機能するしっかりしたフィルムである硬化シリコーン油を形成する。特にブチルゴムからなるストッパーの場合の詰まりは、それによって防止される。
非反応性シリコーン油のジメチルポリシロキサンを反応性シリコーンと混合して摺動摩擦を軽減する。この後者の実施形態では、シリコーン油の反応部分は架橋後に付着性のベースコーティングを形成するが、その中に非反応性シリコーン油が埋まっていて、それが潤滑力を作用する。
【００１３】
反応性シリーン油に基づくシリコーン剤の組成はビニル基含有シリコーン油、架橋剤、触媒、溶剤、及び非反応性ジメチルポリシロキサンから構成される。
反応性シリコーン油の粘度は一成分系の場合には、１０，０００〜１００，０００ｍｍ^２／ｓ、あるいは多成分系の場合には２００〜５０００ｍｍ^２／ｓの範囲にある。非反応性シリコーン油の粘度は、３５０〜２０，０００ｍｍ^２／ｓの範囲にある。
しかし、シリコーン油は、特に塗布がスプレー法による場合には塗布のために希釈することができる。
シリコーン潤滑剤コーティングの厚みは１０ｎｍ〜１μｍの範囲にある。
シリコーン油は以下のシリコーン化合物から構成できる。すなわち、非架橋極シリコーン又はポリシロキサン、特に非反応性ポリジメチルジシロキサン（ＰＤＭＳ）又は反応性高分子シロキサン、アルカリアミン−改質メトキシシロキサンの共重合体、アミノアルキル基を有するポリシロキサンがその化合物である。
架橋は公知方法で、特に紫外線光であるいはプラズマ重合で発生する。
【００１４】
本発明は円筒状医療容器の内壁に熱付着性潤滑剤コーティングを施すための装置で具体化したように例示し説明されたが、本発明の趣旨から何ら逸脱せずに種々の改良と変形を行なうことができるため、図示された詳細に限定されるものではない。
他の分析無しで、前述により本発明の趣旨が十分明らかになるため、先行技術の観点からこの発明の一般的あるいは特定の態様の本質的な特徴をかなり構成する特徴を省略すること無く、現在の知識を応用することにより他人が種々の用途に本発明を容易に適用することができる。
請求すべきことは新規であり、特許請求の範囲に示す。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明において、スプレーにより潤滑剤を注射器本体の内壁に塗布することを示す概略縦断面図である。
【図２】図１で塗布した潤滑剤の熱付着と注射器の内部に挿入されるロッド状赤外線源による均一化を示す概略縦断面図である。
【図３】Ａ 赤外線シールドが円筒カバーキャップの例である。
Ｂ 赤外線シールドがマッシュルーム状物体の例である。
【符号の説明】
１…容器、３…潤滑剤、４…コーティング、５…赤外線源。

Claims (4)

1. 一端で先細の出口、そして他端にピストンとして作用する摺動可能なエラストマーストッパーを有する円筒状医療容器の内壁に熱付着潤滑剤コーティングを施すための装置であって、前記装置は、
   前記潤滑剤コーティングを形成するために容器（１）の内壁に潤滑剤用の供給タンクから熱付着可能な潤滑剤（３）を塗布する手段と、
   潤滑剤コーティング（４）を形成するために前記塗布手段により前記内壁に塗布された潤滑剤を層状に均すための手段と、
   前記容器出口を赤外線遮断するための放射線スクリーン（５ａ、６、７）を有しており、前記容器の内部スペースに挿入可能なロッド状赤外線源（５）を具備する装置。
2. 熱付着可能な潤滑剤を塗布する前記手段は潤滑剤をスプレーするためのスプレー装置（２）から構成されている請求項１に記載の装置。
3. 前記赤外線を遮断するための前記放射線スクリーンは前記赤外線源の先端部に取付けられ、前記赤外線源の先端部の円筒状キャップ（６）として構成される請求項１に記載の装置。
4. 前記赤外線を遮断するための前記放射線スクリーンは前記赤外線源の先端部に取付けられ、それはステムを有するマッシュルーム状物体（７）の形態であり、前記ステムは前記赤外線源（５）の前記先端部に取付けられる請求項１に記載の装置。

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