JP3538798B2

JP3538798B2 - フュエルデリバリ

Info

Publication number: JP3538798B2
Application number: JP15709097A
Authority: JP
Inventors: 秀男高尾
Original assignee: マルヤス工業株式会社
Priority date: 1997-06-13
Filing date: 1997-06-13
Publication date: 2004-06-14
Anticipated expiration: 2017-06-13
Also published as: JPH112164A

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、フュエルデリバリに関
する。特に、リターンレスシステムにおけるフュエルデ
リバリ（以下単に「デリバリ」と称することがある。）
に好適な発明である。

【０００２】

【従来の技術】昨今、自動車にフュエルシステムとし
て、図１に示すようなリターンレスシステムがリターン
チューブが不要であるため、一部検討・実施化されてい
る。

【０００３】即ち、フュエルタンク１２とインジェクタ
１４と接続されるデリバリ１６とをつなぐ配管はフィル
タ１８を備えた主配管２０のみであり、圧力調整器（プ
レッシャレギュレータ）２２はフュエルタンク１２内に
設けられている。

【０００４】このとき、デリバリ１６は、図２に示すよ
うなアルミ鋳物製であった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】リターンシステムと比
較し、リターンレスシステムでは燃料の圧力を調整する
プレッシャレギュレータがフュエルタンク内にあるた
め、インジェクタの弁の開閉に応じた、即ち、エンジン
回転数に比例（対応）した燃料の脈動現象が配管内に現
れる。インジェクタの弁の開閉時間間隔（周期）は、気
筒数（４気筒や６気筒）及び燃料噴射方式（独立噴射や
同時噴射）により異なるが、エンジンの回転数に比例し
て一対一で対応する。そして、インジェクタの弁の開閉
により配管系内の燃料に発生する脈動の周波数が、配管
系における燃料の固有の周波数（脈動固有周波数）に近
くなったとき、共振（共鳴）して、燃料配管内の圧力変
動が非常に大きくなる。このように、燃料配管における
燃料の脈動に共振現象を発生させるエンジンの回転数を
脈動共振回転数と呼ぶ。このようなとき、インジェクタ
からシリンダ内に噴射する燃料供給量が不安定になり、
空気／燃料比を悪化させるので望ましくない。以上のよ
うな理由から、燃料配管内に燃料の脈動（燃圧脈動）を
吸収し、デリバリ内の燃料の圧力を一定にさせるための
対策が必要となる。

【０００６】しかし、従来用いられていたアルミ鋳物製
デリバリは十分剛性が高く、脈動を吸収できないため、
パルセーションダンパを用いて燃料圧力の変動を吸収し
ていた。しかしパルセーションダンパは高価であるので
望ましくない。

【０００７】そこで、ある程度たわみ可能なプレス成形
体で、上記脈動を吸収することが考えられる。しかし、
デリバリの板厚をたわみ易くするために薄くすること
や、脈動吸収のためにデリバリ容量を増加させることに
も、実用上限度がある。

【０００８】本発明は、上記にかんがみて、パルセーョ
ンダンパがなくても、脈動を小さくでき、しかも、共振
減少も発生し難いデリバリを提供することを目的とす
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明に係るデリバリ
は、上記課題を、下記構成により解決するものである。

【００１０】筒状のデリバリ本体が、０．８〜１．６
ｍｍの板金プレスにより形成されてなり、デリバリを有
する燃料配管系内における燃料の脈動固有周波数に対応
するエンジン回転数である脈動共振回転数が、アイドル
回転数未満となるように、剛性（ｋ）＝｛（アイドル回
転数） ² ／２３００｝×内容量（Ｖ）で示される直線の
下側領域（直線上を除く）に位置して前記デリバリ本体
の剛性（ｋ）および内容量（Ｖ）が設定されていること
を特徴とする。具体的には、前記アイドル回転数が７０
０回転であり、前記デリバリ本体の剛性（ｋ）＜１２ｋ
ｇｆ／ｃｍ ⁵ （１１．８×１０ ¹¹ Ｐａ／ｍ ³ ）、又は、内
容量（Ｖ）＞１００ｃｍ ³ （１０ ^-4 ｍ ³ ）と設定されてい
ることを特徴とする。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の実施例を図例に基づいて説明
する。なお、以下の説明は、原則的に工業単位で行う。

【００１２】（１）基本的には、筒状のデリバリ本体
２４が板金プレスにより形成されてなり、該デリバリ本
体２４を含む配管系の脈動共振回転数（脈動固有周波数
に対応するエンジン回転数）がアイドリング時のエンジ
ン回転数未満となるように、デリバリ本体の剛性及び容
量が設定されている（図５〜６参照）。

【００１３】即ち、本発明者らがデリバリパイプについ
て、乗用車の燃料配管系を再現したベンチテストを行っ
た結果、系の脈動共振回転数は、√（ｋ／Ｖ）と、高い
相関関係があることがわかった。

【００１４】従って、相関関係を実験的に求めれば、配
管系の脈動共振回転数をデリバリの剛性（板厚・形状）
及び容量を変えることにより容易に調整することができ
る。

【００１５】具体的には、下記の如く、剛性、容量を設
定することができる。

【００１６】ここで、ｋ（デリバリ剛性）＝△Ｐ（圧力
変化量）／△Ｖ（体積変化量）と定義する。そして、△
Ｐは、デリバリ本体に加える圧力をＰ₁ からＰ₂ に変化
させたときの変化量（Ｐ₂ −Ｐ₁ ）であり（単位：kgf/
cm² ）、△Ｖは、そのときのデリバリ本体の容量の変化
量（Ｖ₂ −Ｖ₁ ）である（単位：cm³ ）とする。

【００１７】まず、容量、板厚、形状等を変えた板金デ
リバリを用いたときの、配管系の脈動共振回転数と、デ
リバリ容量、剛性との回帰直線を、ベンチテストの結果
から求めると、図５に示す如く、下記式で（共振回転数）＝２３００√（ｋ／Ｖ）… 表されるものとなった。ここで、２３００の単位（次
元）は、√（cm⁷/kg）となる。

【００１８】上記式から、配管系の脈動共振回転数が
回転数換算値でアイドリング時のエンジン回転数７００
ｒｐｍとなる条件を求めるとｋ＝０．０９３Ｖ… となる。

【００１９】次に、板厚０．８ｍｍとした場合に、容量
を変えたデリバリの剛性ｋと容量Ｖの関係を求めると、
図６に示すものとなった。

【００２０】図６において、Ｖ−ｋ曲線と式との交点
を求めると、Ｖ＝１００ｃｍ³ となる。

【００２１】したがって、板厚０．８ｍｍにおけるデ
リバリの容量が１００ｃｍ³ を超えれば、配管系の脈動
共振回転数がアイドル回転数（７００ｒｐｍ）未満とな
り、エンジン運転中（アイドリング時）に脈動共振現象
が発生しない。

【００２２】同様にして、板厚を変化させた場合につ
いても、配管系の脈動共振回転数が７００ｒｐｍ未満と
なるような、剛性、容量を求めることができる。

【００２３】例えば、プレス加工性から、１．６ｍ
ｍ程度を限度とした場合に、容量を変えたデリバリの剛
性ｋと容量Ｖの関係を求めると、図６に示す如くになっ
た。図６において、Ｖ−ｋ曲線と式との交点を求める
と、ｋ＝１２ｋｇｆ／ｃｍ ⁵ となる。

【００２４】以上の結果から、板厚１．６ｍｍのとき
剛性（ｋ）＜１２ｋｇｆ／ｃｍ⁵ 、又は、板厚０．８ｍ
ｍのとき内容量（Ｖ）＞１００ｃｍ³となるデリバリを
実車に用いれば、配管長さ等が若干重なっても実用上、
エンジン運転中に、脈動共振が起きて、不具合を発生さ
せることはない。

【００２５】(2) ここで、筒状のデリバリ本体２４は、
図３〜４に示す如く、上分割体（上ケース）２６と下分
割体（下ケース）２８との接合により形成され、下分割
体２８にインジェクタ挿入用凹部３０がプレス形成され
ている。

【００２６】なお、筒状のデリバリ本体２４の形状は、
図３に示すものに限られず、要求されるｋ／Ｖ比となる
ように、図７(a) 、(b) 、(c) に示す各種形状のものが
可能であり、適宜補強リブ３２を縦及び／または横方向
に形成することも可能である。

【００２７】また、デリバリ本体２４は、製作工数は嵩
むが、図６に示す如く、分割体でないプレス成形筒体３
４にインジェクタ挿入用凹部を備えたソケット３５を蝋
付けしてもよい。

【００２８】なお、図示しないが、筒状のデリバリ本体
２４の内部中間部に反射板を設けたり、出口にダイナミ
ックダンパを設けることも可能である。

【００２９】上記、デリバリ本体の一端には燃料供給パ
イプ３６が蝋付けされる。この燃料供給パイプ３６の一
端は、汎用のクイックコネクタ（図示せず）で接続でき
るようにしておくことが望ましい。

【００３０】(3) 本実施形態のデリバリの実車装着は、
図４に示す如く、インジェクタ挿入凹部３０にインジェ
クタ１４を挿入し、フランジ部２９を介してエンジンヘ
ッド３８にねじ止め４０する。

【００３１】そしてエンジン運転中は、デリバリ本体
が、デリバリ本体の脈動共振回転数が、エンジンのアイ
ドリング回転数未満となるように板厚及び形状の設定が
されているため、共振現象が発生し難い。

【００３２】

【発明の作用・効果】本発明のデリバリは、筒状のデリ
バリ本体が板金プレスにより形成されてなり、該デリバ
リ本体を含む配管系の脈動共振回転数が、アイドリング
回転数未満となるように板厚及び形状の設定がされてい
る構成により、リターンレスシステムにおいて、パルセ
ーションダンパーがなくても、脈動を小さくでき、しか
も、共振現象も発生し難い。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を適用するリターンレスフュエルシステ
ムを示す回路図。

【図２】従来の鋳物製デリバリの一例を示す斜視図。

【図３】本発明のデリバリ本体の一例を示す斜視図。

【図４】図３の４−４線部位における取り付け態様断面
図

【図５】√（Ｋ／Ｖ）と共振回転数（回転数換算値）と
の関係である回帰直線を示すグラフ図

【図６】所定板厚におけるデリバリ本体のおける剛性と
容量との関係（ｖ−ｋ曲線）を示すグラフ図

【図７】本発明のデリバリ本体の各種形状を示す斜視図

【図８】本発明のデリバリ本体の別の態様を示す断面図

【符号の説明】

１２フュエルタンク１４インジェクタ１６フュエルデリバリ２４デリバリ本体２６上分割体２８下分割体３４プレス成形筒体３６燃料供給パイプ

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F02M 55/02 310 F02M 55/02 340 F02M 55/02 350

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】筒状のデリバリ本体が、０．８〜１．６
ｍｍの板金プレスにより形成されてなり、デリバリを有
する燃料配管系における燃料の脈動固有周波数に対応す
るエンジン回転数である脈動共振回転数が、アイドル回
転数未満となるように、縦軸を剛性（Ｋ）、横軸を内容
量（Ｖ）としたグラフ上において、剛性（ｋ）＝｛（ア
イドル回転数）／２３００｝ ² ×内容量（Ｖ）で示され
る直線の下側領域（直線上を除く）に位置して前記デリ
バリ本体の剛性（ｋ）および内容量（Ｖ）が設定されて
いることを特徴とするフュエルデリバリ。
【請求項２】前記アイドル回転数が７００ｒｐｍであ
り、板厚１．６ｍｍのとき前記デリバリ本体の剛性
（Ｋ）＜１２ｋｇｆ／ｃｍ⁵（１１．８×１０¹¹Ｐａ／
ｍ³）、又は、前記デリバリ本体の内容量（Ｖ）が板厚
０．８ｍｍのときＶ＞１００ｃｍ³（１０^-4ｍ³）と設定
されていることを特徴とする請求項１記載のフュエルデ
リバリ。