従来から、老人ホームや在宅の患者等の高齢者の安全な摂食・嚥下のために、呼吸機能の維持・改善が必須条件であることが知られ、加齢と共にその機能が低下することも知られている。安全な摂食・嚥下を継続するという点で誤嚥も課題の1つである。誤嚥は、呼吸・循環機能の低下、疾病の特性、食事介助法などの様々な問題要因が複雑に絡んで起こる現象である。
一般に、口腔に摂取した食物は、唾液と混じり、咀嚼・舌運動によって嚥下しやすい食塊に形成され、咽頭に送られる。食塊が舌根部を越えると嚥下反射が起き、食道に運ばれるが、その際、咽頭に交通する鼻腔、口腔及び喉頭(気管)の各腔は口腔咽頭部の各筋群の働きにより閉じられる。
鼻腔と咽頭の閉鎖は、軟口蓋拳上と上咽頭筋収縮によって果たされる。しかし、脳血管疾患等で支配神経(顔面、舌咽、迷走神経)に不調をきたした場合(鼻咽腔閉鎖不全者)、また、加齢や廃用による口蓋帆拳上筋等の機能低下により、軟口蓋拳上不全が生じた場合(軟口蓋拳上不全患者)、食物は鼻腔に逆流したり、食道入口部に送るための圧力が足りず、気管誤嚥するリスクが高くなる。これらの障害は嚥下障害と呼ばれる。嚥下障害によって高齢者や療養者等は誤嚥性肺炎を発症する場合が多くなる。以下で鼻咽腔閉鎖不全者や軟口蓋拳上不全患者を嚥下障害患者という。
そのため、嚥下障害患者には、軟口蓋拳上と上咽頭筋の働きを良くするために、嚥下障害の改善を目的とした訓練ツールが必要となる。訓練ツールは日常的に簡単に使用できるものでなければならない。嚥下障害の改善を目的とした訓練法の一つとしてブローイング法がある。
ブローイング法には、吹き戻し(巻笛)を使用するハードブローイングと、コップやペットボトルに入れた水にストローで呼気を吹き込むソフトブローイングがある。後者の方が患者への負担が少なく重度の場合にも適用可能である。例えば、ソフトブローイングによる訓練方法は、鼻咽腔閉鎖不全者に対する嚥下リハビリ手技として広く臨床現場で実施されている。
この訓練方法は簡便であり、コップに水を入れ、ストローでぶくぶくと泡が立つように息を吹き込む。この息を吹く動作(口腔気流)により、鼻咽腔が反射的に閉鎖される。これを利用して軟口蓋拳上と上咽頭筋の収縮が良くなり、鼻咽腔閉鎖に関わる神経・筋群の機能を改善する目的が達成される。また、ぶくぶくと泡が上がるので、患者も手技が上手にできているか否かが分かりやすく、認知機能を改善するフィードバック効果もある。
なお、ペットボトルに入れた飲料をストローで飲むという技術に関しては、特許文献1に、飲み口装置が開示されている。この飲み口装置によれば、ボトル蓋体から内部にストローが設けられ、一方、ボトル蓋体の外部には、当該ストローに連通する飲み口部材が設けられる。内部のストローと外部の飲み口部材の途中であって、ボトル蓋体内には逆流防止弁が設けられている。
この飲み口装置によれば、逆流防止弁によって、飲み口部材から内部のストローへの逆流を阻止し、乳幼児がボトル内の飲料を容易に飲むことができて、飲料をこぼすことが防止され、また唾液の流通が阻止され、飲料への唾液の混入を防止できるようになるため、衛生的に使用できるというものである。
ところで、従来例に係るストローや、飲み口装置等の栓付き筒状具によれば、次のような問題がある。
i.コップに入れた水をストローでぶくぶくと泡が立つように息を吹き込むという、ソフトブローイング訓練時、嚥下障害者(訓練者)が誤って水を飲み込んでしまう恐れがある(誤飲)。このため、患者への負担が少ないソフトブローイング訓練が認知機能の低下した高齢者等において、十分に実施できていないというのが実状である。
ii.また、特許文献1に見られるような飲み口装置を何らの工夫無しにソフトブローイング訓練法に適用した場合、飲み口部材から息を吹き込もうとしても、逆流防止弁によって、呼気の流通が阻止され、軟口蓋拳上と上咽頭筋の収縮が得られず、嚥下障害の改善にならないという問題がある。
本考案は以上の点に鑑み創作されたもので、ソフトブローイング訓練時において、嚥下障害患者に対し気管への誤飲の恐れを無くし安心して訓練できるようにした栓付き筒状具を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本考案の第1の栓付き筒状具は、請求項1に記載のように所定の径を有し、一端に呼気が吹き込まれる第1の管路部材と、第1及び第2の開口部を有して前記第1の管路部材の他端が当該第1の開口部に連通される栓部材と、所定の径を有し、一端が前記栓部材の第2の開口部に連通され、他端から前記呼気が吹き出される第2の管路部材とを備え、前記栓部材には、前記第2の管路部材から前記第1の管路部材への逆流を阻止する逆流防止弁が設けられ、前記第2の管路部材の他端は、液体が収容された容器に入れ込まれるものである。
請求項1に係る第1の栓付き筒状具によれば、嚥下障害の改善を目的としたソフトブローイング訓練時において、誤って、第1の管路部材の一端を吸っても、逆流防止弁によって気管への空気の流通(誤飲)を阻止できるようになる。
請求項2に記載の栓付き筒状具は、請求項1において、前記第1の管路部材には呼気の吹き込み側を示す標識部材、及び、前記第2の管路部材には呼気の吹き出し側を示す標識部材の少なくともいずれか一方が設けられるものである。
請求項3に記載の栓付き筒状具は、請求項1において、前記第2の管路部材の他端に、呼気の吹き出し側を示す標識部材であって、口に銜えることが困難な径を有する標識部材が設けられるものである。
請求項4に記載の栓付き筒状具は、請求項1において、前記第2の管路部材の他端に、呼気の吹き出し側を示す標識部材であって、呼気および吸気を漏洩させる開口を有する標識部材が設けられるものである。
請求項5に記載の栓付き筒状具は、請求項1において、前記栓部材の径が、前記第1の管路部材および前記第2の管路部材の径よりも大きく、当該第1の管路部材の長さが、当該第2の管路部材の長さよりも短く設定されるものである。
請求項6に記載の栓付き筒状具は、請求項1において、前記第1の管路部材の全部もしくは一部の径が、前記第2の管路部材径よりも大きく設定されるものである。
請求項7に記載の第2の栓付き筒状具は、所定の径を有し、第1及び第2の開口部を有して当該第1の開口部に呼気が吹き込まれる筒状の栓部材と、前記栓部材の径よりも小さい径を有し、一端が前記栓部材の第2の開口部に連通され、他端から前記呼気が吹き出される管路部材とを備え、前記栓部材には、前記管路部材から前記第1の開口部への逆流を阻止する逆流防止弁が設けられ、前記管路部材の他端は、液体が収容された容器に入れ込まれるものである。
請求項1に係る第1の栓付き筒状具によれば、第1の管路部材及び第2の管路部材を連通する栓部材を備え、当該栓部材には逆流防止弁が設けられ、第2の管路部材の他端は、液体が収容された容器に入れ込まれるものである。
この構成によって、嚥下障害の改善を目的としたソフトブローイング訓練時において、誤って、第1の管路部材の一端を吸っても、気管内への水(空気)の流通を阻止できるようになる。しかも、嚥下障害患者にとって吹きやすく、容器の中でぶくぶくと泡が上がる様子を容易に目視確認できるようになる。これにより、嚥下障害患者に対し気管への誤飲の恐れを無くし安心して訓練を行えるようになる。
請求項2に係る栓付き筒状具によれば、標識部材が設けられるので、逆使用防止標識のみならずセット阻止部材として利用できるようになる。
請求項3から6に係る栓付き筒状具によれば、第1、第2の管路部材を逆向きにして、第1の管路部材の一端を容器へセットしようとしても、また、第2の管路部材へ呼気を吹き込もうとしても、これらの行為が困難となる等の方法を採用できるようになる。
請求項7に係る第2の栓付き筒状具によれば、栓部材の一端を容器へセットしようとしても、また、管路部材へ呼気を吹き込もうとしても、これらの行為が困難となる等の方法を採用できるようになる。
この構成によって、嚥下障害の改善を目的としたソフトブローイング訓練時において、誤って、栓部材の一端を吸っても、気管内への水(空気)の流通を阻止できるようになる。しかも、嚥下障害患者にとって吹きやすく、容器の中でぶくぶくと泡が上がる様子を容易に目視確認できるようになる。
これにより、鼻咽腔閉鎖不全者や、軟口蓋拳上不全患者等の一人に付き一本(嚥下訓練用のマイ・ストロー)を割り当てたり、一人の訓練毎に嚥下訓練用ストローのみを消耗品扱いして交換するといった単回使用器具(ディスポーザル)として取り扱うことができる。
以下、図面を参照しながら、本考案に係る栓付き筒状具について、その実施の形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1に示す第1の実施形態としての嚥下訓練用ストロー100は、栓付き筒状具の一例を構成し、嚥下障害の改善を目的としたソフトブローイング訓練時、コップやペットボトル等に入れた水に呼気を吹き込むためのものである。嚥下訓練用ストロー100によれば、吹き込み管の一端を吸っても、気管内への水(空気)の流通を阻止できるようにした。
嚥下訓練用ストロー100は吹き込み管11、吹き出し管12及び筒状の栓部材13を備えている。吹き込み管11は第1の管路部材の一例を構成し、所定の径を有しており、一端に呼気が吹き込まれる。吹き込み管11には、長さL1が80〜150mm程度で、外径φ1が5〜6mm程度の市販のストローが利用される。ストローは折り曲げが容易な蛇腹部位を含めて利用するとよい。外径φ1は通常のブローイング訓練に支障をきたすことなく、管路抵抗が増加しない程度であればよい。
吹き出し管12は第2の管路部材の一例を構成し、所定の径を有しており、一端が栓部材13の開口部302に連通され、他端から呼気が吹き出される。吹き出し管12には例えば、長さL2が100〜200mm程度で、外径φ2が10〜12mm程度の市販の塩化ビニールパイプ(硬質)が使用される。
この例では、吹き込み管11の外径φ1が吹き出し管12の外径φ2よりも小さく設定されるものである。この設定は、鼻咽腔閉鎖不全者や、軟口蓋拳上不全患者等(以下、単に訓練者ともいう)に対して呼気が吹きやすく、容器の中でぶくぶくと泡が上がる様子を容易に目視確認できるようにするためである。
この例で、吹き出し管12の他端は、液体が収容された容器、例えば、図3に示すようなペットボトル14や、図5に示すようなコップ15に入れ込まれる。ペットボトル14やコップ15等には液体の一例となる適量の水が収容される。
また、吹き込み管11の蛇腹部位の下方には円形部材(フランジ)17が設けられている。円形部材17は、逆使用防止用の標識部材の一例を構成するものである。円形部材17は、図3に示すぺットボトル14の開口部303よりも大きな外径φ4を有している。開口部303は嚥下訓練用ストロー100をセットするための挿入口である。
吹き込み管11と吹き出し管12との間には栓部材13が設けられている。栓部材13には逆流防止弁31が設けられ、吹き出し管12から吹き込み管11への水等の逆流を阻止するようになされる。逆流防止弁31は栓本体32及び弁体33を有している。栓本体32はその上部及び下部が台錐形状を成し、中間部が外径φ3の円柱状を成すと共に、上部に第1の開口部301及び、下部に第2の開口部302を有している。開口部301と開口部302とは連通している。栓本体32の長さはL3である。栓本体32は半透明のポリプロピレン等により形成される。
この例で、開口部301の側には吹き込み管11が接続され、開口部302の側には吹き出し管12が接続される。例えば、開口部301は凹状(穴状)を成し、吹き込み管11の端部が開口部301を成す穴に挿入する形態で嵌合される(凹状穴構造)。吹き出し管12と栓本体32とは、栓本体32の外周囲が吹き出し管12に挿入する形態で嵌合される。すなわち、吹き出し管12で弁体33を保護するようになされる。吹き出し管12で栓本体32を覆う部分が逆流防止弁31の弁箱(弁室部材)を兼用し、弁体33の作動スペースを確保できるようになっている。
栓本体32の開口部302の側には弁体33が設けられる。弁体33は舌片状を有しており、例えば、先端が口を一文字に閉じたような形状を有している。弁体33はある程度、腰が有る柔軟部材が使用される。例えば、管部材よりも薄いシリコンゴムや、樹脂膜や塩化ビニール膜等から構成される。弁体33は、排気時に開口部302を開くように作動し、吸気時に開口部302を閉じるように作動する。例えば、栓本体32において、開口部301の側(内側)から呼気は、開口部302を通過するが、逆の側からであると、開口させる受圧面が無いため一文字の口が閉じたまま弁体33は開かない。これらにより、嚥下訓練用ストロー100を構成する。
ここで、図2を参照して、嚥下訓練用ストロー100の組立例について説明する。この例では、図1に示したような嚥下訓練用ストロー100を組み立てる場合を前提とする。まず、吹き込み管11を準備する。吹き込み管11には、例えば、外径φ1=5mmの市販のストローを使用する。この例では、蛇腹部位を含めた長さL1(図1参照)を90mm程度に寸法取りしてストローをカットする。
吹き込み管11が準備できたら、次に、吹き出し管12を準備する。吹き出し管12には例えば、外径φ2=10mmの市販の塩化ビニールパイプを使用する。この例では、300ミリリットルのペットボトル14の高さを考慮して長さL2(図2参照)を100mm程度に寸法取りして塩化ビニールパイプをカットする。
吹き出し管12が準備できたら、更に栓部材13を準備する。栓部材13には栓本体32及び弁体33を有したものを使用する。栓部材13には半透明のポリプロピレン等の樹脂部材を金型成形したものを使用する。弁体33は、開口部302を覆う大きさのシリコンゴム等を舌片状にして、栓本体32を成形する際に一体化する。
例えば、栓本体32の上部、下部を台錐形状に加工する際に、舌片状のシリコンゴムを一文字に型どりした金型に挟み(植え)込んで、樹脂材料を封入し栓本体32と共に成形することで舌片状の弁体33を固着する。もちろん、栓部材13を金型成形した後に弁体33を単体部品として植え込み固着する方法を採ってもよい。
栓部材13が準備できたら、まず、円形部材17を吹き込み管11に通した後、吹き込み管11の端部を開口部301に嵌合して固定する。円形部材17には図3に示すぺットボトル14の開口部303よりも大きな外径φ4を有したものを準備する。円形部材17の中央部位には吹き込み管11の外径φ1と同じ径の開口部304を形成する。円形部材17は吹き込み管11の蛇腹部位の下方で固着するとよい。
円形部材付きの吹き込み管11を開口部301に嵌合できたら、栓部材13の外周部に吹き出し管12を嵌合して固定する。これにより、図1に示した嚥下訓練用ストロー100が完成する。
続いて、図3及び図4を参照して、嚥下訓練用ストロー100の取扱例及びその作動例について説明する。この例では、図3に示すペットボトル14に嚥下訓練用ストロー100を適用してソフトブローイング訓練を行う場合を例に挙げる。ペットボトル14の上部に嚥下訓練用ストロー100をセットするための開口部303を形成する。開口部303は吹き出し管12の外径φ2が余裕をもって入る大きさである。ボトル本体の蓋141を開けて、ペットボトル14の内部に水1を入れる。ペットボトル14には目盛り142が記されており、水1はこの高さまで入れる。円形部材17から吹き込み管11の端部までの長さをL4とすると、目盛り142の水面高さは、開口部303からL4下がった位置よりも低い。
これらを前提条件にして、図3に示すように嚥下訓練用ストロー100をペットボトル14に装着する。このとき、吹き込み管11の端部を誤って開口部303に入れようとしても、円形部材17が開口部303に引っ掛かってそれ以上入らない。従って、吹き出し管12の他端を必然的にペットボトル14に入れ込んだ状態を採るようになる。この状態で訓練を行うことができる。訓練者(鼻咽腔閉鎖不全者等)は吹き込み管11を銜えて呼気を吹き込む。
このとき、訓練者が吹き込み管11に呼気を吹き込むことによって、図4の(A)に示す弁体33が開状態となるので、呼気がペットボトル14の中へ流通されるようになる。反対に、訓練者が誤って吹き込み管11の一端を吸った場合、図4の(B)に示す弁体33が閉状態となるので、気管内への空気の流通が阻止され、誤嚥を防止できるようになる。
また、吹き出し管12の外径φ1は市販のストローと同等としたので、訓練者にとって、呼気が吹きやすい。また、ペットボトル14の中でぶくぶくと泡が上がる様子を外部で容易に目視確認できるようになる。これにより、鼻咽腔閉鎖不全者や、軟口蓋拳上不全患者等がソフトブローイング訓練を行って、嚥下障害を改善できるようになる。
この例では、嚥下訓練用ストロー100の栓部材13をペットボトル14の外部に配置する構造について説明したが、これに限られることはない。その栓部材13をペットボトル14の内部に配置する構造であってもよい。その場合には、栓部材13が水に浸らない状態を保つことが好ましい。
続いて、図5及び図6を参照して、変形例(その1,2)としての嚥下訓練用ストロー101,102について説明する。図5に示す嚥下訓練用ストロー101にはスポーク型リング171が取り付けられる。スポーク型リング171は標識部材の一例を構成するものである。この例では、図3に示したペットボトル14に代わって上部が開放されたコップ15が用いられる。本発明に係る嚥下訓練用ストロー101のスポーク型リング171の側がコップ15に投入されて使用される。
スポーク型リング171は樹脂製の環状体に、例えば、8本のスポークを成形したものである。スポーク型リング171の外径は、コップ15の内径よりも小さいが、口に銜えるには大きい。スポーク型リング171は吹き出し管12の終端に設けられる。この位置は、訓練者が吹き込み管11と吹き出し管12とを取り間違えて逆向きに使用した場合、訓練者がスポーク状の吹き出し管12を銜えようとしても、スポーク型リング171の外径が大きいので銜えにくい。無理に銜えて吹き出し管12の終端から呼気を吹こうとしても、スポーク状部位から空気が漏れるので、吹き出し管12からは吹けない状態となっている。これにより、スポーク型リング171によって、逆使用防止用の部材を構成できるようになる。また、無理に銜えて吹き出し管12を吸おうとしても、スポーク状部位から空気が漏れて入って来るので、吹き出し管12からは吸えない状態となっているため、誤嚥を防止できるようになる。
このように嚥下訓練用ストロー101によれば、吹き込み管11に設けられたスポーク型リング171を逆使用防止標識のみならずセット阻止部材として利用できるので、吹き込み管11と吹き出し管12とを逆向きにして、吹き込み管11の一端を容器へセットして吹き出し管12へ呼気を吹き込もうとしても、これらの行為が困難となる等の方法を採ることができる。
図6に示す嚥下訓練用ストロー102によれば、ペットボトル16の蓋部161に嚥下訓練用ストロー102が直接取り付けられるものである。例えば、蓋部161の中央部位に吹き出し管12の外径に等しい開口部を設け、当該開口部に吹き出し管12を挿通してその周囲を固定する。ペットボトル16には目盛り162が記されており、水1はこの高さまで入れる。蓋部161から吹き込み管11の端部までの長さをL5とすると、目盛り162の水面高さは、蓋部161が取り付けられる位置からL5下がった位置よりも低い。したがって、蓋部161は、蓋の向きが逆使用防止標識となるのみならず、セット阻止部材として利用できる。その他の構成要素は、嚥下訓練用ストロー100と同様であるので、その説明を省略する。この直付け構造を採ると、図1に示した円形部材17や、図5に示したスポーク型リング171を省略できるようになる。
このように第1の実施形態としての嚥下訓練用ストロー100,101,102によれば、吹き込み管11及び吹き出し管12を連通する栓部材13を備え、当該栓部材13には逆流防止弁31が設けられ、吹き出し管12から吹き込み管11への逆流を阻止するようになされる。また円形部材17、スポーク型リング171、蓋部161によって、逆使用を防止するようになされる。
この構成によって、ソフトブローイング訓練時において、誤って、吹き込み管11の一端を吸っても、気管内への水(空気)の流通を阻止できるようになる。これにより、鼻咽腔閉鎖不全者や、軟口蓋拳上不全患者等に対し気管への誤飲(誤嚥)の恐れを無くし安心して訓練を行えるようになる。
嚥下訓練用ストロー100,101,102によれば、栓本体32及び弁体33によって簡易な逆流防止弁31を構成できるようになる。これにより、鼻咽腔閉鎖不全者や、軟口蓋拳上不全患者等の一人に付き一本(嚥下訓練用のマイ・ストロー)を割り当てたり、一人の訓練毎に嚥下訓練用ストロー100のみを消耗品扱いして交換するといった単回使用器具(ディスポーザル)として取り扱うことができる。
嚥下訓練用ストロー100,101,102によれば、鼻咽腔閉鎖不全者や、軟口蓋拳上不全患者等にとって吹きやすく、ペットボトル14,16や、コップ15の中でぶくぶくと泡が上がる様子を外部から容易に目視確認できるようになる。
<第2の実施形態>
続いて、図7を参照して第2の実施形態としての嚥下訓練用ストロー200の構成例について説明をする。嚥下訓練用ストロー200は、嚥下訓練用ストロー100,101,102と異なり、逆流防止弁41が吹き込み管21及び吹き出し管22から独立した構造を有している。嚥下訓練用ストロー200は、吹き込み管21及び吹き出し管22の両方に市販の同径のストローが使用できるように工夫されている。
図7に示す嚥下訓練用ストロー200は、吹き込み管21、吹き出し管22及び逆流防止弁41を備えている。逆流防止弁41は弁室本体23、パッキング一体型の弁体44及び弁受け板45を有している。弁室本体23は内部が空洞で、ドーム型の上部筒体42及び下部筒体43を有している。弁体44は、上部筒体42と下部筒体43との間に設けられ、パッキングは上部筒体42と下部筒体43との間で気密(水密)性を維持するために用いられる。パッキングは弁体44と一体化するため、所定の厚みを有したシリコンゴムが使用される(図8参照)。
上部筒体42の天板部位には第1の開口部401を成す突起管403が設けられている。突起管403は吹き込み管21と係合(接続)するためにその内径よりわずかに小さい外径φ1’を有している。下部筒体43の底板部位には第2の開口部402を成す突起管404が設けられている。突起管404は吹き出し管22と係合(接続)するためにその内径よりわずかに小さい外径φ2’=φ1’を有している。
上部筒体42の下側には凸状の雄ネジ部位406が設けられ、下部筒体43の上側には凹状の雌ネジ部位407が設けられている。逆流防止弁41の組立時、上部筒体42と下部筒体43との間に弁体44が挟み込まれた状態で、雄ネジ部位406と雌ネジ部位407とを螺合するようになされる。組み立て構造は、これに限られない。
上部筒体42と下部筒体43との間の仕切部分には、弁受け板45が設けられ、当該弁受け板45の所定の位置に第3の開口部405を有して弁室本体23を開口部401の側と開口部402の側とに仕切るようになされる。開口部405と突起管403とは上部筒体42内の空洞を介して連通されている。この空洞を呼気吹き込み時の軟口蓋拳上と上咽頭筋の収縮に良好に作用(空気溜め等)するように利用してもよい。もちろん、開口部405と突起管403とを直接連通する構造であってもよい。
弁体44は開口部402の側に設けられ、呼気時に開口部405を開くように作動し、吸気時に開口部405を閉じるように作動する。弁体44には、パッキングを成す環状部位と一体化されたものが使用される。その他の構成要素については、嚥下訓練用ストロー100と同じ構成・機能を有するので、その説明を省略する。これらにより、嚥下訓練用ストロー200を構成する。
ここで、図8を参照して、嚥下訓練用ストロー200の組立例について説明をする。この例では、図7に示したような嚥下訓練用ストロー200を組み立てる場合を前提とする。まず、吹き込み管21を準備する。吹き込み管21には第1の実施形態で用いた外径φ1の吹き込み管11がそのまま利用できる。
吹き込み管21が準備できたら、次に、吹き出し管22を準備する。吹き出し管22には吹き込み管11で用いたストローの残余の部分が利用できる。その残余の部分が利用できない場合は、新たなストローを適量に切断して用いればよい。
吹き出し管22が準備できたら、更に逆流防止弁41を準備する。逆流防止弁41には弁室本体23、パッキング一体型の弁体44を有したものを使用する。例えば、弁室本体23を構成するための上部筒体42と下部筒体43とを形成する。上部筒体42は、弁受け板45、開口部401、突起管403及び雄ネジ部位406を型どりした所定の金型に樹脂部材を封入し、上部筒体42の内部が空洞となるようにバルーン成形する。下部筒体43は、開口部402、突起管404及び雌ネジ部位407を型どりした所定の金型に樹脂部材を封入して形成する。
弁体44は、パッキングを成形する際に、開口部405を覆う大きさの円形部位とパッキングを成す環状部位とが一体となるように成形する。例えば、所定の厚みの1枚のシリコンゴムから、図8に示すように開口部405を覆う大きさの円形部位の面とパッキングを成す環状部位の面とがその一部で連続するように同軸円状に切り出す。
パッキング一体型の弁体44が準備できたら、逆流防止弁41を組み立てる。このとき、上部筒体42と下部筒体43との間に弁体44のパッキング部位が挟み込まれた状態で、上部筒体42の凸状の雄ネジ部位406と下部筒体43の凹状の雌ネジ部位407とを螺合するようにして組み立てる。なお、弁体44は上下動自由な状態とする。
逆流防止弁41が準備できたら、第1の実施形態で説明したように、円形部材17を吹き込み管21に通した後、当該円形部材17を吹き込み管21の蛇腹部位の下方に固定する。次に、この実施形態では、吹き込み管21の端部を突起管403に嵌合(外装)して固定する。円形部材付きの吹き込み管21を突起管403に固定できたら、吹き出し管22の端部を突起管404に嵌合(外装)して固定する。これにより、図7に示した嚥下訓練用ストロー200が完成する。
続いて、図9及び図10を参照して、嚥下訓練用ストロー200の取扱例及びその作動例について説明する。この例では、第1の実施形態と同様にして、図9に示すペットボトル14に嚥下訓練用ストロー200を装着してソフトブローイング訓練を行う場合を例に挙げる。ペットボトル14上部への嚥下訓練用ストロー200のセット方法については第1の実施形態と同様であるためその説明を省略する。
これらを前提条件にして、図9に示すように嚥下訓練用ストロー200をペットボトル14に装着する。このときの逆使用防止策については、第1の実施形態と同様である。吹き込み管21の端部を誤って開口部303に入れようとしても、円形部材17が開口部303に引っ掛かってそれ以上入らない。従って、吹き出し管22の他端を必然的にペットボトル14に入れ込んだ状態を採るようになる。この状態で、訓練者は吹き込み管21を銜えて呼気を吹き込む。
このとき、訓練者が吹き込み管21に呼気を吹き込むことによって、図10の(A)に示す弁体44が開状態となるので、呼気がペットボトル14の中へ流通されるようになる。反対に、訓練者が誤って吹き込み管21の一端を吸った場合、図4の(B)に示す弁体44が閉状態となるので、気管内への水(空気)の流通が阻止され、誤飲(誤嚥)を防止できるようになる。
続いて、図11を参照して、変形例としての嚥下訓練用ストロー201について説明する。図11に示す嚥下訓練用ストロー201の吹き込み管21の長さはL4である。開口部303の穴径は、吹き出し管22の外径φ2よりは大きく、逆流防止弁41の外径φ3よりは小さいものとする。したがって、吹き込み管21の端部を誤って開口部303に入れようとしても、逆流防止弁41が開口部303に引っ掛かってそれ以上入らないため、吹き出し管22の他端を必然的にペットボトル14に入れ込んだ状態を採るようになる。この状態で、訓練者は吹き込み管21を銜えて呼気を吹き込む。これにより図9に示した円形部材17を省略することができる。
このように第2の実施形態としての嚥下訓練用ストロー200,201によれば、吹き込み管21の外径φ1と吹き出し管22の外径φ2とが同等(図8、図11参照)なので、吹き込み管21及び吹き出し管22を同一の市販のストローを利用できるようになる。もちろん、訓練者はペットボトル14の中でぶくぶくと泡が上がる様子を外部で容易に目視確認できるようになる。これにより、第1の実施形態と同様にして鼻咽腔閉鎖不全者や、軟口蓋拳上不全患者等がソフトブローイング訓練を行って、嚥下障害を改善できるようになった。
<第3の実施形態>
続いて、図12を参照して第3の実施形態としての嚥下訓練用ストロー300の構成例について説明をする。嚥下訓練用ストロー300は、吹き込み管34の外径φ5が吹き出し管35の外径φ6よりも大きい。開口部303’の穴径は、φ6よりも大きく、φ5よりも小さいものとする。したがって、吹き込み管34の端部を誤って開口部303’に入れようとしても入らないため、吹き出し管35の他端を必然的にペットボトル14に入れ込んだ状態を採るようになる。この状態で、訓練者は吹き込み管34を銜えて呼気を吹き込む。
このように第3の実施形態としての嚥下訓練用ストロー300によれば、吹き込み管34が開口部303’に全く入らないため、標識部材である円形部材17を省略することができるとともに、ペットボトル14に入れる水の量が厳密に管理されなくても、逆使用を防止することができる。もちろん、訓練者はペットボトル14の中でぶくぶくと泡が上がる様子を外部で容易に目視確認できるようになる。これにより、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様にして鼻咽腔閉鎖不全者や、軟口蓋拳上不全患者等がソフトブローイング訓練を行って、嚥下障害を改善できるようになった。
<第4の実施形態>
続いて、図13を参照して第4の実施形態としての嚥下訓練用ストロー400の構成例について説明をする。嚥下訓練用ストロー400は、逆流防止弁41’に、外径がφ6の吹き出し管46が装着されている。逆流防止弁41’の呼気吹き込み側の突起管403’の外径φ7は、吹き出し管46の外径φ6よりも大きい。開口部303’の穴径は、φ6よりも大きく、φ7よりも小さいものとする。したがって、逆流防止弁41’の呼気吹き込み側の突起管403’を誤って開口部303’に入れようとしても入らないため、吹き出し管46の他端を必然的にペットボトル14に入れ込んだ状態を採るようになる。この状態で、訓練者は突起管403’を銜えて呼気を吹き込む。
このように第4の実施形態としての嚥下訓練用ストロー400によれば、吹き込み管21,31等を省略できる。また、突起管403’が開口部303’に全く入らないため、標識部材である円形部材17を省略することができるとともに、ペットボトル14に入れる水の量が厳密に管理されなくても、逆使用を防止することができる。もちろん、訓練者はペットボトル14の中でぶくぶくと泡が上がる様子を外部で容易に目視確認できるようになる。これにより、第1の実施形態〜第3の実施形態と同様にして鼻咽腔閉鎖不全者や、軟口蓋拳上不全患者等がソフトブローイング訓練を行って、嚥下障害を改善できるようになった。
第4の実施形態においては、逆流防止弁41’に突起管403’を設けず、当該部位を単なる開口とし、訓練者が逆流防止弁41’を銜えるかもしくは当該開口に唇を当てて呼気を吹き込むようになしてもよい。この場合、ペットボトル14の開口部303’の穴径は、吹き出し管46の外径φ6よりも大きく、逆流防止弁41’の外径φ3よりも小さいものとする。
また、逆流防止弁41の組み立てに関して、上部筒体42と下部筒体43との間をネジ止め方式により係合する場合について説明したがこれに限られない。例えば、上部筒体42の凸状部位と下部筒体43の凹状部位とを固着方式により接合してもよい。これらの凸状部位や凹状部位等の金型成形が軽減できるようになる。
また、弁室本体23と吹き込み管21や吹き出し管22等との接続に関して、突起管403,404を利用する場合について説明したがこれに限られない。例えば、第1の実施形態で説明した開口部301の凹状穴構造をこれらの接続構造に採用してもよい。突起管403,404の金型成形が穴の成形に軽減できるようになる。