JP3392982B2 - (2r)−2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノール、その製造法および用途 - Google Patents

(2r)−2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノール、その製造法および用途

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な光学活性化合物
である(2R)−2−メチル−4−(2,2,3−トリ
メチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノ
ール、その製造法、および有効成分としてその化合物
を含有する香料組成物に関する。(2R)−2−メチ
ル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテ
ン−1−イル)−1−ブタノールは、白檀様の優れた匂
いを有する化合物であり、これを含有する本発明の香料
組成物は、各種香粧品類、芳香剤、その他保健衛生材料
等に有効に使用できるものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、不斉な構造を有する生理活性物
質のうち有用なものは特定の光学異性体である場合が多
い。医薬、農薬、フェロモン、食品添加物等の分野で
は、特にその傾向があり、ラセミ混合物になることによ
って効果が著しく減少したり、マイナスの作用が生じる
こともある。香料の分野では、光学異性体間でその匂い
にほとんど差異が認められないものもあるが、大きな差
異が認められるものも知られている。たとえば、ハッカ
の匂いには(−)−メントール、グレープフルーツの匂
いには(+)−ヌートカトンが有用であり、これらはい
ずれも他の光学異性体とは匂いが異なるか、あるいは他
の光学異性体より匂いが強いものである。
【0003】最近では、不斉合成の手法や、光学活性体
の分離や分析の手法の発達により、更に多くの香料化合
物について、光学異性体間の匂いの差異が報告されるよ
うになった。たとえば、α−ダマスコン〔W. Pickenhan
gen, ACS Symposium Series,388 (Flavor Chemistry),
pp. 151-157 (1989) 〕、ジャスモン酸メチル〔Terry
E. Acreeら、J. Agric. Food Chem., Vol. 33, No. 3,
pp. 425-427 (1985)〕、ドデカヒドロ−3a,6,6,
9a−テトラメチルナフト[2,1−b]フラン〔G. O
hloff ら、Helv. Chim. Acta, Vol. 68, No. 7, pp. 20
22-2029 (1985)〕、3−(2,6,6−トリメチルシク
ロヘキサン−1−イル)プロパノール誘導体(特開平4-
21642 号公報)などは光学異性体間に非常に大きな匂い
の差異があると報告されているものである。本発明化合
物とやや類似の構造を有する3−メチル−5−(2,
2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)
−4−ペンテン−2−オールでは、(2R,3S)体は
(2R,3R)体より500倍も強い匂いを有すること
が報告されている(特開昭61-282330 号公報)。
【0004】このように、光学異性体どうしが異なった
化合物であるが如く異なった匂いを有する例が数多く知
られているが、光学活性な化合物がどのような構造を有
するときにその差異が生じるのか、構造と匂いとの相関
性はほとんど明らかになっていない。すなわち、光学異
性体間の匂いの差異は、容易に類推できない複雑な因子
があり、光学活性な化合物を合成して確認する以外に方
法がないのが現状である。ところで、2−メチル−4−
(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−
イル)−1−ブタノールは、白檀様の匂いを有し、香料
組成物として利用されることが知られている(特開昭55
-4374 号公報)。同公報には、この化合物は、カンフォ
レナールとα−ブロモプロピオン酸エステルとのウィッ
ティッヒ反応により得られる不飽和カルボン酸を、白
金、パラジウムまたはラネーニッケルを用いて側鎖中の
二重結合を接触水素添加し、次いで還元してカルボン酸
からアルコールとする方法か、カンフォレナールとプロ
ピオンアルデヒドとの塩基触媒下でのアルドール縮合に
より得られる不飽和アルデヒドを、接触水素添加し、次
いで還元してアルデヒドからアルコールとする方法によ
り合成されると開示されている。更に、原料のカンフォ
レナールを、天然の光学活性なα−ピネンから得れば、
シクロペンテン環の1位の不斉炭素原子について光学活
性な2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−
シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノールを得るこ
とができると開示されている。
【0005】このシクロペンテン環の1位の不斉炭素原
子の絶対配置と香りの関係については、(2,2,3−
トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)アルカノ
ール骨格を有するいくつかの化合物において、(R)体
でも(S)体でも、ラセミ体と同じ香りを有すること、
すなわち、この絶対配置は、その香りに何ら影響しない
ことが報告されている(特開昭52-133947 号公報および
特開昭60-209537 号公報)。しかし、2−メチル−4−
(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−
イル)−1−ブタノールの、ブタノール鎖の2位の不斉
炭素原子については、従来の合成法では、トレオ形とエ
リトロ形の等量混合物しか得ることができず、ブタノー
ル鎖の2位の不斉炭素原子が(R)体である本発明の
(2R)−2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル
−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノールを
単離または合成した例は今まで見当たらず、まして、そ
の匂いについては全く報告されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の通り、光学活性
な香料化合物には、光学異性体間に匂いの差異がある場
合があり、このような場合には、香料組成物中でラセミ
混合物を用いると、一方の光学異性体が有する性質を他
方の光学異性体が打ち消してしまうことがある。よっ
て、ラセミ混合物とは異なる匂いを有する光学活性な香
料化合物を開発することは有意義なことである。本発明
では、公知のラセミ混合物とは異なる、優れた匂いを有
する(2R)−2−メチル−4−(2,2,3−トリメ
チル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノー
ルを含有する香料組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような実情におい
て、本発明者らは、2−メチル−4−(2,2,3−ト
リメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテ
ン−1−オールを、ルテニウム−光学活性ホスフィン錯
体を触媒として不斉水素化すれば、目的とする光学活性
な化合物である(2R)−2−メチル−4−(2,2,
3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1
−ブタノールを容易に得ることができることを見出し、
更に、この光学異性体である(2S)−2−メチル−4
−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1
−イル)−1−ブタノールを合成し、両光学異性体およ
びラセミ混合物の匂いの差異を専門のパネラーによって
評価した結果、(2R)−2−メチル−4−(2,2,
3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1
−ブタノールは、その光学異性体またはラセミ混合物に
比べ著しく優れた匂いを有しており、新規な白檀様の匂
いを有する香料素材として非常に有用であることを見出
し、本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、次式(1)
【化5】
【0009】で表される(2R)−2−メチル−4−
(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−
イル)−1−ブタノール、および、次式(2)
【化6】
【0010】で表される2−メチル−4−(2,2,3
−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−
ブテン−1−オールを、ルテニウム−光学活性ホスフィ
ン錯体を触媒として不斉水素化することを特徴とする上
記化合物(1)の製造法、ならびに、有効成分として、
化合物(1)のみを含有することを特徴とする香料組成
物を提供するものである。
【0011】本発明化合物(1)の原料である化合物
(2)、すなわち2−メチル−4−(2,2,3−トリ
メチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン
−1−オールは、市販されているものをそのまま用いる
ことができる。また、合成によって得ることもできる。
【0012】合成法としては、例えば特公昭56-36176号
公報記載の方法を採用することができる。すなわち、カ
ンフォレナール(=2,2,3−トリメチル−3−シク
ロペンテン−1−アセトアルデヒド)とプロピオンアル
デヒドを、水酸化ナトリウムのような塩基触媒下でアル
ドール縮合し、得られた2−メチル−4−(2,2,3
−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−
ブテナールを、ラネーニッケルを触媒として、水素化ア
ルミニウムリチウムやテトラヒドロホウ酸ナトリウム等
の還元剤を用いて還元すればよい。尚、カンフォレナー
ルは公知の方法〔J. B. Lewis 、J. Org. Chem., Vol.
30, p.4271(1965)〕に従って、α−ピネンを過酢酸のよ
うな有機過酸を用いてエポキシ化して得られるピネンエ
ポキシドを異性化することにより得ることができる。
尚、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−
シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール
(2)は、シクロペンテン環の1位に不斉炭素を有して
おり、その立体配置により(S)体および(R)体の光
学活性体ならびにそれらの混合物が存在し、それぞれ
(S)−カンフォレナール、(R)−カンフォレナー
ル、またはそれらの混合物のカンフォレナールを原料と
して合成することができるが、本発明ではそのいずれを
も用いることができる。すなわち、本発明の方法によれ
ば、原料である2−メチル−4−(2,2,3−トリメ
チル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−
1−オールの、シクロペンテン環の1位の立体を保持し
たまま、本発明化合物(1)を得ることができ、この化
合物(1)は、前述の特開昭52-133947 号公報および特
開昭60-209537 号公報からも予想されるように、シクロ
ペンテン環の1位が(S)体であっても(R)体であっ
ても、あるいはそれらの混合物であっても、いずれも香
料素材として有用である。
【0013】2−メチル−4−(2,2,3−トリメチ
ル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1
−オールを不斉水素化するための触媒としては、ルテニ
ウム−光学活性ホスフィン錯体が用いられ、たとえば次
式(3)および(4)で表されるものは好ましく用いら
れる。
【0014】 Rux y Clz (CBP)2 (NEt3 w (3) (式中、CBPはR1 −BINAPまたはBIPHEP
で表される第三級ホスフィンを示し、Etはエチル基を
示し、yが0のとき、xは2、zは4、wは1を示し、
yが1のとき、xは1、zは1、wは0を示す。尚、R
1 −BINAPは次式(5)
【化7】
【0015】で表される第三級ホスフィンを示し、R1
は置換基を有していてもよいフェニル基または炭素数3
〜8のシクロアルキル基を示す。また、BIPHEPは
次式(6)
【化8】
【0016】で表される第三級ホスフィンを示し、R2
は置換基を有していてもよいフェニル基またはシクロヘ
キシル基を示し、R3 はメチル基またはメトキシ基を示
し、R4 は水素原子、メチル基またはメトキシ基を示
し、R5 は水素原子、メチル基、メトキシ基またはジ低
級アルキル置換アミノ基を示す。また、R3 とR4 が一
緒になって隣接するフェニル基とともにテトラヒドロナ
フチル基を形成してもよい)
【0017】 Ru(CBP)(OAc)2 (4) (式中、CBPは前記と同じ意味を有し、Acはアセチ
ル基を示す) 前記式(3)および(4)において、CBPが式(5)
で表されるR1 −BINAPである場合、R1 で表され
る置換基を有していてもよいフェニル基とは、フェニル
基のパラ位または1か所もしくは2か所のメタ位に、メ
チル基、tert−ブチル基のような低級アルキル基
(「低級」とは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖を意味
する、以下同じ)もしくはメトキシ基、エトキシ基のよ
うな低級アルコキシル基、または塩素原子のようなハロ
ゲン原子が置換していてもよいフェニル基を意味する。
また、R1 で表される炭素数3〜8のシクロアルキル基
では、特にシクロペンチル基およびシクロヘキシル基が
好ましい。
【0018】R1 −BINAPで表される第三級ホスフ
ィンの具体例としては、次のものを挙げることができ
る。 ホスフィン1:2,2’−ビス(ジフェニルホスフィ
ノ)−1,1’−ビナフチル(以下、単に「BINA
P」と略記する) ホスフィン2:2,2’−ビス[ジ−(p−トリル)ホ
スフィノ]−1,1’−ビナフチル(以下、「Tol−
BINAP」と略記する) ホスフィン3:2,2’−ビス[ジ−(p−tert−
ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル
(以下、「t−Bu−BINAP」と略記する)
【0019】ホスフィン4:2,2’−ビス[ジ−(m
−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル(以
下、「m−Tol−BINAP」と略記する) ホスフィン5:2,2’−ビス[ジ−(3,5−ジメチ
ルフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル(以
下、「DM−BINAP」と略記する) ホスフィン6:2,2’−ビス[ジ−(p−メトキシフ
ェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル(以下、
「MeO−BINAP」と略記する)
【0020】ホスフィン7:2,2’−ビス[ジ−(p
−クロロフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチ
ル(以下、「Cl−BINAP」と略記する) ホスフィン8:2,2’−ビス(ジシクロペンチルホス
フィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、「Cp−BI
NAP」と略記する) ホスフィン9:2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホス
フィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、「Cy−BI
NAP」と略記する) これらの第三級ホスフィンは、特開昭61-63690号公報、
特開平3-20290 号公報、特開平3-255090号公報、特開平
1-68386 号公報または特開平4-74192 号公報に記載され
ている方法によって調製することができる。
【0021】前記式(3)および(4)において、CB
Pが式(6)で表されるBIPHEPである場合、R2
で表される置換基を有していてもよいフェニル基とは、
フェニル基のパラ位または1か所もしくは2か所のメタ
位に、メチル基、tert−ブチル基のような低級アル
キル基もしくはメトキシ基、エトキシ基のような低級ア
ルコキシル基、または塩素原子のようなハロゲン原子が
置換していてもよいフェニル基を意味する。また、R5
がジ低級アルキル置換アミノ基である場合の、低級アル
キル基とは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル
基を意味する。
【0022】BIPHEPで表される第三級ホスフィン
の具体例としては、次のものを挙げることができる。 ホスフィン10:2,2’−ジメチル−6,6’−ビス
(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(以
下、「BIPHEMP」と略記する) ホスフィン11:2,2’−ジメチル−6,6’−ビス
(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビフェニ
ル(以下、「BICHEP」と略記する) ホスフィン12:2,2’−ビス(ジフェニルホスフィ
ノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オク
タヒドロ−1,1’−ビナフチル(以下、「H8 −BI
NAP」と略記する)
【0023】ホスフィン13:2,2’−ジメチル−
4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−6,6’−ビス
(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル ホスフィン14:2,2’,4,4’−テトラメチル−
6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−
ビフェニル ホスフィン15:2,2’−ジメトキシ−6,6’−ビ
ス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル ホスフィン16:2,2’,3,3’−テトラメトキシ
−6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’
−ビフェニル
【0024】ホスフィン17:2,2’,4,4’−テ
トラメチル−3,3’−ジメトキシ−6,6’−ビス
(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル ホスフィン18:2,2’−ジメチル−6,6’−ビス
[ジ−(p−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビフェ
ニル ホスフィン19:2,2’−ジメチル−6,6’−ビス
[ジ−(p−tert−ブチルフェニル)ホスフィノ]
−1,1’−ビフェニル ホスフィン20:2,2’,4,4’−テトラメチル−
3,3’−ジメトキシ−6,6’−ビス[ジ−(p−メ
トキシフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビフェニル
【0025】これらの第三級ホスフィンは、特開昭63-1
35397 号公報、特開平3-275691号公報、特開平4-139140
号公報、R. Schmid ら、Helv. Chim, Acta, Vol. 74, p
p. 370-389 (1991) 、R. Schmid ら、Helv. Chim, Act
a, Vol. 71, pp. 897-929 (1988) またはN. Yamamoto
ら、Chem. Phar. Bull., Vol.39, pp. 1085-1087 (199
1) に記載されている方法によって調製することができ
る。
【0026】R1 −BINAPまたはBIPHEPで表
される第三級ホスフィンは、いずれも(R)体および
(S)体が存在するが、前記式(1)で表される本発明
化合物(2R)−2−メチル−4−(2,2,3−トリ
メチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノ
ールを得るためには、(R)体のホスフィンを用いる。
尚、本発明化合物(1)の異性体である(2S)−2−
メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペ
ンテン−1−イル)−1−ブタノールを得るためには、
(S)体のホスフィンを用いる。前記式(3)で表され
るルテニウム−光学活性ホスフィン錯体は、たとえば、
T. Ikariyaらの方法〔J. Chem. Soc., Chem. Commun.,
pp. 922-924 (1985)〕または特開昭61-63690号公報に記
載されている方法によって得ることができる。すなわ
ち、塩化ルテニウムとシクロオクタ−1,5−ジエン
(以下、「COD」と略記する)をエタノール溶媒中で
反応させて得られる[RuCl2 (COD)]q (qは
自然数を示す)と、R1 −BINAPまたはBIPHE
Pで表される第三級ホスフィンとを、トリエチルアミン
の存在下、トルエンまたはエタノール等の溶媒中で加熱
反応させることにより製造できる。
【0027】式(3)で表されるルテニウム−光学活性
ホスフィン錯体の具体例としては次のものを挙げること
ができる。尚、錯体中の第三級ホスフィンの立体配置の
表記は省略する。 錯体1:Ru2 Cl4 (BINAP)2 NEt3 錯体2:Ru2 Cl4 (Tol−BINAP)2 NEt
3 錯体3:Ru2 Cl4 (t−Bu−BINAP)2 NE
3 錯体4:Ru2 Cl4 (m−Tol−BINAP)2
Et3 錯体5:Ru2 Cl4 (DM−BINAP)2 NEt3 錯体6:Ru2 Cl4 (MeO−BINAP)2 NEt
3 錯体7:Ru2 Cl4 (Cl−BINAP)2 NEt3 錯体8:Ru2 Cl4 (Cp−BINAP)2 NEt3 錯体9:Ru2 Cl4 (Cy−BINAP)2 NEt3 錯体10:Ru2 Cl4 (BIPHEMP)2 NEt3 錯体11:Ru2 Cl4 (BICHEP)2 NEt3 錯体12:Ru2 Cl4 (H8 −BINAP)2 NEt
3 錯体13:RuHCl(BINAP)2 錯体14:RuHCl(Tol−BINAP)2 錯体15:RuHCl(t−Bu−BINAP)2
【0028】前記式(4)で表されるルテニウム−光学
活性ホスフィン錯体は、たとえば、特開昭62-265293 号
公報に記載の方法によって得ることができる。すなわ
ち、前記式(3)で表されるルテニウム−光学活性ホス
フィン錯体の一種であるRu2Cl4 (CBP)2 NE
3 と、無水酢酸ナトリウムを、メタノール、エタノー
ル、tert−ブタノール等のアルコール溶媒中で加熱
反応させることにより製造することができる。
【0029】式(4)で表されるルテニウム−光学活性
ホスフィン錯体の具体例としては次のものを挙げること
ができる。尚、錯体中の第三級ホスフィンの立体配置の
表記は省略する。 錯体16:Ru(BINAP)(OAc)2 錯体17:Ru(Tol−BINAP)(OAc)2 錯体18:Ru(t−Bu−BINAP)(OAc)2 錯体19:Ru(m−Tol−BINAP)(OAc)
2 錯体20:Ru(DM−BINAP)(OAc)2 錯体21:Ru(MeO−BINAP)(OAc)2 錯体22:Ru(Cl−BINAP)(OAc)2 錯体23:Ru(Cp−BINAP)(OAc)2 錯体24:Ru(Cy−BINAP)(OAc)2 錯体25:Ru(BIPHEMP)(OAc)2 錯体26:Ru(BICHEP)(OAc)2 錯体27:Ru(H8 −BINAP)(OAc)2
【0030】本発明方法を実施するには、あらかじめ窒
素ガスまたはアルゴンガスのような不活性ガスで置換し
たオートクレーブのような耐圧容器に、前記式(2)で
表される原料化合物である2−メチル−4−(2,2,
3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2
−ブテン−1−オールおよびルテニウム−光学活性ホス
フィン錯体を入れ、更に溶媒を加えて、均一溶液とした
後、水素雰囲気下で攪拌反応させ不斉水素化を行う。触
媒であるルテニウム−光学活性ホスフィン錯体の使用量
は、前記式(2)で表される原料化合物に対し、約0.00
01〜0.02倍モルの範囲とするとよい。0.0001倍モルより
少ない量では、触媒としての効果を充分奏さず、0.02倍
モルより多い量では、使用量に相応する効果が充分に得
られず不経済となる。使用する溶媒としては、メタノー
ル、エタノールのようなアルコール類、塩化メチレンの
ようなハロゲン化炭化水素類等を挙げることができ、こ
れらは単独または混合して用いられる。また、これらの
溶媒は無水溶媒であることが好ましい。水素圧は約5〜
100kg/cm、好ましくは約10〜50kg/cm、反応温度は
約10〜120 ℃、好ましくは約25〜80℃、反応時間は5 〜
72時間、好ましくは8〜36時間とするのが適当である。
反応終了後、溶媒を留去し、減圧蒸留等の常法によって
精製すれば、目的とする(2R)−2−メチル−4−
(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−
イル)−1−ブタノールを、容易かつ高収率、高い光学
純度で得ることができる。
【0031】このようにして得られた(2R)−2−メ
チル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペン
テン−1−イル)−1−ブタノール(以下、単に「(2
R)体」と記載することもある)は、優れた白檀様の匂
いを有しており、この匂いは、異性体である(2S)−
2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シク
ロペンテン−1−イル)−1−ブタノール(以下、単に
「(2S)体」と記載することもある)および両異性体
の混合物であるラセミ混合物(以下、単に「ラセミ体」
と記載することもある)の白檀様の匂いと比べ、好まし
く、かつ、強いことが確認された。また、皮膚に対する
安全性についても検討したところ、(2R)体、すなわ
ち本発明化合物(1)は、従来のラセミ体に比べ、優れ
ていることが分かった。
【0032】よって、有効成分として、本発明化合物
(1)のみを含有させることにより、新鮮かつ嗜好性が
高く、皮膚に対し安全な、香気付与剤、香気改良剤、香
気補強剤等の香料組成物を提供することができる。な
お、本発明香料組成物中の、本発明化合物(1)の含有
量は、目的に応じて適宜決定すればよく、特に限定され
ないが、通常全体の約1〜50重量%とするとよい。ま
た、本発明香料組成物には、通常使用される調合香料や
調香用基剤を適宜配合することができる。このようにし
て得られる本発明の香料組成物は、このものを香気成分
として含有する各種香粧品類、芳香剤、その他保健衛生
材料等を提供することができる。すなわち、香水、コロ
ン類;シャンプー、リンス、トリートメント類;ヘアト
ニック、ヘアクリーム、ポマードその他の毛髪用化粧料
基剤;白粉、口紅、その他の化粧料基剤;化粧料洗剤、
食器用洗剤、洗濯用洗剤、石鹸等の洗浄剤;ソフトナ
ー、漂白剤、消毒剤、防臭剤、室内芳香剤、殺虫剤;歯
磨き、マウスウォッシュ等の口腔用組成物等に、その香
気を付与できる適当量を配合し、これらの商品価値を高
めることができる。
【0033】
【実施例】次に、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、
実施例中の分析には、次の分析機器を用いて行った。 ガスクロマトグラフィー:5890−A(ヒューレットパッカード社製) カラム:Chemical bonded column OV-1 (25mm ×0.25mm, ID 0.15mm) (ジーエルサイエンス株式会社製) 温度:100 〜220 ℃(4℃/分で昇温) 比旋光度:DIP−370(日本分光工業株式会社製) プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR):AM−400(400MHz) (ブルッカー社製)
【0034】実施例1 (2R)−2−メチル−4−[(S)−2,2,3−トリ
メチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタノ
ールの製造:あらかじめアルゴンガスで置換した200ml
のオートクレーブに、2−メチル−4−[(R)−2,
2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル]
−2−ブテン−1−オール(光学純度97%e.e. の(−)
−α−ピネンを原料として、公知の方法に従って合成し
たもの。すなわち、(−)−α−ピネンを過酢酸でエポ
キシ化してピネンエポキシドとし、これをJ. B. Lewis
の方法〔J. Org. Chem., Vol. 30, p.4271(1965)〕に従
って異性化し、得られたカンフォレナールを特公昭56-3
6176号公報記載の方法に従ってプロピオンアルデヒドと
アルドール縮合し、次いで還元したもの)5.0g(25.7mmo
l)、Ru2 Cl4[(R)−Tol−BINAP]2 NE
3 7.7mg(4.3 μmol)および無水メタノール20mlを入
れ、水素圧50kg/cm2、反応温度80℃、回転率400r.p.m.
で攪拌し反応させた。
【0035】ガスクロマトグラフィーにより、反応開始
24時間後に原料の2−メチル−4−[(R)−2,2,
3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル]−2
−ブテン−1−オールがすべて消失したことを確認した
後、反応溶液を取り出し、減圧下ロータリーエバポレー
ターで溶媒のメタノールを留去し、次いで、減圧蒸留(9
6 〜100 ℃, 2.0mmHg)を行い、無色油状の目的化合物
(2R)−2−メチル−4−[(S)−2,2,3−ト
リメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタ
ノール(以下、「(2R,S)体」と略記することがあ
る)4.4g(22.5mmol, 収率87.8%)を得た。このものの物
性値は、以下の通りであった。 比旋光度:[α]D 25= +17.3°(Neat)1 H-NMR(CDCl3) δppm : 5.23(bs, 1H), 3.54(dd, J=5.
7, 10.5Hz, 1H), 3.44(dd, J=6.5, 10.5Hz, 1H), 2.24
〜2.37(m, 1H), 1.76 〜1.86(m, 1H), 1.63 〜1.75(m,
2H), 1.60(bs, 3H), 1.26 〜1.57(m, 3H), 1.13 〜1.25
(m, 1H), 1.00〜1.11(m, 1H), 0.97(s, 3H), 0.93(d, J
=6.7Hz, 3H), 0.76(s, 3H)
【0036】さらに、得られた(2R,S)体のジアス
テレオ純度は、(R)−α−メトキシ−α−トリフルオ
ロメチルフェニル酢酸〔「(R)−MTPA」と略記す
る〕とのエステル〔次式(7)〕を合成し、このエステ
ルの1H-NMRの積分値より決定した。
【化9】
【0037】すなわち、得られた(2R)−2−メチル
−4−[(S)−2,2,3−トリメチル−3−シクロペ
ンテン−1−イル ]−1−ブタノール26.1mg(133.2μmo
l)に、(R)−MTPA96.0mg(410.3μmol)、ジシクロ
ヘキシルカルボジイミド110.2mg(534.1 μmol)およびピ
リジン1.0g(12.6mmol)を加えて室温で20時間攪拌後、5%
塩酸水溶液中にクエンチし、次いで有機層をヘキサンで
抽出し、遊離した尿素誘導体を濾過後、5%塩酸水溶液、
飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に用い
て洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、溶媒留去
後、トルエンを溶媒として用いたシリカゲルカラムクロ
マトグラフィーで精製し、目的とするエステルを得た。
【0038】このエステルの1H-NMRを測定したところ、
アシルオキシ基に隣接するメチレン基〔本発明化合物
(1)のキラル中心の隣のメチレン基に相当する〕のプ
ロトンのピークが、非等価ジェミナルカップリングおよ
びフェニル基の磁気異方性効果、ならびに隣接するメチ
ン基のカップリングの相互作用により影響を受け、δ4.
0 〜4.3ppmに図1のように観測された。図中のa,bお
よびcの各ピークの積分値を求め、下記式1より、目的
とするメチル基のジアステレオ存在比を求めた。
【0039】
【数1】 (2R,S)体:(2S,S)体=(a+c):b 〔ここで、(2S,S)体とは、(2S)−2−メチル
−4−[(S)−2,2,3−トリメチル−3−シクロペ
ンテン−1−イル ]−1−ブタノールを意味する、以下
同様。〕 求められた存在比の差〔(2R,S)体−(2S,S)
体〕より、(2R)−2−メチル−4− [(S)−2,
2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]
−1−ブタノールのジアステレオ純度は、74%d.e. であ
ると決定した。
【0040】次に、得られた(2R,S)体の匂いおよ
び皮膚に対する安全性を比較評価するために、以下の方
法により、このもののジアステレオ異性体である(2
S,S)体を製造し、さらに(2R,S)体と(2S,
S)体をそれぞれジアステレオ純度100%d.e.に換算して
1:1の割合となるように混合して2位の炭素がラセミ
混合物である2−メチル−4−[(S)−2,2,3−ト
リメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタ
ノール(以下、「(ラセミ,S)体」と略記することが
ある)を得た。
【0041】(2S)−2−メチル−4−[(S)−2,
2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]
−1−ブタノールの製造:(2R,S)体の製造で用い
たのと同じ原料、2−メチル−4− [(R)−2,2,
3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−2
−ブテン−1−オール5.0g(25.7mmol)、Ru2 Cl
4[(S)−Tol−BINAP]2 NEt3 23.3mg(12.
9 μmol)および無水メタノール20mlを入れ、水素圧50kg
/cm2、反応温度50℃、回転率300r.p.m. で攪拌し反応さ
せた。ガスクロマトグラフィーにより、反応開始8時間
後に原料の2−メチル−4−[(R)−2,2,3−ト
リメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−2−ブテ
ン−1−オールがすべて消失したことを確認した後、反
応溶液を取り出し、減圧下ロータリーエバポレーターで
溶媒のメタノールを留去し、次いで、減圧蒸留(98 〜10
2 ℃, 3.5mmHg)を行い、無色油状の目的化合物(2S)
−2−メチル−4−[(S)−2,2,3−トリメチル−
3−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタノール4.4g
(22.5mmol,収率87.8%)を得た。このものの物性値は、以
下の通りであった。 比旋光度:[α]D 25= +6.3°(Neat)1 H-NMR(CDCl3) δppm : 5.23(bs, 1H), 3.54(dd, J=5.
7, 10.5Hz, 1H), 3.44(dd, J=6.5, 10.5Hz, 1H), 2.24
〜2.37(m, 1H), 1.76 〜1.86(m, 1H), 1.63 〜1.75(m,
2H), 1.60(bs, 3H), 1.26 〜1.57(m, 3H), 1.13 〜1.25
(m, 1H), 1.00〜1.11(m, 1H), 0.97(s, 3H), 0.93(d, J
=6.7Hz, 3H), 0.76(s, 3H) さらに、(2R,S)体と同様にしてジアステレオ純度
を測定したところ、78%d.e. であった。
【0042】匂いの評価:上記で得られた本発明化合物
である(2R,S)体、その異性体である(2S,S)
体および(ラセミ,S)体の匂いについて、5人の専門
パネラーによって評価した結果を第1表に示した。尚、
表中のいき値は、各検体化合物をエタノールで希釈した
ときに、その匂いを検知できた最低濃度の5人の平均値
である。
【0043】
【表1】
【0044】第1表から明らかなように、本発明化合物
は、その異性体である(2S,S)体および(ラセミ,
S)体の匂いとは差別化できる、強く優れた、独特な白
檀様の匂いを有していた。
【0045】皮膚に対する安全性の評価:前記で得られ
た本発明化合物である(2R,S)体および(ラセミ,
S)体について、以下の方法により、皮膚一時刺激性試
験を行い、皮膚に対する安全性を評価した。 試料溶液:各検体化合物をエタノールでそれぞれ20重量
% 、10重量% 、5 重量% の濃度に調整したものを用い
た。 実験動物:体重約270gの雄のハートレイ系モルモットを
2週間予備飼育し、体重が350 〜400gになった健康なも
のを使った。試験群は一群5匹とした。 試験方法:毛刈、剃毛した実験動物を腹位に固定し、1.
5cm ×1.5cm の3区画に、3種類の濃度の試料溶液各0.
02mlを塗布し、24時間後の皮膚の状態を第2表の基準に
基づき判定し、その結果を第3表に示した。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】 第3表から明らかなように、本発明化合物は、(ラセ
ミ,S)体に比べ、皮膚一次刺激性がなく、皮膚に対す
る安全性が優れていた。
【0048】実施例2 (2R)−2−メチル−4−[(R)−2,2,3−トリ
メチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタノ
ールの製造:あらかじめアルゴンガスで置換した200ml
のオートクレーブに、2−メチル−4−[(S)−2,
2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]
−2−ブテン−1−オール(光学純度測定値97%e.e. の
(+)−α−ピネンを原料として、実施例1に記載した
方法と同様に合成したもの)5.0g(25.7mmol)、Ru2
4 [(R)−Tol−BINAP]2 NEt3 7.7mg
(4.3 μmol)および無水メタノール20mlを入れ、水素圧8
0kg/cm2、反応温度50℃、回転率400r.p.m. で攪拌し反
応させた。ガスクロマトグラフィーにより、反応開始24
時間後に原料の2−メチル−4−[(S)−2,2,3−
トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル]−2−ブ
テン−1−オールがすべて消失したことを確認した後、
反応溶液を取り出し、減圧下ロータリーエバポレーター
で溶媒のメタノールを留去し、次いで、減圧蒸留(99 〜
100 ℃, 2.0mmHg)を行い、無色油状の(2R)−2−メ
チル−4−[(R)−2,2,3−トリメチル−3−シク
ロペンテン−1−イル ]−1−ブタノール(以下、
「(2R,R)体と略記することがある)4.5g(22.9mmo
l,収率89.1%)を得た。このものの物性値は以下の通りで
あった。比旋光度は、[α]D 25= -6.4°(Neat)1 H-NMR(CDCl3) δppm : 5.23(bs, 1H), 3.54(dd, J=5.
7, 10.5Hz, 1H), 3.44(dd, J=6.5, 10.5Hz, 1H), 2.24
〜2.37(m, 1H), 1.76 〜1.86(m, 1H), 1.63 〜1.75(m,
2H), 1.60(bs, 3H), 1.26 〜1.57(m, 3H), 1.13 〜1.25
(m, 1H), 1.00〜1.11(m, 1H), 0.97(s, 3H), 0.93(d, J
=6.7Hz, 3H), 0.76(s, 3H) さらに、実施例1と同様にしてジアステレオ純度を測定
したところ、76%d.e.であった。
【0049】次に、得られた(2R,R)体の匂いを比
較評価するために、以下の方法により、このもののジア
ステレオ異性体である(2S,R)体〔(2S)−2−
メチル−4−[(R)−2,2,3−トリメチル−3−シ
クロペンテン−1−イル ]−1−ブタノール、以下同
様〕を製造し、さらに(2R,R)体と(2S,R)体
をそれぞれジアステレオ純度100 %d.e.に換算して1:
1の割合となるように混合して、2位の炭素がラセミ混
合物である2−メチル−4−[(R)−2,2,3−トリ
メチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタノ
ール(以下、「(ラセミ,R)体と略記することがあ
る)を得た。
【0050】(2S)−2−メチル−4−[(R)−2,
2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]
−1−ブタノールの製造:あらかじめアルゴンガスで置
換した200ml のオートクレーブに、(2R,R)体の製
造で用いたのと同じ原料、2−メチル−4−[(S)−
2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イ
ル ]−2−ブテン−1−オール5.0g(25.7mmol)、Ru2
Cl4 [(S)−Tol−BINAP]2 NEt3 7.7m
g(4.3 μmol)および無水メタノール20mlを入れ、水素圧
50kg/cm2、反応温度80℃、回転率400r.p.m. で攪拌し反
応させた。ガスクロマトグラフィーにより、反応開始24
時間後に原料の2−メチル−4−[(S)−2,2,3−
トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−2−ブ
テン−1−オールがすべて消失したことを確認した後、
反応溶液を取り出し、減圧下ロータリーエバポレーター
で溶媒のメタノールを留去し、次いで、減圧蒸留(97 〜
100 ℃, 3.5mmHg)を行い、無色油状の目的化合物(2
S)−2−メチル−4−[(R)−2,2,3−トリメチ
ル−3−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタノール
4.4g(22.5mmol,収率87.8%)を得た。このものの物性値は
以下の通りであった。 比旋光度:[α]D 25= -17.2°(Neat)1 H-NMR(CDCl3) δppm : 5.23(bs, 1H), 3.54(dd, J=5.
7, 10.5Hz, 1H), 3.44(dd, J=6.5, 10.5Hz, 1H), 2.24
〜2.37(m, 1H), 1.76 〜1.86(m, 1H), 1.63 〜1.75(m,
2H), 1.60(bs, 3H), 1.26 〜1.57(m, 3H), 1.13 〜1.25
(m, 1H), 1.00〜1.11(m, 1H), 0.97(s, 3H), 0.93(d, J
=6.7Hz, 3H), 0.76(s, 3H) さらに、実施例1と同様にしてジアステレオ純度を測定
したところ、73%d.e.であった。
【0051】匂いの評価:上記で得られた(2R,R)
体、その異性体である(2S,R)体および(ラセミ,
R)体の匂いについて、実施例1と同様に5人の専門パ
ネラーによって評価した結果を第4表に示した。尚、表
中のいき値は、各検体化合物をエタノールで希釈したと
きに、その匂いを検知できた最低濃度の5人の平均値で
ある。
【0052】
【表4】
【0053】第4表から明らかなように、本発明化合物
は、その異性体である(2S,R)体および(ラセミ,
R)体の匂いとは差別化できる、強く優れた、独特な白
檀様の匂いを有していた。
【0054】実施例3 フローラル調香料組成物:以下の処方に従い、実施例1
で得た(2R)−2−メチル−4−[(S)−2,2,3
−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−1−
ブタノールを配合して、嗜好性の高いフローラル調香料
組成物を調製した。
【0055】 成分 重量部 実施例1で得た(2R)−2−メチル−4−[(S)−2,2,3− トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタノール 20 l−シトロネロール 200 フェニルエチルアルコール 100 l−ヒドロキシシトロネラール 80 4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)− 3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド 70 p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド 100 p−イソブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド 20 酢酸ベンジル 100 リナロール 100 α−ヘキシルシンナミックアルデヒド 120 α−テルピネオール 40 ストラッス 40 5%インドールの安息香酸ベンジル溶液 10 ──────────────────────────────────── 合計 1000
【0056】尚、(2R,S)体の代わりに(ラセミ,
S)体を配合した比較組成物を調製し、上記本発明の香
料組成物の匂いと比較したところ、5人の専門パネラー
全員が、(2R,S)体を配合した本発明の香料組成物
の方が、クリーンでナチュラルであり、優雅なフローラ
ル調の匂いを有しており、断然嗜好性が高いと評価し
た。
【0057】実施例4 フローラル調香料組成物:実施例3の処方において、
(2R,S)体の代わりに、実施例2で得た(2R)−
2−メチル−4−[(R)−2,2,3−トリメチル−3
−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタノールを配合
して、嗜好性の高いフローラル調香料組成物を調製し
た。また、この(2R,R)体の代わりに(ラセミ,
R)体を配合した比較組成物を調製し、上記本発明の香
料組成物の匂いと比較したところ、5人の専門パネラー
全員が、(2R,R)体を配合した本発明の香料組成物
の方が、クリーンでナチュラルであり、優雅なウッディ
ーフローラル調の匂いを有しており、断然嗜好性が高い
と評価した。
【0058】実施例5 ムスク調香料組成物:以下の処方に従い、実施例1で得
た(2R)−2−メチル−4−[(S)−2,2,3−ト
リメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタ
ノールを配合して、嗜好性の高いムスク調香料組成物を
調製した。
【0059】 成分 重量部 実施例1で得た(2R)−2−メチル−4−[(S)−2,2,3− トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル ]−1−ブタノール 70 エチレンブラシレート 200 エチレンドデカノエート 100 1,3,4,6,7,8−へキサヒドロ−4,6,6,7,8,8− ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン 150 シクロペンタデカノリド 50 ムスコン 20 サリチル酸アミル 40 ベルガモット油 40 ゼラニウム油 25 ヘリオトロピン 40 アセチルセドレン 30 p−イソブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド 10 クマリン 10 ジヒドロジャスモン酸メチル 20 ラベンダー油 45 ローズアブソリュート 5 レモン油 20 l−シトロネロール 10 酢酸ベンジル 10 オークモスレジン 5 ジプロピレングリコール 100 ──────────────────────────────────── 合計 1000
【0060】尚、(2R,S)体の代わりに(ラセミ,
S)体を配合した比較組成物を調製し、上記本発明の香
料組成物の匂いと比較したところ、5人の専門パネラー
全員が、(2R,S)体を配合した本発明の香料組成物
の方が、強さがあり、ムスクの特徴がよく現れており、
断然嗜好性が高いと評価した。
【0061】実施例6 ムスク調香料組成物:実施例5の処方において、(2
R,S)体の代わりに、実施例2で得た(2R)−2−
メチル−4−[(R)−2,2,3−トリメチル−3−シ
クロペンテン−1−イル ]−1−ブタノールを配合し
て、嗜好性の高いムスク調香料組成物を調製した。ま
た、この(2R,R)体の代わりに(ラセミ,R)体を
配合した比較組成物を調製し、上記本発明の香料組成物
の匂いと比較したところ、5人の専門パネラー全員が、
(2R,R)体を配合した本発明の香料組成物の方が、
断然嗜好性が高いと評価した。
【0062】
【発明の効果】本発明によれば、新規な光学活性化合物
である(2R)−2−メチル−4−(2,2,3−トリ
メチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノ
ールを、容易かつ高収率で、しかも高い光学純度(ジア
ステレオ純度)で得ることができる。この化合物は、従
来のものと差別化できる、強く優れた、独特な白檀様の
匂いを有しており、有効成分としてこれのみを含有する
本発明の香料組成物は、各種香粧品類、芳香剤、その他
保健衛生材料等の広い分野に有効に使用できるものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得た本発明化合物(1)と(R)
−α−メトキシ−α−トリフルオロメチルフェニル酢酸
とのエステルの1H-NMRスペクトルの一部である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 C07M 7:00 C07M 7:00 (56)参考文献 特開 昭55−4374(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 33/00 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次式(1) 【化1】 で表される(2R)−2−メチル−4−(2,2,3−
    トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブ
    タノール。
  2. 【請求項2】 次式(2) 【化2】 で表される2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル
    −3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−
    オールを、ルテニウム−光学活性ホスフィン錯体を触媒
    として不斉水素化することを特徴とする次式(1) 【化3】 で表される(2R)−2−メチル−4−(2,2,3−
    トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブ
    タノールの製造法。
  3. 【請求項3】 有効成分として、次式(1) 【化4】 で表される(2R)−2−メチル−4−(2,2,3−
    トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブ
    タノールのみを含有することを特徴とする香料組成物。
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