JP3413134B2 - 食物繊維摂取用組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は便通改善用食品とし
て有用な食物繊維摂取用組成物に関する。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】食物繊
維の機能は、大別して保水性による糞便の骨格形成およ
び腸内細菌に利用され生成する短鎖脂肪酸による腸管へ
のエネルギー供給源であると言われているが、その機能
の内容・程度は、それぞれの食物繊維において必ずしも
同質ではない。従って、いろいろな食物繊維をいろいろ
な食品から摂取することが勧められているが、実際の食
生活の中で、バランス良く機能の内容・程度の異なる種
々の食物繊維を摂取することは困難であり、大腸の働き
を効果的にサポートできる食物繊維食品等の提案が望ま
れている。

【０００３】複数の食物繊維を配合する便通改善食品と
して、難水溶性食物繊維と水溶性食物繊維を配合したも
のが知られているが（特公平７−１２２９４号）、セル
ロースを主体とする難水溶性食物繊維は、腸内細菌によ
り部分的に資化され食物繊維中に含まれる水溶性構造あ
るいは水溶性成分が露出することで保水力を増大し糞便
骨格形成に寄与する。しかし同時に共存する発酵性の食
物繊維の影響を受け易く、必ずしも目的とする保水力を
発現できるとは限らない上、セルロースを主体とする食
物繊維の糞便骨格形成に対する保水力は、難発酵性食物
繊維近傍での部分的なゲル化であるので十分とは言い難
い。加えて、最も摂取し易いと考えられる飲料形態で
は、難水溶性食物繊維を成分とする場合は配合上不利で
ある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、保
水性により糞便の骨格を形成する食物繊維と腸内細菌に
より資化され生成する短鎖脂肪酸が腸管のエネルギー源
となる食物繊維との機能を完全に分離すること、および
摂取し易い飲料形態に対応できる水溶性食物繊維に着目
した。すなわち、糞便の骨格形成は、基本的にはゲル化
による保水力であるので、腸内細菌に資化されず大腸内
でも保水力が効果的に発揮できる水溶性かつ難発酵性食
物繊維と腸内細菌に資化され腸管のエネルギー源である
短鎖脂肪酸を生成する水溶性かつ発酵性食物繊維の２種
を利用することとした。そのまま、水溶性かつ難発酵性
食物繊維は、その保水性により効果的な糞便嵩増し作用
を示し、腸管へ物理的刺激をまた、水溶性かつ発酵性食
物繊維は腸内細菌に利用されることで短鎖脂肪酸を生成
し、腸管へ化学的刺激を与えることで、両面から腸管の
蠕動運動が促進され、高い便通改善作用が得られること
を見出した。

【０００５】本発明は、５重量％水溶液の室温における
粘度が２０mPa・s以下である水溶性かつ難発酵性食物繊
維と５重量％水溶液の室温における粘度が２０mPa・s以
下である水溶性かつ発酵性食物繊維からなる食物繊維
（オリゴ糖を除く）を全体の１〜５０重量％含有し、該
水溶性かつ難発酵性食物繊維１重量部に対して水溶性か
つ発酵性食物繊維を０．１〜３重量部含む食物繊維摂取
用組成物を提供するものである。

【０００６】

【発明の実施の形態】本発明組成物に用いられる前記水
溶性かつ難発酵性食物繊維としては、低分子化アルギン
酸Ｎａ、ポリデキストロースが水溶液の粘度が低く特に
好ましい。

【０００７】前記水溶性かつ発酵性食物繊維としては、
低分子化ペクチン、低分子化グアーガム、ヘミセルロー
ス、アラビアガム、プルランが、水溶液の粘度が低く特
に好ましい。ヘミセルロースは、小麦、大豆、トウモロ
コシ由来等のものが利用できるが、トウモロコシ由来の
ものが原料に起因する異味、異臭が小さく好ましい。ま
た、サポニン等の夾雑物の混入が少なく、配合時の泡立
ち等の製造時の問題も少ないため好ましい。さらには、
低分子、特に平均分子量が１０万以下に調製されたヘミ
セルロースが水溶液の粘度が低く好ましい。ヘミセルロ
ースの平均分子量を１０万以下にするには、高分子ヘミ
セルロースに酵素を作用させたり、熱分解、加圧分解す
る等常法を用いて行えばよい。

【０００８】これらの食物繊維は、いずれも室温におけ
る粘度が５重量％水溶液で２０mPa・s 以下であるの
が、飲料として用いる場合に好ましい。

【０００９】本発明組成物には、上記水溶性かつ難発酵
性食物繊維と水溶性かつ発酵性食物繊維からなる食物繊
維が便通改善効果及び整腸効果の点から１〜５０重量％
配合されるが、２〜２０重量％がより好ましく、５〜１
０重量％が特に好ましい。

【００１０】また、前記食物繊維においては、便通改善
効果及び整腸効果の点から水溶性かつ難発酵性食物繊維
１重量部に対して水溶性かつ発酵性食物繊維０．１〜３
重量部（好ましくは０．３〜３重量部、特に好ましくは
０．５〜２重量部）配合される。

【００１１】発酵性食物繊維より生成する短鎖脂肪酸
は、糞便の水分含量増加に関係し、糞便に柔らかさを付
与することにも寄与しているが、難発酵性食物繊維に対
し発酵性食物繊維の割合が３重量倍量を超過すると、保
水性により糞便骨格を形成する難発酵性食物繊維に比べ
生成する短鎖脂肪酸の割合が増加し、場合によっては軟
便化をもたらすので好ましくない。さらに、生成した短
鎖脂肪酸は大腸内で中和され、炭酸ガスを発生するの
で、発酵性食物繊維の割合が大きいと膨満感等の不快感
を生じ易く、かかる点からも好ましくない。

【００１２】本発明組成物の形態は、食物繊維を経口で
摂取できる形態であれば特に限定されず、機能性食品、
健康食品、スナック食品等の食品、医薬品等とすること
ができる。食品としては、クッキー状、フレーク状、ウ
ェハー状、錠剤、顆粒剤、スナック菓子等の他、飲料の
形態が挙げられるが、特に摂取のし易さの点から飲料の
形態が好ましい。

【００１３】本発明組成物を食品等の形態にするには、
前記２種の食物繊維以外に、他の食物繊維、例えばデン
プン、デキストリン、ショ糖等の糖類；カゼイン、大豆
タンパク質、卵白等のタンパク質；炭酸カルシウム、乳
酸鉄等のミネラル類；ビタミンＡ、Ｂ₁、Ｂ₂、Ｂ₁₂、Ｃ
等のビタミン類；米、大麦、小麦、大豆、とうもろこ
し、各種野菜、肉類、食用油、調味料、水等を適宜単独
または組み合わせて配合することができる。

【００１４】本発明組成物の摂取量は、１回（１食）当
たりの食物繊維量として１〜２０ｇとするのが好まし
い。

【００１５】

【実施例】実施例１および２ 〔試験食の調製法〕表１の配合処方により、常法に従っ
てクッキーを調製し、それを試験食とした。焼成前のク
ッキー生地を１０ｇずつに取り分け、その焼成品を３個
摂取することで、以下に示す目標とする１日当たりに必
要な試験食物繊維量を満たすことができる。 （１日当たりに必要な試験食物繊維量） ・水溶性かつ難発酵性食物繊維・・・３ｇ ・水溶性かつ発酵性食物繊維・・・・３ｇ

【００１６】

【表１】

【００１７】〔試験方法〕便秘あるいは便秘傾向を意識
している被験者について、非摂取期間７日間続く摂取期
間７日間を設け、試験期間終了後、非摂取期間に対する
摂取期間の便通状態を以下のアンケート調査により比較
した。 （１）便通回数の改善効果：排便回数の改善に関する調
査（改善；増加；変化なし；増減なし；後退；減少） （２）お腹の調子の変化：排便回数の変化に加え、膨満
感や残便感等の不快感の因子を含めた総合評価（良くな
った；改善；変化なし；悪くなった；後退） （実施例１） 水溶性かつ難発酵性食物繊維・・・低分子化アルギン酸Ｎａ（５重量％水溶液 の粘度＝約１０mPa・s） 水溶性かつ発酵性食物繊維・・・・低分子化グアーガム（５重量％水溶液の粘 度＝約５mPa・s） （実施例２） 水溶性かつ難発酵性食物繊維・・・低分子化アルギン酸Ｎａ（実施例１使用品 と同じ） 水溶性かつ発酵性食物繊維・・・・ヘミセルロース（５重量％水溶液の粘度＝ 約１６mPa・s） （比較例） ・水溶性かつ難発酵性食物繊維のかわりに難水溶性食物繊維を使用した。 難水溶性食物繊維・・・・・・・キャベツ食物繊維 水溶性かつ発酵性食物繊維・・・低分子化グアーガム（実施例１使用品と同じ ） 結果を表２に示す。

【００１８】

【表２】

【００１９】表２の結果から明らかなように、水溶性か
つ難発酵性食物繊維と水溶性かつ発酵性食物繊維を組み
合わせた本発明組成物は、便通回数の改善効果だけでな
く、膨満感や残便感等の不快感の改善効果において、他
の食物繊維配合食品に比べて顕著に優れていることがわ
かる。

【００２０】実施例３ 表３に示す処方により飲料を製造した。本飲料を１００
ml摂取することで１日当りに目標とする必要な食物繊維
量を満すことができる。

【００２１】

【表３】 （成分） （重量％） 低分子化アルギン酸Ｎａ（実施例１使用品と同じ） ４ 低分子化グアーガム（実施例１使用品と同じ） ５ 還元麦芽糖水あめ ３ エリスリトール ６ 香料 ０．２ クエン酸 ０．３ 水 バランス １００（１００ml）

【００２２】表４に示す処方により飲料を製造した。本
飲料を１００ml摂取することで１日当りに目標とする必
要な食物繊維量を満たすことができる。

【００２３】

【表４】 （成分） （重量％） 低分子化アルギン酸Ｎａ（実施例１使用品と同じ） ４ 低分子化ヘミセルロース （５重量％水溶液の粘度：約７mPa・s） ５ 還元麦芽糖水あめ ３ エリスリトール ６ 香料 ０．２ クエン酸 ０．３ 水 バランス １００（１００ml）

【００２４】

【発明の効果】本発明組成物は、便の骨格形成に寄与す
る水溶性かつ難発酵性食物繊維と、腸内細菌に資化さ
れ、主に大腸のエネルギー源である短鎖脂肪酸を生成す
る水溶性かつ発酵性食物繊維が組み合わせて配合してい
ることから、便通回数だけでなく膨満感や残便感等も顕
著に改善し、便通改善用食品として有用である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梶原 泰 東京都墨田区文花２−１−３ 花王株式 会社研究所内 (72)発明者 杉浦 陽子 東京都墨田区文花２−１−３ 花王株式 会社研究所内 (72)発明者 菅谷 博之 東京都墨田区文花２−１−３ 花王株式 会社研究所内 (72)発明者 樋口 ▲禎▼ 東京都墨田区文花２−１−３ 花王株式 会社研究所内 (56)参考文献 特開 平９−65855（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−276556（ＪＰ，Ａ) 特開 平11−302448（ＪＰ，Ａ) 特開 平11−253114（ＪＰ，Ａ) 特開 平11−225706（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−220169（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A23L 1/05 A21D 13/08 A23L 1/308 A23L 2/00

Claims (6)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ５重量％水溶液の室温における粘度が２
   ０mPa・s以下である水溶性かつ難発酵性食物繊維と５重
   量％水溶液の室温における粘度が２０mPa・s以下である
   水溶性かつ発酵性食物繊維からなる食物繊維（オリゴ糖
   を除く）を全体の１〜５０重量％含有し、該水溶性かつ
   難発酵性食物繊維１重量部に対して水溶性かつ発酵性食
   物繊維を０．１〜３重量部含む食物繊維摂取用組成物。
2. 【請求項２】 前記水溶性かつ難発酵性食物繊維が低分
   子アルギン酸Ｎａ及びポリデキストロースから選ばれる
   ものであり、前記水溶性かつ発酵性食物繊維が低分子化
   ペクチン、低分子化グアーガム、平均分子量１０万以下
   のヘミセルロース、アラビアガム及びプルランから選ば
   れるものである請求項１記載の食物繊維摂取用組成物。
3. 【請求項３】 前記水溶性かつ難発酵性食物繊維が低分
   子アルギン酸Ｎａ及びポリデキストロースから選ばれる
   ものであり、前記水溶性かつ発酵性食物繊維が低分子化
   ペクチン、低分子化グアーガム及び平均分子量１０万以
   下のヘミセルロースから選ばれるものである請求項１記
   載の食物繊維摂取用組成物。
4. 【請求項４】 形態が食品である請求項１〜３のいずれ
   か１項記載の食物繊維摂取用組成物。
5. 【請求項５】 形態が飲料である請求項１〜４のいずれ
   か１項記載の食物繊維摂取用組成物。
6. 【請求項６】 便通改善用食品である請求項１〜５のい
   ずれか１項記載の食物繊維摂取用組成物。