JP3262176B2 - 超電導磁石装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は超電導磁石に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の超電導磁石装置を図４、図５を参
照して説明する。

【０００３】一般に超電導磁石は、超電導コイル１、シ
ールド板２及び真空容器３により構成されている。超電
導コイル１は、超電導導体の巻線を液体ヘリウムが充填
された金属容器内に収容し、更に、この超電導コイル１
を低電気抵抗の材料で構成された真空容器３内に収納
し、対流伝熱を防ぐため真空容器３内は真空に保持され
ており、超電導コイル１と常温の真空容器３壁との中間
に輻射伝熱を低減させるため、液体窒素で冷却されてい
る低電気抵抗材のシールド板で超電導コイルを覆ったシ
ールド２を設けておく。又超電導コイル１は、真空容器
３に対し、低熱伝導材のコイル支持棒４により支持して
いる。

【０００４】超電導導体を冷却する液体ヘリウムの熱容
量は小さく、入熱により超電導導体の温度が臨界温度を
超えると超電導状態が常電導状態に戻るので、超電導コ
イル１を安定した超電導状態に保持するためには超電導
コイル１内に発生する熱、及び外部より超電導コイル１
内への侵入する熱を極力防止し、低減することが必要と
なつている。

【０００５】図５に示すように、超電導コイル１正面方
向から変動磁場５が作用した時、前記変動磁場により超
電導コイル１の容器に誘導電流が流れて発熱するのを防
ぐため、超電導コイル１の真空容器３及びシールド板２
を低電気抵抗の材料で構成し、真空容器３及びシールド
板２に誘導電流を発生させて変動磁場のシールドとなる
ようにしている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかし、この真空容器
３及びシールド板２に流れる誘導電流は、超電導コイル
の磁場の作用によつて電磁力を生じ、真空容器３の壁或
いは、シールド板２を振動させる。更に真空容器壁の振
動はコイル支持棒４を介して超電導コイル１やシールド
板２を振動させて、シールド板２と超電導コイル１間に
相対変位が生じる。

【０００７】超電導コイルの周辺で導電性の板が振動を
起こすと、誘導電流が発生しその変動磁場の影響により
超電導コイルの容器壁にも誘導電流が生ずる。この誘導
電流により超電導コイル容器壁に発熱が生じ超電導コイ
ル冷却用の液体ヘリウムの蒸発が増加する。

【０００８】本発明は、外部よりの変動磁場を受ける超
電導磁石装置において、超電導コイル冷却の液体ヘリウ
ムを充填した金属容器の発熱を抑止し、超電導磁石の安
定性を向上させることを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記の目的達成のため本
発明は、超電導磁石の真空容器の正面外側にアルミニュ
ーム或いは銅などの導電性の板材からなるダンパを設け
ると共に、真空容器内のシールドをＣＦＲＰなどのカー
ボンファイバー強化板材で形成する。同時にシールド板
の輻射率を低減させるため、アルミニューム或いは銅な
どの輻射率の低い金属をシールド板の表裏面に蒸着す
る。

【００１０】

【作用】この構成により、導電性材のダンパが外部から
超電導磁石に加わる磁気をシールドするので、真空容器
壁に流れる誘導電流が減少し、超伝導コイルの磁場との
作用で生ずる電磁力も減少し、振動の発生が減少する。
又コイル支持棒を介してシールド板、超伝導コイルに伝
達される振動も減少する。

【００１１】又、カーボンファイバー強化材によるシー
ルド板の電気抵抗はステンレスより１桁以上高いので、
外部変動磁場により、或いはシールド板と超電導コイル
との相対変位が生じても、それによるシールド板に流れ
る誘導電流は減少する。従って超電導コイルの容器に発
生する誘導電流、及びジュール熱も減少する。

【００１２】シールド板の表裏面に蒸着させた低輻射率
の金属層により、真空容器よりシールド板、及びシール
ド板より超電導コイルへ伝達する輻射伝熱量は減少す
る。

【００１３】又、カーボンファイバー強化材の熱伝導率
は種々に調整することが可能であるので、シールド板内
に温度差が生じないように選択することができる。

【００１４】

【実施例】図１及び図２により本発明による超電導磁石
装置を説明する。

【００１５】液体ヘリウムを充填した金属容器内に収容
した超電導コイル１を、真空状態で格納している低電気
抵抗材によりなる真空容器３、及び超電導コイル１と真
空容器３との中間にＣＦＲＰなどによるカーボンファイ
バー強化板材で形成したシールド板によるシールド６で
超電導磁石を覆って構成する。シールド板６及び超電導
コイル１は、コイル内側を通って真空容器３壁に接続し
たコイル支持棒４により支持する。

【００１６】表裏面にアルミニューム或いは銅などの低
輻射率の金属材を蒸着して蒸着層８を形成したシールド
板６で超電導コイル１を覆うシールドを形成し、これを
液体窒素で冷却する。

【００１７】更に、真空容器３の正面外側にアルミニュ
ーム或いは銅などの低電気抵抗材で構成したダンパ７を
設ける。ダンパ７は真空容器の正面側とほぼ同じ大きさ
で、その表面に接合する。

【００１８】上記の構成によりダンパ７は外部磁場をシ
ールドする作用があるので、真空容器３壁の誘導電流が
減少し、電磁力が小さくなることにより振動が減少す
る。従って、コイル支持棒により真空容器３に接続され
ているシールド板６及び超電導コイル１の振動も減少す
る。

【００１９】又、シールド板６はカーボンファイバー強
化材で構成しているので、シールド板６に流れる誘導電
力は小さく、シールド板６と超電導コイル１間に相対変
位が生じても超電導コイル１の容器に発生するジュール
熱量は小さくなる。

【００２０】シールド板表裏面に蒸着した低輻射率の金
属層８により、真空容器３とシールド板６、及びシール
ド板６と超伝導コイル１容器間の輻射伝熱量は低下す
る。

【００２１】このような構成により、シールド板６と超
電導コイル１容器との相対変位が生じて超電導コイル１
に誘導電流が流れ、超電導コイル１容器に発熱が生じる
ことを抑えることとなる。

【００２２】本発明の他の実施例として図３に示すもの
は、ダンパ７の外周に立ち上がった縁９を設け、この端
部が真空容器の外面に接触し、他は真空容器表面から間
隙をおいて両者を組合わせ、接合する。

【００２３】このようにダンパ７と真空容器３がダンパ
７の周囲端部９のみで接触しているので、ダンパ７の誘
導電流に起因する振動が、真空容器３、及びコイル支持
棒４を介してシールド板６、超伝導コイル１に伝達され
るのを抑制する。従って、シールド板６、超電導コイル
１の振動も少なくなり、これらの間の相対変位も減少す
ることとなる。

【００２４】

【発明の効果】本発明により、超伝導磁石における外部
変動磁場に起因する超電導コイル容器の発熱を低減し、
液体ヘリウムの蒸発を抑えて超電導磁石の安定化を図る
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による超電導磁石装置の断面図、

【図２】図１の部分詳細図、

【図３】本発明の他の実施例の断面図である。

【図４】従来の超電導磁石装置の斜視図である。

【図５】図４のＶ−Ｖ線矢視図である。

【符号の説明】

１ 超電導コイル ２、６ シールド（シールド板） ３ 真空容器 ４ コイル支持棒 ７ ダンパ ８ 蒸着層 ９ （ダンパの）縁

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寺井 元昭 東京都中野区東中野２−17−６ 東中野 フラット202 (72)発明者 鈴木 栄司 東京都国分寺市光町二丁目８番地38 財 団法人鉄道総合技術研究所内 (72)発明者 戸来 年樹 東京都国分寺市光町二丁目８番地38 財 団法人鉄道総合技術研究所内 (72)発明者 大森 順次 神奈川県横浜市鶴見区末広町２丁目４番 地 株式会社東芝 京浜事業所内 (56)参考文献 特開 昭63−311706（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−194171（ＪＰ，Ａ) 特開 昭50−118697（ＪＰ，Ａ) 特開 昭64−65809（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−63246（ＪＰ，Ａ) 実開 昭63−191609（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H01L 39/02 - 39/04 H01L 39/14 - 39/16

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 超電導導体巻線を金属容器内の液体ヘリ
   ウムに浸漬してなる超電導コイルと、これを真空状態で
   収容する真空容器と、この真空容器内部で超電導コイル
   を覆うシールドを設けて構成された超電導磁石装置にお
   いて、 前記真空容器外側に導電性の板によるダンパーを設け、
   更に、前記シールドをカーボンファイバー強化材で構成
   したことを特徴とする超電導磁石装置。
2. 【請求項２】 表裏面に低輻射率の材料による蒸着層を
   形成したシールド板で構成したシールドとした請求項１
   記載の超電導磁石装置。
3. 【請求項３】 周囲に設けた縁を介して、真空容器の外
   面との間に空隙を設けて接合させたダンパーとした請求
   項１記載の超電導磁石装置。