JP3401915B2 - 被削性および溶接性にすぐれたプラスチック成形金型用鋼 - Google Patents

被削性および溶接性にすぐれたプラスチック成形金型用鋼

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JP3401915B2
JP3401915B2 JP14486194A JP14486194A JP3401915B2 JP 3401915 B2 JP3401915 B2 JP 3401915B2 JP 14486194 A JP14486194 A JP 14486194A JP 14486194 A JP14486194 A JP 14486194A JP 3401915 B2 JP3401915 B2 JP 3401915B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラスチック成形金型
の製作に使用するプレハードン鋼の改良に関し、すぐれ
た溶接性と被削性とをあわせ有するプラスチック成形金
型用鋼を提供する。
【0002】
【従来の技術】プラスチック成形金型とくに射出成形金
型の中でも、比較的大型の成形品を得るための金型を製
作する材料には、これまで一般構造用鋼(たとえばS5
5C)や中低炭素鋼(代表的にはSCM445)が使用
されてきた。
【0003】こうした材料を使用する金型製作において
は、加工の誤りや設計変更のため、製作途上にある金型
に肉盛溶接による補修を行なうことが少なくない。溶接
補修には、溶接割れ防止のために予熱(250〜350
℃)が必要であり、さらに後熱が必要なこともある。
【0004】ところが、均一な加熱のためには専用の加
熱炉が欲しく、また金型が大きくなるほど長時間を要す
るという問題があるうえ、高温のものを対象とする溶接
作業は、当然のことに作業性が悪いという悩みがある。
予熱不十分なまま溶接を行なえば溶接割れが避け難く、
かえって目的を達することができないし、場合によって
は大割れをひき起して再製作を余儀なくされることさえ
ある。
【0005】出願人は、このような問題を解決し、現用
の材料のもつ性質を維持または向上させたうえで、溶接
補修性にすぐれ予熱や後熱をせずに肉盛溶接しても溶接
割れを起す心配のないプラスチック成形金型用鋼を提供
することを意図して研究した結果、この意図を実現する
鋼の開発に成功し、すでに提案した(特開平3−177
536号)。
【0006】プラスチック成形用金型鋼からの金型の製
作は、機械加工からはじまり、シボ模様の形成や鏡面仕
上げに終る。この過程で、まず機械加工の能率を高める
ため、被削性をさらに改善することが望まれているし、
補修溶接を行なった場合に溶接熱影響部に生じやすい被
削性の低下や鏡面加工性の低下、またシボムラの発生を
防ぐことも必要である。
【0007】金型用材料としては、上記のS55CやS
CM445鋼の系統のほか、適量のNiおよびAlを添
加してそれらの金属間化合物を析出させて硬さを確保
(HB150〜220)したものが提案されている(特
開平2−179845号)。しかしこの組織は、60%
以上のフェライトと残りのパーライトとからなる二相
で、被削性は十分とはいえない。
【0008】とくに大型の金型の材料に適するとして、
特定量のCr,MoおよびCuを必須成分として比較的
多量に含有する鋼も提案されている(特開平2−263
953号)。この材料は硬さがHRC34程度まで高め
られ、組織は上部ベイナイトである。Sなどの快削元素
を添加しなくても比較的良好な被削性を実現している
が、硬さの低い領域での被削性は十分でない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前掲
の特開平3−177536号に開示した溶接性にすぐれ
たプラスチック成形金型用鋼(硬さはHRC30級)と
類似の鋼であって、それより低い硬さの領域(HRC1
5級)にあり、被削性を格段に高めたものを提供するこ
とにある。被削性を改善するには、溶接熱影響部とその
周囲との硬さの差を小さくすることが必要であり、それ
が実現すれば、鏡面性の向上やシボムラの発生防止につ
ながる。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の被削性および溶
接性にすぐれたプラスチック成形金型用鋼は、基本的な
合金組成として、C:0.05〜0.20%、Mn:
0.5〜2.5%、Cr:0.5〜2.5%、Mo:
0.01〜0.7%、V:0.01〜0.5%および
S:0.01〜0.10%を含有し、Si:0.25%
以下、P:0.02%以下、B:0.002%以下であ
って残部が実質的にFeからなり、かつ下式で定義され
るαおよびβが、 α=−71.8+190.8(C%)+3.1(Si%)+
27.1(Mn%)+13.0(Cr%) β=326.0+847.3(C%)+18.3(Si%)
−8.6(Mn%)−12.5(Cr%) 3.8≦α≦22.4、β≦460を満たす合金組成を
有し、フェライト+ベイナイトまたはフェライト+ベイ
ナイト+パーライトからなる組織を有し、その中のフェ
ライト量(面積率)が10〜60%であり、硬さをHBで
167〜255に調質してなる、予熱および後熱を必要
とせず溶接できる、被削性および溶接性にすぐれたプラ
スチック成形金型用鋼である。
【0011】この鋼は、上記した基本的な合金組成に加
えて、Ni:2.0%以下および(または)Cu:2.
0%以下を添加した合金組成を有してもよい。
【0012】この鋼はまた、上記の基本的合金組成に加
えて、Zr:0.003〜0.2%、Pb:0.03〜
0.2%、Te:0.01〜0.15%、Ca:0.0
005〜0.010%およびBi:0.01〜0.20
%の1種または2種以上を添加した合金組成を有しても
よい。
【0013】上記の任意に添加する合金成分をあわせ含
有する合金組成のものも、本発明の範囲に含まれる。
【0014】
【作 用】さきの発明に関しても述べたように、断面が
400×1000mmのような大型の金型材料に対して、
HRC30〜33を確保できるだけの焼入性をもたせる
とともに、溶接割れ感受性を低くすることは容易ではな
い。
【0015】従来、金型用鋼の「溶接割れ感受性指数」
Pcを、合金組成に関して下式であらわしたとき、 Pc=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni
/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B+H
/60+t/600(%) 〔ここで、Hはガス体積(cc)換算、tは材料の厚さ
(mm)、その他は合金量(重量%)である。〕溶接割れ
を皆無にするための最低予熱温度はPc値の増大ととも
に上昇し、それを常温付近まで下げること、すなわち予
熱を省略することができるようにするためには、H<
0.30の条件が満たされなければならない、とする報
告があり〔伊藤ら:「溶接学会誌」37(1968)
9〕、一般に承認されてきた。
【0016】プレハ一ドン鋼においては、残留応力除去
の観点から600℃以上の高温焼もどしが前提となり、
しかも質量効果を考えた十分な焼入性を確保するために
は、Mn,Cr,Mo,Vなどの焼入性向上元素を添加
しなければならないから、Pc値は上記限界の0.3を
はるかに突破するのが常である。従って従来は、前記の
ように300℃内外の予熱が必要であった。
【0017】この障害を打破するため合金成分の再検討
を行ない、低Si化とともに不純物のPおよびBを規制
し、かつ適量のSを存在させることによって、焼入性向
上元素の添加限界を高め、上記Pc値が0.3を超える
領域においても、溶接に先立つ予熱を省略できることを
見出し、さらに、溶接割れが生じるか否かの限界は、上
記式のPc値よりむしろ、前記した第二の式であらわさ
れるβ値で判断する方が実際的であり、とくに溶接界面
付近の母材側の硬さがこの条件を満たせば、溶接割れが
防止できることを見出して完成したのが、さきの発明で
ある。
【0018】その後の研究により、さらに前記した第一
の式で定義されるαの値を特定の範囲にえらび、組織を
フェライト(F)+ベイナイト(B)の二元またはこれ
にパーライト(P)が加わった三元組織とし、その中の
F量を面積率で特定の範囲にし、かつ硬さを特定の値に
調節することによって、溶接性の向上に加えて被削性の
改善がみられることを見出して完成したのが本発明であ
る。
【0019】本発明のプラスチック成形金型用鋼におい
て、各合金元素のはたらきと組成範囲の限定理由を示せ
ば、つぎのとおりである。
【0020】C:0.05〜0.20% Cは硬さを与える。熱処理残留応力を除去するために6
00℃以上の温度で焼もどししたとき、必要な硬さHB
167以上を得るためには、0.05%以上のCがなけ
ればならない。一方、溶接割れ感受性を低くし、被削性
を高めてシボムラを軽減する上で、0.20%を超えて
はならない。
【0021】Mn:0.5〜2.5% 溶製時に脱酸剤とするほか、焼入性の確保のため加え
る。また、溶接時の母材側の硬さを低くして、溶接割れ
を抑えるのに役立つ。これらの効果は0.5%未満では
乏しい。しかし、被削性にとっては低い量が好ましい。
2.5%より多いと、被削性向上の効果が得られない
上、変態曲線のフェライトノーズが長時間側へ移行して
10%以上のF相が得られなくなる。
【0022】Cr:0.5〜2.5% 大型の金型の焼入性を確保するため0.5%以上が必要
である。2.5%を超えると、やはりフェライトノーズ
が長時間側に移行して必要なフェライト組織が得られな
いし、被削性が低くなる。コスト高になることはもちろ
んである。
【0023】Mo:0.01〜0.7% 大型の金型の焼入性を高めるためと、600℃以上での
焼もどし軟化抵抗性を確保する役割があり、0.01%
の少量でも有効である。多量になると、被削性が低下す
る上にコストアップを招くから、0.7%までの添加に
止める。
【0024】V:0.01〜0.5% 焼もどし軟化抵抗性の向上効果が高く、0.01%以上
添加すれば、必要な硬さの確保に役立つ。結晶粒の微細
化効果もある。過大に加えると被削性と靭性を低下させ
るから、0.5%以内の添加量をえらぶ。
【0025】S:0.01〜0.10% 溶接割れの防止に、0.01%以上のSの存在が有効で
ある。被削性にとっても、若干の存在が望ましい。しか
し0.1%を超える量になると、硫化物の存在に起因す
る溶接割れ(いわゆる「ラメラー・ティアー」)が生じ
やすくなるし、靭性を低下させる。シボ加工性および'
鏡面加工性に関しては、少量である方がよい。
【0026】Si、PおよびBを規制した理由は、つぎ
のとおりである。
【0027】Si:0.25%以下 溶製時の脱酸効果と焼入性の観点からは有用であるが、
溶接割れ感受性を低くする上では、なるべく少量に抑え
たい。偏析を軽減してシボ加工性を高くするためにも、
含有量を下げることが好ましい。0.25%は許容限界
である。
【0028】P:0.02%以下、B:0.002%以
下 ともに溶接割れ感受性にとって有害であり、極力除去し
たい。上記の数字は、いずれも許容限度として定めた。
【0029】任意添加元素の役割と組成の限定理由は、
つぎのとおりである。
【0030】Ni:2.0%以下、Cu:2.0%以下 前述のように、NiおよびCuの一方または両方を添加
すれば、焼入性向上に寄与する。上限を超えると、フェ
ライトノーズが長時間側へ移行して必要なフェライト量
10%を確保できなくなり、被削性が悪くなる。Cuの
多量の存在は、靭性にとっても有害である。
【0031】Zr:0.003〜0.2%、Pb:0.
03〜0.2%、Te:0.01〜0.15%、Ca:
0.0005〜0.010%、Bi:0.01〜0.2
0% いずれも快削元素である。その中でZrは、硫化物の展
伸をおさえて靭性を向上させる作用もするが、0.2%
を超える多量になると、むしろ被削性を低下させる。そ
のほかの元素は、地キズやブラックスポットの発生など
が制約を与え、それぞれの上限が定められる。
【0032】本発明の完成に至る過程を、実験データを
挙げて説明し、前記組成を選択した根拠を示す。
【0033】被削性と適切な組織 まず下記表1に従う、MnおよびCrの量を変化させた
種々の組成の鋼を溶製し、鋳塊を鍛造して焼きなました
後、970℃に加熱して、400×1000mm断面を空
冷したときの中心部に相当する冷却速度で、焼入れをし
た。600℃で焼もどしをしたものについて、組織をし
らべた。
【0034】表1 重量%、残部Fe。
【0035】種々のMn量およびCr量の組み合わせに
よる組織のちがいを、図1に示す。
【0036】各領域の代表的な鋼3種(X,Y,Z)を
えらんで被削性をしらべた。熱処理条件は、焼入れが上
記と同じであり、焼もどしは下記表2のとおりである。
各鋼の組織と硬さをあわせて表2に記載した。
【0037】表2 組織の略号:Bはベイナイト、Fはフェライト、Pはパ
ーライト。
【0038】これら3種の鋼に対して、エンドミルを用
いた被削性試験を行なった。その結果は図2に示すとお
りであって、F(38%)+Bの組織をもつY鋼が圧倒的
に長い工具寿命を示した。それに対して、B単相のX鋼
およびF(72%)+PのZ鋼は、被削性が低かった。Z
鋼は硬さも不足であり、F相が60%を超えては所望の
特性が得られないことがわかった。
【0039】硬さと組織の確保次に、表3に示す組成
の、硬さが異なるようにした鋼を多数溶製し、鋳塊を鍛
造して熱処理した。熱処理は、焼きなまし後970℃に
加熱し、400×1000mm断面を空冷した場合の中心
部に相当する冷却速度で焼入れし、620℃で焼もどし
をした。
【0040】表3 重量%、残部Fe。
【0041】各試料の硬さをしらべた結果、下式で定義
されるαの値が3.3〜26.0、とりわけ3.8〜2
2.4の範囲にあるとき、 α=−71.8+190.8(C%)+3.1(Si%)+
27.1(Mn%)+13.0(Cr%) 目的とする組織すなわちF+BまたはF+B+Pが得ら
れることが明らかになった。
【0042】αの上限値22.4は、図1のB相とF+
B相の境界をなす線の成分にほぼ相当し、かつ熱処理硬
さHB255以下をあらわす。また、下限3.8は、図
1において目標とする組織F+BまたはF+B+Pと組
織F+Pとの境界線にほぼ相当し、かつ熱処理硬さHB
167以上をあらわす。その鋼におけるMn量とCr量
との関係が図1に示したF+Bの領域にあり、さらにα
が3.8〜22.4の範囲にあれば、F量が面積率で1
0〜60%の範囲に入る率が高いこともわかった。こう
した意味で、図1は成分による組織の区分を示す図であ
るとともに、熱処理硬さの区分を示す図でもある。熱処
理後の硬さの下限HB167は、プラスチック成形金型
として必要なものであり、上限HB255は、本発明で
目指した高い被削性を実現する上で限界となる硬さであ
る。
【0043】図1にみるように、Mn,Crの量がいず
れも2.5%を超えるとB相単独となり、目的とする組
織が得られないので、前述のようにそれらの含有量の上
限を2.5%とした。MoおよびVは、上記表3の含有
量の範囲では、αの値に対してあまり大きな影響を与え
ない。CuおよびNiは、Mnと置換する形で添加する
ことができ、Mn当量として考えると、いずれもその含
有量×2となる。
【0044】溶接性の確保 前記のように、プラスチック金型用鋼として従来使用さ
れてきたS55CやSCM445は、溶接補修を行なっ
た場合、母材の熱影響部に割れが生じやすい。これは、
溶接により加熱された部分が冷却時収縮して生じる割れ
であるから、収縮に伴う応力を軽減するために予熱を行
なっていた。加工の対象が大型になるほど、予熱の必要
が大きい。また、熱影響部の切削や研磨を支障なく行な
い、鏡面性を高くシボムラのない面を得るため、後熱を
しなければならない。
【0045】前述の「溶接割れ感受性指数Pc」に関し
て、さきに開示した発明では、低P化(0.02%以
下)、低Si化(0.25%以下)および適量のS
(0.01〜0.10%)の存在により、予熱や後熱な
しに溶接した場合のY形溶接割れ試験における割れを皆
無にする限界Pc値が、それまでの0.3から0.4に
向かって高められることを示した。(常温の試料を対象
とするY形溶接割れ試験で割れが生じなければ、実際の
金型の補修溶接においても割れを生じないことは、多数
の経験から確認されている。)
【0046】ところが、さきの発明は鋼の組織がほとん
どB相であるのに対し、今回のものは組織がB+F相ま
たはB+F+P相であるから、上記の対策が有効か否か
は、確認を要する。そこで、PおよびSの量を変化させ
た表4の合金組成の鋼、ならびにSi量を変化させた表
5の合金組成の鋼を溶製して、組織を確認するととも
に、溶接割れ性をしらべた。試験は、鍛造後焼きなま
し、970℃に加熱して上記と同様(400×1000
mm断面中心部の空冷相当の冷却)の焼入れをし、620
℃で焼もどした試験片として行なった。
【0047】表4 重量%、残部Fe。
【0048】表5 重量%、残部Fe。
【0049】組織は、表4および表5の各鋼を通じて、
F(40%内外)+B+Pであった。
【0050】表4の各鋼について、溶接割れの有無を図
3に示す。図3のグラフから、P量はできるだけ低いこ
とが望ましく、Sは、ある程度存在した方がよいことが
わかる。表5の各鋼についての溶接割れ試験の結果は、
図4に示すとおりである。図4のグラフは、Si量を
0.25%以下に止めるべきことを示している。これら
は、さきの発明で得た知見と同様である。結局、Pおよ
びSiの量を低くすることで粒界偏析や縞状偏析が軽減
され、適量のSの存在で溶接割れ起点が分散し、Pc限
界値として従来考えられていた0.3を超えても、溶接
割れが避けられることが確認できた。上記データから、
Pの含有量は0.02%以下でなければならないが、精
錬のコストからみて0.01%以下のPは実際的でな
く、Pが0.01%以上存在することを前提に図3をみ
れば、Sは0.01%以上存在させるべきことになる。
【0051】溶接割れ感受性は前記のPc値よりも熱影
響部の硬さで論じるべきことをさきの発明で見出し、か
つ次式で定義されるβの値(HV硬さ)が β=326.0+847.3(C%)+18.3(Si%)
−8.6(Mn%)−12.5(Cr%) 460以下であれば、常温のY形溶接割れ試験で割れが
発生しないこと、従って実用上もβ≦460とすればよ
いことを知った。
【0052】しかし、これもB相を主体にし、わずかに
F+B相が混在する組織をもつ材料に関する知見であ
り、10%以上のF相をもつF+B相またはF+B+P
相の組織を対象とする場合にも適合する関係か否か、明
らかでない。そこで、表6に示す合金組成の鋼を溶製
し、上述したところと同様に、鍛造、焼きなましをした
試験片に焼入れ一焼もどし処理を施し、熱影響部の硬さ
を測定し、組織をしらべ、溶接割れ試験を行なった。
【0053】表6 重量%、残部Fe。No.7はSCM445、No.8はS5
5Cである。
【0054】上記各鋼の組織、β値(計算)、熱影響部硬
さHV(実測)および溶接割れ発生率を、表7に示す。
【0055】表7 この結果から、β≦460という条件は、F+Bまたは
F+B+Pの組織に関してもあてはまることがわかっ
た。
【0056】
【実施例】表8および表9に掲げる合金組成の鋼を溶製
し、鋳塊を鍛造して400mm×1000mm×1700mm
の直方体とし、870〜1030℃の温度から空冷し、
600〜650℃で焼もどしをした。
【0057】表8 (実施例) 重量%、残部Fe。
【0058】表9 (比較例) 重量%、残部Fe。No.31はS55C、No.32はSC
M445。
【0059】上記各鋼について、表層および中心部の硬
さ(HB)を測定し、組織をしらべ、被削性、鏡面加工
性およびシボ加工性を評価した。被削性はエンドミル切
削(ハイス、φ10mm、切り込み5mmの溝切削、湿
式)、鏡面加工性は#2000エメリーの鏡面加工、シ
ボ加工性は溶接部の加工に要した時間を、No.31(S
55C)における所要時間を1.00として、その比で
あらわした。以上の結果を、計算したα値およびβ値と
ともに、表10および表11に示す。
【0060】表10 (実施例) 被削性、加工性はNo.31が標準。
【0061】表11 (比較例) 被削性、加工性はNo.31が標準。
【0062】表10および表11のデータを比較する
と、本発明の鋼は表層と中心の硬さの差が小さいことに
気づく。鏡面仕上げが容易なのは、ミクロ・マクロの成
分偏析が少なく不均一組織が少ないためであり、とくに
平坦度が高く、仕上げが短時間で済む。
【0063】
【発明の効果】本発明のプラスチック成形金型用鋼は、
溶接により補修するときに予熱も後熱も必要なく、常温
で溶接作業を行なうことができ、溶接部に割れの生じる
心配がほとんどなく、大型の材料でも断面における硬さ
分布が均一であるという、さきの発明の効果がそのまま
得られる。偏析が少なく、シボ加工性が良好であり、研
磨ムラが少ないことも同様である。その上で、被削性が
さきの発明の鋼にくらべて格段に向上した。
【0064】従ってこの金型用鋼は、加工量の多い金
型、具体的には、大型のプラスチック成形品たとえば自
動車のパネル、バンパー、テレビのキャビネット、ある
いは浴槽などの製造に使用する金型の材料として好適で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の成立の過程を説明するための図であ
って、本発明の鋼とそれに近い組成の鋼においてMn量
およびCr量を変化させたときの組織の変化を示したグ
ラフ。
【図2】 やはり本発明の成立の過程を説明するための
図であって、図1のX,YおよびZのプロットに相当す
る組成(組織)の鋼をエンドミル切削したときの、切削
距離と外周刃損耗幅との関係を示したグラフ。
【図3】 これも本発明の成立の過程を説明するための
図であって、本発明の鋼とそれに近い組成の鋼において
P量およびS量を変化させたときの溶接割れの有無を示
したグラフ。
【図4】 同じく本発明の成立の過程を説明するための
図であって、本発明の鋼とそれに近い組成の鋼において
Si量を変化させたときの、溶接割れ率の変化を示した
グラフ。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.05〜0.20%、Mn:0.
    5〜2.5%、Cr:0.5〜2.5%、Mo:0.0
    1〜0.7%、V:0.01〜0.5%およびS:0.
    01〜0.10%を含有し、Si:0.25%以下、
    P:0.02%以下、B:0.002%以下であって残
    部が実質的にFeからなり、かつ下式で定義されるαお
    よびβの値が、 α=−71.8+190.8(C%)+3.1(Si%)+
    27.1(Mn%)+13.0(Cr%) β=326.0+847.3(C%)+18.3(Si%)
    −8.6(Mn%)−12.5(Cr%) 3.8≦α≦22.4、β≦460を満たす合金組成を
    有し、フェライト+ベイナイトまたはフェライト+ベイ
    ナイト+パーライトからなる組織を有し、その中のフェ
    ライト量(面積率)が10〜60%であり、硬さをHBで
    167〜255に調質してなる、予熱および後熱を必要
    とせず溶接できる、被削性および溶接性にすぐれたプラ
    スチック成形金型用鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1の組成に対し、Ni:2.0%
    以下および(または)Cu:2.0%以下を添加した合
    金組成を有する請求項1のプラスチック成形金型用鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1の組成に対し、Zr:0.00
    3〜0.2%、Pb:0.03〜0.2%、Te:0.
    01〜0.15%、Ca:0.0005〜0.010%
    およびBi:0.01〜0.20%の1種または2種以
    上を添加した合金組成を有する請求項1のプラスチック
    成形金型用鋼。
  4. 【請求項4】 請求項1の組成に対し、Ni:2.0%
    以下および(または)Cu:2.0%以下、ならびに、
    Zr:0.003〜0.2%、Pb:0.03〜0.2
    %、Te:0.01〜0.15%、Ca:0.0005
    〜0.010%およびBi:0.01〜0.20%の1
    種または2種以上を添加した合金組成を有する請求項1
    のプラスチック成形金型用鋼。
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